元企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

_広告・消費者法務

景品表示法対策?街中観察で見つけたおもしろ打消し表示


企業広告の表現の中で、「うちの製品・サービスはこんなにすごいんです!」といった強調表示の下に必ずと言ってよいほど注記されているのが、「※ただし…に限ります」といった打消し表示です。

ヘタな企業の言動はすぐにSNSで炎上してしまう世の中になったことに加え、景品表示法の不当表示規制が強化され、2018年6月には消費者庁から以下のようなまとめ資料も公開されたとあって、企業もこの打消し表示のあり方に、相当敏感になってきている気がします。

打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)[PDF:381KB]

一般消費者に対して、商品・サービスの内容や取引条件について訴求するいわゆる強調表示は、それが事実に反するものでない限り何ら問題となるものではない。ただし、強調表示は、対象商品・サービスの全てについて、 無条件、無制約に当てはまるものと一般消費者に受け止められるため、仮に例外などがあるときは、その旨の表示(いわゆる打消し表示)を分かりやすく適切に行わなければ、その強調表示は、一般消費者に誤認され、不当表示として不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)上問題となるおそれがある。(P1「はじめに」より)


そんな中、ちょっと前なら企業もそんなところまで気をつかわなかっただろうに…というおもしろ事例を2つ、街中で見つけてきました。街中観察メモがてらの事例紹介です。

「←この方はいませんが、素敵な会員がたくさんいます」@ゼクシィ縁結び広告


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婚活サービスの地下鉄ドア貼広告で、タイアップ映画に出演する女優の写真を矢印で指しての一言。ちょっと画質が粗くてすみません。

さすがにこの広告の構成であれば、本来は打消し表示がなくても不当表示にはならないと思われます。しかし、ただでさえ女性サクラ登録者の存在を疑われがちなのが、こうした婚活・結婚相談所の業界です。それを逆手に取り、あえての打消し表示を兼ねた広告メッセージとすることで、左ドアに貼られた映画の広告にも目線を送り、同時に出演女優の美しさも褒めつつ、それでいてクスっと笑えるクリエイティブにしています。

さすがリクルートさん。うまいというか、ウィットに富んでますね。

「※写真はイメージです」@大相撲九月場所広告


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とあるコンビニで見かけた、大相撲九月場所のチケット販促広告。

残念ながら、横綱に昇進してから欠場続きの稀勢の里関。そのせいもあって、せっかくの横綱土俵入りの勇姿も、写真下に悲しい打消し表示が表示されるハメに。

9月場所は進退をかけた場所ともいわれ、現時点で休場が決まったわけでもなんでもないのですが、名古屋場所も休場し、横綱最多休場の記録を作ったとあっては、協会としても安全策としてこうせざるを得なかったのでしょう。

見かけた瞬間は思わず「冗談キツイわ〜(笑)」と笑ってしまったのですが、プレッシャーを日々感じているであろう横綱と大相撲協会の胸中を思うと、切なさすら感じます。

賞金制eスポーツ大会に関する景表法の懸賞景品規制について、法・告示・通達を並べてみた(追記あり)

弊ブログでも話題にしてきた賞金制eスポーツに対する景品表示法の景品規制について、消費者庁のスタンスがだんだんと明らかになってきました。

東洋経済さんが、消費者庁表示対策課の担当者に取材をしたという記事がこちら。

eスポーツの高額賞金、阻んでいるのは誰か(東洋経済ONLINE)

結論から言うと、興行性のあるeスポーツ大会の賞金は「景品類」に該当しないと考えられるとのことでした。前述のようにいくつか質問を用意していたのですが、いきなり1つ目の質問ですべてが解決です。
では、なぜ興行性のあるeスポーツ大会の賞金が「景品類」に当たらないのかというと、大会における上位者のプレーに対する賞金は「仕事の報酬」と見ることができるからです。
「景品類等の指定の告示の運用基準について」には8つの項目があり、5項目の(3)に「取引の相手方に提供する経済上の利益であっても、仕事の報酬等と認められる金品の提供は、景品類の提供に当たらない(例 企業がその商品の購入者の中から応募したモニターに対して支払うその仕事に相応する報酬)」と記載されています。
この5項目(3)により、興行性のあるeスポーツ大会に参加するプレーヤーのパフォーマンスは仕事として認められ、優勝賞金は仕事の報酬とみなされるようになるわけです。

消費者庁としては、むかーし昔に作った通達に「仕事の報酬等」ならOKって書いてあったのを利用して、しかし「興行性のある」というどこにも書いてなかった謎の要件を(そっと)加えて、この範疇に収める解釈を出しておくのが妥当、というご判断のようです。

ゲーム好き一般人として、結論は妥当のように思っていますが、景品規制のあり方としては、法の下の政省府令のさらに下の、「告示」に書かれた言葉の解釈を示した「通達」をさらに消費者庁が解釈したものだけを根拠に違法・適法を論じていることに、少しばかり異常さを感じます。

そんなことを考えながら、懸賞景品規制について法、告示、通達の中から特に関係する文言を並べて眺めてみました。ご入用の方は、こちらからコピペしていってください。

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このまま告示や通達による解釈で乗り切るなら、少なくとも、「仕事の報酬等」「興行性のある」についての要件定義を、告示や通達で出すべきではないでしょうか。それはそれでかなり滑稽な感じがしますが。

なお、告示・通達とは以下のとおりで、法令とは異なるもの。

国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)
第十四条 各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。
2 各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達をするため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる。

今後、高額の懸賞金を供する事業者も現れて立派な経済活動となるであろうeスポーツ業界。このような微妙な行政解釈だけを頼りにビジネスを展開することに、事業者として不安を覚えるのも無理もないでしょう。

「景品表示」法とひとくくりにするのでなく(おそらく今後も必要であろう不当表示規制と切り離して)、これほど解釈も微妙な、そのわりに世界の主要国の中でもかなり厳しめの景品規制がそもそも必要なのか、というところからもう一度考え直したほうがいいのではと思います。
 

2018.3.25 追記

コメント欄にて、「興行性については、経産大臣の国会答弁にもあったようです。ジュリストの最新号の論考にも紹介されてました」との情報をいただきました。ありがとうございます。

早速経済産業大臣の答弁を確認してみました。第196回国会 予算委員会 第7号(平成30年2月7日)の議事録から。

○世耕国務大臣 御指摘のeスポーツは、例えばゲームでやるサッカーの対戦模様とか、そういったものを多くの人で見て楽しむというものでありまして、非常に今盛り上がっていまして、今、全世界で十億ドル程度の市場規模があって、これからも年間一三%ぐらいで成長していくだろうというふうに見ています。

 これは、単に興行としてその大会が盛り上がるだけではなくて、その戦っている映像が例えばユーチューブとかで配信をされて、それがまたビジネスになっていくとか、いろいろな広がりもあって、日本のコンテンツ市場全体の拡大に寄与するというふうに考えています。次期アジア大会でも、競技として取り上げられるというような話も出ているようであります。

 ただ、法律的にいろいろひっかかるようなところがあって、例えば賭博に当たるんじゃないかとか、風営法の届け出が必要じゃないか。これはそれぞれの法律で判断していっていただくしかないわけですけれども、特に景表法、景品表示法にひっかかる。

 要するに、高額商品が出る場合は景表法に抵触するのではないかという指摘もあったわけでありますけれども、これは、経産省も間に入りまして、消費者庁と関連団体の間で整理をさせていただきまして、プロのプレーヤーが参加する興行性のあるeスポーツ大会における賞金は、これはあくまでも仕事の報酬ということで、法律上の景品類には当たらないという形で整理が行われたわけであります。

 そして、さらに、先月、一月二十二日に、今まで三団体に分かれていたのが日本eスポーツ連合という形で一本化をされました。こうやって一本化をされて、今後プロスポーツ化に向けた動きが本格化をすれば、高額賞金が出る大会の開催など、eスポーツの活性化の環境が整っていくのではないかというふうに期待をしております。

 経産省としては、この日本eスポーツ連合と連携を図りながら、eスポーツを健全に発展させて、日本のコンテンツ産業の振興に取り組んでいきたいと思います。

ゲーム業界と古くから結びつきの強い経産省だけに、業界団体がすすめるプロスポーツ化を後押ししたいという思いが詰まった答弁になっており、また本件について消費者庁に対してもかなりの圧をかけていることが伝わってきます。

私が疑問に思っている興行性を要件とする点については「経産省も間に入りまして、消費者庁と関連団体の間で整理をさせていただきまして、プロのプレーヤーが参加する興行性のあるeスポーツ大会における賞金は、これはあくまでも仕事の報酬ということで、法律上の景品類には当たらないという形で整理が行われた」と述べています。「プロ参加」という要素が加味されそうな様子がうかがえますが、これを要件にしてしまいますと、Youtube配信などでゲームだけで生計を立てていくことも可能となった今、ゲームのプロとは何かという答えのない議論に陥ってしまいそうです。

そもそも、景表法担当大臣による発言ではないことも含め、これだけでは今後の業界にとってプラスの方向に影響を与えるものとはならないような気がしますので、やはり正式に消費者庁から告示なり通達なりをはっきりと出していただいたほうがよい(というか、繰り返しですが景品規制撤廃の方向で考えたほうがいい)のかなと思います。

なお、ジュリスト2018年4月#1517は、大江橋法律事務所の古川昌平弁護士によるもの。上記経済産業大臣発言については出版タイミングの関係で軽く触れる程度でしたが、すでにインターネットでも公開されている平成28年消費者庁照会と白石忠志教授の論稿「eスポーツと景品表示法」(東京大学法科大学院ローレビュー、Vol.12 2017.11)をベースに、一般ユーザー観戦大会についてオープン懸賞告示に照らして顧客誘引性がなく適法と解釈することの是非について、さらに検討を深めた非常に丁寧な論稿になっていました。

筆者の理解不足の故かもしれないが、前述のとおり、個人的には、商品又は役務を購入することにより、経済上の利益の提供を受けることが可能又は容易になる場合には、当該経済上の利益は、客観的に顧客誘引のための手段となっていると言わざるを得ないのではないかと考えている次第である。

例えば、ゲームメーカーが、参加資格を高度な技術レベルを有する者に限定したeスポーツ大会を主催する場合に、当該メーカーが成績優秀者に対し提供する賞金は、当該大会に出場し得る者による高度な技術を駆使したプレイを見せるための原資としての性格を有するとは言えるだろう。もっとも、当該ゲームソフト購入後の練習によって一定の技術を習得することはあり得るし、大会への参加を1つの目的として当該ゲームソフトを購入しようとする者は相応にいるのではないか。そのため、当該大会について顧客誘引性が「ない」とすることは困難ではないかと思われる。

この古川先生の指摘については、私も同様の懸念を覚えています。
 

ガチャ確率の開示は法的義務となるか、なった場合ゲームはどうなるのか

 
昨日平成30年1月26日付、消費者庁がガチャ確率表示に関する景品表示法第5条第2号(有利誤認)の措置命令を行いました。以下リリースからの抜粋です。

アワ・パーム・カンパニー・リミテッドに対する景品表示法に基づく措置命令について
イ 実際
  • 本件役務を1回ごとに取引する場合の本件役務の取引1回当たりの「クーラ」と称するキャラクターの出現確率は、0.333パーセントであった。
  • 本件役務を10回分一括して取引する場合の「万能破片」と称するアイテムの出現に割り当てられる1回を除く9回における本件役務の取引1回当たりの「クーラ」と称するキャラクターの出現確率は、9回のうち8回については0.333パーセントであった。

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⑶ 命令の概要
ア 前記⑵アの表示は、前記⑵イのとおりであって、本件役務の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であり、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底すること。
イ 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
ウ 今後、同様の表示を行わないこと。


オンラインゲームのガチャ(ランダム型アイテム提供方式)の確率表示に言及した措置命令としては初めてのものになります。それもそのはず、各社がガチャの確率を表示するようになったのは2年前、ある事件をきっかけに作られた業界ガイドラインの制定が契機となっているからです。

(フィーチャーフォンの一部ゲームを除き)ほとんどのオンラインゲームがそもそも確率を表示していなかったところ、このような自主規制で表示をせざるを得なくなったことにより、不当表示を発生させる可能性も高まってしまったわけです。上記措置命令の対象会社の行為が故意なのか過失なのかはわかりませんが、だますつもりはなかったようなちょっとした表示ミスでもこのような不当表示として法的責任を問われるというのは、本当に大変だと思います。


さて、ここで確認しておきたいのは、現時点ではガチャの確率表示自体は法的義務ではない、という点です。しかし最近になって、世界の流れがガチャの確率表示をまるで法的義務かのように扱ったり、これから立法していくべきという方向に傾きはじめています。このブログでも昨年11月に取り上げたハワイ州でのルートボックス確率開示立法の動き、そしてアプリ業界のルールメイカーとなってしまっているAppleのプラットフォームルール改正によるルートボックス確率開示強制に加え、ワシントン州でも上院議員が法案を提出したとのニュースが報道されているのは、ご存知の方も多いと思います。

もちろん、ゲームといえども有償で行うものについて、消費者保護、特にお金の取り扱いに関する意思能力が未熟な未成年者を保護すべきというバランスを取るためにある程度の規制は必要でしょう。そのバランスポイントとして、確率を表示して未成年者に現実の厳しさを知らしめるというやり方をとるという手法とせざるを得ないのも、ある意味では妥当に見えます。


しかし、ここで不安が生じます。そこで、単純におカネをバーチャルな「箱」に投入してスイッチを押すと「運」にまかせて何らかのアイテムがいずれか出現する、日本流にいえばガチャ、海外流にいえばルートボックスに限定してそうした法的義務を作るだけであれば話は簡単なのですが、ゲームの世界はそんなに単純ではない、ということです。それは、ゲームと名のつくものに「運」を要素に含まないものは、存在しないからです。


「運」の要素を含まないゲームは存在しない、それは本当か?という方には、たとえば以下の書籍が参考になります。



Cailloisは またゲームを4つの区分,そして2つの尺度により分類し,考察を加えている。 4つの区分とはアゴン〔Agon〕,アレア〔Alea〕, ミミクリ〔Mimicry〕,イリンクス 〔Ilinx〕 である。それぞれは競争のゲーム,偶然のゲーム,模擬のゲーム,眩量のゲームと言い換えることができる (Caillois, 1967(邦訳, 2004))。

(中略)

カジノをはじめとするゲーミングは Roger Cailloisの 分類した4つの区分に重なり合う形で存在するが,すべてのゲーミングには必ず偶然が作用することとなるので,図表3-3に示すようにアレア 〔Alea〕 に内包されると考えることができよう。

3-3

(中略)

すべてのゲーミングはアレア 〔Alea〕 に内包される。そして図表3-4にあるように社会機構の外縁にある文化的形成として成立しているが,イリンクス 〔Ilinx〕 的な要素が強まり堕落すると「中毒」つまり「依存症」となる。

3-4


たとえば、こんなオンラインの対戦サッカーゲームがあったとします。

  • 初期状態では11人の選手の能力は全員一緒
  • 対戦して勝ったプレーヤーは、1人だけ自分のチームにスタープレーヤーがランダムに追加され、次の試合に無料でチャレンジできる
  • 負けたプレーヤーも、お金を支払うことで何度でも再チャレンジでき、次の試合に勝てばスタープレーヤーがランダムに追加される

上記引用文献によれば、選手の獲得の場面だけを見ればアレア(運)のゲームのようでありますが、基底にはサッカーゲームのプレイというかなりアゴン(競争)の要素が強くもありますし、勝ち続けるとオールスターチームが無償でできあがっていく様は、ミミクリ(模擬)的でもあります。

さて、ここで問題です。仮にガチャやルートボックスの確率表示が法的義務となった世界において、この対戦サッカーゲームは、果たしてガチャやルートボックスに該当するものと評価されるのでしょうか?

