May 2017
May 03, 2017
海賊の黒い白鳥
今年も、日頃静かなムゲン海が人で賑わうこの季節がやって来た。
海開き・・・じゃなかったそれはもうちょい先。
アレだよ、鯉釣り大会!
俺としては生臭い鯉なんかより、芳しい香水をつけたご婦人と、しっぽり恋ってほうがイイけど・・・まあそんなことはどうでもいい。
それよりも、今回の航海はかなり久々の航海だってことの方が重要だが、まあ、それもなんとかなるだろう。
ちょいと寄り道ついでに腕慣らし航海すればブランクなんて問題ないさ。
なんて軽い気持ちで出航したのが甘かった・・・。
いざトクノの海に船を出すと、まあとんでもない数のオーク海賊やら、商船やらいるわいるわ。
相変わらずこの海はごちゃごちゃしてて好きになれん・・・そんな独り言をつぶやきながらラムを煽ろうとしたら、レーダーに高速で動くオーク級ガリオン船が!
間違いない、この動き、冒険者の船だ!
久々の獲物に歓喜する俺。
それにしてもこんなに幸先のいい航海は珍しい。
きっと、さっき寄り道してユーのグレートフォールのリスから貰った黒い白鳥のご利益かもしれん。
なんたって黒白鳥―ブラックスワンと言えば・・・
おっと、思い出の海を航海してる場合じゃない、いまは獲物に集中!
逃走する敵船を一旦見逃しちまったが、これは想定内。
ふふ、コンパスが指し示している限り、海賊たる俺が獲物を逃がすことは無い。
なんて一人悦に入ってたら、気がつけばいつの間にか敵船がこっちのケツに食らいついてる!
うわ、なんだこの状況!
というか・・・
この船の操舵手・・・上手い!
おまけに・・・よく見りゃあっちのクルーは4人くらいいる、火力でも負けてるじゃないか!
久々にこっちが追い込まれちまい、感心してる場合じゃないのは解っちゃいるが・・・敵船の頭上の
タグ見て納得した。
この俺の大事な船のケツに食らいついてるのは・・・国王に百人の海賊の首を差し出したって噂のあの海賊狩りの『ジェロームの渡り鳥』じゃないか!
海賊は追いつかれて捕まれば、身ぐるみはがされ即、―縛り首―
ラムのほろ酔い加減なんて100マイル先までふっとんじまって、手に汗握るデットヒートがおっぱじまった!
敵船を振り切るための大技小技、全て繰り出さなきゃ逃げおおせない、いや、今の俺にそんなことできるのかって、そんなヤバい状況だってときに・・・
いやこんな時だからか?これが世に言う走馬灯ってやつなのか?!
遠い昔の記憶、想い出がよみがえる―――
―――俺がヤマトの海から、このムゲンの海にやって来た10年前。
当時、ヘイブン湾を拠点にムゲンの海を荒らしまわる海賊団がいた。
3隻からなるその海賊の船団のうち、2隻はそれなりに出し抜けるが、海賊団長の駆る旗艦は特別手ごわかった。
その海賊、ヘイブン海賊団、団長の名は『アリエル』
彼女の駆る旗艦―海賊船【ブラックスワン】号
あの女海賊とその愛船と戦い、一旦劣勢に回ったが最期、確かな操船技術に加え、魔法と砲撃で多くの船が拿捕、撃沈されていた。
操船の腕に自信がある俺でさえ、あの海賊船を振り切るのは本当に容易なことじゃなかった・・・
―――が、「船長はいつだって、アタシの追撃をギリギリで振り切ったろ?」
んっ!?!
後方からガンガン飛んでくるブドウ弾(炸裂弾)が頭上をかすめる中、懐かしい声を聞いた気がした。
思わず声のした方向、足元を見ると、そこには甲板に置きっぱなしにしてた黒白鳥―ブラックスワンの像。
そうだったよな・・・俺のブラックオニキス号と、お前さんのブラックスワン号はいつだって、こんなギリギリのデットヒートをやってたっけな!
相当ヤバい状況にも関わらず、思わず顔がニヤけちまう。
盲想だろうが空耳だろうが、気持ちに余裕ができるってのは大事なことだ。
昔よくやったように、地形を利用する操船を繰り返す。
数分後、敵船はレーダーから消えていた―――
敵船の追尾を完全に振り切り、一息ついたところでラムを煽りながら、
――「お前のおかげで助かったぜ」
足元の黒白鳥に乾杯する。
――『ったく!甘えてんじゃないよ!』
黒白鳥の紅く光る眼がそう言った気がした。
【海賊の黒い白鳥】 ―END―
海開き・・・じゃなかったそれはもうちょい先。
アレだよ、鯉釣り大会!
