マホガニー調の書斎机が、喫茶「深海鮫」のテーブルとなって、
二十日くらい経ちました。
その存在感と、私の思いについてはちょっと触れておきました。
今ではかなり、というより、もうすっかり馴染んだ感じになってます。

佇まい。
要は、そうしたことなんだなぁ、と改めて感じ入ったりしています。
それは、もう長いこと、家具や調度品などと縁のない、なにか、
生き別れた生活のせいだったからでしょう。
部屋は、天井と壁と床だけ。
そうしたところへ、からだ一個、ゴロンと転がり入れた、そんな風
でしたから。

で、まぁ、そんなところへいきなりドーンと、マホガニー調が来たわけ
です。
前に、「置き、決め」と言ったのは、渾身の情だと思います。
ちょっと大袈裟かもしれませんが、新たな御神体をも運び入れた。
そんな心情だったのでしょう。

細かい傷やなにかと擦れあって、少し剥げ落ちたところに、
紙やすりをかけ、ウォルナットとメープルのニスを塗ってやりました。
そして、このマホガニーのある部屋の入り口の、古くて陽にやけ、
色落ちした床の一部もついでにニスをかけました。

窓を開け、山の空気を入れてニスを乾かしていると、
木肌は、次第に、水を得て蘇えり、息すら感じるようでした。
そして、机と床は、なにか
お互いサインをかわすかのように、絶妙な調和を醸し出してくるの
でした。
空気もより涼しくなった。
そう感じました。
また、光沢も落ち着きを増し・・。

旅。
なぜかこの言葉が浮かんできました。
なにか今、旅をしてるんじゃないかなぁ。それもずいぶんと長い旅。
で、今涼んでる。涼しさのなかに佇む私。
人間は普段、生活のなかでこんな感じの旅を始終しているんじゃないのかなぁ。
とも、思いました。
無意識に涼をとったり、木に水をやったり・・・
いろんなところへ出かけなくとも、旅はここ、身体の中。
どうなんでしょうか。
トンビが鳴いてます。山で。