企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

商標

【本】新 商標教室 ― あの名著の「基礎編」が「上級編」にレベルアップしました

 
弁護士会館ブックセンター出版部 LABOの渡邊さまより、以前このブログでもご紹介した商標実務の名著『商標教室』が出版社もあらたに新版となってリリースされるとのご連絡を頂戴し、ご好意によりご恵贈いただきました。ありがとうございます。

 
新 商標教室新 商標教室 [単行本]
著者:小谷 武
出版:LABO
(2013-05)


頂いて、読んでみてびっくり。事前のご連絡では『商標教室 基礎編』のアップデートと聞いていたのに、別モノの本になってました。そのわかりやすい証拠がこのページ数の圧倒的な差。旧版が(商標法の条文抜粋部を除き実質)150ページなのに対して、新版は450ページと3倍になっています。

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では旧版と新版では何が変わり、その増えた300ページに何が書かれているのでしょうか?この点、旧版のよいところである、法律の建て付けに左右されない章立てと、セミナー講義を聞いているかのような読みやすい筆致はそのまま残っています。しかし、あきらかに変わったのは“レベル”です。説明をあえて基礎レベルにとどめていた前作とはうってかわって、著者小谷先生の頭の中の“ノウハウ”が遠慮無くつめこまれただけでなく、先生が長年の商標実務の中で鬱積させてきた特許庁の「机上の審査」のクセに対する“ツッコミ“がすべてぶちまけられているかのような本になっているのです。


“ノウハウ”とは例えばどんなものか。たくさんありすぎてどこをご紹介すべきか迷いますが、旧版に無かった中で「おおー」と唸ったのがこれ。

筆者は30年以上にわたって特許庁の審決例を集めてきました。その結果、商標の類否が問題になるケースに、以下のようなパターンがあることに気がつきました。
これらの大半は、商標中の核となる語に、形容詞的に他の語が結合していて、その後が商品や役務の内容を記述しているような場合ということができます。
(中略)
【類似のパターン】
(1)愛称
(2)1音有無の相違
(3)IT用語
(4)大きさ
(5)外国語
(6)普通名称を含む商標の称呼
(7)語順の相違
(8)色彩
(9)商号的商標
(10)称呼同一で非類似の商標
(11)書体の相違・二段書きの商標
(12)数字
(13)人名や性別・子供を表す商標
(14)地名を含む商標
(15)定冠詞
(16)長い称呼
(17)2音相違
(18)派生語
(19)連音
(20)ローマ字1文字・2文字・3文字
(21)ハイフン・スラッシュ・中黒・コロン記号
(22)その他のキーワード
(23)図形商標

日頃商標の類似判断に悩まれている方であれば、このパターンリストを見ただけでうんうんそうそういつもこの辺りで迷うんですよね〜と共感されるんじゃないでしょうか。この後これら一つ一つの項目について40ページに渡って、以下のように表形式で実際の審判事例(これは「(6)普通名称を含む商標の称呼」の審判事例ですね)をリストアップしながら、類否の見極め方の解説が加えられています。この部分だけでも、3万円のセミナーを受講するぐらいの価値はあるでしょう。ちなみに、このあたりの参考データは、先生が所属されている不二マークス・ジャパンのウェブサイト 審決データファイル のコーナーにもまとめられていて便利です。


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“ノウハウ”の公開はこれにとどまりません。審査基準の理解に必要となる、しかしながら普通の商標法本ではほとんど正面から解説されることのない「類似群コード」「他類間類似」「備考類似」についても、旧版にはなかった説明が加えられています。例えば、スマートフォンという商品の商標審査基準上のクラスは「第9類 電気通信機械器具」になるところまではわかると思いますが、類似商品コードとして「11B01」も割り当てられています。この番号は何か・なぜクラスと違う数字になるのか・どのように審査に使われるのか、という話です。

現在付けられている類似群コードの基礎は、1992年(平成4年)3月31日まで使用されていた旧日本商品分類にあります。
類似群コードの基礎となる旧日本分類の中心は用途販売店主義、つまり商品の用途や販売店が共通するものが類似商品として判断されています。これに対して1992年(平成4年)4月からの国際分類は、主に原材料主義や機能又は用途主義、つまり商品の原材料が皮革製品か、金属製品か、布製品かのような基準や、商品の機能や用途の共通性で分類されているため、旧分類では同じ商品であっても、国際分類に置き換えた場合、異なるクラスに分類される商品がたくさん出ることになりました。ただし、クラスは違っていても類似群コードは現在も変わりませんので、いずれも類似商品と扱われることになります。このように、異なるクラスの商品が類似商品と判断されることを「他類間類似」といいます。


