「書面」が紙に書かれたものを指すことは理解していましたが、「文書」は紙(有体物)に書かれたものを指す語であり、したがって「電子文書」はよろしくない用語法であることを、恥ずかしながらこの年の瀬になって学びました。
これを知ったきっかけは、西村あさひ法律事務所に転籍されご活躍の水井大先生から「イチオシ」と教えていただいたこの書籍を読んで。
法令において「文書」と規定されている場合、有体物を前提としている。(略)電子的な手段によって作成された情報(電子データ)は、それ自体は無体物であり「文書」ではない。
本書はこの後、文書の「原本」と「写し」の概念、そして「電磁的記録」の厳密な用法解説へと展開。
クラウド上にある契約書の電子ファイルを、ローカルの物理ドライブにダウンロードして保存した場合、クラウド上のファイルは原本か?クラウドからダウンロードしたファイルはその「写し」か?といった、インターネット時代の法務担当者であればうっすら感じたことがあるはずの疑問に答えてくれます。
今年4月に刊行された白石忠志『法律文章読本』が評判となったように、法令における用語法を説く良書は枚挙にいとまがないところですが、本書は、そうした体系的・網羅的な法令用語集をすでに何冊か読んで腕に覚えのある方にも歯応えと学びのある、それでいて現代的な論点ばかりを取り上げた隠れた良書です。