企業法務マンサバイバル

ビジネス法務に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きる皆様に貢献するブログ。

_PFルール

Apple法改正のお知らせ ― ガチャ確率開示が義務化されました(追記あり)

 
Appleが、iOSデベロッパー向け利用規約の一部を構成する「App Store審査ガイドライン(App Store Review Guidelines)」を改訂。

ルートボックス、すなわち有料でランダムに仮想アイテムが出現する仕組みまたはそれに類似するものをアプリで販売するときは、各々の得られるアイテムの種類ごとにそのオッズすなわち確率を開示しなければならない、というルールを、3.1.1の一番最後の箇条書きとして追加しました。ガチャ確率開示の義務化です。またいつものごとく、オフィシャルな予告なしに、突然にです。

App Store Review Guidelines

en_applepayment20171221


ガイドラインの日本語版はまだ本日現在改訂されていない模様。
比較のためこちらも画像をはっておきます。

jp_applepayment20171221


“the odds of receiving each type of item”とありますが、このeach typeがどの粒度を指すのか、つまり、個別アイテムの確率開示を義務化しているのか、それともS、A、Bレアといったなんらかのグルーピングをした確率開示で許容されるのか。ここが一番の論点でしょう。


といっても、業界の有識者は、この流れは推測できたことだろうと思います。弊ブログでも11月23日に「STARWARS BATTLEFRONT2がガチャ規制の虎の尾を踏む」と題する記事を書いたとおり、米国ハワイ州議員が、他州の議員を巻き込んでルートボックスへの規制の必要性について言及をしていたからです。

未成年のアプリ内購入があまりにもかんたんにできてしまうことについて、過去FTCからの制裁も受けているApple。以降、この手のリスクはもう負えないと判断していたはずで、11月のこの動きが見えた段階で、プラットフォーマーとしての確率へのなんらかの規制はせざるを得ないと判断したものと思われます。そのころに、Appleから上位デベロッパーに対しては、何らかの打診が事前にあったかもしれません。

業界最大手のアプリでも、確率を開示していないものが存在します。その中でどういう影響がでるのか。そして、そうした大きな影響を与える力をもったプラットフォーマーに、売上にも直接影響を及ぼすような重大な利用規約変更権限を無制限に与えていていいものか、このブログではずっとそのことについて問題提起し、しかるべき方々にもお話をお伝えしてきました。議論すべき時はとっくに過ぎてしまっているようにも思うのですが。


2018.01.19追記

昨日付で日本語訳も改訂され、該当部分が追記されました。


8DA500A7-EFA6-43E7-8214-68564AD2A51A


注目していた“each type”の訳は「各種」と無難なものになっており、個別アイテムごとの確率設定(提供割合)の開示を求めているのか、グループ別での開示も許容されるのかまで踏み込んだ見解は示されていません。

とはいうものの、大手デベロッパーの対応を見ていると、個別アイテムごとの確率開示に踏み切っているところが目につきます。なんらかのグルーピングをしていながら、そのグループ中の一部の特定アイテムのみが著しく低い確率に設定されていたケースなどでは、中途半端にグループ単位での確率設定を開示することで、かえってその特定アイテムの確率を誤認させる結果になりかねない、という判断をされたのかもしれません。

このようなクリティカルな部分について後出しのルール変更を告知した後、それでも確率設定を開示しないデベロッパーに対し、Appleがいつから・どこまで取り締まりをするのか、注目です。

『アプリ法務ハンドブック』本日発売(追記あり)


『アプリ法務ハンドブック』、いよいよ本日よりAmazon・一般書店にて発売開始です。


アプリ法務ハンドブック (BUSINESS LAW JOURNAL BOOKS)
小野 斉大 (著), 鎌田 真理雄 (著), 東條 岳 (著), 橋詰 卓司 (著), 平林 健吾 (著)
レクシスネクシス・ジャパン
2015-10-09



Amazonでの販売状況


Amazonでは、未明からどういうわけだか「一時的に在庫切れ; 入荷時期は未定」表示となっていますが、おかげさまで予約が好調だったということもあって、在庫は潤沢に置かせていただける方向で調整済みと聞いています(Amazonは「売れる本」判定されないと1入庫あたり15冊以上の在庫をしてくれない)。出版社に連絡してすぐに対応させる予定。

2015.10.11 00:50追記
ようやく「在庫あり」となりました。お待たせして申し訳ありませんでした。


書店での販売状況


書店では、法律書の棚ではなくIT専門書の方の棚に置いていただくことになっています。書店でお求めの方はどうぞご留意下さい。

2015.10.18 21:30追記
都内では渋谷MARUZENジュンク堂・霞が関書原・丸の内MARUZEN・八重洲ブックセンター・紀伊国屋書店・丸沼書店で販売を確認しています。
一方、Book1st、三省堂、啓文堂等のチェーンには入荷されていないようです。書店ではかなり入手困難な模様。。。


s-IMG_5834
MARUZENジュンク堂さんが一番早かった

s-IMG_5837
霞が関書原さん

s-IMG_5853
丸の内MARUZENさんは3Fコンピュータ書籍の奥の方に

s-IMG_5859s-IMG_5860
八重洲ブックセンターさんは予定外の2F法律書の複数の棚に置いて下さってました

s-IMG_0112
新宿紀伊国屋書店には特設コーナー

s-IMG_5868
丸沼書店さんにはかろうじて1冊入荷


追加告知:出版記念セミナー開催


10月22日16:00より、『アプリ法務ハンドブック』出版記念セミナー(書籍付き)@渋谷を開催することになりました。

2015.10.18 21:30追記
おかげ様で50席ほどが満席となりました。ありがとうございます。


ブログ等でのご紹介・ご感想


ブログ等でもご紹介・ご感想をいただいています。今後拝見次第以下のリンクを更新していきたいと思います。お読み下さった皆様に御礼申し上げます。

・「アプリ法務ハンドブック」レビュー(Footprints)
 http://d.hatena.ne.jp/redips/20151008/1444253926

・『アプリ法務ハンドブック』(レクシスネクシス・ジャパン)(::::弁護士 川村哲二::::〈覚え書き〉::::)
 http://stuvwxyz.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-640e.html

・書籍紹介〜小野=鎌田=東條=橋詰=平林「アプリ法務ハンドブック」(弁護士川井信之(東京・銀座)の企業法務(ビジネス・ロー)ノート)
 http://blog.livedoor.jp/kawailawjapan/archives/8172026.html
 
・【レビュー】アプリ法務ハンドブック(事業者目線で)(企業法務について)
 http://katax.blog.jp/archives/52712352.html

・「アプリ法務ハンドブック」(知的財産と調査)
 http://ameblo.jp/123search/entry-12082741781.html



何卒宜しくお願いいたします。

『アプリ法務ハンドブック』を出版します

 
前著『良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方』に続きまして、“いま自分が一番欲しい法律実務書”を出版することになりました。名前を『アプリ法務ハンドブック』と言います。本日、Amazonにて予約受付開始です。


アプリ法務ハンドブック (BUSINESS LAW JOURNAL BOOKS)
小野 斉大 (著), 鎌田 真理雄 (著), 東條 岳 (著), 橋詰 卓司 (著), 平林 健吾 (著)
レクシスネクシス・ジャパン
2015-10-09



本書は、表紙帯にも大きく書かれているとおり、アプリサービスで必要となる
・知的財産権
・プライバシー
・デベロッパー規約(プラットフォーマーとの契約)
・OSS(オープンソースソフトウェア)
・資金決済法
・未成年取引・デーティングやアダルトコンテンツ・EC・ゲームに関する規制
・広告・キャンペーン
といった、広範な法域をまたぐ法務のノウハウを、実際にこの事業に携わっている者の目線から横断的かつ網羅的にまとめた「ハンドブック」です。


introduction
校了直前の原稿より


良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方』は、利用規約というサービスを始めるのに最低限必要となる“アウトプット”の解説メインに振り切り、読みやすさ・使いやすさに徹した本でした。それに対して本書は、アウトプットを裏付ける各法律知識をインプットするパートにも、紙幅の許す限り具体例を豊富に交えて踏み込んでいます。そうした理由は、電子商取引の戦場がウェブからアプリへと移りつつあるここ数年で、事業者だけでなくユーザーを含むみなさんの法律知識のレベルが飛躍的に上がったと感じているから。数々の炎上事件を起こしながらも確実に法化社会に向かうインターネット、その中のアプリビジネス市場で成功を目指し真剣にチャレンジしている事業者のみなさんのお役に立ち、日本発のアプリサービス全体の発展に少しでも寄与できればというのが、共著者一同の思いです。

また、個人的なミッションとして、当業界で実際に働いている一人の法務パーソンとして日々危機感を強くし、これからさらにシリアスな問題になるであろうアプリサービスの“構造的問題”に対する警告も、そっと忍ばせてみました。当業界に詳しい方は、その問題に対する私のメッセージに共感していただけるかもしれません。


個人情報保護法改正の成立が9月まで延び延びになったり、その間にAppleが新製品を出しデベロッパー規約も改定され原稿書き直しになったりと、いったいいつになったら校了できるのか…と何度か気を失いそうになりながら、ようやくこうして世に送り出すことができました。共著者のみなさんとレクシスネクシス・ジャパン編集部の下村さまに改めて御礼申し上げます。
 

プラットフォーマーはアプリデベロッパーにとっての“神”か

 
技術面(OS)と営業面(アプリストア)の両面からスマートフォンアプリ市場を支配するプラットフォーマーは、アプリデベロッパーにとってはまるで“神”のような存在であり、その神を怒らせるとこうなる、というギリシャ神話のようなお話。

【悲報】モンストがAppleからリジェクトされ消滅、ミクシィに大痛手か(IT速報)
19時現在、モンスターストライク(モンスト)がAPP Storeからリジェクトされ、新規インストールや課金が不可能な状態に陥っています。

常にセールス1位or2位の大人気ゲームの異常事態に、ユーザーはもちろん、ソシャゲ界隈やmixi株界隈など、様々な方面から驚きの声が

なお、同タイミングで「シリアルコードの入力フォーム」の停止を発表しており、これが起因した可能性も。

実際にiOSからモンストにアクセスしてみると、アプリマーケットおよびランキングから消されてDLできなくなっているだけでなく、私のようにアプリをすでにDLしてあるユーザーであっても、課金サービスが一切利用できなくなっている状態。月商から逆算して1日数億円は売り上げていると言われるアプリだけに、ミクシィ社にとっての機会ロスの大きさは計り知れないものがあります。

s-IMG_5662s-IMG_5663


こんなことになってしまった理由について、こちらの記事では、同社が実施していたシリアルコード入力による特別アイテム付与キャンペーンが、プラットフォーマーの定めるガイドラインに抵触しているからでは?との見解が紹介されています。

モンスターストライク、App Storeから消える。原因はシリアルコードか(Yahoo!ニュース)
発表内容に「Apple社からの要請」とあるとおり、おそらくは「シリアルコードの利用」を問題にAppleからアプリをリジェクト(却下)されたのだと考えられます。

モンストは8月13日にシリアルコードの入力場所をアプリから公式サイトへと変更していましたが、Appleからは許されなかったようです。

2015.08.13 ※重要※ iOS版の「シリアルコード」入力場所の変更について/公式サイトから「シリアルコード」が入力可能に | モンスターストライク(モンスト)公式サイト

では、なぜシリアルコードがあるとアプリがリジェクトされてしまうのでしょうか?

