企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

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【本】『金融機関営業担当者のための法律・税金・会計ハンドブック〈平成29年度版〉 』― 法務と税務をつないでくれるカンニングペーパー見つけました

 
金融機関の方々って、会計だけじゃなく法務も税務も知っててすごいなあと思ってたら、こんな便利な本を隠し持ってたんですね。





我々法務畑の人間は、とかく及び腰になりがちな税務や会計。勉強する気があっても、法務と税務・会計を具体的につないで解説してくれるような便利な書籍なんて売ってないしなあ。そう思っていたところに、金融系の知人にズバリこの本の存在を教えてもらったわけです。

たとえば、法務面からストックオプションの発行手続きを確認すると、「税務面は18ページ参照」という具合にリファレンスがあって、

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該当ページに飛んでみると、表組、具体例+図入りで分かりやすくストックオプション税制に関する説明がある、といった具合。この税制解説からも「法務面は210ページ参照」の相互参照が入っています。

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みずほ総研相談部とみずほの顧問弁護士・税理士・会計士が、みずほの営業担当者を対象に営業トークのカンニングペーパー(失礼)として作成した本なので、法・税の知識がなくとも読めるレベルにかみ砕かれている上、記載内容の信頼性も高いものになっています。

というか、法人設立や募集株式発行による増資といった会社法まわりの制度図解は、どの法律書よりもわかりやすいまとめ方になっていて、こういう図解・表まとめの方法があったのかと、法務面でも新しい発見がいくつかありました。会社法をビジネスに当てはめて理解する副読本としても使えそうです。

解説されている項目詳細をお知りになりたい方は、目次と紹介パンフレットがあるこちらのリンクからどうぞ。

平成29年も終わりに差し掛かっていますが、本書は毎年7月ごろ刊行されているものだそうなので、あと6カ月は使えます。
 

【本】取引スキーム別 契約書作成に役立つ税務知識Q&A ― 検討すべき税目の漏れをまずなくそう


タイトルがすべてを言い表していて、説明が必要なさそうな本ではあるのですが。





よくあるタックスコンサルが書くM&Aの会計・税務に法務目線を絡めた本とも、官公庁OBの方が書く印紙税だけを取り扱ったような本とも違い、
・株式譲渡
・株式引受
・事業譲渡
・組織再編
・ローン
・組合
・匿名組合
・信託
・ライセンス
・サービス提供
・販売代理
・不動産
・雇用・出向・SO
・和解
の取引スキームと契約ごとに、契約書作成に当たって必要な税務知識を横断的にまとめた大変便利な実務書。しかも森・濱田松本法律事務所の大石篤史先生らが執筆されたと聞けば、それだけで買いでしょう。

帯の宣伝文句には「法務部員が“税”を知ると強くなる!」とありますが、すでに必須と言われるようになってきている気もします。とはいえ、契約書起案・レビューに必要な税務知識とは何か?と聞かれて、自信をもって即答できる人はまだまだ少ないんじゃないでしょうか。この本のQ1−1は、その問いにあっさりと回答をくれます。

Q1−1 法人間の取引に関する契約書を作成するにあたり、検討すべき主な税目について教えてください。

A1−1 法人税、源泉所得税、復興特別所得税、消費税、登録免許税、印紙税、不動産取得税、固定資産税などについて検討することが必要です。

クロスボーダーライセンス契約の消費税一つとっても自信がいまいち持てていないレベルの私には、国内/国外取引両方の目線で、かつこれだけの税目をカバーしてもらえるのは、検討すべきことの漏れを無くすという意味で大変ありがたいものです。

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Q&A形式の書籍の限界として、総論と各論の間でどうしてもこぼれてしまう部分が出たり、深堀りが足りないところは出てしまうものの、それでも、この本に掲載された多数の類型と具体的設例を読み通すことで、不課税と非課税、源泉徴収、租税条約、PEの評価ポイントといった税務のキーワードとカンドコロが理解できれば、実務での吸収スピードは格段に早くなると思います。
 

国際課税ルールの大転換とデジタルコンテンツ取引への影響

 
ジュリスト6月号の特集は「加速する国際課税制度の変容」。税法にはあまり興味関心がなかった法務パーソンも、自社ビジネスに影響がでないか、これを読んでチェックされたほうがよいかも。





「総合主義」から「帰属主義」への転換


一番のポイントは、これまで、国内に恒久的施設(PE)を有する場合にのみ日本源泉の所得に対して内国法人や居住者と同様にその全所得を総合合算する、いわゆる「総合主義」を採用していたところを、これからは
  1. PEの果たす機能や事実関係に従って外部取引・資産・リスク・資本を PEに帰属させ、
  2. PEと本店等との内部取引をも(文書化して)認識し、
  3. その内部取引が独立企業間価格で行われたものとしてPE帰属所得を算定する
というOECD承認アプローチ(Authorised OECD Approach)を採る、いわゆる「帰属主義」へと大きく転換させることが決定したという点。

