企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

次世代法務パーソン

【本】V字回復の経営―スタッフだろうが法務だろうが、顧客訪問したっていいんじゃない?

 
不景気で苦しい時代であること、そして最近ではTABLOGの田端さんが紹介されたことでも再び人気が再燃している感があるこの本。

V字回復の経営―2年で会社を変えられますか (日経ビジネス人文庫)


今はミスミの代表取締役CEOを勤める著者三枝匡さんが、過去ターンアラウンドスペシャリストとして再生に携わった東証一部上場「K」社の実例をベースに、腐った企業体質を変えV字回復を軌道に乗せるまでを、リアルなビジネス小説仕立てで疑似体験させてくれます。


ダメ会社に共通するダメポイント

ストーリーは、子会社で経営者として実績を上げている生え抜き社員の黒岩を、親会社の社長が不振事業部における改革推進のリーダーとして呼び戻すところからはじまります。

黒岩は、幹部社員を中心にヒアリングを重ね、人選をしてタスクフォースを組み、自社の組織的問題を洗い出していくのですが、

この過程で出てくる2枚のスライドが、この小説のモデルとなったK社だけでなく、およそダメ会社に共通するダメポイントを的確に表しているなと。

s-kaikakuconcept1

s-kaikakuconcept2


安い言葉で言えば、「大企業病」とはこういうことだ、ということを端的に言い表しているスライドです。

つまり、
1)顧客から遠い
2)伸びる市場への移行に抵抗する
会社となってしまったら、もうそれは「大企業病」に犯されたダメ会社だ
、ということ。


法務だって顧客訪問してもいい

思うに、2)の伸びる市場セグメントをめがけて変化をし続けることについては、アホな役員が伸びる市場セグメントが何かすら嗅ぎ分けられず、あらぬ方向に向かう大号令をかけて社員全員総スカンみたいな、どうにもならない不可抗力的要素もあろうかと思いますが、

1)の顧客に近づくことについては、従業員の意識だけで変えることができる改革のポイントです。

たとえスタッフであっても、法務であっても、それは例外ではないと思います。

私はこの本を読んでから、チャンスがあれば営業動向するようにしています。
顧客からのクレームや要望をコンプライアンス・法務部門として直接受けてその場でYes/Noを回答するのは、様々な意味で危険も伴う行為です。しかし、顧客にとってのコンプライアンス・法務部門の役割とはどうあるべきかという“期待”を(いやがおうにも)生で感じることができ、責任の重さだけでなく、この仕事を通して社会の中で自分がどんな貢献ができるのかを突き詰められる貴重な機会でもあります。

こういった顧客の“期待”に緊張感をもって直接応える経験が、会社の改革に繋がるだけでなく、単なる契約代書屋ではない次世代法務パーソンに自分自身を改革していく上でも糧になっていくのではないかと思っています。

「僕らの世界も、有資格者じゃないと、もうキツイよね」

 
タイトルは、先日とある法務の大先輩とお食事をさせていただいて、言われた言葉。

端的に言えば、「きみは無資格だけど、そのままほんとに法務部門の人間として生きてキャリアを積んでいくの?それって無理があるんじゃない?」とやんわりと言われてしまったということです。

このblogのタイトルに「サバイバル」を冠したのは、「旧来日本型の無資格&契約代書屋的法務パーソンのスタイルはもう通用しない」という危機感に駆られたから。
その一方で「まだ日本の企業法務と弁護士制度のバランスを考えると、有資格者を受け入れて活用できる体制になっていない」という矛盾するような主張を続けながら、次世代法務パーソンとは何かを模索してきました。

最近の私の中では、その次世代法務パーソン像の具体的イメージ、必要な要件が明らかになりつつあります。

くだんの法務の大先輩は、その私の中のイメージ・要件を、はるか先取りして実現している方なわけで。

で、私がその次世代法務パーソン像に必要な要件を満足できそうかというと、なかなか難しいかもしれないわけで。

どうしたものかと悩んでいたことを、すでにその域に到達している方から直接「悩んでるんでしょ」と見透かされたもので、余計ココロに沁みました。

【本】人を動かす「人間力」の磨き方―法務パーソンに求められる人間力とは、利益を追求しながらも常識を見失わない力である

 
福岡で活躍するベテラン熱血弁護士萬年先生が、受任した事件や顧問を務める会社のビジネス現場を通して目撃した人間模様を描き、
若き法曹が、この人間模様を通して広い世間の現実の姿を少しでも学んでいただければ、将来、多様な事件、人々と向き合う際に、多くの指針・参考になるであろうし、ビジネスマンにとっても、「人間力」「交渉力」を磨きビジネスを成功に導くためのヒントになるのではないか
という思いでまとめたエッセイ集。