該当するとした場合、課金行動の前に確率を表示せよとなりそうですが、ある選手を獲得できる確率表示は、どのように表示すべきでしょうか?次の試合をプレイして勝つ確率を含めて、コンピューターがその確率を計算し表示できるのでしょうか?できたとして、その確率表示に意味はあるのでしょうか?

未成年者保護、消費者保護のためにガチャやルートボックスの確率表示を法的義務とすべきという議論は、今後も根強く続くと思います。しかし、そこに踏み込むにあたっては、ガチャとそうでないものの境界線が引けるのか、引けたとして技術的に表示が可能なのか、可能として目的に資するか、確率表示義務に萎縮してゲームがゲームとして成立しなくなる可能性はないか、それらについても考えた上で、ルールメイクしていく必要があります。
 

STARWARS BATTLEFRONT2がガチャ規制の虎の尾を踏む

 
米国ハワイ州の複数の議員が、世界のゲーム課金システムの主流となりつつあるガチャ(randomized loot boxes)課金システムをギャンブルに類似するものとして問題視しはじめ、青少年保護を目的とした規制に向けて動きはじめています。

Lawmakers: Those 'pay-to-play' video games are really just gambling for teens(HAWAII NEWS NOW)

Hawaii News Now - KGMB and KHNL

議論の発端となったのは、世界の最大手Electoronic Arts(EA)社がDisneyから版権を得てリリースした「STARWARS BATTLEFRONT2(SWBF2)」。私もPCゲームは好きなので多少やるのですが、同作は、ルーク・スカイウォーカーやダース・ベイダーなどの人気キャラクターを、最初から使わせない「キャラクターアンロック」システムを採用。苦労してアンロック(解放)したキャラクターを強化するガチャ課金へと強く誘導しているのでは、という批判が高まっています。

私たち日本人になじみが深いこれまでのガチャ課金システムは、“課金をして仮想通貨を購入し、ガチャを回せば強い能力をもったアイテム・キャラクターが数%の可能性で手に入るが、課金をしなければ決して手に入らない(あきらめるか、仮想通貨が無償配布される日を待つか)”、というものです。

他方日本以外の国では、こういったガチャ課金システムはユーザーから受け入れられず、明確な法的規制をしているのは韓国・中国等一部の国だけにもかかわらず、導入されているゲームは多くありませんでした。代わりに主流となっていたのが、ガチャアイテムをスキンと呼ばれる着せ替えコスチュームに限定したタイプの課金システムです。近年人気のOverwatchなどは、このタイプに該当します。

これに対し、最近になってEA社が積極的に取り入れ始めていたのが、“長時間プレイすることでリワードポイントを貯めてアイテム・キャラクターを入手するか、それがいやならガチャ課金で運を天に任せるか”という二択を迫る課金システムです。

中でもSWBF2は、人気キャラクターが使えるようになるまでの時間が1キャラクターあたり約40時間、人気の7キャラクターすべてアンロックして使うためにはおよそ300時間、かつそれらキャラクターをアンロックしても、その能力を強化するアイテムを手に入れるためにガチャ課金をしなければならないという、過酷なゲームバランスを採用。Disney社の人気IPゲームとして注目を浴びただけに、ガチャ課金圧が強すぎ、もはやギャンブルではないかという批判が集まってしまいました。あまりに批判が強かったからか、それとも何らかの圧力が働いたのか、最近になってEA社はユーザーに謝罪し、ガチャ課金を休止してアンロック時間も短縮するという対応を始めています。

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ここ日本では、消費者庁によって(コンプガチャは違法だが)ガチャ課金というアイテム販売方式そのものは景品表示法上違法ではないと判断され、公式な見解もでています(「インターネット上の取引と「カード合わせ」に関するQ&A」Q16など)。その後も、何度か問題となる事案が発生しながらも、業界団体によるガチャの表示に関する自主規制の努力が続いています。この表示さえ適正であれば、警察も賭博規制をしようという動きは今のところありません。

今回問題が勃発している米国でも、これまではガチャ課金を直接法規制しようという動きは見られず、自主規制団体のEntertainment Software Rating Board (ESRB)も、「ガチャ課金はギャンブルとはみなしていない」というコメントを一部メディアに表明していたところでした。

冒頭リンクの現地テレビ局リポーターによれば、ハワイ州の議員らは、カリフォルニア州やミネソタ州等の議員を巻き込んで規制に向けて議論を進めているとのこと。これが全米に広がっていくのか、ハワイ州にとどまった議論となるのか。しばらく注視が必要と思われます。
 

「消費者契約法見直しに関する説明会」に出席してかえって不安が増すばかりの企業法務担当者たち

 
心配ごとをむやみに増やしても疲れるだけなので、将来の法改正については改正法が実際に成立してからキャッチアップするぐらいの距離感でいたいところですが、ひょんなことから、ECネットワーク沢田様他有志のみなさまが主催する「消費者契約法見直しに関する説明会」に出席。そして案の定、心配ごとが増えてしまいました。その説明会について報道した日経新聞の記事がこちら。

広告も「勧誘」に、企業側が懸念 消費者契約法改正で(日経新聞電子版)
消費者契約法の改正を巡り、三井不動産、楽天など大手企業の法務担当者有志が10日都内で説明会を開いた。政府の消費者委員会専門調査会が8月にまとめた中間報告では、契約を取り消せる「勧誘」の対象に広告を含める案などが盛り込まれた。説明会では広告に書いていないことを理由に返品を求める事態が頻発するなど、企業活動に影響が出ることを懸念する声が相次いだ。

当該説明会で説明の対象となったのが、この「中間とりまとめ」と呼ばれる文書です。

中間とりまとめ(平成 27 年8月 消費者委員会 消費者契約法専門調査会)
消費者委員会 消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ」の概要

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見直し対象の項目については、中間とりまとめの目次から。


第2 総則
1.「消費者」概念の在り方(法第2条第1項)
2.情報提供義務(法第3条第1項)
3.契約条項の平易明確化義務(法第3条第1項)
4.消費者の努力義務(法第3条第2項)
第3 契約締結過程
1.「勧誘」要件の在り方(法第4条第1項、第2項、第3項)
2.断定的判断の提供(法第4条第1項第2号)
3.不利益事実の不告知(法第4条第2項)
4.「重要事項」(法第4条第4項)
5.不当勧誘行為に関するその他の類型
6.第三者による不当勧誘(法第5条第1項)
7.取消権の行使期間(法第7条第1項)
8.法定追認の特則
9.不当勧誘行為に基づく意思表示の取消しの効果
第4 契約条項
1.事業者の損害賠償責任を免除する条項(法第8条第1項)
2.損害賠償額の予定・違約金条項(法第9条第1号)
3.消費者の利益を一方的に害する条項(法第 10 条)
4.不当条項の類型の追加

第5 その他の論点
1.条項使用者不利の原則
2.抗弁の接続/複数契約の無効・取消し・解除
3.継続的契約の任意解除権

といった内容になります。

説明会当日は、改正の契機とされている「社会経済の変化」や「裁判例」といわれるものが、はたして立法事実として評価されるほどのものなのか?という点に質問や疑問が集中しました。企業側のみなさんは、かなり冷静かつロジカルに質問を重ねていたものの、説明役の消費者長参事官補佐の方の回答は「委員の方からもいろいろなご意見が出る中でですねぇ」を繰り返すばかりで判然とせず、かえってこの議論の行く末に不安を感じさせたように思います。立法事実足り得ない「漠然とした不安」「一部の消費者の声」だけをもとに、論点整理の方法も方向性もあいまいなまま抽象的な議論が消費者委員会で繰り広げられ、それに困った事務局が時間切れでエイヤと文書にとりまとめた。おそらくそのような状況と見て間違いないようで、まあ事務局の方も本当に大変だとは思うのですが・・・。


私からの意見としては2点。まず日経記事でもフィーチャーされている「第3 契約締結過程」における勧誘規制と不利益事実の不告知について。これ、導入しても真面目な企業の手間を増やしこそすれ、消費者保護においてはほとんど効果はないんじゃないでしょうか。たとえば、この写真を見てください。

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これは、先日私がマレーシアに行った際に立ち寄ったフローズンヨーグルト屋さんに貼ってあったポスターです。今なら買ったらおまけが付くよという他愛もない広告なんですが、この程度の広告にもほぼ例外なく、写真の下2行にあるようなディスクレーマーが律儀に記載されています。

The image shown is for illustration purposes only.
Subject to terms and condition.
While stock last.
Not valid with other promotion.

なんとも滑稽で思わず写真を撮ったわけですが、後で調べてみるとマレーシアは広告規制が極端に厳しい国だそうで。消費者委員会のみなさまが理想とする勧誘規制が実現された「パラレルワールド」がアジアにあったというわけです。さて、果たしてこれが望ましい広告の姿なのでしょうか。そして、消費者委員会が問題視なさっている契約トラブルがこれによって解決するのでしょうか。企業にいたずらに負担をかけて溜飲を下げるのではなく、それを徹底することで意味や効果があるのか・消費者保護に資するのかを想像して議論されたほうがいいのではと思いました。

もう一つが「第4 契約条項」における不当条項規制の強化。こちらはいずれもすでに各業法・特商法・現行消費者契約法によって課された規制に屋上屋を重ねるようなものにしか見えません。規制対象例を見ると、インターネットなど電子商取引で用いられる定型約款を意識した例が多く、実務にかなりの影響を及ぼしそう。しかし、定型約款といえば、この数年間の民法(債権法)改正で議論が尽くされ、現行消費者契約法のワクを超えない規定としてまとまったはずの論点です。あの議論を再び蒸し返し、民法改正法(案)でようやく決まった「合意をしなかったものとみなす」を超えて「無効とする」規制を足すのでしょうか?影響の大きさに比して、議論のきっかけもまとめ方もあまりに雑な気がしました。


いずれの点も、今のままの抽象的な議論で曖昧な規制強化がなされるようなことがあれば、一般の真面目な企業の体力と競争力を削ぐだけに終わり、一方で消費者委員会が問題視する悪徳業者層はこれまで同様そのような規制をものともせずに営業を続けるという、目的であったはずの消費者被害の撲滅には一切寄与しない法改正となってしまいそうです。
 

【本】『景品表示法 第4版』― 景表法の基本書「緑本」の読みにくさを乗り越えるコツ


景表法の基本書、通称「緑本」が、昨年の大改正を反映してようやく改版されました。


景品表示法〔第4版〕
真渕 博
商事法務
2015-08-07



ここ数年、特に不当表示分野の問題が相次いで発生したことを受け、平成26年の2回に渡る改正で企業内の表示上の管理義務の強化および課徴金制度の導入がなされました。これらを反映し、第3版より60ページほどボリュームアップしています。法改正部分以外の記載については、Q&Aの拡充を除いて(第二版 → 第三版に見られたような)大きな変化はありませんが、BtoCな企業法務の方にとってはマストバイでしょう。

マストバイと言いながら、ここ毎年アップしている「法務パーソンのための基本書ブックガイド」や昨年12月に書いた「広告・キャンペーン規制の学び方 ― 景品表示法の規制強化に備えて」等の記事で改版前の本書を軽くご紹介した以外では、弊ブログではこの本を単体でご紹介したことはありませんでした。というのも、その味気なさ・読みにくさは否定できなかったからです。

もっとわかりやすい景表法の本はないものか・・・と、他の概説書やQ&A本も読みましたが、結論としてはやはり景表法を使って仕事をする方にとっては、本書は必携と言わざるをえません。というのも、景表法は条文にほとんど中身がなく、むしろ法令の委任を受けた内閣総理大臣および消費者庁(旧公取)が発出する告示や運用基準をどう読みこなすかが問題となるから。その点に関する情報量が最も多く、そしてなにより規制する当局たる消費者庁在籍の方々が、指針に明文化されていないニュアンスを補足しているという点で、本書の右に出るものは今後も誕生し難いということになるでしょう。

さて、問題の、本書の読みにくさを乗り越えるコツとしては、“見出し項目の階層ルールのわかりにくさに惑わされない”ことだと思います。以下ご覧になって分かるとおり、同じカタカナ・アルファベットを使いながら括弧( )の有り無しでの実は階層が異なるというのが、地味に本書の読みにくさを生んでいるところなんじゃないかと。

1 タテ数字
 (1) 括弧付タテ数字
    ア  カタカナ
     (ア) 括弧付カタカナ
        a  アルファベット小文字
         (a)  括弧付アルファベット小文字
              ヾ歐字


この階層ルールをしっかりと頭に入れた上で、一番重要なタテ数字の見出し項目に付箋を貼り、その大きな見出し構造を強く意識して現在地・テーマを見失わないようにしながら読んでいくと、結構読みやすくなるのでおすすめです。

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私は、タテ数字の大見出しに赤色の付箋を貼り、さらに実務をやっている中で頭から抜け落ちがちな告示・運用基準等の各論部分に触れている部分にピンク色の付箋を貼っています(黄緑色の付箋もいくつか写ってますが、これは第3版と第4版に差異があったところです)。

広告・キャンペーン規制の学び方 ― 景品表示法の規制強化に備えて

 

商品・サービス販売促進のための広告やキャンペーンを実施しない企業は、ほとんど存在しません。そのわりには、景表法を始めとする法令・規制の理解に自信がないという方、法務パーソンを含め結構多くないでしょうか?

