企業法務マンサバイバル

ビジネス法務に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きる皆様に貢献するブログ。

Facebook

Facebookのデータポリシー改定案に見るプライバシーポリシーの新潮流


サービスの注目度の高さゆえに、利用規約やプライバシーポリシーを変更するたびに世の中から怒られてしまうFacebook。それでもめげずに、またこれらを改定することになったようです。


Facebook、利用規約とポリシーを短くインタラクティブに改定へ
 米Facebookは11月13日(現地時間)、利用規約、データポリシー、Cookieポリシーの改定を発表した。現在改定案を提示しており、ユーザーからのフィードバックを受けた後、改定する計画。フィードバックは20日まで送信フォームで受け付ける。
 利用規約は従来より短くなるが、基本的な内容は変わらず、例えば広告主や開発者向けの項目がデータポリシーやプラットフォームポリシーなどに移行された。データポリシーはインタラクティブになり、Facebookがどのような個人情報を収集し、それをどう使っているかが分かりやすくなった。
 Facebookは2012年の米連邦取引委員会(FTC)との和解の条件の1つとして、プライバシー関連の設定を変更する場合は消費者にはっきりと通知して承諾を得ることを義務付けられている。今回の改定は、これまでに導入した新機能に対応した内容への改定となっている。


特に、新しいデータポリシー改定案は見た目も大きく変わっています。どんな感じにインタラクティブなのか、百聞は一見にしかずということで、動きをキャプチャしてYoutubeにアップしてみました。



ご覧のように、左側のメニューをクリックすると、プルダウンメニューのようなかたちで小項目が展開され、その小項目をクリックすると、右側のカラムの詳細な説明に飛んで行く、という作り。二世代前の改定から進めていたインタラクティブな作りを更に推し進めている感があります。

利用規約の改定案の方は依然として一般的な文書のカタチですが、この(一般企業におけるプライバシーポリシーにあたる)データポリシーについては、慣れないと逆に見にくく感じる人もいるかもしれません。また、このようなインタラクティブな作りこみは作成やメンテナンスの負荷もあり、そこそこの企業規模が必要となってくるので、必ずしもこれがスタンダードとはならないでしょう。しかしながら、ブレイクダウンされた項目見出しで一覧性を担保 → リンク先でその詳細について個別説明 というスタイルは、日本の総務省が推奨しているスマートフォンプライバシーイニシアティブのアプリプラポリや、米国商務省電気通信情報局(NTIA)が推奨するショートフォームも採用している構造であり、一覧性と透明性を同居させるための工夫としては、このスタイルがベストプラクティスとして定着したと私は考えます。プライバシーポリシーに関して今このスタイルを取っていない事業者も、今後こういう方向に変更せざるを得ない流れになるんじゃないでしょうか。


ちなみに、上記キャプチャ動画で見に行っている「デバイス情報」の項目は、スマホ時代におけるプラポリの書き方の中でも、どこまで詳細に書くべきか実務家が頭を悩ます一大論点です。この点、Facebookの今回の改定案のまとめ方は、なかなか興味深いものとなっています。

デバイス情報。
Facebookサービスをインストールしてあるコンピュータ、サービスへのアクセスに使用するコンピュータ、携帯電話、その他のデバイスからの情報や、それらについての情報を、利用者が許可した内容に応じて収集します。複数のデバイスを使用している場合には、収集した情報を関連付ける場合もあります。デバイスが異なっても一貫したサービスを提供するためです。収集するデバイスの情報を以下に例示します。

OS、ハードウェアのバージョン、デバイスの設定、ファイルやソフトウェアの名称と種類、バッテリーや信号の強度、デバイス識別子などの属性。
GPS、Bluetooth、Wi-Fiなどの信号から特定できる地理的位置を含む、デバイスの位置情報。
携帯電話会社やインターネットサービスプロバイダの名前、ブラウザの種類、言語とタイムゾーン、携帯電話番号、IPアドレスなどの接続情報。

現行データポリシーではやや曖昧な書き方にされていたところですが、今回の改定案から、電話番号やIPアドレスなどの接続情報とGPS等の位置情報を「デバイス情報」の下位概念に置いているんですね。これは新しいんじゃないかと。そして、アプリという語句を敢えて使わず、「サービスをインストールしてあるデバイス」という表現ぶりを編み出しているあたりも、参考になります。
 

Instagramの利用規約改訂騒動を法務目線で斜めに見ると

 
個人的には流行り始めに少し使ったきり続かなかったこともあって、今週ネットで大騒ぎだった写真フィルター&共有アプリ"Instagram"の利用規約改訂騒ぎについてはスルーしようかと思っておりましたが、私が当初予想したよりも大騒ぎに発展したこともあり、利用規約ウォッチャーのはしくれとして遅ればせながら記録方々一言書いておこうかと思います。


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Slashgearさんより傑作マッシュアップ画像を拝借


Instagramの利用規約改訂騒動とは


そもそもInstagramの利用規約改訂騒動って何のこと?という方のために、私が様々拝見した中で利用規約の文言解釈含め一番正確・冷静に捉えてまとめて下さっているなと思った記事をまずご紹介。

【インスタグラム騒動まとめ】Instagram運営「みんなの写真を事業や広告に使うかも」 ユーザー「フリー素材になるのイヤだ退会する!」→ それは少し誤解(ROCKET NEWS 24)
人気の画像共有サイト「Instagram」が大炎上している。あらゆる情報が錯綜しており、ユーザーから退会を検討する声も続出しているのだ。その理由は、利用規約とプライバシーポリシー改定だ。
■Instagram騒動の注目ポイント
・Instagramがプライバシーポリシーと規約を改定した(2013年1月16日から有効)
・新プライバシーポリシーに「事業」で写真等を共有する可能性があると書かれている
・新規約には「広告に使われる可能性がある」と書いている
・広告における具体的な利用方法などは明記されていない
・改訂内容が「写真がフリー素材になる」など拡大解釈され拡散してる
・拡大解釈を確定的な事として誤解している日本人ユーザーが多数いる

その結果、どうなったかというと、InstagramのファウンダーKevin Systromがブログで謝罪し、「ユーザーの写真を売るような意図はなかった」として、利用規約の再改訂案を提出するということになりました。

私達日本人にとっては、mixiが著作権に関する利用規約を改訂しようとして炎上したときから何度か見覚えのある、ノスタルジーすら感じる古典的謝罪劇だなあといった感すら漂います。

法務目線に見える“うっすらとした悪意”


しかし、当初心配したような写真がフリーにばら撒かれるということがないと確認されたとはいえ、法務目線で見ると元々の改訂案はSystrom氏の謝罪コメントとは正反対の“うっすらとした悪意”を感じざるを得ないものだったことは、記録しておくべきかと思いました。それは(狭義の利用規約の方ではなく)プライバシーポリシーの改訂案に記載されていたこの言い回しです。

Privacy Policy(Instagram)
3. SHARING OF YOUR INFORMATION

We will not rent or sell your information to third parties outside Instagram (or the group of companies of which Instagram is a part) without your consent, except as noted in this Policy.

Parties with whom we may share your information:

We may share User Content and your information (including but not limited to, information from cookies, log files, device identifiers, location data, and usage data) with businesses that are legally part of the same group of companies that Instagram is part of, or that become part of that group ("Affiliates"). Affiliates may use this information to help provide, understand, and improve the Service (including by providing analytics) and Affiliates' own services (including by providing you with better and more relevant experiences). But these Affiliates will honor the choices you make about who can see your photos.

Instagramは、AffliatesにUser Content(写真、そのコメント、フレンド情報)とyour information(クッキー、ログ、デバイス情報、ロケーションや利用状況に関するデータ等)をシェアでき、Affiliatesはその情報をサービス運営やその改善を目的に利用できる。ただし、Affiliatesは誰が写真を閲覧できるかについてのユーザーの選択を"honor"する、と。

うっすらとした悪意を感じるというのは、私が下線を引いた部分のうちのこの最後の部分。法務の人が普通にドラフティングすれば、ここでhonorなんて曖昧な語は使わないはずです。 このhonorがなかったら、Systrom氏の言う「Instagramの真意」も信じられたと思いますが、私はこのhonorを見た瞬間、「あ、Instagram(と親会社であるFacebookの法務)は、意志をもって敢えて曖昧な語で将来のための解釈の余地を広げておこうとしたんだろうな」と感じました。日本のブログでは、このプライバシーポリシー側の変更に注目している記事は少なく、もっぱら「利用規約を良く読めば『写真の所有権(著作権)のコントロールはユーザーにある』と書いてあるじゃないか、何を心配しているんだ?」という意見が多かったようですが、英語圏のブログではむしろプライバシーポリシー側の曖昧さやいい加減さを批判・懸念していたように思います。

日本の個人情報保護法の視点でみても、ここで定義されたUser Contentとyour informationすべてをこの一文でAffiliates=Facebookに提供するというのは、個人情報保護法第23条に定める共同利用の通知・同意取得と捉えたとしてもやや乱暴にすぎると評価されるのではないでしょうか。おそらく、次回提出される利用規約&プライバシーポリシー改訂案では、このhonorの語は消え、Facebookに何を共有し何を共有しないのかをクリアにするのでは、と私は予想しています。

じゃあどうすりゃいいの?の続きは利用規約ナイトVol.2で!(※未承諾広告)


こういった利用規約やプライバシーポリシーの制定・改訂のたびに、私達企業法務も、「後々のことも考えて汎用性を持たせておきたい」と下心を出してしまったり、「規約を見せて同意をとりさえすればなんでもできる」と勘違いをしてしまいがちです。そして、そのちょっとのおイタが過ぎるとこういった大炎上騒ぎになるということが、日本のみならず世界でも繰り返されているのだという事例・教訓を、今回も目の当たりにできました。

こういった事態にならないように、ウェブサービス運営側として何をどう気をつければいいのか?先日宣伝させていただいた利用規約ナイトVol.2の運営事務局では今、まさにこのInstagramの事例も当日の発表やパネルディスカッションでの題材としていこうかという話になっています。お陰様でご予約は満席となり、当日までまだ3週間ちょっとの時間がありますが、当日ご参加される方も是非活発なご意見・ご質問をいただければ幸いです。
 

Facebookの見切り発車 ―ユーザー投票制度と名前検索無効機能の廃止

 
Facebookが利用規約を変更しました。そして、私がその昔他社にはないオリジナリティのあるいい制度だと評価していたユーザー投票制度がなくなってしまいました。


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Facebook、利用規約改定でのユーザー投票制度を撤廃へ(ITmedia)
米Facebookは11月21日(現地時間)、利用規約およびデータポリシーの改定の是非を問うユーザー投票制度を撤廃する意向を発表した。
同社はユーザー投票制度を撤廃する理由として、投票制度では特定のコメントの影響を受けた“質より量の”コメント付き投票が行われる傾向があることが分かったからとしている。
Facebookは今回の改定に当たり、前回も実施したライブイベントに加え、エリン・イーガンCPO(最高プライバシー責任者)に改定に関する質問を投稿できるコーナーを設置するとしている。

