法改正による個人情報保護法本の新刊ラッシュがひと段落するの待っていたかのような、王者の風格漂うタイミングでの登場となりました。実務に携わる者にとっては必携の書です。





著者の「個人情報保護法制研究会」とは、まさに平成27年改正法の立案を担当し、そして運用の監督権限を司ることになる、個人情報保護委員会事務局の皆さんのこと。もちろんそれぞれの個人の私的な見解とは言え、主務大臣に代わり委員会が権限を持つことになったこの運用フェーズにおいては、本書に示された解説をベースに検討すべきなのは間違いありません。

ちなみに、前著『個人情報保護法の解説《改訂版》』は、業界人からは「ピンク本」と呼ばれ、宇賀本・岡村本のような自説記載を含んでいない点、業界では信頼のおける文献として重宝されていました。といっても、発刊当時の2005年時点は私はまったく注目していませんで、保護法改正の機運が高まりはじめた2012年ごろにあわてて中古で購入した記憶があります。

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その《改訂版》と比較すると、まず一見してデザインががらっと変わっています。ハードカバーで扱いにくかった表紙もソフトカバーに代わり、ページ数は570ページを超え前著比プラス200ページほど増加しています。書体やレイアウトは少し現代風になり、より読みやすい印象です。

特に、実線で罫囲みされた条文の下に趣旨があり、その条に関係する施行令・施行規則の条文が点線囲みで引用された構成が使いやすく、気に入っています。委員会作成のQ&Aまではリファレンスされていませんが、逐条解説の文章の中で十分にその趣旨が織り込まれているので、コンメンタールとしてはここは割り切って正解だったと思います。また、図表が少し少なめな印象がありますが、前著と比較してみると、あまり図式化する意味のない図、たとえば一方通行なフローチャートなどを積極的に削除したフシがうかがえ、これも良い改訂ポイントだと思います。

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また逐条解説パートにおいては、改正による影響があった部分には必ず書き出しに「平成27年改正により」とあり、改正のなかった部分との区別が明瞭になっています。改正内容をもういちど頭に入れたいという方にとっても、この部分を丹念に追っていけば事足りるはずです。

何より驚いたのは、その改正の影響を受けていない条文についての解説は、時折挙げられている例示も含めて、一言一句《改訂版》から変化なしと言って差支えないほど前著のままとなっている点です。これはつまり、個人情報保護法の本質は何も変わっていないということの証左であり、あわせて、前著《改訂版》がいかに信頼できる完全なものであったかを示してもいます。ピンク本もそれはそれで取っておくつもりだったのですが、ここまで踏襲していると、安心して電子化(自炊)送りにできますね。

(余談ですが、この差分を精査している作業中、28条の保有個人データ開示義務を解説しているP237において、「開示を請求された保有個人データが存在しないという情報も重要な情報であることから(略)存在しない旨を本人に通知しなければならない。」という解説が前著になかったのを見つけ、「お、これは委員会の独自見解か?」と思ったのもつかの間、法28条3項の条文自体に新たに加えられていた当然の義務であることに気づいた次第です。恥ずかしながら・・・。)

第4編として、藤原先生によるGDPRについての解説がありますが、これは本当にさわりの紹介程度です。GDPRについては別途文献を参照して対応を検討されることを推奨します。

なお入手に当たっては、ぎょうせいのtwitterご担当者さまに便宜を図っていただき、発行間も無く入手できました。その節は誠にありがとうございました。