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こうすることで、国際取引における二重課税や二重非課税をなくし、競争環境を公平にしようというのが世界の潮流となっており、おくればせながら日本においてもその方針が徹底されることになったというわけです。

越境デジタルコンテンツに対する課税の徹底


またこの流れを受け、デジタルコンテンツの越境取引における付加価値税・消費税の徴税について、
  1. BtoB取引においては、仕入事業者が国外からのサービス提供等に関する税を申告(国外事業者に代わって天引き)する「リバースチャージ」方式を採り、
  2. BtoC取引においては、国外のサービス提供者がコンテンツの消費地において課税当局に登録して納税する
という方針で各国が協調して動いているとのこと。

上記1に関連して、先日、EUをサービスの最終提供地と想定したライセンス契約の交渉場面においてロイヤルティ分配の計算式の定め方で先方と会話が咬み合わず、スタックして困った事態がありました。実はこれ、EUにおいてはすでにこのAuthorised OECD Approachが徹底され、付加価値税が決済サービス事業者によって天引きされているという事実を当方が知らなかったのが原因という、お恥ずかしい事態だったわけです。まさに「無知は罪」。先方にはこの場を借りて(こっそり)お詫びします。

また上記2に関連して、あくまで現行法の枠内での議論ではありますが、以下のような記事からも国税当局がすでにこういった国際取引の課税問題に注目していることが伝わってきます。

海外販売までも消費税、スマホアプリの受難(東洋経済)
各社が急きょ集まって情報交換した問題とは、グーグルプレイを通じた販売についての消費税課税問題。国税当局が、本来は消費税が不要であるはずの海外向けの売り上げについても、過去にさかのぼって消費税を課し始めたのだ。
なぜグーグルプレイに限って課税されるのか。国税当局の理屈はこうだ。

アップストアの場合、アプリ会社は地域別に設置された直営代理店(日本の場合はアイチューンズKK)を通してアップルにアプリを納めるという契約形態。そのため、国内向けと海外向けの取引は明確に区別できる。アイチューンズKKとの取引のみが課税対象となり、海外販売については、問題なく消費税法の輸出免税が適用される。

一方、グーグルプレイではアプリ会社がユーザーに直接販売する契約形態。アプリ会社にはグーグルから国別売上高の情報が提供されている。

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ところが、現状の法律では海外ユーザーとの取引に輸出免税が適用されず、全取引が課税対象となってしまう。なぜなら、輸出取引の証明には「販売先の氏名と住所が必要」と消費税法施行規則第5条1項で定められており、国別売上高の情報だけでは足りないのだ。課税を回避するため、あるアプリ会社はグーグルに氏名と住所の情報提供を求めたが、個人情報保護を理由に断られたという。

法務として税務にどこまでタッチすべきか、すべきとしても実務レベルでどこまでキャッチアップできるのかはとても悩ましい問題ですが、このあたりの背景や潮流については早めに理解して影響を想定しておかないとまずそうです。
 

GoogleやFacebookが採用する節税スキーム “Double Irish with a Dutch Sandwitch” の絵を見ていたら、納税地=裁判管轄地になる未来が見えてきた


Googleの有償サービスの規約Facebookの利用規約を見ると,契約当事者がなぜかアイルランド法人になっています。

これはどうやら節税のためらしいという話は耳にしていたのですが,西村高等法務研究所『アジア進出企業の法務』の中で,その種明かしを図解とともにしてくれていましたので,勉強がてらそのポイントをメモ。

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  • Double Irish with a Dutch Sandwitchと呼ばれる手法。アイルランドに二つ会社を設立し(図中IrXとIrY),その間にオランダ法人を挟み込むスキーム
  • まず,アメリカ本社からIrXに対し,IPなどの無形資産を“実質的”譲渡(アメリカ国外のグローバル市場における使用権のみをIrXに譲渡するコストシェアリング契約を締結)することにより,海外事業に関するIPを無形資産としてIrXに切り出す
  • グローバル市場からの収入は,海外事業の拠点として設置されたIrYが事業所得として得,その大部分をライセンス料という形でIrXに移転させるが,IrYからIrXのライセンス料にアイルランドの源泉税がかからないよう,アイルランドとの租税条約によって使用料などに係る源泉税が免除されているオランダ法人を経由して支払う
  • さらに,IrXの事業の本拠は英領バミューダ(またはケイマン)に設置する→アイルランドの租税法上は管理支配地主義のため,IrXに集まる利益に対して課税されないこととなる