ユーザー投票制度は、「利用規約は企業が一方的に定めて押し付けるもの」という批判を受け止め解消するすばらしい試みと評価していました。Facebookは過去実際に、このユーザー投票制度の結果を踏まえて利用規約(案)を修正した実績もあって、決して建前で入れていた制度ではなかったと思います。それだけに、制度廃止が残念でなりません。

しかしそれ以上にびっくりしたのは、なんとその直後の今週、プライバシーセッティングそのものの改悪が実施されたこと。

Facebook、規約更新に基づくサービス改定について説明 名前での検索無効機能廃止(ITmedia)
これまで、Facebookの検索バーに名前を入力しても自分が検索結果に表示されないようにする「私のタイムラインを名前で検索できる人」という設定項目があったが、これが廃止された。
Facebookは、たとえこの項目で設定していても、他の多数の方法でユーザーを探すことはできるので、この項目にはあまり意味がないと判断したという。現在無効にしているユーザーは“ごくわずかなパーセンテージのユーザー”だとしている(少なくとも1000万人は無効にしているということだ)。
Facebookはサービス内の検索の収益化を検討しており、これはそのための動きとみられる。

試しに、検索回避設定をしていたはずの弁護士の知人何人かを検索してみると、確かに検索結果として現れるようになってました・・・。この名前検索無効機能自体を知らない方のほうが多いのでしょうが、弁護士のようなセンシティブな案件を扱う職業に就く方々の間では、設定率が高かった様に思います。過去できたことをできなくするという改悪には、もう少し慎重な態度・手続き・ユーザーが対処をとるための猶予期間を取ってもいいのでは?と思ったのですが。かなり大胆な見切り発車です。

Facebookへの参加は義務ではないし、検索されるのがいやなら、いつでもアカウント削除できるんだからすればよい、というのがFacebookのスタンスなのでしょう。しかし、こういう「SNSでプライバシーをオープンにすることには否定的ながら、慎重に参加していた層」を取りこぼすことになると、その人自身を顧客として失うこと以上に、そういった「慎重な層」を含む友達のほとんどとつながれるという点に利便性を感じていた「慎重でない層」が享受していたネットワーク外部性によるメリットも失われ、ひいては全体の価値低下にもなるような気がします。

さて、ユーザーの反応やいかに。
 

 

Facebook利用規約改定案にみる利用規約変更の最新トレンド

 
Googleの利用規約変更が世界でちょっとした騒ぎを起こしたのは記憶に新しいところ。こんどはFacebookが利用規約の改定に向けて動いています。

3月から意見聴取が行われ、現在その意見を踏まえて再度改定案が提示されているところで、実際に変更となるのは9月が目処になるようですが、ほぼ間違いなくこのままリリースされることでしょう。そこで、何が変わったのか確認しやすくなるよう、Google利用規約の例によりまして、新旧対照表を作成してみましたので公開します。


Facebook利用規約 新旧対照表

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Facebook自身が自社サイトで解説している改定背景も対照表の右側にコメントとしてつけています。併せてお読みください。

CNNの報道などでは若干ヒステリックな反応になっているものの、結論からいうと、この改定による一般ユーザーへの悪影響はほとんどないと申し上げてよいと思います。一方で、法務パーソンやweb上の利用規約の最新動向に興味がある方には、参考になるところがあるんじゃないかと思いました。例えばこんな2点。


<サービスの継続利用=みなし改定承諾>がスタンダードに


Facebookは、改定案に対して7,000件以上のコメントが寄せられた場合は投票による賛否を問い、その投票において30%以上反対意見が寄せられた場合には、その意見に拘束される、つまり改定を行わない旨を規約でうたっています。ユーザー側の立場としては極めて民主的だなあと思いつつも、企業法務側の立場としてはちょっと真面目すぎるんじゃないの?と思っていたのですが、今回、やっぱりFacebookもその手で来たかという規定の追加がありました。それがこれ。

14.改定
(略)
6. 利用者が弊社規約に変更があった後もFacebookの利用を継続した場合、修正された規約を承諾したものと見なします。

<サービスを継続利用する=利用規約改定の承諾とみなす>というアイデアはすでに多くのwebサービスの利用規約で採用されている考え方であり、多数のユーザーを抱えるサービスの承諾取得方法として合理的な落とし所ではないかと私も思っているところですが、Facebookが明確にこれを採用したことで、改定に対する承諾取得のスタンダードになったと言ってよいと思われます。

なお、Googleも3月に利用規約を改定していますが、言い方こそ違えどこんな文言で同様に継続利用を承諾とみなすスキームを採用しています。
Google は、たとえば、法律の改正または本サービスの変更を反映するために、本サービスに適用する本規約または特定の本サービスについての追加規定を修正することがあります。ユーザーは定期的に本規約をご確認ください。Google は、本規約の修正に関する通知をこのページに表示します。追加規定の修正については、該当する本サービス内において通知を表示します。変更は、さかのぼって適用されることはなく、その変更が表示されてから 14 日以降に発効します。ただし、本サービスの新機能に対処する変更または法律上の理由に基づく変更は、直ちに発効するものとします。本サービスに関する修正された規定に同意しないユーザーは、本サービスの利用を停止してください。

それでもこのようなみなし承諾では心配だという法務パーソンには、「敢えて契約期間を設けて改定後に異議なく更新したらその時に当然に同意とみなす」という安全策をお薦めします。

改定案に対するユーザーの意見を(本当に)反映させた


上記のような文言の追加を見ると、あらかじめ改訂案を提示して意見を募る“公聴”プロセスがなんだか形式的で、ユーザーの不満をそらすガス抜きが真意なのではとついつい穿った見方をしてしまうんですが、実はFacebookが寄せられた反対意見を実際に取り入れて改定案を修正している点があります。

3月に提示された改訂案には、17.4に以下のような文言が追加されていました。

17. 米国外のユーザーに適用される特別規定
(略)
4. 特定の地域では、Facebookのサービスや機能の一部またはすべてが利用できないことがあります。弊社は、独自の裁量により、サービスまたは機能の提供を除外または制限する権利を留保します。

これは、特に最近になってドイツ等でGoogleのサービスが著作権法違反に問われていることなど、グローバルに同一のサービスを展開する保証は法律的にはできないということについて、留保条件をつけようとした文言なのではないかというのが私の推測です。しかし、この文言の追加が「国の意向に沿って検閲を行うことを意図しているんじゃないか」と食いついたユーザーがいたようです。その意見に対し、Facebookは以下のように文言の追加をあきらめることを決定しています。以下はFacebookのサイトより。

Q: セクション17.4の追加は、ユーザーや活動家によるFacebookの利用を検閲する場合があることを意味しているのですか。

A: この変更案に対するユーザーのコメントを確認した後、弊社は追加規定が誤解されやすいものであると判断しました。変更案は、弊社のサービス提供が妨げられる状況を対象にすることを意図していました。たとえば、インターネットの障害が発生する、一部の地域において一部の機能が使用できなくなる、ある国の政権が弊社のサービスをブロックする、などの場合です。

このご意見に基づき、弊社はこの変更案の削除を決定しました。

一度発表した改定案を撤回するのは、法務的にはカッコ悪い事態です。ここで一歩引くということはしばらくはこの修正案を再提示することも難しくなるわけで、多少なりとも勇気がいることだと思いますが、口だけ・格好だけの“公聴システム”にしていない点は大変素晴らしいと思います。
 

【本】社会は情報化の夢を見る ― 「twitter、Facebook、Linkedin…そしてGoogle+が社会を変える」のウソ

 
「twitterのリアルタイム性の高さと強力な伝播力が、コミュニケーションを変える」
「FacebookやLinkedinなどの普及によって、webの実名化が進み、組織が変わり、個人の働き方も変わる」

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この本を読んだら、もうそんな台詞は恥ずかしくて口にできなくなるかも。


社会は情報化の夢を見る---[新世紀版]ノイマンの夢・近代の欲望 (河出文庫)社会は情報化の夢を見る---[新世紀版]ノイマンの夢・近代の欲望 (河出文庫)
著者:佐藤 俊樹
販売元:河出書房新社
(2010-09-03)
販売元:Amazon.co.jp



「情報化社会」とは何か ― 結局のところ、それは、技術予測の名を借りた未来社会への願望にほかならない。情報化社会論は五十年間、そうした願望を語ってきたのだ。
本当の問題は、それが技術の必然として語られている点にある。そうすることで「社会がこう変わるのだ」と人々を説得しようとする、というか、人々がそう説得されたがっている ― そのなかで最も重要なことが忘れられてしまうのである。
「社会がこうなってほしい」というのであれば、真正面から、自分自身の願望として、そう語ればよい。そちらの方向へ社会が変わることを私たちが望んでいるのなら、私たちはその方向を選択しているのである。ならば、そのことを正面から認め、その選択に責任を取れば良い。(略)自らの選択を技術のせいにすること ― その責任回避の姿勢こそが真の問題なのだ。
技術を使う時、私たちはその技術の使い方を選択している。つまり、それは技術の問題ではなく、社会の側の問題、私達自身の問題なのである。「技術がこうなるから社会がこう変わる」という言い方は、意識的にせよ無意識的にせよ、それを隠蔽してしまう。情報化社会論がどこかあやしげなのも、最終的には、そのためにほかならない。
一言で言えば、情報化社会論は社会のしくみの問題を技術の問題にすりかえているのだ。そこでは、「情報化」は社会のしくみを考えないための呪文になっている。その呪縛をふりほどいて、はじめて私たちは情報技術と社会のかかわりを本当に考えることができるのである。


私自身、特にFacebook・Linkedin等の技術の普及によって、個人が企業に隷属するような働き方が変わるんじゃないかと期待していた一人ですが、著者に言わせれば、それは自分が理想とする社会を実現させるための行動や努力を自分では何もせずに、他人が作った“技術”という幻想に甘えよう・もし社会がそうならなかったら自分のせいではなく「自分の理想を叶えないようなダサい技術を作った彼ら」のせいにしようとしていたのだと、この一節を読んで恥ずかしくなります。日頃アーリーアダプターを自認している方や、梅田望夫氏の『ウェブ進化論』・津田大介氏の『Twitter社会論』等に感化されてしまった方(実際この2冊は本文中でも引用され批判の対象となっています)などは特に、この本を読んで受けるショックは大きいと思います。
 
とか言いながら、この週末も新しいSNS“Google+”の登場に、また心踊らされているのですが。
 

新しいFacebookプライバシーポリシーに学ぶ契約法務の将来像

 
このブログでは、2年前ぐらいからFacebook関連の法務ネタを数多く取り上げており、とりわけ利用規約関連のネタには注目するようにしています。最先端かつ成長著しいFacebookが抱える優秀な法務部隊の成果物である利用規約を通じて、明日の契約法務の課題が透けて見えるのではないかと思うからです。