じつは、App Storeの利用規約には「アプリ内のコンテンツ、機能、サービスを購入するときに外部のシステムを利用してはいけない」と記されており、シリアルコードはその規約に違反しているのです。

アプリ内でシリアルコードを入力したユーザーにゲーム内の特典を付与すること自体、(そのシリアルコードの入手が取引付随性を伴う/景品上限額を超える等景品表示法等の規制に抵触していなければ)違法ではありません。しかしながら、プラットフォーマーのビジネスモデルは、アプリ内課金(販売)の都度30%の手数料をデベロッパーから徴収することで成立しています。シリアルコードを入力することでアプリ内でユーザーにアイテム付与させる仕組みを認めてしまうと、ユーザーが当該シリアルコードを入手する過程でデベロッパーが課金要素を設けるなどすれば、このプラットフォーマーの手数料ビジネスの抜け道となり得てしまいます。またそういった課金要素の抜け穴として用いなかったとしても、ゲームを有利に進められるシリアルコードを配布するキャンペーンを実施するなどにより、DLを加速させアプリの人気ランキングをコントロールすることも可能となります。このような理由から、プラットフォーマーはアプリデベロッパーがユーザーにシリアルコードを入力させる行為を厳に禁じています。法律的には違法でないことも、まるで違法なことのようにルールメイキングし制裁することができてしまう、それがスマートフォンアプリ市場におけるプラットフォーマーなのです。

今回の制裁がこのシリアルコードの入力キャンペーンのみを問題視したものかは不明ですが、シリアルコード問題を理由とするアプリの「リジェクト」と呼ばれる制裁は、今年2月に『バーコードフットボーラー』にも下されており、今に始まった話ではありません。なお、同アプリはプラットフォーマーからバーコードというタイトル自体が問題視され、事実上の強制改名を余儀なくされて、現在は『BFB2015 サッカー育成ゲーム』にアプリタイトルが変更されています。

s-barcodefoot

こういうことが既に実績としてあったとはいえ、さすがに売上トップランクのアプリが本当に「刺される」とは、運営会社のミクシィ社も予想していなかったのでしょう。予想しなかったと言えば、今年4月、デベロッパーの意思とは関係なく突然日本のAppStoreの最低販売単価を100円→120円に値上げし、お祭り騒ぎになったのも記憶に新しいところです。今回の事件で、販売価格決定権のみならず、デベロッパーの生殺与奪権さえもプラットフォーマーが握っていること、業界最大手のデベロッパーであってもその力には抗えないということが、改めて認識されることとなりました。

シリアルコード問題に限らず、プラットフォーマーによるアプリデベロッパーへの規制は強化される傾向にあります。今回はAppleのAppstoreでの出来事でしたが、GooglePlayも昨年9月のデベロッパー規約変更の内容今年5月からアプリの事前審査を強化しはじめたところを見るに、いずれGoogleも同様のスタンスとなることが予想されます。弊ブログでも、「現代消費者法」に森亮二先生がお書きになったプラットフォーマーの消費者に対する責任とアプリデベロッパーに対する優越的地位の濫用についての論稿をご紹介したことがありましたが、いよいよ、あのときの森先生の懸念が現実味を帯びてきたように思われてなりません。
 

【雑誌】『現代消費者法 No.25』― アプリビジネスにおけるプラットフォーマーの優越的地位濫用

 
民事法研究会から刊行されている専門誌『現代消費者法 NO.25』で、スマートフォンをめぐる諸問題が特集されていました。





2年縛り契約、SIMロック、広告における不当表示、未成年による決済問題と、既に他所でも語り尽くされた論点が並ぶ中で、森亮二先生が、アプリビジネスに携わる事業者なら誰もが知っているが甘受している「あの問題」について、新しい法的論点として触れていらっしゃいます。

s-IMG_4595

優越的地位の濫用の問題は、アプリマーケットプレイスにおいてより顕著である。
実のところ、アプリマーケットプレイスの中には、ユーザーから返金要求があると、店舗であるアプリ提供者に通知することなく、簡単に返金に応じるところがある。しかもその際にアプリマーケットプレイスとしての取り分(以下、「コミッション」という)をアプリ提供者に返金することはしない。たとえば、あるユーザーが100円のアプリを買ったとして、アプリマーケットプレイスのコミッションは30円、アプリ提供者の収益は差し引き70円である場合、このユーザーから返金請求を受けるとアプリマーケットプレイスは100円全額をユーザーに返金する。しかし自分のコミッションの30円をアプリ提供者に返すことはしない。
アプリマーケットプレイスはモールよりもなお、アプリの流通経路として独占的な地位を占めている場合があり、優越的地位濫用の問題は、モールよりもはるかに深刻なものであると考えられる。

おそらく、この問題について法律家が真正面から論稿として取り上げたのは、これが初めてなのではないでしょうか。


アプリビジネスは、スマートフォン端末とそれを支えるOS、マーケットプレイス、決済システムによって成り立っています。それらを構築するプラットフォーマー(Apple、Google、Amazon)は、エンドユーザー(消費者)との接点に関し、端末・ソフトウェア・決済手段のすべての面から完全に支配しており、もう一方の取引参加者であるアプリ提供者は、そういったプラットフォーマーの支配に服しながら取引に参加するという、弱い立場にならざるを得ない構造となっています。このような中で、アプリサービスにおける消費者問題は、
1)広告等表示の責任(景品表示法・特定商取引法・消費者契約法)
2)前払式支払手段の販売・管理責任(資金決済法)
3)個人情報の取扱い責任(個人情報保護法)
といった部分にも、だんだんと広がりをみせています。

これまでの考え方によれば、単純に「インターネットモールとテナントの関係に準じるもの」として、消費者問題への対応責任はアプリ提供者がすべて負うのである、という風に片付けられてきたように思いますが、森先生の指摘にもあるとおり、プラットフォームの態様によっては、このような考え方が見直されるべき点も出てくるのではないかと考えます。
 

コントロール権の狭間にて ― 著作権、プライバシー権、そしてプラットフォーマーの流通権


ここ数年、法務として現場から相談を受けていて回答に悩むポイントに、ひとつの共通点があるように思っています。

 コントロール権を肯定・保護し、創造者への利益還元を追求させるべきか?(方向性1)
 コントロール権を否定・放棄し、利用者への拡散と自由利用をドライブさせるべきか?(方向性2)


このバランスの取り方・見極めが、非常に難しい時代になってきているということです。
古くは、エンタメコンテンツと著作権の問題然り。
最近では、パーソナルデータとプライバシー権の問題然り。


前者の著作権の問題については、音楽や映像やゲームといったコンテンツを創る側のビジネスに携わっている方は、もう数年前から身に沁みて理解されていることでしょう。企業法務の立場からは当たり前だった方向性1を一辺倒に主張する時代はダサいものとされ、クリエイティブ・コモンズに代表される、シェアされて・知られて・使われてナンボの、方向性2を追求する時代へと一気に変化しました。まず先に拡散と自由利用がなければ自己への利益還元もないだろう、というわけです。一方で、iTunesミュージックの売上が失速するのと同時に、Taylor SwiftがSpotifyでの音楽配信を拒絶し方向性1を主張しだしたことにも象徴されるとおり、方向性2に突き進むことが必ずしも正解ではなさそうだ、ということもあらわになっています。

テイラー・スウィフト、Spotifyから全アルバムを削除「音楽は無料であるべきではない」
n-TAYLOR-SWIFT-large570
10月27日にリリースされたテイラー・スウィフトの最新アルバム「1989」は、TargetとiTunesのみ入手可能で、音楽ストリーミング配信サービスのSpotify では配信されなかった。これは、レコードレーベルがアルバムセールスを伸ばすためによく行う販売戦略の一環であり、「Windowing」と呼ばれている。さらに、彼女と彼女のレコードレーベルは、「1989」だけでなく、過去の全アルバムをこのSpotifyから削除することを決めた。

後者のプライバシー権の問題については、いままさに、パーソナルデータというコンテンツを創る側の人の利益と、その解放を望む人との間で、せめぎ合いが起こっているところです。日本においては政府が国策として方向性2の追求を表明し、企業がそれを歓迎し、方向性1が当たり前だった個人がそれに戸惑いをみせている、というフェーズに見えます。

匿名化条件、本人同意なしで利用可 ビッグデータ活用へ政府検討会
mca1406200500011-p1
 政府のIT総合戦略本部の検討会は19日、インターネット上などに蓄積されている個人関連データの取り扱いルールをまとめた大綱案を示した。商品の購買履歴など一部のデータは本人の同意がなくても匿名化を条件に企業の利用を認めることを明記した。個人情報を保護する観点から、不正利用を監視する第三者機関の設置も盛り込んだ。
 政府は月内にも大綱を正式に決め、個人情報保護法の改正案を来年の通常国会に提出する予定。「ビッグデータ」と呼ばれる膨大なデータを有効活用することで、ビジネスチャンスを広げる狙いがある。ただ、プライバシーをきちんと保護できるかどうかなど、慎重な対応を求める声も上がりそうだ。


さて、そんなせめぎ合いの中で、気付けばいつの間にか、創る側の自己の利益の追求と拡散・自由利用を望むとの間で発生する「コントロール権の融通(流通)」を取り仕切るプラットフォーマーと呼ばれるプレーヤー達が、強者へと成長しています。この存在の大きさは、“流通権”の保有者と呼んでも差し支えないほど。この点、先日出版された中山『著作権法 第2版』P38にも以下のような言及がありました。


著作権法 第2版
中山 信弘
有斐閣
2014-10-27


今後の著作権制度の将来を占うにあたり、巨大なプラットフォーマの存在を抜きにしては語ることができない。現にGoogle、Apple、Amazon、Facebookといった巨大プラットフォーマの寡占が進みつつあり、個々の著作権者にいかに強い権利を与えたとしても、その作品を公表するにあたっては、プラットフォーマが定めた条件に従わざるを得ず、例えば音楽は1曲99セントで売らざるを得なくなるおそれがある。そうなると著作物はコモディティ化し、個性を失い、あたかも100円ショップで売られている商品のようなものとなるおそれもある。それがどのような結果をもたらすのかは歴史の判断を待たなければならないが、現在はそのような過渡的な状態にあるという認識は必要であろう。


私自身、スマホエンタメコンテンツを創る企業に所属している企業法務パーソンであると同時に、SNS等を通じてパーソナルデータというコンテンツを創りまた他人のそれを利用している一個人でもあり、その二つの流通過程でプラットフォーマーとお付き合いをしています。そんな中で、冒頭述べた「コントロール権」について考えるに、正しいバランスがどこにあるかの読みづらさを生んでいるのは、コントロールの主導権争いが、創造者と利用者の二者だけでなく、それを流通させる人も含めた、三つ巴状態で発生しているからなのだと。

人と企業の活動がネットワーク技術に依存する社会になればなるほど、プラットフォーマー=流通権者たらんとする企業との法的な関係は、企業法務においての大きな論点になっていくものと、改めて強く感じています。
 

Google Playデベロッパー規約の改定 ― Googleさんのスタンスの変化

 
Google Playのデベロッパー向け規約が改定されました。「カスタマー サポートの問い合わせには 3 営業日以内、ならびに Google によって緊急とされたサポートや対象製品の問題には 24 時間以内に対応」といった、ユーザー数を多く抱えるデベロッパーにはなかなかシビアな文言が入ったということで、アプリデベロッパーのみなさんも少々慌てていらっしゃるようです。


