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この町には石材の調達でたびたび訪れていましたが、今回はPCaの製造サポートで約10か月の滞在でした。中国で長期滞在した都市は上海市・蘇州市呉江・東莞市虎門鎮・大連開発区(短期が何度かですが)そしてこの南安市水頭鎮となりました。中国は広いので各都市で人も違えば食事も文化も違います。ざっくり言うと上海は商売っ気満載、大阪みたいな町。大連は朴訥とした田舎の大都市。東莞は改革開放後急発展した工場地帯ですので若者が多く殺伐とした感じです。この街は基本的に地方労働者の街ですので治安は今一ですが、住んでみると南国のおおらかさがあり果物も豊富。食事も嫌いでなく意外といいもので離れた今となると懐かしい街になりました。東莞の一斉摘発で夜の人たちがここになだれ込んでいるとのうわさもありましたが、それを感じたことは一度もありませんでした。ちなみに中国の食事で一番口に合わないのは「上海料理」。日本にある上海料理はほぼ偽物で、本場ものは日本人にとってはいまいちだと思いますね。

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さて本題。この町は厦門空港から車で1時間、約30km離れた石材の街。人口は14万人の小さな(?)地方都市ですが町の歴史は古く4千年ほど、港町として発展してきたとのことです。石材関係企業は1000件以上。7万人以上が石材の仕事に従事しています。中国での市場占有率も40%ですのでものすごい量がこの街から出荷されています。

恐らく日本に入ってくる石材の半分以上はここから入ってきているだろうと思える世界で最も石材加工が栄えている街です。街に入るとどこもかしこも石材ばかり。その影響で埃っぽいのなんのって。道路もトレーラが行き来するのですぐぼろぼろ。特に暑いところなのでアスファルトなんて使ったらすぐにへこんでしまいます。
日本での石材加工は早くから中国にシフトしてしまっています。それは一番使われる建築用石材である御影石(花崗岩)の原産が中国が多いからです。建築の石材を扱ったことのある方はご存知かと思いますが、御影石には名前があるのですが中国原産はG●●●と言う品番で売っている商品があります。Gの後の数字が省の名前例えば3=山東省でここ福建省は6から始まります。しかし最近になって環境問題もあり中国でも石材を取ることが禁止されてきています。有名な真っ黒な山西黒はもう閉山とのうわさもあり今や塗装した偽物が出回るくらいのプレミアム石材です。もう原石も取れなくなっているのでこの辺りの大きな工場ではモンゴルやアフリカの石切り場を買って原石を輸入して加工している状態です。

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加工業が盛んなので各問屋さんにはいろいろな原石があります。この問屋さんはイタリアが得意とか、イランが得意、ブラジルが。なんて感じですし、中国産でもどこその地方が得意だよなんて言ってきます。
原石のストックヤード、加工コストを考えるとこの産業が国内に帰ってくることは考えにくいような気がします。日本の若者も石の加工職にはあまりなりたがらないでしょうし。ネットなどでは中国から日系企業は全て撤退すべきだ!なんて威勢のいい声が聞こえてきますがこと石材にとってはまず絶対無理と言い切れます。
ただ少し気になることがあります。中国の労働者も最近は嫌な仕事はやりたくないと言い出しています。ですから石材をノミで叩いて仕上げるなんてやりたくないわけで、工場の社長から「この工場で一番給料が高いのはノミで叩いている人ですよ。彼は車で通っていますよ」と聞きました。いやはや時代は変わるものです。

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SHUI (1)SHUI (2)街を歩けばそこかしこに石材市場があります。市場では多くがスラブ材という15㎜程度に薄くスライスしてすぐに使えるような状態で売っています。原石では中身がどうなっているのかはわかりませんしいちいち注文取ってから加工なんて面倒。偽物も納品されてしまうこともあるでしょう。中国ではマンションは基本的に内装付ではないので自分で施工(もちろん内装業者ですが)をします。ですからこういったところで自分で材料を見て買う習慣があるのでより市場が栄えるわけです。築地市場みたいに目利きがいたりして。

市場を見ると超変な模様の石材を見ることもできます。これらを見て回るだけでも面白いです。ただ以前この市場で私のお客様が二人乗りバイクにバックをひったくられたことがあります。市場内ではありますが治安は悪いので十分ご注意ください。地方労働者が多いことが原因でしょう。
最近ではこの町も中国の建築不況の影響を受け湿りがち。シャッターも目立つようになりました。地元の人は「最近は渋滞も無くなったよ」と言っていました。