そんなFacebookが、Data Use Policy(プライバシーポリシー)の変更に向けてドラフトを掲出し、意見収集を始めました。このドラフトにも、そんなエリート法務部隊の知恵と工夫が見え隠れしています。

Facebook Data Use Policy (draft)

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今回の変更の特徴は以下3つ。

1)プレーンイングリッシュ
まず誰もが一読して分かるように、非常に読みやすい・易しい英語で書かれています。日本の中学生・高校生でも十分に読めるレベルです。

2)トグルスイッチ
一方、易しい言葉で説明をすることにはデメリットもあります。文章がどうしても長くなるということです。これをカバーする2つ目の工夫が、分り易い見出しの右側にある「+」「ー」印のトグルスイッチ。これを押すことで必要な文章が展開する仕組みです。

3)スクリーンショット
3つめに、スクリーンショットを多用していること。マニュアルにスクリーンショットを入れるのはもう当たり前の時代ですが、企業としての契約文書の一つであるプライバシーポリシーに入れている会社は、そうそうないでしょう。


この3つの特徴の中でユーザーから最も評価されるのは、おそらく1なのでしょう。しかし、法務的な視点で見ると、実は3のスクリーンショットを入れた点こそが、Facebook法務部隊が一番神経を使ったポイントだったはずと、私は確信しています。

通常、サービス業のプライバシーポリシーは、将来サービスが変更になっても読み替え・拡大解釈ができるよう(事業者としてのフレキシビリティを担保するために)、あえて“抽象度の高い文言”を積極的に使うものです。このために、いかにも契約文言チックな難しい書き振りと相まって、一般人には何を言っているのか分からない文章になります。これに対し、スクリーンショットを入れてポリシーを分かりやすく説明しようと思うと、必然的に画面に表示されたサービス用語と1対1の同じ言葉をポリシーの文言に盛り込むことになります。ということは、将来スクリーンショットで撮られた画面やサービスで使われる用語が変わったときには、機動的にプライバシーポリシーも変更する必要がでてくるわけです。

プライバシーポリシーを不動のものとしてその範囲でサービスを設計するのではなく、サービスの変化に応じ、面倒でもプライバシーポリシーを修正・メインテナンスしていく。Facebook法務部隊は、今回の変更でそれを改めて覚悟したのだと思います。これはサービス・顧客視点で見れば当たり前のようでいて、残念ながら普通の法務部門ではなかなか持てない発想であり、できない覚悟です。

(とはいえ、こんな「多少サービス変更していくのは許容してね」という文言を入れることも忘れていないあたり、さすが隙はありません。)
Granting us this permission not only allows us to provide Facebook as it exists today, but it also allows us to provide you with innovative features and services we develop in the future that use your information in new ways.

意見収集ページに集まったコメントを見ても、今回のプライバシーポリシー変更案には肯定的な意見が多いようです。中には“complaints and reports”入れ忘れてるんじゃない?なんて至極まっとうな指摘もあったり。超エリート集団のFacebook法務とはいえ、これだけたくさんのコメントが集まれば、気付かされることも多いはず。

サービスのスピードの速さに向き合い、そして高まり続けるユーザーの要望に向き合う覚悟を決めた契約法務のありかたが、このプライバシーポリシー変更案に見え隠れしています。
 

Facebookが変えていく「写真のプライバシー権」

 
これからは、友達が自分を写真に撮ろうとする度に、神経質と思われても「Facebookにアップするんだったら撮らないでね」とはっきり言った方がいいかも知れませんよ、というお話。


カンサスのとある看護学校で、授業中に子宮の検体と一緒に写真を撮った看護学生がFacebookにそれをアップしたところ、スーパーバイザーに見つかって速攻退学処分になったという事件で、看護学生側から裁判が起こされました。

その発端となった問題の写真がこちら(Sarah Beth RN blogより)。
※臓器系の写真に弱い方は、下の方はじっくりご覧にならないほうがいいかも知れませんので注意。

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この裁判において、カンサス州裁判所はこのように述べ、退学とした学校の処分を不当と判断しました。孫引き引用になってますがご容赦を。

Judge Says It’s Reasonable For Any Photo Taken To Go Viral. A Dangerous Precedent?(Forbes)
[P]hotos are taken to be viewed. When Delphia(訳注:看護学校のスーパーバイザー) granted permission to take the photos, it was unreasonable to assume that they would not be viewed. If the photos were objectionable, to say nothing of objectionable to the point warranting expulsion from the nursing program, then it would not have mattered whether the photos were viewed on Facebook or elsewhere. By giving the students permission to take the photos, which Delphia admitted, it was reasonable to anticipate that the photos would be shown to others.

写真とは、その場面を記録して誰かと共有するためのものであって、一度撮ることを認めた以上は、どこに出そうが誰に見せようがFacebookにのせようが、撮るのを認めた側が文句を言える筋合いではない、と言わんばかりの判決。

Facebookでは、以前から未成年の学生の飲酒や乱痴気騒ぎがその友達に写真によってアップされ、さらに名前のタグをふられることで学校等バレてはいけない相手にバレる、というプライバシー問題が発生していましたが、今回のこの判決は、引用しているForbesだけでなくABAjournalの記事など様々な法律系ブログにおいても、「プライバシー上悪しき先例になりやしないか?」と大きな議論を呼んでいます。

1)写真を撮る自由を認めた上で、写真をアップロードする自由をプライバシー権によって制約していく
2)写真をアップロードする自由を認めた上で、写真を撮る自由をプライバシー権によって制約していく
これまでのプライバシー権の考え方では、どちらかといえば1寄りだったと思いますが、本判決は2の立場をとったものと言えるでしょう。

私はこの判決の考え方には基本的に賛成の立場です。しかしそうなると、仲の良い友達であっても「今日の私は写真には撮らないでくれる?」と言わなければならない場面が増えて、それはそれでギクシャクした世の中になりそうな気もします。

いずれにせよ、Facebookエイジに生きる私たちに新しいプライバシーの問題がもたらされているということは、どうやら間違いがないようです。

【本】フェイスブック 若き天才の野望 ― 映画観るなら後で読め


facebookの背景にあるハーバード大の寮生活、アメリカの若者文化、ベンチャービジネスのダイナミズム、さらにはマーク・ザッカーバーグの少し気難しいキャラクターが描かれた映画『ソーシャル・ネットワーク』が、昨日から日本でも公開されました。



「映画公開と聞いて、前から耳にはしていたfacebookを使い始めてみたけど、まだ何が凄いのか分からない」
「映画を見て、マーク・ザッカーバーグが好きになった」
「映画で描かれたfacebook創世記の後日談も知りたい」

そんな方は、映画の原作である『facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男』ではなく、こちらをお読みになることをおすすめします。

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)
著者:デビッド・カークパトリック
販売元:日経BP社
(2011-01-13)
販売元:Amazon.co.jp




映画の原作本『facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男』が、ザッカーバーグと喧嘩別れしたエドゥバルド・サベリンの視点から創作・脚色された(なのでザッカーバーグはこの原作に対しては全面取材拒否しています)“人間ドラマ”なのに対し、こちらは、元フォーチュンの技術記者が、本人を含めた緻密な取材をもとにその発展の歴史を冷静に描く“ベンチャー発展の史実書”、といった感じ。

フェイスブックは順調に成功の道を歩んでいたが、ザッカーバーグはワイヤーホグにも同じくらいの情熱を注いでいた。ショーン・パーカーは
「この当時奇妙だったのは、マークがザ・フェイスブックが成功すると100パーセント信じていなかったことだな。マークはほかのこともやろうとしていた」
(略)しばらくして、さすがのザッカーバーグもワイヤーホグに関して頭を冷やして考えられるようになった。「マークもやっと現実に目が覚めた。どれほど時間を無駄にしていたか気がついたんだ。」
ザッカーバーグは、「ワーク・ネットワークス」と名付けた新しいサービスを立ち上げようとした。これはフェイスブックとして、初めて大人を対象にしたサービスとなるはずだった。ワーク・ネットワークスはフェイスブックが大学ごとに設定されたにならって、会社ごとに設定されるクローズドなネットワークだった。
しかしワーク・ネットワークスは失敗だった。スタートしたものの、ほとんどユーザーを獲得できないままに終った。

こんな映画の原作には出てこないザッカーバーグの失敗にも触れられていて、彼が単なる「ネットサービスを生み出す天才」などではないことも分かります。

そんな失敗を、その時々の参謀たちの助けを借りながら、結局はうまく乗り越えてきたザッカーバーグ。

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人間のコミュニケーションをオープンで誠実なものにすることで、善良な世界に変えたい。その思想に賛同しない出資者や広告出稿主、社内幹部にコントロールされるような経営にだけはしたくない

重大な意思決定のタイミングが訪れる度に、ザッカーバーグが頑固なほどこのポリシーを守りぬいたこと、そして素行の悪さから業界では滅法評判の悪いショーンパーカーが、どんなに増資をしてもザッカーバーグから会社のコントロール権が失われないように仕組んだ“ある仕掛け”こそがfacebook発展の礎となっているのだと、この本を読むとよく分かります。また、映画やその原作が女性との愛憎やセックスという人間(若者)の本能的な部分に焦点を当てているのと比較すると、同一ベンチャー企業の成長物語のはずが、かなり対照的に描かれていることにも気づくでしょう。

なお、映画よりもボリュームたっぷり(500ページ超)のリアルで詳細な描写になっているだけに、これから映画を観ようという方がこの本を先に読んでしまうと、映画が知ってる事だらけでつまらなくなるので、ご注意くださいね。

「Facebook上で会社の愚痴を言う自由」は奪えない


Facebookなどのオンラインのメディアで会社や上司の愚痴を言うのは、労働者の権利であり、不当な解雇がなされればNational Labor Relations Act(日本でいう労基法や労働組合法)で守られるという法的解釈を、NLRB(全米労働関係委員会)が出したというお話。

NLRB


Federal labor law may protect Facebook post criticizing employer(LEXSOLOGY)※要登録
It should come as no surprise that employees sometimes complain about work, and may even do so online. Many employers may contemplate disciplining employees for making disparaging comments or complaints in such a forum. However, the National Labor Relations Board (NLRB or the Board) recently indicated that employee complaints about work posted online may be protected activity under the National Labor Relations Act (NLRA). By so doing, the NLRB sets the stage to weigh in for the first time on the subject of employee rights with respect to social media.