・・・と、この辺でストップがかかっていれば中級編へのパワーアップで良かったね!で済んだのですが、この本を上級編にまでレベルアップ「させてしまった」のは、先生のあまりの経験の豊富さによって、特許庁の審査基準の揺れや甘さが暴かれてしまっている点にあります。それが増ページ要素のもう1つである“ツッコミ”のパートです。たとえば、識別性の論点について、コンデナスト社の雑誌『GQ』とソウル・ミュージックを聴かせる飲食店「CAFE GQ GINZA」の裁判を取り上げて、こう述べます。

商標審査基準ではローマ字2文字は識別性がなく登録できないので、識別性を欠く商標を使用することは問題ないように説明してきましたが、そうも言ってられない判決が出ています。GQ事件(東京高裁平14.4.24、平13(ラ)1814、判例時報1807号137頁)です。
東京高裁は、<<GQ」の文字に書体上の特徴は認められるが、需要者がみた場合、基本的に「G」と「Q」を表すと理解するにとどまり、このような認識を上回るほどの外観上の特徴を見出すことはできない。そこで、両商標を比較すると、両者は「ジーキュー」の称呼が同一で、観念、外観において、両社の類似性を否定する要素も見出だせないので、両商標は全体として類似する。>>と判断しました。
東京高裁の決定理由を正確に理解することは困難ですが、やはり「GQ」の文字自体に権利があるといっているように理解する以外にありません。特許庁のプラクティスでは、共通するローマ字2文字の商標で、外観デザインの異なる商標が多数並存登録されていますので、銀座GQ店商標を出願した場合、C社商標と並存登録される可能性が十分にあることになります。

新版ではこのように、特許庁の審査基準では説明し得ない審決例・裁判例を紹介しながら、現実の商標審査の通過可能性を読む難しさや問題点を語るパートが、旧版に比べて圧倒的に増えているのです。


以上の結果、「基礎編」だった旧版の中身もすべて入っているにもかかわらず、「上級編」にまで一気にパワーアップしてしまった感のあるこの『新商標教室』。旧版を読んだ方にとっては、この新版で知識を深められるのは朗報であり知的好奇心をくすぐられるものに違いありません。その一方で、読んでないand/or初級者の方は、いきなりこの本を読むと基礎部分と上級部分が切り分けられず混乱する可能性もあります(かくいう私も、実は混乱してますのでまだまだ初級者なのかもしれません…)。用法・用量に気をつけて、読んでみてください。
 

【本】商標教室 ― 「頭でわかる」から「説明できる」商標担当になれる本


商標法を初めて学ぶ人には『商標法のしくみ』をおすすめしてきたのですが、その先の、法律実務家としての本格的な学習に耐えうる初級〜中級者向けの本がないものかと探していたところに、ずっと昔からそのポップなデザインが気になっていたこの本を入手することができました。

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商標教室(基礎篇)
著者:小谷武
販売元:トール
(2003-10)
販売元:Amazon.co.jp



Amazonにサムネイル画像すら無いことからも想像がつくように、すでに入手困難になりつつある本ですが、ネットで検索してみると、実務家からの評判が相当高いことがわかります。

基本書アーカイブス(GSN弁理士受験指導)
『商標教室』(商標実務あれこれ日記)
知財ゼミ(弁理士試験対策/知的財産判例紹介サイト)
商標法の最良の入門書〜「商標教室」(アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常)

その人気の秘密は、商標法のポイントを法律の建て付けに従って解説するスタイルを敢えて避けて、商標法に込められたエッセンスを分解し、商標論→商品論→顕著性論→類似性論→制度論として再構築する、他にないアプローチを採っている点にあろうかと思います。

そしてなぜ、そんなアプローチを採る必要があるのかについて、著者はこう述べます。

商品を識別するための商標は商標法が制定される前からあったのですから、商標は社会的な事実として捉える必要があります。ある音やあるメロディーを聞いたとき、あるいはある匂いをかいだとき、ある会社の商品を思い出すことがあります。その音や匂いによって、その会社の商品を識別できるのであれば、それらは商標ということができます。
しかし、商標法では、音や匂いは商標の定義の中に入れていませんので、まず商標法ありき、という考えの人は、音や匂いは商標ではない、と言い張ることになり、そこで、商標とはの素朴な議論がはじまることになります。
その証拠に、ケンタッキーフライドチキンのサンダースおじさんの人形は、現在の商標制度では立体商標として商標登録され保護されていますが、旧商標法では、商標を平面的な文字、図形、記号、これらの組み合わせとしか定義していませんでしたので、たとえ有名な商標であっても、商標法上の商標の定義に当てはまらなかったため、商標登録による保護は受けられませんでした。
ですから商標法の商標の定義は、商標登録により保護することができる商法の範囲を決めているだけであり、社会的な意味での商標を定義しているのではないことがわかります。

