kisyu


[ caeru ] 実店舗時代のことです。

桃の節句も間近という頃、店のレジカウンターの片隅に古い小さな漆塗りのお雛様を飾りました。

それは子供の頃からよく見ていた丸くて素朴で可愛らしいけれど、変哲のない
実家に飾られていたお雛様。
変哲なく感じるほど、心にしみついたものだったのだと今、思います。

お客様に「これ、紀州雛ですよね」と言われ、そんな呼び名があるのだと改めて知ったほど。
小さな桐の箱には確かに「紀州雛」と書かれていました。 

他にも大きめのものや、円錐状のものなどいくつかあり、
季節になると玄関や居間や、段飾りのお雛様とは別にちょこんと飾られていた記憶もありますが、
子供心では、御殿の白いお顔のお雛様がお気に入り。
漆塗りのふくよかな小さなお雛様はおばあちゃんの!と位置付けていた気がします。
静かに微粒子が沈んでいくような春の光の中でつつましくやわらかく微笑んでいた、、、そんな
印象の雛人形でした。 


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大人になって実家を離れても、当然のようにひとつ持たされていたお雛様。
それを [ caeru ] 実店舗にディスプレイとして飾ってみたわけです。

「紀州雛」であると教えてくれたお客様が『同じ品物が欲しい』と言ってくださって、
紀州雛宗家寺下三代目池島史郎氏より取り寄せたのが12~3年前のことです。

当たり前のように慣れ親しんだ物が由緒ある工芸品であり、
お客様と品物を繋ぐことができたのはとても嬉しいことでした。

手描きのお顔は一つづつ個性があります。
そのお客様は結局ディスプレイとして飾っていたものを気に入っていただき、
お譲りすることとなりました。
今この手元にはないのですが、その時新しく仕入れた他の可愛らしいお雛様たちとともに、
それぞれのお客様のもとできっと今も大切にされていることと思います。

丈夫で、その美しさは末永くご家族を見守り、愛され続けているに違いありません。

[ caeru ] が改めて「紀州雛」のファンになったのは言うまでもないことです。


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(画像:最もスタンダードなタイプ)



その漆の独特の艶と、抑えめで深みある色、そしてどこか古代を思わせる雰囲気は
日本文化を見直す上でも重要な要素です。

伝統的工芸品認定を受け、盛んに作られてきました「紀州雛」。


それが、なんと、
実に実に残念なことに後継者がなく、途絶えることになってしまっているのです。

動物の絶滅危惧種は人間の自然破壊によることも大きいでしょうけれど、
ある意味では自然淘汰でもあり、むしろ私達の立ち入ることのできない領域であります。
ですが、伝統工芸品の絶滅の危機!ってなんとかしなければならない、という気がしませんか?


2016年12月をもって製造中止とは!
『なんと!!!』という感じです。

もちろんずっと守ってこられた黒江の漆器問屋さんたち、
ことに販売元であった方々は保存、継承に尽力されています。なんとか新しい芽吹きとしてでも、
命を吹き返してほしいものです。



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(画像:紀州漆の町 和歌山県海南市黒江:老舗「池庄」前)


そもそもの「ひな祭り」。もう一度見直してみても良いのではないかという気もしています。

次回はそんなこんなの「ひな祭り」についてや、
伝統工芸品とそこに携わる人や地域の現状などに思いを馳せてみたいと思っています。


「紀州雛」ギャラリーコラムはこちら>>>kisyubina
ご紹介していますカテゴリーはこちら>>>エトセトラ(文具・趣味・生活道具)

詳細説明は和歌山県伝統工芸品PDFをご覧下さい。

こちら>>>http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/061000/kougei/pdf/hina.pdf
 


 [ caeru ] ホームページはこちら>>>http://www.caeru

 
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