写真好きの中には夜景や星景は面白くないという方もいます。良い機材があって定番の場所と構図で設定と条件が揃えばすべて同じ「いい感じの絵」が出来上がると考えるのでそういう意見はあるのですが、どこかで見たあの写真っぽいものを自分でも撮るっていうのはそれはそれで楽しいと私は思うので結構好きです。そもそも機材も腕もないんだから、そんなに簡単に素敵な写真にもならないですしね。ということで、星空撮影の話。
IMGP1587


まず星景撮影(や夜景撮影)は以下を基本に行います。

■ 三脚で撮影
1万円以下のものでいいので一つ。最初は持ち運びが楽なトラベル三脚でいいでしょう。星景撮影の場合は、自由雲台の方が便利な気がします。暗い場所や寒い場所で操作するので、見づらい場所でも操作しやすくて、指を挟んだり爪を割ったりしないようなものが望ましいと思います。私はバンガードのVEO 2GO 204ABという三脚を使っています。よく使われているのはVelbonの三脚みたいですね。

■ リモートレリーズスイッチ(もしくはセルフタイマー)
リモートレリーズスイッチは、あれば便利ですがいちいち持ち運ぶのも面倒ですし、リモコンケーブルでブレるという事もなくもないので、セルフタイマー2秒とかでも良いと思います。

■ バルブ撮影(露光時間をマニュアルで10秒以上にするモード)
カメラのマニュアルを見るべし。基本的にはISOとF値と露光時間だけ決めて撮影するモードです。マニュアル露光(シャッターボタンを押して、話すまで露光)ともいいますが、10秒とか20秒とか固定タイマーでの露光時間設定ができます。星景撮影の場合、赤道儀なしだと基本は30秒以下、赤道儀ありなら最大で120秒くらいまでは露光する場合があります。

■ マニュアルフォーカス
夜空のピントをファインダー越しに合わせるのは神業です。液晶モニター表示にすると拡大もできるので、めぼしい天体をセンターに入れて最大ズームでピント調整をします。レンズによってまちまちですが、広角寄りのレンズでは、「無限遠のちょい手前」くらいが一般的です(まんま無限遠の場合もあります)。月や星雲を撮るような高倍率ズームでは、全然あらぬところにピントがあったりします。

あると便利なもの
■ 赤色光のヘッドライトやランタン
人間の目は赤い光では瞳孔が絞られない仕様です。クルマのテールランプが赤いのもこの為ですね。白や青い色は瞳孔が絞られやすいのでスピードメーターには不適切です。天体観測をしている場所で白い光を出すのは周囲の迷惑になるのですが、とはいえ光がないと作業ができないことも多いので、赤い光を出せるライトを用意しましょう。なかなか良いものがない場合は赤いセロファンなどでもよいです(発熱が大きいライトではセロファンが溶けることもあるので注意)

■ 赤道儀
便利かどうか微妙ですがアドバンスドなアイテムとして。天体は日周運動がありますから、時間経過で天球は回転してしまいます。目視ではあまり認識できませんが、40秒もすると明確に位置が動いていて写真では点ではなく線になりはじめます。赤道儀はこの天球の動きに合わせてカメラを動かして星を追尾する機械です。星を追うので今度は景色の方が動いてしまうという問題はあるので、一長一短です。PENTAX ではカメラ内で疑似的に赤道儀のようにセンサーの角度を動かして星を追尾するアストロトレーサーという機能がついています。


★天の川を撮ろう!