商標法があるから商標を守らなければならないのではなく、自社の製品であること・他製品と違うということ・品質が保証されていることを伝える“しるし”を保護しようというのが商標法の本来の主旨。実際に、来年の法改正で商標法の保護の範囲に香り・音・触感も加わろうとしているわけで、このような考え方に立って商標法を理解しているかどうかが、応用力の差になって顕れてくるのだと思います。


こういった書物としてのアプローチの妙だけでなく、実際の実務で「自分は頭ではわかってるんだけど、後輩や現場に旨く説明できなくていつももどかしく感じる」ポイントに、数多く言及してくださっているところもありがたいです。例えば、IT・ウェブ系企業法務の方だったら絶対でくわしているはずの、“無形の商品”の出願における指定商品・指定役務の指定の仕方に関するこんな記述が例に挙げられるでしょう。

ここで注意しなければならないのは、ネット配信の場合、ダウンロードが可能かどうかという点です。パソコンでインターネットを使用する以上、すべてダウンロードすることになりますが、これは広い意味でのダウンロードであり、商品分類の決め手となるのは、狭い意味でのダウンロードです。たとえば、音楽配信の場合、インターネット経由で送られてきた音楽をパソコンで楽しみ、聞き終わったらそれでお終いという場合、第41類の「音楽の提供(配信のみ)」としてサービスマークの対象になります。

一方、自分のパソコンやCD、MDにダウンロードして繰り返して利用することが出来る場合には、レコードやCDを買ったのと同じ扱いで、商品商標の対象になります。
コンピュータソフトの場合も、インターネットで提供されたものを、利用するだけであれば、第42類のサービスの提供になりますが、ダウンロードして繰り返し利用できる場合には、CD-ROMを買ってきたのと同じく第9類の商品になります。
しかし、ダウンロード可能かどうかで商品とサービスとに分類は分かれますが、いずれの場合も、提供するのはソフト会社であるため、類似商品役務審査基準では、第9類「電子計算機用プログラム」の「備考」として、「電子計算機用プログラム」は、第42類「電子計算機用プログラムの提供」に類似すると付記されています。したがって、第9類か第42類のいずれかで「電子計算機用プログラム」について権利を確保していれば、他のクラスの使用に対しても、権利を行使できることになっています。
「電子出版物」についても、第41類の「電子出版物の提供」に類似する旨の「備考」がつけられています。

なおこの「備考類似」では、審査の過程で審査官が職権でクロスサーチをすることはしませんが、情報提供や異議申し立てがあった場合にだけ審査の対象となりますので、ソフト会社では、積極的に第9類と第42類の両方のクラスで権利を確保するようにしています。

実務経験やノウハウという言葉で片付けられてしまいがちなこのあたりの実務的なポイントも、「頭でわかる」のと「説明できる」のとでは大違いです。


この商標教室、写真にあるように2分冊の判例研究編もあります。出版社の倒産による絶版とのウワサがありますが、是非『基礎編』だけでも探して読んでみてください。


商標教室 判例研究編
著者:小谷武
販売元:トール
(2003-10)
販売元:Amazon.co.jp

商標教室 判例研究篇 2
著者:小谷武
販売元:トール
(2004-08)
販売元:Amazon.co.jp


 

スマホアプリのアイコンと商標権 ― アップルはちゃんと権利化してた

 
とある会社の方が、「スマートフォンでは、ゲームのダウンロード数や利用回数は、そのアプリのアイコンの出来だけでも大きく変わる。PCの時代のデスクトップに並ぶアイコン以上に、スマホアプリのアイコンデザインには気を使っている」という趣旨のことを仰っていて、なるほどな〜と感心していたのですが、さて、アプリのアイコンがそれだけで売れ行きを左右するほどの威力を持つのなら、なにかしら権利化しておかないとまずいのでは、でも、できるんだっけ?という疑問が。

絵柄なので、例によって「思想又は感情を創作的に表現したものであって〜」の要件を満たせば当然に著作権は働くはずですが、商標権とか意匠権でも保護できたりするのかな?と。

