企業法務マンサバイバル

ビジネス法務に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きる皆様に貢献するブログ。

_与信・債権回収法務

【本】与信管理論 ― 契約書の前に取引先企業を審査しなけりゃ本末転倒

 
リスクモンスターさんといえば、そのおどろおどろしい社名に似つかわしくないほのぼのした怪獣のキャラクターでおなじみ(?)の、企業の信用情報調査やコンサルティングを手がける会社。商社の中でも審査部門のアグレッシブさで有名な旧日商岩井の審査部門ご出身者が設立されたんですよね。

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そのリスクモンスターさん編著の与信管理本と聞き、「きっとそういう自社宣伝バイアスが掛かった本なのだろう」、そう思ってしまった者の一人として、平にお詫び申し上げます。


与信管理論与信管理論
販売元:商事法務
(2012-04)
販売元:Amazon.co.jp



商事法務さんからの出版、「与信管理論」という大上段なタイトル、クリーム色の高級感あふれる装丁、P740を超える厚さ、そして¥7,600(税別)というお高い値段に、只者ならぬ威圧感を感じてはおりましたが、ページを繰ってみると、超正当派どころか、これまで私が色々買い集めてきた与信管理実務書の数々に書かれた要素をすべて包含した上で、かつ他の与信管理本では触れられてこなかった実務的なノウハウが詳細に書き込まれた、“ザ・ベスト・オブ・与信管理本”でした。

これだけの厚みならば、他の本の要素を全て包含していると言っても「当たり前じゃん」と思われてしまうと思いますので、他の与信管理本との違いに注目をしてご紹介してみると、まずわかりやすいところでは、与信限度額申請書のサンプルがとっても具体的に載っていたり(P112)

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与信管理の体制構築について述べられた第2章では、会社が抱える与信リスクの変化をどう経営にレポートしたら伝わるかについて、具体的なアイデアが図入りで紹介されていたり(P130)

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定量・定性・商流分析の方法論について述べられた第4章では、決算書の読み方は当然のこと、資金繰り表やはたまた法人税申告書の詳細な読み方・チェックポイントについてまで述べられていたり(P314)、

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与信管理の社内研修や後輩教育でいつも説明するのが難しいなあと思っていた「商流を把握する」とはどういうことかを、絵入りで分かりやすく説明していたり(P358)、

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もちろん、与信管理体制作りの話だけでなく、契約書による保全や債権回収の法務実務についてもしっかりとサンプル条文付きで触れられているので、ご安心ください。

私も企業審査の仕事を前々職・前職と続けてきて、自分なりのノウハウを書き留めながらつくった「自分マニュアル」があります。会社によっては、そういったものを先輩から引き継ぎ、どんどん書き足し業務マニュアルとして共有文書化しているところもあるでしょう。この本は、リスクモンスターの前身とも言える日商岩井の審査部門の人々が作ったそういう「門外不出の業務マニュアル」が、間違って世に出てしまったのではないか?と思うようなクオリティでした。

そして何より、冒頭で触れたように、これだけ充実のノウハウを「流出」させながら、この本の中でリスクモンスター社の宣伝に走ってないところがすごいです。ごく数枚だけリスモンさんのサービスのスクリーンショットが貼り付けられているぐらいで、信用調査機関の紹介の使い方を解説するページでは、東京商工リサーチさんや帝国データバンクさんを紹介しているのに、肝心の自社を紹介しないという奥ゆかしさなのですから(笑)。


ところで、この本を思い出したように紹介したのは、ちょうど昨日、ツイッターで意見をよく参考にさせていただいている高橋先生が、こんなことを仰っていたから。



私も、契約書審査に無駄に時間をかけるよりも、取引先企業審査の体制をしっかりとつくることのほうがよっぽど重要で生産性が高く、また楽しい仕事なのではないかと常々思っています。もっと言えば、取引企業審査の体制を作らずに契約書チェックの体制だけ整えている会社は本末転倒ではないかと思うことも。契約書に支払サイトひとつ定めるのだって、取引企業審査の目線がないと「このタイプの取引でこの相手方、なのにこの長さは何か理由が?」っていう質問を現場にできないでしょうし、質問ができなければ妥当性も判断できません。ただサイトを短くするだけの修正だったら誰でもできますしね。

その一方で、そういった取引先企業審査の体制をつくるために何をどういう順番で進めていけばすればいいか、審査とは・与信管理とは何かを説明したり文字にまとめたりするのは、暗黙知の領域が多く難しいことだとも思いこんでいました。しかしこの本は、それに必要な知識・ポイントを思いつく限り隅から隅まで見事に言語化しています。共著の松田綜合法律事務所の先生方含め、プロ中のプロたちが集まると、こういう良い書物ができるんですね。
 

【本】債権回収の技術 ― 無担保で不良化した債権を回収してナンボでしょ

 
債権回収の本の中でも、この本はちょっと珍しいタイプかも。

債権回収の技術―交渉技法から法的戦術・サービサー活用まで


何が珍しいかというと、担保の種類の解説・担保設定の仕方といったありがちな法律知識の体系的な解説はばっさりと捨てて、すでに不良化してしまった債権を、どのように交渉し、または法的手続きを実行して回収するかという、交渉〜実行フェーズに特化しているところ。

従来、その金融法務の主テーマとしては、金融に関する予防法務というか、取引先とのトラブル発生を未然に防ぐ技法の研鑽が中心になっていたのではないでしょうか。(中略)昨今の不良債権問題を効率よく解消する策として、金融法務のあり方ということを考察すると、それだけでは不十分であって、今日の不良債権の解消策としては、不良債権問題が既存の予防法務を思考した金融法務の限界を超えているため、ここで新しい概念を一つでも付加する努力がとくに必要であると思う次第です。
では、金融法務に新たに必要なものとは何か。それは債務者との「交渉技法の開発」です。(P5初版まえがきより)

このような視点にたって、1〜2章では交渉にあたっての基本的心構えとセオリーが、3〜4章では、ケーススタディ形式で保全〜回収にむけた法的技術の解説が、5〜6章では、サービサー会社を使った回収方法についてまとめられています。特に、ボリューム的にもメインコンテンツになっている交渉〜回収フェーズのテーマ毎に例示されるケーススタディは、類書にない充実度です。

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・再建か、精算か
 ケース1 債権回収計画の策定
・信用不安時の保全強化
 ケース2 信用不安時の保全策
・抵当権の登記留保
 ケース3 新築マンション物件に対する登記留保抵当権の管理
・商事留置権の主張
 ケース4 ビル建築途上の競売物件にかかる請負業者からの
      商事留置権の主張
・仮差押え
 ケース5 売上代金債権に対する仮差押え
・仮処分
 ケース6 土地・建物についての仮処分、仮登記を命ずる処分、
      および建築途上物件にかかる抵当権予約の実行
・詐害行為取消権・債権者代位権
 ケース7 建物についての詐害行為取消請求の訴え
・担保不動産競売
 ケース8 抵当権の実行・抵当権消滅請求の実行
・賃料債権に対する物上代位
 ケース9 抵当権者による物上代位権の行使と目的賃料債権の
      譲渡の関係
・賃貸ビル等の担保不動産収益執行
 ケース10 高級賃貸マンションに対する収益執行
・倒産ADR
 ケース11 保証債務履行の民事調停
・訴え提起前の和解
 ケース12 貸金返還等請求事件にかかる即決和解
・強制執行
 ケース13 売上債権に対する債権執行
・支払い督促
 ケース14 連帯保証人に対する支払督促
・通常訴訟
 ケース15 時効中断、債務名義取得のための貸金返還請求
・民事裁判の基本原則
 ケース16 保証履行に関する訴訟上の和解
・譲渡担保権の実行
 ケース17 集合動産譲渡担保の私的実行
・担保物権の任意売却の基準
 ケース18 担保物権の等価交換

不良化した債権を回収する場面での法務は、法的知識だけでなくその応用力も必要で、かつ交渉という人間ワザまで含まれるという点で法務業務の中でも最も高度な業務ですが、それが成功したときの喜びと現場からもらえる感謝の大きさもひとしおです。その高度な業務をこなせるようになるには、ひたすら経験を積むしかないのでしょうが、その経験を補充する手段としてこのようなケーススタディで疑似体験をしておくことも、ある程度有用だと思います。

