世界でもっとも売れている泡のワイン」で紹介しましたように、世界3大スパークリングワインにも数えられているイタリアの泡のワインはプロセッコです。

プロセッコ以外にも、イタリアにはいくつか「泡のワイン」が存在します。
そのひとつが、「ランブルスコ」です。

ランブルスコ(Lambrusco)」は、美食の都として知られるイタリアのエミリア・ロマーニャ州を主な産地とする伝統的な微発砲の赤のスパークリングワインです。


ランブルスコ

ランブルスコは、爽やかなスパークリングワインとして、ランブルスコが造られている現地イタリアはもちろんのこと、日本やアメリカなど、世界中で愛されています。
柔らかく繊細な泡立ちが魅力のランブルスコは、イタリアのエミリア・ロマーニャ州を代表する食材である生ハムやパルミジャーノ・レッジャーノとの相性は最高です。

ランブルスコは通常のワインよりアルコール度数が低いので、ワインが苦手、とおっしゃる方にもオススメしやすい赤ワインです。



ランブルスコは、イタリアの限られた地域で造られています。
ランブルスコが造られている代表的な地域は、エミリア・ロマーニャ州のレッジオ・エミーリアとモデナ、そしてロンバルディア州のマントヴァという地域です。

ランブルスコ産地

このふたつの州の境にポー川という大きな川があり、その川の回りはポー平原(またはパダノ・ヴェネタ平野と呼びます)という大平原になっています。
ポー平原は土地の質がよく、大昔から農業や畜産が栄え、世界有数の高品質な食材の宝庫でもあります。
その影響もあってかこのあたりは、世界のなかでも超がつく美食のエリア。
「パルマの生ハム」「パルミジャーノ・レッジャーノ」「バルサミコ酢」「ボロネーゼ」などの料理や食材は全部このあたりが発祥です。
ランブルスコはそんな美食あふれる地域で造られていて、現地でいまなお日常的に親しまれているワインです。


ランブルスコは「ランブルスコ種」というブドウ品種を使って造られています。

ランブルスコブドウ

ランブルスコ種のブドウの大きな特徴は大量に実がなる、いわゆる多収穫です。
さらに、ランブルスコ種のブドウは細かい種類(亜種といいます)に分類でき、その数は100種類にものぼると言われて、しかもこれらのブドウはそれぞれ味わいが違います。
19世紀末には56種類ありました。そのうち約半分が白ブドウでしたが、現在の主力は6種類ですべて黒ブドウになっています。
なお、種類の判別が難しいため、ランブルスコはいくつかの亜種が混ざった状態で造られることが多いワインです。

ランブルスコの魅力は、

まずひとつめとして、リーズナブルなことが挙げられます。
ランブルスコはたいてい、スーパーにて700円~1,000円台前半で売られています。
そして、安さのわりに上質で美味しいランブルスコがたくさんあります。
安さの秘密は、ランブルスコ種というブドウ品種の特徴である大量に実がなることから、たくさんのワインを造りやすい、ことが関係しています。

さらに、ランブルスコはほとんどステンレスタンクで醸造しています。
ステンレスタンクは樽より人工的に温度管理などがしやすく、樽に比べて耐久性に優れているため、質を保ちつつ大量生産をおこなうのに向いています。
そのため、樽で長期熟成するタイプの赤ワインに比べると、造るコストが低くて済みます。


ふたつめの魅力は、渋みが少なく低アルコール、微発泡で飲みやすいことです。
ですので、ランブルスコは、「赤ワインは苦手・・・」と思っている方でもおいしく感じる赤ワインです。
ランブルスコの味わいの特徴を挙げると

渋みが少ない
普通の赤ワインよりアルコール度数が低い(およそ8%~11%)
甘めのものが多い
微発泡


アルコール度数が普通の赤ワインより低く、味わいが甘めになる理由は、ランブルスコの醸造方法によります。

ブドウの果汁は、ワインになる過程で、ブドウの糖分が発酵することにより分解されて、アルコールに変化します。その発酵が進むことでアルコール度数は高くなっていきます。

フルボディなどの甘さをほぼ感じない赤ワインは、ブドウの糖分の大半がアルコールになるまで発酵させているのですが、ランブルスコの場合、ブドウの糖分がある程度アルコールに変わったら発酵を止めます。なので、ランブルスコはアルコール度数が低くて甘めの味わいになります。
そして、ブドウの糖分がアルコールに分解されるとき発生する二酸化炭素がワインの中に溶け込んで微炭酸になります。


ランブルスコが造られる地域は、ボロネーゼやパルミジャーノレッジャーノ、バルサミコ酢、パルマの生ハムなど、濃い味わいの伝統料理が多い、イタリアの世界でも有数の美食の街。
微炭酸の泡と、軽やかな渋み、そしてフレッシュな果実味が特徴のランブルスコは、食事の際、口の中に残った脂をスッキリとさせてくれるため、現地ではランブルスコを楽しむ文化が続いています。


ランブルスコをおいしく愉しむ秘訣は、よく冷やすこと
でもランブルスコは、すっきりとフレッシュさを楽しむように造られているので、冷蔵庫で少なくとも3~4時間冷やしてから飲むのがオススメです。

また、「甘口」が有名なランブルスコにも「辛口」があります。
日本に輸入されているランブルスコは、圧倒的に甘口のものが多く、人気もあるので、甘口しかないと思っている方もいるかもしれません。ランブルスコの本場では辛口のほうがより好まれています。
ランブルスコに限ったことではないですが、ワインは辛口のほうがより幅広い料理に合わせやすいからかもしれません。

また、ランブルスコは炭酸が抜けてしまっても美味しく飲める気軽なワインです。
抜栓してその日に飲みきれなくても、フタをして冷蔵庫で冷やしておけば、2,3日は美味しく飲めます。


ランブルスコの味わいについては、ボトルの裏側のラベルに日本語で辛口か甘口か書いてある場合もありますが、表側のラベルの表記でも見分けることができます。
簡単にいうとセッコ(Secco)が辛口で、それ以外は甘口です。

以下の5つの表現を覚えておくと、購入する際に迷わずに済みます。

【やや辛口】
セッコ(Secco)
セミセッコ(Semi Secco)または、アッボカート(Abbocato)

【やや甘口】
アマービレ(Amabile)

【甘口】
ドルチェ(Dolce)

ランブルスコの辛口はチーズ系やミートソースをはじめ濃い味付けの料理に、
甘口はオードブルに合わせたり、食前酒やデザートとして愉しめます。

辛口といっても、「やや辛口」と表現するように、フルーティーな甘みを感じつつも微炭酸ですっきりさせてくれます。
そのため、チーズをふんだんに使ったピザやパスタ、肉料理、トマト系の料理、和食でも濃いめの味付けの料理、中華にフライやハンバーグといった洋食など、幅広い料理と合わせることができます。

やや甘口のランブルスコは塩っけのある生ハム、オリーブなどのオードブル、スナックなどおつまみ系と相性がいいです。


ランブルスコといえば、泡の赤ワインというイメージがありますが、実はロゼや白もあります。

ランブルスコ種のブドウを使って、ブドウの皮を取り除いて醸造する白ワインの造り方をすると白ワインができますし、ロゼワインの製法で造れば、ランブルスコのロゼができます。


なお、ランブルスコのなかには、イタリアのワイン法の格付けD.O.C.で認定されている高品質なものもあります。