さてさて、今年も書きます。ベスト10。
ただ、今年に関しては、そもそも話題作をほとんど読めていないという現状がありますので、かなり個人的な・・・・と言いますか、片手落ちなランキングになることは否めません。
また、例年通り、あくまでも今年自分が読んだものという括りですので、今年発売ではないものも含まれます・・・が、まあそれはそれということでお許しくださいませ。

それでは、マンガソムリエ煉獄編的2014年ベスト10、いってみよう。

次々点
ワールドトリガー 1 (ジャンプコミックス)
ワールドトリガー

ジャンプマンガってのは自分の中ではちょっと別枠な感じもあるのだけども。
とにかく、自分がジャンプのバトルに求めるもののほとんどが、本作には凝縮されている。
だから、ものすごく手っ取り早くジャンプ欲を満たしてくれる。
その意味で、ある種の洗練すら感じた一作だった。

次点

すみれファンファーレ 1 (IKKI COMIX)
すみれファンファーレ

今年一番、心をほっこりしてくれたとってもいいマンガ。
けなげな女の子ってのはそれだけでほっこりするよね。
ただ、このマンガで描かれるのはそれだけじゃなくて。
なんというか、子どもだって、日々ちゃんと考えてるし、その上で成長していってるってことはわかってはいるけども忘れがちなこと・・・・そういうことをちゃんと描いてくれている感じがあった。
で、親になった身としては、それで背筋がぐぐっと伸びたわけです。

第10位

夜よる傍に (ビームコミックス)
夜よる傍に

ものすごく好みというわけではないのだけども、この描き方は無視できないでしょう!!!という感じ。
「祈りと署名」を最初に読んだので、そっちの方がインパクトはでかかったのだけども、物語に、この描き方をする必然性があるという意味で、こっちのほうが人に薦めやすい感じはある。
あと、最近友人に、この人のマンガを電子書籍として見せてもらったのだけども、タブレットで見ると魅力が半減する気はした。そういう意味で、「紙」で読む価値が最も高い作家さんの一人だとは思う。
ただ、その資質、その描き方が今後いいことなのかどうかはちょっとわからんなぁ・・・・

第9位

私という猫 (バーズコミックス スペシャル)
私という猫

タフでハードな「ルドルフとイッパイアッテナ」。
描き方で驚かされたのが、「夜よる傍に」だったとしたら、内容で驚かされたのがこれ。
野良猫の毎日が、こんなに面白いマンガになるなんて!!!
しかも、それが「ほのぼの動物もの」でもなく、銀河ー流れ星銀ーみたいなファンタジーでもなく、絶妙に「リアル」な猫の物語なんだから、そりゃあもう、こんなの読んだことねえ!!!と興奮した。
加えて、マンガの描き方が、すごく丁寧かつ技工的ってのも好み。
ネコ同士の喧嘩なのに、構図がびしっと決まっているところなんかも、とても新鮮な読み心地だった。
まあ、じゃあはやく続きを読めよって話なのですが・・・・この続編にまだ手がまわっていないあたりが、今年の自分のマンガ状況を露骨に示しているかと・・・・

第8位

幻想ギネコクラシー 1
幻想ギネコグラシー

「春風のスネグラチカ」と合わせ技でランクインということで。
まあ、この人の場合は、新作が出たらランクインしちゃうのだ。だって好きだもの。
しかも年々、エロさもグロさも、身も蓋もなくなっていってる感じがあって。
こんなの、最高としか言いようがない。
加えて、今年は「春風〜」で、真面目な(?)顔をびしっと見せてくれただけに、こっちのお茶目さがより眩しく見えたのはあるよなぁ。
お茶目???

第7位
わたしの宇宙 1 (IKKI COMIX)
わたしの宇宙

瞬間風速は今年最大級。
まあ、以前にもかいたけども、とにかく「自分がマンガの中にいる」ってのを自覚しちゃった主人公っていう設定で連載をするという暴挙にまずやられて、次に「マンガといっても全部を描いているわけではない」というロジックによって、この設定のあらゆる矛盾を解決してしまったクレバーな感じに心酔した。
ただ、2巻をまだ読めていなくて・・・・で、読めていないにも関わらず、2巻で終わってしまったということを知って、ちょっと淋しい感じ。
で、2巻次第で評価は変わりそうな気はするなぁ。
ただ、それはそれとして、1巻を読んだ時の、あの目の覚めるような興奮は色あせないと思うのですよ。

第6位
みどりの星 4 (ビッグコミックス)
みどりの星

すごく面白いマンガが、すごく面白いまま、すごく面白い長さで完結したという稀有な例。
読んでいる間ずっと楽しいし、読んでいる間ずっと気持ちがいい。
で、この気持ち良さは、ラピュタを見ている時の心地よさに近いんだよなぁ。
つまりは上質の冒険マンガにして、上質のボーイミーツガール。
まとめ読みしやすい長さってことも含めてもっともっと評価されて然るべき一作だと思う。

第5位
RAPID COMMUTER UNDERGROUND (ビッグコミックススペシャル)
RCU(RAPID COMMUTER UNDERGROUND)

