雑談を求めてClubhouseに雪崩れ込む元オフィスワーカーたち


ほぼ音声のみでリアルタイムにコミュニケーションする実名制SNSサービス「Clubhouse」が、1月下旬から日本でもブームとなっています。

現在サービスを利用開始するためには、原則すでにユーザーとなった友達からの招待と携帯電話番号の登録が必要。利用開始のハードルは高いものの、特に在宅勤務が続きちょっとした雑談的会話を欲していた“元”オフィスワーカー層が、この「Clubhouse」にドッと雪崩れ込んでいます。

私も、2月3日の夜、弁護士の@kappa0909 先生 & @ASAP_r 先生、そして法務友達 @katax の3人と、「契約書の一般条項について語り合う」という“ルーム”を開いてみたところ、こんなマニアックなテーマにもかかわらず120人を超えるオーディエンスに集まっていただきました。


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このルームの参加者のほとんどが、ふだんは新しいSNSに保守的な企業法務担当者や弁護士の方だったことを考えると、想像以上のスピードで普及が進み「Clubhouse通い」にハマる社員が増えていくことが予想されます。

会社は音声×リアルタイムなリスクを捕捉できない


さてこうした新しいSNSサービスができ、そこで社員が情報発信を始めるとき、会社として注意しなければならないのは、情報漏洩とレピュテーションリスクです。

特にClubhouseの場合、インターネットで公開される文字・映像情報等とは違い、音声のみを扱い、常にリアルタイムで生配信されてしまい、さらに良くも悪くもアーカイブがされない点が特徴です。このため会社は、

  • 発信内容の事前把握はもちろん、文字等検索による事後チェックもできない
  • 発信を捕捉するためには、リアルタイムにルームを見張るしかない
  • ルーム数が膨大かつ突発的に生成されるため、パトロールするにも物量的限界がある

ことになります。

これまで会社は、社員がメディアに露出したりブログ・SNS等で発信する際には、事前に原稿チェックをしたり、出来上がった映像を事後に検証し、問題があれば公開を禁じたり削除させることも、やろうと思えばできました。

しかし、音声のみ・リアルタイム・アーカイブなしという文字通り「人の口に戸は立てられない」を地で行くこのClubhouseでは、そうした事前・事後統制を働かせることは事実上不可能です。

さらにやっかいなことに、Clubhouseは他のSNSには見られないほど強力なリアルタイム性、スマホ通知から簡単にルームに遷移できてしまうUI、実名かつ電話番号を知っている友達同士からなる強いソーシャルグラフを備えています。自分はその気がなかったとしても、友達からルームに呼びつけられ「あの仕事ってお前がやったんだろ?ウラ話聞かせてよ」といった仲間内のノリの「ここだけ話」が、居酒屋以上の不特定多数に共有される傾向にあります。

これまで流行ってきたmixi・Twitter・Facebook・Instagramにもそういった要素はありましたが、そのエッジをより効かせたSNSと言え、会社にとっては危険度がかなり高いSNSと言わざるを得ません。

現実解は資格制導入+報告義務強化+ペナルティ


こうした新しいSNSの勃興に対し、会社や組織ができること・すべきことはあるでしょうか。

私自身、一従業員の立場としてそれを望むわけではありませんが、全社員がネット上で喋ることをリアルタイムに(監視ならぬ)監聴することは不可能である以上、現実的な解としては、

  1. Clubhouseへの会社名明示参加を資格制とする
  2. 話したテーマ・内容の報告義務を強化する
  3. 会社を巻き込むトラブルを発生させた時のペナルティを双方が再確認する

つまり、行為レベルの事前統制は諦め、個々人単位でみた判断能力・実績・信用ベースでの事後統制を強化するしか、方法はないように思えます。

2010年ごろ、ブログやSNSの黎明期にも「従業員に自由に発信させてよいのか」という議論はありました(参考:従業員のソーシャルメディア利用ガイドラインを制定するにあたり企業が抑えるべき5つのポイント)。そこから10年以上が経ち、SNSの重要性は個人にとっても増しています。働き方の多様化や副業容認が進んだことで、会社に対する社員の帰属意識も大きく変わりつつあります。

たかがSNSではありますが、こうしたテクノロジーの進展をきっかけに、社員との関係性の具体的な見直しと制度への落とし込みが必要なフェーズに入ってきました。