銀行など金融法務の方向けの本であり、ご覧のとおり不動産等担保権を設定していることが前提となったケースがいくつかある点は、基本的に無担保でサービスを提供することの多い事業会社の法務パーソンに直ちに応用できないかもしれませんが、限界事例を知ることで自社のケースにおける交渉の可能性を探るという意味で、参考になるはずです。

【雑誌】BUSINESS LAW JOURNAL No.22 1月号一債権回収は潜った修羅場の数だけ強くなる

 
弁護士会館ブックセンタ−には発売日の2日前にフライングで置いてあることを今月知ったこの雑誌。

BUSINESS LAW JOURNAL 2010年 01月号


今月から始まった2大新企画
・徹底マスター 契約実務
・誌上ワークショップ
に加え、
・2010年社内研修テクニック
なる特集もあって、総ページ数は先月号と変わらないのに結構なお得感を感じます。

特に、2つめの「誌上ワークショップ」は、実は私も編集部からお声掛け頂きながら参加できなかった(すみません)分楽しみにしていた企画。

「取引先の信用不安情報を入手した際に出荷停止にするか」という与信管理の一場面を取り上げたケーススタディをもとに、ユニリーバ・ジャパンの取締役ジェネラルカウンセルの北島さんがファシリテーターとなって、6名の法務担当者が意見を戦わせるというもの(なんでも、この中のお一人に、いつも弊blogをご覧下さっている「風にころがる企業ホーマー」のhiroさんが混じっているという噂も…)。

いわゆる「不安の抗弁」を主張する際の注意点という典型的なネタではあるものの、出荷したい現場の思いをどう制御するかという実務的な視点も踏まえたディスカッションになっていて、なかなか臨場感のある特集になっていました。

6名の参加者の皆さんも健闘されていましたが、やはりファシリテーターの北島さんのコメントには、圧倒的なベテランの深みを感じてしまいます。

私なら第一声として「現場に行ったか?」「その会社の誰としゃべったか?営業部長なのか、経理部長なのか、あるいは社長なのか」を聞く。そして、「出荷を止めなくてもいい材料をください」と営業から相手に頼むよう求めます。

情報も出所で評価が変わるという基本、そして経営不安に陥った債務者を詰めるのではなく、「この債権者には情報を出そう」というモチベーションを債務者に与える言葉使いができるかが、大きな差を生むということが、この短いコメントに凝縮されています。

債権回収は、やっぱり潜った修羅場の数で差がつくんだなということをひしひしと感じました。

新規取引にあたって決算書が入手できなくてもダメ会社かどうかを簡単に見分ける2つのポイント

 
法務部門があるというだけでも「ちゃんとした会社だね」ってことになると思われますが、それ以上に取引審査部門がない会社なんてザラにあります。

そうなると、契約をチェックする法務部門がいつのまにか取引審査もすべき的な責任を負わされるハメになり(笑)、何をすればいいものかと、こんな本を買ってみたりすることに。

大不況下 危ない取引先の見分け方


そして、みなさんがこの手の本に期待されるのは、決まって決算書を読んで新規取引先の危ない兆候を簡単に見抜く方法だったりして。
しかし、ここ何年か取引企業の審査という業務に携わっていた経験から思うに、新規取引の時に銀行でもない相手に決算書を数年分耳をそろえて提供してくれる会社はそうそうないですし、決算書の細かい数字を見たところで、よっぽどどうしようもない会社でない限り何も読み取れないよと(継続取引中であれば、数字の変化で相手の健康状態の変化を読み取る努力はもちろん必要なわけですけれど)。

今日申し上げたいのは、決算書を血眼でチェックするその前に、もっと簡単に気付けるところを見落としているんじゃないかということです。


社名と事業を変えるのはステークホルダーを軽視している証拠

たとえば、相手方の登記簿、特に履歴事項全部証明書をきちんとチェックしていらっしゃる企業さんって、実際どれだけいらっしゃるのでしょうか。

履歴事項全部証明書で確認できることは、確かに表面的で限られた項目だけなのですが、それでも
社名の変更歴
事業目的の変更歴
この2つだけはきっちりと見ておくべきです。

変更することがダメだとは言いませんが、変更にストーリーもしくは必然性があるかどうかは、簡単にダメ会社を見分ける大きなポイントです。この2項目のいずれかが5年内で2回以上変わっている会社は、基本的に怪しいと思った上で、必ず相手にその変更理由を確認してみます。社名や事業目的を変更した理由を聞いてもストーリーや必然性が語られない、語られてもうわべに感じられるようだったら、その会社との取引はやめておいた方がいいでしょう。

会社の信用・ブランドそのものである社名を理由もなく変更する会社は、まず間違いなく顧客との長期的な信頼関係を築く気がない会社だと断言できますし、事業目的を簡単に変更する会社は、その事業に賭けて投資した株主や入社した従業員を平気で裏切る会社だということです。
どんな優秀な経営者がその変更を判断したとしても、顧客・株主・従業員という3大ステークホルダーを軽視するそんな会社に未来はありません。

最近の倒産実例を挙げるならば、商工ローンで名を馳せたものの民事再生法適用を申請し破算手続開始決定に至ったS社などは、直近数年間で自社を含むグループ各社の社名・事業目的の変更を繰り返していた分かりやすい末期事例でしょう。

私は、この2つをチェックするだけで、新規取引審査の9割方は済んだも同然だと思っています。

【本】業種別審査辞典―取引審査・与信審査の手がかり探しにこれ9冊

 
取引審査・与信審査にあたり、審査対象会社が営むビジネスが許認可取得の必要がないのか、許認可事業であればどのような規制があるのかなど、その業種ならではの業法の規制などは調べておくべきです。

ですが、これが一体何から調べていいのやら、結構“手がかり”が見つからなかったりするわけで。

そんなときはこの本、『業種別審査事典』。


第12次業種別審査事典〈第1巻〉農業・畜産・水産・食料品・飲料第12次業種別審査事典〈第1巻〉農業・畜産・水産・食料品・飲料
販売元:きんざい
(2012-03-02)
販売元:Amazon.co.jp



金融機関の与信審査のための「辞典」なので、業法などの法規制のみならず、業界の市場規模、需給動向、その業界特有の担保、標準的な支払いサイトの長さなども調査して書いてあるという優れもの。

詳細は出版元のきんざいさんのサイトをご覧あれ。

ただし、全9巻セットで約16万円と安くはない代物ですので、会社の図書費で買っていただくのがよろしいかと思います。

【本】与信管理の実際 ?財務分析―勘定科目に潜む「包蔵損失」を見破るプロの技&お手軽なEXCEL分析ツールをセットでどうぞ

 
前回紹介した『与信管理の実際〈1〉与信管理業務全般』の続編となるこの『与信管理の実際〈2〉財務分析』。


続編ではありますが内容は?とは独立しており、決算書を使った財務分析の手法論のみに絞って解説している本です。

与信管理のためには、決算書を読み込む能力が必要不可欠。一方で「決算書の読み方」本は、私がこれまで紹介しているものだけでもいくつかあります。
「俯瞰」でわかる決算書
決算書の暗号を解け!
経営の大局をつかむ会計 健全な”ドンブリ勘定”のすすめ

本屋にいけばこれらに限らずいくらでもありますし、皆さんもすでに1冊ぐらいはお持ちでしょう。別にこの本を買わなくても与信管理はできそうですが、そんな中でもこの本ならではの特色が2つあります。


1)勘定科目の細部に隠される「包蔵損失」を見破る技

一つは、日商簿記2級レベルの簿記知識があることを前提として、勘定科目の細部にまで突っ込んでいくところ。

対象企業の意図的な仕訳によってその勘定科目の中に「包蔵損失」がどのように隠されていくのかをパターン化して例示し、その見破り方を伝授してくれます。

対象企業の事務所にお邪魔して決算書・帳簿を見ながら審査できるシチュエーションなどでは、相手企業の社長や経理部長クラスに相当なプレッシャーを与えるハイレベルな質問を次々と繰り出せるようになるはず。

