2004年07月04日

不等式落穂ひろい5

相加平均・相乗平均の不等式を、微分(&帰納法)を使ってやるやり方のおさらい。このブログで紹介した方法は次の2つでした。

A(n,x)-G(n,x)を計算するやり方

A(n,x)^n - G(n,x)^nを計算するやり方

この2つのやり方とは見かけ上別のやり方を以下に説明します。  続きを読む

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2004年07月02日

不等式落穂ひろい4

以前に書いたことを若干整理しました。

コンパクトでない集合上で定義された連続関数に関する最大値・最小値の存在およびその値に関する定理です。

以下、3次元ユークリッド空間および3変数の関数で考えます。

ここでは、calc集合、calc操作、calc関数を定義し、この3つの定義およびこれから導かれる一連の関数から不等式を証明する仕組みを、「calc原理」ということにします。

標語的にあらわすと、
 calc原理=calc集合+calc操作+calc関数 で証明する仕組み
となります。

この原理を使うといろんな不等式が簡単に証明できます。

詳細はこちら(長文)。
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2004年07月01日

不等式落穂ひろい3

今日は簡単です(多分)。面積の比較で考えてください。

「f(x)は x≧0 で定義された関数で
・連続
・狭義単調増加( c > d ならば f(c) > f(d))
・f(0)=0
を満たすものとします。このときf(x)の逆関数g(x)が定義できます。このとき、g(x)も連続かつ狭義単調増加です。

今 任意の2つの数 a , b >0 に対して、不等式
 ab≦∫[0,a]f(x)dx + ∫[0,b]g(x)dx
が成り立ちます。等号は b=f(a)の時に限ります。」

この不等式の右辺の最初の定積分は、区間[0,a]でf(x)の積分値、2番目の定積分は、区間[0,b]でg(x)の積分値です。

この定積分を含む不等式を”Youngの不等式”と言います。

当たり前ですが、a , b , f(x) , g(x) をいろいろ変えるといろんな不等式が作れます。皆さんもいろんな不等式を作って楽しみましょう。

”Youngの不等式”はそのグラフを書き、その面積を比較すると解ります。具体的応用例はこちら。  続きを読む
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2004年06月30日

不等式落穂ひろい2

昨日書く予定の内容を今日書きます。
凸関数(凹関数)の続きです。

凸関数を使った不等式の例:

「n > 1を正の整数, a_1,a_2,...,a_n を正の数、S=a_1+a_2+・・・+a_n とおくと、次の不等式が成り立つ。

(1+(S/n)^2)^(1/2)≦{(1+(a_1)^2)^(1/2)+・・・+(1+(a_n)^2)^(1/2)}/n . 」

補足事項はこれ以降。
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2004年06月28日

不等式落穂ひろい1

今週は不等式(および証明方法)を別の観点から見てみます。

今日は凸関数(凹関数)です。

まず、定義から。

(凸関数の定義)
開区間(a,b)で定義された関数f(x)が、0≦λ≦1なる任意のλおよび、開区間に含まれる x , y に対して、
 f(λx+(1-λ)y)≦λf(x)+(1-λ)f(y)

を満たすとき、f(x) は凸関数であるといいます。

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2004年06月26日

相加平均・相乗平均 その10

今日は相加平均・相乗平均・調和平均を含む不等式で、微分を使わないと証明できないことがらです。
(もし証明できなくても、相加平均、相乗平均、調和平均がどこに出てくるか、を理解してください)

簡単のため2変数で説明します。

a > 0 , b > 0 を正の定数とします。

まず、変数 t > 0 に対して関数f(t)を、

f(t)={(a^t + b^t )/ 2)}^(1/t)  (t > 0)

と定義します。

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2004年06月25日

相加平均・相乗平均 その9

今日は相加平均・相乗平均の拡張された不等式を。

まず、a , b , c を正の数とします。
S(3,1)=a+b+c
S(3,2)=ab+bc+ca
S(3,3)=abc

このとき
(S(3,1)/3)≧(S(3,2)/3)^(1/2)≧(S(3,3))^(1/3)

が成り立ちます。両端を取ると、
(S(3,1)/3)≧(S(3,3))^(1/3)
すなわち、n=3 の場合の(相加平均)≧(相乗平均)となります。

証明はこちら。  続きを読む
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2004年06月24日

相加平均・相乗平均 その8

どんどんマニアックな世界に行きます(爆)

今日も相加平均・相乗平均の別証明を。微分およびn=2の場合の相加平均・相乗平均の不等式を使うものです。予想外の不等式も得られます。

記号の定義から。

a_1,a_2,...,a_(n-1) を(n-1)個の正の数、x > 0 とします。

このn個の相加平均・相乗平均をそれぞれ、A(n,x),G(n,x)とおき、一方 a_1,a_2,...,a_(n-1) の相加平均・相乗平均をそれぞれ、A(=A(n-1)),G(=G(n-1))とおきます。

x > 0 のとき、 f(x)=A(n,x) - G(n,x) の最小値≧0 を証明の目標にします。

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2004年06月23日

相加平均・相乗平均 その7

相加平均・相乗平均の不等式証明で、今日は微分および数学的帰納法を使う方法を。

まず、n個の数 a_1,a_2,...,a_n の大小関係について、a_1≦a_2≦a_3・・・≦a_n と仮定してもよいことがわかります。

なぜなら、この相加平均、相乗平均をそれぞれ A(n,a_n),G(n,a_n)とおくと、A(n,a_n),G(n,a_n)は対称式なのでn個の数の任意の入れ替えに対しても変わりません。したがって、順序関係の仮定はA(n,a_n),G(n,a_n)の値に(したがって大小関係に)影響しません。

また、(n-1)個の正の数 a_1, ...,a_(n-1)の相加平均・相乗平均をそれぞれ、A(n-1),G(n-1)とおきます。

数学的帰納法の仮定より、A(n-1)≧G(n-1).

次に、n個の数のうち、最後のa_nを変数 x に置き換え 、f(x)=A(n,x)^n - G(n,x)^n とおきます。

B=(a_1+a_2+・・・+a_(n-1))/(n-1)=A(n-1)と置くと、結局、

x≧B ならば f(x)≧0

を証明すればいいことがわかります。

ここまでくるとあと少し。証明はこちら。  続きを読む
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2004年06月22日

相加平均・相乗平均 その6

今日は、「うまいこと考えよるなー」という証明を。Polyaによる。(ポーヤ、または、ポリアと呼ぶ)

(証明)
まず、補助の不等式、

 0≧x≧-1 のとき 1≧exp(x)≧1+x

を利用します。(exp(x)は指数関数で、e は自然対数の底=ネピアの数)。このとき、等号は、x = 0 のときにのみ成り立ちます。(本当はこの不等式、微分を使って証明すべきなのですが、正しいと認めて先に進みますーできる人はしてみてねーと言って逃げる)

a_1,a_2,...,a_nをn個の正の数とします。
そして A(n),G(n) をそれぞれこのn個の数の相加平均、相乗平均とします。

 x_i = a_i/A(n)(i=1,2,...,n)
とおくと、
0≦exp(x_1+x_2+・・・+x_n - n )
=exp(x_1 - 1)exp(x_2 - 1)・・・exp(x_n - 1 )≦1

一方、補助不等式から
exp(x_i - 1 )≧1+(x_i - 1)=x_i

したがって
x_1・x_2・・・x_n≦1
ところが、x_i=a_i/A(n) から
G(n)^n/A(n)^n≦1

∴ G(n)^n≦A(n)^n   G(n)≦A(n). Q.E.D.

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