これにより,グローバル市場の収益に係る実効税率は2.4%まで圧縮されていると言われています。さらにアイルランド現行税制では,一定の条件を満たせば外国親会社への特許使用料支払いに源泉税が課税されなくなっているそうなので、IrY to ダイレクトにアメリカ本社への支払いも可能になりはじめているとのこと。

このようなことができる税制をなぜアイルランドが設けているのかといえば,ある種の企業誘致策であり少額でいいから税金を稼ぎたいという思惑があるから。その一方で「脱税」されるアメリカとしても黙っているわけにもいかず,同様のスキームを採用しているアップルに対し,10兆を超える利益の課税逃れを行っているとして,今年の5月に入ってから議会上院が追求をはじめています

日本の税法では,英領バミューダに実質的に利益を集積させているとしてタックスヘイブン対策課税を適用することが可能であり,この節税スキームは通用しないようです。とはいえ,契約のグローバル化が進み海外での売上シェアが高まっている企業,かつ“事業の本拠地”“恒久的施設(PE)”が捉えにくいIPやクラウドを用いたビジネスに関わる法務の方は,このあたり研究されると面白いんじゃないでしょうか。

ちなみに個人的なアイデアですが,企業単位ごとに税金を納めるのではなく,プロジェクトや契約ごとに税金を収めるようにしてはどうかと。そうなると,契約書上の裁判管轄地がその案件の納税地ということになるのでしょう。案件で紛争がおきなければ税収が入り,揉めたら裁判所がその紛争解決の面倒をみてやらなければならないという徴税国目線でみたリスク・リターンの関係で考えると,とっても合理的なような気がして悪くないアイデアだと思うのですが,いかがなものでしょうか?本当にそうなったら,裁判管轄条項の契約交渉が国の利益を代表した戦いにもなるわけで,法務担当者としては新しいやりがいもでてくるというものです(笑)。
 



 

【本】メディア、エンターテイメントビジネスの税務 ― 有料デジタルコンテンツの普及が、新たな源泉所得税問題を引き起こす

 
webによって、誰もがデジタルコンテンツを世に発表できる時代になってだいぶ月日が経ちました。そして、こんな個人ブログでも、広告収入・アフィリエイト収入が得られるのが普通になっています。しかし、これまでは、あくまでも無料コンテンツによって集まったアテンションを広告収入に変えて回収するというモデルがほとんどでした。

それが今、スマートフォン・iPad・Kindleの普及によって、電子書籍・デジタルコンテンツとしてストレートに有料課金するモデルへと変貌してきています。日常はサラリーマンをしているアマチュアライターに有料メルマガの原稿を依頼したり、アマチュアエンジニアにスマホゲームの作成を委託して制作費を支払うような企業も増えていることでしょう。こうして、有料デジタルコンテンツをプロデュースする事業者と、そういう人からの依頼を受けて新たに書き手・クリエイターとなる人は激増していくことと思われます(どれだけ売れるかどうかは別として・・・)。

その際に問題になるであろう法律上の問題が、源泉所得税の徴収です。税の確実・効率的な徴収を行うために、書き手に報酬を支払う立場の事業者に徴収を義務付けているこの税金。電子書籍を始めとする有料デジタルコンテンツの普及によって乱立するであろう“新興デジタルコンテンツ出版社”と“アマチュアクリエイター”が、これまでの無料+広告モデルでは馴染みのない源泉所得税の徴収をめぐって混乱することが、それして課税当局の監視の目も厳しくなっていくことが予想されます。

そんな混乱に巻き込まれる前に、有料デジタルコンテンツをプロデュースする事業者側としての税務を理解しておきたいところ。

Q&A メディア、エンターテイメントビジネスの税務―わかりやすい報酬・料金、非居住者等所得の源泉所得税Q&A メディア、エンターテイメントビジネスの税務―わかりやすい報酬・料金、非居住者等所得の源泉所得税
著者:久川 秀則
販売元:大蔵財務協会
(2008-11)
販売元:Amazon.co.jp



税務の本は数あれど、源泉所得税について絞って述べている本自体がレア。なおかつ、この本では、
・広告代理店
・ゲーム業界
・新聞・出版
・アート・イベント
・芸能プロダクション
・音楽業界
・映画業界
・実演・パフォーマンス
・テレビ・ラジオ
・スポーツビジネス
と、業界ごとに実際に起こりそうなQ&Aを分けてまとめてくれています。デジタルコンテンツというキーワードにこれらの既存業界軸を掛け合わせることにより、源泉徴収という言葉が最近自分の業界でもニオうなあとご心配の方にも、役立つこと請け合いです。

