こんにちは。VENTURE UNITEDの丸山です。

3月末決算の会社を中心として、3月にIPOを果たす企業の上場承認が続いておりまして、個人的にはなんとなく年度末感が漂いだしておりますが、みなさまに置かれましていかがお過ごしでしょうか。

節分もバレンタインもなんとかやり過ごして、次はひな祭りですよ。ケーキ食べるとかそういうやつじゃないですかね。昨今は。
それとは別にこの時期の甘党としては飲食店のイチゴフェアも見逃せません。

っていうか、バレンタインで友チョコっていう風習があるっていうことを最近知りました。もはやバレンタインと関係ないんじゃないかっていう気もしますがいいですね。1/2成人式とかもそうですが、日本っていう国は興味深い風習が多いなっていう印象です。

だったら、いっそのこと”毎日がスペシャル”でいいじゃないって思ったりもします。

さて、そんなわけで、新規上場承認が続くわけですが、個人的には承認された会社の目論見書は一応チラ見しておくことはやっているんですが、たぶんすっごいマニアックですが、グッときた資本政策があったので、それをこのブログでご紹介しようと思います。

それは2月14日(バレンタインデー)に東証マザーズに主幹事が野村證券で上場承認されたジャパンエレベーターサービスホールディングス(株)(6544)です。

エレベーター乗ってて、jesっていうロゴをなんとなく見た気もしなくもないですが、エレベータやエスカレータの保守やメンテナンスを行っている会社です。

この会社の有価証券届出書(PDF)を読んでいて、おぉっていう思うところがあったんですよね。

それは、

自己株式を用いて資金調達を行っていた

っていうところです。

なかなか未上場企業で自己株式をもっているところは財源規制の問題もあって少ないですが、それでも利益が出ている会社などであればその財源もあるので、自己株取得もできなくはないのですが、それを活用して資金調達するっていうのはなかなか面白いなぁっていう印象があります。

具体的には、届出書のここに記載がありまして、
資本推移


平成26年3月26日に自己株式である普通株式をA種優先株式に変更して、ファンドに割当ていて、それによって5億円(12,500,000円×40株)を調達しているものです。

普通株式であった自己株式をA種優先株式に変えるっていうあたりでは、たぶん、この時点ではほぼオーナー100%であったから比較的容易にやりやすかったんだろうなぁっていう感じがします。

それによって5億円の調達ができるのですが、これ、資本の部のなかの、自己株式勘定とその他資本剰余金勘定の間でのやり取りになるはずなので、5億円を調達したけれども資本金に増減がないっていうところが個人的にはグッときておりました。

そして、このA種優先株式は平成27年12月30日に取得・消却をしているのですが、その詳細はわからないですが、たぶん取得条項を用いて取得したんじゃないかっていう気がしなくもないです。

これは割当先がVCではなく、メザニン・ソリューション2号投資事業有限責任組合というファンドであって、そのファンドのコンセプトが
劣後ローンや優先株式等のメザニンファイナンス(下記7ご参照)による資金供給を通じて、企業の多様な資金ニーズに対するソリューション提供を目的とするファンドです。
で、
銀行借入等による調達(デット・ファイナンス)と普通株増資による調達(エクイティ・ファイナンス)の双方の特色を生かし、資金ニーズや資本政策に応じた、より柔軟かつ多様な資金調達を可能にします。
っていう特徴があって、LPが
株式会社三菱東京UFJ銀行
株式会社日本政策投資銀行
で、GPの株式会社ソリューションデザインも株主が
株式会社三菱東京UFJ銀行
株式会社アタックス
PwCアドバイザリー合同会社
株式会社マイツ・コンサルティング
みらいコンサルティング株式会社
という顔ぶれなので、こうした資金提供をしているんだろうなっていうことが推測されます。

ちなみにA種優先株式の配当は個別財務諸表の推移をみると個別推移

となっていて、一株あたり年間に1,062,500円を配当することになっていたようなので、年8.5%の優先配当っていうことだったのかと。

ただ、この資金調達を行った平成26年3月期の業績が当期純損益が▲629百万円でこの調達がなければ債務超過となっていただけに必要な資金調達であったんだといえるのかとは思います。
(その前の期も当期純損益が▲68百万円で、2期連続赤字だったので金融機関との取引というところでもかなりシビアになったという背景もありそうな気はしますし、債務超過になっているとさらに厳しくなっていたと考えられるので、メザニン・ソリューションファンドのコンセプトに適う対象でもあったということなのかと)

平成27年3月期からは連結決算も始まるのですが、連結推移

業績は回復して最終損益もプラスに転じているので、金融機関との取引などの条件も緩和されだしたということではないかと。

それによって平成27年12月30日に取得・消却にいたったんではないかと。

このあたりはキャッシュフロー計算書を見てみるといいかなっていうところで
CF

平成27年3月期中に長期借入金返済と社債償還と合わせてが576百万円の支出があったことと、平成28年3月期では返済による支出は360百万円にとどまる一方で、新たに長期借入として665百万円の収入もあったというところで、A種優先株式の持つ目的は果たせたっていうことなんじゃないかなと。
(ついでに、平成27年4月に協力会社であるLEOC社に対して第三者割当増資として普通株式を新規発行して88百万円も調達していたりします。)

そのA種優先株式については、自己株式取得の状況から自己株取得

総額で510,654千円での取得をしていることがわかります。

単純に計算すると一株あたりで12,766,350円なんですが千円以下の数値はこれらの資料からだと正確には把握できないんですが、たぶん、12,500,000円の発行価額に対して約2.13%のプレミアムで取得をしています。これはたぶん優先配当金の経過期間分ではないかなと。

これからを踏まえた平成27年3月期と平成28年3月期の連結BSはこんな感じです。
BS


もともと資本剰余金の勘定が大きかったっていうところもあると思うので、そのあたりは開示されていない財務諸表などをみないとわからないですが、資本剰余金勘定が1年間でだいぶ変動しているあたりがグッとくるところです。

ちなみに、このA種優先株式については
優先配当として半期毎に531,250円/株の支払いがあってこれが合計で1,593,750円/株。
それに取得時のプレミアムとして266,350円/株(推計)があったので、
合計1,860,100円/株の収益となっていまして、
およそ1年9か月間で約14.89%のリターンと推計されます。

資本増強が必要な局面であって、この条件で資本調達ができたことでその先の成長につながって、上場承認までこぎつけているということを考えると、このスキームの意義は大きかったのではないかなって思ったりもします。
いろいろなプレイヤーがいることによって、いろいろな企業の成長が支援されているということを意識付けられるところです。

スタートアップと呼ばれる企業でVCなどが入っている企業ではなかなか当てはまるケースは少ない事例ではあって、人生において使うことはほぼ皆無だとは思いますが、こうした事例の引き出しを増やすことで、新たなスキームを考案するうえでのヒントにはつながるので、非常に勉強になるケースではありました。

ちなみにjesの変遷もなかなか興味深かったので、変遷図も貼っておきます。
変遷


ジャパンエレベーターサービスホールディングス(株)(6544)の上場予定日は3月17日(金)です。

では、また。

TOKYO2020まで、あと1255日

※プロ筋の読者の方などで、これ解釈が違ってるとかいろいろありましたらこっそりご連絡いただけると助かります。