公正競争規約があるような業界ですと、決まった型みたいなものができているのかもしれませんが、比較的新しいIT系やウェブサービス業界に身を置いていますと、苦手、もしくはほとんど意識や対策をしてない方も少なからずお見受けします。

そんな中、ご存知の通り景表法改正により規制・取り締まりが強化されようとしています。しょうがない、じゃあ勉強しようかと重い腰を上げようにも、なかなか良い書籍・テキストが見当たりませんし、定評あるセミナーにもお目にかかったことがありません。そこで今回は、こういう順番・フレームワークで捉えると理解しやすいんじゃないかな?と私が考える学び方と、それをサポートしてくれる情報源をメモしたいと思います。


1 商売の流れを意識して当てはめを考える


広告・キャンペーン規制を学ぶ際の入り口のコツとして、商売の流れを意識して適用される規制を検討するとよいと思います。

たとえば、景品表示法を例に上げると、同法は3条で過大な景品類を提供することを、そして4条で不当な表示をすることを規制する法律となっています。一方で、実際の商売の流れは法律の建て付けとは順序が逆で、商売の前半フェーズでは言葉巧みに新規顧客を誘引しようとする点、不当表示規制を検討するウェイトが高く、後半フェーズでは商品・サービスまで辿り着いてはいるものの購入を迷う人の背中を+αでもうひと押しようとする点、景品規制や値引きの妥当性を検討するウェイトが高くなります。真ん中のフェーズでは、その両方を意識する必要があり、その分危ない場面や規制の見落としの可能性も増えがちになる、というわけです。

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このように、商売の流れの中での現在地を意識して法令・規制の当てはめを考えると、必要な情報の検索もしやすくなります。

2 体系を捉えてから各論を深堀りする


さて上記1のように大きな枠で規制の焦点を合わせた上で、具体的な中身を学習していきます。ここで、景表法の書籍を1冊でも読んだことのある方は、次々に飛びだす景表法用語とその複雑な構造に面食らった覚えがあるはずです。面食らったまま終わらないために重要なのは、各規制の体系を把握した上で、それぞれの各論を深堀りすること。あらゆる勉強法の鉄則ですね。

そして体系を理解するには、本当は自分で手を動かして図を書くと良いのですが、今回は参考に、私が作ったものを貼っておきます(まとめ方はこれに限らずいろいろあると思います)。

(1)広告(表示)規制の体系

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体系図で見ると分かる通り、広告(表示)規制の奥深さは、景表法だけでなく他の法律にもまたがっているところにあります。景表法は禁止義務のみを規定しますが、特商法や資金決済法には逆に表示を義務付ける規定もあります。さらに、商品・サービスによっては、食品表示法や薬事法や宅建業法などの業法に定められた規制・義務もチェックしなければなりません。

この広範さが、広告(表示)規制の面倒なところなわけですが、体系を抑えておくことでリスクのアンテナは立つようになるはずです。

(2)キャンペーン規制の体系

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景品・値引き・アフターサービス・付属品といった、+αのメリットを訴える販促手法は、意識しないと表示規制に気を取られて見落としてしまいがちなところ。冒頭タテ1で述べたように、広告(表示)規制とキャンペーン規制を二分する意識をもちながら、重なりがあるところでは見落としがないようにするのも大事です。

その上で、景品キャンペーン規制を深掘っていきます。図をみてわかるとおり、景品キャンペーンにはかなり細かな規制の枝分かれがあるのが特徴。ですが体系を先に把握すると、細かな規制を記憶するスピードもアップするはず。具体的には、景品類の提供には「懸賞による提供」/「懸賞によらない提供」の大きく2つの方法しかないことを知っていると、その下にそれぞれぶら下がっているいくつかの例外(カード合わせ、オープン懸賞、試供品等の総付適用除外)も、理解と記憶がラクになります。

3 苦手意識を抱きやすい3つのポイントをあらかじめ知っておく


本稿はあくまで「学び方」を解説するものですので、あまり各論について解説するつもりはなかったのですが、景表法で初学者がよくつまずくポイントに3点だけふれておきます。すでに苦手意識を感じてしまった方は、この3点をクリアするだけでも、視界がかなり変わるんじゃないでしょうか。

(1)混同しがちな「優良誤認」と「有利誤認」を区別するコツ

優良誤認:商品・サービスの内容を実際よりも著しく優良であると示す表示
有利誤認:商品・サービスの取引条件(価格等)を実際よりも著しく有利であると示す表示

「優良」と「有利」という言葉が似ているため、慣れないとどっちがどっちかわからなくなります。ここでは下線部の「内容」「取引条件」をセットで覚えるのがコツ。そこを意識すると、たとえば不実証広告規制ってどっちに及ぶんだっけ?と考える際にも、「商品の内容に関してウソをついてないか」が試されるから優良誤認に及ぶ、というように有機的に覚えられます。

(2)「懸賞」と「総付」、それぞれに定められた限度額はとにかく記憶

商品・サービスの購入者の一部に抽選や競争の結果で景品を与えるのが懸賞。
商品・サービスの購入者全員に漏れ無く景品を与えるのが総付。

そこまでは誰もがカンタンに覚えられるのですが、景品提供方法それぞれの景品最高額・限度額が頭に入らない人がいます。これに関しては覚えるか覚えないかの問題で、この2つの表を頭にいれるしかありません(消費者庁ウェブサイトより)。いつかは覚えなきゃいけないので、観念して早めに覚えてしまいましょう。

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(3)「値引き」は原則自由だが、「二重価格規制」の落とし穴に注意

有効な販促手法の一つである「値引き」は、みなさんの身近にあるスーパーマーケットなどでも行われているとおり、正常な商慣習に照らして認められるレベルであれば、規制はかかりません(割引券としての配布方法によっては景品規制に抵触したり、独禁法上不当廉売にあたる場合あり)。

しかし、過去の販売価格や虚偽の定価等と比較した値引き額を表示して販売すると、今度は表示規制である「二重価格規制」に抵触するケースがでてきます。値引きすること自体は悪いことではないが、比較対照している価格が適切でないと不当表示として問題となる、というわけです。ここで、景品規制→値引き→表示規制と、体系のスキマをまたいで規制を考えなければならないところが、思考回路ができるまではちょっと混乱するかもしれないところです。

さらに、過去の販売価格と比較する場合、その比較対象となる値引き前の表示金額は「最近相当期間にわたって販売されていた価格」でなければなりません。この「最近相当期間」と認められるための条件が難しい。ガイドラインに文字で書いてあるものの、読んでいても普通の人はわからないはず。そんなときはこのフローチャートが頼りになります(後掲『景品表示法〔第3版〕』P92より)。

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補:新しいマーケティング手法に対する規制


広告・キャンペーン規制の奥深さは、新しい手法がどんどん開発されるのに対し、法律がそれに追い付ききれてないところにもあります。本稿では触れませんでしたが、
・検索連動広告
・アフィリエイト広告
・リワード広告
・フリーライドマーケティング
・ステルスマーケティング
と、次々生まれるマーケティング手法に、法務としてどう対応していくかも重要なテーマとなっていくでしょう。この話は、またどこかでご披露できればと思います。

情報源


最後に、情報源として、参考文献、ウェブサイト、告示・ガイドラインのリンク集を置いておきます。

◯参考文献
冒頭述べたように、広告・キャンペーン規制はこれ一冊でわかる!という文献がないのですが、私が読み漁った本の中からいくつかピックアップしてみました。

▼『景品表示法〔第3版〕』


これは持ってないとお話にならないです。消費者庁編著で、一見告示やガイドラインを踏襲しているだけのように見えるのですが、ところどころ二版→三版で書き加えられたところや、消費者庁見解より踏み込んだ記述があります。その記述の存在が見抜けるようになれば、中級レベルは卒業と言えるでしょう。

▼『広告表示規制法』


この本はご存知ない方も多いかもしれません。750ページを越える厚みをもち、不当表示規制の分野についての網羅性はピカイチです。業法における広告表示規制の一覧が掲載されているのが貴重。さらに外国の表示規制までも紹介されています。

▼『その表示・キャンペーンは違反です』


特に景品規制について、規制の背景や趣旨、そして実務での景品のバリエーションに深い理解のある実務家が平易な言葉で解説。ポイント制・値引きとのすみわけもよくわかります。ただし出版後かなりの時間が経過しているため、改正部分は自分で補完しながら読む必要があります。

▼『広告法務Q&A』
広告法務Q&A
公益社団法人 日本広告審査機構(JARO)
宣伝会議
2014-09-29


先月弊ブログでも紹介しました。最新の景品および広告表示の両面のネタが取り上げられています。

◯ウェブサイト
上記の本が改訂されるまでは、以下で最新の情報をアップデートしましょう。

消費者庁ウェブサイト 景品表示法
弁護士植村幸也公式ブログ: みんなの独禁法。

◯告示・ガイドライン
景品表示法は、告示・ガイドラインが複数存在しており、どれがどの規制のガイドラインか覚えるまで大変ですが、条文にないルールがすべてこちらに書かれていますので、面倒でも都度これらに当たって確認する必要があります。

不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件
景品類等の指定の告示の運用基準について
景品類の価額の算定基準について
懸賞による景品類の提供に関する事項の制限
「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準
一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限
「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について
インターネット上で行われる懸賞企画の取扱いについて
不当景品類及び不当表示防止法第4条第2項の運用指針 ―不実証広告規制に関する指針
不当な価格表示についての景品表示法上の考え方
比較広告に関する景品表示法上の考え方
見にくい表示に関する実態調査報告書(打ち消し表示の在り方を中心に)
No.1表示に関する実態調査報告書
インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項
オンラインゲームの「コンプガチャ」と景品表示法の景品規制について
インターネット上の取引と「カード合わせ」に関する Q&A


以上、私自身手探りで学んできたところをつらつらと書いてみましたが、同じような境遇でお悩みやお困りを抱えた方に、ちょっとだけでもお役に立てれば幸いです。
 

【本】広告法務Q&A ― ここに広告があるじゃろ?

 
JAROってなんじゃろ〜 ← 年がバレる

JARO(ジャロ)こと日本広告審査機構×宣伝会議から出版された、由緒ただしき広告法務のQ&A集です。
9月末発売の新刊になります。


広告法務Q&A
公益社団法人 日本広告審査機構(JARO)
宣伝会議
2014-09-29



特徴1:デカい。


大判です。
Amazonの写真だと大きさがわからないので、広告法務分野の必携書『景品表示法』と並べてみました。

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しかし、このデカさのお陰で、Q&A1問=1テーマあたり4段×見開き1〜2頁にまとまっており、読みやすくかつ情報量も確保できています。図表はそれほど多くはないですが、要所要所は抑えてられている感じ。最近のマイブームである(仕事とは関係ない)医療法の広告規制なんかは、いつぞやのBLJでTMIの先生方が文章で一生懸命説明していた内容が、シンプルな表1枚にまとまってました。

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特徴2:ネタが新鮮で絶妙


さすが、広告に関する相談を日本で一番受けているのであろうJAROさんだけに、取り上げられているネタが新鮮。しかも、法令では必ずしもシロクロはっきりしない微妙なスキマ論点を数多く拾ってくれています。私のお気に入りQのいくつかをピックアップしてみました。

  • タレントに自分のブログで商品を推奨する記事を書いてもらう場合には
  • 使用前と使用後の体験者が別人ではないか
  • 医療機関のウェブサイトの内容には規制があるのか
  • 「No.1表示」の根拠が4年前の調査データだが問題ないか
  • 「0円」「無料」等を強調していながら、実際には条件があるという広告は、法的に問題はないのか
  • 買い取りの広告で最大級表現をうたうことができるか
  • 人気タレントのCDを購入すると付いてくる握手券は景品となるのか
  • 著名な建築物が写っている写真を広告に使用する場合は
  • 宅配弁当で「高血圧食」のような特定疾病名を商品の名称に使用できるか
  • つながりやすさをうたったスマートフォンの広告・表示のルールは
  • 高校野球の優勝セールやプロ野球日本シリーズ優勝セールなどを表示する場合
  • 子供向けの広告における配慮のポイント
  • 売上の一部を義援金として寄付する場合、広告表示における留意点は
  • 広告の制作において、意図しない苦情を避けるために注意する点を教えて欲しい
  • ツアーのパンフレットの写真に「写真はイメージです」と表示すれば誤認はないのか

法令から答えがクリアに導ける・書籍として書きやすいQだけを取り上げたような「ヤラセQ&A本」とは一味違いますね。


特徴3:法令資料が(意外に)便利


背表紙側から法令資料が引けるようになっています。

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私、法律書籍でこういう風に巻末に法令載せてるのって、基本的に好きではありません。ページ数稼ごうとしてるのが見え見えですし、そんなの自分で六法引きますから、と思ってしまうタイプです。

でも広告法務の分野に限っては、これは便利だなと今回思いました。この分野って、法令以外の告示・ガイドラインが特に多いから。消費者庁等のウェブサイトにまとまっているとはいえ、PDFでしかもそれぞれのフォントや体裁がバラバラで読み難いんですよね。特に景表法はいくつかの告示をまたがって原文にあたる事が多いので、これ1冊手元にあると一覧性が高くて便利だと思います。
 

【本】インターネット消費者相談Q&A[第3版] ― 「利用規約の作り方」本は高すぎるというあなたへ

 
本日夜、雨宮先生が講演される「シード・アーリースタートアップのためのウェブサービスを支える「利用規約」の基本」の後半の部に登壇させていただきます。目的は端的に言って先日出版した『利用規約の作り方』本のプロモーションでございますがw、弊ブログの読者の方もご参加いただけるようで、お会いできるのが楽しみです・・・とご参加者の名簿を拝見した所、どうやら弁護士の先生方や名だたる企業の法務部門の方が30%近く混ざっていらっしゃいまして、いったい何の話を誰向けにすればいいのやらと、頭を抱えているところでもあります(笑)。一方で、せっかくそういったプロも集まる場になるのであれば、いろんな意見交換がその場でできたらな、と思っております。よろしくお願いいたします。

さて、その『利用規約の作り方』を出版してからいただいた反響で一番ありがたかったのが、
インターネットサービスの法規制や利用規約についてまとまった本がなかったので助かった!
というお声。そしてその一方で、
2,000円かあ、ちょっと高いですね・・・。
とのご意見もありました。う〜ん、この内容でこの値段はかなり頑張ってる方だと思うんですが(汗)、高い法律書を買い慣れてしまっている法務パーソンと違って、読者層の方はやっぱり「本はせいぜい1,000円台で」という感覚を強くおもちのようです。

そこで、もっとお手頃価格で、かつ法律初心者でも読みやすい本は無いだろうかと探してみたところ、こんな本を見つけました。


インターネット消費者相談Q&Aインターネット消費者相談Q&A [単行本]
出版:民事法研究会
(2011-02)


第二東京弁護士会の先生方がお書きになられた、120ページ程度の小冊子に近い体裁の本。しかも法律書にもかかわらず、1,000円を切る格安な価格帯。この薄さだと本屋でも薄すぎて見つけにくいですし、法律家や法務の人は薄い=内容も薄いと判断して手に取らない方も多いのであまり知られてないかもしれませんが、今回買ってみて驚きました。「利用規約の作り方」でもご紹介している多くのインターネット関連法規制の問題、たとえば、
・ネット通販の返品義務と特商法
・海外の事業者との裁判管轄と民訴法
・ネット掲示板投稿の管理責任とプロ責法
・個人情報流出と個人情報保護法・プライバシー権
・アフィリエイターの推薦責任
・規約上のユーザー違約金と消費者契約法
・携帯のオンラインゲームでの高額請求(未成年課金)
・広告における景表法上の不当表示
などが網羅的に記載されていて、しかも分かりやすい。個人情報保護、特定商取引法、出会い系サイト規制などの法律的に詳細な解説が必要なところは、ところどころ(Q&Aではなく)以下の様なコラム形式で事例・判例・条文紹介も盛りこんであります。

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さらに、法律的な理想論や正論をふりかざすだけでなく、現実的な記述がところどころに見られるのも特徴的です。最近も消費者庁が取り上げていた“サクラサイト”の問題に関するQ&Aの解説でも、法律論と現実をこんな風にわけて解説していました。
「さくら」を使ったサービスは、サイト運営者が仕組んだ詐欺といえ、利用者は登録契約を取り消し、20万円の支払い義務を免れることができます(民法96条)。
(中略)
ただし、メールのやりとりの相手方が、サイト運営者が雇った「さくら」である点を証明することは極めて困難である点に注意してください。
といった具合。その点も含めて、価格以上の読み応えがある本になってます。

注意点を言えば、弁護士会が消費者にアドバイスする目線で文章が書かれているので、事業者サイド目線で法制度やリスクを知りたい方は読み替えが必要だということ。そういうサービス運営者側目線に振り切っている本は、『利用規約の作り方』を置いてまだ他にはないですし、本日ご紹介のこの本もさすがに利用規約のひな形までは載ってませんので、結局この話のオチはやっぱり『利用規約の作り方』を買ってねってことなんですけどね!
 

