今回のPRADAはスーパーブランドのショップがかっこいいとかいうのとは全く違います。本題に行く前に今週のトピックスから。
来週から一大イベントの中国輸入展覧会が上海に新しくできた虹橋国際展示場で行われます。習近平主席も来るなど上海では休日が変更になったり、展示場の周辺の住民は政府がお金を払って旅行に行くよう言われたりもう大変なことになっています。新聞報道では安倍首相の訪中に伴い手土産として日本とたくさんの契約が結ばれたとの報道がありました。日系企業が成果を上げることは結構なことだとは思いますが、2000年代初頭のバラ色の中国はもうないことは気を付けなけならないと思います。駐在員仲間からも「あの頃はよかったねぇ」とよく話をします。当時(2005年ころ)は日本のデフレに伴い中国にこぞって進出しました。人件費の安い中国は製造拠点としては魅力で日本ほどのものは期待できないし苦労はするけれど何せ安かった。石材などは利益70%なんてこともあったくらいです。しかし現在は輸送費を含めると日本で作ったほうが安い時代、人件費には差があるものの歩留まりやリスクを考えると決して中国で作ることにメリットはなくなりました。

rq今回のテーマは上海PRADA「荣宅」です。この名前だけ言ってもピンときませんが観光地を見て回るときにただそこを見て帰るだけではなく、なぜそこにあるのか、誰がそれを作ったのかなどを知ればより面白くなるものです、この建物もその一つ。上海の歴史がぎゅーっと詰まっています。上海市内にはお金持ちや革命にかかわった人の邸宅はいくつか残っていますがこの建物はその物以上に残す理由が別にあるように思えます。現在は首題の通りイタリアのPRADAが買い取り保存リニューアルしています。荣宅とは荣(ろん)さんの邸宅という意味です。荣さんって誰?
租界時代、魔都と呼ばれたこの町は列強国の支配下にあり港湾権益は外国勢力が握っていました。同時に中国人の有力者が外国勢力とつながり闇の社会を形成していました。

建物概要e
「1918年竣工 中国人設計士 陳椿江の設計 鉄筋コンクリート造独立型庭付洋風一戸建て フランス古典主義様式 もともとはドイツ人の施主のもと作られたが第一次大戦でドイツが敗戦したことで帰国したためその後中国人実業家荣宗敬氏(※1)に買われている。終戦後しばらくは民主党の施設として使用され、その後改革開放後九事集団(※2)に渡った」敷地面積6.26ムー(4100㎡)建築面積2182㎡ 庭面積2275㎡







6d81800a19d8bc3eec5c63c5828ba61ea8d3456c※1 荣宗敬 江蘇省無錫出身 弟の荣徳生とともに国民党時代は綿花王、小麦粉王と呼ばれ中国最大の実業家と呼ばれ当時小麦工場3綿花工場9を所有していた。満州事変後日本から綿と小麦が大量に入ってくると急速に事業が縮小する。終戦後家族が回復をはかるが業績は回復しなかった。孫の荣智健氏は香港コングロマリット集団 中信泰富の社長を務めている。
※2 九事集団:上海政府系投資会社。資本金600億元、総資産4600億元、従業員約7万人。不動産開発の他 上海バス集団 強生タクシー 上海交通カードなどの子会社を持つ。2004年竣工ノーマンフォスター設計の九事大厦はダブルスキンファサードで有名。



スクリーンショット (82)2008年旧「上海灘」をリメイクした連続ドラマ「新・上海グランド」(全49話)は中国でも大人気でした。この中に出てくる大ボス馮敬堯(李雪健)はこの人と黒社会の大スター杜月笙,その兄貴分黄金荣がモデルです。配役もさすが中国。むちゃくちゃ感じ出ている人が起用されています。このドラマを見た後だとよりリアルですのでご覧になってみてください。中国語字幕しかありませんがyouTubeでも一部UPされています。