変更点はそれだけではありません。Googleさんによる「変更の概要」によりますと・・・。

  • 最小限のサービス水準の規定や正確な連絡先の要件など、デベロッパーがユーザーに提供すべきサポートレベルに関する要件を更新しました(第 3 条 6 項)。
  • ユーザーの居住地に最も適した Google 事業体によるアプリとゲームの販売および配布、および国際的な税制への変更に準拠するための新しい文言を追加しました(第 3 条)。詳しくは、こちらのページをご覧ください
  • Google Play でのサードパーティ アプリの販売および配布に関する規定をさらに明確にし、安全なエコシステムを維持するために第 4 条 5 項を更新しました。
  • Google でアプリをプロモーションする際に、デベロッパーが利用できるマーケティング機会を拡大しました(デベロッパーはデベロッパー コンソールの操作で、この設定を管理できます)。第 5 条 1 項および第 6 条 2 項をご覧ください。
  • アプリが端末やデータに深刻な損害や特定のセキュリティ リスクをもたらす可能性がある場合の、端末からのインストール済みアプリの削除に関する文言を追加しました(第 7 条 2 項)。
  • Google がより迅速にユーザーやデベロッパーに新しいサービス機能を提供できるように、デベロッパーの混乱を減らし、業界標準に適合するように契約の変更手続きを更新しました(第 14 条)。

さらに、こちらの記事にも掲載されていますが、デベロッパーのアカウント管理者向けに、以下のような案内メールも配信されています。

  • デベロッパーに求められるユーザーへのサポート水準に関する要件を更新しました。最低限のサービス水準に関する定義、正確な連絡先情報に関する要件などを追加しています(第 3.6 条)。
  • Google でアプリを公開するときにデベロッパーが利用できるマーケティングの機会を拡大しました(この設定はデベロッパー コンソールで管理できます)。第 5.1 条と第 6.2 条をご覧ください。
  • ユーザーの居住地に最も適した Google 事業体からのアプリとゲームの販売および配布をサポートし、国際課税に関する制度改正に準拠するという旨の文言を追加しました(第 3 条)。この更新に関して早急な対応は必要ありません。対応が必要になったときに改めてお知らせいたします。詳しくは、ヘルプセンターのこちらの記事をご覧ください。
  • 第 4.5 条を更新し、安全なエコシステムを維持できるよう Google Play でのサードパーティ アプリの販売と配布に関する規定をさらに明確にしました。
  • インストールしたアプリによって端末やデータに深刻な損害や確認済みのセキュリティ リスクがもたらされる可能性がある場合に、そのアプリを端末から削除することに関する文言を追加しました(第 7.2 条)。
  • 契約書の変更手続きを、デベロッパーにわかりやすく業界標準に適合したものとなるように更新しました。これにより、Google はユーザーやデベロッパーに新しいサービス機能をより迅速に提供できるようになります(第 14 条)。


と言っても、法務パーソンとしては、これらの当事者からの説明だけを鵜呑みにするわけにはいきません。どこがどのくらい変わったのか、実際に規約の文言をこの目で確かめてみよう!ということで、比較表を作成してみました。ウェブ公開にしてありますので、ご入用の方はご参考になさってください。ただし、右カラムの新規約には、旧規約からの変更履歴も残したため、開く際ちょっとファイルが重たく、ご利用の環境によってはフリーズする方もいらっしゃるかもしれませんので、ご注意ください。


Google Play デベロッパー規約 新旧対照表(変更履歴付き)

GooglePlay20140925



一番目を引くのは、エンドユーザーに対してデベロッパーが負うべき販売責任をこれまでよりもかなり強調した、3〜4条の変更です。Googleさんの説明では「国際的な税制への変更に準拠するための」とあります。Google Playでの販売に対する国際課税ルールの適用が日本でも問題となっていることについては、当ブログの記事「国際課税ルールの大転換とデジタルコンテンツ取引への影響」でもご紹介したとおりですが、今回、「対象製品はデベロッパーのために、デベロッパーが独自の判断で設定した価格でユーザーに対して表示されます。」「デベロッパーは、ストアを通じて販売する対象製品に対して最終販売責任を負う商業者(Merchant of Record)です。」といった文言が加わり、税制対応に乗じたカタチで、「あくまでデベロッパーが販売者であって、Googleは代理販売者でもコミッショネア(問屋)でもないのだ」という、プラットフォーマーとしてのAppleとのスタンスの違いがクリアになってきました。


玄人向けの細かいところでは、この業界のこの手のトピックに精通されている@yrikさんもtwitterで指摘されていらっしゃったのですが、4.5でGoogle Play以外の 野良ストアにエンドユーザーを流すための宣伝用アプリを明確に禁じてきた点も注目です。というか、そもそも今ままでこの規約上「Androidマーケット」と呼んでいたものを、今回の変更で「ストア」と名称変更し、さらに定義条項でそれはイコールGoogle Playのことを言うのであるとしているあたりに、もしかすると、これまで他の野良マーケットのやんちゃをある程度容認してきたGoogleさんが、そろそろスタンスを変えようとしているのではないだろうか?と感じたのは、私だけの穿った見方でしょうか。


純粋な法務目線で見た際に興味深いのは、14条の規約変更権に関する記述の修正です。以前のバージョンでは、Googleがデベロッパーアカウント管理者へのメール通知を行うことを最終通知手段としていたのが、今回の変更でそれを削除し、デベロッパーコンソール上での表示が最終通知とし、安全弁として継続利用をもってみなし同意とする文言を加えています。確かに、今の時代となってはメールはすでに連絡手段として重視されなくなっているとはいえ、Googleからは(プッシュ型通知という意味で)能動的な法的通知を行わないことに変更するのは、なかなかの勇気が必要だったのではないでしょうか。利用規約を一方的変更権が果たして法的にどこまで有効たりうるのかという議論もある中、さらに一歩踏み込んだこの規定がスタンダードになっていくのか、参考にさせていただきたいと思います。
 

また何か気づいたことがあれば、こちらに追記いたします。
 

iOSデベロッパー規約の改定 ― 課金まわりの審査がさらに厳しくなる予感


iPhoneアプリの開発者であれば必ず同意を求められるiOSデベロッパー規約(iOS Developer Program License Agreement)に付属する“Schedule2"と呼ばれる文書。今年に入ってからすでに一度改定されていたのですが、この8月にも何箇所か改定され、v19となりました。開発コンソール上でのクリックで同意する方式なので、法人だとアカウントを管理している開発者の方がしっかり意識してないと、反射的に同意してしまっていたりするかも。
s-S2_v19


で、今回の改定ポイントで一ヶ所目を引いたところがあります。5. Content Restrictions and Software Ratingに、特に子どもを対象としたアプリでの課金煽りを禁止する条文が追加された点。

5. Content Restrictions and Software Rating
(略)
5.4 Licensed Applications that are targeted at children or otherwise likely to appeal to children, and which pressure children to make purchases (including, but not limited to, phrases such as “buy now” or “upgrade now”) or persuade others to make purchases for them, should not be made available in any Territory that has deemed such marketing practices illegal. You expressly accept and agree to take full responsibility for your Licensed Applications’ compliance with applicable laws pursuant to Section 5.1(c) of this Schedule 2, including without limitation consumer protection, marketing, and gaming laws. For more information on legal requirements of countries in the European Union, see http://ec.europa.eu/justice/consumer-marketing/unfairtrade/index_en.htm

“buy now” or “upgrade now”程度でもNGと例示があるところに、相当厳しい姿勢が垣間見えます。昨年にも審査ガイドラインが強化され、キッズカテゴリで配信されるアプリの課金まわりに厳しめのチェックが入るようになっていたところ。今年に入ってAppleがFTCのペナルティ受け入れを決め、さらに7月にはAmazonがFTCから提訴されていますので、これらに対応してのさらなるバージョンアップと思われます。
EUの消費者保護ウェブサイトにダイレクトリンクを張っているのも面白いところです。位置情報取得プロセスの厳格さといい、Appleが対EU政策も重視しているのがここにも現れています。


各国当局がスマートフォンの決済プラットフォームに対して規制を強めていく流れが加速する中、プラットフォーマーとしても、デベロッパーが制作するアプリの課金導線・画面遷移チェックをより厳密に行わざるを得なくなるものと思います。
 

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 17. Governing Law.(準拠法と裁判管轄)

 
Appleのデベロッパー規約を中心に、アプリのプラットフォーム規約を解説する試みの続きです。

17条は準拠法と裁判管轄に関する条項。

RADA17

This Agreement will be governed by and construed in accordance with the laws of the State of California, excluding its conflict of law provisions. The parties further submit to and waive any objections to personal jurisdiction of and venue in any of the following forums: U.S. District Court for the Northern District of California, California Superior Court for Santa Clara County, Santa Clara County Municipal Court, or any other forum in Santa Clara County, for any disputes arising out of this Agreement.

デベロッパー規約はカリフォルニア州法に従って解釈されること、そして規約に関するあらゆる紛争解決については、サンタクララ郡に所在する州裁判所、連邦裁判所、市裁判所を含む下位裁判所にのみ訴えが提起できるものと定めます。

以前解説したAmazon Web Serviceの利用規約をはじめ、ウェブサービスの規約では、サービス提供者のホームタウンの法律と裁判所によって取引先を拘束するのが常套手段。その解説でも述べたとおり、米国以外のデベロッパーにとっては、現実的にはかなりの戦意喪失要因となります。

売上上位のデベロッパーについては中立国での仲裁を受け入れる特約を結んでくれるとか、そういう譲歩はないものでしょうかねー。
 

スマートフォンアプリにおける音楽著作権処理の落とし穴

 
スマートフォンアプリのプラットフォーマーが定めるデベロッパー規約を読んでいると、その解釈やあてはめに悩まされることは少なくないのですが、iOSのデベロッパー規約(iOS Developer Program License Agreement)の中にこの条文を見つけたときも、「んんっ?」と我が目を疑いました。

s-1206705_31388119

3.3.18 Any master recordings and musical compositions embodied in Your Application must be wholly-owned by You or licensed to You on a fully paid-up basis and in a manner that will not require the payment of any fees, royalties and/or sums by Apple to You or any third party.

(私訳:3.3.18 デベロッパーが配信するアプリにembodyされた原盤・音楽著作物は、デベロッパーが全権利を保有するものか、Appleからデベロッパーまたは第三者に対して分配される金銭に依存しない一括払いベースでライセンスされたものでなければならない。)

つまり、「アプリ配信によってAppleからデベロッパーに支払われる分配金のうち、〇%をBGM利用料として支払う」といったスタイルでの許諾契約ではNGということになります。さらに続く後段には、

In addition, if Your Application will be distributed outside of the United States, any master recordings and musical compositions embodied in Your Application (a) must not fall within the repertoire of any mechanical or performing/communication rights collecting or licensing organization now or in the future and (b) if licensed, must be exclusively licensed to You for Your Application by each applicable copyright owner.

(私訳:加えて、アプリが合衆国外で配信される場合、アプリにembodyされた原盤・音楽著作物は、(a)著作権管理団体が現在または将来に渡り管理する公衆送信権の範囲内であってはならず、かつ(b)ライセンスされたものである場合には、適切な著作権保有者からそのアプリ向けにデベロッパーに対して独占的にライセンスされたものでなければならない。)

とも定められています。日本で有名作曲家等を招聘しアプリのBGMを制作させて利用許諾を得るような場合、作曲家がJASRACメンバーであると、基本的には著作権をJASRACに信託することになるかと思いますが、そうするとこの規定に抵触してしまう気がします。


それにしても、Appleはなぜこんな細かいことまで規約を定めているのでしょうか?思うに、Apple自身以外にDL/ストリーミングモデルの音楽配信ビジネスをiOSのプラットフォーム上で行わせないように、という思惑がありそう。さらには、音楽著作物の権利者から直接Appleに対してアプリ(にembodyされた音楽著作物)の配信差止めやフィーの分配請求が来てしまうような面倒を避けたい、という意図もあるのではと推測。

スマートフォンアプリの権利処理の場面では、どうしても高精細な画面を生かした映像・画像の権利にばかり目がいきがちですが、フィーチャーフォン時代との違いとしてBGMが当たり前のように実装されるようになってもいますので、このあたりも注意が必要になります。
 

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 16. Export Control. (輸出管理)

 
この16. Export Control. と一つ飛んだ18条は、輸出管理に関する条項です。


RADA16


You may not use or otherwise export or re-export any Apple Confidential Information received from Apple except as authorized by United States law and the laws of the jurisdiction in which the Apple Confidential Information was obtained. In particular, but without limitation, the Apple Confidential Information may not be exported or re-exported (a) into any U.S. embargoed countries or (b) to anyone on the U.S. Treasury Department's list of Specially Designated Nationals or the U.S. Department of Commerce Denied Person's List or Entity List.