オープン懸賞 ネットとアプリの境界線

 
「ウェブサイトがメディアになる」なんて言っていた時代はもう今や昔、スマートフォン時代においてはアプリがひとつのメディアだったり、チャンネルであったりという時代になってきました。いまどきのネットビジネスに携わる企業は、アプリを無料で提供したうえで、いかにユーザーに自社アプリをダウンロードしてもらうか、そしてそれをホーム画面に鎮座させ、アプリ内課金や自社ウェブサービスへとつなげていくかという競争に突入しています。

実際、スマートフォンビジネスの業界では、アプリのダウンロード数がストアでのランキングにも大きく影響をするため、各社しのぎを削ってプロモーション費用を投下しているわけですが、たとえば、無料アプリをダウンロードしてもらうインセンティブとして、そのアプリ内でしか応募できない懸賞企画を実施する場合、果たしてそれは景品表示法上の規制のかからないオープン懸賞になるのか、それとも規制対象のクローズド懸賞となるのかという問題について考えてみます。

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この点、まず前提として抑えておきたいのが、公正取引委員会の「インターネット上で行われる懸賞企画の取扱いについて」です。

インターネット上で行われる懸賞企画の取扱いについて(公正取引委員会)
消費者はホームページ内のサイト間を自由に移動することができることから,懸賞サイトが商取引サイト上にあったり,商取引サイトを見なければ懸賞サイトを見ることができないようなホームページの構造であったとしても,懸賞に応募しようとする者が商品やサービスを購入することに直ちにつながるものではない。
したがって,ホームページ上で実施される懸賞企画は,当該ホームページの構造が上記のようなものであったとしても,取引に付随する経済上の利益の提供に該当せず,景品表示法に基づく規制の対象とはならない(いわゆるオープン懸賞として取り扱われる。)(図1−1及び図1−2)。ただし,商取引サイトにおいて商品やサービスを購入しなければ懸賞企画に応募できない場合や,商品又はサービスを購入することにより,ホームページ上の懸賞企画に応募することが可能又は容易になる場合(商品を購入しなければ懸賞に応募するためのクイズの正解やそのヒントが分からない場合等)には,取引付随性が認められることから,景品表示法に基づく規制の対象となる。

ここで問題とされているのは「取引付随性」です。ネットの場合は、たとえ応募できる場所が商取引サイト内にあっても、購入(=取引)と懸賞への応募とがひも付いていなければ、取引付随性なしとしてオープン懸賞扱いにできるという見解が示されています。これを前提とすれば、無料ダウンロード→アプリ内課金でコンテンツを購入させ課金するという現在主流のアプリ形態についても、取引付随性なし、と判断できそうな気がしてきます。


一方で、景品規制の原則に今一度立ち返ってみると、上記「インターネット上で行われる懸賞企画の取扱いについて」の前提となっている告示に、このような記載があります。

景品類等の指定の告示の運用基準について
4「取引に付随して」について
(略)
ウ 小売業者又はサービス業者が,自己の店舗への入店者に対し経済上の利益を提供する場合(他の事業者が行う経済上の利益の提供の企画であっても,自己が当該他の事業者に対して協賛,後援等の特定の協力関係にあって共同して経済上の利益を提供していると認められる場合又は他の事業者をして経済上の利益を提供させていると認められる場合もこれに当たる。)

この告示の趣旨は、「店舗への入店者には、単なるウインドー・ショッピングの者もあるが、経済上の利益を提供することにより入店者を増大させることは、入店者に購入行動を引き起こさせるとの客観的判断により、このような方法は取引に結びつきやすいものとして規定されているもの」(波光巖・鈴木恭蔵著『実務解説 景品表示法』P23)ということのようです。この点、この告示の後に出された冒頭紹介の「インターネット上で行われる懸賞企画の取扱いについて」で、“消費者はホームページ内のサイト間を自由に移動することができることから〜懸賞に応募しようとする者が商品やサービスを購入することに直ちにつながるものではない”という考え方と、どちらの解釈の立場に立つべきかを考えると、なかなかおもしろい問いですね。

仮に、アプリをウェブサイト(ホームページ)よりもクローズドな「自己の店舗」として捉え、懸賞企画によってアプリへの「入店」を促しているとも考えると、取引付随性が認められる可能性もゼロとは言えないかも。もしこう解釈すると、来店を条件として景品類を提供する際の「取引の価額」は“100円又は当該店舗において通常行われる取引の価額のうち最低のもの”が基準となり、一般懸賞ならばその取引価額の20倍が景品上限額となります。実際、アプリ内の課金はiOSでは85円が最低価格だったりしますので、1,700〜2,000円前後が景品の限度、ということになってしまうかもしれないわけです。


つまるところ、無料アプリはウェブサイト同様メディアなのかそれとも店舗なのかという問いとなり、おそらく消費者庁的には「それは具体的なアプリや懸賞企画の態様にもより、ケースバイケースで判断されます(棒読み」となりそうですが、どなたかご見解をお持ちの方はそっとご教示いただければと存じます。



実務解説 景品表示法実務解説 景品表示法 [単行本]
著者:波光 巖
出版: 青林書院
(2012-12)


 

消費者庁の「カード合わせ」に関するQ&Aについて

 
1月7日にソーシャルゲームの未成年課金に関する記事が世間を騒がせた後、図ったかのようなタイミングで1月9日に消費者庁から「カード合わせ」に関する新たな文書が発表されました。

インターネット上の取引と「カード合わせ」に関する Q&A(消費者庁)
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twitterタイムラインにいらっしゃる法務パーソンの反応や、ネット上の書き込みを拝見していると、「役所にしては非常に読みやすい・親しみやすい文書である」と、高い評価が集まっていました。しかしそれでも、一般の方々はもとよりゲームを普段やっていないであろう弁護士の皆様にはいまいち中身的にピンとこなかったようで、このQ&Aが出たという事実以外、Q&Aの具体的内容の是非についてはあまり話題にはなっていません。また、本文書によって一番影響を受けるであろうソーシャルゲームの業界団体JASGAで監事を務める森・濱田松本法律事務所の増田雅史先生も、以下のような冷静な受け止めをされていて、特に新たな見解が示されたわけではなく影響は限定的、と評価されているようです。



一方で、私はこれを読んでえも言われぬ違和感を感じました。というのも、このQ&Aは全面的に禁止されている「カード合わせ」について述べている体を取りながら、ネット上のデジタルアイテムという実体のないものについて「何らかの経済上の利益」を積極的に見出そうとし、これに対して「カード合わせの禁止」以外の景品規制(景品上限額・総額規制)を及ぼそうとする姿勢が滲み出ているように読めたからです。特に、「カード合わせ」のQ&Aのはずが、Answerの記述の中でところどころ「カード合わせ」から離れて「取引の付随性」「正常な商慣習に照らして取引の本来の内容をなすと認められる経済上の利益の提供」の判定基準について踏み込んだ(しかしかなり曖昧な)記述がある点が、とても気になります。何かAnswerのそういった曖昧な部分だけを読んで早とちりした事業者を萎縮させ、自主規制を加速させる意図があるのかと思ってしまったのは、きっと私だけでは無いのではないかと。事業者の誤認や不安を誘発するような書き方があまりにエスカレートするようだと、事業者側だけでなく行政側の文書にも表示規制が必要うわ何をするやめくぁwせdrftgyふじこlp…というのはまあ冗談にしても、そういう目でタイトルにもう一度目をやると、冠に「ソーシャルゲームの」「オンラインゲームの」ではなく、わざわざ「インターネット上の取引と」という謎の枕詞をつけているのも、なんだかとっても気になって胸のあたりがざわざわします。この点、ソーシャルゲーム業界だけでなく、インターネットサービスに携わる企業の方であれば読み込んでそのニュアンスについて理解と対策検討をしておくべき文書、と言ってよいのではないでしょうか。

実際、IT業界に精通している専門家はどのように受け止めているのだろうと、その筋の方々何人かにもヒアリングをしてみたのですが、「景品規制全般を拡大しようとするニュアンスが漂っている文書ですね」ということで意見が一致。またその過程で以下ご参考にリンクをさせていただいたような、とても鋭くかつ具体的な分析を展開されているTumblrもご紹介いただくことができました。こんな風に、IT業界にお強い専門家の皆さんのご見解も拝読して研究を深めつつ、インターネット取引に対する消費者庁の規制の動きを引き続き見守っていきたいと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いします( ´ ▽`)ノ。

ご参考:
消費者庁が新年早々仕事してる件
(続)消費者庁が新年早々仕事してる件
 

すべての楽天メールに対し1ヶ月間地道に配信停止処理を行った場合、それでも配信される重要なお知らせとは何か/何通あるのか


6/21にこんなtweetを何気なくしたところ、共感が共感を呼び、180ものRTを頂きました。



宣言した以上、きちんとやらせていただきました。


まずこれがbefore、実行前の6/14〜/20の1週間で配信された楽天からのメール。予めお断りしておくと、私はけっこうまめに登録時にデフォルトで入っているメルマガ配信のチェックボックスを外してるタイプです。それでも、楽天カード絡みで広告メールが1週間で25通・1日あたり約4通来てたという状態でした。

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で、先のツイートをした2012/6/21以降、すべてのメールに対して地道に配信停止処理・・・。この「配信停止はこちら」のわかりにくさよ!

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結果、7/14〜/20の1週間で合計4通になりました。

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中身を見てみると、1番上はカードのセキュリティのために配信設定にしているカード利用通知なので問題なし。つづいて2番めはタイトルにも【重要】と入っているように、規約が変更されたという通知なのでまあOKでしょう。

問題はハイライトした下2つ。この手のやつは配信停止依頼したはずなのに?と思って中を開いてみると、例によって、HTMLメールで画像広告がぺたぺた貼りつけられた下に、

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こんなメールフッターが。

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弊社へ登録されている最新のメールアドレスへお送りしております。
弊社からのメールを希望されない会員様へも重要なお知らせとして配信しております。
誠に勝手ながらこのカード利用獲得ポイントメールの配信停止はいたしかねますので、何とぞ、ご了承ください。

これが楽天のいう「重要なお知らせ」であるということが判明しました。すみません、いったいリボ払いへの変更勧誘と獲得ポイントのお知らせに広告を足したこのメールのどこが「重要なお知らせ」なのでしょうか・・・。


ということで、すべての楽天メールに対し1ヶ月間地道に配信停止処理を行った場合、それでもやはり2通/週程度は「重要なお知らせ」と位置付けられた広告付きメールが配信される、ということがわかりました。ただし念の為、これは楽天カードユーザーの場合なので、楽天カードを使わなければ、(規約の変更メール等を除き)1通も来ない状態を実現するのは可能かもしれません。
 
こんなスパムな手法で広告を配信したところで、誰も見てないしクリックしないと思うんですけどね。
 

Dropboxの古参ユーザー料金永久無料化に学ぶ、「先着ユーザー料金永久無料化予約契約(逆フリーミアムモデル)」の合法性を検討してみた


Dropboxさんが、初期に有料登録したユーザーを永久無料にするというサービスをはじめて、話題になっています。

Dropbox が初期からの有料プラン利用者に感謝、永久無料化
値段据え置きで容量2倍に値下げしたばかりの Dropbox が、古くからの有料プラン利用者に「今後課金しない」という斬新な方法で感謝の意を伝えているようです。かつて用意されていた25GBプランの利用者に届いたのは、有料プランを長年使ってくれたことに対して、現在のアカウントを今後無料で提供すると伝えるメール。
文面ではわざわざ「但し書きなし、引っかけなし。現在のDropboxアカウントについて、もう請求を受けることはありません。永久にあなたのものです」と念押しまでしています。Dropboxはこの対応について公にアナウンスしていないため、厳密にどのような条件のユーザーに届いているのかは不明。メールでの表現は「one of the earliest Dropbox users on the block.」。一方、「最初の1000ユーザーのひとりだったので50GB無料になった」といった声もあります。


ナイスサプライズ!という感じですが、このニュースを見て生粋の悪知恵マン、じゃなかった(笑)、生粋の法務企画マンである私にふとアイデアが。

Dropboxのように、後で突然無料にしてサプライズ!もいいけれど、最初っからそういう契約条件でアーリーアダプターになるインセンティブを与える契約にすることが、何か法に触れるだろうか?つまり、

 総有料会員数が1,000名に達したら、先着10番目の有料会員まで月額会費永久無料
 総有料会員数が10,000名に達したら、先着100番目の有料会員まで月額会費永久無料
 総有料会員数が100,000名に達したら・・・

という契約・利用規約でウェブサービスを展開したら、それは違法なのだろうか?と。

s-Dropbox


法務パーソンの検討プロセス


パッと思いつく限り、法律の規制としては
1)特定商取引法の連鎖販売取引規制
2)景品表示法の表示規制
ぐらいしかなさそう、とカンを働かせました。しかし、いわゆるマルチ商法を規制する1については、ユーザーに他のユーザーの勧誘をさせない(そのようなインセンティブを与えない)限りは気にする必要はないでしょうから、本丸は、2の景表法対策であろうと。

早速私が持つ広告表示まわりの本、および消費者庁ウェブサイトにまとめられたガイドライン・運用基準をチェックしましたが、該当するとすれば、
A)景品表示規制
B)不当表示規制
の2点。

このうち、Aの景品表示規制について、まず景品規制は、
(1)一般懸賞に関するもの,
(2)共同懸賞に関するもの,
(3)総付景品に関するものがあるものの
の3つがありますが。(1)(2)については、契約条件であってくじ等の偶然性,特定行為の優劣等によって無料にするわけではないので問題なし。(3)については、「先着」と聞くと、総付景品規制にかかりそうですが、先着◯名まで全員に景品・割引等のメリットを与えるわけでは無い点、総付規制にはかからない。従って規制対象外であろう、と考えました。

一方、Bの不当表示規制については、コンプガチャ規制やステマ規制でも話題になり最近改正されて規制範囲が広がったかのように見える『インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項』の存在が気になるところですが、その中を見てみると、唯一気になるのがフリーミアムモデルに関する言及。

フリーミアムのビジネスモデルを採用する事業者が、まず大きな顧客基盤を確保するための顧客誘引手段として、サービスが無料で利用できることをことさらに強調する表示を行うことが考えられる。そのような表示により、例えば、実際には付加的なサービスを利用するためには利用料の支払いが必要であるにもかかわらず、付加的なサービスも含めて無料で利用できるとの誤認を一般消費者に与える場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる。