ここまでできてこそプロの審査マンとして営業担当の信頼を得られるようになるのだろうなと、読みながら反省した次第です。


2)EXCELを使った財務分析ツール

もう一つは、著者オリジナルの分析ツール「EXCEL版財務分析表」を提供してくれているところ。

1)の技の数々は、まだ簿記知識を身につけていない新任担当者にはどうにもこうにもハードルが高すぎるわけですが、こちらは明日から早速使えるということで即効性が高いですね。

ツールのダウンロードは以下の商事法務のサイトの下の方にあるリンクから無料でできるようになっています。ただし、肝心の使い方はこの本を読まないと分からないかもしれません。

EXCEL版財務分析表(商事法務)

実際にこの表を使って、著者が取引中に倒産にいたった国内・中国の上場企業の分析事例も紹介してくれており、リアリティを感じながら読み進められると思います。

【本】与信管理の実際 ?与信管理業務全般―「買ってもらう立場」と「支払いを融通する立場」の狭間で問われる与信管理担当者のセンスとは

 
伊藤忠商事で国内・中国の与信管理業務に長年携わられている現役のベテラン審査マンによる与信管理業務の教科書、『与信管理の実際 ?与信管理業務全般』。


一体何年前に出版された本ですか?と思ってしまう古めかしい表紙デザイン。ところがなんと2008年7月と意外にも出たばっかり。

銀行や商社であればまだしも、通常の事業会社で与信・企業審査だけを専門に担当する部署をもつ企業は少ないと思います。
そんな会社において、貸し倒れが連発して回収不能に陥ると怒られるのは、なぜか決まって法務だったり(泣)。

怒られるだけで終わらず、経営者から「会社の与信管理体制について考えて提案しろ」というような無茶振りを受けた時にも、この1冊があると非常に心強いです。


与信とは、取引先に金を貸す行為である

同書P53より以下引用。
与信取引
商品を買ってもらうこと+金を貸すこと
与信
信用を与えること=金を貸すこと
与信管理
与信をする前に、相手先を十分調査して回収に不安が無いことを確認し、必要に応じて保全措置を講じること、ならびに与信をした後で、期日どおりに確実に金を回収するための必要十分な管理をすること

「与信」とか「与信管理」という分かったようで良く分からない言葉を、もっとも的確に定義していると思います。

商品やサービスを提供してから、請求書を発行し、1〜2ヶ月後の期日に払ってもらうという、社会人になるとまるで常識のように無意識に繰り返されるこの光景が、実は「金融」そのものであるということをまず自覚することが大事。

このことに気づいていないビジネスパーソンがたくさんいるということが、与信管理の最大の課題と言っていいかもしれません。


銀行の与信と事業会社の与信の違い

一方で、「金を貸す」立場なんだから強気に出ていいかというと、そうでもないのが難しいところ。

「商品・サービスを買ってもらう」という、銀行とは異なる立場であることの取引上のバランスも考えて、実施するリスクマネジメント行動を必要最小限に絞り込んでいくことが、与信管理担当者に求められる“センス”。

この本のいいところは、単なる法的テクニックだけでなく、そういった販売とのバランスを取る実務的な視点を常に見失っていないところにあります。

一部に伊藤忠商事というバーゲニングパワーの高さゆえに成せる業かな・・・と思ってしまう部分もあるものの、ここまで与信管理を本質論からじっくり語っている類書もなく、与信管理というテーマに何らかの課題を持っている方であれば、必ず参考になる本だと思います。

債権回収に法人格否認の法理を使うのはやっぱりムリがあるみたいです

 
債権回収の場面で、いわゆる「第二会社」などに事業のおいしいところだけ事業譲渡し、債務は抱えたまま自身は破産するような悪質な企業に出くわすケースがあります。

このようなケースで、契約の相手方以外の法人等に責任を追及すべく、法人格否認の法理を使うという手段は、債権回収のものの本には良く紹介されているところです。

しかし、実際にこの法理を使っての回収成功例を聞いたことがありません。

昨日、グループ会社の法務担当者が集まる倒産法・債権回収勉強会の席があり、倒産法では指折りの某有名事務所の先生をお招きしていたので試しに聞いてみたのですが、その事務所全体でも成功事例はないとのことでした。

銀行など、その会社の経営の内情を知り尽くしているような立場からでないと立証が難しいというのがその理由で、実際にこの法理を使って回収を試みる事例もほぼないとのこと。

難しいとは思いつつもいつかやってみたいと思っていたのですが、やっぱりムリなんですね。



企業体力“激減”ワースト43社

 
zakzakが昨年9月比の株価騰落率と自己資本比率を基準にリストアップした企業体力“激減”ワースト43社のリストがここに。

財務や株価が危険シグナルを発している43社(zakzak gifファイル)

リスト中8社を除いて、私もその筋から不渡り・銀行の支援打ち切り・取引先支払条件変更要請中等の経営不安情報を仕入れていた会社がずらりと並んでいます。

断定的な表現は控えますが、なかなか「精度の高そうな」リストですね。

【本】新・破産から民法がみえる―法学者兼実務家の著者だからこそ見えた、民法と破産法の間にひそむ意外に深い関係

 
こういういい本があるのなら早く誰か教えてくれればいいのに、と呟きながら、5ページに1回位のものすごい勢いでドッグイヤー(ページの端を折って目印にするやつ)しまくった本。



法律学習法としてオーソドックスな比較学習法

法律に限りませんが、学習の仕方の一つに、何かと何かを比較してその違いを際立たせながら学んでいく、という方法があります。

通常の民法の学び方で言えば、主流なのはやはり商法との対比だと思います。
一般法としての民法の定めに対して、それに優先する特別法としての商法の定めがあったり、商人間の取引における特別な規定が商法だけに存在する、と言った差異を見つけていく学び方です。

違いを認識することで、記憶にも鮮明に残るし、なぜそのような違いが設けられるのかを考える作業を通して、問題の本質に近づきやすくなることは、皆さん自身も体験・実感されたことがあると思います。


比較対象として意外なほどベストマッチな民法と破産法

今回この本を読んで痛感させられたのは、民法の比較対象として一見相性がよさそうな商法との比較では、民法の本質は考え抜けていなかったのだ、ということ。
そして、民法の本質を考える比較学習の教材としては、破産法がもっともふさわしい、ということです。

たとえば、第1講「債権者平等の原則」のさわり部分を例に挙げると、こんな感じ。
「債権者平等の原則」が、「契約自由の原則」と並ぶ債権法の大原則であると考えられているということは、読者諸君もご存知だろう。ところが、意外なことに、民法の債権法の教科書を見てみると、これについて正面から十分な説明はあまりなされていない。
実際に債権にそうした特長【tac注:債権者平等の原則】が表れるのは、実は破産(倒産)の場合だけなのである。それ以外の通常の場合、特定の債務の弁済期が到来して履行を請求されたときに、債務者が、「その債務だけ履行すると、他の債権者の債権の実現に影響を及ぼすから、債権額に応じて比例配分した額しか支払わない」と抗弁しても、それは認められない。
(前略)破産制度を設けて、破産手続開始決定をして債権者の個別的な取立てをすべて禁止し、破産管財人が破産者(債務者)に代わってその全財産を管理・処分し、そう債権者に公平・平等に分配することにしたのである。
すなわち、破産制度は、民法で大原則とされながら実際には実現されていなかった「債権者平等の原則」を、実際に実現することを目的としており、(後略)

この2法を一緒に学ぶことが、こんなにも相性がいいなんて、ときっと驚かれることと思います。


法学者兼実務家ならではの苦悩の末の視点

民法と破産法とを比較して両法の本質を考えていくという比較法学は、(講義で実践されている教授もいらっしゃるのかもしれませんが)少なくとも書物ではあまり見られなかった発想・手法ではないでしょうか。

このような発想は、一橋大学で教鞭を振るわれながら、弁護士事務所のパートナーとして実務でも活躍されているから著者だからこそ持てたものと思います。
特に、民法と破産法の間に横たわる法の欠缺に関する指摘の数々には、“法律の不備”に苦しみながら実務で解決策を見出してきた著者の日々の苦悩すら感じられます。

破産法の理解を勉強するつもりでこの本を手に取った私も、苦手意識の残る担保物権の理解までもが深まった実感が得られた、超おすすめ書籍です。


関連エントリ:

民法と知的財産法を比較して学ぶ本について、以前ご紹介したエントリです。
【本】民法でみる知的財産法―not only 実務的知財法 but also 学術的知財法(企業法務マンサバイバル)

不動産・建設業界で生き残れるとこってあるの?