人を動かす「人間力」の磨き方―熱血弁護士の事件簿に学ぶ



裁判所で見る人間模様の疑似体験

社会人も11年目にもなり、その中でも法的紛争に巻き込まれる法務という立場に長く身を置き、最近では人材ビジネスで「労働」にまつわる様々な人間模様を目にする立場にいると、ほとんどのことに驚かない、感覚が麻痺したような気になることがあります。

そんなときには私は決まって裁判傍聴に行きます。裁判ならではの普段目にしないようなえげつない人間模様に驚きながら、ああ、自分もまだまだ人間らしい感覚をもってて良かった!と思うとともに、切羽詰まった・追い詰められた人間はどうなってしまうのかを学ぶことができます。

「萬年弁護士の事件簿」ともいうべきこの本でも、私なんかの限られた経験では知りえないような人間模様が描かれており、裁判所で味わうあの感覚を疑似体験しているかのような気分になれます。


法務パーソンに求められる人間力=常識を見失わない力

紛争は人間が起こしたものである。それは人間の欲望の結果であったり、手違いやミスが起こしたものであるから、人間の叡智内で解決できるはずである。そこで人間がルールを設定して文章化したものが法律である。その意味で法律は常識を文章化したものである。

弁護士に求められる人間力とは、常識力であると説く著者。

ビジネスにおける紛争やコンプライアンス上の問題も、そのほとんどが当事者いずれかの常識を欠いた行為に原因があり、常識に立ち戻って考えれば何がまずかったのか、どちらが悪かったのかはすぐに分かります。

一方で、ビジネスとは、少ない労力で大きく儲けたいという人間の欲望が極大化される場であるだけに、常識を欠いた行動を起こしがちなのも事実。

そんな利益を追求するビジネス現場においても、ある種の冷静さを保って、常識を見失わずに是非を判断できる存在でありつづけること。
それが、法的専門力以上に法務パーソンに求められる人間力ではないかと思います。

変わり行くリーガルプロフェッションのあり方

 
ちょっと前のThe New York Timesの記事と、その後見かけたAbove the Lawの記事から。

With the Downturn, It’s Time to Rethink the Legal Profession(The New York Times)

The economic downturn is hitting the legal world hard. American Lawyer is calling it “the fire this time” and warning that big firms may be hurtling toward “a paradigm-shifting, blood-in-the-suites” future.

不景気が弁護士報酬を押し下げ、
それによって馬車馬のように弁護士事務所に働かされていた弁護士の働き方が変わり、
ロースクール生の弁護士という仕事への就職観も変わり、
それがひいてはロースクールの教育の在り方をも変えている、
というお話。


The 21st Century Lawyer: New Models for Practicing Law(Above the Law)

こちらは、21世紀の新しいリーガルプロフェッションのあり方を表した事例として、弁護士のwork/lifeバランスを重視したlegal firmであるAxiomやFlex-Time Lawyers LLCといった新しいスタイルのlegal firmを紹介する記事。

In the past, one of the main selling points of these alternatives to the Biglaw model -- MCC, Axiom, or FACTS -- was enhanced work-life balance. But now that the economy is in the tank, a new advantage is emerging: value. Under FACTS, a legal employer no longer needs to pay all lawyers the same amount of money for the same amount of required work (e.g., $160,000 for 2000 hours). Lawyers can select lower hourly targets and receive compensation that reflects their reduced workload.

いずれの記事も、「死に物狂いで働いて、時間でフィーを請求をする」時代が終わりを告げ、「専門家の視点という価値そのものを提供し、フィーを請求する」時代へと、弁護士・クライアントのどちらからともなく、変化してきていることを告げています。


再び、The New York Timesの記事から。

The past few decades of prosperity made a lot of lawyers wealthy, but they were not always good for the profession.

ビジネスパーソンの評価も、旧来の肉体労働を前提とした厳格な時間管理に基づく時間給的発想から、時間管理になじまない知的労働を前提とした成果主義的発想へと、変化してきているわけですが、

高額な報酬水準が先走り、それに呼応するように過度な労働を提供することで誤魔化されていた「本当のリーガルプロフェッションとは何か」が、弁護士の世界においても問われはじめています。

What Makes a Lawyer Great?―偉大な法務パーソンになるために必要な素養とは

 
英語の記事になりますが、いろいろと考えさせられる言葉がならんでいたので、そのうちの1つをご紹介させていただければと思います。

What Makes a Lawyer Great?(lawjobs.com)

Denis said lawyers need to "remember that your client is there for your advice and judgment. Pay attention to every detail, and don't always rely on your initial analysis -- challenge yourself."