俺としては生臭い鯉なんかより、芳しい香水をつけたご婦人と、しっぽり恋ってほうがイイけど・・・まあそんなことはどうでもいい。
それよりも、今回の航海はかなり久々の航海だってことの方が重要だが、まあ、それもなんとかなるだろう。
ちょいと寄り道ついでに腕慣らし航海すればブランクなんて問題ないさ。
なんて軽い気持ちで出航したのが甘かった・・・。
いざトクノの海に船を出すと、まあとんでもない数のオーク海賊やら、商船やらいるわいるわ。
相変わらずこの海はごちゃごちゃしてて好きになれん・・・そんな独り言をつぶやきながらラムを煽ろうとしたら、レーダーに高速で動くオーク級ガリオン船が!
間違いない、この動き、冒険者の船だ!
久々の獲物に歓喜する俺。
それにしてもこんなに幸先のいい航海は珍しい。
きっと、さっき寄り道してユーのグレートフォールのリスから貰った黒い白鳥のご利益かもしれん。
なんたって黒白鳥―ブラックスワンと言えば・・・
おっと、思い出の海を航海してる場合じゃない、いまは獲物に集中!
逃走する敵船を一旦見逃しちまったが、これは想定内。
ふふ、コンパスが指し示している限り、海賊たる俺が獲物を逃がすことは無い。
なんて一人悦に入ってたら、気がつけばいつの間にか敵船がこっちのケツに食らいついてる!
うわ、なんだこの状況!
というか・・・
この船の操舵手・・・上手い!
おまけに・・・よく見りゃあっちのクルーは4人くらいいる、火力でも負けてるじゃないか!
久々にこっちが追い込まれちまい、感心してる場合じゃないのは解っちゃいるが・・・敵船の頭上の
タグ見て納得した。
この俺の大事な船のケツに食らいついてるのは・・・国王に百人の海賊の首を差し出したって噂のあの海賊狩りの『ジェロームの渡り鳥』じゃないか!
海賊は追いつかれて捕まれば、身ぐるみはがされ即、―縛り首―
ラムのほろ酔い加減なんて100マイル先までふっとんじまって、手に汗握るデットヒートがおっぱじまった!
敵船を振り切るための大技小技、全て繰り出さなきゃ逃げおおせない、いや、今の俺にそんなことできるのかって、そんなヤバい状況だってときに・・・
いやこんな時だからか?これが世に言う走馬灯ってやつなのか?!
遠い昔の記憶、想い出がよみがえる―――
―――俺がヤマトの海から、このムゲンの海にやって来た10年前。
当時、ヘイブン湾を拠点にムゲンの海を荒らしまわる海賊団がいた。
3隻からなるその海賊の船団のうち、2隻はそれなりに出し抜けるが、海賊団長の駆る旗艦は特別手ごわかった。
その海賊、ヘイブン海賊団、団長の名は『アリエル』
彼女の駆る旗艦―海賊船【ブラックスワン】号
あの女海賊とその愛船と戦い、一旦劣勢に回ったが最期、確かな操船技術に加え、魔法と砲撃で多くの船が拿捕、撃沈されていた。
操船の腕に自信がある俺でさえ、あの海賊船を振り切るのは本当に容易なことじゃなかった・・・
―――が、「船長はいつだって、アタシの追撃をギリギリで振り切ったろ?」
んっ!?!
後方からガンガン飛んでくるブドウ弾(炸裂弾)が頭上をかすめる中、懐かしい声を聞いた気がした。
思わず声のした方向、足元を見ると、そこには甲板に置きっぱなしにしてた黒白鳥―ブラックスワンの像。
そうだったよな・・・俺のブラックオニキス号と、お前さんのブラックスワン号はいつだって、こんなギリギリのデットヒートをやってたっけな!
相当ヤバい状況にも関わらず、思わず顔がニヤけちまう。
盲想だろうが空耳だろうが、気持ちに余裕ができるってのは大事なことだ。
昔よくやったように、地形を利用する操船を繰り返す。
数分後、敵船はレーダーから消えていた―――
敵船の追尾を完全に振り切り、一息ついたところでラムを煽りながら、
――「お前のおかげで助かったぜ」
足元の黒白鳥に乾杯する。
――『ったく!甘えてんじゃないよ!』
黒白鳥の紅く光る眼がそう言った気がした。
【海賊の黒い白鳥】 ―END―