 
ゲンダイネットお得意の、要注意企業情報。
株価100円割れの不動産・建設業をリストアップしてくれています。

不動産・建設 要注意“48社”(livedoorニュース/ゲンダイネット)

私が持っている一次情報や、信用調査機関からのタレコミ情報と一致する企業も多いこのリスト。

わが人材サービス業界も、ブログで気安く話題にすることもはばかられるぐらい苦しくなってきたので、他人のことを心配している場合ではないんですが、もはや不動産・建設業界は生き残れる会社をカウントした方が早いのではないかという情勢になってきました。

【本】プレップ破産法―取引先倒産に備えて破産法の基礎“だけ”をおさえる

 
企業の倒産が次々に起こっているこの不景気な世の中。

取引企業が万が一破産した時のことを踏まえ、破産法について基本的なポイントだけでも抑えておこう、と思ったあなた。

試しに、法律書の品揃えが豊富なちょっと大きめの本屋に行って、破産法の本の棚を見てみましょう。

きっとそこには1冊500ページ以上はあろうかという分厚い基本書や、何分冊にも分けて細かい実務を解説してくれる本が並んでいることと思います。

こんなのとか、


こんなのとか。



それに対して、この本『プレップ破産法』はこの薄さ。

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なんと150ページ足らず。
下手な新書よりも薄いこの本。

破産法の条文を丁寧に追いかけ、通説を忠実になぞる。
何も足さない、何も引かない、欲張らない。

法律上の論点・手続論が詰まった法律問題の坩堝とも言われる破産法を、できる限りシンプル・コンパクトに語ろうとしている本だということが、この薄さだけでも感じていただけるかと思います。

まずは、この1冊から。

取引相手になりそうな法人の種類を一覧表にまとめてみました

 
取引審査をしていて、営業担当者に欠けているなと思うのが、「相手方が法的に何者なのか」を確認しようという意識と知識。

ひどいレベルになると、社名を見ただけで法人格がない個人事業主だとわかるのに、そのことにまったく気付かない・知らない人もいます。加えて最近は、会社法や一般社団・財団法人法も施行され、新たな法人格が次々に新しくできており、混乱は輪をかけて広がっています。

そこで、従業員向けの研修でも使えるよう、「法人ってこんなに色々な種類があるんだよ」ということを理解し確認できるようにするための、こんな一覧表を作ってみました。名づけて「主な法人の種類一覧表」です(クリックで拡大します)。

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一般的な民間企業の取引相手として出てくる法人の種類については、上記表でほとんど網羅していると思います(私の経験上出てきた相手はほぼすべて載せています)。

この手の表は意外とネットや本にはなかなかいいものがありません。同じような悩みを抱えていらっしゃる法務・審査担当者の方がいらっしゃれば、その利用目的の範囲内において無償でここに利用許諾しますので、お役立てください。

なお、法人の区分の仕方はこれ以外にもいろいろ流派があるとは思います。私はこの区分法が一番すっきりしていて分かりやすいかなと思っています。


ちなみに・・・
この表に出していない経験上の変わりダネ法人としては、外務省のHPに載っている「駐日国際機関」でしょうか。
駐日国際機関(外務省HP)

過去の取引審査で調べて知ったのですが、こういった国際機関には法人格を根拠づける法律が存在せず、なんと条約によって直接法人格が与えられているんです。ご存知でした?

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【漫画】ナニワ金融道―『まんが日本の歴史』を読んで歴史に強くなったように、読めば債権回収に強くなれる漫画

 
1,000万部を超える大ヒットに加え、SMAPの中居君主演でテレビドラマにもなった漫画『ナニワ金融道』。


小切手、手形、連帯保証、不動産担保などの実務が面白可笑しく学べる、法務・審査パーソンにとっては貴重な学習漫画でもあります。
小学生のころ、学研の『まんが日本の歴史』を読んでいるうちに、ちょっと社会科のテストが得意になっちゃったような、あの感覚です。

ヤ●ザまがいのキツイ取立て、占有屋による物件占有、連帯保証人追い込みのテクニックなども、大阪弁に乗せるとなんだか温かみすら感じてしまうから不思議ですね。

残念ながら、著者の青木先生は2003年にお亡くなりになりましたが、存命中の貴重な映像資料がYoutubeにありましたのでご紹介しておきます。


なんでも筋金入りのマルクス主義者だったそうで。
この漫画には、青木先生ならではの資本主義に対する批判も込められていたわけですね。

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【本】債権回収法講義―東大院の講義で使われている債権回収法の教科書はやっぱりすごかった

 
テクニックではなく、あくまで法的観点から債権回収を語る本がないかを探し求めて、ようやく辿りついた本がこれ。



法律論としての債権回収法の集大成

(胡散臭い弁護士が書いている)債権回収をテクニック論で語る本は沢山ありますが、純粋に法律論から語ってくれる本は希少です。

それはなぜかといえば、
・民法
・民事執行法
・倒産法
という広大な法分野を縦横無尽に渡り歩きながら語るだけの力量がある民事法学者が少ないからだと思います。

その難行を見事にやってのけているのがこの本。

この目次とショットを見ていただければ、この本の雰囲気が伝わるでしょうか。

第1部 金銭債権からの債権回収
 第1章 債権者代位権
 第2章 債権者取消権
 第3章 債権譲渡
 第4章 相殺
第2部 動産からの債権回収
 第5章 在庫担保
 第6章 購入代金担保
第3部 不動産からの債権回収
 第7章 占有型執行妨害
 第8章 賃貸不動産
 第9章 抵当不動産の任意売却
第4部 保証と債権回収
 第10章 弁済代位
 第11章 主債務者の免責
 第12章 保証に関する特約

各章ごとに、冒頭“Scene”と称するケーススタディが2〜3問
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続いて“Lecture”として講義部分のパートがあり
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章の最後にその章で学んだ知識をベースとした設問“Exercise”と、ケーススタディ的な設問“Problem”が用意されています。
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・集合債権譲渡担保や集合動産譲渡担保においては、対象を
 どこまで特定すればよいか
・動産売買先取特権、抵当権の物上代位はどこまで及ぶか
といった担保権の法的限界についてこれ以上のないところまで突き詰めた議論を展開してくれるところなんかは、(債権回収の場面に出くわさない法務パーソンであっても)知的探究心がくすぐられることと思います。


東大院の講義で実際に使われているテキスト

この本は、著者が法学教室に連載した記事をもとに、東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻コースの民事法総合科目「債権回収法」の講義内容を加えてまとめたもの。

はしがきによると、森田先生は、SceneとLectureの部分は予習で理解しておくことを前提に、ExerciseとProblemを中心に1章(20〜30ページ)あたり100分で消化していっているらしいです。

当たり前ですが東大院だけあってハードですね。私の学生時代なんて、予習したことあったっけ?って感じでしたが。

何はともあれ、東大院以外でも、全国の法科大学院においてテキストとして指定している講座が数多くあるらしく、それもうなずける内容になっていますし、腕に覚えのある法務パーソンが読んでも結構ホネがある内容になっています。

この本をすらすら読め、設問が解けるとしたら、法務マンとしては間違いなくアッパークラスと言っていいでしょう。

ご自身の是非実力をお試しあれ。

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【雑誌】BUSINESS LAW JOURNAL No.8 11月号―債権回収のノウハウは関係部門で共有知化してこそ実戦力になる


今回のBLJことBUSINESS LAW JOURNALは、債権管理・回収特集。



債権管理・回収分野のオールスター勢揃い

私が愛用している債権回収のバイブルの著者たちを全員引っ張り出して記事を書かせたような、オールスター勢揃いっぷりがすごい。出し惜しみ一切なしです。

・裁判になっても怖くない 社内債権管理のQ&A
 by 鳥飼総合法律事務所 弁護士権田修一
▼【本】債権回収 基本のき―債権回収の一から十までがこれ一冊に詰まってます

