2014年12月14日

「ロリコンエロマンガはヘイトスピーチか否か」 への感想






表現を法律で規制する目的としては、

①人権を保護するため 個人的法益

②社会の道徳や秩序を保護するため 
                      (社会的法益


の二つが挙げられる。

近年の日本では、人権を保護する目的なら表現規制は許されるが、
社会の道徳や秩序を保護する目的での規制は
憲法違反になる、と言われてきた。
 (一元的内在制約説。ただし最近の話。
    昔なら社会的法益で規制できた)


人権の保護とは、要するにどこそこの誰それという
実在する特定の個人が被害に遭わないようにする、
という事である。保護対象が個人ではなく集団、
たとえば児童とか朝鮮人とか被差別部落出身者とかの
漠然としたくくりであれば、特定の個人とは言えないので、
それは個人的法益の保護にはならない。

だから規制反対派は、ロリエロマンガなどの
創作物規制に関しては、


「マンガのキャラに人権は無い」

「マンガのキャラが作中で性虐待を受けても、
  実在の児童の人権を侵害しない」


「社会的法益で表現を規制するのは憲法違反だ」


とだけ反論していれば、とりあえずそれで事足りた。

ところが、昨今のヘイトスピーチをめぐる状況の変化により、
それほど簡単な反論で済むような単純な話ではなくなってきたようだ。

ヘイトスピーチをめぐる変化とは、

ヘイトスピーチ「法規制を」 国連委が日本に改善勧告
      (web 魚拓)

ネットでのヘイトスピーチ動画の投稿に賠償責任
 大阪高裁が明らかに - NAVER まとめ

      (web 魚拓)

の二つである。

 (在特会裁判は、12月9日に最高裁で賠償責任が確定した)


人種差別表現とロリエロマンガじゃ話が全然違うじゃないか、
と思われるかもしれないが、重要なのは
社会的法益保護で表現規制が認められるかどうか、
という点である。
集団的人権が認められるかどうか、と言い換えてもいい。

個人的法益を保護する目的ならば、どこそこの誰という
特定の被害者が存在してはじめて表現規制が可能になる。
しかし社会的法益保護でも、民族とか人種とか国籍とか、
あるいは児童とかの漠然とした集団に対する被害であっても
表現規制が可能になるのではないか、という話である。

このヘイトスピーチをめぐる状況変化により、
ロリエロマンガなどの表現規制の実現可能性に
影響があるかどうか?について、
兼光ダニエル真氏と青識亜論氏が
twitter で見解を述べている。

ロリコンエロマンガはヘイトスピーチか否か - Togetterまとめ


まず兼光氏だが、自分個人の感情論、
と言って悪けりゃ価値観や信条に基づいて
ヘイトスピーチの定義や被害感情の基準を
狭めたり広げたりしているだけで、
その個人的見解を一般化できているとはとても言い難い。

氏は3つの主張の内の一つ目として、


                         (画像クリックで別画面表示)


と述べている。兼光氏といえば規制反対派団体の
最大手かつ老舗であったAMIの代表を務めていた人物だが、
表現の自由を旗頭に政治・言論活動をやっていた人間にしては、
あまりにも表現の持つ力を軽視しすぎているとしか言いようがない。

兼光氏にとって、表現とは人や社会の価値観に
何ら影響を及ぼさない、一過性の娯楽にしかすぎない
嗜好品程度の存在なのか?

だとすれば、そんなものを大層な理屈で擁護して見せる意味は
どこにあるのだろうか?

児童に対する性的虐待を、快楽的かつ魅惑的に描写したのなら、
それはただちに性的虐待の正当化に直結する。

「ロリエロマンガの目的は現実社会の女子への危害を与えるのが
  目的ではないのでヘイトスピーチではない」 


って言うけど、その愛好者たちが、

性的虐待の描写を愉しむ事は
 他人にばれない限りは悪い事ではない


という価値観を醸成・固定化させることについてはどうなんだ?
それ自体が、児童への侮辱として社会に認知されるのではないのか?