American Medical Response of Connecticut, Inc.という民間の救急搬送業を営む会社につとめる従業員の1人が、会社の管理監督者への愚痴として、Facebookにこんなコメントを書き込んだのだそう。
"Love how the company allows a [psychiatric patient] to be a supervisor."
うーん、愚痴とはいえ傍目から見ても日本語に訳すのもちょっとはばかられるようなコメントですが…。
これに他の同僚2名も好意的なコメントを重ねていたのが会社の知るところになり、ついにこの従業員は解雇されてしまいました。会社側はあらかじめソーシャルメディアポリシーでもこのような行為を禁じていたためです。しかし、このようなソーシャルメディアポリシーの定め並びに解雇は、NLRAの7条で保障された労働者の権利を侵害する不当な取扱いにあたる、とNLRBが見解を示したというのが本件の顛末。

ソーシャルメディアポリシー/ガイドラインの定め方についてこのブログでも何度か述べてきましたが、従業員に対し営業秘密やハラスメントにつながる発言を禁止することはできても、会社に対する不平不満を口にするのはポリシーでも禁止できないし、それを理由に不当な扱いをすることはできないということが(解雇が原則自由なアメリカでも)これだけはっきり確認されたということは、サイバースペースにおける表現の自由という観点で言えば当たり前といえば当たり前の、しかしソーシャルメディアの脅威にさらされる会社にとっては戦々恐々な出来事ではないでしょうか。

日本においても、明文上は根拠はないものの同じような発想で労働者を保護することは不可能ではないでしょう。企業サイドの法務・人事としてソーシャルメディアポリシー/ガイドラインを決める際には、このあたりは言葉を選んで策定されたほうが良さそうです。

【本】「つながり」を突き止めろ ― Facebookに神の視点を与えているのはあなたです

 
様々な分野にネットワークを張ること。
社内だけでなく、社外へと人脈をひろげていくこと。

インターネットやSNSが全盛となり、とかく盲目的に「是」とされがちなつながりの広がり。一方で、そこに得も言われぬ抵抗を感じる人は少なくないはず。

ネットワーク・つながりには、光もあれば闇もある。その闇とはどういうものか?闇をできるだけ避けながら、光の側面を取り入れるにはどうすればよいか?日本のネットワークサイエンスの第一人者である安田雪教授が、電子メール・SNS(mixi)・新型インフルエンザの伝播を題材にした自身の研究をベースに書き下ろした本が、こちらの新書。

「つながり」を突き止めろ 入門!ネットワーク・サイエンス


人間は敵から自分を防御することには長けているが、自分の親しい人々から自分を防御するのが下手だということ。
秘密を漏らすのは自分ではなく、親しい友人や知人である。まったくの赤の他人が、生死に関わるような人生の悲劇を自分にもたらすことは稀である。

サラリーマンで言えば、自分が転職を考えていることが漏れるのが、自分が相談した信頼できる(はずの)同僚からだったりするのは、よくある話。とはいえ、人間は一人で生きて行けない以上、つながりを拒絶することはできません。これに対し、著者の安田先生は、ネットワークサイエンスの見地から、「入りを制する」ことで、つながりが持つ闇を光に変えていくことが重要だと述べます。

人とのかかわりの強さと恐ろしさの本質は、自分が出す関係ではなく、自分に入ってくる関係に潜んでいる。
自分が誰を好きかは、自分には自明だ。わからないのは、誰が自分を好きなのか、である。自分から能動的に誰かに頼り、誰かに助けてもらおうとすることはできる。能動的なアクションは起こしやすく制御しやすい。一方、自分に向けられた好意、自分へさしのべられている善意は、なかなか感知できない。自分に向けられていて自分がまだ気がついていない、他社からの潜在的な援助や愛情、避けるべき悪意や妨害も含めて、他者から自分に向けられてくる関係を、どこまで認知、制御、活用できるかが人生の豊かさを大いに左右する。


さて、この一節を読んで思い浮かべざるを得ないのが、Facebookが09年から取り入れた「いいね!」ボタン及び「ファン」という仕組みと概念についてです。

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10月以降、日本でもブームに火がついた感のあるFacebook。Twitterやmixiとの比較論でその優位性が語られることが多いですが、知り合いというネットワークを可視化するフレンド申請と承認というSNSの基本概念に加えて、「いいね!」ボタンと「ファン」の仕組み・概念を実装し、ユーザーが自分に寄せられる好意・善意を把握できるようにしたことで、加速度的にユーザー数を伸ばしています。これはまさに、本書で述べられるネットワークサイエンスを応用し、安田先生が提案する「入りを制する」手段をユーザーに提供しはじめたものにほかなりません。

そう考えると、この施策は単なる広告ビジネスとしての商業的意味合いだけではない、Facebookにとってもっと深い意味を持った施策に思えてきます。

人間の行為や嗜好、信条を決定するのは、性別や年齢、生まれついての傾向などではない。学歴や出身地でもない。それは、その人が誰と共に過ごしたか、誰に取り囲まれているか。誰に影響を受けるか、誰に影響を与えようとしているのか。すなわちその人を取り囲むネットワークなのだ。
人間を理解するためには、その人の持つ関係を理解することが重要だ。組織や社会を理解するためには、そのなかで人がつながっているのかを知る必要がある。だが関係は眼に見えないのでわからないことが多い。敢えて蓋を開けず曖昧なままにしているのが生きる知恵でもある。だからこそこれを支配し、制御するものは、人々を、組織を、社会を制御する可能性を持つ。

Facebookは、その洗練された仕組みによってユーザーに「入りを制する」力を与え、私たちは今、それを喜んで使っています。

しかしそれと引き換えに私たちは、人々を、組織を、社会を制御する可能性すら秘めた「全ユーザーのつながりと興味・関心の流れを神の視点で掌握する」力をFacebookに与えている、とも言えます。

ソーシャルネットワーク、特にその中でもFacebookが持つ恐ろしさは、単に個人のプライバシーがダダ漏れになるかもということ以上にこの点にこそあると言うのが本書を読んだ感想であり、改めて、Facebookが持つ底知れない野心のようなものを認識させられました。

【本】ライフログ活用のすすめ ― 顧客のライフログを利用する企業が配慮すべき2つのこと


Twitterが流行りだした頃多用された「ライフログ」という言葉。「〜なう(死語)」にのせて今何をしているかを発信・共有することが、後から振り返れば思考と行動の記録=ログになっていくというわけですが、日本人の用心深さも手伝ってか、Twitterで何をしているか・現在地をつぶさにつぶやく人はよっぽどのヘビーユーザーに限られていたと思います。

対してFacebookはというと、すでにお使いの皆様はお感じになっていると思いますが、まさにこのライフログがダダ漏れといった様相。
・写真
・現在地
・好きなモノ・コト
この3つが、Facebookならではの仕組み(写真タグ/FBiPhoneアプリのスポット/いいね!ボタンやファンページetc)でいとも簡単に共有できてしまい、かつそれらが(特にデフォルトのプライバシー設定のままでは)意図的な共有を超えて、本人の予測しえない範囲にまで配信されてしまうところは、Facebookが意図的にそう設計しているところでもあり、Facebookの危険なところでもあります。

しかも、これらすべての情報に“実名”という最も人を容易に特定しうる情報が掛け合わさってくるわけです。承認した友だちに見られている意識はあっても、知られたくない誰かにまで“実名”付きでライフログが漏れることに恐れを感じないユーザーはいないでしょう。

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ライフログを利用する事業者としては、このような恐れをユーザーに抱かせないことが大事。そのためには、以下2点がポイントになってくるのではないかと私は思います。

1)ライフログ収集の際、どのように情報が使われるかを誤解なく理解させた上で、実効性のあるオプトイン(承諾)をユーザーから取得すること
2)ユーザーから収集したライフログを事業者が利用する際、安全を期するため、匿名化を施すこと


この2点に関し、この本に参考となる事例や考え方が紹介されていたので、その一部をご紹介したいと思います。

ライフログ活用のすすめ―最新動向から法的リスクの考え方まで


まず1)ライフログ収集時の実効性のあるオプトインの取り方について。NTTドコモで、ライフログサービス「マイ・ライフ・アシスト」を実証実験する際に、マンガ形式で顧客向けの利用規約を作ったという事例。長々しい&難しい文章では誰も読まない→理解しない、だったらその内容を漫画にして、ユーザーにきちんと理解と納得を得た上で承諾をしてもらおうというのは、とても面白い取り組みです。

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2)の匿名化については、ライフログの匿名化や仮名化、それらを用いた行動ターゲティング広告の合法性について、花水木法律事務書の小林弁護士や牧野総合法律事務所の牧野弁護士が法的な観点から整理/検討されています。中でも私が注目しているのが、匿名化の技術です。

  • 単純匿名化
    個人情報のうち氏名や住所といったデータの一部を切り落とししたり、年齢:20代というようにあいまい化することで、個人を特定できないようにすること
  • 統合匿名化
    単純匿名化された個人情報を、さらに束ね・類型化すること

匿名化には上記2つの分類がありますが、「単純匿名化」だけでは、情報の組合せによって本人を特定しうる限り、日本の個人情報保護法の理屈上は個人情報(個人データ)となってしまい、様々な制約に服さなければならなくなります。
そこで、2番目の「統合匿名化」によって特定の個人との紐付きをなくし、個人情報の利用や第三者提供にあたって保護法の制約から開放し、かつ安全性を高めるという考え方が紹介されています。

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具体的な技術として、経済産業省の平成21年度「情報大航海プロジェクト」において、k−匿名性というアルゴリズムを応用して単純匿名化と統合匿名化を行うソフトウェア(パーソナル情報保護・解析基盤)が開発されています

同一人物のライフログと統合するためには、どうしても識別情報を残したまま事業者の外部に提供する必要がある。もちろん、統合した跡に識別情報を除去して匿名化することは可能だが、統合する前には、識別情報付のライフログが事業者の外部に提供されることになる。従って、原則として、ユーザーの事前の同意が無い限り、プライバシー権侵害にあたると考えるべきである。

小林弁護士からこのような指摘はあるものの、私はこのような技術を使って個人情報をリスクのないよう上手に匿名化し、ライフログをどのように利用するかについて分かりやすい利用規約によって理解を得ることで、ユーザーに不安を感じさせないでライフログをビジネスに用いることができないか、そう考えています。
 

Facebookプライバシーリスクをまとめてみた


なんでFacebookが急に流行り出したの?(そりゃみんな新しモノ好きだからですよ)とか、Facebookの何が特徴なの?(写真・動画・位置情報を含むアクティビティストリームがリアルタイムで共有されるライブ感じゃないですか)とか、Facebookで世の中どう変わるの?(あらゆるコミュニケーションと決済を含む経済活動がこの上で行われるようになるんでしょうね)とか、その辺りの話は私がするまでもなく皆さんの間で語りつくされている様子。

そこで、弊ブログでは趣向を変えまして、Facebookが引き起こすプライバシーリスクを、Facebook先進国で実際に発生している事件を例に挙げながらまとめてみようと思います。Facebookをはじめたばかりだけどなんか怖いという方、そしてはじめないための理由を探している方(笑)にも、参考にしていただければと思います。

1)所属する会社・学校から排除される

これは簡単に想像つきますよね。就業規則や校則に違反する行為をやっている様が、時間や場所のアリバイ付きで、場合によっては写真付きで残るわけですから、簡単に解雇・退学になりえるわけです。発生確率の上ではもっとも高いリスクでしょう。

実際、イギリスの名門Oxford Universityでは、乱痴気騒ぎを起こしていた学生がFacebookを証拠にして処罰されるという事件も。学生ならではのこんなこともできなくなるなんて、寂しいお話でもあります。

Harboring Data: Information Security, Law, and the Corporation (Stanford Law Books)

In July 2007, Oxford proctors in charge of university discipline at the ancient university used Facebook to find evidence of students breaking university disciplinary rules. Students, who, in post-exam hilarity, had held wild parties, sprayed each other with Champagne or shaving form, or thrown flour bombs at each other, often posted photos of these incidents on Facebook. Proctors combed Facebook for evidence of such incidents and caught a number of students in flagrante. As a result, some students received disciplinary emails or more vigorous sanctions.

