July 16, 2005

大銀座落語祭<究極の東西寄席/Aブロック・正蔵・仁鶴・志の輔>

7/16-18の3連休は年に一度の落語の祭典。仕掛け人はもちろん"六人の会"。
今年は上方落語からの援軍も大挙参加して、ふだんは中々見られない
豪華顔合わせが実現しているのも魅力。

中でも<究極の東西寄席>は、志の輔や小三冶師匠ら東西人気落語家が
こぞって出演するとあり、前売は早々に完売御礼の大人気公演。
きょうのAブロックも正蔵・仁鶴・志の輔という豪華布陣…だったのに
なぜか会場をガスホールと勘違い。しかも新橋からの道を間違えて
正蔵は間に合わないという体たらく。

2幕明け、仁鶴の会からの演目は
正蔵の芝居ばなし挑戦 
・笑福亭仁嬌「こぶ弁慶(一幕目)※前座
・笑福亭仁鶴 「壷算」
・立川志の輔 「井戸の茶碗」

上方落語といえば“見台・小拍子・膝隠し”
(小さな机、拍子木、見台の前に立てる低い衝立)
これまで三枝師匠の新作モノしか聞いたことがなかったので
初めて観る正統派、という感じで嬉しい。

場面転換時に“コーン”と拍子木が鳴らされるのは講談師のようだし
ト書き無しで主要人物の会話でほとんど筋が成り立っていくところも
より演劇的というか噺によっては漫才に近い感じ。
”はめもの”(演目中に挿入される、盛り上げ用のお囃子)にしても
上方落語のほうが、より娯楽性を重視しているみたい。

壷算、江戸落語よりも会に出るまでの振りが長いのだが
へっついさん(竈)の上のほてさん(布袋様)の描写などなど
江戸長屋とはまた違う、生き生きとした生活感が伝わってくる。
仁嬌さんも仁鶴師匠も、ボケ突っ込みに味があって
のんびり/ちゃっかりした浪花気質の2人組みが浮かぶよう。

ひとしきり笑った後で、主任・志の輔登場。 
郵政民営化など時事ネタでほぐしてから“くずぅ〜ィ“と噺に突入。

井戸の茶碗
正直者の屑屋・清兵衛さんが取り持つ、ちょっといい話。
貧乏浪人千代田卜斎から200文で引き取った仏像から出てきた50両。
買い取ったお侍高木佐太夫もまた誠実な方で
“武士の心意気をかけて受けとれない、返して参れ”と清兵衛に命じる
誇り高い浪人は
“200文で売ったものから何が出ようと拙者の預かり知るところではない”
…平行線の話を収めるため、卜斎から佐太夫へと渡った使い古しの茶碗。
これが佐太夫の仕える、細川のお殿様の目に止まって。。。

細川家は昔から茶碗好きなのね、と
護煕氏の顔を思い浮かべてほくそ笑んだのは私だけではあるまい。


落語での武士は偉そうな存在として描かれることが多い中、佐太夫も、
浪人の卜斎も、正直者の清兵衛さんも皆気持ちの良い人物ばかり。


登場人物はみんな善人、
嬉しいサプライズばかりが起こる、
そしてハッピーエンド、というお祭りにふさわしいお話。

演者に恵まれて、浪速の陶器屋の店先と、江戸長屋の暮らしへと
タイムトリップしてきたような2時間。
庶民の誠実な暮らしや心意気を伝えるという意味において
落語とは話芸であり、和芸なのだと思う。

+あらすじと解説+
『壷算』(上方落語)←仁鶴師匠のはこちら
『壷算』(江戸落語)
『井戸の茶碗』

この記事へのトラックバックURL