2007年02月17日

枯レ花堂の新人

この日、枯レ花堂ギルド本部にて集団面接が行われ、登録所から3人がやってきた。

牡丹、梅の向かいのテーブル席に3人が座る。
「登録名を右の方からどうぞ。」




「やなぎ。」
カースメーカーの男の子が小さな声で呟いた。

「桐、です。」
こちらはブシドーの女の子。どこか動きが固い様子だ。

「私の名前は〜これから〜桜〜サクラ〜♪」
ギターを弾きながら、バードの女が歌いだす。

「桜さん、こういうところで演奏はちょっと…。」
梅が演奏を止めるように促す。だが…

「えぐっ…」
手を止めて半泣きになる桜。

「…はいはい、自己表現手段としては何をしてもいいですよー。」
見かねて牡丹が進めると、桜は満足そうな笑顔で演奏を再開する。

「では、志望理由をお願いします。柳さんからどうぞ。」

柳は素っ気なく答えた。
「ここしかとりついでもらえなかったから。」

(あの眼帯め…それはまあ、モリビトと戦う覚悟があれば誰でもいいって言ったけど。)
牡丹はしばらく黙って、とりあえず先送りすることにした。
「…分かりました。では桐さん、どうぞ。」

エトリアに来て間もないのだろう。どこかカタコトな口調で言った。
「死に場所、探し。」

(…この人、勝つ気ないですよね。)
梅はこの後どれだけこの異国の女剣士に蘇生措置をするのか、少々気が滅入った。

「桜さん、あなたは?」

「らあぁ〜ぁ〜ららぁ〜らりららるるりらぁ〜♪」
歌っているだけだった。

(もはや意味が分からない…)
2人はしばし、閉口した。





「はい。では特技を柳さんから。」
どこかぶっ切れた牡丹が話を進める。

「のろい。」
一言つぶやいただけだった。

「いや…柳さん。それだけだとちょっと…」
梅がそう言うと、柳は袖から黄色い小さな玉鈴を取り出した。
これがカースメーカーの使う呪いの鈴だ。
柳はそれを取り出すと、指でつまんでその音を鳴らす。

チリッ…チリッ…

「…何も起こりませんね。」
牡丹がそう言いながら柳に目を向けると、柳は牡丹を睨み返し、
「ずつうが、いたい。」
と、文法的に間違ったことを言った。

「く…この感覚は…」
牡丹が頭を押さえて唸る。

「だ、大丈夫ですか牡丹さん。」
ただならぬ雰囲気の牡丹を、梅が心配そうに振り向くが、

「大丈夫、アイスを一気に食べて頭が痛くなるくらいの感覚だよ。もう感覚が消えてきた。」
どうやら梅の心配は杞憂のようだった。

「さて、柳さん。これ以上のことはできますか?」
気を取り直して牡丹が尋ねると、

「しゅぎょー。」
とまた、実にシンプルな答えが返ってきた。

「…いいでしょう、採用します。」
こうして、柳は枯レ花堂に所属した。




「では、桐さん。特技をどうぞ。」
続いては桐の番だ。

「刀で、何でも斬る。」
綺麗な鞘に入った異国の剣が目の前に差し出される。
牡丹はそれを手に取り、鞘から取り出した。
その白銀の鋭利な刃が…見えなかった。

「これは…木製ですね。」
「じゅぴたー」
「柳さん、そういう意味じゃなくてですね。」
何だこのボケつっこみ。
それはさておき、彼女の持っていたのは竹刀だった。

「本物は、その…おなかがすいて。」
どうやら、餓えを凌ぐために商店で換金したようだった。
牡丹と梅は、呆れていた。

「士道不覚、ご免。」
そう言って、袴の懐から小さな筒を取り出す。
それを手に取って、二つに分けるとその片側には銀色に光る刃が見えた。
異国のナイフだろうか。

「な、何をするつもりですか桐さん。」
少々うろたえながら牡丹が尋ねる。

「腹を、切る。」
「だ、誰のですかっ?」
「私。」
そう言うと異国の少女は、その刃を自分の左の脇腹に突き刺し、一気に右へ引いた。
当然、あたり一面に鮮血が流れ出す。
「あの…」
腹を切っておきながら、また何かを言おうとした。
(早く…介錯を…)

惨劇から1時間後…梅の医術で、桐は何とか一命を取り留めた。
ベッドに横たわる桐を見下ろしながら、牡丹は言った。
「あー、よくわかりました。その、恥は見なかったことにして、刀は枯レ花堂から支給します。つまり、採用です。」
「かたじけない…。」
桐は少し息の切れそうな声で、御礼と思われる言葉をつぶやいた。





「あのー、すいません。私はどうなるんでしょうか?」
そういえばいたな。演奏するのに飽きたのか、桜はギターケースを持って遠慮がちに座っていた。
ギターを弾いてないときは普通に話せるようだ。

「武器を使えますか?」
「ギターの他に弓を引けます。」
「モリビトに立ち向かう勇気は?」
「それはもう、バッチリですっ。」
「よし、採用。」
アッサリ終わった。

「さ、採用ですか?やったっ!ではここで喜びの歌を一曲」
「別にしなくてもいいんだけど…。」
「えぐっ…」
「わかったわかった、もう勝手にやってくれ。」
「はーいっ!」

能天気な歌が一面に響き渡り、これから先どうなるのか心配になった牡丹と梅であった。




cale000 at 19:27│Comments(0)TrackBack(0) ゲーム 

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