そのような価値観の流布こそが、ヘイトスピーチと同質、
場合によっちゃより悪質な行為として問題視されうるのではないか、
という話なのである。


「戦争マンガやヤクザマンガも禁止しないといけなくなる」

というのも、規制反対派にありがちな粗雑な一般化であり、
極端な論理の飛躍だ。

遠い将来ならそうなる可能性はゼロではないのかも知れないが、
それまでに起こりうるだろう段階的な社会価値観の変動や
民主的手続きの存在をまったくすっ飛ばして論理を一気に跳躍させるとは、
想像力が豊かすぎるのか、逆に貧困すぎるのか、
読んでる方が思わず目を疑ってしまうレベルである。



兼光氏は主張の二つ目として、

特定集団が不利益を被っているのを描写しているから
ヘイトスピーチというのであれば創作の世界に 「悪役」 が存在できない。


とも言っているが、これは前提がおかしい。

「不利益の描写」 だけじゃなくて、
不利益を与える主体が肯定的に描かれており、
さらに社会に問題視されうる程度の不当性が認められて
はじめてヘイトスピーチと言えるのだ。
そして、その不利益をもたらすキャラクターが正義や善としてではなく
悪として否定的に描かれているのであれば、それは逆に
ヘイトスピーチを糾弾する表現という意味を持つだろう。

「悪役が存在できない」 じゃなく、
逆に大いに活躍(?)できる余地が与えられるのである。



三つ目の

成人向けなので威嚇する相手に見せれない

っていうのもかなり苦しいな。ヘイトされる側が、
「自分の知らないところでならヘイトスピーチされてもいい」
とは考えないだろうし、むしろ陰湿であるともいえる。

威嚇する相手以外の大多数にヘイトスピーチが
流布されることも大きな問題である事に違いは無い。
そして、そのような価値観の蔓延自体が、
結果としてヘイトされる弱者への威嚇として機能するのである。



それに対して青識亜論氏だが、




との見解を示している。その上で、





との持論を展開する。

ヘイトスピーチの基準に関して  「客観的な線引きは無理」 であり、

「ヘイトスピーチ」 は 「鵺のような言葉」 です。
 見る人、読む人、言葉を使う人によって姿を変えます。


との認識は個人的に全く同感で、
ヘイトスピーチをめぐる状況に対するその俯瞰的な観察眼には
敬意を示さざるを得ない。

青識氏がそこまでして守ろうとする表現の自由の
価値に関しては、この議論が参考になるだろう。

青識亜論氏との議論 (本館ブログ記事)

ここでの青識氏の主張の論理性は非常に完成度が高く
むしろ理路整然としすぎるくらいで、まったくもって
ケチのつけようもない素晴らしいものだが、
私を含めた一般人にしてみれば、
その高尚性をもってしてロリエロマンガに対する嫌悪感を
果たして克服できるものだろうか?という疑問は残る。


この togetter を見て思うのは、

マンガなどの創作描写が
人権を侵害するという主張を、
  規制反対派が真剣に
   検討しなければならない


という状況がやってきた、という事である。


 (青識氏は
   「ヘイトスピーチである=人権侵害であるという主張ではない」
  とも書いているが、私にはその部分のみ異論がある)

単純所持規制に関する議論が一段落して
規制反対言論もかつての勢いが無くなってきていると
少し残念に感じていただけに、私としてはこのような
面白そうな動きは大歓迎である。

twitter を中心としたネット上では、今後も相変わらず
都条例騒動の時のような規制反対派による
バカ発言が乱れ飛ぶことになるだろう。

3年前の togetter だが、こんなのも見つけた。

TOMIAM77さんと規制反対派の議論。
「二次ロリのヌードは現実の子供への脅迫、全否定、ヘイトスピーチ」
  - Togetterまとめ


規制推進派であるらしいTOMIAM77氏のツイートは
削除されてしまっているのが残念だが、
猛然と襲い掛かかる規制反対派連中が、
清々しいくらい揃いも揃って 

  「どこに出しても恥ずかしいバカ」 

ばっかでめちゃくちゃ笑える。

まあ、まとめてるのが dcopco 氏なんだから、
しょうがないと言えばしょうがないけどね。

己のバカを目に見える形で提示するバカwww

violen 氏への回答 (旧本館記事)
   (violen 氏とは、 dcopco 氏の別アカウント)


高尚な議論で論理の勉強をした後に、同じお題でこういう
一大おバカエンタテインメントを楽しめてしまうのだから、
いつまでたっても規制反対派ウォッチは止められないね。








captain_nemo_1982 at 06:00│Comments(10)TrackBack(0)児童ポルノ法関連 

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この記事へのコメント

1. Posted by KOBA   2014年12月14日 15:03
 在特会の最高裁判決の場合は「名誉棄損」「威力業務妨害」で賠償命令が出たので「ヘイトスピーチ」と一括りにするのは無理があるでしょう。勿論「ヘイトスピーチ」と「名誉棄損」が被る事はありますが、未だ「ヘイトスピーチを規制する法律」は制定も法案の提出もなされてないのに、何でも「ヘイトスピーチ」で済ませるメディアのやり方のは疑問を感じます(視覚表現なのに『スピーチ』と言い表すのにも違和感を感じます)。
 ただ「美味しんぼ」の福島編のように、性描写とは別に根拠のない、或いは乏しい予備知識で特定の人物・組織・地域が実害を蒙る場合があったので、

