葦の髄から循環器の世界をのぞく

訪問ありがとうございます。 このブログは医療関係者を対象としています。 老境に入った内科開業医が、昔専門とした循環器科への熱い思い断ちがたく一人でお勉強した日記です。 内容は循環器科に限定しています。 他に「井蛙内科開業医/診療録」「ふくろう医者の診察室」のブログもあります。

動脈硬化患者への画像所見提示

動脈硬化患者へ画像所見提示、進行予防に効果/Lancet

http://www.carenet.com/news/journal/carenet/47196
無症候性アテローム硬化症について、頸動脈内膜中膜肥厚の超音波検査結果を用いて可視化し患者に見せることで、1年後のフラミンガム・リスクスコアが低下するなど、心血管疾患予防に効果があることが明らかにされた。
スウェーデン・ウメオ大学の研究チームが約3,500例を対象に行った、非盲検無作為化比較試験の結果で、Lancet誌オンライン版2018年12月3日号で発表された。
運動や禁煙といった生活習慣の変更や、高血圧・高コレステロール血症の治療など、心血管疾患の1次予防は、患者や医師のアドヒアランスが低いことが課題となっている。


頸動脈超音波検査結果を視覚的に提示

研究グループが行った、「心血管疾患予防最適化のための無症候性アテローム性疾患可視化(VIPVIZA)」試験は、スウェーデン北部で行われている住民ベースの心血管予防プログラム「Vasterbotten介入プログラム」と融合した試験として実施された。


2013年4月29日~2016年6月7日にかけて、40歳、50歳、60歳で、1つ以上の既知の心血管疾患リスクが認められた3,532例に対し、診察、血液検査、頸動脈内膜中膜肥厚とプラーク形成の超音波による評価を行った。


被験者を無作為に2群に分け、一方の群には頸動脈超音波検査結果を視覚的に提示し、看護師が電話をしてその理解を確認した(介入群)。
もう一方の群には提示の介入をしなかった(対照群)。


主要評価項目は、1年後のフラミンガム・リスクスコア(FRS)と、欧州のSCORE(systematic coronary risk evaluation)だった。


1年後のリスク評価で、提示群と非提示群に有意差

被験者のうち、介入群は1,749例、対照群は1,783例で、1年後に追跡評価ができたのは3,175例だった。


1年後のFRS平均値は、介入群12.24に対し対照群は13.31と、両群間に有意差が認められた。
SCORE平均値も、介入群1.42に対し対照群は1.58と、有意差が認められた。


ベースラインから1年時点までのFRS平均値は、介入群で0.58低下したのに対し、対照群では0.35増加した。

SCORE平均値は両群ともに増加したが、介入群で0.1 増加 3、対照群では0.27増加だった。

(いずれも有意) 


結果を踏まえて著者は、「薬物療法や生活習慣に対してアドヒアランスが低いという大きな問題を解消する方法の、さらなる開発を支持するものである」と述べている。


原著

Naslund U, et al. Lancet. 2018 Dec 3. [Epub ahead of print]

 



<きょうの一曲>

スタン・ゲッツ / I'm Getting Sentimental Over You



<きょうの一枚の絵>
img035 のコピー 2

千住 博 「夏の滝」 2017


ビタミンDとω-3はがん・心血管疾患を予防せず

ビタミンDとω-3はがん・心血管疾患を予防せず 地域住民約2万6,000例を対象としたRCT

https://medical-tribune.co.jp/news/2018/1116517021/

米・Brigham and Women's Hospital/Harvard Medical Schoolの研究グループは、がんおよび心血管疾患に対するビタミンDとn-3系脂肪酸(ω-3脂肪酸)の予防効果の検証を目的として、米国の一般住民約2万6,000例を対象にプラセボ対照ランダム化比較試験VITALを実施。
その結果、ビタミンDまたはω-3脂肪酸を補充しても、がんと心血管疾患の発生はいずれも減少しないことが分かった。
結果は米国心臓協会学術集会(AHA 2018、11月10~12日、シカゴ)で発表された。


N Engl J Med(2018年11月10日オンライン版2018年11月10日オンライン版)に同時掲載。


初発予防としてのビタミンDとω-3脂肪酸の効果を評価

ビタミンDは近年、がんと心血管疾患の予防戦略において注目されている。
観察研究では、血清25-ヒドロキシビタミンDの低値とこれらの疾患のリスクの上昇が相関することが示された。
しかし、さまざまな交絡因子が存在するため因果関係の確認は難しく、ビタミンDの両疾患への予防効果については明らかでなかった。

 
また魚油に含まれるω-3脂肪酸は、複数の観察研究などで心血管疾患のリスクを低下させることが示されているが、再発予防や高リスクの患者を対象とした検討の結果は一貫していない。
ω-3脂肪酸とがんのリスクに関する検討でも、相反するデータが報告されている。

 
このような知見のギャップ解消に取り組むため、大規模な二重盲検のランダム化比較試験であるVITALにおいて、ビタミンDとω-3脂肪酸のそれぞれの予防効果を評価した。
試験は2×2ファクトリアルデザインとし、がんと心血管疾患の初発予防として、ビタミンD
3(コレカルシフェロール)2,000IU/日とω-3脂肪酸1g/日を投与する群、ビタミンDとプラセボを投与する群、プラセボとω-3脂肪酸を投与する群、プラセボのみを投与する群のいずれかに、対象をランダムに割り付けた。

 
対象は、米国の住民で50歳以上の男性と55歳以上の女性とし、2011年11月~14年3月に2万5,871例をランダムに割り付けた。
介入は2017年12月31日で終了し、追跡期間中央値は5.3年(範囲3.8~6.1年)となった。
ビタミンD+ω-3脂肪酸は6,463例、ビタミンD+プラセボは6,464例、プラセボ+ω-3脂肪酸は6,470例、プラセボ+プラセボは6,474例に投与した。
ビタミンDの検討ではビタミンD群1万2,927例、プラセボ群1万2,944例となり、ω-3脂肪酸の検討ではω-3脂肪酸群1万2,933例、プラセボ群1万2,938例で解析した。
主要評価項目は、あらゆるタイプの浸潤がんと主要な心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管疾患が原因の死亡)とした。


がんと主要な心血管疾患の発生は減少せず

全2万5,871例の平均年齢は67.1歳、女性が50.6%だった。
人種は多様で、非ヒスパニック系白人が1万8,046例(71.3%)、黒人が5,106例(20.2%)だった。ビタミンD群とプラセボ群、ω-3脂肪酸群とプラセボ群の間で、患者背景に偏りはなかった。

 
ビタミンDの検討では、プラセボと比較してビタミンD群では浸潤がんと主要な心血管イベントの発生が減少しないことがわかった。
追跡期間中に1,617例ががんの診断を受け、うちビタミンD群が793例、プラセボ群は824例で、ハザード比(HR)は0.96(95%CI 0.88~1.06、P=0.47)であった。
主要な心血管イベントは805例で発生し、うちビタミンD群が396例、プラセボ群は409例で、HRは0.97(同0.85~1.12、P=0.69)であった。
がんの部位、がんによる死亡、心血管イベントの各疾患においても、両群間に差はなかった。

 
ω-3脂肪酸の検討でも、プラセボと比較してω-3脂肪酸群では主要な心血管イベントと浸潤がんの発生が減少しない結果となった。
追跡期間中、主要な心血管イベントは、ω-3脂肪酸群386例、プラセボ群419例に発生し、HR0.92(95%CI 0.80~1.06、P=0.24)となった。
浸潤がんは、ω-3脂肪酸群820例、プラセボ群797例に発生し、HRは1.03(同0.93~1.13、P=0.56)となった。
心血管イベントの各疾患、がんの部位、がんによる死亡においても、両群間に差はなかった。


