2013年06月22日

Yahoo! トップニュースの規制反対記事に反論 1



ここ最近、児ポ法改正案の動きがあわただしくなっていて、
5月29日に自民・公明・維新の会が衆院に法案提出、
6月3日に衆議院法制局のサイトに概要などが公開された。

概要    要綱     新旧対比表
   (いずれも PDF)

このような動きに前後して、いつものように規制強化を懸念する声が
各所から相次ぎ、5月27日には Yahoo! のトップページに
こんな記事のリンクが張られていた。

児童ポルノ禁止法改定の真の目的は何か? 
単純所持禁止、マンガ・アニメ「調査研究」への懸念
(ITmedia ニュース) - Yahoo!ニュース

      (web 魚拓)

正直言って、そこに書いてあることは規制反対言論としては
かなり陳腐かつ幼稚な煽動にして類型的で、
いつもならこんな 2ch に転がってるレベルのたわ言を
いちいち取り上げたりしないのであるが、
Yahoo! のトップページに紹介されていたという、その影響力と、
最近この議論に加わった児ポ法初心者に向けたテキストとしての
意味を考慮して、幸森軍也氏というマンガ業界に身を置く人らしい
この人の記事に特別に批判を加えてみたいと思う。


幸森氏の主張を貫いているのは、「国家権力はとにかく悪」 という
思い込みである。
どこがどういう風に悪なのかとか、どういう理由で国家権力が
そんなムチャをやらかそうとしているのかとか、そういう説明は一切ない。
そんな事は常識以前、ごく当たり前のことだから、
説明する必要などないと思っているのだろう。

しかも、幸森氏の国家権力に対する悪いイメージは、
良くあるパターンの実在の独裁国家とか、戦時・安保闘争時の日本とか、
一応どこが悪いのかの論理的説明ができ、
そのためまあまあ現実味があるものとは違い、
アニメやマンガに出てくる 「世界征服を目論む悪の軍団」 的な
幼稚かつ荒唐無稽さに貫かれているように見える。


幸森氏は、このまま児童ポルノ法が改正されれば、
政府に批判的というだけで投獄されたり、
ドラゴンボールが児童ポルノ認定されるようになる、
と主張する。
そんなことして権力に何のメリットが?とか、
実現可能性は低いのでは?とか、そういう問題ではない。
国家権力は悪なのだから、一般国民の害になるような悪事を
常に企んでいる。だから、どんな異常事態だって起こりうるし、
常に警戒を怠ってはいけないらしいのである。

そういう幸森氏の思考パターンを頭においてこの記事を読まないと、
悪い冗談の羅列にしか見えないだろう、と前置きした上で
主張の一つ一つに反論を加えていこうと思う。






まず、幸森氏は、児ポ法による児童の人権保護は積極的に
行うべきだと肯定したうえで、

ところが、今回の改定案を見ると諸手をあげて賛成できない案になっている。すなわち、法本来の趣旨から逸脱して、目的が変わっているのではないかと思える部分が散見できるのだ。


との懸念を示す。
そして、単純所持禁止の問題点を列記している。

(1)適用上の注意規定の明確化

 「 『本来の目的を逸脱して他の目的のために
これを濫用することがあってはならない』 と改める 」 とある。
これは次の項目 「 単純所持禁止 」 との関連で、
単純所持禁止を新設するために設けられたのだろう。
単純所持禁止とは、児童ポルノを持っているだけで
処罰するというものである。

 というのは、単純所持禁止項目を新設することで
警察の捜査権を拡大するとの指摘があったからだ。
すなわち、捜査のきっかけがつかみにくい事件では、
入り口事件として児童ポルノの単純所持を
家宅捜索のために利用できる。
たとえばマンガやアニメDVD、ゲームを購入したことのある人、携帯電話やPCを持っている人 ( つまりほとんどの国民 ) に 「 あなたは児童ポルノを持っているかもしれないので、
家宅捜索する 」 ということができるわけだ。


ありきたりな 「警察の強権捜査への懸念」 と思いきや、
ここまで非現実的なパターンもちょっと珍しい。

警察が家宅捜査をするためには、捜査令状が必要であるが、
その際に、罪を犯していると判断できる根拠となる
資料を裁判所に提出しなければならない (刑事訴訟規則第156条)。

この場合は、「マンガやアニメDVD、ゲームの購入、携帯電話やPC所持」
の事実を証明できる資料 (たとえば販売業者の取引履歴など) が
それに当たるだろうが、たったそれだけで
児童ポルノ所持の嫌疑をかけるなど根拠薄弱にもほどがあり、
とても令状発布の要件を満たすものではない。


