企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

リーガルテック

法務&知財系ライトニングトーク2017 <リーガルテック祭>を開催しました

 
法務&知財系ライトニングトーク2017 <リーガルテック祭>が無事終了。ご参加者のみなさま、そして@kataxさんはじめクックパッドのみなさま、@shibaken_law先生、お忙しい中お集まり&ご協力をいただいただき、本当にありがとうございました。


LTの企画担当として、今回、いつもの「法務・知財のことならなんでも話したいことどうぞ」をやめて、LTしていただくテーマをある程度絞り込んでみるというTRYをしてみました。その効果として、エンジニア・官公庁勤務・フリーランスの方など、参加者の方の顔ぶれ・ご所属がいつもよりさらにバラエティに富んだものとなりました。

一方で、テーマにエッジを立てた分各LTの内容があまりにも個別性高くマニアックになってしまうおそれもあったことから、網羅性が担保できるよう、基調講演的なLTを設けるというTRYも。こちらは、日本でいち早くリーガルテックを事業として実践されている弁護士ドットコムクラウドサイン事業責任者の橘先生と、弁理士で株式会社Toreru代表の宮崎先生にお願いをしました。

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弁護士ドットコム橘先生

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株式会社Toreru宮崎先生

5分ずつという短い時間ながらきっちりとリーガルテックの全体像・日本の現在地・基本的な効用を実践者としての実感値を交えてお話いただいたことで、イベント全体にいい流れを作っていただけたと思います。本当にありがとうございました。


GitHub/支援型・代替型AI/2of3マルチシグ/とりあえず聞いてみる・やってみる/デザイン思考とカスタマー志向/グラフ構造分析/モジュール化とオープン化によるフェアネス担保/自動化≠利益化/エンジニアが法務を担う/紛争を発生させないことで利益を生み出す法務/すべての課題は国会に通じる/電子化の4つの場面(交付・署名・申請・保存)・・・LTを聞いてないとなんのこっちゃかもしれませんが、私が司会の片手間に刺激を受けてメモしたフレーズ・キーワードだけでもこんなにあり、5分のそれぞれのLTがいつも以上に短く・早く感じました。

リーガルテックが産業としてくるかこないかはさておいても、何より感じたのは、法務パーソンに語学力が求められてきたようにテック力が当たり前に求められるようになるのはまず間違いないな、ということでしょうか。脅威でもあり、楽しみでもあります。
 

当日の様子はtwitterのハッシュタグ #LegalTechLT からご覧いただけます。ご参加者のご感想もお聞きしたいですし、こちらをご覧いただきリーガルテックに興味をもったという方もぜひ私までお声かけください。またこういったイベントも随時開いていきたいと思っていますので、その際はどうぞご参加とご協力をお願いいたします。
 

リーガルテックと10年後の法務・知財業務

 
このエントリでは、10/5開催予定のリーガルテックLTに向けた準備と論点整理も兼ねて、法務・知財業務の人から機械への業務代替可能性や、企業法務・知財パーソンが今後力を入れていくべき領域について、考えてみたいと思います。

「人ならではの仕事」を特徴付ける3つの要素


リーガルテックの未来に関する論考をいくつか読んでみた中で、人ならではの機械には代替されにくい仕事とは何か、人と機械のすみわけについて、ビジネス法務2017年7月号の特集「リーガルテックの最前線」に掲載された野村総研上田恵陶奈さんの記事(P12-16)が分かりやすく参考になりましたので、一部を紹介させていただきます。

(オックスフォード大と野村総研の)共同研究では、AIは一部の職業を代替できる可能性があるが、代替できない職業もあるという結果になった。では、AIが技術的に自動化しにくい、苦手とする特徴とは何か。要約すると、「創造性」「ソーシャル・インテリジェンス」「非定型」という特徴がある場合である(下記【図表1】)。逆に言えば、「創造性が必要ない」「ソーシャル・インテリジェンスを必要としない」「定型」の特徴を持つ職業は、AIなどで代替できる可能性が高い。