・本当に実用的な担保とは?
 by 三井物産クレジットコンサルティング 橋本喜治
【本】与信・債権回収管理ハンドブック−商社審査マンのノウハウは一味違う

・債権保全のための契約条項作成のポイント
 by 永石一郎法律事務所 渡邉敦子
【本】ここまで知っておきたい債権回収の実務 第3版―もう改版ですか

これ以外にも、
・取引信用保証保険の活用法 by コファスジャパン信用保険
・信用情報の入手法 by 帝国データバンク
・倒産時の緊急対応マニュアル by 双日法務部
・リース物件の保全・回収の実際 by リース会社審査担当者(匿名)
など、一般的な債権管理・回収の本には載っていない最先端の知識・ノウハウも惜しみなく紹介されていて、かなりお得な内容になっています。


身の引き締まる思いです

そんなたくさんの債権回収ノウハウに浸りながらひとりで盛り上がっていた中、元日本信販衙〔撹堯Ω戎軍秣膤惷擬の田中幸弘さんによる記事を読んで、そんな興奮も一気に冷めてしまうほどの緊張感に陥れられました。
筆者は、先日、とある研修会で動産・債権譲渡特例法の話に触れたのだが、どうも受講者の顔色を眺めていると違和感がある。その場には債権管理、審査のご担当の方々が受講している前提で臨んでいたのだが、試しに尋ねてみてわかったのだが…実際に条文をみとあことがあるという方の人数が少なく、存在自体をその場で初めて聞いた…という方もかなりいたということだった。
債権譲渡についての民法467条自体がうろ覚えということであれば論外であるが、仮に、動産債権譲渡特例法による指名債権譲渡についての第三者対抗要件についてある程度ご存知だとしても…実際にその債権について債権回収上の問題がどのような形で出てくるかということについてある程度イメージはできているか。
たとえば、集合債権譲渡担保契約を交わしたといっても他の当事者が特例法により第三者対抗要件を早期に債権譲渡登記によって具備している一方で、内容証明郵便で昔ながらの対応をしていたら、そもそも第三者対抗要件の具備が間に合わないであろうし(後略)
このように、昔の指名債権譲渡についての第三者対抗要件の具備や債権管理の枠組みでは対応しきれない場面も出てきている一方で、特例法の債務者対抗要件は同法の要件に従って登記事項証明書を交付して行わなければならないことと、双務契約を締結している当事者間の債権譲渡についての相殺の問題となる場面の差の理解も重要である。

自分が理解を曖昧にしていた点をズバズバ指摘されているような、耳の痛い話のオンパレード。身の引き締まる思いです。


債権回収の“避難訓練”でノウハウの共有化を図る

さらに、田中さんによる耳の痛い話。
本稿をご覧になっている方々にぜひ励行していただきたいのが、このような法的枠組みの変容について、自社の債権の特性を踏まえつつ、部長やスタッフの間で認識の差ができていないかということの確認である。

金融以外の事業会社においては、スタッフ部門においても債権回収の仕事を非常時の突発的業務と捉え、「ことが起こったらそのときに関係各部と一緒に知恵を絞って、なるべく低コストで保全・回収ができればしめたもの」ぐらいの意識でいると思います。

普段から上述引用部のようなレベルで近年の法改正・判例の変容を関係者全員で共有し、債権回収の方針、具体的な対抗要件具備手順などをすり合わせできている事業会社など、ほとんどないのでは。

「スタッフ部門がそんな姿勢でいる時点で勝負ありだぞ」といわんばかりの田中さんの叱咤激励に、反省しっぱなしの私。

災害の“避難訓練”のように、倒産情報にすばやく反応し、連携対応できるような債権回収訓練を企画してみようかと思っています。

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【本】「俯瞰」でわかる決算書―簿記・会計の知識がなくても企業の目利きを体感できる本


レバレッジシリーズの本田さんつながりで興味を持ったこの本。


著者中村亨さんは、本田さんが懇意にされている公認会計士。本田さんが関わる複数の会社で監査役を務められています。


決算書を使った企業の「目利き」を体感する

決算書の読み方本はもう出尽くしただろうと思っていましたが、分かりやすさというものは常に進化し続けるものなんですね。

この本の分かりやすさのポイントは、タイトルにもある「俯瞰」。

三井物産vsヤフー、伊勢丹vsファミリーマート、伊勢丹vs三越、全日空vs日本航空、ソニーvsキャノン・・・と、実在企業のBS、PL、CFを教材に、

・PLで言えば、収益−費用=利益を基本に、特に利益の増減の
 質の良し悪しをどのように見極めるのか、

・BSで言えば、資産=負債+純資産となる原則を理解した上で、
 特にビジネスの「元手」である純資産に軸足をおいて、負債
 や資産とのバランスの良し悪しをどのように見極めるのか、

・CFで言えば、営業CF、投資CF、財務CFそれぞれのプラス・マ
 イナスの意味を理解した上で、営業CFで得たキャッシュの使
 い道として、投資CF、財務CFの増減の質の良し悪しをどのよ
 うに見極めるのか、

・PL、BS、CFという財務諸表同士がどのようにリンクしている
 のか、

様々なレイヤーの俯瞰視点での決算書の見方を、財務諸表3表をスムーズに渡り歩きながら教えてくれます。

細かい簿記や会計の知識はなくても、大雑把に見てこの会社は大丈夫、この会社は危ない、という目利きのポイントが体感できるようになっています。

(残念ながら、この本の知識「だけ」ではあまりに細部を端折り過ぎているので、さすがに実戦は無理です。何度か申し上げていますが、やっぱり簿記は勉強しましょうね。)


私としては、初心者がつまずきやすいBSの説明を、純資産を軸にして説明することに振り切っている点が、ビジネス感覚溢れる中村さんならではの良さであり、この本の最大の特色と評価しています。

「仕事では決算書を使ったことがないので、簿記や会計の知識がどのように役立つのか実感が湧かない」という方こそ、まずはこの本で決算書の活用の仕方を体感してみることをお勧めします。そうすることで、普通にはじめるとつまらなくて続かない簿記や会計の勉強が、ずっと面白く感じられることでしょう。

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chapter11 いい気分♪ ・・・嘘です。


すみませんタイトルは悪い冗談でした。っていうか、「セブンイレブン〜いい気分♪」のコマーシャル自体をご存じないお若い方も多いでしょうから、冗談であることすら伝わってないかも。


金融業界に溢れる人材

リーマン、AIGが大変なことになっている件については、私が何を申すまでもないですが、ひとこと言えるのは、リーマンにお勤めの1,300人のサラリーマン・・・ってそろそろいい加減にしないと怒られそうなのでここまでにしておきます、が流出するだろうということ。

弊社にも何人か転職の相談にお見えになることでしょうけれど、なまじ現年収とやっていた仕事のレベル(スリルや緊張感も含めた)が高すぎるだけに、納得のいく転職先を見つけていただくのは至難の業かもしれません。

そして、あくまでも「もし」と言っておきたいですが、AIGも「そう」なっちゃった場合には、金融業界に大変な人数の人材が溢れてしまうことになります。AIGはいわゆる代理店も数多く存在するので、雇用への影響もかなり甚大かと。

取り急ぎディスクロージャー資料でAIGグループの国内の全従業員数を調べてみたのですが、

AIU     1,989人(2006年度)
アメホ      891人(2007年度)
ジェイアイ    161人(2008年3月)
ALICO   8,138人(2007年度)
AIGスター  4,510人(2007年度)
AIGエジソン 5,544人(2007年度)

ということで、代理店を除いても合計21,000名あまりの雇用に影響がでるかも、というお話です。

山一のときも、優秀な人材が散らばっていったという話はありましたが、それとは比較になりません。

あ、山一で思い出しましたが、バンクオブアメリカに吸収されるメリルリンチの日本法人って、山一の従業員さんを引き継いで立ち上げたんでしたね・・・こちらもなんともほろ苦いことになっております。


chapter11の思い出

債権者としてchapter11を食らった思い出は何回かあります。

いまでも忘れられないのは、「白い封筒」です。

日本で言うところの管財人からの通知&債権の届出手続きの案内文書が、chapter11の場合は(当たり前ですが)アメリカから、不思議なツルツルの白い封筒でどっさりと来ます。

冒頭に管財人の弁護士名があり、その後英文でダラダラとここに至る経緯や債権者リストがついていて、手続きのご案内があるといったような内容なのですが、日本と違って何よりも文書量が多いこと。だいたい5cmはあったかと思います。