ビタミンDとω-3脂肪酸については、糖尿病、心不全、認知症、自己免疫疾患などに対する予防効果の補助的な検討が現在進行中である。
 

<関連サイト> 

高用量EPAが適切なスタチン療法下でCVDを抑制

http://blog.livedoor.jp/cardiology_reed/archives/77651315.html
私的コメント
この論文でのEPA投与量は4g/日です。 

一方今回の論文では1g/日となっています。
高用量で検討すればまた違った結果になっていた可能性が十分あります。


<きょうの一曲> 

Salut Salon "Wettstreit zu viert" | "Competitive Foursome”




<きょうの一枚の絵> 


img035 のコピー

千住 博  水の記憶「雨季」

 

一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室 



 

 

米国コレステロール管理GLのアルゴリズム 2018

新しい米コレステロール管理GLのアルゴリズム

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201812/559018.html

米国のコレステロール管理ガイドライン(2018 Guideline on the Management of Blood Cholesterol)が5年ぶりに改訂された。
2013年版は薬物治療としてスタチンのみを推奨、治療目標値は示さないなど斬新な内容だった。
2018年版では基本的な考え方は踏襲しつつも、一部の対象者についてはCTによる冠動脈石灰化(CAC)スコアの測定も推奨してより精緻なリスク評価を行った上で、患者と医療者とがよく話し合って治療方針を決めることを強調するなど、多くの点で軌道修正された。
また、新たなエビデンスを踏まえ、エゼチミブとPCSK9(前駆蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)阻害薬を治療アルゴリズムに盛り込んだ。


コレステロール管理の目的は、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の発症予防にある。
2018年版では、ASCVDが「超ハイリスク」(very high risk)という患者カテゴリーを新設した。
その定義は、過去1年以内の急性冠症候群、心筋梗塞の既往、虚血性脳卒中の既往、症候性の末梢動脈疾患といった主要なASCVDを複数認める患者、もしくはASCVDは1つだが複数の心血管危険因子を持つ患者というもの。


このカテゴリーに該当する患者に対しては、最大耐用量によるスタチン治療を行ってもLDLコレステロール(LDL-C)が70mg/dL以上であれば、まずエゼチミブの追加を、それでも70mg/dLを切らない場合はPCSK9阻害薬の追加を、それぞれ妥当とした(クラスIIa=中程度の推奨)。


PCSK9阻害薬のランダム化比較試験(RCT)では、中~高強度のスタチン治療でもLDL-Cが70mg/dLを切らない患者にPCSK9阻害薬を併用し、有意なASCVDリスクの抑制が示されている。
しかしPCSK9阻害薬は高額であることから、費用対効果の点からエゼチミブの併用を優先した(クラスI=強い推奨)。


超ハイリスクではない2次予防患者に対しては、概ね2013年版と同じ内容の推奨だ。
このカテゴリーでのエゼチミブとスタチンの併用は、75歳以下で最大耐用量のスタチン治療でもLCL-Cが70mg/dL以上の場合とされた(クラスIIb=弱い推奨)。


一方、1次予防では、2013年版ガイドラインと同じ計算式を使って、年齢、性別、血清脂質値、血圧値、糖尿病の有無などからASCVDのリスクを評価し、その程度に応じた方針が示されるというアウトラインは変わらないが、リスクのカテゴリーが増えた。


40~75歳で糖尿病がなくLDL-Cが70~189mg/dLの場合、10年間のASCVDリスクが5%未満(低リスク)なら生活習慣改善(クラスI)、5%以上7.5%未満(ボーダーラインリスク)でリスク増加因子がある場合は中強度スタチン治療(クラスIIb)を考慮、7.5%以上20%未満(中等度リスク)でリスク増加因子がある場合は中~高強度スタチン治療(クラスI)を開始、20%以上(高リスク)なら治療前値からLCL-Cの50%以上の低下を目標としたスタチン治療を開始するとした(クラスI)。
ただし、治療方針の決定に際しては患者と医療者がよく話し合うこととし、これ自体がクラスIの推奨になっている。


注目すべきは、中等度リスクと一部のボーダーラインリスクの患者で介入方針に迷った場合、CTによるCACスコアの測定を推奨したこと(クラスIIa)。
CACスコアがゼロで、糖尿病や若年の冠動脈疾患の家族歴、喫煙というリスク因子もなければさし当たりスタチン治療は不要で、5~10年先に再評価する。
CACスコアが1~99の場合は55歳以上、同スコアが100以上または75パーセンタイル値以上の場合は年齢にかかわらず、それぞれスタチン治療が妥当とした。


また2018年版からは、小児も対象になった。
「ASCVD予防の基本は、早期からの健康な生活習慣の維持によって、その後の危険因子の発生そのものを防ぐこと」とガイドライン冒頭の「Top 10 Take-Home Message」でも強調。
小児に対する推奨では、「肥満があり血清脂質値の異常が観察された場合は、適切な摂取エネルギー制限と運動による生活習慣改善を強化する」など2つがクラス1となっている。



<関連サイト>

米国コレステロール管理GLのアルゴリズム 2018

https://wsnoopy.wixsite.com/mysite/blog/




<きょうの一曲> 

バド・パウエル 「クレオパトラの夢」

https://www.youtube.com/watch?v=lXDBUYxVVXU



<きょうの一枚の絵>
img035 (1) のコピー
千住 博  「春の滝」 2017




 
一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  

ダパグリフロジンに心不全、腎障害抑制効果

ダパグリフロジンに心不全、腎障害抑制効果 心血管安全性を確認

https://medical-tribune.co.jp/news/2018/1116516999/

2型糖尿病患者における主要心血管イベント(3ポイントMACE:心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性虚血性脳卒中の複合)に関して、SGLT2阻害薬ダパグリフロジンのプラセボに対する非劣性が示され、心不全による入院、腎イベントの発生も抑制された。
米・Brigham and Women's Hospitalの研究チームが、心血管疾患の既往または危険因子を有する2型糖尿病患者1万7,000例超を対象にした第Ⅲ相ランダム化比較試験DECLARE-TIMI58の結果を米国心臓協会学術集会(AHA 2018、11.10~12、シカゴ)で発表、N Engl J Med(2018年11月10日オンライン版)に同時掲載した。


対象の約60%は心血管疾患のない高リスク群

DECLARE-TIMI58試験の対象は成人2型糖尿病患者1万7,160例で、うち6,974例(40.6%)は心血管疾患の既往歴を有する患者、1万186例(59.4%)は明らかな心血管疾患はないが複数の心血管危険因子を有する高リスク患者であった。
対象をダパグリフロジン群(8,582例、平均年齢63.9歳)またはプラセボ群(8,578例、同64.0歳)に1:1でランダムに割り付け、中央値で4.2年追跡した(延べ6万9,547人・年)。

 
Cox比例ハザードモデルによる解析の結果、安全性の主要評価項目とした3ポイントMACEに関して、95%CI上限が事前に設定した非劣性マージン1.3を下回り、ダパグリフロジンのプラセボに対する非劣性が示された(非劣性のP<0.001)。


心血管イベント抑制効果は認めず

有効性の主要評価項目の1つとした3ポイントMACEの発生は、ダパグリフロジン群でプラセボ群に比べて低頻度であったが、統計学的に有意ではなかった。


なお、同じSGLT2阻害薬であるエンパグリフロジン、カナグリフロジンは3ポイントMACEを有意に抑制しており、明暗を分ける結果となった。
しかし、対象の違いなどがこの違いに影響しているかどうか、慎重な解析が求められる。