10か月の滞在期間中地元の人に「エーこの街に日本人が住んでいたんだ!」と驚かれました。「日本人と話するの初めて!」と喜ばれ?もしました。確かに街の中で日本人にあったことがありません。「日本のお金見せてよ」というので1000円札を見せると「ちょうだいよ!」と冗談じゃないので100円硬貨を上げると「宝物にするね」と喜んでくれました。わたしももう中国にそれなりに滞在していますが反日を感じることはほとんどありませんし地方の人たちは決して憎む存在ではないです。日本では石材は買っているのですが管理する駐在員はここには住まずアモイ市内に住んでいますし、接待もアモイ市内に戻ってからするのが一般的。欧米系は街に1件だけあるマクドナルドには多少いましたが単独ではなく中国人のおつき同行。外資で目立つのは韓国系。ハングルは時々見かけますしカフェや韓国料理屋を数件開いていてここでもゲリラ的な活動に気づかされますし韓国でも石材はこの町から買っていると気づかされます(当然ですけど)。

RIMG0042RIMG0226日本で石材と言えばお墓用。ここでもかなりの量作っています。幻滅するのでお見せするのもはばかられますがこのように色々な掘り込みまでしてくれます。日本人からは中国製は・・・なんて話をよく耳にしますが自分のお金でお墓を買うときは安いものを選んでみたりします。そういった製品は中国で作られていること自体知っているはずで業者も安く作ったほうが売れるのでこういったローカル工場で作らせます。日本人がいくら格好いいことを言っても結局はこうなるのだとこの光景を見るたびに思います。えにし。。かぁ 石の上を汚い靴で乗ったのでしょう。足跡がなんとも縁起が悪いしご先祖様に申し訳ない。


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街の中にこれと言った観光地はありませんが街の東側湖の中に石でできたやたらと長い橋があります。バイクで渡れないので結局は渡りませんでいたが航空写真で見てもかなり長いことがわかります。五里橋と安平橋です。古代にできた梁式の橋としては世界最長。長さ2070m 幅3.5m 1個の石の大きさは5m~11m。重量4から5トンで最大の物は25トンあります。1133年南宋の時代に作られ明清の時代に何度か修理がなされているようです。上海近郊江南にあるアーチ状の橋は見慣れていますがアーチ構造は比較的新しく江南でも古いものはこの様に梁式です。
途中ですが場所です。アモイ(厦門)は台湾の丁度対岸にあります。方言は闽南語(ミンナン)夏はとても暑いところで3月から11月までは平気で30度を超え湿度も高く快適なところではありません。中国が内部で王朝が栄えていた時代、この辺りの人は迫害されていて多くが海外に商機を見出して移っていきました。それが俗にいう華僑です。客家もこのエリア出身。現国家主席習近平もこのエリアのトップをしていました。漢民族で力をつける人の多くはこのエリア出身の人が多いのは歴史が物語っています。商売っ気が強く、中国人からも「福建省の人はウソツキが多い」と言われ有名です。これにはやっかみも入っていると思います。

グーグルアースで見ると白い塊があることがわかります。この多くが石材の工場です。左下に見える厦門空港のあるアモイ島は直径約15㎞ですのでこの白い塊がかなり広範囲だということがわかりますしこのエリアが日本の石材業界を飲み込んでしまったと言えます。ちなみに水頭の下で海を越えた島が見えますがこれは台湾領の金門島です。短期ビザが切れた場合、厦門島から船でここに渡ればビザが延長されますので石の工場で駐在するおじさんたちはよくここを訪れます。水頭鎮の東部をアップしてみるとながーーーーい石の橋があることがわかります。


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少し遠いですが有名な土楼(世界遺産)もこのエリアの有名な観光スポットです。





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この地区の農産物は何といっても季節の果物。特に一年中食べられるバナナは本当においしい。赤バナナはもっとおいしい。この地区では輸出用のように青いうちに取るのではなく完熟してから取るので甘みも強く最高です。柚子はザボンのような大きな柑橘系で11月から1月頃までが食べごろです。左の写真はマンゴーのジュース10元(150円)右はドリアンを練り込んだ饅頭です。かなりおいしいですがげっぷをするとその味がするのが難点。

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厦門近郊は何といっても海産物が有名。特にカキが有名です。それを使ったルーメンと言う煮込み拉麺は絶品です。日本の長崎ちゃんぽんみたいな感じ。ひょっとしてこの辺から伝わってきたのかもしれません。このルーメン中国でもこの地区以外では見たことがありません。いかれた際にはぜひご賞味ください。(卤面)と書きます。卤は煮込むの意味。

街中のレストランでコックさんの募集をしていました。この辺りは人材不足。こんな田舎町でも月給6000元(約10万円)とは。中国の人件費の高騰を感じる瞬間です。

厦門空港から帰国です。厦門もどんどん発展しています。島の中のマンションは高くて手が出ません。