文学座 4月 アトリエの会
『最後の炎』
原題:Das letzte Feuer
作:デーア・ローアー
訳:新野守広
演出:生田みゆき
日程:2018年4月14〜28日
料金:前売4300円/当日4600円
会場:文学座アトリエ

文学座のアトリエ公演。
詩的な台詞と語りで構成されて、
場面場面が挿入されていく、
好きな形の台本。

子供の事故死、
という事実から、
それに関わった人たちの人生の綻びが、
それぞれの視点から語られていく。

語りは
「○○は××の肩を掴む」
みたいな、一般的に戯曲で「ト書き」と呼ばれるような感じのもあり、
自らを客観的な視点でキャラクターが語って、
劇中に戻っていくような所があり面白い。
語りの詩情と客観性は、
僕が以前出演した
『黄色い月』(デイヴィッド・グレイグ、2006年)
『ピンクミスト』(オーウェン・シアーズ、2015年)
を思い出す。
『最後の炎』は2008年の戯曲。

語りで進めていく感じ、好きだなぁ。
最近の海外戯曲のトレンドなんですかね。

喪失から物事を考える、というのも
『ピンクミスト』と大いに重なる感じ。
考える、受け止める、先に進む。

言葉にして、考えて、受け止める、
ということを共有する。
こないだ観た『ギャンブラーのための終活入門』もそないな感じだった。

−−−−−

文学座『最後の炎』は、
ほぼ絶え間無くくるくる回る盆舞台(観てる時は、下で人が回してるとしたら大変な仕事だろうけどきっと電動だろう、とか考えてたけど、
今思い返すと時間の流れのようでもあり、素敵な装置だった)
に朽ちそうな木が一本。

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(写真はステージナタリーから。他にも一杯載ってます。こうやって上演中から舞台写真出してくのって、いいな、と思います。)

ビジュアルとして日時計みたいな感じのとこに、
白っぽい服着た人々が集まってきて
「あの日」
について語り出すという素敵に完璧な空間から始まる。
ワクワクしますね。

繋がってるようで繋がってないようで少し繋がってる人々の人間関係に、
一つの出来事が波紋を広げていく。
他人事は、巡りめぐって我が事に。
そんなことを考えました。

−−−−−

で、この「語り」の仕方が、
やはり難しいなぁ、と感じた。

役者によって個人差があるものの、
全体として語りが「平坦に無機質に」
言葉を前に出していくように作られていた印象があって、
なんというか、活字が飛び出してる感じ?
これが、客観性、ということを支えているような気もしないでもないものの、
個人的には合わないなぁ、と感じました。
言葉にされる情報がもろに情報として入ってきて、
それを耳で聴いて考えて処理する、
してる間に話はどんどん進んでくので、
耳慣れない言葉が多くなってくるとだんだん語りが入ってこなくなって音になってくる感じが少し。
観客に「オラ、ついてこい!」って集中力が求められるオラオラ系語り。

これはもう「語り」の主義の話なんだろうけど、
意図的に無機質、
というのはありにしても無機質すぎると寂しいなぁというのもあり。
言葉の質感・情感、
誰が、誰に、何を、何のために、どう思って
「語って」るのか
ってのは、
たとえ「犬がうんこした」
って語るにしても重要だと思うんです。

無機質に「犬がうんこした」
なら、うんこした事実があるけど、
そこに、どんなうんこなのか、
うんこを待ちわびていたのか、
臭いのか、色はどんなか、
みたいな事が乗ってくる語りが好きだなと、
個人的には思います。

その「語り」の度合いが、
出演者によって様々で、
聴きやすかったり聴きにくかったり。

無機質さが、
語りと観客の間に壁を作っちゃってる気がして、も少しフレンドリーでもよくない?
と思ったり。
かと思えば、倉野章子さんの語りは視線がこっち向いてなくても染み透るように伝わってきたり。
倉野さん、抜群だったなぁ。

あと、語ってる時に舞台に一人でいることが多くて一人芝居のコーナー、みたいになってた西岡野人さんの語りは、
サービス精神があった。
ので、ちょくちょく挟まる野人さんコーナーが、
深刻化していく物語の緩和材になっていたような気もします。

すごく、好き嫌い分かれそうな舞台だなぁ、と思いました。
こんなのを、「いつも新しく、いつも刺激的」に上演していく文学座。
特にアトリエのとがり具合は健在だなと思いました。




【あらすじ(公演サイトより)】
紛争地域からの帰還兵がある町にやってきたところに、
パトカーの追跡を振り切ろうと一台の自動車が猛スピードで通りかかった。
たまたま道でサッカーをしていた子供が驚いて飛び出し、
帰還兵の目の前でパトカーにはねられてしまう。
事故死した子の家族、
パトカーを運転していた女性警官、
追跡を振り切った後自宅にひきこもる青年、
青年に車を貸していた元教師、
自分の爪を削り続ける帰還兵…。

ひとつの死によって人々の日常生活は静かに結びつく。
耐えきれない現実の痛みをやさしさで消し去ろうと絡み合う、無名の人々の愛の物語。 



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