当初は会社の中にもノウハウがなく、商社出身の経験豊富な先輩社員にお伺いしたり、高木先生のchapter11解説書を片手に、債権者としての権利がほとんど何も無いことに憤りを感じながら、手続きを頑張っていた思い出があります。


定型化されてるのでしょうが、弁護士名が違えど、どこからくる文書も同じ紙質の不思議な封筒、そして同じ体裁。そして債権者にはもはや打ち手がないchapter11という結末。

あの分厚くてツルツルの白い封筒が山のようにアメリカから日本の郵便局を経由して大手町あたりを中心に飛び交うかと思うと、切なくなってきます。


参考:
高木先生の本はどうやら絶版のようなので、今入手できるものとしてこちらをご紹介しておきます。


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倒産を読むための情報源


倒産が起きるときに、与信管理・債権回収でババを引かないためには、その予兆を含め情報をなるべく早く、適切に集める必要があります。審査部門の腕の見せ所と言ってもいいかもしれません。

参考になるかわかりませんが、私の倒産情報源をご紹介します。読者の方で審査部門在籍の方にも、コメント欄やトラックバックで有益な情報源をご披露いただければ幸いです。


1)帝国DB倒産情報

負債1億以上の倒産やその動向については、帝国DBのTEIKOKU NEWS ONLINEというサービスでチェックします。倒産企業の債権者リストも入手できるので、連鎖倒産もある程度警戒できます。
こちらは有料(¥68,250)の『日刊帝国ニュース』を契約すると使えます。
TEIKOKU NEWS ONLINE

有料サービスを契約しなくても、負債総額30億以上の大型倒産に限り、無料でRSS配信してくれるサービスがあります。
帝国データバンク大型倒産速報

昔は目を皿にして新聞をチェックしてましたが、その必要はなくなりました。


2)IR情報

気になる企業は、上場企業であればIR情報をチェックします。

とは言え、単純な赤字転落、債務超過ならすぐに発見できても、よく見るとヘンな資本政策をとってるとか、なにこの社債発行?とか、取締役の辞任とか、監査法人の変更とか・・・数多あるIR情報の中から予兆を漏らさず見つけるのは大変です。

そこで頼りにさせて頂いているのが個人のblog。
最近は特に、『ちぎっては投げ』さんが抜群によいです。
ちぎっては投げ

少なくとも東証の適時開示は漏れなくチェックして分析されている様子。
プロフィールがないのでどんな方なのか分かりませんが・・・単なる個人投資家とは思えない執念とバイタリティです。尊敬しながら勝手にこんな目的で利用させていただいています。深謝。


3)株価動向

株価だけを見ても何もわかりませんが、火のないところに煙は立たぬといいますので、株式値下がり率ランキングなどを参考として見ています。
Yahoo!ファイナンス―株式ランキング


4)信用調査機関との情報交換

以前このエントリでも触れたのですが、大口取引先ということもあり、某信用調査機関の担当者と月一で情報交換の機会を持たせてもらっています。
信用調査機関との情報交換

支払い遅延、手形の不渡り、融資引き上げなど、書き物では絶対出てこない、口頭ならではの生々しい予兆情報を入手できます。

耳打ちがあるのは1月20社前後。一見数も収集頻度も少ないのですが、だいたい耳打ちしてもらってから2〜3ヶ月後にそのうちの5社ぐらいに“重大な何か”が起きてます。極めて確度の高い情報源です。


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【本】ここまで知っておきたい債権回収の実務 第3版―もう改版ですか


2006年に出版された第2版を5月にご紹介したばかりでしたが、もう第3版が出版されましたのでお知らせまで。


まだ精読してないので細かな差異は不明ながら、電子記録債権法等新しく施行された法改正に対応した点と、図表が少し増えた点が変更点のようです。

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08年上半期 上場37社リストラリスト


livedoorニュースに上がってたなかなか興味深いリスト。

08年上半期 上場37社リストラリスト

元ソースは東京商工リサーチみたいです。

私の経験則では、リストラしているところがそのまま倒産、という事例は意外と少ないかなと思っているのですけれど、まあ経営不安情報には変わりませんので、要注意です。

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【本】債権回収 基本のき―債権回収の一から十までがこれ一冊に詰まってます


最近、良書にめぐりあう頻度がやけに高くなってる気がするんですが、債権回収というジャンルでこんないい本に出逢えるとは思ってもみませんでした。


「基本のき」どころか、債権回収に必要な知識・ノウハウが一から十まできれいに収められていて、いつかは自分で社内向けに作ろうと思っていたものを、先に作って頂いたような感覚に陥るぐらいの、痒いところに手が届く実践的なマニュアルに仕上がっています。

2部構成になっている本書の第1部は、債権回収の大まかな流れと基本用語をあくまで俯瞰的におさえることを目的としたパート。

見開きで左側に本文があり、その右側に本文中にでてくる基本用語の解説が添えてあります。この構成のおかげで、いくらか知識の有る方は確認程度にさっと読み流すこともできますし、知識が無い初学者でも右側の解説を参照しながら読めばきちんと意味がわかるようになっているわけです。

第2部は、取引の開始から契約、債権管理から回収に至るシーンごとに、このシーンで債権回収担当者として何をすればいいかというHOW TOのパートになっています。

この解説の細かさ、丁寧さが天下一品。
たとえば、取引開始時に商業登記簿謄本を入手するというシーンでは、
・法務局での申請窓口での手順
・実際の申請書フォーマット
・登記印紙の値段等
について解説があり、さらに
郵送で入手する場合には、
)〔涯匹如△△蕕じめ登記事項証明書交付申請書を
 もらってきておく
謄本の枚数が10枚を超える場合を想定して、登記印
 紙を多めに入れておく(用紙に貼ってしまうと、返
 送してもらうのに手間がかかるので、クリップなど
 で止めておくだけにしておく)
J嵜用封筒を同封することを忘れない
の3点に注意しましょう。
なんて感じで、郵送で請求する方法や注意点までもがマニュアル化されているというきめ細やかさ。

土地/建物の登記簿謄本についても、以下のように
・登記簿のどの項目を見て
・何を確認すべきか
が文章だけでなく、実際のフォーマット上に吹き出しをつけて書いてあるのでとっても分かりやすい。
img057


現場や経理部門から何百回となく質問をうける内容証明郵便の作り方・送り方についても、郵便局でどのように依頼すればいいかまで事細かに記載。

サンプルでついている各種契約書(取引基本契約書・根抵当権設定契約書・集合物譲渡担保権設定契約書・連帯保証書etc)、各種書式(残高確認依頼書・弁済証書・相殺通知・代物弁済証書etc)のレベルもかなり高く、実際にすぐに使えるものばかり。

索引がないことだけが唯一の欠点ですが、目次と構成がしっかりしているので検索性には不自由しないはず。

とくに法務や経理1〜2年目位の方でも、これさえあれば債権回収については現場に自信をもって指示・アドバイスできる、すばらしい出来栄えの本だと断言しておきます。

ちなみに、7/23には著者権田さんが講師をつとめるこの本をテキストとしたセミナーが大阪で開かれるようです。ご興味がある方は是非。


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【本】ファイナンシャル・マネジメント―ROEを頂点とする企業審査のフレームワークを学ぶ


先週のヒルトン小田原1泊ツアーで、ホテルのライブラリーに持ち込んで読んでいた本がこれ。


ファイナンスの本は、名著『コーポレートファイナンス上/下』を読んでおけば大丈夫と色々な人や本から見聞きしていて、しばらくそれを盲目的に信じていた私。

でも、この本も早く読んでおけばよかった。
この本のROEの解説を読んで、はじめて腹からROEという指標の価値が腹に落ち、企業取引審査をするにあたっての財務分析のフレームワーク作りに大きなヒントが得られたからです。

ROE
=当期純利益/株主資本
=(当期純利益/売上高)×(売上高/資産合計)×(資産合計/株主資本)
=売上高当期純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ