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McKinseyの調査によれば、現時点のテクノロジーを前提とした場合、全職業では約半分の業務が自動化可能であるけれども、弁護士については23%の業務のみが代替可能とされる。Deloiteは、今後20年で弁護士事務所人員の39%が代替可能と予想している。代替できる範囲に違いはあるが、いずれも2つの点で共通している。すなわち、法律事務所の業務はAIによって自動化される可能性があることと、代替できる範囲は半分未満にとどまり人による業務と共存することである。

野村総研の上田さんは、記事全編にわたり、法律業務の多くは(プロフェッショナル集団である法律事務所であっても)テクノロジーによって代替されていくが人に残る領域はあり、機械と仕事を奪い合うのでなくテクノロジーをうまく使いこなす側にまわることで、人ならではの3つの特徴を生かした高付加価値業務にシフトを進めるべきだ、と述べています。

ではその高付加価値業務とは何か、代替されない業務とは何かを具体的に見極めて、将来求められるであろう経験・スキルを今から戦略的に身につけていきたいところです。

法務・知財の業務別代替難易度


そこで私は、法務・知財の求人広告に記載されている業務をリストアップし、それらを先に紹介した「創造性/ソーシャルインテリジェンス/非定型」の3つの切り口で、私の独断によるテクノロジー代替難易度をランク付けしてみました。特に、Aが2つ以上ついたものは代替可能性はかなり低い(できたとしてもシンギュラリティ以降)だろうということで二重丸を、Aが1つついたものも今後10年は代替困難だろうということで一重丸を、それぞれつけています。

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こうやって眺めてみると、現時点で「C」ランクを付けざるを得ない業務は、実はすでになんらかの形(法律特許事務所・サービサー・請負事業者への委託、派遣社員の活用、システム化)で代替・アウトソースがはじまっている領域であることがわかります。これらの業務が人の手から離れ、ますます機械化されていくであろうことについては、それほど異論はなさそうです。

一方、議論が分かれるのは「B」ランクの業務でしょう。特に、現状の法務・知財パーソンのメイン業務である契約書・特許出願書類等の法律文書作成業務は、業務時間に占めているボリュームが多いだけに、本当に代替されてしまうのかは興味深いところです。この点、当然に案件によって創造性がアウトプットの差を生んだり、非定型で複雑な処理が一部混入していることで機械化がかえって非効率になったり、ということはあるでしょう。しかし、そういった特殊なものを取り除いた大部分が機械で自動化可能ならば、これらの業務も早晩テクノロジーに代替されていくのだと思われます。

そうなると、がぜん「A」ランクが付く業務に注目が集まってきます。法的リスクを早期に発見・切り分けしこれを乗り越えていくための法律・知財相談、人間の感情が交わるからこそ機械だけでは手には負えない訴訟・トラブル・危機管理、そして近年法務の領域拡大エリアとして注目を集める法そのものを動かしていく渉外・公共政策・・・、いずれも、法的トレーニングを積んだ基礎があった上での総合芸術的な業務分野です(水野祐先生が提唱される「リーガルデザイン」の目指すところと多くが重なります)が、この辺の業務の経験を今から積極的に取りに行き、自分の血肉としていく行動力が求められます。

テクノロジーで生まれる余力でシフトチェンジ


法曹人口の拡大による契約書業務の低価格化に危機感を感じこのブログを始めた12年前、契約書作成半自動化サービス「契助」がリリースされてアメリカでもLegalZoomやRocketLawyerといったテック系企業が勃興しはじめた4〜5年前、そして日本でもAIを用いたリーガルテックサービスが矢継ぎ早にリリースされはじめた現在。ゆっくりとしかし確実に業務自動化の足音は近づいてきています。

約10年後の2030年、B〜Cランク業務の多くがテクノロジーによって代替される(かもしれない)未来に備え、自分から積極的にテクノロジーを手懐けてCランク業務を省力化し、生まれた余力でクラッチを切っていち早くAランク業務へシフトチェンジしていく。そんな戦略が理想的です。
 

ビジネス法務 2017年 07 月号 [雑誌]
中央経済社グループパブリッシング
2017-05-20


 