こんな懸念は、
児ポ法の適用上の注意規定が
どうこう以前のバカげた妄想でしかなく、
いきなりこれではこの後につづく主張も
先が思いやられるってもんである。






続いて幸森氏は、このように書いている。


その過程で、児童ポルノ以外であっても別の犯罪を構成するような
証拠が出てきたら、逮捕できる。
このような事態にならないために乱用をいましめている。


これは大きな間違いで、実際には児ポ法違反で家宅捜査中に
別の違法物が発見された場合は、当然その罪にも問われなければならない。

たとえば児童ポルノ所持で家宅捜査中に、
行方不明で捜索願がでていた
児童の遺体が発見されたらどうするのか?


当然被疑者には、誘拐、殺人、死体遺棄などの嫌疑が追加されるべきだろう。

別件逮捕の合法性に関しては、別件の逮捕要件が整っているかどうかが
判断基準となる。児ポ法とてそれは例外ではない。

まさか幸森氏は、「児ポ法第3条違反だから無条件で見逃すべきだ」 
などと言うのだろうか?


それほど極端な話でなくても、麻薬や銃刀が発見されたり、
他の違法行為が露見した場合も同じである。
犯罪を犯した証拠が明らかであるのに、警察の職権濫用だから
見逃すべきなどと、常軌を逸したいいがかり以外の何物でもない。
 (もっとも、犯罪行為が明らかなのに違法捜査で無罪になった例はある)





 
揚げ足取り的になるが、いちおうこれも指摘しておく。
幸森氏は、単純所持違法化後の

警察による恣意的捜査の恐れは
(1)の条文で多少緩和されたものと見なそう。

などと言っているが、はっきり言ってその見立ては甘い。
大体、法律などと言うものは、条文通りに運用するのが当たり前であって、
適用上の注意があろうがなかろうが、最初から濫用しちゃいけないのである。

にもかかわらず、警察や検察は時として強権的で恣意的な捜査や
自白強要、証拠捏造などをやって問題を引き起こしている。
児ポ法に関しては今のところそういう問題は起きていないが、
単純所持が違法化されようとされまいと、条文がどうなっていようと、
警察は恣意的捜査をやろうと思えばいくらでもやるだろうし、
というか既に昔からやっていて、それは今後も変わらないだろうし、
その可能性は刑事罰が規定されている全ての法律に存在する。
 (児ポ法のみ突出して危険もしくは安全だという根拠は何もない)

恣意的捜査の問題は
 児ポ法にあるのではなく、
  刑事訴訟法にあるのだ。


たとえば志布志の冤罪事件では公職選挙法違反で
無実の県会議員やその運動員13名が逮捕されたが、
だからと言って 「公職選挙法を廃止しろ!」などと言う声は挙がらない。

仮にこの先児ポ法で冤罪事件が起きたとしても、他の冤罪事件と同様、
その根本的原因は警察の捜査方法の問題以外にありえないだろう。

すなわち、
こんな理由で児ポ法自体を
   問題視することが間違っているのだ。


大体、マンガやゲームを買っただけで児ポ法違反の嫌疑をかけるような
悪辣な人権弾圧をやりかねない警察が、
なんで法律ができるまでじっと大人しくしてると思えるんだろうか?
販売・頒布目的があれば、現行法だって児童ポルノ所持は違法だ。
「ネットで売るつもりだったんだろう!?」 とか言いがかりをつけて
今からでもどんどん逮捕して、自白強要すれば済むじゃないか。

幸森氏の国家権力に対するイメージが、アニメやマンガに出てくる
幼稚で荒唐無稽な 「世界征服を企む悪の軍団」 に過ぎないから、
こんな整合性、合理性の無い行動予測が成立してしまうのである。




次に幸森氏は、「法の不遡及」 についてこんなことを言う。

多くの法律では、その法律が制定されたり、
改定された後、その法に違反した場合に罰せられる。
法施行以前には遡及しないのが通常である(法の不遡及)。

理由は簡単で、日本国憲法39条
 ( 「 何人も、実行の時に適法であった行為
   又は既に無罪とされた行為については、
    刑事上の責任を問われない 」 )
で保障されているからである。