 
一方、もう1つの有効性の主要評価項目である心血管死または心不全による入院の複合評価項目では、ダパグリフロジン群でプラセボ群に比べて有意な減少が認められた。
ただし、これは心不全による入院の減少が反映されたもので、心血管死に関しては有意差がなかった。


ケトアシドーシスが高率

有効性の副次評価項目とした腎複合アウトカム〔推算糸球体濾過量(eGFR)が40%以上低下して60mL/分/1.73m2未満となる、末期腎疾患の新規発症、腎疾患または心血管疾患による死亡〕の頻度は、ダパグリフロジン群がプラセボ群に比べて低かった。

 
一方、ダパグリフロジン群はプラセボ群に比べて糖尿病ケトアシドーシスの頻度が高く、投与中止に至った重篤な有害事象と判定された性器感染症の頻度も高かった。

 
研究チーム代表は「 心血管死または心不全による入院の複合評価項目の結果は、各種のサブグループ解析でも同様であった。心血管疾患の既往歴の有無を問わず、幅広い患者群においてダパグリフロジンが心血管イベント、特に心不全による入院を予防したことを示している」と結論した。


私的コメント;

心血管イベント抑制効果は認められなかったということはどのように解釈すればよいのでしょうか。
ここで定義される心血管イベントは、3ポイントMACE(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性虚血性脳卒中の複合)ということですが、心不全死は心血管死とはいわないのでしょうか。
記事中の「図. 有効性の評価項目」では「心血管死または心不全による入院」という項目があり、「心血管死」「心不全による入院」を峻別しています。
前者はハードエンドポイントであり、後者はソフトエンドポイントですが、この
「心血管死または心不全による入院」はプラセボ群に対して有意差がついています。
この有意差は心血管死」単独では有意差がなかったのが、心不全による入院」に引っ張られる形で有意差がついただけのものであって大した意味を持ちません。
またSGLT2iによる心不全抑制効果はなんら目新しいものではありませんが、腎複合アウトカムがプラセボ群に比較して有意に改善していることは(この記事を見て)瞠目すべきことと考えました。


<きょうの一曲> 

アルビノーニ:2本のオーボエのための協奏曲ハ長調op.7-11 / ハインツ・ホリガー(ob) ,ハンス・エルホスト(ob) ,カメラータ・ベルン



<きょうの一枚の絵> 
 img015 (1) のコピー

千住 博 「朧月夜」 2018

 

一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  

大動脈弁狭窄症による突然死の死因

大動脈弁狭窄症による突然死の主因は? 多施設登録データから解析

https://medical-tribune.co.jp/news/2018/1126517121/

大動脈弁狭窄症(AS)は無症状でも突然死が発生することがあり、注意して治療に当たるべきである。
しかし、ASに関連する突然死の発生率は約20年前の単施設研究に基づいて検討されており、予測因子の検討も十分でない。
そこで、小倉記念病院(北九州市)循環器内科の谷口智彦氏らは、近年集計された多施設登録データを用いて、ASと関連する突然死の発生率や予測因子を解析。
その結果、発生率は従来の報告より高く、患者背景に関する項目の中に有意な予測因子が存在することが明らかになった。
(第22回日本心不全学会(2018.10.11~13)


血液透析実施者でリスク3.6倍

解析対象は2003~11年に27の医療機関で重症ASと診断された3,815例で、うち無症候性ASが1,808例を占めた。

 
突然死の発生率はAS以外の競合リスクを加味したGray検定、予測因子はCox回帰分析を用いて検討した。
なお、突然死の定義は容体が安定していた患者が予測不能な形で突発的に死亡した場合とした。追跡期間の中央値は3.7年であった。

 
解析の結果、大動脈弁置換術(AVR)もしくは経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)施行時までに自覚症状がある症候性の突然死発生率は9.2%、自覚症状がない無症候性の突然死発生率は7.2%(年率1.4%)だった。
この発生率は、過去の報告(N Engl J Med 2000; 343: 611-617Circulation 2005; 111: 3290-3295)よりも高かった。

 
また、無症候性突然死を迎えた患者82例中54例(66%)は症状が出現することなく死亡し、54例中35例は突然死が発生する3カ月前までに医療機関を訪れていた。


この結果について、谷口氏は「ASのフォローアップを受けてから、さほど時間が経過しないうちに突然死が発生しているケースが少なくないことを示している」と説明した。

 
さらに、有意な突然死の予測因子は、血液透析実施、心筋梗塞既往、大動脈弁最大血流速度5m/秒以上、左室駆出率(LVEF)60%未満、BMI 22未満であった。

 
特に、血液透析実施例の突然死発生率は5年時点で23.3%で、非実施例の6.5%と大きな差が見られた。

 
以上の結果から、同氏は「重症ASにおける突然死のリスク上昇には、心エコーで測定できる血流速度やLVEFだけでなく、患者背景も強く関連していた。この点も踏まえて、重症AS患者への介入に最も適するタイミングを検討する必要がある」と述べた。




<きょうの一枚の絵> 
img015 のコピー

千住 博 「光の肖像」 




一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室 
 

「血中コレステロール管理ガイドライン(GL)AHA 2018」

「スタチン開始を迷うケース」の指針示す 米・脂質管理ガイドライン改訂 ①初発予防

https://medical-tribune.co.jp/news/2018/1130517241/

ACC /AHAは、5年ぶりの改訂となる「血中コレステロール管理ガイドライン(GL)2018」(以下新GL)を、AHA学術集会(AHA 2018.11.10~12.、シカゴ)で公表した。
動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の初発予防では、スタチン開始の判断に迷うケースのリスク評価にリスク増強因子、冠動脈石灰化(CAC)スコアを導入。
個別化されたリスク評価に基づき、患者と医療者が十分話し合って治療方針を決定することを重視する姿勢を鮮明にした。
新GL策定には関連10学会が参画し、作成委員会には薬剤師、看護師、患者グループの代表も含まれた。
新GLの全文、要約版は、Circulation、J Am Coll Cardiol(2018年11月10日オンライン版)に同時掲載された。


リスク増強因子、CACスコアでリスク個別化目指す

新GLでは、LDL-C管理目標値の撤廃、リスク評価に基づきスタチンの適用・強度を推奨する2013年の前GLのコンセプトを堅持しつつ、前GLへの批判や最新のエビデンスを踏まえ、大きく舵を切った。
「リスク個別化という"進化"が、新GLに大きな変貌をもたらした」。
記者会見の冒頭、新GL作成委員会副委員長(前GL委員長)で米・Northwestern University教授のNeil J. Stone氏はこう指摘した。

 
2013年GLでは、LDL-C管理目標値の撤廃、スタチンの適用拡大が論争を巻き起こした。
新規リスク評価Pooled Cohort Equations(PCE)による「10年ASCVDリスク」がリスクの過大評価や過小評価を来すとの懸念が浮上。ことに低リスクの初発予防グループにおいて、スタチンの過剰投与を招くとして批判を浴びた。
Stone氏や新GLも、過大評価や過小評価の可能性を認めている。

 
初発予防における改訂の柱となるのが、こうした批判に応えるべく、リスク評価の個別化を目指した点だ。
スタチン開始の判断に迷う"グレーゾーン"の患者群に対し、治療方針決定の補助ツールとして、
①リスク増強因子
②CT検査によるCACスコア
―の2つを導入。
より詳細に個々の患者のリスクを把握した上で、患者と医療者が十分話し合って治療方針を決定することとした。
新GLでは、患者・医療者間の話し合い自体を推奨に加え、重要性を強調(ClassⅠ:強い推奨)、治療アルゴリズムにも明記した。

