よしあき回想録 - 第5話
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今朝方(7月2日)、とてもなつかしい人の夢を見ました。夢のなかでは、昔の若いころの彼とほとんど同じようでした。その人の名は、ジョージ秋山さんといいます。今も漫画家として活躍しているのではないでしょうか。このジョ−ジ秋山さんについては、なつかしい思い出があります。
秋山さんとの出会いは、私が講談社のお使いさんをしていた時代ではなく、それから4年ほどあと、週刊少年マガジン編集部に配属となってからのことです。
まんが班の駆け出し編集部員として、そのころせっせと売り込みに通っておられた秋山さんのデビュー作を担当することになったのです。確か栃木県のほうから上京してきて、西武池袋線の東長崎駅近くの4畳半か6畳のアパートに住んでいたころです。年齢もほとんど同じくらいですし、よくおつきあいさせていただきました。
私の記憶に間違いがなければ、「パットマンX」という週刊少年マガジンでの連載漫画が、秋山さんの本格的なデビュー作品だと思います。そんな派手な作品ではありませんでしたが、ほのぼのとしたタッチで子供たちの日常的な遊びの世界に材を取るといった感じのものでした。私がまんが班で初めて連載物を担当することになったのが、この「パットマンX」だったのです。この作品には、サブキャラクターに「よっちゃん」という眼鏡をかけた男の子が登場しますが、よっちゃんは私がモデルだそうです。
秋山さんは、よく黒のとっくり首セーターを着る、スリムでちょっと目が鋭い感じの現代的な若者でした。どちらかというと無口なほうで、ほかの漫画家たちとはちょっと違っていましたね。彼も売り出し前の貧乏時代だったし、私もいつもピーピーしてましたから、私達は一計を案じまして、「打ち合わせ」というのをいつもランチタイムごろにあわせてやることにしました。秋山さんが作品のアイデアや下書きのようなものを持って編集部を訪れるわけですが、
その時間を昼飯時にしてもらうわけです。「じゃ、打ち合わせはメシを食べながら」といって、二人して講談社近くの店に行ってしまうのです。二人で昼飯を食べて、いったんは私が二人分、支払いますが、レシートをもらって「赤伝」と呼んでいた請求伝票に添付して経理の方に提出すると、全額戻ってくるというせこいことをよくやったものです。
あの「経済犯」はもう時効になったと解釈していますが、一種の「接待」であったと考えれば、そう良心の呵責に責められなくともいいのかも知れません。ともあれ、クリスチャンとなった今は深く反省しています。
その後、皆さんもご存知のように、秋山さんは大ブレークで一躍大人気漫画家になりました。最近の彼の様子はよく分かりませんが、今朝の夢に出てきた彼は、昔の若いころのままで、確か黒のとっくり首セーターを着ていたように思います。
文●田中義章 2002/07/04
秋山さんとの出会いは、私が講談社のお使いさんをしていた時代ではなく、それから4年ほどあと、週刊少年マガジン編集部に配属となってからのことです。
まんが班の駆け出し編集部員として、そのころせっせと売り込みに通っておられた秋山さんのデビュー作を担当することになったのです。確か栃木県のほうから上京してきて、西武池袋線の東長崎駅近くの4畳半か6畳のアパートに住んでいたころです。年齢もほとんど同じくらいですし、よくおつきあいさせていただきました。
私の記憶に間違いがなければ、「パットマンX」という週刊少年マガジンでの連載漫画が、秋山さんの本格的なデビュー作品だと思います。そんな派手な作品ではありませんでしたが、ほのぼのとしたタッチで子供たちの日常的な遊びの世界に材を取るといった感じのものでした。私がまんが班で初めて連載物を担当することになったのが、この「パットマンX」だったのです。この作品には、サブキャラクターに「よっちゃん」という眼鏡をかけた男の子が登場しますが、よっちゃんは私がモデルだそうです。
秋山さんは、よく黒のとっくり首セーターを着る、スリムでちょっと目が鋭い感じの現代的な若者でした。どちらかというと無口なほうで、ほかの漫画家たちとはちょっと違っていましたね。彼も売り出し前の貧乏時代だったし、私もいつもピーピーしてましたから、私達は一計を案じまして、「打ち合わせ」というのをいつもランチタイムごろにあわせてやることにしました。秋山さんが作品のアイデアや下書きのようなものを持って編集部を訪れるわけですが、
その時間を昼飯時にしてもらうわけです。「じゃ、打ち合わせはメシを食べながら」といって、二人して講談社近くの店に行ってしまうのです。二人で昼飯を食べて、いったんは私が二人分、支払いますが、レシートをもらって「赤伝」と呼んでいた請求伝票に添付して経理の方に提出すると、全額戻ってくるというせこいことをよくやったものです。
あの「経済犯」はもう時効になったと解釈していますが、一種の「接待」であったと考えれば、そう良心の呵責に責められなくともいいのかも知れません。ともあれ、クリスチャンとなった今は深く反省しています。
その後、皆さんもご存知のように、秋山さんは大ブレークで一躍大人気漫画家になりました。最近の彼の様子はよく分かりませんが、今朝の夢に出てきた彼は、昔の若いころのままで、確か黒のとっくり首セーターを着ていたように思います。
文●田中義章 2002/07/04