法務&知財系ライトニングトーク2017 <リーガルテック祭> へのご応募ありがとうございました


10月5日開催、「法務&知財系ライトニングトーク2017 <リーガルテック祭>」 へのご応募ありがとうございました。受付開始から数日で定員の2倍を超え補欠繰り上がり待ちの方も出るなど、このテーマに対する関心の高まりを改めて感じました。

イベントページにも追記させていただきましたとおり、基調LTには、弁護士ドットコム「クラウドサイン」事業責任者 橘大地先生と、株式会社Toreruの代表取締役 宮崎起史先生をお招きします。橘先生には日本のリーガルテックの全体像について、宮崎先生には人工知能が変える知財の将来について、それぞれお話していただくことになっています。

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※橘先生・宮崎先生のご経歴・ご活躍については、以下記事を参照
▼1年半で6,000社が導入!「PMF」を実現した、新規サービスの開発・拡大プロセスを公開
https://seleck.cc/959
▼書類作成の9割以上自動化、作業量従来比1/10に。商標登録AI「Toreru」
http://startuptimes.jp/2017/08/07/62452/

また、一般応募枠で参加いただける企業や法律事務所の方々にも、(私からは公開を控えますが)リーガルテックを活用される会社様や、この分野で著名な先生がいらっしゃいます。どうぞお楽しみに。LT参加の方でテーマをご提出いただけてない方、イベントページでの表示が「(未定)」になっておりますので、こちらのご提出もお待ちしております!

最後に、残念ながら補欠となってしまったみなさま、法律系イベントのキャンセル率は低めなので、申し訳ないのですが繰り上がりは期待薄でご参加いただけない可能性が高いと思います。。。どの程度お伝えできるかはわかりませんが、可能な限りハッシュタグ #LegalTechLT でtwitter実況を試みたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

法務&知財系ライトニングトーク2017 <リーガルテック祭>  8/29からLTer受付開始


来たる2017年10月5日(木)、 ブログ「企業法務について」の @katax さんと、法務&知財系ライトニングトーク(LT)イベントの開催を企画しています。

今回は、いつもと違った新しい試みとして、LTのテーマをあらかじめ設定してみたいと考えています。
そのテーマはずばり「リーガルテック」

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クラウド・ビッグデータ・AI・ブロックチェーンといったテクノロジーが次々と法律業務にも応用されつつある現状を踏まえ、
・実務に業務にどう取り入れていくか?(具体的アイデアでも期待・想像でもOK)
・あの会社のリーガルテックサービスを実際に使ったことあります!(感想・レビュー)
・あなたが予想するリーガルテックの落とし穴・リスク
・人間が活躍できる非代替領域はどこになるのか?
・リーガルテック時代の法務・知財パーソンの今後のキャリアは?
・行政サービス・法律はどう変わっていくか?
など、リーガルテックに関連したテーマで5分間のLTをご披露いただければと思います。なお、基調講演(LT)として、実際にリーガルテックを推進されている事業者・専門家の方々にお話をいただくことも検討しています。

リーガルテックに対する「期待」や「不安」はさまざまあると思いますが、企業の中で法務・知財として今も活躍する皆さんがテックを使いこなし、より生産性や付加価値の高い業務に取り組む前向きな未来について、ピザとビールを片手に気軽に意見交換・想像できるような場にできればと考えています。

そこで、現在企業に在籍されている法務・知財パーソンの方々から、LTerを12名程度優先枠として先行受付させていただきたいと思います。応募方法について、あす8月29日(火)7:00ごろから9月3日(日)ごろまでをいったんの優先申込み期間として、本記事内に応募フォームへのリンクを掲載いたします。予定を変更し、8/29から企業在籍LTer枠12/士業その他LTer枠6/聴講枠をそれぞれ先着順で受付を開始しました。

ご興味を持ってくださった方は、お手数ですがご応募いただければ幸いです。


▼法務&知財系ライトニングトーク2017 <リーガルテック祭>(connpass)
https://connpass.com/event/65612/



ビジネス法務 2017年 07 月号 [雑誌]
中央経済社グループパブリッシング
2017-05-20








FinTechの法律 2017-2018 (日経FinTech選書)
森・濱田松本法律事務所 増島雅和
日経BP社
2017-07-21


 
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