 
リスク増強因子には、以下のものが含まれる。

■早発性ASCVDの家族歴(男性55歳未満、女性65歳未満)

■原発性高コレステロール血症(LDL-C 160~189mg/dLの持続)

■メタボリックシンドローム

■慢性腎臓病(CKD)

■慢性炎症状態(乾癬、関節リウマチなど)

■女性特有の早発閉経歴、子癇前症など後年のASCVDリスクを増大させる妊娠関連状態

■高リスク民族(例えば南アジア系)

■脂質/バイオマーカー

・持続するトリグリセライド(TG)上昇、原発性高TG血症(TG 175 mg/dL以上)

(測定可能であれば)

・高感度C反応性蛋白(hsCRP)2.0mg/L以上

・リポ蛋白(a) 〔Lp(a) 〕50mg/dL以上

・Apo B 130mg/dL以上

・足関節上腕血圧比(ABI)0.9未満

私的コメント;
南アジア系が
ASCVDのリスク増強因子であるというのは常識なのでしょうか。
また、脂質/バイオマーカーは勉強になりました。 


CACスコアが治療方針決定の"タイブレーカー"に

具体的には、40~75歳で糖尿病合併がなく、LDL-C 70mg/dL以上190mg/dL未満の初発予防例を、10年ASCVDリスクにより、以下の4つに分類した。

①低リスク(5%未満)

②境界域リスク(5%以上7.5%未満)

③中等リスク(7.5%以上20%未満)

④高リスク(20%以上)

 
②と③が、グレーゾーンに相当する。

 
低リスク群には危険因子を低減するライフスタイルを強調(ClassⅠ)。
高リスク群には高強度スタチン(LDL-Cを平均50%以上低下)を開始(ClassⅠ)、と明確だ。

 
一方、境界域リスク群では、リスク増強因子があれば中強度スタチン(LDL-Cを平均30~49%程度低下)の開始を話し合う(ClassⅡb:弱い推奨)。
この群は前GLでは中強度スタチンが妥当(ClassⅡa:中程度の推奨)とされており、推奨が弱まっている。
CACスコアはルーチンには使用せず、特別なケースにのみとする。

 
中等リスク群に対しては、リスク増強因子があれば中強度スタチンを推奨(ClassⅠ)。
リスク増強因子を考慮しても、判断に迷う場合には、CACスコアの測定を考慮する。

 
CACスコアが0で糖尿病、早発性冠動脈疾患の家族歴、現在の喫煙などのリスクがなければ、スタチン開始を差し控えてよく、5~10年後に再評価。
①CACスコア1~99(特に55歳以上)
②同スコア100以上または75パーセンタイル以上
―なら、スタチン開始が妥当とされた(いずれもClassⅡa)。

 
Stone氏は、CACスコアは治療方針決定における"タイブレーカー"(同点試合で勝敗の決着をつける手順やルール)であり、スクリーニングツールではないと強調している。
被曝線量は、マンモグラフィー並みだという。

 
なお、LDL-C 190mg/dL以上なら、10年ASCVDリスクの評価なしに高強度スタチンを推奨(ClassⅠ)。
最大耐用量のスタチンによってもLDL-C 100mg/dL以上なら、まずエゼチミブを追加(ClassⅡa)。
それでもLDL-C 100mg/dL以上で複数の危険因子を有するなら、次いでPCSK9阻害薬を考慮してもよいとした。

 
40~75歳の糖尿病合併例でLDL-C 70mg/dL以上なら、やはり10年ASCVDリスクの評価なしに中強度スタチンを推奨(ClassⅠ)。
複数の危険因子を有するか、50~75歳なら、高強度スタチンも妥当とした(ClassⅡa)。

 
スタチン開始または用量変更の4~12週後に脂質レベルと安全性をチェックし、その後は3~12カ月後に検査を実施して、ライフスタイルや薬物療法変更の必要がないか、アドヒアランスやLDL-C低下療法の効果をチェックすることを推奨している。
脂質検査値に関して、多くの状況で空腹時にこだわる必要がないことを示すデータが集積されつつある。
新GLでは、20歳以上の成人で脂質低下療法施行中でなければ、空腹時、非空腹時のいずれの測定も、ASCVDリスクの評価やベースラインのLDL-C値の記録に有効としている(ClassⅠ)。


対象を小児にも拡大

新GLのタイトルから「成人のための」との文言が消え、小児への推奨も初めて盛り込まれた。
若年からの生涯にわたる健康的なライフスタイルが危険因子の進展を防ぎ、ASCVD抑制の鍵となることを前面に打ち出した格好だ。

 
小児からの生涯にわたる健康的なライフスタイルの推奨とともに、
①早発性ASCVDまたは著明な高コレステロール血症の家族歴を有する小児のスクリーニングは、2歳で開始が妥当(ClassⅡa)
②肥満または他の代謝性危険因子を有する若年者には、スクリーニングが妥当(ClassⅡa)
③ハイリスクの家族歴または他の心血管危険因子を伴わない例も含め、全若年者において9~11歳で一度、17~21歳で再度スクリーニングを実施することが妥当な可能性がある(ClassⅡb:弱い推奨)
―とした。

 
家族性高コレステロール血症(FH)患者を早期に見いだすことで、未診断の家族にも検査を実施し、家族ぐるみでリスク軽減を図る意図があるという。

 
ところで、PCEでの「10年ASCVDリスク」によるリスクの過大評価に関しては、女性での懸念が指摘されていたが、最新の検証ではリスクをよく識別することが確認されているという。
日本人が含まれる東アジア人では、リスク過大評価の可能性が明記されている。

 
とかく批判のある同リスクだが、2013年以前のフラミンガムリスクスコアと異なり、脳卒中リスクやアフリカ系米国人のデータも盛り込まれた点は、大きな前進だ。
ひるがえって、日本では現在も、冠動脈疾患発症予測モデルに基づきリスクを評価している。
欧米に比べて脳卒中の臨床的な重みが大きい日本においても、脳卒中リスクを加味したリスク評価が求められるのではないだろうか。


私的コメント;
米国での人口比についてはヒスパニック系が
アフリカ系米国人を抜いて、今や後者は人種別で第3位に甘んじています。

第2位ヒスパニック系のデータも盛り込まれているのでしょうか。
 


<関連サイト>

脳卒中一般の危険因子の管理 ~ 脂質異常症

・海外の研究では高コレステロール血症は脳梗塞の危険因子であることが報告されている。(IIb)

・4S、CARE、LIPIDのいずれにおいても、事後解析によりスタチン大量投与(本邦の常用量の 2 ~ 4 倍)により脳卒中発症予防効果が認められた。(Ib)

・これまでに行われたスタチンの大規模臨床試験をメタアナリシスにより解析した成績ではスタチンによる30%前後の脳卒中予防効果が示されている。(Ia)

・しかし、いずれの試験においてもスタチンの投与量は、本邦での臨床用量より多く、しかも、冠動脈疾患患者が対象であった。

・一方、HPS、PROSPER、l ALLHAT-LLTでは対象を閉塞性血管疾患(末梢血管疾患、 脳卒中など)の既往、糖尿病または高血圧症など冠動脈疾患以外の患者も対象とした。 

HPSではシンバスタチン40mg投与群での全脳卒中発症の相対危険度は25%低下したが、 出血性脳卒中の相対危険度の低下は認められなかった。(Ib)

・PROSPERおよびALLHAT- LLTでもプラバスタチン40mg投与群で脳卒中発症抑制効果はいずれも有意ではなかった。(Ib)

