「犬猿の仲」を利用して、ニホンザルによる農作物被害を防ぐ取り組みが広がっている。農家の飼い犬を訓練し、猿を追い払わせる「モンキードッグ」の導入だ。深刻な悩みを愛犬は解決できるだろうか。【春増翔太】

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 昨年11月中旬、山梨県は初めて、モンキードッグの研修会を開き、飼い主約30人と訓練中の犬10匹が参加した。県内の自治体や農協職員ら約50人が見守る中、飼い主に連れられた犬が山に入って30分。「キーキー」という鳴き声を残し、猿の群れが林の奥へ去っていった。県農業技術課によると、芋類やトウモロコシなど、猿に食い荒らされる被害は年間約7000万円。他の動物による被害が減る中、猿だけは横ばいが続く。人を怖がらず、電気の流れる柵も巧みに避ける。そうした知恵が猿にはあるようだ。

 トレーニングでは、犬に猿のにおいを覚えさせ、猿に気付いたらほえ、追いかけさせる。NPO法人「地域交流センター」(東京都)でインストラクターを務める長野県小諸市の獣医師、山下国広さん(56)によると、犬種は問わないが小型犬は向かない。「愛犬が猿を追い払ったら、思いっきり喜んでもらいます」。飼い主の協力も不可欠だ。同センターの米村洋一さん(66)は「猿は犬自体を嫌うのではなく、犬の攻撃的な行動を警戒するようだ」と話す。

 岩手県釜石市や三重県松阪市などもモンキードッグの訓練を始めた。全国で初めて予算化した長野県大町市は05年以降、毎年3~4匹を訓練し、現在は19匹が市内各所の畑を守っている。ただし、今のところは劇的な効果をあげていない。「猿は犬のいる畑を避け、隣の畑を荒らす。すべての畑に犬を配置できない」(同市)からだ。攻撃されないと分かれば、猿は犬を怖がらなくなる。木の上で農作物を食べて挑発することもあるという。

 米村さんも「犬だけでは限界がある」と話す。猿は見張りを置くなど組織的に動く。「人と犬が地域全体のチームワークで対抗しないと」。人と犬、柵による対策を組み合わせるなど、猿との知恵比べはまだ続きそうだ。

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