スペインの“泡のワイン”」で紹介しましたように、スパークリングワインの中でも、スペインのカヴァ、フランスのシャンパン、そしてイタリアのプロセッコ世界3大スパークリングワインと呼ばれます。


プロセッコは、そのフレッシュ&フルーティーな味わいとお手頃な価格で、ワインに親しみのない層や若い世代にも受け入れられ、世界的に人気が高まっています。
2013年にはシャンパンを抜き、世界で最も売れているスパークリングワインとなりました。そして今や、年間生産量 6億本(2022年現在)を超えるイタリアが誇る世界有数のスパークリングワイン(スプマンテ)となっています。

プロセッコ


プロセッコはイタリア・ヴェネト州、ヴェネツィアの北25kmほどにあるトレヴィーゾの周囲に拡がります。プロセッコDOC保護協会はヴェネト州・トレヴィーゾにあります。
生産地域は法律上三つに分類されますが、プロセッコとして全地域合わせて30,000haを超える広大な土地で生産されています。

プロセッコ生産エリア

中でも、古くからプロセッコを生産してきたコネリアーノからヴァルドッビアデーネにかけて東西にのびる地域は、標高100~500mの真南向き斜面に広がる絶好のロケーション。
素晴らしい日当たりと、アルプス山脈やアドリア海からの風による冷却効果で、ブドウが適度な酸を保ったまま完熟することができるため、この地域ではより高品質なプロセッコが造られています。


プロセッコワインはすでに古代ローマ時代には存在していた、という記述が残っているほど非常に古くからあるワインです。「プロセッコ」という名前は、もともとはブドウ品種の名前でしたが、今ではワインそのものの名前として使われています。
プロセッコに使用が認可されているブドウ品種はグレラ(最低85%)と、最大15%までのグレラ・ルンガ、ヴェルディゾ、ペレラ、ビアンチェッタといった土着品種やシャルドネ、ピノ・ノワールをはじめとしたピノ系品種をブレンドすることが認められています。

グレラ
プロセッコの主要品種です。
2009年まで「プロセッコ」という名前で呼ばれていましたが、プロセッコというワイン名を守るため、法律的にグレラという名前に変更されました。
マスカットほどではありませんが、フローラルな品種で軽いワインを造ります。

グレラ・ルンガ
ルンガ(Lunga=Long)の名の通り、実がやや縦長の品種です。
プロセッコ(グレラ)のクローン品種と長年考えられてきましたが、DNA分析の結果、違う品種だということが判明しました。グレラに比べてスパイシーなアロマを持つといわれています。

ヴェルディゾ
特徴的な卵型の実をつける品種です。
柑橘類の香りと高い酸味が特徴で、陰干しして甘口ワインなどにも使われます。

ペレラ
Pere(ra)=pear(洋ナシ)の名の通り、見ためも香りも洋ナシを連想させる品種です。
ヴェルディゾ同様甘口ワインにも使用されます。

ビアンケッタ
早熟で冷涼な年にも熟すことができるためバランスをとるためにブレンドされています。
単一でワインに仕立てられることはなく、フリウリの白ワインなどにも補助品種として使われています。

シャルドネ、ピノ・ノワール
言わずと知れた高品質ブドウ品種です。シャンパンをはじめ、カヴァ、プロセッコと世界の3大スパークリングワイン全てに使用されています。


プロセッコの特徴のひとつは、残糖分の多さです。
いずれも銘柄によって幅広い甘辛度がありますが、一般的にシャンパンは残糖分が12g/l以下で造られているのに対して、プロセッコは近年辛口化の傾向はありますが、おおむね12g/l以上で造られます。
人間がワイン中の甘みをきちんと感じられるようになる境界が12g/l前後と言われているので、プロセッコは“ほんのり甘い”ということになります。


次に製法による香りの特徴があります。

スパークリングワインは主にアルコール発酵の副産物として発生する二酸化炭素を、ワインに閉じ込めることで発泡性を持たせています。
この二酸化炭素を閉じ込める方法はいくつかありますが、シャンパンはそのうちの伝統的方式(瓶内二次発酵)という製法で造られています。
伝統的方式ではボトルの中でワインと酵母(イースト)が長期間接触するため、ワインがイースト由来のパンのような香りを持つようになります。

プロセッコは、密閉式タンク方式(シャルマ製法)という製法で造られています。

プロセッコの製法

この製法では大きなタンク内でまとまった量のワインを短期間で仕込みます。そのためイーストとの接触が抑えられ、パンのような香りはワインにつきません。
この特徴によって、造られるプロセッコはブドウ本来の香りを邪魔するものが一切ないフレッシュ&フルーティーな味わいになります。

そして伝統的方式で造られるスパークリングワインに比べ、密閉式タンク方式で造られるワインは手間がかかららないことから安価に設定できます。これもプロセッコの人気を支える魅力の一つとなっています。

さらに、アルコール度数がシャンパンは平均12.5%前後に対して、プロセッコは平均11%前後という違いもあります。


プロセッコ=“泡のワイン”というイメージがありますが、厳密にいうと、プロセッコDOCには3つの異なるタイプがあります。

スプマンテ
最も有名で広く普及しているタイプで、泡が細かく持続性があります。
その糖度により、ブリュット、エクストラ・ドライ、ドライ、デミ・セックに分類されます。

フリッツァンテ
軽くて持続性のない泡が特徴です。

トランクィッロ
イタリア語で“静寂”という意味で、まったく泡が出ないスティルタイプです。

このようにプロセッコには3種類のタイプがありますが、日本に出荷されているものの大半はスプマンテです。


シャンパンはセラーで寝かせて熟成させることでより複雑な味わいになるものがありますが、プロセッコの場合グレラというブドウの性質とタンクによる生産方式的に、若くて新鮮な状態で飲むのが一番です。発泡性のプロセッコは本来作ってすぐに飲むのがお勧め。

イタリアではアペリティーボ(ディナーの前に軽いお酒とおつまみで過ごすこと。)の時間に良く飲まれるプロセッコ DOC。
そのまま飲んでもおいしいけれど、カクテルにしても十分楽しめます。
イタリアで人気のアペロールスプリッツやヒューゴスプリッツや(食前酒でよく飲まれる)、ミモザ、ベリーニなどのカクテルには欠かせない存在となっています。


 
「プロセッコ DOC」と書かれたボトルは“お手頃価格”というイメージがありますが、さらに高級なのプロセッコとして「プロセッコ DOCG」と呼ばれるものもあります。法が整備されたばかりではありますが、より限られた村だけの格付けも行われているので、今後、それぞれの畑の特徴が色濃く出た高級プロセッコが現れる可能性に満ちています。