Apple社の秘密情報を、それを入手した国から輸出・再輸出しないこと、特に、U.S. embargoed countriesに掲載された通商禁止国、およびDenied Person's List または Entity List に掲載された対象者への輸出・再輸出は厳に禁じています。

リストはどこかな〜と探してみましたので、リンクを張っておきます。
U.S. embargoed countries
The Denied Person List
Entity List

By becoming a Registered Apple Developer or using any Apple Confidential Information, you represent and warrant that you are not located in any such country or on any such list. You also agree that you will not use any Apple Confidential Information for any purposes prohibited by United States law, including, without limitation, the development, design, manufacture or production of nuclear, chemical or biological weapons.

上記でいう禁輸国にデベロッパー自身が所在していないこと、および米国法で禁止された用途にAppleの秘密情報を使わないことを表明し保証せよ、とあります。
 

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 15. Third-Party Notices. (サードパーティ製ソフトウェアに関する通知)

 
15. Third-Party Notices. は、Apple製品に組み込まれるサードパーティ製のソフトウェアに関する条項です。


RADA15


Third party software provided by Apple to you as a Registered Apple Developer may be accompanied by its own licensing terms, in which case such licensing terms will govern your use of that particular third party software. Mention of third parties and third party products in any materials, advertising, promotions or coupons provided to you as a Registered Apple Developer is for informational purposes only and constitutes neither an endorsement nor a recommendation. All third party product specifications and descriptions are supplied by the respective vendor or supplier, and Apple shall have no responsibility with regard to the selection, performance, or use of these vendors or products. All understandings, agreements, or warranties, if any, take place directly between the vendors and the prospective users.

サードパーティー製のソフトウェアについては、Apple社からデベロッパーに提供したものであっても、そのソフトウェア独自の契約条件が適用されること、Apple社がその利用を奨めるものではないこと、Apple社は何ら責任を負わず自己責任で利用すること、等が注記されています。


実際にこのThird-party noticesの実物を見てみたいと思い、探してみました。iPhoneでは[設定 - 一般 - 情報 - 法律に基づく情報 - 使用許諾契約]の中という、かなり見つけにくいところにあります。いつもは頑なに英語を貫くApple社が、ここだけはなぜか日本語。

s-IMG_3112

14. 第三者の製品に関する承認 iOSソフトウェアの一部には、第三者のソフトウェアおよびその他の著作物が利用され、または含まれております。当該著作物に関する確認、ライセンス条項および責任制限に関する事項は、iOSソフトウェアに関する電子的書面に記載されており、お客様の当該著作物の使用についてはそれらの各条項が適用されるものとします。Google Safe Browsing Serviceの使用は、Google のサービス利用規約(http://www.google.com/terms_of_service.html)およびGoogleのプライバシーポリシー(http://www.google.com/privacypolicy.html)の適用を受けます。

15. MPEG-4の使用、H.264/AVC に関する通知
(a) iOSソフトウェアには、MPEG-4ビデオエンコーディング機能および/またはデコーディング機能が含まれています。iOSソフトウェアは、MPEG-4 Visual Patent Portfolio Licenseに基づいて消費者による個人利用および非商用利用目的で以下のいずれか、または両方を行うためにライセンスされるものです:(i) MPEG-4 Visual Standardに従いビデオをエンコードすること(以下「MPEG-4ビデオ」といいます)、(ii)個人的、非商業活動に従事する消費者によりエンコードされたか、MPEG-4ビデオを提供するためにMPEG LAよりライセンスを受けたビデオ提供者から取得したMPEG-4ビデオをデコードすること。その他の使用に関してはいかなるライセンスも付与されておらず、また黙示にも付与されていません。販売促進用、社内用および商用の使用およびライセンスを含む更なる情報を含む更なる情報については、MPEG LA, LLC.より取得していただけます。http://www.mpegla.comをご参照ください。

(b) iOSソフトウェアには、AVCエンコーディング機能および/またはデコーディング機能が含まれています。H.264/AVCの商用利用には追加のライセンスが必要であり、以下の条件が適用されます:iOSソフトウェアにおけるAVC機能は、消費者が以下のいずれか、または両方を行うための個人利用および非商用利用目的に限るものとします:(i) AVC Standardに従いビデオをエンコードすること(以下「AVCビデオ」といいます)、および/または、(ii) 個人的、非商業的行為に参加する消費者によりエンコードされたAVCビデオおよび/またはAVCビデオを提供するためにライセンスを受けたビデオ提供者から取得したAVCビデオをデコードすること。他の使用およびライセンスに関する情報については、MPEG LA L.L.C.より取得することができます。http://www.mpegla.comをご参照ください。
17. Microsoft Exchangeに関する通知 iOSソフトウェアにおけるMicrosoft Exchangeメール設定は、お客様のiOSとMicrosoft ExchangeサーバまたはMicrosoft Exchange ActiveSyncプロトコールを実行するためにマイクロソフトによってライセンスされたその他のサーバソフトウェアとの間で電子メール、連絡先、カレンダーおよび仕事などの情報を無線同期するためにのみライセンス付与されます。

提供元社名とライセンス条件のURLを並べるだけでなく、かなりしっかりと免責文言を入れてるんですね。あれだけの多機能な製品に、オープンソースソフトウェアを含む他社ソフトウェアをほとんど使ってないという事実に、むしろ驚かされます。
 

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 14. Disclaimer of Liability. (免責)

 
14. Disclaimer of Liability. は免責条項です。Apple社の責任を排除する条項であるため、13条に続き全て大文字で表記されています。


RADA14


TO THE EXTENT NOT PROHIBITED BY LAW, UNDER NO CIRCUMSTANCES SHALL APPLE BE LIABLE WITH RESPECT TO THE SERVICE FOR SPECIAL, INDIRECT, INCIDENTAL, OR CONSEQUENTIAL DAMAGES, INCLUDING WITHOUT LIMITATION, DAMAGES RESULTING FROM DELAY OF DELIVERY OR FROM LOSS OF PROFITS, DATA, BUSINESS OR GOODWILL, ON ANY THEORY OF LIABILITY, WHETHER ARISING UNDER TORT (INCLUDING NEGLIGENCE), CONTRACT OR OTHERWISE, WHETHER OR NOT APPLE HAS BEEN ADVISED OR IS AWARE OF THE POSSIBILITY OF SUCH DAMAGES.

法律が禁じない範囲において、特別損害、間接損害、付随的損害、結果的損害かを問わず、不法行為(過失を含む)か債務不履行かを問わず、またAppleが示唆したかその責任について認識していたかを問わず、あらゆるケースについてサービス利用によって生じた損害についてAppleが責任を負うものではない、としています。

IF, NOTWITHSTANDING ANY OTHER PROVISIONS OF THIS AGREEMENT, APPLE IS FOUND TO BE LIABLE TO YOU FOR ANY DAMAGE OR LOSS THAT ARISES OUT OF OR IS IN ANY WAY CONNECTED TO YOUR USE OF THE SERVICE, APPLE’S ENTIRE LIABILITY FOR DIRECT DAMAGES UNDER THIS AGREEMENT SHALL BE LIMITED TO FIFTY DOLLARS ($50.00).

上記前段のように一切免責を主張しつつも、なんらかの事由でApple社がデベロッパーがサービスを利用したことによる直接損害に対する責任を負うこととなる場合はあるかもしれない。しかしその場合でも、特約のない限りその金額は50ドルを超えないと定めます。ご、50ドルって…。(苦笑)


このような免責条項が法的には認められるのかについては、たとえば日本では消費者契約であれば無効となる可能性はあるわけですが、デベロッパーはあくまで事業者であり消費者ではないので、このデベロッパー規約に同意している以上は有効と解するしかないですね。それが不満ならこの規約に同意しない、すなわちApple社のエコシステムで商売しないでくださいね(自分でAppleみたいなエコシステムを作れるものなら作ったらいかが?)、ということになろうかと。

たとえばApp Store自体がハッキングされて数日間販売が停止され、その間の売上を確保しそこねる、なんてことが実際に起きないとも限らないわけですが、それでもその損害賠償や損失補てんは期待できないということになります。アプリビジネスの売り上げ規模が大きくなればなるほど、このリスクは高まる一方であり、事業者としては十分に認識・留意しておかなければならない条項です。
 

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 13. No Warranty. (不保証)

 
13. No Warranty. は無保証条項と言われる条項です。まずご覧になって誰もが気付くのが、全部大文字で目がチカチカする!という点ではないでしょうか。


RADA13


これには法的な意味があります。米国法では、責任排除・制限を目的とした条項については、不利になる側の当事者が自発的に同意したかが裁判上で問題となるため、誰の目にもはっきりと飛び込んでくるこのような大文字表記で他の条項よりも目立つようにしてするのが通例となっているのです。「契約のときは見てなかった・気づかなかった」と言わせない、規約をみたデベロッパーが自発的に同意したことを主張しやすくするという効果を持たせるために、大文字にしているというわけです。


APPLE AND ITS AFFILIATES, SUBSIDIARIES, OFFICERS, DIRECTORS, EMPLOYEES, AGENTS, PARTNERS, AND LICENSORS (COLLECTIVELY, “APPLE ” FOR PURPOSES OF THIS SECTION 13 AND 14) DO NOT PROMISE THAT THE SITE, CONTENT, SERVICES (INCLUDING, FUNCTIONALITY OR FEATURES OF THE FOREGOING), COMPATIBILITY LABS, DTS SERVICES, OR ANY OTHER INFORMATION OR MATERIALS THAT YOU RECEIVE AS A REGISTERED APPLE DEVELOPER (COLLECTIVELY, THE “SERVICE ” FOR PURPOSES OF THIS SECTION 13 AND 14) WILL BE ACCURATE, RELIABLE, TIMELY, SECURE, ERROR-FREE OR UNINTERRUPTED, OR THAT ANY DEFECTS WILL BE CORRECTED.

Apple社やその関係会社等から提供された製品やサービスの正確性、信頼性、適時性等は保証されず、さらに欠陥があったとしても、それが修復されるかどうかも保証されていません。


THE SERVICE IS PROVIDED ON AN “AS-IS” AND “AS-AVAILABLE” BASIS AND THE SERVICE IS SUBJECT TO CHANGE WITHOUT NOTICE. APPLE CANNOT ENSURE THAT ANY CONTENT (INCLUDING FILES, INFORMATION OR OTHER DATA) YOU ACCESS OR DOWNLOAD FROM THE SERVICE WILL BE FREE OF VIRUSES, CONTAMINATION OR DESTRUCTIVE FEATURES. FURTHER, APPLE DOES NOT GUARANTEE ANY RESULTS OR IDENTIFICATION OR CORRECTION OF PROBLEMS AS PART OF THE SERVICE AND APPLE DISCLAIMS ANY LIABILITY RELATED THERETO.