 >マンガなどの創作描写が
  人権を侵害するという主張を、
    規制反対派が真剣に
      検討しなければならない

 と言うのは「言葉狩り」とは別に今後の検討課題でしょう。
2. Posted by captain_nemo_1982   2014年12月14日 18:20
「名誉棄損」「威力業務妨害」 は刑事裁判の方ではないですか?
問題になっている民事裁判の方は、人種差別による精神的苦痛が
賠償理由となっていると読み取れますので、
やっぱりヘイトスピーチが最大の論点になっているかと思います。

もっとも、これだけでヘイトスピーチの刑事罰化、
ましてやロリエロマンガの刑事罰化に直結するとは、
私も思ってませんけれど。
そこに行きつくまでに、段階的に社会の価値観の変動を
いくつも通過する必要があるでしょう。

ただ、規制反対派の足元に火がつく程度の
インパクトはあったんじゃないかと思います。

3. Posted by KOBA   2014年12月15日 00:25
 些か本論から脱線して恐縮ですが、「反ヘイトスピーチ」をスローガンに掲げる団体の中には相手に対して平然と「死ね」と吐き捨てたり、許可を得たデモに「カウンター」と称して無許可で乱入したり、中指や刺青を見せびらかすおかしな輩もいるので、そういう連中が問題を一層ややこしくしないか不安です。
 中には「反原発」からそっちにシフトした組織もあるので、何処まで反ヘイトなのかその誠意に疑問符を付けざるを得ませんが。
4. Posted by captain_nemo_1982   2014年12月15日 04:12
しばき隊の事でしょうか?
児ポ法規制反対派にも、推進派に対して
「BBAの嫉妬」 とか 「セックスヘイター」 とか
非難する人がいますよね。あれも似たようなものかと思います。

「BBAの嫉妬」 に関しては、そのうちブログで
取り上げようと思ってます。
5. Posted by     2014年12月27日 13:17
ガキの暇潰し以上の意味を持たない「どこに出しても恥ずかしいクソブログ」以上に笑えるものはねえけどな
6. Posted by Atc      2015年03月04日 19:15
自分が「ヘイトスピーチ」を展開しているという自覚はないんですか?
7. Posted by Atc    2015年03月04日 19:52
自分には「エロ漫画」の糾弾を良しとして
「ヤクザ漫画」「サスペンスモノ」「イジメ学園ドラマ」の規制は「論理の飛躍」というのはちょっとどうかと思うんですが?
8. Posted by Atc     2015年04月11日 20:25
「TOMIAM77」自身、どれだけ狂いに狂った主張を平然と繰り出してるのかわかってるのか??

9. Posted by Atc   2015年05月24日 21:01
「TOMIAM77」ほど「現実と虚構の区別がつかない人間」を体現した奴を知らない

10. Posted by ふむ   2015年10月27日 01:56
どっちかの側に立った表現なんて所詮攻撃側
防御側の議論にしかならないし、かと言って全く
関係ない表現についての議論てのも所詮実感が無いから
テクニカルな議論上の議論にしかならない。

ヘイト何とかなんて規制議論が出てきたときに
どちらかと言えば俺はそりゃおかしいと思ってきた。
特定人物を非難するわけでもなけりゃ、嘘を書くわけ
でもない。見て不快に感じるから否定するなんて
のを認めたら結局時の権力者(=声のでかい奴)に
都合のいい表現を認めて、それ以外の特に敵対する
表現を禁止するわけだ。それは無いね。筋が通らん。

ヘイトする事実が収まりゃ、当然そんな表現は
消えるか効力をなくすし、ヘイトされた側が
真実性で争うなら表に出て堂々と言えばいい。
今の日本人は真実性を重視するから、それで
バランスが行く。真実性の追究に関しては
誠実な社会でないとそれこそ人治主義的な
糞のような国家になるだろうね。

して、その真実性がある奴から白に見えて
ある奴から赤に見える場合は、基本的に自由性
をとるべきだ。つまりヘイトだろうがなんだろうが
表現する自由を認めるべきだ。

ただ、表現は所詮表現にとどまるべきで、それが
政治性を帯びて実際行動に移るのは真実性が
一方的に明らかでない限り禁止すべきだね。

タバコ規制は嫌いだからではなくて
健康を害するからと言う一方的な真実性で成り立って
いるようにね。

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