星景撮影と言えば「天の川」ですね。なのですが、私が星撮るべ!とやりはじめたのは秋ごろ。天の川は基本的には夏が旬のシーズンで冬撮るとしても2月末以降です。しかも再びコロナ緊急事態宣言で千葉県から出られない状況になったので詰んでいたのですが、3月15日に銚子・君ヶ浜でほぼ新月・晴天になったので撮影してきました。

ちなみに2月末だと天の川撮影の時間帯としては、午前4時~4時半、3月中旬だと3時~4時半くらいです。4時半から夜明けでも撮影できますが、東の空が明るくなるので夜の天の川ではなくなります。夜明けと天の川というのもそれはそれでいいですけどね。月齢はもちろん新月前後が理想ですが、月入~月出の間であれば夜空に月はないので撮影は出来ます(ただし、出入りギリギリの時間だと月の光で空が明るいです)

IMGP1570
 HD PENTAX-DA 15mmF4ED AL Limited
 ISO1600 15mm f/4 SS 60秒 アストロトレーサー
 フィルター:プロソフトン [A](W)、スターリーナイト
 3月15日 3時33分 君ヶ浜駐車場付近から犬吠埼(東南東)方面

f4.0は一般的に天の川撮影には絶望的な暗さです。しかもスターリーナイト(光害カット)をつけるとさらに暗くなるので、とてもじゃないですがISO1600とかで撮れるコンディションではないですね。なので60秒シャッターをあけて撮影しています。その分、灯台の方が少しブレています。今回はやっていないですが、場合によっては景色は別撮りで合成するなんてこともありです。
プロソフトンは星を大きく見せるソフトフィルタです。KenkoフィルタだとB>A>クリアとフィルタの強さで種類があります。明るい星はより大きく。小さな星も少し大きくなります。星空の写真で星のサイズに明確な大小があるケースでは、ソフトフィルタが使われていると思っていいと思います。
しかし、このレンズは本当に強烈に周辺減光がでますね。

レンズが違いますが、ソフトフィルタがないと以下の写真のように星に露骨な大小は出ません。
IMGP1577-2
 HD PENTAX-DA FISH-EYE10-17mmF3.5-4.5ED
 ISO1600 10mm f/4 SS90秒 アストロトレーサー

ズームするほど星は大きくなるので、レンズの焦点距離ではソフトフィルタが強烈に効いて一等星がやたらと大きくなったりしますので、それが好ましいか判断が分かれるますが、暗い空では良くも悪くも大量の星が映るのでソフトフィルターがあった方が星座などがわかりやすくメリハリのある絵になると思います。

上の写真ではアストロトレーサーにものを言わせて60秒とか90秒とかで撮影していますが、赤道儀などがない場合は、普通は30秒以下の撮影が望ましいです。f2.8とかの明るいレンズがあってフルサイズなどの明るいセンサーがあれば言う事はありませんが、残念ながらそういう機材はないので、ISOを上げて撮影するしかありません。例えばこんな感じ。

IMGP1587
 HD PENTAX-DA FISH-EYE10-17mmF3.5-4.5ED
 ISO3200 10mm f/3.5 SS30秒 アストロトレーサーOFF

この写真では手前のクルマをぼかしたくないのでアストロトレーサーを切っています。ISOは3200でも暗くて6400くらいの方がいいですが、ソフトフィルタがないとノイズ処理時に星がかなり消えてしまうので、ISO3200にしています(ソフトフィルタがあると星が少し大きくなるのでノイズ処理で星が消えにくい)Lightroomで強烈に「ノイズ削減」しているので現像ソフトありきですね。でも、暗いレンズで赤道儀なし、フィルタなしでもこのくらいは問題なく撮れるとも言えますね。
ちなみに拡大するとわかりますが、SS30秒ですがこの時間でも星は完全な点像ではなく少し長円になっています。SS20秒とかで綺麗な星空を撮ろうと思うと「f2.8より明るいレンズでフルサイズカメラが欲しい」ってなりますね。このくらいになると灯台の光が(回転をほとんどしない状態で撮影できるので)レーザーみたいに映ったりします。それがいいかどうかはともかく、ちょっとおもしろいですよね。



★満月を撮ろう!