ここに登場する“AS-IS” AND “AS-AVAILABLE” BASISという言葉は、英文契約の非保証文言の決まり文句です。「現状あるがまま」「利用可能な限り」で利用するという前提ですよ、という意味。サービスを利用してどういう結果になろうが、問題が発生しようがしりませんよ、とあります。


APPLE DISCLAIMS ALL WARRANTIES, EXPRESS OR IMPLIED, INCLUDING ANY WARRANTIES OF ACCURACY, NON-INFRINGEMENT, MERCHANTABILITY AND FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE. APPLE DISCLAIMS ANY AND ALL LIABILITY FOR THE ACTS, OMISSIONS AND CONDUCT OF ANY THIRD PARTIES IN CONNECTION WITH OR RELATED TO YOUR USE OF THE SERVICE. YOU ASSUME TOTAL RESPONSIBILITY AND ALL RISKS FOR YOUR USE OF THE SERVICE, INCLUDING, BUT NOT LIMITED TO, ANY INFORMATION OBTAINED THEREON. YOUR SOLE REMEDY AGAINST APPLE FOR DISSATISFACTION WITH THE SERVICE IS TO STOP USING THE SERVICE. THIS LIMITATION OF RELIEF IS A PART OF THE BARGAIN BETWEEN THE PARTIES.

Apple社は明示的にも黙示的にも、正確性・商品性・目的適合性を保証せず、第三者からデベロッパーが権利侵害を主張されないことも保証しないとしたうえで、全て自己責任でサービスを利用すべきこと、その条件で満足できないなら、唯一の救済策はサービスを利用しないことであると言い切っています。嫌なら使わなければよい。この契約はそういう契約なんだからというわけです。


To the extent that Apple makes any pre-release or other products, services or information related thereto available to you as a Registered Apple Developer, you understand that Apple is under no obligation to provide updates, enhancements, or corrections, or to notify you of any product or services changes that Apple may make, or to publicly announce or introduce the product(s) or service at any time in the future.

ここは厳密には無保証条項ではないから通常の小文字に戻っています。しかししつこいぐらいに、アップデート、機能強化、修正をする義務も、Apple社がする製品やサービスの変更を知らせる義務も、製品やサービスについて公表する義務もないことの確認をデベロッパーに求めています。
 

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 12. Use Of Apple Trademarks, Logos, etc. (Appleの商標・ロゴ等の使用)


12. Use Of Apple Trademarks, Logos, etc. は、Apple社の重要な知的財産である商標の使用条件を定めた条項です。

プラットフォーマーの立場としては、そのプラットフォームの名前から生まれる信用も商品なので、デベロッパーに対してプラットフォームの商標を一切使うな、とは言えません。したがって、ある一定のルールで商標の利用を認めながらも、自社の商標権の価値を損なうようなことにならないよう、厳格な利用ルールを定めることになります。


RADA12


You agree to follow Apple’s Guidelines For Using Apple Trademarks and Copyrights as published on Apple’s website at www.apple.com/legal/guidelinesfor3rdparties.html (“Guidelines ”) and as may be modified from time to time. You agree not to use the marks “Apple,” the Apple Logo, “Mac”, “iPhone,” “iPod touch” or any other marks belonging or licensed to Apple in any way except as expressly authorized in writing by Apple in each instance or as permitted in Apple’s Guidelines.

デベロッパーがAppleやiPhone等の文字、ロゴマークを使用する際には、Apple社の定めた商標および著作権ガイドラインに従うべきことを求めています。

Apple社は、かつてビートルズの版権を管理するレコード会社の英Apple社と壮絶な法廷闘争を繰り広げたことでも有名で、そんな背景もあってか商標使用ガイドラインも非常に具体的で厳しいものになっています。代表的な例として、デベロッパーの製品の説明の中でApple商標を用いる際は、

_________ is a trademark of Apple Inc., registered in the U.S. and other countries.

_________ is a trademark of Apple Inc.

このどちらかのフォーマットによりApple社の商標であることを明示しなければならない、と定められています。

You agree that all goodwill arising out of your authorized use of Apple’s marks shall inure to the benefit of and belong to Apple.

許諾範囲でApple商標を使用したことで生じた信用は、Apple社に帰属する、と。デベロッパーに形式的にルールを守らせるだけでなく、万が一のフリーライドが発生した場合にそれを止める根拠としての条文といったところでしょう。この辺りの規定ぶりも隙がありません。


ちなみに、Apple社自身も他社の商標権には気を使っている会社です。iPhoneを日本で販売する際に、すでに日本に存在したインターホンの「アイホン株式会社」から商標のライセンスを受け(年間のライセンス料は1億円と言われています)、ウェブサイトのフッターにこのような表示をし続けているのは、ご存じの方も多いでしょう。

aihon

 

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 11. Apple Independent Development. (Apple社による独自開発)(追記あり)

 
iOSのデベロッパー規約を解説する連載の第12回。今日は、11. Apple Independent Development. Apple社による独自開発の条項になります。短い条文ながらも、結構重要な条件が定められています。


RADA11


Nothing in this Agreement will impair Apple’s right to develop, acquire, license, market, promote or distribute products, software or technologies that perform the same or similar functions as, or otherwise compete with, any other products, software or technologies that you may develop, produce, market, or distribute.

デベロッパーが制作するアプリと同様の、もしくは競合となる製品をApple社が開発し販売することを妨げるものではない、としています。


In the absence of a separate written agreement to the contrary, Apple will be free to use any information, suggestions or recommendations you provide to Apple pursuant to this Agreement for any purpose, subject to any applicable patents or copyrights.

別途の書面を締結しなかったとしても、Apple社はデベロッパーがこの契約に関連してApple社に提供したあらゆる情報について、特許権や著作権があればそれに従って自由に利用することができるとしています。


前段については、プラットフォーマーの立場としては入れておくべき規定ですね。売上規模が大きくなればなるほど、デベロッパーとしてはプラットフォーマーからの収入に依存するようになりますし、かといってプラットフォーマーがいちいちその売上を奪わないように気を遣っていたら、キリがありません。一方で、後段はsubject to any applicable patents or copyrightsという前提条件がついてはいるもののbe free to useと、無償ライセンスの自動付与とも読める構成になっていて、これはApple社にとってかなり有利な条件といえます。

実際にプラットフォーマーがデベロッパーの発明や成果を盗むようなことがあれば、法的に争う余地はあるはずですが、このように書かれるとちょっと疑心暗鬼になってしまうのが人情というものでして…。
 

2014.2.5追記:

「日々、リーガルプラクティス」のCeongsuさんより、これは第三者には開示せず自社内であればNDAの目的外でも営業秘密を利用していいとするResidual Clauseとして注意を要するのではないか、とのコメントを頂きました。やっぱりそうでしたか。

Residual Clauseのリスクについて、Ceongsuさんが最近のエントリで研究の成果をまとめてくださっていますので、ぜひご参照ください。
 
"Residuals" with NDA〜前編
"Residuals" with NDA〜中編 (追記あり)
"Residuals" with NDA〜後編
 

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 10. Term and Termination. (契約期間と契約終了)

 
10. Term and Termination. は、見出しの上では契約期間と契約終了について定められている条項、のはずなのですが、実際は期間は明確に定められておらず(つまり、終了するまでが契約期間)、契約を終了するための条件が書かれています。


RADA10


Apple may terminate or suspend you as a Registered Apple Developer at any time in Apple’s sole discretion. If Apple terminates you as a Registered Apple Developer, Apple reserves the right to deny your reapplication at any time in Apple’s sole discretion.

Apple社はいつでも任意にこのデベロッパー契約を終了もしくは停止し、さらにデベロッパーによる再登録を拒絶できることになっています。

You may terminate your participation as a Registered Apple Developer at any time, for any reason, by notifying Apple in writing of your intent to do so.

デベロッパーからも、デベロッパー契約を解除できます。しかし、その旨をAppleに書面で通知することが必要とされています。

Upon any termination or, at Apple’s discretion, suspension, all rights and licenses granted to you by Apple will cease, including your right to access the Site, and you agree to destroy any and all Apple Confidential Information that is in your possession or control. At Apple’s request, you agree to provide certification of such destruction to Apple. No refund or partial refund of any fees paid hereunder or any other fees will be made for any reason.

契約終了後の措置として、デベロッパーに対し、サービスの利用の停止と秘密情報の破棄を求めています。Apple社の求めに応じ破棄証明を出す義務もあります。一方、Apple社側に特にデベロッパー情報を処分する義務は規定されていませんので、義務はないことになります。なお、それまでに支払ったフィーは一切返金されません。

Following termination of this Agreement, Sections 1, 3-5, 7 (but only for so long as the duration specified by Apple for such usage), 10-19 shall continue to bind the parties.

契約が終了しても、1, 3-5, 7 、10-19 条は存続し、両当事者を拘束するとあります。では効力が消滅する2,6,8条は何だったかというと、これらはすべてデベロッパーのサービス利用権を定めた条項となっています。つまり、契約終了によってデベロッパーとしての権利はなくなるけれども、義務は全て残るというわけです。ここは気をつけたいところです。
 

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 9. Amendment; Communication. (契約変更と連絡方法)

 
9. Amendment; Communication. は、契約変更の条件と連絡方法についての規定になります。


RADA9


Apple reserves the right, at its discretion, to modify this Agreement, including any rules and policies at any time. You will be responsible for reviewing and becoming familiar with any such modifications (including new terms, updates, revisions, supplements, modifications, and additional rules, policies, terms and conditions)(“Additional Terms ”) communicated to you by Apple. All Additional Terms are hereby incorporated into this Agreement by this reference and your continued use of the Site will indicate your acceptance of any Additional Terms.

この手の利用規約では致し方のないことですが、いつでも一方的に条件を変更できるとあります。さらに、そのお知らせはApple社から能動的にされるとは限らず、デベロッパーが能動的にチェックしなければなりません。デベロッパーは、デベロッパーサイトを継続利用することで、変更に同意したものとみなされます。


In addition, Apple may be sending communications to you from time to time. Such communications may be in the form of phone calls and/or emails and may include, but not be limited to, marketing materials, technical information, and updates and/or changes regarding your participation as a Registered Apple Developer. By agreeing to this Agreement, you consent that Apple may provide you with such communications.

ただし、Apple社から随時電話やメールなどで技術情報やアップデートの連絡をする場合もあり、そういう連絡方法になるけど了解してくださいね、と。


利用規約の変更がある場合でも、あくまで、Appleが情報を発信する義務を負わないようになっているのがポイントです。デベロッパーサイトにログインした際には、利用規約の更新がないかチェックするようにしたほうがよさそうです。
 

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 8. Compatibility Labs; Developer Technical Support (DTS).(互換性ラボおよび技術支援の利用)

 
8. Compatibility Labs; Developer Technical Support (DTS). では、Apple社が提供する互換性ラボと技術支援の利用条件について規定されています。


RADA8


As a Registered Apple Developer, You may have access to Apple’s software and hardware compatibility testing labs (“Compatibility Labs ”) and/or developer technical support incidents (“DTS Services ”) that Apple may make available to you from time to time as an Apple developer benefit or for a separate fee. You agree that all use of such Compatibility Labs and DTS Services will be in accordance with Apple’s usage policies for such services, which are subject to change from time to time, with or without prior notice to you. Without limiting the foregoing, Apple may post on the Site and/or send an email to you with notices of such changes. It is your responsibility to review the Site and/or check your email address registered with Apple for any such notices. You agree that Apple shall not be liable to you or any third party for any modification or cessation of such services.

