120年前といえば、気の遠くなるような昔になります。
文明開化の鐘の音がようやく静まり、日清戦争に勝利した直後であり、先進国への仲間入りに向けてひた走っていた頃になるのでしょう。
そんな時代にできた民法が、発展を遂げた現代においても使われてきたのですから、驚くしかありません。
人権や意思の主張など思いもよらなかった時代に作られた民法ですから、権利ばかり主張する現在に合わせて、『意思能力』について、今回の改正では大きく見直しをされました。
ご存じだろうと思いますが、多くの先進国を見習い、成年の年齢が18歳からになります。
ただし、この4月1日からではなく、2022年の4月1日からということです。
選挙権の年齢は、平成28年から18歳に引き下げられていますので、間違わないようにしてください。
若者の自立を目指し 社会参加を増やして、若々しい社会にすることが目的らしいですが、この改正について色々と考えなければなりません。
18歳,19歳という、成長期の2年は、様々な能力を身に付けるタイミングであり、精神的にも大きく成長する時期になります。
この時期に、成年として、権利と義務を背負うことになるのです。
早く成年になれて、一人前の権利を履行できるようになったと喜ぶべきなのか・・・。
成年として、大きな義務を持たされたと考えるべきなのか・・・。
たしかに、未成年であった今までは保護者の庇護の下で、何重ものバリアーに守られてきました。
ところが、成年になると、突然に全てのバリアーが取り除かれてしまうのです。
全てが、自分の思うがままに、取引し契約もできる様になるのは嬉しいですが、置かれた環境が激変し、バリアーのない野に晒されるという現実を忘れるわけにはいかないでしょう。
成年としての権利を得るということは、大きな義務も背負うということなのです。
しかも、なぜか、たばこやお酒は20歳からなのです・・・。
今回の民法の改正では、まず、意思能力について明文化をされました。
意思能力とは、自分がする行為の意味を理解する能力のことになります。
意思能力のある人が、法律行為をすれば責任を負うべきだということであり、そんなのは当たり前のことだと思えます。
言い換えれば、意志能力のない人が法律行為をしても、無効になって当然だということになります。
この点について、判例では認められていましたが、民法に規定がなかったため、今回の改正で意思能力のない人の法律行為が明文化されたのです。
意思能力のない人として、未成年者など様々な対象が存在しますが、ポイントとなるのはご高齢者ではないでしょうか。
120年前という明治時代は、平均寿命が44歳という記録があるほど、今とは比較のしようがないほど平均寿命は低かったようです。
こんな時代に、意思能力を欠くほどのご高齢者は少なかったでしょうし、認知症という認識さえ存在しなかったほど、現在とは状況が乖離していたと思います。
したがって、ご高齢者や認知症など判断能力の低下した方にとって、この民法改正は大きな効果が見込まれるでしょう。
社会問題化していた、ご高齢者への訪問販売なども、無効になることが明文化されたのですから、高齢者社会を迎える環境において、不可欠な改正だといえます。
日本文化の特徴は、恥を知る秩序であったと思います。
人権や意思能力などについて、わざわざ明文化する必要などないそんな時代に民法は作られ、問題なく活用をされてきたといえるのでしょう。
しかし、今は、時代が違います。
時代の変化に合わせた改正ですから、時代に生きるものとして、しっかりと理解していかなければなりません。
次回は、大きな改正点である消滅時効について、掘り下げて考えていきたいと思います。
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