・また、本邦で行われたKLISでは脳梗塞と心 筋梗塞の既往のない脂質異常症患者を対象とした研究で、プラバスタチン10~20mgによ り22%の脳梗塞相対危険度の低下を認めたが、有意ではなかった。(Ib)

・同じく本邦で行 われたPATEでは脂質異常症の 高齢者を対象としてプラバスタチン 5 mg(低用量)もしくは10~20mg(標準用量)の効果が 検討されたが、血管イベント全体の発生率は低用量群に比して標準用量群で有意に低かったものの、脳梗塞の発生率は両群で有意差を認めなかった。(Ib)  

・低HDL血症と脳梗塞に関しては、日本人を対象とした研究では、低HDL血症が脳卒中および脳梗塞の独立した危険因子であることが報告された。 (IIb)

・その後、総コレステロールと脳卒中に関しては29のコホート研究を解析したAsian Pacific Cohort Studies Collaborationの結果が発表され、総コレステロールが 1 mmol/L(38.7 mg/dL)増えると、脳梗塞の発症が25%増加することが示された。(Ia)

最近韓国から発表された観察研究によれば、787,442名に発症した6,328件の虚血性脳卒中のデータを解析したところ、コレステロール値が高くなるほど虚血性脳卒中の危険度は高まるという結果が示されている。(IIb)

・本邦で行われたJapanLipidInterventionTria(lJ-LIT)のサブ解析では、冠動脈疾患を有さない脂質異常症患者にシンバスタチン 5 ~10mgを投与し、6年間追跡したところ、脳出血発症頻度と血清脂質値の間に有意な相関はなかったが、脳梗塞発症の相対危険度は、総コレステロールが240mg/dL以上、LDL-コレステロールが160mg/dL以上、中性脂肪が150mg/dL以上で有意に高かった。(IIb)

・脂質異常症の有無にかかわらず、スタチン による積極的なLDL-コレステロール低下療法が脳卒中発症のリスク軽減に有効である。


私的コメント

どうやら脂質異常症と脳卒中の関連については、冠動脈疾患合併の有無、そして脳卒中自体を虚血性脳卒中と出血性脳卒中に分けて考えた方がよさそうです。



<参考サイト>

脳梗塞再発予防(抗血小板療法、無症候性脳梗塞を除く) ~ 脂質異常症

http://www.jsts.gr.jp/guideline/089_090.pdf

1.脳梗塞の再発予防に脂質異常症のコントロールが推奨される。(C1)

2.高用量のスタチン系薬剤は脳梗塞の再発予防に有効である。(B)

3.低用量スタチン系薬剤で脂質異常症を治療中の患者において、EPA製剤の併用 が脳卒中再発予防に有効である。(B)


脂質異常症と脳卒中

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/36/2/36_144/_pdf


糖代謝異常・脂質異常症と脳卒中の疫学:久山町研究

https://www.jstjage.jst.go.jp/article/stroke/advpub/0/advpub_10407/_pdf/-char/ja



LDLコレステロール高値、脳卒中の危険因子とならない?

https://www.m3.com/clinical/sanpiryoron/124469

(私的コメント;パスワードが必要ですがm3.comに入会されている先生方は閲覧可能です。結構興味深い記事ですが、ちなみに「高値は危険因子ではない」と主張される教授は医師ではありません)

 


<きょうの一曲>

Haydn ~ハイドン交響曲第45番 「告別」 第4楽章

https://www.youtube.com/watch?v=l_LOkxtLeVI



<きょうの一枚の絵>

img026 のコピー

千住 博  「冬の滝」(2017)



 

EMPA-HEART

EMPA-HEART:empagliflozinがCVD併存糖尿病の左室心筋重量を減らす可能性

SGLT2阻害薬empagliflozin(商品:Jardiance、Boehringer Ingelheim/Lilly)による治療が、安定型心血管疾患(CVD)および2型糖尿病(T2D)を有する患者の左心室(LV)の構造および機能に有益な効果をもたらすことを、新たな研究が示唆している。


約100例を対象とする無作為化試験EMPA-Heart Cardiolink-6では、empagliflozin 10mg/日を6ヵ月間にわたり投与した患者の左室心筋重量が、プラセボ投与患者と比較して有意に減少したことが明らかになった。

またこの経口薬は、収縮期血圧を有意に低下させ、ヘマトクリット値の上昇にも関連した。

「これらのベネフィットは、駆出率が維持され、HFの既往がない正常血圧集団でみられた。しかも、標準治療である」と、筆頭著者は、米国心臓協会(AHA)学術集会2018で行われたlate-breaking science sessionの出席者らに語っている。


これらの研究成果や同学術集会で発表されたその他の結果の理由について、「私が抱えるT2D患者、とくにHFや冠動脈疾患の既往歴がある患者に対して、SGLT2阻害薬の使用を増やそうと考えている」と、ある討論参加者はセッション中に発言した。
 

「私は皆さんにも同じような治療を推奨したい。また、総合診療科、内分泌科、腎臓内科の同僚たちにもこの情報を勧めるよう呼び掛けてほしい」と同氏は付け加えている。


SGLT2阻害薬と心不全

AHA学術集会ではDECLARE-TIMI 58試験の結果も発表された。
SGLT2阻害薬dapagliflozin(商品名:Farxiga/Forxiga、AstraZeneca)の投与を受けたCVDおよびT2D患者では、HFによる入院が有意に減少した。
また、主要心血管イベント(MACE)の発生率は、有意ではないものの低下傾向であった。


別のSGLT2阻害薬canagliflozinは、以前にCANVAS試験(T2Dを有する成人またはCVDのリスクを有する成人1万人超を対象とした試験)で評価されている。
米国食品医薬品局(FDA)は、先月、CV予防薬として同薬を承認した。

empagliflozinは、T2Dを有する成人の血糖コントロールを改善するための食事療法および運動療法における補助療法として、2014年にFDAから最初の承認を受けた。
 

2015年に発表されたEMPA-REG Outcome試験の結果により、T2DでCVDの既往がある成人参加者7,020例(ベースライン時にHFを有していたのは約10%)のうち、empagliflozin投与患者はプラセボ投与患者と比較して死亡率が低いことが明らかになった。
これは、死因に無関係に示されたベネフィットである。


事実、MACEの発生率が14%低下、HFによる入院の発生率が35%低下したことに加えて、CVによる死亡の相対リスクは38%低下し、全死因死亡の相対リスクは32%低下していた。

2016年にFDAは、添付文書にこの特定集団におけるCV死亡率の低下を明言する表示を認めている。

さらに欧州心臓学会議(ESC)2016で発表されたEMPA-REG試験に関するサブスタディでは、同薬のCVベネフィットは患者のHF状態に影響しないことが示された。

2017年の同会議では別のサブ解析による結果が示された。
このデータでは、ベースラインで90%の患者がHFを発症していなかった。
試験薬投与後のHFの相対的発症リスク低下は、低~中等度リスク群で29%、高リスク以上群では45~50%であった。


「この試験では、EMPA-REG試験の参加基準を満たした人々(すでに何らかのリスクを有する集団)のリスクスペクトルを通して、実際にHFリスクの低下が証明された。われわれが糖尿病患者を治療する際には、これらの薬剤について真剣に考えるべきである」と、ある共同治験責任医師は述べている。
ただし同氏は、この研究結果に関する理由は仮説に基づいたものであることも指摘している。


答えが出ていない問題

これらの薬剤がどのように作用するのか複数のメカニズムが浮上している。
そして、ナトリウムの排泄増加、間質性浮腫の減少、心臓のナトリウム水素交換の阻害、心臓バイオエナジェティックスの改善といった、うっ血性HFへの影響である。


