2006年03月13日

い1「石焼き芋」

 子供の頃はリヤカーに焼き芋器をのせたオジサンが
「石焼きイーもー」っていいながら、売りに来た。
 あれは目方で買うんだよね。あれ?それとも3つ、とかって買って、目方で値段が決まるんだっけな、とにかく秤で重さを量ってお金を払う。もちろんアツアツが旨いので、その場で食べ始めるのが一番だ。
 熱いのをがまんしてつかんで2つに割る。黄金色の身から湯気がガンガン上がっているのに口を近づけて、フーっと息を吹きかけてさます。でがぶっと囓る。甘みと何よりも寒い日には暖かさがたっぷり詰まっていて、何とも言えない味が口に広がるのだ。
 残ったヤツは炬燵で暖めたりして食べたなあ。当然電子レンジなんてないし。
 アレは冬の食べ物で、焼き芋屋のおっちゃんは夏になると金魚屋になっちゃう。今度は
「金魚ぉーえ、きんぎょ」っていいながら金魚を売るわけだ。
 なんで石焼きなの日、子供の頃はわからなかった。落ち葉を集めたたき火にサツマイモを突っ込んでも、表面は真っ黒だけど焼き芋はできる。焼く、というのは直接火にかざすという発想しかなかったから、石焼きってのがわからなかったのだ。
 時代は移り、リヤカーは軽トラックになり、かけ声も
「石やきいーもー、やっきたて。ほっかほか。早くしないと行っちゃうよ〜」なんて風に変わったけど、日本の街には数少なくなった「売り歩き」スタイルの店のひとつだ。でもおっちゃんが夏に金魚屋になることは、もうないのであった。


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