この点、フリーミアムと違って当初はきちんと課金するのをある一定条件で無料にしてさしあげるだけなので、自分が何番目の登録者なのかをカウンターや申込み画面で確認ができれば、欺罔性や誤認のおそれはないものと考えました。

消費者庁に問い合わせてみた


本当は弁護士さんに確認をしようかと思ったのですが、弁護士さんがOKでも、こと景表法となるとコンプガチャの件もあり、消費者庁のゴキゲンが気になる所です。行政庁にあまり気を使いすぎるのは本意ではありませんが、この時期なので素直な気持ちで問合せをしてみました。対応くださったのはもちろん表示対策課。

なぜか事業者名をしつこく確認されましたが、上記の見解をざっと申し述べたところ、(予想通り)申込み時にカウンターをつけるのか?定額なのか?課金タイミングは?いくらぐらいを想定しているのか?・・・とビジネスモデルを細かく聞かれた上で、

「ちょっと・・・この相談は初のケースですねぇ。検討させてください」

と、折り返し検討モードに。

お、初ということはやっぱり規制根拠がないんじゃないかな〜と思ったのですが、1時間ぐらいして頂いた折り返しの回答が以下。

(見解1)
総登録者が10,000人に達する保証が無い段階で、「一般懸賞」に該当すると考える。
→一般懸賞は一般懸賞における景品類の限度額により、総額および最高額に限度があるので、その範囲内での無料化しかできず、青天井の「永久無料」は違法となる(逆に言えば範囲内まで無料、は合法)。
(見解2)
“御社の実績”や“業界の通常の水準”等に照らし、10,000人も本当に集まるのかどうかが疑問。
→登録を煽るためにありえもしない登録者数を表示であれば、有利誤認として不当表示規制に該当する可能性がある。

という回答。つまり、一般懸賞規制と不当表示規制を守らないと違法ですよ、ということでした。

うーん、とは言え、見解1については、消費者庁の表示対策解説ページの例示にもなく、明文上も規制根拠としては明確ではないので、まだまだ争う余地がありそうな気がします。
見解2にいたっては、ウェブサービスでは10,000人、100,000人の有料会員なんてありえなくもないでしょう。下品にならないように100人刻みでもいいんですけどね。ただ、こちらは欺罔性のないように配慮すれば、クリアできそうです。

このビジネスモデル・契約形態に名前をつけるとしたら「逆フリーミアム」モデルかなと思っていますが、よかったら、これどなたか詰めて考えてやりませんか?
 

【雑誌】BUSINESS LAW JOURNAL 2012年 08月号 ― やめられない・とまらないのがコンプガチャ

 
最初にご報告方々皆様にお断りしておくと、現在私が“兼業”で働かせていただいているいくつかのお仕事の1つとして、このビジネスロー・ジャーナルに関わるお仕事があります。そういう立場になってから、ステマと後ろ指を指されぬようブログtwitterを問わずBLJのネタには触れないように心がけてきたのですが、今月号の記事は、いわゆる「コンプガチャ問題」を法務パーソンという立場から総括するという意味で触れないわけにはいかず、ご紹介させていただく次第です。


BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2012年 08月号 [雑誌]BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2012年 08月号 [雑誌]
販売元:レクシスネクシス
(2012-06-21)
販売元:Amazon.co.jp



おすすめしたいのは、“[Focus]コンプガチャ規制の教訓”の中の
「消費者庁対応で不覚をとったソーシャルゲーム業界の困惑」
「ビジネスをとめるべきか否か」
と題する編集部による2本の取材記事。この業界に関わる方だけでなく、日頃のビジネス適法性判断や行政対応にたずさわる法務パーソンにとって、多くの教訓が得られる記事になっています。

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前者記事は、ガチャが問題視され始めた2011年よりもっと前にさかのぼり、ソーシャルゲーム業界法務担当・弁護士(匿名)と消費者庁表示対策課責任者(片桐課長)双方の対応・動きを、両者のコメントをもとに時系列で整理をしたもの。
「消費者庁への事前照会は行っていた」と主張する業界関係者のコメントに対し、消費者庁片桐課長が
コンプガチャについて認識したのは12年になってからです。
そもそも日ごろから匿名の相談も多く(中略)相談を受けたら簡単な記録は作りますが、件数があまりにも大量なので、詳細なものではありません。
と回答するなど、予想はしていたこととはいえ、「相談に対する回答に責任を持てるものではない」という、行政のスタンスがはっきりと言明されています。

後者記事には、ソーシャルゲーム業界法務担当による、赤裸々な「反省」の弁。
特にこのコメントは、すべてのイマドキ経営者およびイケイケ法務に読んで聞かせたい。
1社でも中止すれば、業界全体が違法ビジネスをしていたとみなされかねません。同じだけの危機感を持っていれば、そろって撤退することも可能でしょうが、実際には各社の置かれたポジションが異なるので、それは困難です。結局のところ、リーガルリスクの面において、“やってみて問題があるなら止めればいい”を実行するのは想像以上に難しい。今回つくづく感じさせられました。
目に余るようになれば法務がどこかでブレーキをかけてやろうと最初のうちは思っていても、業績に対する責任や業界の雰囲気は法務にコントロールできる領域ではなく、それは現実には無理だった、そうこうしているうちに5月5日の読売報道で不意打ちに遭った、という状況が、クリアに伝わってきます。

経営がビジネスの違法性を判断するとき、法務パーソンは根拠を求められます。しかし、その根拠は多くの場合条文にストレートに現れていません。だからといって“行政解釈”に頼りすぎると今回のような「どんでん返し」が発生し、また“会社の良識”を信じてもその時の空気に流されてどこへやら。
法務パーソンとしてはそうなることを肝に命じ、「フィジビリティスタディ」と称する怪しげな新規事業の開始(笑)に騙されまたは面倒がって問題を先送りするのではなく、「Xヶ月に1回、◯◯な状態になっていないか△△を検証し、条件が満たない場合はストップする」というような明確な停止条件(解除条件)や、法的レビューを定期的に行う仕掛けについて、開始時に稟議書等で握っておく必要があるなと思いました。


(私がこの記事を書いたわけではありませんが、)取材に応じていただけなかった関係企業等もある中で、匿名とはいえお話を聞かせてくださったソーシャルゲーム業界関係者のみなさま、そしていったんの収束を迎えた問題とはいえ、まだ余韻冷めやらぬ言及が難しいこの時期に法律解説・コメントを寄せてくださった神戸大学大学院 泉水先生、株式会社電通 中西法務1部長、東京大学 白石先生ほか皆様にこの場をお借りして感謝申し上げると共に、一法務パーソンの立場からは、企業法務における適法性判断と行政対応のリアルケースを記した貴重な資料として、大切にスクラップしておきたいと思いました。
 

コンプリートガチャ問題に対する行政指導のあり方について

 
報道と株式市場を賑わしているコンプリートガチャ規制の行く末については、二転三転の挙句、結局消費者庁が景表法適用に動くとの流れになっているようですが、コンプリートガチャそのものの違法性判断はさておき、特に消費者庁に対して申し述べておきたいことがあります。

コンプガチャは違法懸賞、消費者庁が中止要請へ(Yomiuri Online)
携帯電話で遊べる「グリー」や「モバゲー」などのソーシャルゲームの高額課金問題をめぐり、消費者庁は、特定のカードをそろえると希少アイテムが当たる「コンプリート(コンプ)ガチャ」と呼ばれる商法について景品表示法で禁じる懸賞に当たると判断、近く見解を公表する。

同庁は業界団体を通じ、ゲーム会社にこの手法を中止するよう要請し、会社側が応じない場合は、景表法の措置命令を出す方針。

“コンプリートガチャ” 指針作成へ(NHK NEWSWEB)
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料金を払ってくじ引きのようにして得たアイテムをそろえて、より珍しいアイテムを得る手法を巡り、消費者庁は「景品表示法で禁止されている手法に該当する可能性がある」として、ガイドラインを作って事業者に注意を呼びかける考えを示しました。
これは、松原消費者担当大臣が、8日の閣議のあとの会見で明らかにしたものです。
「ソーシャルゲーム」の中には、ゲームで使うアイテムを有料のくじ引きによって手に入れるものがあります。松原大臣は、このうち異なる複数のアイテムをそろえると、より珍しいアイテムが得られる「コンプリートガチャ」と呼ばれる手法について、「一般論だが、景品表示法で禁止されている『カード合わせ』という手法に該当する可能性がある」と述べました。

このような、昔から存在する景品表示法を根拠に規制するならば、消費者庁にはなぜ1年超にわたり放置したのか、なぜ今になって指導をはじめるのかを、今後の行政指導の濫用を防ぐためにもはっきりと言葉にしていただきたいということ、あわせて、行政指導はあくまでも行政手続法にしたがって適切に行なっていただきたいということです。

「産業の育成を阻むような国・法律の規制はすべきではない」というような大上段に構えたことを申し上げるつもりはありません。そもそも、自由主義経済が原則とはいえ、規制がまったくかからないサービス業というのは実に少ない(というかほとんどない)もの。私自身、図らずも通信・放送サービス業と人材サービス業という、ガチガチの許認可事業に身を置き、時にお役所の顔色を伺いながら、法務・コンプライアンスに携わってきました。少し外れたことをすればあーでもないこーでもないと昔の事例を引き合いに出して出来ない理由を並べ立てて、指導をちらつかせてくるお役所という存在との付き合いは、大きな企業にとってある種の宿命です。とはいえ、あまりに指導がきついのももちろん考え物で、特に許認可ビジネスでは行政指導に従わなかっために認可取り消しが出されてしまうと、少なくとも一定期間は強制的にビジネスができなくなり顧客の信頼を失いかなりの痛手になるため、めったなことが無い限りは行政指導には従っておこう、ということになりがち。このあたりの行政指導に関する問題点は、いまや絶版となってしまった新藤宗幸著『行政指導 ―官庁と業界のあいだ―』に詳しいです。


行政指導―官庁と業界のあいだ (岩波新書)行政指導―官庁と業界のあいだ (岩波新書)
著者:新藤 宗幸
販売元:岩波書店
(1992-03-19)
販売元:Amazon.co.jp



3年前に消費者庁ができるという話になった際に、消費者保護という大義名分を楯になんでもありな組織にならなければいいなあ、という懸念を当時ブログにも書き記していたところですが、実際にこのような恣意的な指導をちらつかされると、ああやっぱりか、と恐怖は深まるばかり。

「コンプガチャに対する行政指導は今に始まったことではないはず、水面下で指導が入っていたのを事業者側が無視し続けたのだろう」という声も聞かれます。もちろん、ヒアリングと称した「耳打ち」の類はあったかもしれません。しかし、行政手続法上は
(複数の者を対象とする行政指導)
第三十六条  同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない。
とあり、これまでGREE/DeNAいずれかだけに指導を入れたとは思えませんし、公表された事実もない以上、少なくとも公式な行政指導はなかったものと思います。後半の「行政指導指針を定め」にあたるものが、上記記事引用松原大臣会見の言う「ガイドライン」に相当するのかもしれません。

上記以外にも、行政手続法には行政指導の精神・踏むべきステップ・タイミングについて細かく言及されています。そういったものをすべてすっ飛ばし、決算発表という重要なタイミングの直前、しかもGW中に読売にすっぱ抜かせるというある種“ショッキング”なやり方で、1年あまりも放置した事案について性急に規制に踏み込もうとする消費者庁のこの動きは、少し乱暴に過ぎると言わざるを得ません。GREEをはじめとする関係企業の皆さんには是非、後々別事案で消費者庁にいいようにされないためにも、(コンプガチャの違法性に対する判断はさておき)今回の行政指導のあり方について、行政手続法等を根拠にしてしっかりと反論をしておいていただきたいなと思います。
 

旬なインターネット広告の法規制を網羅するならこの2冊

 
今月発売のBLJの第二特集、「インターネット広告規制の現在」は、
・森亮二先生がステルス/フラッシュマーケティングを始めとする旬なネット広告手法に切り込み、
・二関辰郎先生が日本ではなぜかそれほど問題視されない行動ターゲティングについて詳しく言及し、
・米国弁護士フローレンス・ロスタミ先生が、それらについて一歩先に規制を始めた米国の現状を紹介
するという、時事性と個別専門性を織りまぜられる雑誌ならではの良さを生かした、非常に良い特集だと思いました。


BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2012年 04月号 [雑誌]BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2012年 04月号 [雑誌]
販売元:レクシスネクシス
(2012-02-21)
販売元:Amazon.co.jp



特に、森亮二先生のステマに関する解説は、
口コミサイトに消費者が求めるのは、事業者から独立した消費者側の意見・感想であり、そのためにはニュートラルなユーザーとしての意見なのか、事業者の依頼に基づいて(または事業者の何らかの影響の下に)書かれた意見なのか、判別できるようになっていることが望ましい。
と、フローレンス・ロスタミ先生が別途解説する米国的な「関係者の明示」規制の話とリンクさせ、かつそれだけにとどまらず、
自社の高評価の書き込みを作り出すことが「やらせ」のすべてではない。この手の情報操作手法としては、他に「競合他者の低評価情報を書き込む」「自社に対する低評価情報を削除させる」の二つがある。
といった古くて新しい論点について、ご自身の具体的な代理人経験を踏まえて問題提起をされているもので、大変読み応えがありました。

また、二関先生の行動ターゲティング広告解説で特筆すべき点は、総務省がはじめて行動ターゲティングやDPI(ディープパケットインスペクション)の規制の方向性について明文化した「第二次提言」を引き合いに出しながらも、
第二次提言では、本人の同意さえ取り付ければDPI技術は許容されるかのような位置付けをしていた。しかし、DPI技術は通信の秘密の侵害につながるので、行動ターゲティング広告目的での利用はNGとすべきであろう。
と、こちらもかなり踏み込んだ意見を提示されている、気合の入った投稿でした。

ステルス/フラッシュマーケティングにせよ、行動ターゲティング広告にせよ、法律上規制が明確でないテーマを先取りして事業に取り込んでいく際に法務がやってしまいがちなのは、弁護士から「現在の法律においては明確に違法とはならない」という経営者が喜びそうな“前向き”な回答を導きだすこと。しかし、そういう「法律上グレーだからやっていい」という回答を誘導することは、本当に自社の事業の発展にとって適切な行為なのか?法務パーソンだったら一度や二度は大きく悩んだ経験があると思います。

まだ誰もやっていない新しいテーマにチャレンジすることそれ自体は賞賛されるべきです。しかしそれが顧客と社会に対して正々堂々と語れる・説明できることなのかを一番深く考えるのが、企業法務に携わる我々の役割でもあると思います。そういった場面で冷静に、しかし迅速にリスクを判断するためにも、“顧問料と引き換えに半ば無理矢理引き出した適法意見”ではない、ニュートラルな専門家の意見がこのように早いタイミングで文字化されていることにこそ、法律雑誌の価値があるのだと改めて感じました。


で、ついでと言っては大変失礼なんですが、この特集で<森亮二先生×インターネット広告規制>という組み合わせに既視感を覚え、そう言えば!とこの本をご紹介し忘れていたことを思い出しましたので、ちょこっとご紹介させていただこうと思います。