IMGP9957-4
 HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE
 ISO200 300mm f/9 SS1/200秒

月も大きい時も小さい時もありますが、APS-Cの300mm(フルサイズ換算450mm)でこのくらいに映ります。数値を見ると天の川と全然違ってF値は9まで絞っているしISOは200だしSSは1/200秒と下手をすると手持ちでもいけそうなレベルです。しかもこれ銚子とかでもなんでもなくて普通に都市部で撮影しています。そのくらいに月は明るいんですね。あとはもうズーム倍率とピント合わせだけです。
この写真も一応トリミングすれば表面も見える・・・かな。

IMGP9957-2

同じノリと場所でオリオン座大星雲なんてのもやってみました。これも300mmで撮影してトリミングしています。

IMGP9917-4
 300mm ISO1600 f/6.3 SS50秒 アストロトレーサー

これも都市部なので、肉眼では星雲どころか何も見えていない空間に向かって撮影しています。しかも、このくらいSSを長くすると出来ている撮って出しの写真はほぼ”真っ白”です。そのくらい都市部の空は明るいんですね。街中で星が見えないのは星が暗いのではなくて空が明るいということです。なので、上の銚子みたいな場所ならもっとちゃんと撮れるはずでもあります。とはいえ、星空写真の楽しいところは、こういう肉眼ではまったく見えないものが撮影できるところです。天の川もほとんどのケースでは肉眼では何も見えていません。でも撮影すると映る。確かにそこにある。そういうのもちょっと楽しいですよね(なお、銚子は空が暗いので、目視でも目が良ければ天の川はうっすら見えています)



★特に何という事もない星景写真もそれはそれで
天の川や特徴的な景色があれば言う事はないですが、ちょっとした場所で撮る星空も楽しいかなと思います。特にそんなにメジャーじゃない場所は、人も少なくて孤独系ホビーとして楽しめます。とはいえ、トイレとか道とかジビエ遭遇戦にならないとか快適性・安全性は考えていきたいですが。

IMGP0686-2
 HD PENTAX-DA FISH-EYE10-17mmF3.5-4.5ED
 ISO800 11mm f/5 SS60秒 アストロトレーサー

緊急事態宣言で県外に行けないので俄かに活用されはじめた九十九谷展望公園(マザー牧場の傍)。天体観測ポイントとしてはそこそこ有名ですが、そこまで人も多くなくていい場所です。ここは結構空が明るいので、銚子や南房の野島崎ほど綺麗には撮れませんがアクアラインなどからも近く、広場で広い駐車場に街灯、トイレ、自販機と揃っていて快適です。子供連れで天体観測するには良い感じですね。

暗いレンズでの星空撮影はISOとシャッター速度の試行錯誤です。上記でも何度も記載していますが、星が動いてしまうので広角レンズでもシャッター速度は30秒以下。アストロトレーサーがあっても露光時間を長くし過ぎると景色の方が流れてしまう。アストロトレーサーありきでも
・ISOを上げるとノイズがすごい
・ISOを落とすとSSを伸ばさないといけない
・SS伸ばせば景色の方が流れはじめる

その時その場所の空の暗さとレンズに合わせて設定をいじりながら、1枚1分とか2分とかかかる撮影を真っ暗闇の中ひたすら続ける。地味な作業。個人的な感覚ですが、それなりの暗さがある場所であればf/3.5くらいだと ISO1600 で60秒くらいが無難に撮れる気がしていますが風景が近景だとかなりブレるのでアストロトレーサー無しで同じアングルで撮影して近景だけ合成というのも考えていく必要があります。

まあいろいろ考えながら夜闇の冷えた空気と静寂の中で星空を見上げて単純作業を繰り返す。これは闇夜のソロキャンプとかと同じ類の遊びだなと感じます。最近キャンプ場に静寂が亡くなってしまったと嘆く諸兄は是非。ただし、天の川撮影とか有名スポットは盛況なキャンプ場と変わりません・・・orz