いわんや日本のサラリーマンをや、就業時間中に遊んでいたり、いるはずのないロケーションにいることがFacebookを通じて雇用主に見つかれば、会社は「職務専念義務違反」でいとも簡単に労働者に懲罰を与えることができる点ご注意を。

当然、入社・入学前の選考の場面でも、根ほり葉ほりチェックされることになるでしょう。最近では、採用企業に代わってSNS上での発言やアップされている写真その他の行動を調べ上げ、コンプライアンス上の危険を孕む応募者でないかを調べる会社も注目を集めています。人のプライバシーをほじくり返してお金をとるなんてと、嫌悪感を覚える方も多いと思いますが。

友達には見せたくても、会社の上司や学校の先生には見せたくない・・・残念ながら、そのあなたが見せたくない相手こそが、最もそんなネタを欲している人なのですから。

2)配偶者・恋人を失う

まだ日本ではFacebook人口が少ないこともあり、配偶者や恋人同士の2人ともがFacebookを使っている事はそう多くないのかもしれません。しかし、それも時間の問題。似たようなソーシャルグラフ(人間関係)を持っているはずの二人ですから、名前で検索をかけずとも「知り合いかも?」のリストに挙がってくる日は近いでしょう。

mixiやtwitterなどと違ってやっかいなのは、実名・写真付きなので「俺じゃないよ」なんてとぼけようもなく承認せざるを得ないところ。それまでの言いたい放題やりたい放題の投稿は見られ、いわくつきの友達のリストもすべて実名・写真付きでさらされるわけです。

極端な事例かもしれませんが、実際に重婚生活がFacebookでバレた、というケースがこれ。

Don't Put Your Secret Second Marriage Photos on Facebook(GAWKER)
Lynn France was a little suspicious when her husband claimed to have gone to China, even though he left his passport at home in Cleveland the whole time. But dang, the worst part came when her relatives pointed her to the Facebook page of the blonde Florida lady where there were "dozens of wedding photos" of this other lady with Lynn's husband. And also the lady's last name was now "France." Ouch.

さらにどうにもならないのが、友人がつける「いいね!」やコメント、写真に付けられる名前タグの数々。プライバシー設定を徹底して「一部の友達のみに公開」としたアイテムでも、友人が「いいね!」をつけたり自分の名前タグをつけたりすると、公開しない相手だったはずの人にも、アイテムが見えてしまう場合があります。頑張って投稿の内容が差し支えないものになるように気を付けたとしても、悪友が自分の掲示板などに「お前あのとき○○だったよな」と不意にコメント書き込むことも。そしてそれは配偶者・恋人のストリームにも流れて・・・と、よほどやましいことをしていない自信がなければ、ヤバいことになるのは時間の問題ですね。

裏表のない人生なんて面白くない、家族や恋人には見られたくない一面もある、という方には絶対向かないサービスです。Facebookは。

3)金融機関等のサービスが利用できなくなる

友人とつながるために公開したつもりの情報が、知らぬ間に商用利用されるというリスクも。金融機関など信用をビジネスにする会社からみれば、Facebookにはもっとも有り難い情報が詰まっているわけですから、当然の展開なのかもしれません。

昨年このブログでご紹介しましたが、これもカナダで起こった実話。
マニュライフ保険会社に加入していた方が、精神疾患での休職を理由とした保険金支払いを請求したら、Facebookにアップした楽しそうにバーで飲んだりパーティに参加している写真が原因で、保険会社に支払いを拒絶されたという話です。

Insurer Questions Woman's Depression Claim After Spotting Her Party Pics on Facebook(Law.com)
A Canadian woman on sick leave for depression said Monday she would fight an insurance company's decision to cut her benefits after her agent found photos on Facebook of her vacationing, at a bar and at a party.

保険の加入時健康チェックや金融機関のローン査定がSNSにも及ぶのは、時間の問題なのではないかと思います。「最近体の調子が悪い」とか、「仕事で干されてリストラ寸前」なんてつぶやきをTwitterでも見ることがありますが、そういう書き込みをしたがために保険に入れなくなったり、借金ができなくなるなんて、困った時代になりそうです。

4)犯罪に巻き込まれる

ロケーションをストリームに流したことで家にいない間を狙った空き巣に入られたり、ストーキングされたり、ひどいケースでは無差別殺人に巻き込まれたり・・・。悲しいけれど、Facebookが引き起こしている現実のリスクです。

そこまでいかなくても、詐欺に巻き込まれるリスクは相当高まっています。昨年はこんな詐欺が流行りました。

フェースブックに潜む危険な罠(Newsweeek)
詐欺はどのように行われるのか。例えばサンフランシスコにあるジンガ社が開発したファームビルに登録したとする。

毎月6300万人がプレーするこのゲームでユーザーは、オンライン上の畑に種をまいて作物を収穫する。種や土地などを購入するのに必要なポイントは実際にジンガ社に送金して買うことができるし、サイト上に掲載される広告をクリックし、リンク先企業の調査に協力してポイントを稼ぐこともできる。

試しにその1つ、「IQクイズ」を受けてみよう。結果を受け取るには、携帯電話の番号を打ち込まなければならない。打ち込むと携帯電話に識別番号が送られてくる。ユーザーはそれをサイトに入力するが、実は「番号を打ち込むと月額9・99ドルの星占いサービスに加入します」と細かい文字で書かれている。翌月の携帯電話の請求書を見て、初めてだまされたと気付く──。

こういった犯罪には、Facebookをやっていなくても巻き込まれるのかもしれませんが、Facebookが当たり前のように公開させるライフログが犯罪を発生しやすくさせるという点は、否定しようもありません。

5)疲れる

日常の自分をありのままに曝け出せるならば、Facebookはあなたと友人とのリレーションシップを強化する武器となるでしょう。しかし、そうでないならば、情報の共有に気を使い、友人が発信する情報をコントロールし、取りつくろうことに追われて、新たな疲れを生む原因となるものだと思います。

Facebookは実名を求め(実名でないアカウントは規約違反で削除される)、他人が自分のストリームに書き込むことすらできるまでの開放性をも求めてきます。それらにすべて対処・反応しようとすると、耐えられないほどの時間を消費することになるでしょう。リアルでは時に偽名でも行動は可能であり、家に閉じこもっていることもできるのに対して、Facebookは参加する以上はそれが許されない世界であるという点は、大きな違いです。

便利さ・楽しさ・新しい体験と引き換えにFacebookがあなたに要求するプライバシーの開放は、人によっては大きなストレス源にもなりうるということを分かって利用する必要がありそうです。


以上述べたリスクのすべてを防ぐことは困難ですが、いくつかはプライバシー設定によって防ぐことができます。プライバシー設定を高めれば高めるほど、Facebookをやる意味が薄れる効果もあり一長一短なのですが、心配な方はこちらを参考になさってください。

Facebookをミニマリスト化して、プライバシー対策を万全にする方法(lifehacker)
Facebookをやる上で知っとくべき7個のプライバシー設定方法(lastday.jp)
▼『Facebookポケットガイド』P52ー68


【本】Understanding Privacy ― 日本のプライバシーに開国を迫るFacebookという名の黒船


ワシントン大学で教鞭をとるダニエル・J・ソロブ。IT時代のプライバシー論をリードする学者の一人です。

そのソロブの直近の著作がこれ。


Understanding Privacy
Daniel J. Solove
Harvard University Press
2008-05-30



I contend that the value of privacy must be determined on the basis of its importance to society, not in terms of individual rights. Moreover, privacy does not have a universal value that is the same across all contexts.

伝統的なプライバシー論をバッサリと否定。「プライバシーは知られたくないことを他人に知られないための“人権”だ」「だから個人は自分の情報をコントロールする“権利”をもっているんだ」と思っている日本の法律家は、世界ではそのような考え方がはっきりと否定されはじめていることを、まずは知っておく必要があるでしょう。
 
では、プライバシーを支える次の法理論とは何か?アメリカのプライバシー裁判例・法理論で主流となっているのは、“reasonable expectations of privacy doctrine(合理的な期待権論)"と呼ばれる、その環境において一般人が合理的な範囲で期待できる限度において保護されるという考え方。しかしソロブはこれにも致命的な欠陥があると指摘します。

Without a normative component to establish what society should recognize as private, the reasonable-expectations approach provides only a status report on existing privacy norms rather than guides us toward shaping privacy law and policy in the future. Indeed, if the government has a long-standing practice of infringing upon privacy, then a logical conclusion would be that people should reasonably expect that their privacy will be invaded in these ways. Similarly, the government could gradually condition people to accept wiretapping or other privacy incursions, thus altering society's expectations of privacy.

乱暴に解説すれば、「合理的な期待」などというものは、水があたためられてだんだんと熱くなり、気づかないまま沸騰して死んでしまうゆでガエルと同じである、ということでしょうか。
ではどうすべきか。ソロブは、プライバシー権そのものを言葉で定義するのではなく、「プライバシーを脅かす行動には何があるか」を分類して捉えることで、時代によって変化するプライバシー観を捉えていくことを提唱しています。詳しくは本書にて。


私が今この本を推薦するのは、Facebookの波がついに日本にも押し寄せてきたから。使い古された例えですが、これは黒船だと思います。「プライバシーという日本人にとっての永遠のタブー」に開国を迫る黒船です。

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実際、昨日のエントリに頂いたコメントでも、「採用選考活動にFacebookが使われるなんて、生活ぶりや能力の裏取りをされているようで気持ちが悪い」という主旨のご意見をご紹介いただきました。また9月27日〜28日のNewYork TimesやWashinton Postでは、アメリカ政府がFacebookでの通信の内容をwire tapping(傍受)すべく検討しているという報道がありましたが、これ対する日本での報道やはてブでの反応を見ていても、そのタブー意識は強いのだなと思います。

U.S. Tries to Make It Easier to Wiretap the Internet(NewYork Times)
Essentially, officials want Congress to require all services that enable communications ? including encrypted e-mail transmitters like BlackBerry, social networking Web sites like Facebook and software that allows direct “peer to peer” messaging like Skype ? to be technically capable of complying if served with a wiretap order. The mandate would include being able to intercept and unscramble encrypted messages.