スマホアプリのアイコンは商標登録が可能


この疑問をふと思いたったとき、本のメッカである神保町にちょうどいた私。大きな書店の法律書コーナーに駆け込んで、手当たり次第本を開いていった所、この本にその答えがバッチリ書いてありました。この本の第五版は既にこのブログでも紹介済みですが、奥付によれば明日2012年7月27日発売となっているこの第六版は、スマホやクラウド対応に伴って第五版から大改訂されていたので、立ち読みで済まさずにちゃんと買って帰りましたよ(笑)。


知って得する ソフトウェア特許・著作権 改訂五版知って得する ソフトウェア特許・著作権 改訂六版
著者:古谷栄男
販売元:アスキー・メディアワークス
(2012-07-26)
販売元:Amazon.co.jp



アイコンについては(略)著作権法や意匠法で保護されることがあります。しかし、アイコンのうち、アプリケーションプログラム(アプリ)を表す画像は、現在の日本の意匠法において、スマートフォン(携帯電話)、PCまたは携帯情報端末そのものの機能とは異なるということで、保護の対象とはなっていません。

一方、アプリを表すアイコンであっても、それがアプリを購入等する際の目印として機能する場合には、商標法の保護対象となります。一般的には、図形的な商標として認識されることになるでしょう。

iTunesなんかはどう見てもアイコンが購入する際の目印になっているわけで、やっぱり思った通り商標権でいけるのかと、まずは一安心。


実際各社はどうしている?


しかしながら、AndroidアプリとiPhoneアプリの何万とあるアプリすべてが商標出願しているとは思えません。実際、みなさんどうしてるんだろうと思い、調べてみることに。

アップルについては、先ほどの本にこのように権利化済みアプリアイコン(スマホだけでなくMacのものも一部含まれる)が一覧化されていまして、さすがモバイルにアプリの概念を持ち込んで普及させた会社だけはある、といったところ。

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具体的に一つ、その詳細を見てみると、たとえばみなさんよくお使いのiPhoneカメラアプリのアイコンの商標登録情報がこれ。

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指定商品第9類で、かなり細かくきっちりと記述してありますね。指定役務も何かしらあるかと思ったんですが、これがまったくなかったのが意外な感じです。


ではGoogleはどうでしょうか。IPDLの商標出願・登録情報検索画面で「出願人:GoogleINC.」をキーに検索したところ、出てきた商標は20数件。出願内容を開いて見てみると、ChromeやGmailアプリのアイコンに近いものはありました(国際登録1024150Aなど)が、アップルのように明確にアイコンとして登録しているものではありませんでした。

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一方で日本企業のアプリ/ソシャゲー大手数社も同様の方法で検索してみましたが、見つかったのはこのMobageのアプリアイコンぐらい。

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こちらは指定役務第45類「ソーシャルネットワーキングサイトの開設・運営」のみでした。

“機能”を表すアプリアイコンは商標登録を


というわけで、ざっくりとしたリサーチではありますが、各社としてはアプリアイコンの一つ一つをいちいち商標出願しているという状況ではないようです。確かに、ゲームアプリを沢山開発しているような企業が全部出願してたらコストも大変ですし、会社のロゴマークやキャラクターが書いてある分には、すでに正当に有している商標権や著作権で守られるわけで、あまり心配はないかと思います。

しかし、ツール系アプリのように、アプリが発揮する機能を上手い図案で表現したような「このアイコンはあの会社が作ったあの機能を有するアプリ」と想起されるようなアイコンを開発したのであれば、出願をして商標権をもって他社を排除できる/他社から侵害を主張されない強力な権利を手に入れるという手は、検討しておくべきでしょう。まさにアップルがそうしているように。

特に、上で紹介したカメラアプリのアイコンが典型例ですが、“機能”を絵で描写しただけの一見普通のアイコンだと、創作性に欠けると評価され著作権だけで戦うのは難しいと思われます。しかし、その普通のアイコンがひとたびどこかの会社に商標登録されてしまうと、自社アイコンが商標権侵害になる状況に追い込まれる可能性もあるわけです。事実、カメラアプリやメールアプリはアップルのものに似た“権利侵害アイコン”がうじゃうじゃ存在するわけで・・・。

アップルがそんな意地悪をするとは思いませんが、ライバルとして目に余った場合には、商標権を振りかざされるリスクもあるということを十分認識の上で、アプリアイコンを決定していただいた方がよさそうです。
 

スタートアップといえども社名は商標登録しておいたほうがいい3つの理由

 
とかくキャッシュを大切に使いたいスタートアップ期において、法的な手続きにかかるコストにはうんざりさせられるもの。必要不可欠なものでなければ、「後でお金に余裕ができたらね・・・」となるのも無理はありません。

