法務として法的アドバイスを求められたとき、条文を引き、判例や通達を探し、文献や法律問題にならないまでも世の中で問題視された先例も踏まえながら、できるだけ確かな根拠に基づく正しい回答をしなければ、と考えます。

しかし、その場ですぐに間違いのない回答ができると確信できるケースは少なく、多くの場合、何らかのリサーチや確認をし不安を解消した上での回答が必要となります。そんなとき、

「お話を聞いて事実関係はわかりました。ではきちんと調べて、間違いの無いようにお答えしますね」

という対応は、どうやら相談者から期待されている対応ではないということは、ある程度の経験を積んだ方であれば、うすうす感じているのではないでしょうか?


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前職で、Fさんという二日に一度は相談に来る常連の相談者さんがいました。さすがに相談の頻度が多すぎて「よくお会いしますね」といった枕詞で相談がはじまるのがお約束になるほど。その彼からこんなことを言われたことがあります。

「はっしーさんは難しい法律論抜きにまずその場でスパっと見解を出してくれるから、こちらもじゃあこれならどうでしょう?という話ができて助かります」

私は正直、彼のあまりの相談頻度に、組織としてあまりリソースを割いてられないという思い半分で、「後で条文とか通達とかはきちんと確認してレポートしますけど、直感的には〇〇なところが匂いますんで、やめておいたほうがいいかな。もうすこし××な感じにできません?(できるなら、調べなくてすむしね!)」と、言うなれば冷たくあしらうような対応をしてしまっていたつもりでした。ところがそれが意外にも、その「直感的にここがNG」という反応をそこそこの論拠で具体的に返してあげることで、次に自分がプランB・Cの方向性を考えるきっかけになってありがたいと言うのです。


相談者も、リスクだけしかない道を好んで踏みに行きたいわけではなく、ある程度の常識や法律知識をもって、向かいたいゴールに向かう中で最も賢い道筋・ルートはどれかを自分なりに考えているはずです。法務は水先案内人の一人ではあるけれど、結局その茨道を歩くのは相談者自身。自分なりにはリスクは考えて当然じゃないですかと。

自分に降りかかった災難や課題にばっちりはまる正解があるわけではない、世の中はそんなに単純じゃないということは、法律に明るくない相談者であってもうすうすは気づいているものです。自らのリスクを(程度はさておきある程度は)認識して頼ってくださる相談者に対し、自分が持ちうる限りの知識・経験・論理的思考を総動員し、苦しくてもその場で何らかの見解を一つ二つ返してあげるというのは、相談に応じる者の姿勢として大切なことだと思います。


もちろん、その場の反応の精度や品質が低ければ、相談者は二度と現れません。それらを向上させるための業務経験や日々の研究を重ねる必要があることは、言わずもがなとして。