リップヴァンウィンクルの花嫁 [Blu-ray]

岩井俊二の最高傑作・・・?

インタビューを読むと、「堕ちていっているのに、上昇しているような物語にしたかった」というのがあって。
それを読んで、なんていいえて妙なんだろう!!と膝を打った。

まさに、この物語はそういう物語で。
流されるように結婚した黒木華の「普通」がやがて破綻していき、AV女優のCoccoとおおきなお屋敷でメイドとして生活するようになって、二人でもっともっと破綻してくという物語は、それだけ読むと怖い話ですらある。
なにに実際は、まさに岩井俊二!!!な映像もあいまってまるで少女達の美しい戯れを見るような、なんあら見ているうちに陶酔するような、そんな不思議な映画に仕上がっている。

ただまあ、じゃあそれが気にいったかどうかっていうと、それはなかなか微妙な話で。
岩井俊二的には今日的な物語だったのだとは思うのだけども、個人的には「まだこんなことやってんの!?」と少々戸惑った。
特に屋敷に入ってからの似非ファンタジーを造る小道具たち(毒を持った生き物の水槽とか、大きなベッドにウエディングドレスで横たわるとか)は、90年代の岩井俊二を思わせる懐かしさみたいなものこそあれ、新鮮な感じはしなかった。

それは多分、この物語が本来的には「女性」を描いているはずなのに、黒木華をとらえるカメラはずっと彼女を「少女」として描いていることに原因があると思う。
例えば四月物語の松たか子だとか、あるいは花とアリスの蒼井優、鈴木杏とか、岩井俊二が撮ってきた「少女」達ってのはある種のエバーグリーンな感じはあって。
特に僕みたいな岩井俊二直撃世代には、あの儚げな透明感は、脳みそにトラウマみたいに刷り込まれている。
ただ、それってあくまでも「90年代的な少女象」な気はしていて。
なんというか、あの頃の岩井映画の少女たちって、もうこの世界には、いない気はしているのだ。
感覚論だけども。

で、監督がどこまで意図しているのか、あるいはいないのかはよくわからないけども、あの頃と同じような空気感が映画全体に漂っている。
特に後半はそれが顕著だ。
だから、本作の黒木華は、あの頃の少女たちの亡霊のように見える。
あのまま、うまく大人になれなかった少女達の亡霊。
そして、黒木華が亡霊なら、Coccoは呪いだ。呪いそのものだ。

結果、二人はいつまでたっても「大人の女性」には見えないし。
もっと言えば「生きている女性」にすら見えない。
ただ、あの頃の少女たちの末路として、心霊写真のようにデジタルデータに記録されている。

それは岩井俊二の言うように、「堕ちているように見えて上昇している」のかもしれない。
てか、多分そうなんだろう。
でも、落ちているにしても、上昇しているにしても、どっちにしても滅びの道だ。
今は、もう存在し得ない世界だ。

で、感覚として、そんな少女たちの滅亡自体が、そもそも十年くらい前に終わっているような気がしている自分には、本作はやけに古くさく見えた。
なんというか、ゾンビ映画的というか。
あるいは、死んだことに気づいていないシックスセンス的なものというか。

追記
ただ、キャスト陣はどれもはまり役で。
特に、Coccoの熱演には本気で驚いた。この人、ちゃんと映画の中に収まることができるんだ!!??みたいな。