偉大な起業家になるには、自分の直感・ビジョンに素直に従い思い切ってビジネスに具現化しようとする力が必要だったりするのに対して、

偉大な法務パーソンになるには、自分の直感をも疑い、真実・事実を丹念に探求(ファクトファインディング)しようとする力が必要です。

「ああもう面倒くさいからこの辺でいいや」とか、
「よくわからないけどたぶんこうだろう」とか、
誰もがそう思ってしまうような場面に次々と出くわすのがこの仕事のつらいところである一方で、そうやって挫けそうなところを丁寧に解決し続け、良い仕事に結びついたときの達成感と与えられる賞賛・感謝がなによりも大きいのが、この仕事の醍醐味でもあります。

面倒さを厭わないで真実・事実を追求し続ける心、いわば『真求心』を持っているかどうかが、偉大な法務パーソンになれるかどうかの分かれ目であり、必要な素養なのではないかと思います。

人事異動―サバイバルなコンプライアンス・法務マネージャーへ


人事異動の季節。

これまでの業務に加えて、リスクマネジメント全般・グループ会社を含む内部統制の統括を仰せつかることになりました。

自分が預かる部署名もそれっぽいものに変わり、仕事が増えた分、メンバーも少し増えました。

私個人としては、「この3年間取り組んできた人材ビジネスに関する法律論をより掘り下げるような仕事ができるポジションが良い」という希望を出していて、正直リスクマネジメントやグループ内部統制を任されるとは予想しておらず、最近の業務量の多さに加えてまた仕事が増えるのか・・・新しいメンバーにきちんと目を配ることができるだろうか・・・と不安感を覚えたのですが、

3年前に自分が書いたエントリを振り返って、「ああ、なるべくしてなってるな」と。

サバイバルの意味(企業法務マンサバイバル)

「企業に雇われているから法務の仕事ができる」という弱い立場でありながら、特に契約法務面では有資格者である弁護士とも伍していかねばならず、さらに、戦略法務・予防法務的観点からは自分の雇い主である経営者が嫌がる本音ベースの提言も(時と場合によっては嫌われるのを覚悟で)しなければならない。

法曹人口増加の中で、単なる契約代書屋的法務マンでは生き残れないという危機感から「企業法務マンサバイバル」とブログ名を変え、転職し、手探りで自分のキャリアを探してきたこの3年間。

今回の人事異動は、直近に抱いていた私のイメージとは違うものではありましたが、リスクマネジメント・内部統制というまさに戦略法務・予防法務的な視点で経営者と直接向き合うポジションを担うことこそ、コンプライアンス・法務部門のマネージャーの職責である、というメッセージなんだなあと。

自らも本音ベースの提言を経営者に行い、かつ有効に機能する内部統制の体制を維持・発展させていくという、より緊張感のあるサバイバル度の高いステージを与えられ任せてもらえたと受け止めて、気を引き締めて邁進していきたいと思います。

法務パーソンとしてのキャリアゴールは、“経営代書人”なのかもしれない

 
「CFOとは、熱気球のように風に流される存在である企業を、熱やおもりといった限られたコントローラーを操って目的地に誘導する経営者を支える経営参謀である」と熱く語る本『最強の経営参謀』を読んで、前からうっすら思っていたことを少し書いてみます。

財務・経理パーソンであれば、キャリアゴールとしてCFO(Chief Financial Officer)という社会的にも認知された地位があるのに対して、同じ事務方にもかかわらず、法務パーソンのキャリアゴールは非常に見えにくいのではないかと。

CLO(Chief Legal Officer)やCCO(Chief Compliance Officer)という肩書きも世の中には在るには在りますが、法務部門のトップにとりあえずCFOっぽい肩書きを作ってみました感ありありで、期待や役割がしっかり定義されているとはとても言い難いように思います。

そんな中で、私たち法務パーソンは、キャリアゴールをどこに置いて仕事をすべきなのでしょうか。

私は今のところ、そのキャリアゴールを
経営の思いを法的な後ろ盾を備えた言葉で経営に代わって言語化する“経営代書人”である
と置いて仕事をしています。

経営者の思いを言葉に代えて、ステークホルダーと円滑なコミュニケーションできる状態を作る役割を担う人であり、しかも、言葉によって生まれる法的なリスクを熟知したうえで最も適切な言葉を選ぶことができる人のことです。

顧客・取引先とは、契約書や内容証明郵便等を通じて、

株主とは、株主総会の事業報告書やプレスリリース等を通じて、

従業員とは、社内規程等の社内文書を通じて、

それぞれの文書において、経営者の思いが、法的な確実性を備えて、きちんと伝わる言葉として表現されているかを見守り、サポートする役割。

日本においては「代書」と言う言葉に少しネガティブなニュアンスが含まれてしまうところがイマイチな感じもありますが、言語化能力で飯を食うという点をストレートに表現するには、自分の中では今のところこの言葉がしっくりくる感じです。


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