この式により、経営陣がROEをコントロールする際には3つのレバーがあることがわかる。すなわち、’箴綛癸吋疋訶たりの利益、つまり売上高純利益率、∋藩僂靴浸饂今吋疋訶たりから得られる売上高、つまり総資産回転率、資産の調達に使った株主資本の総額、つまり財務レバレッジである。わずかな例外ケースを除き、経営陣はこれらの指標を向上させれば、ROEを上昇させることができる。
また、これらの業績のレバーと企業の財務諸表が密接に関連していることにも注目して欲しい。売上高当期純利益率は企業の損益計算書の要約であり、総資産回転率と財務レバレッジはそれぞれ貸借対照表の借方、貸方の要約に相当する。これは、このシンプルな3つのレバーが、企業の財務業績の主だった要素をうまく表しているという証拠だということができるだろう。
どんな“初心者向け”ファイナンス本でも必ず触れられている、有名なROEのデュポン等式(デュポンシステム)。

しかし、この本のように、デュポン等式のそれぞれの要素が、PL、BSの借方・貸方の要約となっているんだよ、というな分かりやすい言葉での置き換えまではできていないのが、世の中の“初心者向け”ファイナンス本の実態だったりします。

さらに財務業績のレバーは、トレンド分析に対する論理的なアプローチ方法を示してくれる。意味のある比率に偶然出会うことを期待しながら手当たり次第に計算するのではなく、財務業績のレバーの隠された構造を利用する。図表2-4が示すように、さまざまな比率は財務業績の3つのレバーに分類されている。一番上のROEは、企業全体の財務諸表を示している。中段に示された3つのレバーは、これらの要素がどのようにROEに貢献しているかを示している。そして下段では、貸借対照表と損益計算書の各勘定科目の管理がどのようにに財務業績の各レバーに貢献しているかを、すでに考察した多くの比率を用いて明らかにしている。
roebunkai







そしてROEの有用性を述べているファイナンス本はあっても、上記のように、ROEを頂点としてその構成要素のそれぞれを詳しく財務比率で観察していくことで企業の財務業績評価を行う、というフレームワークにまで落とし込んでいる本は、そうそうありません。

このROEを頂点とした財務業績評価のフレームワークには、大きなインスピレーションをもらいましたので、これをベースに、自分なりの取引企業審査のフレームワークを作ってみようと思います。

財務業績評価だけでなく、株式発行・社債発行などの資金調達の種類や選定の手法、DCF法を駆使した投資の評価やリスク分析の方法についても述べられており、私のような企業審査担当者や財務担当者でなくても、どこかしらで貴重な学びが得られること間違いなしの良書です。

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【本】ここまで知っておきたい債権回収の実務―「回収」部分の法務実務を徹底的に知る


担保の確保や契約といった、債務不履行させないための予防的債権保全よりも、債務不履行が起こっちゃった後の回収実務の詳細解説に振り切っているのが特徴的なこの本。


全262ページ中、約160ページが回収実務に割かれています。

債権回収についての本とはいえ、普通はもうちょっと担保権の解説なんかにページ数を割くんですけどね。そのあたりは他の本に任せますって感じなところが、この本の価値を高めています。

公正証書作成に要する費用、強制執行の費用(強制執行って着手金・報酬金あわせて1〜4%払わないといけないのご存知ですか?)などの費用関係、不動産執行の申立てから弁済金・配当交付までの流れをフローチャートにしてくれるなど、実に細かい回収実務知識がテンコ盛り。

「公証人は全国で約500人」(意外と少な!!)、「動産執行の執行不能率は69%」(スゴ高!!)など、どこで調べたのか分かりませんが、マニアックなネタもところどころ挟んであり、読んでて飽きません。

「回収」の具体的手段の法務解説書としては、以前ご紹介した『債権回収』や『与信・債権回収管理ハンドブック』よりも詳しく、最も細かいレベルでしょう。

さらにダメ押しで、「債権回収と犯罪」という章まで用意されていて、ここでは、債権者が回収時に起こしがちな犯罪という観点だけでなく、債務者側の犯罪も取り上げられていたのが、興味深かったところ。

民事再生法246条に「詐欺再生罪」っていう刑罰が定められているのご存知でした?
ホント最近、無責任な債務逃れとしか思えない民事再生事件にいくつも巻き込まれていたので、久しぶりにこの本を読んで、この罪で告訴してやろうかと思っている次第です(笑)。

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信用調査機関との情報交換


人材業界にいると、採用予定者数の先細り・退職者の増加・労働条件の悪化等のナマの一次情報がご登録者や業界から耳に入るため、取引先会社の経営状態はかなりの確度で先読みできます。

しかし、これらの人事系の話が、業績悪化・経営不安によるものなのか、会社の社風(ドライな人事・離職率の高さなど)に起因するものなのかの見極めは難しいところ。

ですので、取引審査をするにあたっては、ニュース、インターネットその他外部情報と合わせての判断が欠かせません。

そんな中でも、最先端で信用度の高い情報が得られるのが、信用調査機関の方との情報交換の場。

情報の新しさだけでなく、彼らの商品である調査レポートにさえ決して書かれることのない筋の良くない組織との繋がりなど、エグい情報が得られることもしばしば。

やはりというべきか、不動産業界は相当ヤバイ様子。銀行による融資引き上げ等で資金繰り難に陥っている不動産企業の信用不安情報を複数社入手。中には上場企業も。

社名を聞くと、「ああ、やっぱりな」っていう会社だったりするんですけどね。

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【本】債権回収−リース会社の債権回収ノウハウは、ドスが利いてて頼りになります


「初版はしがき」で、著者はこの本の特色をこんな風に述べています。

法理論は別として、まず何をしたらよいのかということを、具体的に紹介しようというのが本書の目的である。
(中略)
そこで本書では、各項目にその解説をするとともに、できるだけ一覧表(チェックリスト)を作成しておいた。要すれば、この一覧表だけ見れば、今何をしなければならないのか、それがすぐ分かるようにしたというのが本書の特色であるといえよう。

補足させていただくと、著者の「法理論は別として」というのは謙遜かなと思います。私が読む限り、実務に偏りすぎず法理論も押さえた記述になっていますので。

で、著者が特色と自負する一覧表というのが、例えばこんな感じ(同書P217より)。

tanpoichiran
一見何の変哲もない担保権の一覧表ですが、「電話加入権質」や「建設機械抵当」といったリース会社ならではマニアックな担保権まで、網羅性高くかつシンプルにまとめた一覧表は意外と存在しないかと。





そして、リース会社ならではの回収にかける執念を感じさせられるのが、第二会社への追求方法についての記述が豊富なこと

私が経験している実務の世界で最近増えているのが、自身は民事再生手続きを申立て債務帳消しを図りつつ、気づけば実態たる会社・従業員は別の会社(第二会社)に移されているというパターン。

さすがに主たる資産まで勝手に第二会社に移転することは、債権者に対する露骨な詐害行為にあたるためやらないケースが多いですが、社長含めそこで働いていた従業員と営業の大部分が第二会社に移され、安穏と生き延びているのを見ると、ほんとに「何かやったろうかコラ」と思ってしまいます。

弁護士に相談すると、だいたい「しんどいから止めておいた方がいいですよ」と諌められてしまうところ。しかし、この本はさすがリース会社が書いているだけあり、
・仮差押
・会社法に基づく事業譲渡の追及
・法人格の否認
・役員個人責任
・法人成り
・名板貸
・代理商
などの法的手段・法理論を使って、第二会社に対し何をどこまで追求ができるかがリストアップされ、6ページに渡りその具体的方策が述べられているという気合の入りよう。

ここまで「追いかける」「回収し切る」という意気込みが感じられる本も珍しく、現実そこまでやるかどうかは別として、私にとってはなんかドスが利いてて頼りになるアニキ分、という感じがする本です。

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【本】与信・債権回収管理ハンドブック−商社審査マンのノウハウは一味違う


Google Analyticsで当ブログのアクセスログを分析したところ、意外にも左上メニューの「審査・財務分析」カテゴリの注目度(クリック頻度)が高いことが判明。

せっかく興味を持って頂いているのに、このカテゴリにはあまり記事を投稿できておらず、失礼致しました。審査・与信は今となっては契約法務よりも私の本業になりつつある分野です。お役に立てるノウハウ・本をご紹介できればと思っています。