さあ、私たち日本人は、本格的な実名主義・プライバシー開放を求める黒船Facebookの圧力に、攘夷で望むのか、開国で応えるのか。法務パーソンとして、坂本龍馬の如く時代の潮目を掴むため、そしてすぐそこに迫ってきたプライバシー論争にそなえるためにも、予習をしておくことをおすすめします。
 

【本】Facebookポケットガイド ― Facebookが日本でもまもなく爆発するその理由


2010年10月1日。日本版Facebookにこの「コネクションサーチ」が実装されたことによって、日本におけるSNSの潮目は変わりました。
私たち日本人も、もういいかげんFacebookを始めた方がいいと思います。

米フェースブックとリクルート、就活サイトで交流機能 (日経新聞)
世界最大の交流サイト(SNS)、米フェースブックはリクルートの就職情報サイト「リクナビ2012」と連携し、大学生の就職活動を支援するサービスを始める。利用者が、大学や志望業界が同じ学生やOBを会員から検索して情報交換しやすいようにする。

アメリカでは大学生の社交ツールとして優秀な学生を取り込み、その学生が社会に出ていくことでネットワークが拡大し、結果的にSNS界を制したFacebook。そのFacebookがリクナビと連携することで、これからの日本を支える社会人予備軍である学生と、その学生達を最も深く知りたいと思っている企業(の採用担当)が流れ出てくる“蛇口”を抑えたわけです。

複数のSNSを使い分けるようなヘビーネットユーザーは限られていますが、採用においてリクナビをまったく使わない学生はいませんし、このソーシャルウェブ時代において採用活動にSNSを活用しない企業もありません。こうして今年以降、学生と採用企業の人事担当者のほぼ全員がFacebookに登録することになった今、この “蛇口”から他のSNSに注がれる水量は、かなり細くなってしまうのかもしれません。一方で日本におけるFacebook人口は、2〜3年もしないうちに爆発するはずです。

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しかし、Facebookは Twitterと違い、シンプルなデザインに反して複雑な機能をいくつも持ったSNSです。決して敷居は低くありません。登録して初めて Facebookの画面を見たほとんどの方が、この画面の中で何ができるのか・何がすごいのかが分からず面食らうはず。

こんな風になったのは、 Facebookがだんだんとユーザーの声を反映させて機能を拡張してきた(昔から使っている人にとっては、新しい機能が1個1個加わっていただけなのでさほど混乱はない)という背景もあるのですが、仮にそのひとつひとつの機能を解説本を片手に覚えたとしても、使いこなせるようになる気はまったくしないでしょう。なぜなのでしょうか?

それは、Facebookがもつ思想と文化をわかってはじめて、豊富な機能を生かせるようにできているからです。

これまで出版されているFacebookの解説本には、その思想と文化をうまく解説してくれるものがありませんでした。そんな中、ようやく、その思想・文化と使い方をセットで解説してくれる本が出版されました。

Facebookポケットガイド


著者は、カリフォルニア大学バークレー校で経済学の博士課程に在籍する日本人留学生であり、ブログ『経済学101』のオーナー、青木理音さん。

私は青木さんのブログの愛読者でしたが、その青木さんがFacebookの解説本を書いたと聞いたときは、意外な人選だなと驚きました。しかしすぐに、この本を企画した編集者の慧眼はすごいと思いました。というのも、私自身Facebookの真のすごさを意識的に理解できたのが、青木さんが5/20にアップされたこのエントリだったから。
案の定、この本を企画した編集者の方は、このエントリを見たなんとわずか3日後に執筆の依頼を青木さんにかけたそうです(早)。ちなみにちょうどそのころ、私はと言えば同じエントリを見て自分も何かできないかと、当時は英文しかなかったFacebook利用規約を全文日本語化するというアホなことをやってたんですが(笑)。

話はそれましたが、その一番大事なFacebookに流れる思想と文化とは何なのか?そのことが分かり易く語られている一節を引用させていただきます。
写真をオンラインにアップロードしてシェアするためのサービスなら、FlickrでもPicasaでもいいはずです。(略)しかし、写真の共有においてもFacebookは世界最大の規模を持つに至っています。一体、何故、人々は写真をFacebookで共有したがるのでしょう。
その答えはよく大学生の部屋に貼ってある写真やポスターにあります。本書でも何度か紹介しているように、Facebookはもともと学生寮で生まれました。誰もが同じ無個性な場所で生活するなかで、部屋を飾り付けることは重要な自己主張の手段となります。(略)
Facebookには、常にどうやって自分を他者に見せるかというマーケティングの側面があります。そこを見逃すと、Facebookの膨大な数の機能が何のためにあるのか分からなくなってしまいます。

そう、アメリカの大学生が生んだFacebookには、機能の一つ一つにアメリカの大学文化やその寮生活を起点とした思想と文化が刷り込まれており、それを理解しているかいないかがポイントなのです。ITの専門家では決して無い青木さんが著者として起用されたのは、今現在留学しながらそれを一番リアルタイムに体得している日本人だからなのでしょう。

もちろん、難しいことぬきにステップバイステップで使い方が分かるよう、スクリーンショットも豊富に掲載されています。単純に機能を知りたい方にとっても満足できる本になってますのでご安心を。

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さて、冒頭ご紹介したコネクションサーチの機能は、この本が発売された直後に発表された機能ということもあり、この本の中には紹介されていません。そして今後も、この本に紹介されていない機能は次々に追加されていくことでしょう。

しかし、恐れることはありません。Facebookの思想と文化さえ体得していれば、どんな機能が追加されようとも、必ずや便利に使いこなせる機能のはずなのですから。
 

ドイツでは採用選考でFacebookを使ったバックグラウンドチェックをすると違法になります

 
ドイツでは、採用選考において候補者の個人情報をFacebookなどのSNSで検索することが法律で禁止される、という話。

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German law bans Facebook research for hiring decisions(OUT-LAW.COM)
The law clarifies the questions that can be asked during a job application process. It is acceptable for an employer to request an applicant's name, address, telephone number and email address, according to the law; but certain internet searches are forbidden.
It specifies that social networks that are used for electronic communication may not be used for research, except for social networks that exist to represent the professional qualifications of their members.

個人情報は本人から提出させるのが原則であって、ネットで応募者を検索するのはものによって禁止される場合があると。特に、(Linkedinのようなプロフェッショナルネットワーキング目的のSNSではない)普段のコミュニケーションのために使われるFacebookのようなSNSをリサーチに使うことはまかりならん、とはっきり特定されています。さらにAP通信によれば、違反による罰金はなんと最大30万ユーロ(3,000万円超)にも。プライバシー保護には厳しいEUならではの発想です。

もちろん、応募者にとって採用選考でFacebookを見られるのは望ましいことではないでしょうが、私はFacebookの利便性を享受する以上、見られてしまうのはある程度は仕方のないものと考えはじめていましたし、それって業界の人脈を通じて「あの人ってどうなの?」と評判をチェックされるのと紙一重なんじゃないかと。実際、SNS先進国のアメリカではFacebookを採用に使う企業はごまんと存在し、採用企業の29%超が Facebookでバックグラウンドチェックしているという調査結果もあることは、以前も弊ブログでご紹介したとおり。

この法案が可決されれば、ドイツ国内にとどまらず、世界で採用選考におけるインターネット上のプライバシーの問題がしばらくホットな話題になることは間違いありません。
 

2010/8/29追記:

プライバシー侵害には厳しいスタンスのEUの中でも、特にドイツがこんなにも厳しいのはなぜか?丁度今発売されているニューズウィークにこんな記事があったので、引用しておきます。

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2010年 9/1号 [雑誌]


グーグルが甦らせる「悪夢」 ナチスの記憶を呼び起こす「ストリートビュー」の年内開始に広がる波紋(Newsweek日本版)
自分たちの一挙手一投足を、この建物のどこかで誰かが1つ残らずメモしている――。ドイツのマンションの住民がそんな不安に怯えていたのは、それほど大昔のことではない。
ドイツ人はもともとプライバシーを重視する。ナチス時代(およびベルリンの壁が崩壊する前の東ドイツ時代)、常に監視されていた結果、それまでになくプライバシーの問題に敏感になった。

確かに、近代日本は集会・結社の自由が部分的に奪われた時期はあったにせよ、国民全員がプライバシー監視に脅かされた経験まではありません。

プライバシーに対する意識の違いは、こんな歴史的な背景からも生まれるのでしょう。
 

自社を狙って来る優秀な人、自社を知らない通りすがりの優秀な人、両者を採用するのに最も有効な採用手段は?

 
答え:Facebookを使って求人すること。

Facebookのファンページで求人広告を可能にするWork For Us(
ソーシャルリクルーティング入門)

ブランディングのため、マーケティングのため、プロモーションのためにFacebookにファンページを設けることは、もはやホームページを設置するのと同じくらい当たり前になりつつある。

だとすれば、求人情報も載せられないか?かつてホームページにこぞって載せたように。

そんな機能を実現するのが、Facebook用アプリWork For Usである。このアプリを導入すると自社のファンページに新たに「Work For Us」というタブができ、そこに求人情報を掲載することができる。もちろん単なるウェブ上の求人情報とは訳が違う。

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ひとつひとつの求人情報には「Like(いいね!)」ボタンがついており、気に入った求人情報はソーシャルに拡がっていく。更に、個別に条件を設定して広告として出稿することも可能だ。


職業柄、私が手帳に挟んでたまに頭の整理に眺めている「採用手段ツリー図」が以下。

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この図のように、つまるところ企業の採用手段というものは、
・自社に興味がある人を募る「公募」か
・誰かに能動的に自社へ誘ってもらう「紹介」か
の2つに集約されます。

先に紹介したサービス(アプリ)のすごいところは、Facebookの自社ファンページへの貼り出しという「公募」の要素に加えて、Likeボタンを使ったソーシャルなクチコミという「紹介」の要素が見事に融合されている点です。このサービス(アプリ)の派生型・発展形は今後もいくつか産まれてくると思いますが、今のところはこれが先駆けと言えそう。

こういったソーシャルリクルーティングの仕掛けとして、Twitterを使ったリクルーティングもあるにはありますが、やはりTwitterでの求人はフローに過ぎるので成立しにくくなりますね(成立しないわけではなく、その場で盛り上がって採用成立!っていうノリも時には大切だとは思いますが)。その点、Facebookのファンページを使った求人は、企業HP的ストック感に適度なフロー感も加わるわけで、企業の採用手段としてなんか最強な組合せの予感がします。

今人材サービスに携わっている者として、この様なFacebookを使った採用手段に対して差別化できるところがあるとすれば、求人企業やその求人への適合度(入社後の活躍可能性)に対する「プロの目利き」しかなさそうです。

さてそう考えると、今ある紹介会社の中で、「プロの目利き」を自負できる紹介会社が、果たしてどれだけあるのでしょうか。 
 

【本】Harboring Data ― SNSにおけるプライバシー問題の解決は、「合理的な期待」をどう形成するかにかかっている

 
「プライバシーは自分がコントロールできるもの」「自分が知られたくないことは他人から守られる権利がある」という様な行き過ぎたプライバシー偏重の風潮に対し、状況や環境によっては、その期待が制約される場合があるのではないか?特に、自分が他人に情報を差し出した場合は、もはや自分のコントロール下には無いのではないか?ということは、過去このブログでも述べてきました。しかし、FacebookをはじめとするSNSの世界を見ていると、まだこのプライバシーに関するゴタゴタは収まりそうもありません。