しかし、SGLT2阻害薬が心臓リバースリモデリングを促進するのか否かは、今なお完全に明らかにはなっておらず、これは答えが出ていないが臨床的に重要な問題である。

左室心筋重量は、強力でHFを含むMACEにおける独立した予測因子である。
さらに、左室心筋重量の減少量は、薬物療法やデバイス治療でみられる臨床的成果によるベネフィットの程度と相関している。
 

EMPA-HEART試験の主要評価項目は、6ヵ月後のLVリモデリングにおけるempagliflozinの有効性であった。
副次評価項目の1つは、この種の効果に関連する病態生理学的機序を同定することであった。

治験責任医師らが40~80歳の患者423例の適格性を評価したところ、これらの患者全員がT2Dの既往と、安定型CVDの既往を有していた。除外基準は、LV駆出率(LVEF)が30%未満であること、および/または高血圧が原因のHFに罹患中もしくは直近の罹患であった。

除外、中止、スクリーニングの失敗、データミスがあったため、最終分析に含まれたのは参加者97例であった。
これらの患者をempagliflozin群(49例、男性90%、平均年齢62.2歳、T2D罹患年数11.8年)とプラセボ群(48例、男性96%、平均年齢63.5歳、T2D罹患年数10.1年)に無作為に割り付けた。
ベースライン時および6ヵ月時に、心蔵MRIとバイオマーカーのデータを収集した。


ベースライン時点で、各治療群の25%がインスリンを、96%がスタチンを使用していた。
またACE阻害薬/ARBを使用していたのはempagliflozin群82%、プラセボ群85%であった。
さらに収縮期血圧は134mmHg vs.135mmHg、推定糸球体濾過量(eGFR)は87mL/分/1.73m
2 vs.88mL/分/1.73m2、左室心筋重量係数(LVMI)は59.3g/m2 vs.62.2g/m2であった。


達成された主要評価項目

6ヵ月間の実薬投与群(平均変化-7.9mmHg)の収縮期血圧の低下幅は、プラセボ群(-0.7mmHg、p=0.003)と比較して有意に低下していたことが示された。
拡張期血圧のベースライン時からの変化については、群間の有意差はなかった。

また、ヘマトクリット値の上昇幅も実薬投与群のほうが大きかった。

主要評価項目については、empagliflozin群はプラセボ群と比較してLVMIがベースラインから有意に低下していた。

左室心筋重量退縮の感度分析において、身長(p=0.03)、身長1.7(p=0.02)、身長2.7(p=0.01)、体重(p=0.005)に対する左室心筋重量係数に有意差が認められた。


副次評価項目である心臓MRIについては、LVの収縮末期容積および拡張末期容積に関して実薬群とプラセボ群間に有意な補正群間差は認められなかった。

さらに、有意ではないとはいえこの小規模な試験において、実薬群では短期間で[LVEF]が2.2%上昇し、プラセボ群では0.01%低下(p=0.07)したとわかったことは、注目に値することと考える。


NT-proBNP、トロポニンI、可溶性ST2レベルについても、有意な群間差は認められなかった。
このコホートではベースライン時点でこれらの値は低く、治療期間中はempagliflozinの影響を受けることがないままだった。

治療から6ヵ月後の有害事象(AE)についても同様に群間差がなく、1つ以上のAEの報告はempagliflozin群で28例、プラセボ群で27例であった。
1つ以上の重篤なAEの報告はempagliflozin群3例、プラセボ群1例であった。
AEが原因で治療を中止した患者はempagliflozin群4例、プラセボ群3例であった。

低血糖、代謝性アシドーシス、脳卒中、HFあるいはHFによる入院、心筋梗塞、または死亡は、いずれの患者においても報告されなかった。


総合的に考え、このデータは、empagliflozinが統計的および臨床的に有意なリモデリングを早い段階で促していることを示唆している。
これは、EMPA-REG Outcome試験および他のSGLT2阻害薬の試験で観察されたCVおよびHFに対するベネフィットに寄与する可能性がある。

この研究結果は同クラスの薬剤を評価する今後の研究の理論的根拠を提供するものでもある。

これは、この領域で進行中の複数のHF研究への偉大な橋渡しとなる。


重要なステップ

SGLT2阻害薬は血糖値を改善するとともに体重減少を促進し、アルブミン尿やeGFRの低下を抑制し、HFによる入院の減少がすでに示されている。

現行の試験は、HFによる入院の減少というベネフィットを「解明する」ために実施されたものだ。

6ヵ月間の評価期間でempagliflozin群の左室心筋重量は有意に減少した。
これは重要な結果である。
なぜならこの試験は、きわめてしっかりとした方法で実施されたからだ。
また、低リスク集団で実施されたことに留意することも重要である。
左室心筋重量の減少について観察した研究はしっかりとしたものであり、一連の補正を試みた後にも持続していた。

ただし、同氏はEMPA-HEART試験の研究者らを称えつつも、次のように述べている。
われわれの研究は終わっていない。
われわれは、SGLT2阻害薬の生理学的効果を引き続き評価し、生体エネルギーや心房周囲脂肪に対する直接的な心筋効果があるのか否かを追求する必要がある。

EMPA-HEART試験は、患者により精確な治療を提供するという最終目標に向けた、臨床的トランスレーショナル研究の探求に対する重要なステップである。


empagliflozinの使用によって、後負荷と前負荷が左室心筋重量の減少に関連するという生物学的に妥当なデータが提示された。
左室心筋重量が増大するほど、HFを含む多くのCVイベントにおけるリスクが高くなる。

DECLARE-TIMI試験の結果と最近のメタアナリシスの結果を考え合わせ、T2D患者、とくにHFや冠動脈疾患の既往歴がある患者へのSGLT2阻害薬の使用を全体的に増やそうという流れも出ている。


「成り行きを見守ろう」

今回の研究結果については、どちらかというと成り行きを見守るという態度をとっている立場の専門家もいる。

この研究グループが観察、追跡しているのは少数の患者である。
だが、ほぼ間違いなく最良の技術を使用して心室の解剖学的構造を評価している。


今回の研究では、この小規模コホートで有意義なリモデリングを報告し、SGLT2阻害薬投与群において有益だと判断した。
つまり、何かが進行しており、仮説が出来上がりつつあるということだ。
全般的に、FDAを含むこの業界の人たちは、心室の解剖学的構造の変化がエンドポイントの代用として意味のあるものと考えている。

また、この研究は生物学的妥当性を示しており、これが付帯現象ではなく現実であるという信頼性を示している。

この点において、糖尿病が原因のHF患者への治療ポートフォリオの1つとして、これらの薬剤を期待することは、非常に魅力的なことである。


<きょうの一曲> 

Jacqueline du Pre - Silent Woods (Dvorak)

https://www.youtube.com/watch?v=yZYmFWcHdB4



 

<きょうの一枚の絵> 

img026 のコピー 3

千住 博  「朝陽富士」 (2018)



一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室 

CARMELINA試験

またしてもDPP-4阻害薬・・・安心なことも リナグリプチンのCARMELINA試験

https://medical-tribune.co.jp/rensai/2018/1205517295/


以下は山田 悟 先生の書かれた記事の紹介です。


研究の背景:DPP-4阻害薬の既報試験はいずれも心血管アウトカムが改善せず

米国では、新規の糖尿病治療薬が食品医薬品局(FDA)に承認されるには、既存の糖尿病治療と同等の血糖管理(HbA1c)を達成し、その上で心血管イベントを増やさないことを証明しなくてはならない。
これが、FDAの2008年12月のガイドライン改訂の要点であり、それ以後に登場してきた糖尿病治療薬は心血管アウトカム試験の実施が必須になっている。