ところが児童ポルノ禁止法に単純所持禁止の条項を入れることで、
過去の児童ポルノと目されるものにまで
罰則が適用されることになってしまう。
過去に発売された写真集や漫画、アニメ、ゲームであっても、
持っていたら逮捕、罰金の可能性がある。

所持罪に関しては、そんな憲法の保障は一切されていない。
法の不遡及が認められるのは、「法施行以前の所持」 のみであって、
「法施行後の所持」 は、それをいつ入手したかどうかに関係なく、
違法行為となるのである。

わかりやすいのがダガーナイフの所持規制で、
銃刀法改正以前に入手したものであっても、廃棄命令が出されている。
所持罪に関してはそういう運用が普通に通用しているのである。


たとえば、宮沢りえの「Santa Fe」が該当する可能性が
あるといわれていたり、映画では大林宣彦監督の「転校生」が
児童ポルノになるかもしれないという。


浮世絵など歴史的なものの中にも相当するものもあろう。
将来、この規定がマンガに適用されると
鳥山明の 「 ドラゴンボール 」 すら
児童ポルノになる可能性がある。



今回の児ポ法改正案では、児童ポルノの定義に一切変更はないので、
現行で児ポ認定されていない 「Santa Fe」 や 「転校生」 が
該当する可能性は限りなくゼロに近い。

そういう事実を知ってか知らずか、「可能性があるといわれていたり」 とか
「なるかもしれないという」 とか、一体どこの誰が
どういう根拠でそんな憶測をのたまってるわけ?

幸森氏に限らず、こういうムチャな混同を意図的にやらかす規制反対派は、
「誰でも知ってそうな有名作品がヤバい、と煽っとけば、
  この問題をよく知らない一般人に対する脅しになるだろう」

などと目論んでこんな浅はかな主張を飽きもせず繰り返すのであるが、
オタクと違って一般人は、映画、ヌード写真集や
マンガ・アニメに対する執着心など
大して持ち合わせていないという事実に全く気付いていない。
おそらく、普通の社会常識を持ち合わせていれば、「ふーん」 で終わりだし、
「Santa Fe」 や 「転校生」 を所持していたとしても、
隠しときゃばれないとタカをくくるだろう。

また、その主張があまりにも底が浅く下心がミエミエであるがゆえ、
ある程度児ポ法の事を知っているアンチ反対派に簡単にツッコまれ、
ネタにされ、失笑を買う一因ともなってしまう歴史は、
ジポネットの昔からこれまた飽きもせず繰り返されているのである。


すなわち、規制反対運動に百害あって一利もないという事実に、
反対派諸氏はいい加減気づくべきだろう。
 (というか気づいている人もたくさんいるが、一部のバカが台無しにしている)


ちなみにマンガアニメの規制に関しては今回附則に止まっているため、
定義がどうなるかはわからないが、幸森氏が規制対象の可能性として 
「ドラゴンボール」 という作品をセレクトした事に関しては批判を加えておく。

仮に児ポ法で創作物規制が成立した場合、
その定義は曖昧なものになるだろう。実際にこれまで作られてきた
数々の表現規制法の定義は大抵は曖昧である。
しかしそれは、文言で一律に規定するには表現は余りに多様であり、
その定義はどうしても曖昧にならざるをえないからなのだ。

これは、厳密な定義を超えた新しい表現にも
柔軟に対応できるというメリットもある。
もちろん、警察の恣意的な解釈を許しかねないというデメリットもあるし、
わいせつ図画頒布罪などで摘発したものの
無罪判決が出た事例も少なからずあるが、
おおむね公序良俗の基準に沿った運用がなされていて、
特にそのことで国民的議論が湧き上がっているわけでもない。

しかし幸森氏のような規制反対派はそういう事実から目を背け、
ただただ 「曖昧な定義」 という一点に攻撃の焦点を合わせて
「曖昧なんだからドラゴンボールだって規制される可能性がある!」
などと詭弁丸出しのアジテートを繰り返す。
なんでそこまで極端に規制範囲が拡大されるのか?
そんな事をやって誰になんの得があるのか?
という問いに対する説明は、一切ないのが常である。

こういうのを見ればもはやハッキリしているが、
曖昧な定義をもっとも恣意的に
 悪用しているのは規制反対派であって、

政治家や警察などの国家権力では無い。

規制反対派は自分の悪事を他人になすりつけて正義面するような
薄汚いマネはやめろ、と断罪しておかねばならないだろう。



。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。2 に続く



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captain_nemo_1982 at 15:00│Comments(0)TrackBack(0)児童ポルノ法関連 

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