別料金ではありますが、Apple社が提供する互換性テストラボと技術支援サービスを利用できることが書かれています。ハードウェア含めた互換性を確認できるラボは、日本でも初台のAppleジャパン本社で提供されているそうです。注意したいのは後段で、Appleがデベロッパー向けのサービスサイトで提供するものは、予告なく変更や停止ができると定められている点。

As part of the DTS Services, Apple may supply you with certain code snippets, sample code, software, and other materials (“Materials ”). You agree that any Materials that Apple provides as part of the DTS Services are licensed to you and shall be used by you only in accordance with the terms and conditions accompanying the Materials. Apple retains ownership of all of its right, title and interest in such Materials and no other rights or licenses are granted or to be implied under any Apple intellectual property. You have no right to copy, decompile, reverse engineer, sublicense or otherwise distribute such Materials, except as may be expressly provided in the terms and conditions accompanying the Materials.

DTSサービスの過程でApple社が提供するソフトウェア類については、権利がApple社に留保され、複製やデコンパイルサブライセンスその他を原則認めないとあります。この文言、何度目でしょうか(笑)。

You agree that when requesting and receiving TECHNICAL SUPPORT FROM DTS SeRVICES, you will not provide Apple with any INFORMATION, including that incorporated in your software, that is confidential to you or any third party. YOU AGREE THAT Any notice, legend, or label to the contrary contained in any SUCH materials provided by you to Apple shall be without effect. Apple shall be free to use all information it receives from you in any manner it deems appropriate, subject to any applicable patents or copyrights.

この条項はちょっと変わってます。DTSサービスの技術支援を受ける際に、自社および他社の秘密情報をApple社に提供してくれるな、したとしてもApple社は何の負担もなく自由に使いますよ、と。

Apple reserves the right to reject a request for DTS Services at any time and for any reason, in which event Apple may credit you for the rejected support request. You shall be solely responsible for any restoration of lost or altered files, data, programs or other materials provided.

なお、Apple社はDTSサービスの申込みをリジェクトする権利があり、その場合修復や変更はデベロッパー責任で行うべきこととされています。
 

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 7. Paid Content License and Restrictions. (有料コンテンツの利用許諾と制限)

 
7. Paid Content License and Restrictions. は有料コンテンツの利用許諾と制限についてです。一年単位で支払う登録料以外は基本的に無料であるデベロッパーアカウントですが、有料コンテンツも存在しており、そのコンテンツにのみ適用される条項になります。


RADA7


As a Registered Apple Developer, you may have access to certain proprietary content (including, without limitation, video presentations and audio recordings) that Apple may make available to you from time to time for a separate fee (“Paid Content ”). Paid Content shall be considered Apple Confidential Information, unless otherwise agreed or permitted in writing by Apple.

Apple社が提供するコンテンツのうち、個別に課金するPaid Contentがあること、そのPaid Contentは原則として秘密情報とみなされる、とあります。

You may not share the Paid Content with anyone, including, without limitation, employees and contractors working for the same entity as you, regardless of whether they are Registered Apple Developers. Subject to these terms and conditions, Apple grants you a personal and nontransferable license to access and use the Paid Content for authorized purposes as a Registered Apple Developer; provided that you may only download one (1) copy of the Paid Content and such download must be completed within the time period specified by Apple for such download.

Paid Contentはデベロッパー間でもシェア不可であること、利用にあたってはApple社の許諾条件に従うこと、複製物は1つに限りDL可能であって定められた期間内にDLを完了する必要がある、とあります。

Except as expressly permitted by Apple, you shall not modify, translate, reproduce, distribute, or create derivative works of the Paid Content or any part thereof. You shall not rent, lease, loan, sell, sublicense, assign or otherwise transfer any rights in the Paid Content. Apple and/or Apple’s licensor(s) retain ownership of the Paid Content itself and any copies or portions thereof. The Paid Content is licensed, not sold, to you by Apple for use only under this Agreement, and Apple reserves all rights not expressly granted to you. Your rights under this license to use and access the Paid Content will terminate automatically without notice from Apple if you fail to comply with any of these provisions.

Paid Contentといえども、権利を売却するものではなく、全ての権利はApple社に留保され、修正、翻訳、再製、貸与、譲渡等は禁止されています。契約違反の場合はPaid Contentのライセンスを予告なく終了するともあります。


相変わらず、知的財産の不正利用に対しては神経を尖らせていることがわかります。
 

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 6. Confidential Pre-Release Materials License and Restrictions.(プレリリース製品の利用許諾と制限)

 
6. Confidential Pre-Release Materials License and Restrictions.は、第4条で定義されていた発表前のプレリリース製品の利用許諾の範囲と利用にあたっての制限事項について述べている条文となります。


RADA6


If Apple provides you with Pre-Release Materials, then subject to your compliance with the terms and conditions of this Agreement, Apple hereby grants you a nonexclusive, nontransferable, right and license to use the Pre-Release Materials only for the limited purposes set forth in this Section 6; provided however that if such Pre-Release Materials are accompanied by a separate license agreement, you agree that the license agreement accompanying such materials in addition to Sections 4 and 5 of this Agreement shall govern your use of the Pre-Release Materials. You further agree that in the event of any inconsistency between Section 4 and 5 of this Agreement and the confidentiality restrictions in the license agreement, the license agreement shall govern.

プレリリース製品の提供は、非独占的、譲渡不能な利用制限付ライセンスの許諾というかたちで行われます。なお、そのプレリリース製品に特別なライセンス条件が定められているときは、この契約の秘密保持義務に加えてその条件が適用され、さらに、その特別な契約のライセンス条件と矛盾する場合は、そちらが優先されるとも書かれています。

You agree not to use the Pre- Release Materials for any purpose other than testing and/or development by you of a product designed to operate in combination with the same operating system for which the Pre-Release Materials are designed.

プレリリース製品の利用は、デベロッパーのアプリの動作確認および開発用途に限定されています。この利用目的の制限からも、リリース前のiOSなどのレビュー記事をブログに上げるのはNGということになりますね。

This Agreement does not grant you any right or license to incorporate or make use of any Apple intellectual property (including for example and without limitation, trade secrets, patents, copyrights, trademarks and industrial designs) in any product. Except as expressly set forth herein, no other rights or licenses are granted or to be implied under any Apple intellectual property.

この契約が、アップルの知的財産権の許諾を黙示的にも意味するものではないことを確認しています。タダなんだから当たり前だよね、とも思いますが、アメリカ契約法では特に「契約書に書いていないことは、契約書を作成した事業者に不利に解釈される」という考え方もあるので、分かりきったことでもあえてこのように誤解のないように明記されます。

You agree not to decompile, reverse engineer, disassemble, or otherwise reduce the Pre-Release Materials to a human-perceivable form, and you will not modify, network, rent, lease, transmit, sell, or loan the Pre-Release Materials in whole or in part.

プレリリース製品をデコンパイルするなど、人間が知覚可能な形式にしたり、変更したり譲渡したりすることを禁じています。第3条でもすでに同じような言い回しがでていましたので、合わせて確認しておきましょう。
 

Apple社に対するFTC命令が意味するものとその影響

 
年始のIT系法務キーワード・テーマ大予測企画で「プラットフォーマーに対する規制が強化されるんじゃないか」と書いたら、早速それが現実のものとなり始めているようです。


米アップル、ゲーム課金で34億円返還 利用者に (日経新聞)

携帯端末ゲームで親の許可なく子どもに無制限に課金していたとして、米連邦取引委員会(FTC)は15日、米IT(情報技術)大手アップルが、少なくとも3250万ドル(約34億円)を利用者に返還することで合意したと発表した。

問題になったのは、ゲームの追加アイテムを購入する仕組み。FTCは、親が一度パスワードを入力すると、15分間は無制限に購入が可能な点を重視。ペットを育てるゲームで2600ドルを浪費した子の例を挙げた。

FTCとの和解条項では、アップルは親の許可なくアイテムを購入した対象者に、支払額を全額返還。FTCは親の明示的な同意がなければ追加購入ができないよう課金方法を変えることをアップルに求めた。

FTCが示す「プラットフォーマーの責任」


報道にあった「少なくとも3250万ドル(約34億円)」の意味がよく分からなかったこともあり、FTC命令(ORDER)原文を読んでみました。

AGREEMENT CONTAINING CONSENT ORDER

FTCORDER


これによると、
・Appleは、FTCが定めた返金方法に従って対象者から申請された全額を返金する
・返金総額が3250万ドルを下回ったら、その下回った分をFTCに対し(罰金として)支払う
とあります。どこまでさかのぼって返金するかの期限も定められておらず、3250万ドルを上回る可能性もあると。Appleは、返金手続きにおいて、申請時にユーザーから子どもが同意なく利用したという証拠を提出させて、詐欺的な申請については支払いを拒絶できると定められているのですが、現実問題としては、返金額の多さよりも、この確認手続きに相当の負荷がかかるであろうことが予想されます。

また、日経の記事では、ゲーム課金のみが返金の対象のように記載されていますが、FTC ORDERにはそのような限定はありません。さらに、報道では触れられていませんが、強制される返金の対象者は米国居住者に限定されることが明記されています。

あわせて私が注目したのが、FTCのプレスリリースにあったこのFTCチェアウーマンによる“勝利宣言”です。

Apple Inc. Will Provide Full Consumer Refunds of At Least $32.5 Million to Settle FTC Complaint It Charged for Kids’ In-App Purchases Without Parental Consent

FTCPRESS


“This settlement is a victory for consumers harmed by Apple’s unfair billing, and a signal to the business community: whether you’re doing business in the mobile arena or the mall down the street, fundamental consumer protections apply,” said FTC Chairwoman Edith Ramirez. “You cannot charge consumers for purchases they did not authorize.”

ORDERの内容とこの“勝利宣言”をあわせ読むと、FTCは、スマートフォン×ストアをコアとしたプラットフォームサービスにおける課金については、コンテンツを作ってプラットフォームに乗せているデベロッパー(アプリ開発者)ではなく、その販売・決済を牛耳っているプラットフォーマーがユーザーに対し責任を負うべきである、という姿勢を明確にしてきたことが伺えます。

これに対しては、子ども自身やその親の責任も問われて然るべきである、という声もあろうかと思いますし、その点については私も同感ですが、やはり年始の予測どおり、プラットフォーマーに対する規制強化の機運が高まって行くことは避けられないようです。

デベロッパーへの影響


さて、当局としてのプラットフォーマーとデベロッパーの責任分担に対する認識はこれで明らかになったとはいえ、デベロッパーへの影響がまったくないのかは気になるところです。

デベロッパーとして真っ先に気になるのは、プラットフォーマーが対象者に返金した売上は、デベロッパーはきちんと回収できるのか?それとも売上自体が亡きものとされてしまうのか?という点でしょう。今回のApple社の件について言えば、iOSデベロッパー規約の別紙としてin-App Purchase(アプリ内課金)の条件を定めているSchedule2 に、返金に関する下記条項があります。この規定を最大限活用する立場からは、消費者からの申立に基づいて返金する金額のうち90日以内の売上については、キャンセルしてくることが予想されます。

6.3 In the event that Apple receives any notice or claim from any end - user that: (i) the end - user wishes to cancel its license to any of the Licensed Applications within ninety (90) days of the date of download of that Licensed Application by that end - user or the end of the auto - renewing subscription period offered pursuant to section 3.8, if such period is less than ninety (90) days; or (ii) a Licensed Application fails to conform to Your specifications or Your product warranty or the requirements of any applicable law, Apple may refund to the end - user the full amount of the price paid by the end - user for that Licensed Application. In the event that Apple refunds any such price to an end - user, You shall reimburse, or grant Apple a credit for, an amount equal to the price for that Licensed Application. Apple will have the right to retain its commission on the sale of that Licensed Application, notwithstanding the refund of the price to the end - user.