そんな中、FacebookやmixiなどのSNSにおけるデータプライバシーの問題について、法律論として具体的に言及している本はないかと探し続け、ようやく辿り着いたのがこの1冊の本。

Harboring Data: Information Security, Law, and the Corporation (Stanford Law Books)


この本の第10章では、宗教・政治的信条といったセンシティブ情報まで登録を促すFacebookと、それを抵抗なくオープンに登録するユーザーとの間で実際に発生した3つのトラブルをケーススタディとして取り上げながら、SNSを提供する企業として負うプライバシー保護の義務と、ユーザーが主張できるプライバシー権の制約について検討しています。
  • オックスフォード大の学生が、デフォルトのプライバシー設定の緩さによって学校サイドに漏れ伝わった行為によって、風紀違反を問われたトラブル
  • “Compare Me”という友人を評価・ランキングするアプリケーションで、誰が誰にどんな投票をしたかという情報が漏れ伝わったトラブル
  • Facebookビーコンを使った行動ターゲティング広告が、Facebook自身が定めた利用規約に違反していると問題になったトラブル

その中でキーワードとなっているのが、“reasonable expectation”すなわち「合理的な期待」という言葉。

私はこの“reasonable expectation”というキーワードに触れてから、プライバシー権とは、それを主張する者に常に一定の権利を認めるものでも、相手のプライバシーを知りえた者に一方的な守秘義務を課すものでもなく、その両当事者の関係によって形作られる「期待権」に過ぎないのではないかと、そしてその期待権の中身・重さは、そのプライバシー情報を共有する場が持つ「空気」「ノリ」のようなものに大きく左右されるのではないかと、考えるようになりました。

(少なくとも、CEOのザッカーバーグ自身が“The Age of Privacy is Over”と考えているようなFacebookで友達と共有するプライバシーというものは、誰もいない場所で面と向かって2人きりで共有するのとは当然にその期待権の中身・重さが違って然るべきでしょう。)

こう捉えると、SNS事業者の側としては、その場が既に持つ・またはこれから目指そうとする「空気」「ノリ」を、ユーザーにいかに正確に理解させるかということが課題になっていくのではないでしょうか。

Facebookに限らず、プライバシーの問題をオプトインを義務化することで解決しようという傾向はさらに強まっていますが、複雑な利用規約を読ませて無理矢理オプトインを取っていっても、「空気」や「ノリ」というようなものは伝わるとは思えず、ユーザーの浅い理解や誤解を生む可能性は避けられません。ここをどう解決していくかに、SNSをはじめとするインターネットサービスの将来的な課題があるように思います。
 

facebookにはあってTwitterにはないもの、それは「セックス」と「デザイン」だ

 
ハーバード大在学中にfacebookを作り出したプログラマーであり、4億人のユーザーを抱える巨大サービスになった今も、若冠26歳にしてCEOを務めるマーク・ザッカーバーグ。

その共同創始者である大学の友人の視点を通して、物語風にfacebook誕生の裏話を語るのがこの本。

facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男


私がこの本を読んだのは、今やGoogleへのアクセス数をも超え、web世界に流れるプライバシー情報を牛耳ろうとしているfacebookという会社が持つDNAを感じ取りたかったから。

そして分かったことは、facebookを作り上げているマーク・ザッカーバーグは、良くも悪くも高邁な思想などなしに、
・一人ぼっちは寂しい
・だから私を知って欲しい(ただし知らせたい人だけに)
・他人のことも知りたい
という人間の“本能”に忠実な世界を、web上に“クール”に作り出すこと、ただそれだけを目指しているのだろうということでした。

本能をさらけ出せ

その“本能”への忠実さの現れが、facebookに登録する際にまず入力を求められるプロフィール欄のこんな選択肢に。

s-fbprof1
s-fbprof2

私が最初登録する際にこの欄を見たとき、「え、何が聞きたいわけ?」と戸惑いを覚えたのを思い出します。つまりこれはこういうことだったわけで。
オンラインであっても、リアルであっても、大学内の「ソーシャルネットワーク」を動かす最大の要因が「セックス」である点は同じだろう。ハーバードは世界でも最も閉鎖的で、あまり「社交的」ではない学校だと思われるが、セックスへの関心が高い点では他と何も変わりはない。「やれるかやれないか」が学生にとってとても重要なのだ。(中略)受ける授業を選ぶときにも、ダイニングホールで座る席を決めるときにも、みな、それを考える。ザ・フェイスブックにしても、突き詰めれば、それが出発点ということになるだろう。根本はやはりセックスなのだ。

Simple is cool

そしてもう1点の“クール”の追求が、サイトデザインへのこだわり。
s-fbdesign

facebookにおいては、驚くべきことに背景画像やメニューバーのカラーを選ぶ自由すらありませんが、その理由はこういうこと。
エドゥバルドは、画面上部のダークブルーの帯と、やや色が明るくなった登録、ログインのボタンをじっと見た。まさに狙い通り「シンプルですっきりした」画面になっている。光が点滅したり、ベルの音が鳴ったりして、苛立たしい思いをすることもない。この画面は、サイトを使う利用者にどんな未来が待ち受けているかを象徴しているとも言える。いきなり特別派手なことが起きるわけではないし、圧倒されてしまうような体験や恐ろしい体験をすることもない。あくまで、「シンプルですっきり」したサイトなんだよ、と暗に知らせているのだ。

本能のfacebook、理性のTwitter

そして、この「セックス」「デザイン」という要素は、
・プロフィール入力は最小限
・すべての発言がオープン(ダイレクトメッセージを除き)
・テキストベースで写真・動画なし、しかも140字
・背景画像も自由、好きなクライアントで利用することもできる
というTwitterでは、全く前提とされていません。

だからこそ、Twitterでは理性的な社交の場が保たれ、参加する際に本能に障るような気持ち悪さ・精神的障壁の高さを感じさせないのでしょう

そう考えると、“本能のSNSとしてのfacebook”と、“理性のSNSとしてのTwitter”は、これからもうまく共存していくような気がします。
 

facebookの利用規約を全文まるごと日本語化してみた

 
ブログ『経済学101』の管理人@rionaokiさんが、facebookの基本的な使い方を分り易く解説されていたことに影響を受け、何か私の力でfacebookがよく分からなくて困っている皆さんのお役に立てることがないかと、facebook利用規約をなるべく分り易い日本語で全訳してみました。その成果をGoogle Docsで公開します。

・・・それって役に立つの?というツッコミ絶賛受付中。

facebook利用規約日本語化プロジェクト
s-Facebook_Statement


「facebookやりたいけど色々怖そう」なんて思ってる方に貢献するプロボノ活動のつもり半分、グローバル企業の利用規約という研究対象としての興味半分、でやってみました。Twitterの利用規約の日本語版は結構前から公式で存在していて、これがなかなかクオリティが高い一方で、facebookのはいつまでたっても日本語化される気配がなかった、というのも理由の一つ。

やってみたら色々な発見があって面白かったのですが、そのうち上位3つだけご紹介しておきます。

1)謎の契約当事者“フェイスブックアイルランドリミテッド”

セクション17 “Definition(定義)”に、こんな規定が。
By "us," "we" and "our" we mean Facebook, Inc., or if you are outside of the United States, Facebook Ireland Limited.
「us」「we」そして「our」はフェイスブック・インクを意味し、あなたが合衆国外にいる場合は、フェイスブックアイルランドリミテッドを意味します。

あなたが契約を結ぶ相手方は、日本でフェイスブックと紛争が発生したら、フェイスブックアイルランドリミテッドさんを相手に訴訟をすることになると。なぜわざわざ米国とそれ以外の場合の契約当事者を違う会社にしているのでしょうか?

社内弁護士含めいまや一流の法務パーソンが集まっているfacebookのことですから、戦略法務的観点から仕込んでるんでしょうけど、未だにその意図が読みきれてません。グローバル企業ならではの“知恵”が詰まってそうな規定です。

2)facebookを利用できない人がいる

その次に興味を引いたのはセクション4 “Registration and Account Security(登録とアカウントセキュリティ)”のこれですかね。
You will not use Facebook if you are under 13.
13歳未満の方はフェイスブックをご利用いただけません。
You will not use Facebook if you are a convicted sex offender.
性犯罪の前科が有る方はフェイスブックをご利用いただけません。

結構デジタルに、バッサリと使わせないものですね。13歳未満が使えないのはへーそうなんだーですし、アメリカの性犯罪前科者は住所は晒されるわfacebookは使えないわで、もはや人権など認められてない模様。

3)損害賠償責任の上限額が容赦なく低い

3点目はセクション15 “Disputes(紛争解決)”の中段にあるこちら。
OUR AGGREGATE LIABILITY ARISING OUT OF THIS STATEMENT OR FACEBOOK WILL NOT EXCEED THE GREATER OF ONE HUNDRED DOLLARS ($100) OR THE AMOUNT YOU HAVE PAID US IN THE PAST TWELVE MONTHS.
本規約またはフェイスブックによって発生した損害の総填補限度額は、100USドルまたは過去12ヶ月においてあなたがフェイスブックに支払った金額の総額いずれか高い方を超えることはないものとします。

「損害賠償するにしても、日本円にして約9,000円(2010/5/24現在)上限が原則」って、こういうワールドワイドの利用規約で金額まで露骨に言及するのは珍しいかも。ちなみに日本では消費者契約法によりこのような金額上限設定は無効化されますが、この後に続く条文できっちりとその辺の有効性もカバーしてるあたりがさすが。


以上、この3点だけみても、なかなかユニークな規約であることがおわかりいただけるのではないでしょうか。実はこれ以外にも契約に心得の有る方/BtoC事業に携わられていて利用規約を作っている方なんかが読んで頂くと、色々発見があったり、ちょっとしたミスがあって「おお世界の一流企業といえどもやっぱミスはあるのか」なんてホッとしたりした点もあるのですが、マニアックすぎるので今日はここまでに。

途中で集中力切れてるところもあり、拙い訳や誤訳あればご指摘ください。皆さんの力でfacebookの日本語版の公式訳として採用してもらえるクオリティにできたら素敵ですね。

プライバシーポリシーの日本語版も近いうちにリリースします。・・・誰にも頼まれてませんけど。
 

プライバシー・デフォルトの明日はどっちだ?

 
最近Facebookに押され気味のMyspaceが、記事投稿時のプライバシー設定について、「友達のみ公開」をデフォルトにしたというニュースについて。

MySpace Positions Itself as Facebook Alternative with New Privacy Settings(Mashable)
Today MySpace is taking its own jab at Facebook by announcing that the social networking site will soon make the default setting for updates “friends only.”
In a blog post on MySpace, Co-President Mike Jones doesn’t specifically call out Facebook, but writes that, “We respect our users’ desires to balance sharing and privacy, and never push our users to an uncomfortable privacy position.”