 
最近では、EMPA-REG OUTCOME、CANVAS program、LEADER、SUSTAIN-6といった心血管アウトカム試験において、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬の心血管イベントの抑制効果が示され、米国糖尿病学会(ADA)/欧州糖尿病学会(EASD)の糖尿病薬物療法のアルゴリズムが大きく変わろうとしている。
そんな中、取り残されている感があるのがDPP-4阻害薬である。

 
既報のDPP-4阻害薬の心血管アウトカム試験はSAVOR-TIMI53、EXAMINE、TECOSのいずれもが心血管イベントに対して有意な抑制を示すことはできなかった。
残されているのは、CARMELINA(
CArdiovascular safety and Renal Microvascular outcomE study with LINAgliptin)およびCAROLINAという、いずれもリナグリプチンの試験であり、ドイツ・ベルリンで開かれた今年(2018年)の欧州糖尿病学会(EASD2018、10.1~5)でCARMELINA試験の結果が報告され
た。
そして、やはり、心血管イベントの抑制効果を示すことはできなかった。


研究のポイント1:プラセボ対照のリナグリプチンのRCT

CARMELINAはプラセボ対照のリナグリプチンの心腎血管アウトカム試験である。
CAROLINAはSU薬対照の試験であるので、対照薬の相違が両者の相違と考えれば理解しやすいであろう。
CARMELINAは世界27カ国で実施された二重盲検試験であり、18歳以上、HbA1c 6.5~10.0%、BMI 45未満の2型糖尿病患者を対象とした。
また、心血管イベントの高リスクで、腎障害があることも要件とされた。


薬物療法については、薬物非使用者であっても薬物使用者であってもよいこととされていたが、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬の使用者は除外された。
また、直近2カ月以内の心筋梗塞、急性冠症候群の既往者、直近3カ月以内の脳卒中、一過性脳虚血発作の既往者、直近2カ月以内に冠動脈再灌流療法を受けた者、推算糸球体濾過量(eGFR)15 mL/分/1.73m
2の末期腎臓病患者などは除外された。

 
登録された患者は1:1でリナグリプチン群(5mg/日投薬)とプラセボ群とにランダムに割り付けられ、介入開始後12週および、その後は24週ごとに試験機関を受診することが求められた。

 
主要エンドポイントは、当初は4ポイントMACEとも呼ばれる複合エンドポイント
①心血管死
②非致死性心筋梗塞
③非致死性脳卒中
④不安定狭心症による入院
―のいずれかの初発までの時間
であったが、世の中の一般的な流れに従って2016年にプロトコルの変更がなされ、3ポイントMACEと呼ばれる複合エンドポイント(①心血管死②非致死性心筋梗塞③非致死性脳卒中―のいずれかの初発までの時間)とされた。

 
重要二次エンドポイントとして複合腎エンドポイント(①末期腎臓病②腎疾患死③40%以上のeGFRの低下―の初発までの時間)も検討された。
それ以外にも心不全による入院なども三次エンドポイントとしてカウントされた。

 
さらに、リナグリプチンのプラセボに対する非劣性を90%の検出力で示すには、全体で主要エンドポイントが611件発生する必要があると計算され、試験期間は主要エンドポイント611件の発生までとされた。
また、非劣性が確認された後には、主要エンドポイント(心血管アウトカム)および重要二次エンドポイント(腎アウトカム)の優越性についても検討することとされた。


研究のポイント2:27カ国605施設の6,979例が解析対象

2013年8月~16年8月に世界27カ国605施設の1万2,280例がスクリーニング対象とされ、6,991例がランダム化の対象とされた。
このうち6,979例が少なくとも1回以上の試験薬の投薬を受けた。

 
被験者の多くが欧州(2,934例、42.0%)と南米(2,310例、33.1%)から登録され、北米(1,180例、16.9%)やアジア(555例、8.0%)からの登録は少数であった。
投薬を受けた6,979例は、年齢65.9±9.1歳、男性4,390例(62.9%)、白人5,596例(80.2%)、eGFR 54.6±25.0mL/分/1.73m
2、BMI31.3±5.3、HbA1c 7.9±1.0%、糖尿病罹病期間14.7±9.5年という集団であった。

 
また、6,691例(95.9%)が降圧薬を、5,018例(71.9%)がスタチンを内服しており、全体として収縮期血圧140.5±17.9mmHg、拡張期血圧77.8±10.5mmHg、LDLコレステロール(LDL-C)91±40mg/dL、トリグリセライド188±133mg/dL、HDL-C 45±13mg/dLという状況であった。


研究のポイント3:やはり心血管疾患の予防効果は示されず

中央値2.2年の試験期間において、主要エンドポイントである3ポイントMACEはリナグリプチン群で3,494例中434例(12.4%、 5.77/100人・年)、プラセボ群で3,485例中420例(12.1%、 5.63/100人・年)に生じ、優越性検定で両群に差異はなかった。


重要二次エンドポイントである腎複合エンドポイントについても有意差はなかった。

 
また、それ以外の大血管障害のアウトカムについては全く統計学的な差異はなかった。
SAVOR-TIMI53以降懸念されている心不全による入院についても有意差はなかった。

 
ただし、複合細小血管障害や腎症(アルブミン尿)の発症・進展については統計学的に有意な予防効果を示した。


有害事象については、両群で統計学的な差異はなかった。
ただ、少数で(明記はされていないが統計学的な差異もないと思われるので)はあるが、膵がん、急性膵炎、類天疱瘡はリナグリプチン群の方が発症数としては多かった。


山田先生の考察:腎障害患者にリナグリプチンは安心して使用できることが確認

本試験においてもDPP-4阻害薬は心血管アウトカムを改善することはなかった。
このことは、糖尿病治療における第二選択薬(第一選択薬はメトホルミン)においてSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動に比較してDPP-4阻害薬の立場を低いものとする、ADA/EASDの合同レポートを支持することになろう。
今後、わが国における薬物療法の選択においても間違いなく影響が出よう。

 
しかし、その一方で、アルブミン尿など細小血管障害に対しては部分的にポジティブな印象を示してくれた。C
ARMELINAは既存のDPP-4阻害薬の心血管アウトカム試験(SAVOR-TIMI53、EXAMINE、TECOS)と比較すると、最も腎機能の低下した集団を対象にした試験である。


元来、DPP-4阻害薬の中でもリナグリプチンは腎機能低下患者に安心して投与できる(投薬量を変更しないでよい)薬剤とされていたが、そうした患者においても心血管アウトカムを悪くすることはなく、アルブミン尿や細小血管障害の状況を改善できるかもしれないという今回の結果は、ネガティブな中にもポジティブな面を見いだせる臨床試験といえるかもしれない。

 
また、TECOS試験同様、このCARMELINA試験でも心不全入院を増やすことはなかった。
腎機能が低下した患者においては、薬物療法の選択肢が狭まるだけに、こうしたデータは貴重といえるのかもしれない。



<きょうの一曲>

Platti-Cello Sonata-Sebastian Hess, Axel Wolf


<きょうの一枚の絵>
12365_xl のコピー

ミッシェル・ド・ガラール 「花」



一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室 



 