ニュースを受けて、業界では、「Appleのみならず各プラットフォーマーが、今回のような公権力による命令に基づく返金分も無限定にデベロッパーに求償できるように、デベロッパー規約の返金規定を変更してくるんじゃないか?」と話題になっています。しかし、それをやってしまうとさすがにFTCにも角が立つことになるでしょう。私はそうではなく、ユーザーに対するアプリ内課金プロセスの安全性強化策の導入を、デベロッパーに対して強いてくる可能性が高いと予想します。

さてそうなったときに、デベロッパーとしてアプリ側で何ができるか/すべきかを、今から考えておく必要がありそうです。
 

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 5. Nondisclosure and Nonuse of Apple Confidential Information.(秘密情報の不開示と利用制限)

 
5. Nondisclosure and Nonuse of Apple Confidential Information.は、前条(第4条)で定義された秘密情報の取扱いに関する具体的な義務を定めた規定になります。


RADA5


Unless otherwise expressly agreed or permitted in writing by Apple, you agree not to disclose, publish, or disseminate any Apple Confidential Information to anyone other than to other Registered Apple Developers who are employees and contractors working for the same entity as you and then only to the extent that Apple does not otherwise prohibit such disclosure.

Appleが書面で認めない限り、秘密情報を開示・公開してはならない旨規定しています。disseminate(=ばら撒く)は契約書ではあまり見かけない単語です。なお、デベロッパーと同一の組織内で働く従業員やコントラクターに対しては、Apple社が(他の契約で)開示を禁止していない限りにおいて開示が認められています。


Except for your authorized purposes as a Registered Apple Developer or as otherwise expressly agreed or permitted by Apple in writing, you agree not to use Apple Confidential Information in any way, including, without limitation, for your own or any third party’s benefit without the prior written approval of an authorized representative of Apple in each instance.

この2文目では、秘密情報を自己や第三者の利益になるような使い方をするなど、Apple社の権限ある者の事前書面承諾がない限り、目的外に使用してはならないと規定しています。


You further agree to take reasonable precautions to prevent any unauthorized use, disclosure, publication, or dissemination of Apple Confidential Information. You acknowledge that unauthorized disclosure or use of Apple Confidential Information could cause irreparable harm and significant injury to Apple that may be difficult to ascertain. Accordingly, you agree that Apple will have the right to seek immediate injunctive relief to enforce your obligations under this Agreement in addition to any other rights and remedies it may have.

デベロッパーはこれらの秘密保持・管理義務を守るために必要な注意を払うべきこと、そしてそれが守られなかった時にはApple社に多大な損害が発生することを認識し、それが故に、Apple社が差止め請求権を含むあらゆる強制措置をとる権利を持つことを確認しています。


If you are required by law, regulation or pursuant to the valid binding order of a court of competent jurisdiction to disclose Apple Confidential Information, you may make such disclosure, but only if you have notified Apple before making such disclosure and have used commercially reasonable efforts to limit the disclosure and to seek confidential, protective treatment of such information. A disclosure pursuant to the previous sentence will not relieve you of your obligations to hold such information as Apple Confidential Information.

デベロッパーは、法令や裁判所命令等から秘密情報の開示を要求された場合であっても、Apple社にそれを知らせるとともに、開示が最小限の範囲にとどまるよう合理的な配慮を尽くすべき義務があるとされています。また、この法令や命令に基づく開示の対象となった情報であっても、この契約で保護すべき秘密情報から除外されない(第4条に定められている秘密情報の適用除外には当たらない)ことを確認しています。


英文の秘密保持契約書を見慣れている方にとっては、外国企業からしばしば提示されるテンプレート的な条文ではありますが、個人のデベロッパーの方ですと、何の意味があるのかも分からないかもしれませんね。
 

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 4. Confidentiality.(秘密情報の定義)


4. Confidentiality. では、秘密情報の定義がされています。ここで秘密情報に該当する情報は、次条の5. Nondisclosure and Nonuse of Apple Confidential Information. で開示・利用が制限されていますので、この定義に当てはまる情報はなにかをしっかりと理解しておくことが重要です。


RADA4


You agree that any Apple pre-release software and/or hardware (including related documentation and materials) provided to you as a Registered Apple Developer (“Pre-Release Materials ”) and any information disclosed by Apple to you in connection with Apple Events or Paid Content (defined below) will be considered and referred to as “Apple Confidential Information ”.

デベロッパー向けに提供したあらゆるリリース前の製品、情報、Paid Content(これらを総称して“Pre-Release Materials”と呼んでいます)については、秘密情報として取り扱え、と書かれています。これだけですと、Apple社から受け取った情報はなんでもかんでも秘密として管理しなければならなくなってしまうわけですが・・・

Notwithstanding the foregoing, Apple Confidential Information will not include:
(i) information that is generally and legitimately available to the public through no fault or breach of yours,
(ii) information that is generally made available to the public by Apple,
(iii) information that is independently developed by you without the use of any Apple Confidential Information,
(iv) information that was rightfully obtained from a third party who had the right to transfer or disclose it to you without limitation, or
(v) any third party software and/or documentation provided to you by Apple and accompanied by licensing terms that do not impose confidentiality obligations on the use or disclosure of such software and/or documentation.

下記の5種類の情報については、秘密情報に含まないものとして除外しています。法務目線では、(5)号の規定は丁寧に作文してあるなぁと唸らされる文言です。
(1)デベロッパーの契約違反ではない理由で公になった情報
(2)Apple社が公にした情報
(3)秘密情報に依拠せずに独自にデベロッパーが開発した情報
(4)正当な開示権限を持つ第三者から制約を負うことなく適法に入手した情報
(5)Apple社から提供されたものであるが、そのライセンス契約の条項において秘密保持義務が課されていないサードパーティ製品・文書


さて、この条項に関してよく話題に上がるのが、デベロッパー向けに先行して開示された新しいOSのbetaバージョンのスクリーンショットやその機能に関する情報が、本規定における“Apple Confidential Information ”に当たるかどうかです。もし、これが秘密情報にあたるとなると、個人ブロガー等がデベロッパーアカウントでDLし入手した情報で解説記事を書くことも、次条の5. Nondisclosure and Nonuse of Apple Confidential Informationで規定される開示・利用制限に違反することになります。つい最近も、iOS7のbeta版がリリースされた際、こんな論争になってました。この論争の顛末にもあるとおり、結論としては、デベロッパーアカウントから入手した情報で解説記事を書く行為はRADA違反となりますので注意しましょう。

iOS 7についてのエントリーがNDA違反ではないかというお話。

なお、Apple社の許諾のもとで大手メディアが先行公開した情報は、上記「(2)Apple社が公にした情報」に該当するはずなので、その情報に依拠して論評を加えている限りにおいては、違反とはならない余地があります。
 

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 3. Restrictions. (制限事項)

 
3. Restrictions. は、デベロッパーサイトおよびサービスを使う上での制限事項を定めています。


RADA3


You agree not to exploit the Site, or any Services, Apple Events or Content provided to you as a Registered Apple Developer, in any unauthorized way, including but not limited to, by trespass, burdening network capacity or using the Services, Site or Content other than for authorized purposes.

不正利用の禁止をうたっています。不正利用の例として、不正アクセス、ネットワークへの負荷を与える行為、許可範囲外利用等が示されています。


Copyright and other intellectual property laws protect the Site and Content provided to you, and you agree to abide by and maintain all notices, license information, and restrictions contained therein.

デベロッパーサイトおよびコンテンツについては、著作権法等の知的財産権法によって保護対象となっていること、デベロッパーはその権利を侵害せず保護することをデベロッパーに求めています。


Unless expressly permitted herein or otherwise permitted in a separate agreement with Apple, you may not modify, publish, network, rent, lease, loan, transmit, sell, participate in the transfer or sale of, reproduce, create derivative works based on, redistribute, perform, display, or in any way exploit any of the Site, Content or Services in whole or in part. You may not decompile, reverse engineer, disassemble, attempt to derive the source code of any software or security components of the Services, Site, or of the Content (except as and only to the extent any foregoing restriction is prohibited by applicable law or to the extent as may be permitted by any licensing terms accompanying the foregoing). Use of the Site, Content or Services to violate, tamper with, or circumvent the security of any computer network, software, passwords, encryption codes, technological protection measures, or to otherwise engage in any kind of illegal activity, or to enable others to do so, is expressly prohibited.

Apple社が別途契約で認めない限り、デベロッパーサイトおよびコンテンツを改変したり、二次的著作物を制作したり、デコンパイルすること等を禁止しています。上ではグレーでマーキングしてみましたが、you may not(may not は英文契約の語法で「禁止」を意味します)に続く“やっちゃいけない行為”の例示が長いので、文章が長く見えます。なお、2つめのmay not文の最後に、括弧書きで「((except as and only to the extent any foregoing restriction is prohibited by applicable law or to the extent as may be permitted by any licensing terms accompanying the foregoing)」とありますが、これは、独占禁止法等の観点からデコンパイルやリバースエンジニアリングの禁止をすること自体が違法となる可能性のある国も少なくないため(参考:一般社団法人知的財産研究所 知財研紀要収録『コンピュータ・プログラムの保護に関する 米・EU・日・韓の比較法的研究 −プログラム リバース・エンジニアリングを中心に−』) 、その場合にこの条文が無効とならないよう、その限りにおいて通常のライセンス条件を適用する旨が書かれているものです。
併せて、あらゆる違法行為を行うことや、他人による違法行為を幇助することを禁止しています。


Apple retains ownership of all its rights in the Site, Content, Apple Events and Services, and except as expressly set forth herein, no other rights or licenses are granted or to be implied under any Apple intellectual property.

最後に、確認的規定として、デベロッパーサイト、コンテンツ、イベントに関する権利は、そこに特に断り書きのない限り、Appleがそのすべての権利を保持しているとしています。


一般的に、BtoCのウェブサービスでの利用規約ですと、制限・禁止事項をとにかくたくさん列挙して具体的に理解をさせ、かつ威圧する手法が取られます。これに対し、PFサービスの規約では、BtoBということもあってか、上記Apple社の例のように規約上は包括的な記載にとどめ、細かいルールはガイドラインレベルで規制する手法が多く取られています。しかしその中でも、知的財産権の侵害だけは徹底して許さないという姿勢が垣間見えます。

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 2. Developer Benefits. (デベロッパーに対するサービス)

 
2. Developer Benefits. は、Apple社がデベロッパーに提供するサービスの内容が書かれているパートです。


RADA2


As a Registered Apple Developer, you may have the opportunity to attend certain Apple developer conferences, technical talks, and other events (including online or electronic broadcasts of such events) (“Apple Events”). In addition, Apple may offer to provide you with certain services (“Services”), as described more fully herein and on the Registered Apple Developer web pages (“Site”), solely for your own use (except as otherwise permitted in the last two sentences of Section 1) in connection with your participation as a Registered Apple Developer.

Registered Apple Developerとなることにより、Appleが主催するカンファレンス等に参加する機会を提供する、とあります。あくまで機会なので、必ず参加できるという書き方になってはいないのがミソです。これに加えて、デベロッパーウェブページに記載されたサービスを(デベロッパー自身が利用するという制限付で)提供すると書いています。Apple社が提供する開発環境をはじめ、アプリをマーケットに公開して販売・課金する部分も、これに該当することになります。


Services may include, but not be limited to, any services Apple offers at Apple Events or on the Site as well as the offering of any content or materials displayed on the Site (“Content”). Apple may change, suspend or discontinue providing the Services, Site and Content to you at any time, and may impose limits on certain features and materials offered or restrict your access to parts or all of materials without notice or liability.

