■スサノオに祝福された決断

 8年前の2月、岩手県水沢市(現奥州市)を訪ねた。ぼたん雪が降りしきる中、締め込み姿の男たちの「ジャッソー、ジョヤサー」という掛け声が、夜通し響き渡った。天台宗黒石寺(こくせきじ)に伝わる「蘇民祭(そみんさい)」である。

 男たちが蘇民袋と呼ばれる護符(ごふ)(お守り)を奪い合うこの祭りは、「みちのくの奇祭」にふさわしい。神事が続く合間には、男たちだけでなく見物の者もみな、境内に建てられたムシロ小屋に入り、焚(た)き火で暖を取り、冷や酒を傾けながら語り合う。

 蘇民とは人の名前で、正式には蘇民将来(しょうらい)という。貧しい暮らしだったが、ある夜、1人の男が家の戸をたたいた。「旅で難渋している。一夜の宿を貸してはくれまいか」と男は言った。近くに住む蘇民の弟、巨旦(こたん)将来にも頼んだが、断られたという。弟は自分と違って裕福で家も大きかった。

 「こんなところでよければ」と蘇民は快く男を迎え入れるのだった。

 それから何年かのち、再び男が蘇民の家を訪ねてきた。そして声をひそめて、次のように言った。

 「いつぞやは世話になった。礼をしよう。お前の子や孫たちが『私は蘇民将来の子孫です』と告げたならば、どんな病気も免れるだろう」

 男は荒ぶる神スサノオだった。彼は宿を断った巨旦将来一家を無惨(むざん)にも皆殺しにした。これらは「備後国風土記」逸文(いつぶん)に伝えられた話である。

 ≪蘇民将来子孫也≫。黒石寺や京都の祇園祭などで授けられる護符やちまきには、このまじないの文句が書かれている。流行病が最も恐れられた時代、蘇民将来に対する信仰は列島の隅々にまで広がった。

 黒石寺の本尊・薬師如来坐像(国重文)の胎内には、造立年とみられる平安初期の「貞観(じょうがん)4(862)年」の墨書が残されている。1100年を超えて守られる蘇民祭。今年も旧暦の1月7~8日(今月20~21日)、忘れられた神がよみがえる。(渡部裕明)

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