ドラマの中では上海郊外の綿花生成工場に言いがかりをつけて破壊しようとする場面が出てきます。経営者は実直で労働者からの信頼も厚い人物。この大ボスは上海の租界で力を持つ国際会議への参加権を得るために、フランス人のワル・デュポンの狙う工場の土地を奪いに行くのです。派遣された主人公許文強は最初は暴力で取るつもりだったのですが、経営者の人柄に惹かれ力ずくでも取れとのボスの命令に背く。とこんな感じのストーリーです。きれいな内容ですが実際の黒社会はかなりえげつなくやっていたのでしょう。フランス人にそそのかされて中国人が中国人をいじめるところはリアルで、今でも上海人は外資とつるんで地方労働者を差別し安い労働力で使い、投資で収益を上げているわけですから構造は全く同じです。「あなたも私も中国人。祖国を思う気持ちは同じだ!」とのセリフが主人公から発せられますが、当時上海はおそらく今のような国家観はなく国民党と共産党が内戦をしていた時代で国家みたいなものでしたので無理があるセリフです。こういったところがあるから中国のドラマがプロパガンダと言われてしまうのです(そのつもりでしょうが)。ちなみにこのドラマの中にもお約束の悪い日本人が登場します。それに関わる日本人の表現があまりにひどくて中国国内でさえも物議を醸しだしたようです。実際めちゃくちゃ。ドラマの後半はにっくき日本人が大活躍。中国人大喜びのネタ満載ですので是非ともご覧いただきたいドラマです。

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当時この門の前には手下や用心棒が警護していたのかと思うとぞくぞくします。門の装飾がゴールドなところは当時の栄華を物語っています。











IMG_20181020_151530IMG_20181020_151228この建物中国の観光客もたくさん見学に来ていました。しかし残念なことに現在この建物は見学不可のようです。ですから観光客は仕方なく外から写真撮影「今は見れないのですか?以前は見れたんですよね」と写真右端のおじさんに聞いたら「特別なことがない限り開けないよ」と言われました。残念。。実際最近までは見れたと思います。提篮橋監獄とともに最も心残りな施設ですね。

スクリーンショット (96)悔しいので航空写真とネットから拾った写真でお届けします。







周辺は上海きっての高級エリアですので周辺道路の外装もきれいに補修されています。
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IMG_20181020_151452「新・上海グランド」では準主人公の丁力が最初は梨売りをしていました。右の写真のおっさんはそれを分かってここでジュースを売っているのでしょうか。ちなみに上海は露天商が禁止されているので警察に見つかったら怒られます。ドラマの中でもチンピラが「俺の島でナシなんか売りやがって!」といちゃもんを付けますがこれも全く今と同じ。実はこの丁力にもモデルがいます。先にも出てきましたが張嘯林、黄金栄と並ぶ上海三大暗黒街ボス杜月笙です。中国秘密結社「青帮」のボスでした。杜月笙は若いころ梨売りをしていたので設定もばっちり。杜月笙はあまりに人気なのでキャラクターを2分割してもストーリーが成り立つ大物と言えるでしょう。「青帮」は実は今でもある場所では影響力を持っています。これについてはまた改めて紹介いたします。

スクリーンショット (81)地下鉄2号線12号線南京西路駅から徒歩5分ほどです。南京西路を西へ向かい陕西北路の交差点に着いたら左折、50mほどです。この道は現在陕西北路と呼ばれていますが租界時代は西摩路(Seymour Road)と呼ばれていました。少し北には宋慶齢の自宅もあり青帮の大ボス黄金荣の妻林柱生もこの道沿いに住んでいたました(中国では道の名前には都市名を付けていることがよくあります。その中でも延安や陕西は共産党の初期活動の拠点でしたので特別な意味を持ちます)現在は商業街として上海でも最も高級なエリアになっていて高級時計やブティックなどが軒を並べています。これは歴史上この周辺に上海で暗躍する商人や政治家がたくさん住んでいたことと無関係ではないのでしょう。手前にある梅龙镇广场は現在日本の伊勢丹が運営しています。民主党施設、中信広場が近くにあるのも当時からの歴史の延長だということがわかります。

スクリーンショット (297)
このシリーズ数回ありますのでお楽しみに!







IMG_20181022_14475410月23日の浦東国際空港です。ここでも輸入展覧会のことが表記されていました。ここまでやらんでもいいでしょう。