インターネットの法律Q&A―これだけは知っておきたいウェブ安全対策インターネットの法律Q&A―これだけは知っておきたいウェブ安全対策
著者:岡村 久道
販売元:電気通信振興会
(2009-07)
販売元:Amazon.co.jp



岡村久道先生と森亮二先生の共著により、
・アフィリエイト
・ドロップシッピング
・迷惑メール規制
・オンライン通販と広告表示事項
・ウェブショップにおける確認画面と利用規約
・価格誤表示
・RMT(リアルマネートレーティング)
・発信者情報開示制度
・SNS事業者の違法情報媒介責任
・モール事業者・オークション事業者の法的責任
・他人の著作物のブログへの掲載と権利処理
といった、まさに今回のBLJの特集で触れられた話題の周辺領域について幅広く抑えてあるトピック集です。

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速報性という意味では雑誌のそれにはかないませんが、今回のBLJと合わせて読めば、インターネット広告の法規制のいろいろについてほぼ網羅できるものと思います。
 

【本】その広報に関係する法律はこれです! ― 広報の法違反リスクあるある大辞典

 
ステマ(ステルス・マーケティング)」騒動をきっかけに広報に関する法律を色々眺めていて、改めて広報や広告って契約書並に法律を意識しないと危ないんだなーと感じました。世の中に対して、わざわざ目だつように文書や動画で企業のメッセージを積極的に発信していくわけで、気づかずに違法な表現や手法をとってしまったら、その反動も大きくなるのは必然。

そんなことを考えているうちに、だんだん怖くなって広報の企画が立てられなくなってしまいそうですが、そんな臆病風に吹かれるPRパーソンに効きそうな一冊がこれ。


その広報に関係する法律はこれです!その広報に関係する法律はこれです!
著者:縣 幸雄
販売元:創成社
(2005-10)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


その名の通り、広報活動のあらゆる側面を切り取って、そこでどんな法律が関わってくるのかを紹介する本。ページあたり2問ずつ、合計280問の設問と回答を通して、やってしまいがちな広報活動における法違反リスクに気づかせてくれます。

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広告の法務というと、景表法の解説ばかりになってしまいがちな中、民法・著作権法・憲法(パブリシティ権、プライバシー権等)・刑法・不競法・商標法・児童福祉法(児童モデル)・道交法(街頭キャンペーン)・鉄道営業法(駅構内でのビラ配り)・屋外広告物法・薬事法・食品衛生法・・・と、よくもまあこんなに幅広く横串に刺してくださったなあと感心してしまうほどの網羅性。類書は見当たりません。

注意点としては、著者がコミュニケーション学がご専門の方なので、例えば、「街中で流れている音楽をマイクで拾って録音してしまった場合、そのまま広報に使ったら著作権法違反」など、やや法律解釈が極端だったり怪しげだったりする部分があるところ。でも写真にもあるように、きちんと関係条文も引用されていますので、「こういうことするとこの法律にひっかかかるリスクがあるかも」というアンテナを立てるヒント・訓練の書として割り切って使えば、とても有用な本だと思います。
 

日本におけるステルスマーケティングの法規制まとめ(追記あり)


食べログさんがやらせ口コミ投稿業者によって被害を受けているとの件が話題を呼び、ソーシャル・ネットワークやブログを使ったステルスマーケティング(=やらせ・サクラによる口コミ)の法規制論にまで発展し始めています。

アメリカではFTCがとっくに明文で規制してるのに、という声も聞かれますが、一旦ここでは日本法においてどうなのか?という点に絞って、メモがてら投稿しておこうかと思います。

商品・サービスを提供する事業者がステマを頼むのは違法


下記消費者庁通達にあるように、商品・サービスを提供する事業者自身がステルスマーケティングを依頼したのであれば、景表法に抵触するということになっています。

平成23年10月28日付「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の 問題点及び留意事項」(消費者庁)
口コミサイトに掲載される情報は、一般的には、口コミの対象となる商品・サービスを現に購入したり利用したりしている消費者や、当該商品・サービスの購入・利用を検討している消費者によって書き込まれていると考えられる。これを前提とすれば、消費者は口コミ情報の対象となる商品・サービスを自ら供給する者ではないので、消費者による口コミ情報は景品表示法で定義される「表示」には該当せず、したがって、景品表示法上の問題が生じることはない。
ただし、商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させ、当該「口コミ」情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる。

この理屈で言うと、今回のケースはヤラセ口コミ業者に頼んだ飲食店が規制の対象となる、ということです。(食べログさんがやらせ口コミ投稿業者を追求すればするほど、食べログの顧客であるはずの飲食店さんの景表法違反リスクが高まり、結果食べログさんも首を絞められるのですが、そこはよろしかったんでしょうか・・・。)

※2012.1.13追記
「優良誤認・有利誤認をさせなければステマは合法です」とのコメントを@issy1080さんから頂きました。ステマという語の定義・捉え方の問題かと思いますが、私はステマを「商品・サービスを提供する事業者(または広告代理店等協力者)が、中立な立場を装って消費者を騙し、“本来は得られない高い評価”を広めようとする行為」と捉えています。事業者らが消費者の優良誤認・有利誤認の効果を狙う手段が「ステマ」なのであって、(最終的に優良誤認・有利誤認で景表法違反とされるかは別として)“優良誤認・有利誤認の効果を狙わないステマはそもそもステマではない”という前提で違法と書いています。

※2012.5.9追記
上記でコメントした通りの見解が「留意事項」に追加され、消費者庁の見解がさらに明確化されました。文書に添えられた「具体的な表示が景品表示法に違反するか否かは、個々の事案ごとに判断されますので、ご留意ください。 」という但し書きが、「すべては消費者庁の胸三寸です」と言っているようにも読めます。

平成24年5月9日付「『インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項』の一部改定について」(消費者庁)
第2の「2 口コミサイト」のうち「(3)問題となる事例」に、以下の事例を追加しました。
○ 商品・サービスを提供する店舗を経営する事業者が、口コミ投稿の代行を行う事業者に依頼し、自己の供給する商品・サービスに関するサイトの口コミ情報コーナーに口コミを多数書き込ませ、口コミサイト上の評価自体を変動させて、もともと口コミサイト上で当該商品・サービスに対する好意的な評価はさほど多くなかったにもかかわらず、提供する商品・サービスの品質その他の内容について、あたかも一般消費者の多数から好意的評価を受けているかのように表示させること。


広告代理店は、不当表示を助長しなければセーフ


またこの問題は、有名人を自社が運営するSNSやブログサイトに抱き込んで、彼・彼女らに商品やサービスを宣伝させる(それによって自社サイトの売上・広告収入上昇を目論む)という営業手法を採用するネット系広告代理店さん糾弾の動きにも繋がっています。

これに対して、きっと広告代理店は、「景表法の措置命令の対象は、当該商品・役務を供給する事業者自身である。事業者が不当表示をしないようできる限り注意は払うが、広告代理店やメディアは企画はすれども委託に基づいて広告を出しているだけだから責任はない。」という主張を展開されていくことと思います。消費者庁のQ&Aにも、同様の見解が述べられています。

よくある質問コーナー(消費者庁)
Q3 当社は広告代理店です。メーカーとの契約により,当該メーカー商品の広告宣伝を企画立案した結果,当該商品の品質について不当表示を行ってしまいました。この場合,広告代理店である当社も景品表示法違反に問われるのでしょうか。

A. 景品表示法の規制対象である「広告その他の表示」とは,事業者が「自己の」供給する商品・サービスの取引に関する事項について行うものであるとされており,メーカー,卸売業者,小売業者等,当該商品・サービスを供給していると認められる者により行われる場合がこれに該当します。
他方,広告代理店やメディア媒体(新聞社,出版社,放送局等)は,商品・サービスの広告の制作等に関与していても,当該商品・サービスを供給している者でない限り,表示規制の対象とはなりません。しかしながら,広告代理店やメディア媒体は,広告を企画立案したり,当該広告を一般消費者に提示する役割を担うことにかんがみ,当該広告に不当な表示がなされないよう十分な注意を払ってください。

末尾の「十分な注意を払って」は、広告代理店に何かの注意義務があることを示唆しているようで、消費者庁の思惑が感じられ、気味が悪い部分です。

将来的にはステマを助長する広告代理店規制の余地あり


その消費者庁の思惑と連動するかのような話として、下記高裁判決における“不当表示を行った者”についての裁判所判断を読んでいくと、ステルスマーケティングのやり方や営業の方法によってはその方便も通用しない可能性、すなわち広告代理店も「自ら若しくは他の者と共同して積極的に表示の内容を決定した事業者」として“不当表示を行った者“に含まれる余地が残されているように解釈できる部分があります。

平成20・5・23ベイクルーズによる審決取消訴訟判決(公正取引委員会)
同法4条1項3号に該当する不当な表示を行った事業者(不当表示を行った者)の範囲について検討すると,商品を購入しようとする一般消費者にとっては,通常は,商品に付された表示という外形のみを信頼して情報を入手するしか方法はないのであるから,そうとすれば,そのような一般消費者の信頼を保護するためには,「表示内容の決定に関与した事業者」が法4条1項の「事業者」(不当表示を行った者)に当たるものと解すべきであり,そして,「表示内容の決定に関与した事業者」とは,「自ら若しくは他の者と共同して積極的に表示の内容を決定した事業者」のみならず,「他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者」や「他の事業者にその決定を委ねた事業者」も含まれるものと解するのが相当である。

この事例は、八木通商が作った事実と異なる原産地表示のタグを付けたズボンをベイクルーズ(EDIFICE)が販売した責任に関する事例であり、ステルスマーケティングそのものの事例ではないのですが、景表法の規制対象者について正面から争い、裁判所が広めの解釈に言及した事例として注意したい裁判例です。

報道を見ていると、消費者庁が久しぶりに目立てる仕事が出来た!と色めき立っているようにも見受けられますが、あまり拡大解釈が進むと、ソーシャル・ネットワークやブログの言論の自由までもが脅かされることにもなりかねませんので、冷静適切な対応を望みたいと思います。


さて、本件に関して私が持っている広告法務の本や雑誌を漁ったのですが(↓このあたりやBLJ・ビジネス法務)、類似のアフィリエイト・ドロップシッピング等の問題について述べた書籍や、ベイクルーズ審決について述べた本はあれど、はっきりとこのステマの問題を取り上げて言及しているものが見当たりませんでした。もしこんなのあるよ、という方いらっしゃるようであれば、ご教示頂ければ幸いです。 
 
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【本】生き残るための広告技術 ― 行動ターゲティングのメリットを知らずしてプライバシー侵害を憂うことなかれ

 
2010年以降の企業法務を考えるにあたって、研究すべきテーマは何でしょう?と問われたら、2つ返事でこう答えています。

「プライバシーでしょうね」と。

中でも把握しておくべきキーワードは、企業広告における“行動ターゲティング”です。企業が消費者のweb閲覧履歴やライフログを収集しマーケティングや広告宣伝に利用することの是非は、以前このblogでも取り上げたDPI(ディープ・パケット・インスペクション)問題然り、これから日本でも大論争間違いなしと読んでいます。

もちろん、広告業界にお勤めの方はとっくにご存知のキーワードなのでしょうが、あまりご存知でないという方も多いはず。この本からお読みになると良いです。

生き残るための広告技術 進化したインターネット広告「行動ターゲティング」のすべて


行動ターゲティングは、幅広い消費者を特性や行動履歴、志向に応じて小さくとも意味のあるグループに分類していく手法である。

携帯端末・無線技術の進歩と普及により、私たち消費者の特性・行動履歴・志向を事業者が把握することはますます容易になっています。そうした中静かに発展してきたのが、この行動ターゲティングというマーケティング&広告手法。消費者の生活を企業が利益のためにのぞき見するような感覚には当然根強い抵抗もあるわけで、企業が行動ターゲティングをしているという認知が消費者に広まるにつれ、プライバシーの論争がこれまでとは違う新たな局面を迎えるのは、想像に難くありません。

さて、このブログの読者の方は、広報やマーケティングの部署の方は少ないはずです。プライバシーの本を紹介するならいざしらず、行動ターゲティングの本を紹介しているのはなぜか。それは、行動ターゲティングのプライバシー侵害性を正しく検討・判断できるようになるためには、まず行動ターゲティングがもたらすメリットを正しく知ることが大切だと思うからです。そのことはまさにこの本でも次のように語られています。
「メリット」は重要なキーワードだ。私たちは行動する前に、自分のためになるかを考える。自分との関連性が重要なのだ。(p114)
社会の積極的な一員であるためには、一定量の個人情報の開示が必要となってくる。例えば、意志に個人情報を明らかにすることを拒否したら、診断や治療を受けることは非常に難しいだろう。同様に、ローンを申し込むために銀行を訪れても、財務状況の開示を拒否すれば、ローンを組めずに家に引き返すしかないだろう。(略)受けたいサービスと開示するプライバシーの価値は比例しているのだ。(p116)

この本は、Google,Amazonが教えを請うマーケティング界のグルRob Grahamの著書を翻訳したパートをベースに、巻頭には日本のネット広告業デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム社による概論、そして巻末にはYahoo/mixi/Nikkeinet/スバル他のマーケティング担当者インタビュー、ITジャーナリストの佐々木俊尚氏が寄稿するコラムなどがふんだんに盛り込まれています。広告業界の専門誌的な感じで、行動ターゲティングに関する「今」「これから」「得られるメリット」が手軽に理解できます。

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気になるのはAmazonの評点の低さ。ただインターネットマーケティングを実業で専門にやってる私の後輩に「行動ターゲティングの入門書をどれか1冊あげるとしたら?」と聞いて推薦してもらった本でもあるので、スジは悪くないと思ってます。
 

【本】広告の法理―フリーミアムなビジネスへの移行に備えて、“注目”を仕入れるための広告法務をマスターせよ

 
フリーミアムとは、「フリー(無料)」+「プレミアム(割増料金)」の造語。
基本サービスを無料で提供することで顧客の“注目”を広く集め、その何割かに有料で高機能のプレミアム版に移行してもらうビジネスモデル。

法務として、「フリー(無料)」を対価に“注目”を買い集めその“注目”をマネタイズするというビジネスへの変化に備えて何が出来るだろうかと考えると、これまでは広告代理店に任せきりだった広告契約を仕入れの契約と同等に捉えるべきなのかもしれない、と思っています。

そんなわけで、目下広告関係の法律書を読み漁っていますが、間違いなくその中心に据えられるであろう本がこちら。

広告の法理―紛争と法的責任


弱点を先に言ってしまいますと、平成10年第1刷発行でそのまま改訂されていないんですよ。それが気になってずっと買い控えしていた本でした。

ところが、BLJ2月号で電通の法務部長さんが推薦されているのを見て、買わない訳にいかないなあと、重い腰を上げて購入。


広告法務の5本柱を1冊でカバーする本

広告の法務と一口に言っても

1)媒体業者と広告業者との広告出稿契約
2)広告主と広告業者との広告出稿契約
3)広告出演者との出演契約

この3種類に大きく分かれるわけですが、そのすべての契約関係について漏れなく触れられている点でなかなか類書を見ませんし、

4)(契約関係にない)広告の受け手としての消費者に対する責任
さらには
5)広告内容の審査・自主規制の法的論点
まで1冊の本の中で言及している本はそうそうありません。