興味深いのは、引用部後半のMyspace共同経営者の発言。
私たちは、ユーザーの皆さんの“共有”と“プライバシー”のバランスに配慮した。ユーザーの皆さんに不快なまでのプライバシー公開を強いるようなことはしない
明らかに、プライベート公開型SNSというスタンスを明らかにし始めたFacebookを想定した発言であり、アンチテーゼです。「不快」とまで言い切ったところに、今回のMyspaceの戦略決定への覚悟が見え隠れします。

Facebookが「共有による新しいつながり・意外な出会いにこそソーシャルネットワークの価値がある」とユーザーにプライバシーの公開を迫るのに対し、Myspaceは「ソーシャルネットワークの在り方は、ユーザーがつながり方のコントロール権を保持し続けるものだ」というスタンス。どちらが正しいというものでもないとは思いますし、所詮デフォルトだから自分で設定変えればいいじゃん、という気もしますが、
・Facebook=プライバシーをある程度放棄することを前提とするSNS
・Myspace=プライバシーをコントロールすることを前提とするSNS
というプライバシー・デフォルトの思想の違いは、今後の両サービスの設計・開発思想の髄所に大きな影響を与え、違いを生んで行くことでしょう。

私は、どちらかといえばFacebook型を志向しているのですが、果たして多くのユーザーはどちらを選択するのか?それとも、単に使い分けが進んでいくだけなのか?

はからずも、SNSが最大手2社が、まるでライトサイドとダークサイドのような正反対のポジションをとってくれたことは、SNSとプライバシーの在り方を整理しようと思っていた私にとって、大変興味深い研究対象になりそうです。
 

Facebookが投げ掛ける本能への問い ― 人は“Like”ボタンを押すのだろうか

 
Facebookが、“Like”ボタンをはじめとするシンプルで強力なソーシャルプラグインと、その情報を他のサイトも利用できるようにするAPI等を発表し、webを新たなステージに引き上げようとしています。

facebook_opengarph

Zuckerberg曰く: “Web全体が最初からすみずみまでソーシャルである状態を作りたい”(TechCrunch)
Facebookはユーザのリアルタイムストリームから拾った情報を、Webに焼き込む。“ストリームは短命だ”とZuckerbergは言う。“数時間後にはどこかへ消えてしまう。今のWebサービスは、そのユーザと特定のレストランとの意味あるつながりを把握しない”。これから、Facebookにはそれができる。Webはこれまでのような、単なるハイパーリンクの集まりではなく(Googleのような検索エンジンはこのことに依拠しているが)、ソーシャルコネクションの集まり、好きや嫌いの集まり、符号化され機械可読となったインタレストの集まりになってほしい、とFacebookは考える。

相互理解を求める本能が勝つか、防衛本能が勝つか

自分の趣味嗜好の変遷がFacebookを通じて符号化され、保存され、自分の生きざま=コンテクストとして可視化されるということに対しては、当然ながらプライバシーの観点から懸念も出始めています。

しかし、この試みはそんな抵抗をも飲み込んで(まだFacebookが普及していない日本においても)浸透していくのではないかと思っています。人は本能的にコミュニケーションによる相互理解を求める生き物であり、その本能的な欲望の実現を加速こそすれ邪魔するものではないからです。

その一方で、Facebookが持つ特有の実名性が、本当に好きなモノ・事はLikeしない/できないという“Likeの取り繕い”現象を生むような気もします。そうなると、可視化されたコンテクストが信用できないものになったりする問題も発生しそう(それはまるで、企業との採用面接の場面で自分の履歴の良いところだけを伝え、都合の悪いことを隠し、詐称する求職者のように)。

家族、限られた友人、勤務先など、限られた関係性の中だけで交換されていたコンテクスト情報を、オープンに・便利に交換できるようするテクノロジーとプラットフォームの誕生を、人は相互理解の質の向上を求めて受け入れるのか、それとも拒絶するのか

Facebookが切り拓いていくwebの未来を見据えながら、私自身もこの1年はストリームやコンテクストという新しい個人情報(プライバシー情報)のオープン化に対するビジネスと法のあり方について研究を深め、社会に向けて発信していきたいと思います。

保険会社がSNSでライフログチェックして保険金を支払わない事例が出たという恐ろしい話

 
Law.comで恐ろしい話を目にしました。

Insurer Questions Woman's Depression Claim After Spotting Her Party Pics on Facebook(Law.com)
A Canadian woman on sick leave for depression said Monday she would fight an insurance company's decision to cut her benefits after her agent found photos on Facebook of her vacationing, at a bar and at a party.

楽しそうにバーで飲んだりパーティに参加している写真をFacebookに載せていたがために、精神疾患での休職を理由とした保険金がおりなくなったというカナダでの実話。

以前、企業の採用選考の場面でリファレンス/バックグランドチェックにSNSが使われているというお話をしましたが、SNSを使った“ライフログチェック”がついに保険会社の支払査定にまで及びだしたという、恐ろしい話。

今回のケースの保険会社はマニュライフさんということで、日本にも加入者はいらっしゃると思いますが、mixiやtwitter含め、ライフログを残されている方はくれぐれもお気をつけて…。

そのうち、保険掛けるときの告知義務に、
あなたの加入するSNSとそのアカウントを漏れなくご申告下さい。過去ログを確認させていただきます。
なんて文言が入ったりしてw。いや、笑い事ではないかも。

Facebook流 契約約款・利用規約を円満かつ有効に変更する方法

 
今まで、契約約款や利用規約の類を変更する際に、こんな民主主義的手続きを踏む私企業があったでしょうか。

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Facebookは、プライバシーポリシーを変更するにあたり、ユーザーのメッセージボックスに上記通知を送り、11/5締切でこの改訂案に対する意見公募を実施しているのです。

これは法務パーソンから見るとびっくりするほど民主主義的なやり方。
これまでの法務の常識に従えば、「変更しときましたんで、1ヶ月経ったら自動的に変更後の規定を有効にさせてもらいますからねー」って乱暴にやってしまうところなので。

さすがに、ユーザーから寄せられたすべての意見を反映するわけではないでしょうけれど、変更にあたってこのような周到な手続きを踏んでおけば一方的変更とは言いがたく、ユーザーと「変更は無効だ」とかいう争いになることはほぼないでしょうし、あったとしても、余程のことが無い限り裁判所も「変更は有効」と認めざるを得ないのでは。

おそらく、今年2月頃にポリシーを変更しようとして物議を醸した件を踏まえての慎重な対応なのでしょう。
Facebookの利用規約変更騒ぎ―情報サービス利用者と個人情報取扱事業者の情報コントロール権について改めて考えてみた(企業法務マンサバイバル)

それにしても、あの時のZuckerbergの対応にせよ今回の変更手続きにせよ、Facebookの法務的センスは、同じ個人情報を取り扱う事業に携わる者として大変勉強になります。

Facebookの利用規約変更騒ぎ―情報サービス利用者と個人情報取扱事業者の情報コントロール権について改めて考えてみた

 
Facebookが利用規約を変更したことが、ちょっとした騒ぎを呼んでいます。
Facebook reverts to old terms, promises to craft new TOS with user input(The Industry Standard)

日本でも以前、mixiで同じような利用規約変更騒ぎがありましたね。
mixi利用規約第18条問題と、附合契約の変更同意みなし規定の合理性(企業法務マンサバイバル)

今回の騒ぎについて、日本のマスメディアもネットメディアも「日本のSNSが犯した過ちをアメリカのSNSが繰り返し、同じように謝ってるよwww」といった軽い感じの論調になっているわけなんですが・・・Facebookの対応は批判に屈し謝罪しておしまいというような、そんな低レベルな対応にはなってないないようで。


発信者の情報コントロール権の限界

On Facebook, People Own and Control Their Information (The Facebook Blog)
When a person shares something like a message with a friend, two copies of that information are created―one in the person's sent messages box and the other in their friend's inbox. Even if the person deactivates their account, their friend still has a copy of that message. We think this is the right way for Facebook to work, and it is consistent with how other services like email work. One of the reasons we updated our terms was to make this more clear.

In reality, we wouldn't share your information in a way you wouldn't want. The trust you place in us as a safe place to share information is the most important part of what makes Facebook work.
発信者が何か情報を発信すれば、受信者に到達した時点で受信者の占有下にもコピーが作られ、受信者の情報となる。発信者が退会しようとも、受信者はその情報を持ち続けたままだ。そして、その状態を維持することはFacebookとしては当然にやるべき仕事と考える。そのことを明確にしたのが今回の利用規約改訂の意図の一つだ。
あなたの情報をあなたの意に反して利用しようとするものではない。情報交換が安全にできる場であるという信頼の維持こそが、Facebookが成すべき仕事として最も重要なことなのだから。

発信者が情報交換の場を利用して情報を発信すれば、受信者となる者が必ず発生する。そして、受信された情報のコントロール権は、受信者にも、そして情報交換の場を構築し提供している事業者にも当然に発生する

Facebookは規約変更については見直しに入ったものの、ここで述べている視点は、情報の共有をビジネスにする最先端の企業ならではの、情報コントロール権の本質をついた問題提起だと思います。


個人情報取扱事業者にも情報コントロール権はある

私が携わる人材ビジネスも、個人情報をたくさん取り扱っています。求人者と求職者の情報を預かり、マッチングし、スムースな交換を促しているという点においては、Facebook同様、情報コミュニティを構築しているとも言えるかもしれません。

一方で、こういった情報サービスを利用する顧客は、自己情報のコントロールに非常にナーバスです。サービスが終わった瞬間に、「私のデータを一つ残らず全て消去しろ」と要求される方も少なくありません。

もちろん、可能な限りご要望にはお答えすべきでしょうし、不要な情報は事業者の安全のためにも削除すべきでしょう。
とはいえ、個人情報取扱事業者が、そのサービスを運営していく上で、Facebookと同様に事業運営上の都合で消去に応じられない情報も存在します。

例えば人材サービスにおいては、求職者からお預かりしたキャリアに関する個人情報を受信者である求人企業にお渡しするわけですが、その求人企業にお渡しした個人情報は人材サービス事業者の力では削除はできません。また、その求職者が無事入社に至れば、サービス提供の履歴として、もしくは売上計上の会計記録として、削除は不可能になります。それでも、それを理解せず削除を頑なに要求する利用者が存在します。

日本においては「情報主体が自己情報の全てをコントロールできる」という原則が前面に出すぎ、発信者のワガママな要求に情報受信者や個人情報取扱事業者が必要以上に振り回され、苦しめられているシーンがあまりに多いのではないか。そんなことを改めて考えさせられました。

過去、同じような問題が発生した際に「著作物は俺たちにも自由に使わせてよ」というミエミエの下心を慌てて「海外サーバーへのコピーが自由にできるようにしただけで、ユーザーの権利を奪うものではないです。スミマセン・・・」と苦しい釈明・謝罪に終始したミクシィ。
Facebookの今回の対応とは、同様のサービスを提供する事業者でありながら、だいぶ“思考の深み”が違うようにも見えました。
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