3月11日より発生している災害について、被災者の皆様には心よりお見舞い申し上げます。
こんな時にのんきに本の紹介か、と怒る向きもあるかもしれませんが、私なりに冷静さを取り戻すため、そしてここで紹介するエッセンスがビジネスパーソンの皆様に何かお役に立てばというものですので、ご容赦いただればと思います。
損保ジャパン・リスクマネジメントがまとめた、比較的新しめ(2010年3月発刊)かつぶ厚め(P430)の統合的なリスクマネジメントの指南書。

著者:株式会社 損保ジャパン・リスクマネジメント
販売元:日本能率協会マネジメントセンター
(2010-03-20)
販売元:Amazon.co.jp
一言でいいところを、と言われれば、
1)学術的なリスクマネジメント
リスクの分類、組織論、BCMなど
2)法律的なリスクマネジメント
会社法、「損失危険管理体制に関する監査の実施基準」、金商法、建築基準法など
3)国際規格上のリスクマネジメント
JISQ2001,ISO31000,Guide73,ISO22301制定の動きなど
4)具体的なリスクマネジメント実務
危機対応の基本フロー、過去事例、危機対応時に起こしがちな失敗など
この4つともが分かっているプロが、どれかに偏ることなくバランスを取って著述している点。特に私は国際規格制定の動きに疎いので、こんな本があると助かります。

リスクマネジメントの成否は、言わずもがな“事前の準備”ができていたかどうかに尽きます。従い、今回のような大規模災害が発生してしまった後で何ができるかを考えても、日々起こる事象に対処するのが精一杯でしょう。ただ、こんなときこそ原則に立ち返って冷静になろうという意味で、この部分をご紹介させていただこうと思います。
危機対応で「守るべきもの」
危機が発生した際の企業の対応行動は「危機から何を守ればいいのか?」という視点で考えることがポイントになります。いわば危機対応への基本方針となるものですが、これは危機の特性や局面により違ってきます。この判断を誤ると、思わぬ損失を被ってしまいます。最近は、危機管理のなかで、事業継続管理(BCM:Business Continuity Management)が注目されていることから、ISO/PAS22399での記述を参考に、「何を守るか」を整理すると、次の3つに集約できます。
●有形・無形(評判・ブランド等)資産:組織の社会的信頼・ブランドやノウハウ、建物・設備等
●価値創造活動:事業活動、社会的活動等
●主要な利害関係者:利害関係者(従業員や消費者等)の生命・財産
今まさに皆様の会社では、従業員の命、そして顧客の生命・財産に関わる商品・サービス提供義務をどう守っていくかを最優先に検討されているところだと思います。それが自然と2番目の「価値創造活動」にもつながっていくことでしょう。我々法務パーソンにせめてできることと言えば、最後にくるであろう「有形・無形資産を法的にどう守っていくか」というテーマについて、獅子奮迅と対応する現場に代わって冷静に検討しておくことではないでしょうか。