ALIVE 1 (1)

白黒なのに、ばっちり青空が見えるマンガ。
死刑の執行が決まった男が、死刑の代わりに受ける刑罰とは??みたいな感じの物語。
陰惨な話だし、とくに救いもへったくれもない。
なのにずっと暗い場面が続いた後のラストに広がる青空のせいでやたらめったら爽快。
ちょっとショーシャンク・・・に近い読後感。
これは、物語の力というよりは絵の力だと思う。

密室における閉塞感をしっかりコマの中に込められる筆力。
モノクロなのに、誰が見ても青だってわかる色使い。
どちらも一級品の職人技。
一巻完結というお手軽さから考えると、この満足度はなかなか高い。

ただ、こういうのを器用にこなせてしまう辺りが高橋ツトムっていう作家さんの限界値なのかなぁみたいな感じもしていて。
この人って、絵の巧さだけで言ったら、井上雄彦と同レベルだと思うのだけど、どうにも今ひとつ突き抜けない。
「お逝きなさい」のヒットはあるにしても、あれって高橋ツトムのというよりは釈由美子の手柄のような気がするし・・・

この人って例えば長編を描いた時に、絵自体はものすごく力があるのに、物語がその絵をうけとめるだけの強度を持っていないように思うのだ。

本作に関して言えば、物語が始まる前の刑務所のシーンの雰囲気はすごいのに、いざ物語が走り出して、SF的な面が前面に出てくると、その設定の突飛さがどこか空々しく感じてしまった。
絵のうまさが、現実よりなので、物語内のリアルと直結しないのだ。
これは、井上雄彦のBUZZER BEATERってマンガにも言えると思うのだけど、なまじ写実的な感じで絵が上手いっていうのがひっかかっている気がする。

この辺りの絵の質の問題って、結構重要で。
例えば同じ題材を、大友克洋が描いていたら、もっとコミカルかつリアルにしあがったのではないかと思うわけだ。
大友克洋の絵のうまさって写実というよりはアニメよりだから。

まあ、とは言え、本作は短編だったので、そのリアルじゃない感じが、作品全体の質
を決定する前に物語がうまく集結している。
本来この作家さんがもっている絵の巧さを存分に楽しむことができた。
だからこそ、ラストの青空があれだけ爽快だったのだろう。
そういう意味で、案外短編向きの作家さんなのでは、等と思った。

コメント

 コメント一覧 (2)

    • 1. ライカ
    • 2007年06月03日 00:11
    • なるほど。

      そのへん、絵と物語のワンセットとして見てると不足な感じはしなかったです。でも確かに高橋ツトムって、映像畑の人には愛されそうな作家ですよね。逆に、小説化してもあまり面白くなさそう。

      なんかこの人って、生と死で言ったら常に「死」のほうにバランスが傾いてるんですよ。「スカイハイ」描いてることとか関係なく。だから整合性のあるカタルシスには絶対に辿り着けない/着かないのかな、って気がしてます。
    • 2. 夏男
    • 2007年06月03日 23:46
    • 「死」に傾いてるっての、よくわかります。
      それも、なんというかヒロイックな死というか、観念的だというか。
      生々しい死ではない感じ。

      このあたりは好みのわかれるところかと思いますが、そういうある種、劇的な死を描いているのに、絵柄は生々しい。

      まあ、それが「味」になるのかもしれませんけれども・・・

      映像畑の人、確かに好きそうですね。
      っていうより、そもそもこの作家さんがまず映像を意識してるのかも。
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