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私はこの本を読むまで、恥ずかしながら、源泉所得税というものが居住者/非居住者の別にこれほどまでにピンポイントで指定されているものであることや、最もポピュラーな原稿料について1回に払われる額が100万円以上になると税率が10%→20%に跳ね上がることなどすら、よく理解していませんでした。

法務部があるような立派な会社ですと、印紙税の貼付判断を経理がするか法務がするかで押し付け合いが起こったりするのが日常茶飯時です。税金については知ったこっちゃないという態度をとっている法務部門も少なくないと聞きますが、やはり契約のあり方によって課税判断が変わる以上、契約文書を司る法務が無関心でいるというのは無責任に過ぎないかと思っています。
 

【本】あらゆる領収書は経費で落とせる ― 福利厚生費マジックをフル活用する

 
トコロ変われば職場変わればで、各種税法についても少しずつ勘を養っていかなければと思うコトが増えています。とは言っても奥深い税務の世界、まずは親しみやすいテーマからと、街の書店の売れ筋本を手にとった次第。


あらゆる領収書は経費で落とせる (中公新書ラクレ)あらゆる領収書は経費で落とせる (中公新書ラクレ)
著者:大村 大次郎
販売元:中央公論新社
(2011-09-09)
販売元:Amazon.co.jp


 
色々な会社で働いてみると、どんなものを経費と認めるかは会社によってもマチマチで、そこに社風も現れるよなあと思うことが多々あります。例えば、書籍代を経費として一定枠自由に従業員に使わせてくれる会社や、職住接近を実践する社員に月3万円程度の住宅補助を出す会社なんかがあると思いますが、それが本当に生産性やロイヤリティ向上につながるかどうかはさておいても、企業として従業員に何を期待しているかが伝わってきますよね。最近では、DeNAさんが渋谷ヒカリエの新オフィスで従業員へのフリーランチ提供を始めた、なんて話題もありました。

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それと同時に、法務パーソンとしては、税法は法律なのにもかかわらずなぜそんなに曖昧さを持たせているんだろうと疑問に思うこともしばしば。この本では、元国税の法人税担当調査官である筆者が、その経費認否の曖昧さ・恣意性を逆手に取って利益調整に最大限に活かす術を、かなりあからさまに語っています。

中でも、本書で著者が一貫して力説するポイントが、「福利厚生費勘定をもっと使え・活かせ」という点です。その背景・手口を一部引用すると・・・

社員の“給料本体”ではなく、福利厚生を充実させることで、総合的な待遇をよくする、という手法は、実は外資系企業ではよく採られているのです。外資系企業は、費用対効果に関して、非常に細かく研究しています。
給料を上げると、社員は税金を払わなければならないし、会社も社会保険料その他の負担が増える。ならば、給料を上げるのではなく、その分、福利厚生を充実させたほうがいい、そういう方針を外資系企業は採っているのです。
実際、外資系企業では、驚くほど福利厚生の充実した会社があります。高級マンションに会社丸抱えで住めたり、格安で食事できたり、会社内に無料の保育施設が設置されたり等々。
この外資系企業の戦略は、非常に理にかなっているものです。日本の企業も是非真似をするべきでしょう。
残業をしたり、宿直勤務をする職員に対して「夜食」を支給した場合は、その費用は福利厚生費として認められるということになっています。
昼食についても、次の要件を満たせば会社が支給してもいいことになっています。
・半額以上を社員が負担すること
・1ヶ月の会社の負担額が3,685円以内であること
コンサートやスポーツ観戦については、ほぼ自由に福利厚生費として計上できます。
旅行費用を経費で落とすには、二つのやり方があります。一つは「会社の業務で旅行をする」という方法です。もう一つは、社員の慰安旅行として旅費を計上する方法です。
クルーザーを業務で使う会社なんてほとんどないので、クルーザーを会社の経費で落とすのはおかしい、と思われるのも無理はありません。実は、クルーザーは福利厚生費で落とすのです。つまり福利厚生の一環として、クルーザーを購入した、ということにするわけです。


従業員のモラルや本業への専念度合いに悪影響も及ぼしかねないので、大人数になってくるとここまで何でもかんでも福利厚生費で落とさせる会社も少ないとは思いますが、特に小規模な会社やベンチャー企業においては、支払える給与が少ない分、こういった法律上許される工夫で従業員に報いるということを検討するのもありかもしれませんね。

くれぐれも、こういう本を読んでるからといって、私自身がマイクロ法人を作って節税対策にいそしもうなどと画策しているわけではございませんので・・・。
 
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