デベロッパーに対するサービスとは何かという最も重要な部分は、“displayed on the Site”つまりデベロッパーウェブサイトに記載されたもの含みますがこれらに限りませんよ、というあいまいな定義になっており、この契約の中では具体的なサービス内容は明記されないかたちになっています。さらに本条の後半では、ウェブサイトの記載の変更のみをもって(Apple社の一存で)、いつでもサービス内容を変更できると念を押しています。


第2条は、この契約で唯一、デベロッパーに対して権利っぽいものを認めてくれているパートです。しかし上記のように、よくよく読んで見ると、何かを必ず提供すると約束してくれているものではありません。さらに、Apple社が負担を負わない/任意に変更できるようになっていて、今日まで提供されていたサービスが明日から提供されなくなる可能性もゼロではない、というところが留意点と言えます。

一般論として、PFサービスを運営する立場としては、デベロッパーに対し未来永劫何かを約束するということはできないことからこのように規定せざるを得ない、というところは理解しつつも、文言上は一方的な契約の不利益変更もできるようにも読めてしまうという問題があります。消費者契約ではないとはいえ、今後、法的にはその有効性が問われていくものと思います。
 

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 1. Relationship With Apple; Apple ID and Password. (Appleとの関係およびAppleID・パスワードの管理責任)

 
それでは、1. Relationship With Apple; Apple ID and Password. から。


RADA1


この第1条には、Apple社とデベロッパーとの関係について、大きく二つの要素に分解して規定されています。一つは法的な契約履行能力の側面、もう一つがIDの管理責任の側面です。以下、条文を分解しながら見ていきます。


You understand and agree that by becoming a Registered Apple Developer, no legal partnership or agency relationship is created between you and Apple. Neither you nor Apple is a partner, an agent or has any authority to bind the other. You agree not to represent otherwise.

まず冒頭で強調されているのが、「デベロッパーはApple社となんのpartnership関係もなければagencyでもない」という点です。世界には、弱者となりがちな代理店を強制的に保護する代理店保護法を定める国が少なくありません(参考:JETRO 代理店契約で自国企業(代理店)を保護している地域とその概略)。このような国の法律上、partnershipやagencyのような親密な契約関係とみなされてしまうと、例えばデベロッパーが販売機会をロスするような事態となった場合にその補償をしなければならないとか、Appleから契約を任意に解除できないといった責任がApple社側に発生してしまう可能性があり、これを明示的に、はっきりと排除するために、このような前置きが冒頭に置かれています。こういった契約文化は日本にはあまりないものですので、初めてこの手の規約を読んだ方には何の事かまったくわからない規定だと思いますが、そういうものなんだ、と思っておいていただければ十分かと思います。


You also certify that you are of the legal age of majority in the jurisdiction in which you reside (at least 18 years of age in many countries) and you represent that you are legally permitted to become a Registered Apple Developer. This Agreement is void where prohibited by law and the right to become a Registered Apple Developer is not granted in such jurisdictions.

そして次に、デベロッパーに契約の履行能力が法的にあること、具体的にはその国・地域における未成年者・制限能力者でないことの確認と、そうであった場合には契約そのものが無効となる旨が書かれています。国によって成人年齢が異なるため(アメリカでは州によっても異なります)、「20歳以上」などと書いてしまうと国によっては通用しない規定になってしまう点、グローバル企業ならではの工夫された規定のされ方をしていますね。


Unless otherwise agreed or permitted by Apple in writing, you cannot share or transfer any benefits you receive from Apple in connection with being a Registered Apple Developer. The Apple ID and password you use to login as a Registered Apple Developer cannot be shared in any way or with any one. You are responsible for maintaining the confidentiality of your Apple ID and password and for any activity in connection with your account.

次に、デベロッパーは、この契約でApple社から与えられる利益を、第三者に譲ってはならないことが規定されています。そしてその義務を補強するために、IDとPasswordはシェアしてはならず、その管理責任がデベロッパー本人にあることを明記しています。なお、このパートの文頭において、Appleが書面によって許諾する場合が例外とされているのは、アカウントの譲渡をオフィシャルに認めることがあることを示唆しているようです。


Notwithstanding the foregoing restrictions in this Section 1, if you are the parent or legal guardian of individuals between the ages of 13 and the legal age of majority in the jurisdiction in which you reside, you may allow such individuals to share your Apple ID and password for their use solely under your supervision and only in accordance with this Agreement. You are responsible for such individuals’ compliance with and violations of this Agreement and any other Apple agreements.

なお、13歳以上の未成年者のデベロッパーの保護者については、その監督を目的としてIDとPasswordをシェアしてもよいとされています。「Notwithstanding the foregoing...」という普通の英文では見慣れない言い回しがありますが、「前記にもかかわらず」という英文契約上の但し書きの決まり文句です・・・っていう英文契約の解説はどうでもいいですかね。ところで、13歳未満の未成年者は保護者が監督しても利用できないの?という疑問が湧くところですが、Appleに限らず、各社プラットフォーム規約では13歳未満の児童の利用を禁じているところがほとんどです。この理由については、別途他のところで触れることになると思います。
 

REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT ― 全体像の俯瞰&規約への同意


Apple、Google、Amazonら各社のプラットフォーム規約を見ると、最初にこのビジネスモデルを確立したAppleの規約の要素を真似ている様子が垣間見えます。そこで、まずAppleのプラットフォーム規約を抑えた上で、その他同業他社の規約を見ていくことにしましょう。


Appleのプラットフォーム上でiOSアプリを開発し、AppStoreで販売しようと場合、まずデベロッパーアカウントを開設する必要があります。そこで最初に同意を要求されることになる規約が、“Registered Apple Developer Agreement”です。なお、Appleのプラットフォーム規約は、他社(Google,Amazon)と異なり、すべて英文のみでの提供となっています。


RADA_agree



まず全体像を俯瞰してみます。以下は、各条項の見出しのみを列挙してみたものです。

Registered Apple Developer Agreement
1. Relationship With Apple; Apple ID and Password.
2. Developer Benefits.
3. Restrictions.
4. Confidentiality.
5. Nondisclosure and Nonuse of Apple Confidential Information.
6. Confidential Pre-Release Materials License and Restrictions.
7. Paid Content License and Restrictions.
8. Compatibility Labs; Developer Technical Support (DTS).
9. Amendment; Communication.
10. Term and Termination.
11. Apple Independent Development.
12. Use Of Apple Trademarks, Logos, etc.
13. No Warranty.
14. Disclaimer of Liability.
15. Third-Party Notices.
16. Export Control.
17. Governing Law.
18. Government End Users.
19. Miscellaneous.

経験ある法務担当者であれば、この見出しを見ただけで大体何が書かれているか予想がつくことと思います。まず1で契約関係の明確化およびアカウントのID・PASSの管理責任が定められ、2〜3にデベロッパーの特典および守らなければいけない義務、そして4〜6に秘密保持に関する義務、9.規約の修正ルール、10.契約期間、11がApple商標使用のルール、13.非保証、14.免責、15.通知、16.輸出管理、17.準拠法と続き、19その他一般条項という流れ。見出しだけでは予想がつかない条項としては、7・8・11・18あたりでしょうか。


ところで、この“Registered Apple Developer Agreement”の冒頭には、以下のような文言が大文字(CAPITAL)で記してあります。

THIS IS A LEGAL AGREEMENT BETWEEN YOU AND APPLE INC. ("APPLE") STATING THE TERMS THAT GOVERN YOUR PARTICIPATION AS A REGISTERED APPLE DEVELOPER. PLEASE READ THIS REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT (“AGREEMENT”) BEFORE PRESSING THE "AGREE" BUTTON AND CHECKING THE BOX AT THE BOTTOM OF THIS PAGE. BY PRESSING "AGREE," YOU ARE AGREEING TO BE BOUND BY THE TERMS OF THIS AGREEMENT. IF YOU DO NOT AGREE TO THE TERMS OF THIS AGREEMENT, PRESS "CANCEL" AND YOU WILL BE UNABLE TO BECOME A REGISTERED APPLE DEVELOPER.

「画面下の“AGREE”(同意する)ボタンを押すと、デベロッパーは法的にこの規約の各条項に拘束されることになる」旨書かれています。すべて大文字になっているのは、米国の判例法上、重要な条項はこのように注意を引く形式で表記しなければ対抗できないとされているためなのですが、実際、ここに書かれている点は、デベロッパー企業の契約管理上、留意が必要です。

日本の契約慣行では、特に事業者間の契約においては通常書面に代表者等の押印が求められるので、担当者が勝手に契約してしまうということは(よっぽどの悪意が無い限り)ほとんどないでしょう。しかし、このようなプラットフォーム事業者とのデベロッパー契約は、ウェブ上のクリック操作でかんたんに契約できてしまいます。これはAppleに限ったことではなく、GoogleやAmazon等も同様の形式になっています。この記載は、そういった(安易な)クリックであっても有効に契約が成立したことになる、という注意喚起をしている表記です。本来は、法務や関係部門に稟議等必要な承認を得た上でクリックしなければならないはずでも、こういったデベロッパーアカウントの開設作業を行うのは現場のエンジニアだったりするわけで、このクリックがどのような意味を持つのかを考えずに、アカウント開設=プラットフォーマーとの契約締結を行っているのが実態でしょう。

※ちなみに、Appleの場合はサポートセンターのQ&Aにこのような記載がありました。ただ、実際のところ誰がクリックしたかまでは分からないですよね。

whocanagreeRADA


消費者との契約においては、こういった「クリックラップ」契約(FDやCD-ROM時代のソフトウェアライセンスが、パッケージを破ったらライセンス契約に同意したこととみなす「シュリンクラップ」契約だったことになぞらえて、読んだかどうかにかかわらずクリックしたら同意したとみなす契約の意)が有効な契約となるのか?という論点がありますが、プラットフォーマーとそこに参加する事業者との契約においても、同じような論点が取り沙汰されてくるかもしれません。
 
全体像を抑えたところで、次回より、規約各条文の詳細について、逐条で確認していきます。
 

PFルールという名の新たな法律

 
ブログカテゴリに、「PF(プラットフォーム)ルール」というカテゴリを新たに追加しました。

インターネットビジネスの中でも、iPhone、Nexus、KindleなどのスマートデバイスおよびそのOSを自ら開発・提供し、あわせてそのアプリ販売網としてのアプリマーケット(ストア)を展開することで、アプリ開発者(デベロッパー)とアプリ利用者(ユーザー)をともに囲い込むプラットフォームビジネスが、隆盛を極めています。

developer


注目したいのは、アプリマーケットの市場規模の拡大とともに、そこでの販売ルールを定めたプラットフォーム規約が、企業法務の視点から大変重要な契約になっているという点です。規約に違反したデベロッパーは、アプリマーケットから排除されて販売活動ができなくなる、それはデベロッパーにとって「死」を意味します。このことによって、プラットフォーム規約は法律と同等レベルの強制力・拘束力・影響力を持っているといっても過言ではありません。にもかかわらず、デベロッパーがその内容・リスクをしっかりと認識した上でアプリを開発しサービスを運営しているかと言えば、そうとは思えない事例も見聞きします。

この「PFルール」カテゴリにおいては、企業法務の視点から、デベロッパー向けプラットフォーム規約の内容を検討し、アプリの販売活動に携わる事業者としてどのような点に留意すべきかを洗い出し、必要に応じ問題提起をしてみたいと考えています。
 
記事検索
月別アーカイブ
プロフィール

はっしー (Takuji H...