しかしそんなスタートアップの苦しい時期といえども、社名だけは早期に商標登録をして商標権を取得しておくことをお薦めします。「え?商標権って、具体的な商品名とかサービス名を決めるときとか、あわよくば商品・サービスがヒットしてから取得すればいいんじゃないの?」と言う方のために、以下その理由を3つにまとめてみます。


1.社名を商品・サービスブランドとしてそのまま“活用”できる


たとえばGoogleがわかりやすい事例ですが、社名であり検索サービスの名称であった“Google”がブランドとして認知されるようになった後、サービスの多角化にあたって“Google Map”、“Google Calendar”、“Google Docs”、“Google Reader”…という風に、ブランド名としての“Google”を流用して様々なサービスを展開しています(GmailやYoutubeやPicasaなど例外もありますが)。

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このように社名を商標として権利化してブランドとして育てれば、【ブランドとして権利化した社名+商品・サービスの機能を表す普通名詞】を組み合わせて用いることにより、商標権をいちいち抑えなくても安心して商品・サービスを展開できます

もちろん、商品・サービスを開発するごとに独自のユニークな名前を考えてもいいわけですが、このGoogle方式の方が新しい商品・サービスをリリースする際の機動性が確保できるだけでなく、商標権取得コストの節約にもつながるという点で、時代にあった賢い方法と言えるのでは。

2.同じ商号(社名)の会社が出て来ても対抗できる


会社を設立する際に商号(社名)を法務局に登記しているので、何か法務局が会社名を守ってくれるような錯覚を覚えますが、同じ名前の会社が存在しても、実は法務局は全くチェックしていません※1。従い、まったく別の会社があなたの会社と同じ社名で登記をすることも、似たような商品・サービスの商売をすることも、会社法上は可能となっています※2。

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そのため、万が一同じ会社名で同じような商品・サービスを提供する会社がすでに存在し、または後で誕生してしまうとも限りません。そうならないようにするためには、商号(社名)を商標として権利化してしまうのが一番。裏を返せば、商号を商標として権利化しておかないと、商品やサービスのパッケージや広告に会社名をブランドとして表示できなくなるおそれもあるということです。

※1 以前は同一の市区町村内では同一商号では登記できない制度になっていたが、現在の会社法ではこの商号規制が廃止された。
※2 既に有名になっている商号(社名)を真似することは、不正競争防止法により規制あり。

3.ドメインネーム紛争リスクを低減できる


webサービスのスタートアップでなくとも、広告宣伝と信用創造の手段としてインターネットにHPやblogを開設することは当たり前の時代。その際には、社名にちなんだ独自ドメインを取得するのが通常です。いやむしろ、イマドキはドメインの空きを調べてから社名を決めるのが通常かもしれません。

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しかし、ドメインネームが取れたからといって安心して商号(社名)として使うのは危険。ドメインネームは、その名前が商号として登記されているかどうかや商標登録されているかどうかとは無関係に取れてしまう(登録にあたりクロスリファレンスされるわけではない)ため、後でそのドメインネームに類似する正当な権利者が異議を申し立てた場合、不正競争防止法や日本知的財産仲裁センターのJPドメイン名紛争処理に基づき、ドメインネームの取消しや移転請求がなされる可能性があります。前述のように商号を商標権として抑えておけば、そのようなドメイン紛争に巻き込まれることもほぼなくなります


なお、社名を商標登録する際、商標権の“守備範囲”(指定商品・指定役務といいます)をどこまで広くとっておくかがポイントになってきます。広く取れば取るほど将来に渡って安心ですが、コストも高く付く場合があるからです。この辺については弁理士等や商標管理の経験のある人に相談して検討してみてください。


8:20追記:
以下Twitterで“弁理士兼技術系の弁護士(マイノリティ)”wこと、この分野にお強い高橋先生よりいただいたコメント。

実際、大変なことになっちゃったケースは私もよく耳にしますので。こうなると専門家に任せるしかないです。


参考文献:

商標法全般についての易しい解説はこちら。
なるほど図解 商標法のしくみ (CK BOOKS)なるほど図解 商標法のしくみ (CK BOOKS)
著者:奥田 百子
販売元:中央経済社
(2006-01)
販売元:Amazon.co.jp



ドメインネーム紛争について解説が詳しい。
インターネットの法律Q&A―これだけは知っておきたいウェブ安全対策インターネットの法律Q&A―これだけは知っておきたいウェブ安全対策
著者:岡村 久道
販売元:電気通信振興会
(2009-07)
販売元:Amazon.co.jp

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