一日往復四時間の通勤時間を使って描かれたマンガ。
先に挙げた「夜よる傍に」と「私いう猫」が、それぞれ手法と物語で驚かせてくれたするなら、これは描いた場所で驚かせてくれた。
で、そんな種類の驚きってのが存在したってだけで既にやられた。
ただ、このマンガが恐ろしいのは、普通は、「通勤中に描きました」っていうネタだけで終わりそうなところが、通勤中でしか描けない得たいの知れないマンガになっているというところで。

「地下鉄で通勤中に描く」っていう日常と非日常が混濁する感じが、ときにエッセイとして、ときに物語として、ときにアート作品として・・・・つまりはめちゃめちゃ面白いマンガとして予想をはるかに越えたレベルで成立している。
ライブ・アート的な出来上がり方まで含めて、今のマンガの最先端であることは間違いない。
今もこの日本のどこかに、地下鉄でマンガを描いている人がいるのかもしれない・・・・と思うだけで自分の日常がぐらりと揺れる感じがする。
今年、最も衝撃を受けたマンガ。(来年、もう少しちゃんとレビュー書きます。)

第4位
夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない (モーニング KC)
夢から覚めたあの子とはきっとうまく喋れない

「わかってもらいたい」「わかりあいたい」と願う心の美しさや切なさは、つまりは「わかってもらえない」「わかりあえない」を前提とした世界に生きているから。
そう思うと、ここに収められた人々は誰も彼もが哀しいなぁ・・・・
みんながみんな、わかりあえないってことだけをわかってしまっていて、それが前提だからこそ、それでも必死で他人とつながろうとする。その哀しさ、哀れさ。
ただ、宮崎夏次系が素敵なのは、その哀しい姿を滑稽に描いてくれることで。
結局のところ、人生はクローズアップで見るから悲劇なのであって、ロングショットで見れば喜劇なのだ。
で、このテーゼは、他人から見れば喜劇にしか見えないことも、当人の心に寄り添えば悲劇であることも多々あるってことで。
その喜劇と悲劇の落差こそが、物語の豊かさなんじゃないだろうかとか、そんなことを考えた。
今、一番信用できる作家さんの一人です。

第3位
娘の家出 1 (ヤングジャンプコミックス)
娘の家出

「曇天もようの下で背筋伸ばしていこうよ」ってのはくるりの名曲「家出娘」ですが。
まあ、ままならん世の中をタフに生きていく娘さんの姿は見ていて気持ちがいいという話で。
お父さんがゲイだとか、親の離婚だとか、あるいは不倫だとかデブ専だとか、描かれている状況はハードなんだけども、それを愛とか友情といった絆の類に頼るのではなく、自分から、ほんの少しの諦念と勇気で乗り切っていく娘さんの姿が、とてもかっこよかった。
なんというか、誰かがどこかで言ってたけども、現在においてハードボイルドってのは女子高生にのみ宿るのかもとか。そんな感じ。
個人的にはぼくの好きな志村貴子先生の最高傑作なんじゃないかと思ったり。

第2位
ドミトリーともきんす
ドミトリーともきんす

出たってだけで一大ニュースなマンガ家高野文子。
で、読んだらやっぱり大傑作。
黄色い本でも、「マンガで読書体験を描く」というアクロバティックな技を、軽やかに決めてくれた作者だけども、こちらはそれをさらに進めて、「マンガで科学者の言葉を描く」という、なんかもうその試みだけですでに常人には理解できないラインを狙っていて、しかもそれが成功しているという、ちょっとよくわからないものになっている。
・・・・しかもそれがやっぱり面白かったから、始末が悪い。
これに関しては、実はだいぶ前に読んでいて、何度かレビューしようとはしたのだけども、どうにもこうにも自分の中で整理しきれず、下書きどまりが続いている。
来年の宿題だなぁ。。。。でも、とりあえず、凄まじいってことだけは間違いないです。


第1位
子供はわかってあげない(上) (モーニング KC)
子供はわかってあげない

もうね、これに関しては、面白いとか凄いとか、そういう言葉では足りなくて、単純明快に、好きなんです。大好きなんです。これに尽きる。
とにかく、セリフの一つ一つが気が利いていて、チャーミング。
デティールの細かいところが、いちいちちょっとだけ独創的で、びっくりしすぎない程度に、驚かされる。
で、王道の物語はハンパないドキドキとカタルシスを与えてくれる。
とまあ、ありきたりな言葉で絶賛してみましたけども、本当のところ、どんな言葉をここに書いても、自分の「好き」を説明できない。
「言葉は心を越えない〜」ってのは、今年話題になったあの人の名曲ですが、まあ自分が思うのも同じような感じ。
とにかく、自分はこのマンガが好きなのだ。大好きなのだ。それでいいじゃない。
とまあ、2014年のあと数時間で終わるって時に、なぜか、このブログの存在意義を自分から否定してしまいましが、好きなものが増えるってことは、いいものです。


てな感じで、振り返ってみると今年もなんだかんだいいながら、色々読んだなぁという印象。
で、マンガのおかげでやっぱりたのしい一年が過ごせました。
で、忘れっぽい自分としては、やっぱりこのブログの存在は貴重だなと。
こういう風に振り返らないと、よほどの傑作以外は、読んだはしから忘れていくもんなぁ・・・・というわけで、来年も、だらだらと続けようかと思った次第です。
で、こんなダラダラした文章につきあって読んでくださっている皆々様には、感謝感謝ですよ、ほんと。

というわけで、2015年もよろしくお願いします!!!皆様良いお年を!!