一方で、インターネット広告の責任については、平成10年刊といえばプロバイダ責任制限法が施行される4年前ということもあって、多くは触れられていません。ここは冒頭に申し上げた弱点がモロに露呈しているところではあります。
しかし、今時ネット広告の特殊な責任論についてはいくらでも専門書がでているので、そちらでカバーして頂ければ内容的にまったく問題無しと考えます。

というわけで、そのボリュームと網羅性に圧倒されっぱなしの430ページ。
このぐらいの厚みの法律書であれば2日で読み切るのが私の通常のペースなんですが、この本に関しては4日程かかってしまいました。
それぐらいかけて読み込む歯ごたえも価値もある本だと思いましたし、広告法務を体系的に理解するためのは欠かせない本だろうなと思います。
 

広告表示のチェックポイント(4)―No.1表示

 
広告表示に関するコンプライアンス的チェックポイントについて簡単にまとめていくシリーズ第四弾。

今回は、No.1表示についてです。

景品表示法により,事業者が自己の供給する商品等の内容や取引条件について、実際のもの又は競争事業者のものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認される表示は、不当表示(第4条第1項第1号の優良誤認または同第2号の有利誤認)違反となります。業界によっては、公正競争規約としてこれを明確に規制している業界もあります。

これらの点について、公正取引委員会が、No.1表示の実態調査と景品表示法上の解釈を詳細にまとめたものとして「No.1表示に関する実態調査報告書」(PDF)がありますので、ご一読をおすすめします。

具体例は以下5つです。

1)ランキング
「第3のビール売上No.1」「着工棟数実績日本一」などの表記。まさにNo.1表示の典型例。

2)シェア
「Netbookシェアでは30%を占めています」など、市場占有率を示す表記。

3)「最も」表現
「業界トップの技術力を誇る当社の技術部隊が…」「SNS最大手である○○社も利用する信頼性の高いデータセンター」のようなパターン。

4)「初めて」表現
「国内メーカーでは初めて、超解像技術を搭載した液晶ディスプレイ」「日本でこの料理を出したのは当店が最初」といった表現。

5)「オンリーワン」表現
「他店にはない当社だけのオリジナル特典です」「日本で唯一の無殺菌生乳」など。


なお、上記のような広告表示で誤認をさせることが法違反だというだけで、「客観的証明」によって誤認でないことが示せるのであれば、もちろんこのような表記も可能わなけですが、私の中では、この「客観的証明」問題をどうクリアするのかが、これまでこのシリーズでご紹介してきた広告表示の問題の中でも最もややこしい問題なのでは、と思うにいたっています。

上記公取委の報告書P7にも記されている不当表示にならないための要件では、
No.1表示が不当表示にならないためには、1)No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること、2)調査結果を正確かつ適正に引用していることの両方を満たす必要がある
つまり、「自社調べ」ではダメで、「●月●日付●●新聞調べ」というように他社の調査結果をちゃんと“引用”して紹介することが求められているのですが、この客観的証明における“引用”をどうやるかが曲者なのではと。

(公取委は“引用”だから金も手間もかからないことを想定していると思われる一方、)民間の調査会社等が調査したランキング等のデータを完全商業目的の広告において利用するにあたって、“引用”という理解のもと新聞社や雑誌社に許諾を取らずに利用することは、出所明示などの形式的な適法引用要件は満たせても、「公正な慣行(著32条)」や「引用の目的上正当な範囲内(32条)」と言えるのか、という懸念です。

実際、ランキング会社の代表格オリコンさんのHPにはこんな表示が。
s-oricon

やっぱり、ランキングのようなデータは、“引用”ではなく正々堂々と許諾を請い対価を払って利用するのが筋、ということなのでしょうか。

この問題、是非広告会社の法務の方にご教示いただけるとうれしいです。

広告表示のチェックポイント(3)―フリーライド

 
広告表示に関するコンプライアンス的チェックポイントについて簡単にまとめていくシリーズ第三弾。

今回は、フリーライドについて。

他人が築き上げた著名表示(社名・商品・コピーなど)を勝手に用いるなどして、営業上の信用や名声(グッドウィル)に便乗することを、フリーライドといいます。日本語でいうと「著名表示の冒用」です。

商標権で保護できるのでは?という疑問もあると思いますが、登録を受けていない商品名などは保護できない点、又、商標権は同一又は類似の商品又はサービス以外には権利が及ばないといった弱点があります。
こういった商標権の守備範囲外の部分をカバーするべく、不正競争防止法2条1項2号が、著名な商品等表示(商品又は営業の表示)を他人が自分の商品等の表示として使うことを禁止しています。

広告表示の問題というよりも、どちらかと言えば広告の対象がこんな事例に該当しないかという視点で、以下具体的事例を眺めていただければと思います。


1)社名
信用力のある他社の商号を、自社名や商品・サービス名に取り込んでしまうというもの。
実際の事件となったものもたくさんありますが、「ソニー」がサラ金に使用された神田ソニー事件(東京地判昭59.3.12)や、西日本ディズニー株式会社が「DISNEY」の看板でパチンコ店を開業したディズニー事件が有名なところでしょうか。

2)ブランド名
事例としては一番見つかるのがこの事例。
「シャネル」の名前を勝手に店舗に使った事例は枚挙に暇がありません(東京地判平6年4月27日中目黒スナックシャネル事件など)。また、商品名では、機動戦士ガンダムに登場するモビルスーツ「エルメス」がプラモデル化された際、馬具・革製品で著名なHERMESのフリーライドを避けるため、「ララァ・スン専用モビルアーマー」の商品名で販売されたのは、ガンダムファンには知られた話とのこと。

3)ドメイン名
著名表示をドメイン名として冒用する事件は一時期社会問題にもなりました。日本ではJ-PHONE事件(東京地判平13年4月24日)とJACCS事件(富山地判平12年12月6日)が有名。こういった事件を受けて、不競法の平成13年改正によってドメイン名の不正取得・使用行為が不正競争行為の類型として法律上も明確にされました。

4)キャッチコピー
事例は少ないですが、以前もご紹介したサーティーワンアイスクリームの『We make people happy』とコールドストーンクリーマリーの『make people happy』の争いなんかが典型例。ちなみにあの訴訟は請求棄却で終わったようですけど。

5)看板のデザイン
ちょっと変わり種なところで、動くカニの看板で有名なかに道楽の看板を真似した同業者に対し、看板の使用禁止と損害賠償が認められた裁判例があります(大阪地裁昭62年5月27日判決)。


このシリーズ、ニーズがあるのかどうか怪しい感じですが、次回があればNo.1表記の問題を取り上げてみようかと思ってます。

広告表示のチェックポイント(2)―肖像権・氏名権

 
広告表示に関するコンプライアンス的チェックポイントについて簡単にまとめていくシリーズ第二弾。

今回は、肖像権・氏名権に関するチェックポイントをまとめますが、その前にまずは権利の概要を簡単に。


肖像権・氏名権の概要

大きく分けて2つの支分権から成ります。
人格権(プライバシー権)
 無断で写真を撮影されたり、または無断で肖像・氏名を
 公表されない権利。
財産権(パブリシティ権)
 肖像や氏名の利用をコントロールし、利用に対する対価を
 受ける権利。

いずれも明文上の根拠はありませんが、日本では憲法13条の幸福追求権を根拠として、判例によって認められてきた権利です。
何せ明文にないので、保護期間も規定されていませんが、法益から考えればその人の生存中は少なくとも保護期間となるでしょう。

ただし、アメリカではLEGENDSと言って、著名人のパブリシティ権は死後も認められており、そういった歴史的著名人のパブリシティ権管理の代行会社が存在するほど。
たとえば、ジェーム・スディーンはThe Curtis Management Groupが管理していますし、キング牧師はCorbis Corporationが管理しているといった具合。ということは、こういった方々の保護期間は事実上「永遠」なのかもしれません。

パブリシティ権については物(動物や建築物)などにも拡大する傾向がみられています。しかし、物に人格権的権利は認めようがなく、判例では(苦し紛れに)所有権から派生する権利と判示されたこともありますが、これには疑問の声も強いところです。
財産権を侵害する不法行為としての損害賠償請求権にまで抽象化すれば保護法益は認められそうですが、物にパブリシティ権と呼べるような特別な保護を認めるのか認めないのか、認めるとしたら根拠法はなんなのかは、いまだ判然としません。


ということで、簡単にといいつつやや長くなりましたが、以下チェックポイントです。


1)著名人の名前を利用
「ミスチルの桜井もライブでこのギターを使ってます!」「蛯原友里さんもプライベートで弊社ブランドのネックレスをよく着用されてます」なんていう使い方は、代表的かつ一番やっちゃいがちなパブリシティ権侵害事例。

2)著名人の写真・似顔絵を利用
写真は無断で出せばモロに肖像権侵害というのは分かりやすいと思いますが、似顔絵に関しては微妙なところでしょう。
よくTVのモノマネ番組で写真の著作権に気を使って絵で出している例もありますけれど、あれも厳密にはパブリシティ権侵害。権利者側もさすがにそこまでは追及しないんでしょうけど…。ていうかモノマネ自体がパブリシティ権的にどうかという問題もあるか…。

3)歴史上の人物
冒頭の概要説明の中のLEGENDSがまさにこの例。日本でも子孫・遺族がいらっしゃれば許諾をとるべきでしょう。

4)スポーツ選手
プロサッカー選手は統一契約書によりJリーグが管理していますが、プロ野球選手については、昨年知財高裁で球団側に管理を認めた後、選手側が最高裁に上告しているので帰趨は不明。今のところは球団を通して選手とちゃんと契約するしかないのでしょう。
その他力士は財団法人日本相撲協会の許諾が必要、アマチュアスポーツ選手は、日本オリンピック協会が管理しているケースと個人事務所の場合に分かれます。

5)政治家
以前のエントリで、公務員は公務中であれば許諾不要との写真家協会の見解を紹介しましたが、政治家に関しては選挙運動期間中は公職選挙法の問題もあり、不用意に用いるべきではありません。

6)一般人
もちろん一般人であっても、人格権(プライバシー権)的側面から肖像権・氏名権はあります。私の業界では社員さんの写真なんかも許可なしには使わないように注意しています。

7)動物
物にパブリシティ権があるかないかについては、上述のとおりはっきりしないところがありますが、著名人と同様に有名な動物であれば、トラブルになると思った方がいいでしょう。

8)建築物・施設名
建築物・施設名も以前のエントリで触れましたが、パブリシティ権を根拠としていると思われる許諾/不許諾のポリシーは各所さまざま。以下私が知り得ている実際の事例です。
ジブリ美術館
 日本で最もパブリシティ権に厳しい施設と言われています。
 地図の中に名称を示す場合も、三鷹の特集でもない限り不可
 にしているとのことだそう。
東京ディズニーリゾート
 いかにも厳しそうですが、やはり写真はおろか、「東京ディ
 ズニーリゾートにご招待」なんていう広告記載も記載不可と
 しているそうです。もちろんリゾート内のアトラクションの
 名前を広告に使うのも不可。オフィシャルスポンサーになっ
 ている企業には認められるケースもあるようですが。
東京タワー
 写真も名前も事前申請。日本電波塔?まで。
六本木ヒルズ
 ここは事前許諾制。特に写真は撮影についても許諾が必要。
幕張メッセ
 写真は事前申請、名称は自由。施設のパブリシティ権管理
 のポリシーとしては、この組み合わせがスタンダードで
 しょうね。


次回はフリーライドについてまとめてみたいと思います。

広告表示のチェックポイント(1)―著作権

 
今度他社法務の方々と予定している勉強会の準備を兼ねて、日常寄せられる相談や研修などで私が社員にアドバイスしている事項の中から、広告表示に関するコンプライアンス的チェックポイントについて簡単にまとめていくシリーズ第一弾。

今日は手始めに、広告表示でやりがちな著作権侵害(ちょっと商標権その他も混ざってますが)のチェックポイントをまとめてみようと思います。

1)新聞や雑誌の流用
見出し、記事はいずれも基本的には著作物と考えます。昔は署名入りの論説でなければokと豪語する方もいらっしゃいましたが、無断で転載したり、要約して利用するのはNG。

2)データの流用
新聞社や民間調査機関が調査したデータも流用したくなるものの代表例。
データそのものの著作物性については争う余値はあるものの、編集物としての著作権を侵害する可能性が高いため、無断で転載したり、加工して新たなデータを作成しないように注意したいところです。

3)小説の引用
広告はどう考えても商業利用になるので、(形式的には引用であっても)基本的に著作権者の許諾が必要と考えます。
許諾については、社団法人日本文藝家協会へ問い合わせを。

4)歌詞の引用
これも上記3)同様。
歌詞の場合は替え歌的な利用にも注意したいところ。
日本の歌であれば、著作権管理はほとんどJASRACのはずなので、申請と許諾取得を忘れずに。

5)絵画/イラストの利用・写り込み
著作者の死後50年以上経っているような歴史的な絵画作品であれば別ですが、絵にはもれなく著作権が発生しています。特に絵の場合は、タッチを変えて書き直したり、パロディ的な利用をしがちなので注意したいところ。
また広告の被写体の背後に写り込む場合も、それが作品として目立つ場合は許諾が必要になるケースも。
こちらの問い合わせは、社団法人日本美術家連盟へ。

6)写真の利用・写り込み
写真が著作物なのは言うまでもありませんが、抜けがちなのはその写真が掲載されている新聞社・出版社の許諾だけでなく、撮影者(フォトグラファー)の許諾を要することが多い点。
また、許諾が取れた場合でも、他の写真と合成したりトリミングするのは著作者人格権上も言語道断です。
加えて、写真の中にさらに別の著作物が写り込んでいる場合も要注意。写真の利用について出版社や撮影者の許諾を得ていても、写り込んでいる著作物の権利処理がなされていないことによるトラブルが発生するケースがあります。
写真についての問い合わせは、社団法人日本写真家協会へ。

7)映画・ドラマ・CMの場面
制作者の許諾が必要。さらに俳優や有名人が写っている場合はパブリシティ権の観点から所属プロダクションの許諾も必要となるため、手続きが煩雑になります。
特に外国映画の場合は、配給会社や俳優の許諾のハードルが高いため、やめておいた方が得策かと。

8)他社製品・キャラクター商品の写り込み
他社の商標(ロゴマーク)や明らかにそれと分かるような製品の写り込みは、商標権や不正競争防止法上の観点からも危険なので極力避けます。
キャラクター商品の写り込みは、商品の販売元だけでなくキャラクターの著作権者の許諾も必要となってくるので、特に注意が必要です。

9)マークの無断利用
有名かつやりがちなところでは、オリンピックの五輪マークの無断利用。国際オリンピック委員会のワールドパートナー・オフィシャルパートナー以外は利用不可となっています。
意外なところでは、赤十字のマーク。「赤十字の標章および名称等の使用の制限に関する法律」によって商業利用に制限があります。