まずは、この本をご紹介。
後述するように、かなり実戦的な本になっているので、一通りの法知識を持っている中級〜上級者向けです。


三井物産及びその子会社の審査部門で30年に渡る実務経験を積まれ著者が、その実戦的ノウハウを公開してくれています。

この商社マンが著者というところが重要です。
与信・取引審査という分野のノウハウは、一見銀行などの金融機関が一番ありそうに思えます。しかし、前職時代に商社から出向してきた法務マンに育てられた私は、この分野で大手商社の右に出る者は無いのではないかと思っています。

銀行と違い担保もとらず、国内・海外にかかわらず、時にはどこの馬の骨かも分からないベンチャー企業から物資を大量に買いつけ、それをたくさんのチャネルを通して売りまくるというビジネスを通し、“買い”と“売り”の両面の立場で切った張ったのリスク勝負をして生き抜いてきた中で蓄積されたノウハウは、実戦力という面で一味違うのです。

その片鱗は、たとえばこんなところに垣間見ることができます。
実際によく使われている担保は、次のものです。
(1)保証金
(2)定期預金質権
(3)商品譲渡担保
(4)不動産(根抵当権)
(5)債権譲渡登記
(6)有価証券譲渡担保
(7)相殺(担保的効力)
(中略)
実際のケースでは、一番確実な担保は一番差し出したくない担保です。例えば、保証金は自社の資金繰りに即影響しますから、債務者は一番出し渋ります。
では、債務者が保証金を担保として差し入れるときはどんなときかといいますと、自社の資金繰りにまだ余裕があるときです。つまり業績が下降気味にならないときです。
ここでも、取引先の異変や危険兆候を他社に先駆けて察知する与信管理機能が要求されるわけです。
数多ある“実践的でない与信管理指南書”では、「担保で一番確実なのは不動産です。」で終わってしまいがち。
実際に審査業務をやってみればわかりますが、通常の動産取引や役務提供取引において、銀行でもない単なる一取引先に不動産を担保に差し出す債務者などいません(手間と費用を考えると、債権者としても賢い選択肢ではありません)。
そんなときに、営業担当者・債務者に不動産以外の現実的な担保手段を素早く提示・提案できるかどうか、ここが審査担当者の腕の見せ所になります。

また。回収が遅延したときなどには、営業と取立てに同行することもあると思います。
このとき、営業と一緒にバカの一つおぼえのように「いつ支払ってくれるんですか?」と債務者聞いても仕方ありません。
具体的に債務者に何をヒアリングすれば相手にとってプレッシャーになるのか、さらに倒産兆候を嗅ぎ分けられるのか、このノウハウが必要になってきます。これもどこかに書いてありそうなノウハウですが、意外とどの本にも無かったりします。
1)ここ3〜4ヶ月間の業績、資金繰り実績
2)今後半年程度の業績予想と資金繰り予想
3)不足資金の総額
4)資金不足は一過性のものか恒常的のものか
5)金融機関との交渉経緯と金融機関の対応
6)他仕入先の動き
7)支払手形と金融機関からの借入金の内容の把握
特に3)と7)は重要な質問です。
不足資金の総額のうち、自社債権分が何%かによって、回収スタンスはかなり変わってきます。また、資金繰りが苦しい中で、債務者として後回しができない手形と金融機関からの借入金がどのくらいの割合を占めているかは、倒産リスクを察知する上で、債務者に絶対に回答させるべき質問です。

よく銀行系の研修会社が与信管理・債権回収セミナーと称し3万円位取ってやってますが、あんなものに5回行っても得られないような、上記のような微にいり細にいりなノウハウがたくさん詰まって2,700円。
率直に言ってお買い得です。

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【本】次代を担うネットワークビジネス−たぶんこの著者反消費者庁派


経産省による「マルチ商法」叩き?のエントリを書いた直後、マルチレベルマーケティング(MLM)に関するちょっと変わった本をリアル書店で発見。

現役の国会議員である前田雄吉氏が、ネットワークビジネス事業者側の代弁者として、マルチ商法叩きをする経済産業省やマスコミに対して戦う様を自ら語るというもの。


衆議院の予算委員会議事での自分の発言を3ヵ年分載せるなど、若干議員としての実績宣伝に偏りすぎ?なトホホな部分もあるものの、アメリカ・中国・韓国・ドイツなど、海外のMLMに対する規制事情も調査しながら、日本における特定商取引法によるMLMへの行き過ぎた規制の問題点、誤解・偏見に基づくバッシングの問題点を追求します。

テーマがテーマだけに、読んだ後で変に洗脳されなきゃいいけど、と恐る恐る読み始めましたが(笑)、そこは慶應義塾、松下政経塾を卒業された国会議員だけあり、理性的な主張に終始されています。

彼の主張は、「一部の悪徳マルチのために、大多数のまじめな業者・ディストリビューターを潰してはいけない。」というもの。
間違いとは思いませんが、MLMならではの胡散臭さをどう払拭していくかというアプローチも、もうちょっと提言していただいた方が良かったかも知れません。読み方によっては、単にMLM族議員の自己弁護のように見えてしまうところもあるかも・・・。

ちなみに、前田氏がいう健全なMLMと悪徳マルチの見分け方とは、以下5ポイント。
1)商品流通が主眼か
  消費者が満足しない場合は、返品・解約ができるか
2)過剰在庫が抑制されているか
  組織を退会するディストリビューターに対し、再販
  可能な在庫を会社に返品する機会を与え、購入額の
  少なくとも90%の返金を受ける事ができるか
3)初期費用が低額か
  組織に参加するための費用が低額で、20日程度の解
  約猶予期間があるか。参加と同時に多額の加入金を
  負担させたり、商品購入を要求したりしないか。
4)報酬の源泉がどこにあるか
  支払われる報酬は、組織への加入順位によらず、顧
  客の購入実績によった公平な評価に基づいているか。
5)誇大広告がないか
  「最初の投資の何倍もの収入が得られる」「知人を
  紹介するだけでボーナスがもらえる」など、消費流
  通ではなく儲かる仕組みを強調していないか。

これらは、私が取引先のMLM企業審査でみているポイントと大体重なります。

私が審査する際は、これに「B級・C級芸能人が広告塔になっていないか」っていうポイントも加わります(笑)。これがもっとも手っ取り早く高確率で悪徳マルチを見抜くポイントだったりして。

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経産省による「マルチ商法」叩き?


取引先の審査をする際、個人相手の商売をやっている企業は特に厳しくみることにしています。

特定商取引法違反などのコンプライアンス問題が見つかると、世論にバッシングされ、一気に経営不安にまで陥りかねないのが、その理由の一つ。

そんな個人相手の商売の中でも、マルチレベルマーケティング、いわゆる「マルチ商法」といわれる販売方法をとる企業の取引判断というのは、非常に悩ましかったりします。というのも、特定商取引法に定める「連鎖販売取引」の規制を遵守していれば、合法となりうるからです。

しかし、いくら会社側が合法な販売方法を遵守するよう指導していても、一部のディストリビューターによって違法な販売がなされがちなのが、この商法の弱点。個人相手の商売の中でも、消費者クレームが大量発生し、問題企業化してしまう確率が高いのも事実です。

そんな中でのこのニュース
マルチ商法の大手に対して、経済産業省が特定商取引法違反で業務停止命令を出したのです。

小規模のマルチ・マルチまがいビジネスに対する業務停止命令はあったものの、このレベルの大手に対する業務停止命令は久しぶり。行政としては、かなり思い切った行動に出ています。

消費者庁設置をにらみ、経済産業省として主導権を握っていくべく、社会的なプレゼンスを高めようと、マルチ商法をターゲットにし始めたのでは?

しばらくは、経済産業省によるマルチ商法に対する業務停止命令「乱発」がされるような予感がします。

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あぶない69社リスト

昨日は出張で新幹線に乗っていたのですが、近くの方が読んでいた新聞に「あぶない69社リスト」なる見出しが。

信憑性はともかく、審査マンとしては大変気になる記事。

かえって調べたところ、同新聞系列のwebサイトにその企業のリストが掲載されてました。

あぶない69社リスト(zakzakへのリンクが開きます)

現時点で監査報告書に破綻リスクにかかわる注記がついている企業が、東京証券取引所で38社、ジャスダック証券取引所で31社の計69社にのぼっているとのこと。

早めにこの69社の有価証券報告書とにらめっこしておこうと思います。

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