10)バーコード
ちょっと細かい話ですが、バーコードをデザイン的に利用したい場合、財団法人流通システム開発センターでの登録必要があるものは自由利用不可とされていますので注意。
また著作権からは離れるものの、携帯電話のカメラなどで読み取れるQRコード等の2次元バーコードについては、コード名称の商標権者について添え書きが求められる場合があります。


次回は肖像権・氏名権あたりをまとめる予定です。

コールドコール(cold calling)は違法か合法か

 
営業・マーケティングの手法、とりわけ優秀層のヘッドハンティングの手法としても用いられるコールドコール。
英語では“cold calling”と-ingをつけるのが正しいみたいです。

面識の無いターゲットに対し、「冷たく」あしらわれるのを覚悟で突然電話をかけるから、“cold”。「コールドコールでもヘッドハンティングの話であれば悪い気はしない」という人もいますが、突然電話がかかってくる方からすれば、基本的に迷惑な電話です。

時代は個人情報保護にうるさくなってはいるものの、なんだかんだ様々なルートから電話番号は入手可能な中、このような電話による望まない勧誘(不招請勧誘)が、果たして法的にどのような問題をはらむのかについて、ちょっと整理してみます。


嫌がる相手に繰り返し電話をすると違法

日本においては、ダメもとでかける最初のコールドコールについては、原則として規制の対象となっていません。

あえて「最初のコールドコール」と言っているのは、実は嫌がる相手に複数回電話をすることについては、規制をする法律が存在しているから。これはあまり知られていないようですが、特定商取引法の中に、以下のような条文があるのです。
第十七条(契約を締結しない旨の意思を表示した者に対する勧誘の禁止)
販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結しない旨の意思を表示した者に対し、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結について勧誘をしてはならない。

「迷惑だから2度と掛けないでくれ」という意思表示を受けてはじめて、その相手に対するコールドコールが禁止されるということですね。

ただし例外として、金融商品取引・商品先物取引の勧誘については、金融商品取引法および(この7月3日に改正法が成立した)商品取引所法が、締結の勧誘の要請をしていない顧客に対する電話勧誘を禁じていますので、その業界の方は特にお気をつけ下さい。


海外では初回から違法となる場合がある

他方海外ではもう少し厳しい法規制が引かれているところがありますので、注意が必要です。

有名なところで、アメリカではFTCが主導し多くの州で法制化されているDo Not Call List registryという制度があります。

ネットやFAX経由でFTCが管理するDo Not Call Listに登録することで、コールドコールやテレマーケティングを拒絶できるというもの。このリストに登録しておいたにもかかわらずコールドコールした場合は、通報により(日本と違って初回から)罰金が課されます。

この制度、導入当初は言論の自由を奪うという違法判決が出た経緯もあるようですが、現在はおおむね有効に機能しているようです。

その他、カナダやインドなどでもアメリカと同じような制度が採用されているようですし、EU加盟国についてもthe Data Privacy Directive 2002/58/EC(プライバシーと電子通信に関するEU指令)により事実上規制対象となるようなので、注意してください。

特定電子メール法ガイドライン案―こんな特定電子メール法違反ってしちゃうかもね・・・なパターン3つ

 
「うちの会社はお客さん以外にはメールで無差別的にDMなんか送らないからなぁ」

と余裕をぶっこいていると、いよいよ来月12月に施行される改正特定電子メール法に違反する可能性があるかも知れません。

かくいう私自身が余裕をぶっこいていた張本人なのですが、情報システム部門の先輩から警告を受け、総務省の省令・ガイドライン案を改めて読んでみて、危機感を新たにしているところです。
特定電子メール法の平成20年改正について
省令案の概要(PDF)
ガイドライン案(PDF)

この法改正、法務担当の皆様はとっくにご存知だとは思いますが、これまで「※未承諾広告」と件名に表示することによるオプトアウト方式を認めていた広告宣伝メールについて、
・オプトイン(明示的同意)を取得する
・その同意記録を1ヶ月以上保持する
・かつ広告宣伝メールを送信する際は厳格な責任者表示を行う
ことを義務化するもの。

取り急ぎ、自分が所属している会社で特に気をつけたいと思っている3パターンを共有させていただきます。皆さんの会社で気をつけられている事例や、こんなパターンが危ないといった事例なんかがあれば、是非共有お願いします。


■パターン1
「営業が過去取引顧客に新サービスご紹介メールを送ってしまう。」


もっともありそうなパターンですね。
継続的に取引している顧客であれば適用除外にあたり都度オプトイン(明示的同意)は不要ですが、過去のお客様は対象となる場合があります。

営業担当者が、旧知の顧客からニーズを掘り起こすようなシーンでは、なまじ知らない相手ではないので、ついついオプトインなしに(ご挨拶メールのように)新サービスをご紹介するメールを送信してしまいそうですが、これは要注意です。

私の会社だと、無料セミナーの企画・ご案内を過去のお取引先に対してメールで送っている状況がありますので、気をつけなければと思ってます。


■パターン2
「通常受付ルートと違う経路で顧客DBに登録された潜在顧客(=特定電子メール送付の同意を取っていない相手方)に広告宣伝メールを送付してしまう」


特にBtoCビジネスでは、商品販売・サービス提供にあたり、顧客からの申し込み時にHPから利用規約の同意ボタンをクリックさせることで、オプトインとしている会社は多いと思います。

しかし、ユーザーの口コミ・顧客紹介、お電話等で引き合いが入る潜在顧客など、イレギュラーなルートからアクセスされる方については、オプトインなしに顧客DBに登録されていくケースは結構多いと想定されます。そういった顧客も含まれたDBのメアドを使って、一斉同報で広告宣伝メールを送ってしまう業務フローはないか、一度チェックした方がよさそうです。

顧客DBに登録する時点で、顧客ごとに「オプトイン済/未了」を区別できる仕組みを構築しておかないと、後で自動配信で広告宣伝メールがバンバン配信されていた・・・なんてことになるしまうかもしれません。


■パターン3
「広告宣伝メールに送信責任者の氏名、苦情受付先の住所・電話番号等を明記せず送信」


オプトインすればそれで終わりかというとそうではなく、改正法4条および施行令10条により、送信責任者の氏名や苦情受付先の住所・電話番号等を広告宣伝メールに明記する義務が生まれました(明示しているwebサイトへリンクを貼り、リンク先に明示している旨記載することでも可)。

正確に言うとこの明示義務自体は改正前からあったのですが、特定電子メールの対象が改正で実質的に増加することで、いよいよこの義務が深刻なものになってきます。

営業担当者が広告宣伝メールを作る際に漏れなくこの情報を入れてくれるとは思えません。かといって営業から広告宣伝メールを出しちゃだめというのも現実ムリでしょう。多少不自然でも、営業担当者がメーラーに設定している自動挿入の署名にこれらの情報を漏れなく入れさせるしかなさそうです。


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【雑誌】BUSINESS LAW JOURNAL No.9 12月号―広告法務が旬みたいです


今月のテーマは「売りたい!に応える広告法務」。

そうとは知らず、ちょうど一昨日広告法規の本をご紹介したばかり。
BUSINESS LAW JOURNALは、私の興味のツボにタイムリーに応えてくれていて、感動すら覚えますね。



広告表示10のチェックポイント

見どころは、特集冒頭の「広告表示チェック10のポイント」。
これまで、広告を作成したり出稿したりする際に法律を意識したことがなかったような方は、ここに示された10のポイントを押さえていれば8割方リスクは排除できるかと思います。

概略以下のとおりですが、詳細はぜひ本誌にて確認を。

1)広告表示にあたるかどうか
  対一般消費者の表示であれば景品表示法の規制対象
  となる広告。
  対事業者の場合は不正競争防止法等の規制対象に。
2)どのような販売方法をとるのか
  通販や訪販など、方法により明示義務が異なる
3)対象商品・役務は何か
  ・医薬品…薬事法など
  ・食品…食品衛生法など
  ・金融商品…金融商品販売法など
 の規制に注意。
4)二重価格表示を行うか否か、二重価格表示の場合は
  景表法の不当表示に当たらないか
5)品質表示が優良誤認・有利誤認を招く表示になって
  いないか
6)表示の根拠(第三者機関による客観的証明物)は確保
  しているか
7)他人の創作物を利用することについて、権利を侵害
  しないか
8)民放連基準、新聞広告掲載基準等、広告媒体の自主
  基準に抵触していないか
9)制作を外注する場合、下請法に抵触しないか
10)広告物をeメールで送信する場合は、特商法改正後
   のオプトイン規制に抵触しないか


広告審査の担当者はつらいよ

電通、日本コカコーラ、新生銀行、ドクターシーラポ、ケンコーコム、カタログハウス等の各業界大手どころの担当者が登場され、それぞれ1〜2ページずつ、その所属業界ならではの広告審査の悩みどころを披露してくださってます。

特に、ドクターシーラボやケンコーコムの薬事法関連の規制との戦いは興味深く拝読しました。
都道府県の医薬品等適正広告基準 で、「デトックス」がNGワードに指定されているのは知っていたのですが、「アンチエイジング」もすでにNGワードになっているとか、すでに「メタボ」にも行政が目を付けはじめているという話を聞いて、行政の過剰反応では?なんて感じたり。

こういう広告表示の掲載判断って、条例が細かい上に、白か黒かが明文化されていないグレーゾーンもあって、各業界の法務パーソンのみなさんは現場からのチャレンジングな広告案にGoを出すかNo Goで止めるか、契約書のレビュー以上に日々悩んでいらっしゃるのだろうなと。

ご担当者の心中お察しいたします。

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【本】広告法規―広告の法律は景品表示法だけじゃない


広告を全く出さない会社は存在しないと言ってよいでしょう。

一方で、広告に関する法律は
・不正競争防止法
・景品表示法
・特定商取引法
・著作権法
 …
と、経済法、消費者保護法、知的財産法と幅広い法分野をまたがって複数の法律が乱立・関連しているため、よっぽど広告会社の法務部所属の方でもないと、きちんと全体像を理解できている自信は持て無いのでは。

そんな法務パーソンの心細さを解消してくれる本がこちら。



広告六法という体系の提案

最大の見所は、著者らが提案する「広告六法」という体系。

先述したように、あまりにも体系化されていない広告に関する法律のいくつかを、著者なりに体系化したものです。

それがこれ。
s-IMG_7977













・消費者基本法
・民法
・不正競争防止法
・商標法
・著作権法
・景品表示法
を広告における六法と位置づけ、その周辺法を体系化しています。

特徴的なのは、産業財産権法の上位に不正競争防止法を位置づけているところでしょうか。

学問的な視点で整理すると、不正競争防止法は営業標識・ドメイン名を守る知財法の一つという位置づけですが、この広告六法の中では、“模倣禁止法”の代表格としてのこの位置づけ。

こういったところに主張の独特さはあるものの、権利や義務で法律を体系化するのはなく、広告というビジネス活動から法体系を整理しなおすという視点は古くて新しい発想法なのではないかと。


いい意味で総花的

私がこの本に出会ったのは、景品表示法に関する専門書を探していたとき。

残念ながら、この本は下記の目次を見てもわかるとおり、景品表示法を深掘りする専門書ではなく、表現の自由の話から始まって著作権の解説や契約法の話まで、むしろ総花的に解説する書でした。

第1章 広告と法規
第2章 広告メディアと法規
第3章 表示と景品の法的規制
第4章 広告の倫理基準と公正競争規約
第5章 広告と知的財産権
第6章 広告と著作権
第7章 広告取引契約
第8章 諸外国の広告規制

でも私のような非広告業在籍法務パーソンには、この総花さ加減が丁度良かったと思います。

景品表示法の話なんて、学問的にはそれほど深い話じゃないから専門書がないんだなぁということも、第1章〜第4章を読みながら広い視野で広告法規を捉える中で自分自身の腹に落ちましたし、屋外広告物法・屋外広告物条例なんていう法律まであるんだという知見が得られたのも、総花的な切り口だからこそ。

それぞれの法律について深い知識は無くても、自社の事業に関する法的リスクについて知らない・気づけないことをできる限り潰しておくことは、法務パーソンに求められている意識だと思います。

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「私には、ビールです。」→「私には、わかってました。」


私、家では酒を飲まないようにしているので、市販の酒の広告などどうでもいいんですけれど、あの広告は景表法の優良誤認にはならないんでしょうか。

※公正取引委員会 優良誤認とは
 http://www.jftc.go.jp/keihyo/yuryo.html

「私には、ビールよりうまい。」
であれば、個人の味覚の問題なのでお咎めはないかとは思いますが・・・
実際、うちの妻はあの広告を見てビールと誤認。

田村さんが間違えただけだから、いいんでしょうか(笑)


と思ってたら、公式サイト上では「私には、わかってました」にコピーが変わってる!
http://www.sapporobeer.jp/mugitohop/index.html

あらかじめコピーを2つ作っておいて、怒られる寸前で差し替えたのかな?

だとしたら、すごい。
ちょっといたずらチックでもありますね。

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No.1表示と景品表示法


弁護士 川村哲二〈覚え書き〉さんのエントリで拝見した、公正取引委員会による広告表示に関する実態調査報告書から。

求人広告の表記審査をしていると、
「日本でNo.1の月間利用者数を誇る・・・」
「○○分野での売上げでは世界No.1」
など、No.1を標榜する企業にたくさんお目にかかります。

巷の転職情報サイトをのぞいていただいて、キーワード検索で「No.1」を入れて検索していただいても、その実態は一目瞭然かと思います。

こんなにNo.1の会社がたくさんあるんだったら、日本ももっと景気がよくなってもいいはずなんですけど・・・とツッコミを入れながら(笑)毎日求人広告をチェックしているんですが、求人広告に限らず、世の中でもこのNo.1表示は乱発されているようです。

その実態調査結果と景品表示法上の解釈をまとめたものが「No.1表示に関する実態調査報告書」(PDF)

要点を引用すると
商品等の内容の優良性又は取引条件の有利性を表すNo.1表示が合理的な根拠に基づかず,事実と異なる場合には,実際のもの又は競争事業者のものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認され,不当表示として景品表示法上問題となる。
No.1表示が不当表示とならないためには,
。裡錙ィ栄充┐瞭睛討客観的な調査に基づいていること
調査結果を正確かつ適正に引用していること
の両方を満たす必要があるところ,調査結果の正確かつ適正な引用であるためには,前記のとおり,No.1表示は,直近の調査結果に基づいて表示するとともに,No.1表示の対象となる商品等の範囲,地理的範囲,調査期間・時点,調査の出典についても,当該調査の事実に即して明りょうに表示するよう留意する必要がある。

というわけで、客観性のない自社調査や、自社にとって都合のよいセグメントで区切ったような調査結果を根拠にNo.1表記をするのはNGってことです。

求人広告でのNo.1表示は、直接に商品や役務の購入を誘引しているわけではなく、間接的に求人を魅力的に見せるアイキャッチとして使われています。従って、直接景品表示法が適用されることはなく、職業安定法42条(募集内容の的確な表示)の問題として処理されるのかもしれませんが。

公正取引委員会による景品表示法の解説も分かりやすかったので、リンクを貼っておきます。
http://www.jftc.go.jp/keihyo/keihyogaiyo.html

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