HFrEFとHFpEFに合併するAFの違い

HFrEFとHFpEFに合併するAFの違い リスクマーカー・プロファイルに大きな差

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/etc/201812/558893.html

駆出率(EF)が低下した心不全(HFrEF)とEFが保たれた心不全(HFpEF)に合併する心房細動(AF)の病態生理学的機序の差を解明するため、欧州の研究者らが92種類のリスクマーカーを調査した。
その結果、HFrEFではAF合併者のリスクマーカーはほぼ全て、洞調律(SR)者より上昇していたが、HFpEFではリスクマーカー・プロファイルにばらつきがあることが判明した。
(Eur Heart J誌 2018.11.14)

 
今回の結果の臨床的意義として、
(1)AFがHFrEFとHFpEFのどちらに合併するかで治療に対する反応性が異なる可能性がある、
(2)リスクマーカー・プロファイルの差は、AF合併HFpEF患者をより正確に診断するためのバイオマーカー・パネルの作成に役立つ可能性がある、
を著者らは挙げている。


AFとHFの関係に関するこれまでの知見の大半は、HFrEFシリーズから得られた。
しかし、HFpEFはHFの約半数を占めており、HFrEFとHFpEFはいずれも高率でAFを合併する。
そこで、著者らは既報の観察研究(BIOSTAT-CHF)を事後解析し、HFrEF患者とHFpEF患者の両方を対象としてAF合併者とSR者のリスクマーカー・プロファイルを調査した。


対象は欧州11カ国で採用されたHF患者。
採用基準は、心機能障害を示す客観的エビデンスがあること(左室駆出率[LVEF]<40%または血中NTproBNP値>2000pg/mL)。
除外基準は、ペースメーカー調律者、調律不明者、LVEF不明者、LEVFが40~49%の患者(2種類のHF表現型を明確に区別するため)など。
最終的にHFrEF患者2152人(SR:1419人、AF:733人)、HFpEF患者524人(SR:286人、AF:238人)を今回の解析に採用した。


どちらのHF表現型でも、AF合併者の方がSR者より有意に高齢だった。
AF合併HFrEF患者には男性が多く、AF合併HFpEF患者は男女で差がなかった。冠動脈疾患既往率は、どちらの表現型でもAF合併者の方が低かった。


Olink Cardiovascular IIIパネルを用いて、2種類のHF表現型別にリスクマーカー・プロファイルを作成し、リアルタイムPCRを行って定量化した。


その結果、HFrEFでは、AF合併者の方がSR者より上昇していたリスクマーカーは92種類中77種類(84%)だった(均一的なリスクマーカー・プロファイル)。


対照的にHFpEFでは、AF合併者の方がSR者より高かったリスクマーカーは36種類(39%)にすぎず、51種類(55%)についてはSR者の方が高かった(ばらつきのあるリスクマーカー・プロファイル)。


リスクマーカー・プロファイルの差が他の共変量に重大な影響を及ぼしているのかを明らかにするため、全てのバイオマーカーの交互作用を調査したところ、多変量モデルにて年齢、性別、冠動脈疾患、体格指数(BMI)、腎臓量、高血圧などで調整後もなお、92種類中26種類が有意だった。


HFrEFとHFpEFの両方に共通して、AF合併者でSR者より有意に上昇していたマーカーはNTproBNP、ST2およびSPON1の3種類だった。


追跡期間中(中央値21カ月、四分位範囲:11~32カ月)の総死亡リスクは、多変量Cox回帰解析にて年齢、性別、BMI、心筋梗塞既往歴、PCI、CABG、高血圧、腎臓病で調整後もなお、HFrEFではAF合併者ではSR者より有意に増大していた。
しかし、HFpEFでは有意ではなかった。


AF合併者で上昇していたマーカーがほぼ全て予後不良関連だったことから、AFはHFrEFではHF進行を反映するものだが、HFpEFではHF重症度を反映するものではなく、個別に存在するバイスタンダーなのではないかと著者らは考えている。


今回の解析の限界として著者らは
(1)事後解析だった、
(2)HFpEFサンプルの方がHFrEFより小規模だった、
(3)誤分類の可能性がある、
(4)追跡期間中にAFを発症した患者に関する情報がなかった、
などを挙げている。


論文

Santema BT, et al. Comparing biomarker profiles of patients with heart failure: atrial fibrillation vs. sinus rhythm and reduced vs. preserved ejection fraction.
 Eur Heart J, 2018 Nov 14;39(43):3867-75.



<自遊時間>

日本の大学の研究力はガタ落ち、旧七帝大以外は「悲惨」

「日本人はもうノーベル賞を獲れない」です

東京大学宇宙線研究所の梶田隆章所長のインタビュー記事です。

彼自身、東大に身を置き莫大な研究費のもとでノーベル賞を獲得されました。

ただ「旧七帝大」という表現が鼻につきます。
研究実績があるから予算がつくのか
予算があるから研究実績が出るのか。
研究費と研究成果についてのコストパフォーマンスを含めた言及はありません。 
今も昔も、理論物理のように紙と鉛筆で成果を挙げる手法が一番予算がかからないことには間違いありません。 

<きょうの一枚の絵>
i-img600x450-1526966739phxrto371356

ミッシャル・ド・ガラール 「村



一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
 
  

果糖は血糖コントロールに有害か

果糖は血糖コントロールに有害か 155研究のシステマチックレビューとメタ解析の結果

https://medical-tribune.co.jp/news/2018/1203517266/

カナダ・トロント大学の研究チームは、果糖を含む食品が血糖コントロールに及ぼす影響ついてシステマチックレビューとメタ解析を実施。
その結果、果物などの果糖を含有する大部分の食品は血糖コントロールに有害作用を及ぼさず、カロリーが高くなければ有益な場合もある。しかし、栄養価は低いがカロリーが高い甘味飲料には有害作用が認められたとBMJ(2018;363:k4644)に発表した。


カロリー増加なければ大部分の果糖含有食品は無害

解析対象は、糖尿病患者および非糖尿病患者を最長12週間追跡し、各種の果糖含有食品が血糖コントロールに及ぼす影響を検討した研究155件(5,086例)。
対象を研究デザインに基づき
①同一エネルギー量の果糖含有食品と非含有食品を比較するSubstitution研究
②基準食に果糖含有食品を追加してエネルギー量が増加した食事と基準食を比較するAddition研究
③基準食から果糖含有食品を除去してエネルギー量が減少した食事と基準食を比較するSubtraction研究
④果糖含有食品と任意の非含有食品を比較するAd libitum研究
―の4種類に分類。評価項目はHbA1c値、空腹時血糖値、空腹時インスリン値として検討した。

 
その結果、果糖によるエネルギー量の増加がないSubstitution研究およびSubtraction研究では、いずれの評価項目においても果糖の有害作用が認められず、Substitution研究ではHbA1c低下効果が認められた。
それに対し、空腹時インスリン値に対する有害作用が、果糖によるエネルギー量の増加があるAddition研究およびAd libitum研究で認められた。


作用は食品の種類とエネルギー量により異なる

また、少なくとも1つの評価項目に関して、果糖によるエネルギー量の増加したのに対しSubstitution研究では果物およびフルーツジュースに有益作用が認められ、エネルギー量の増加があるAddition研究では甘味飲料およびフルーツジュースに有害作用が認められた。

 
有益作用のメカニズムについて、研究チーム代表は「果糖は他の糖質に比べてグリセミック指数(GI)が低く、果物は食物繊維の含有量が多いため、糖の放出が遅れて血糖コントロール改善につながった可能性がある」との見解を示している。

 
今回の結果について、研究責任者は「糖尿病の予防と管理において重要な果糖含有食品に関する推奨事項を示すのに役立つ可能性がある。ただし、さらに質の高い研究が必要だ」と指摘。
「より多くの知見が得られるまで、血糖コントロールに対する果糖の有害作用はエネルギー量および果糖含有食品の種類によって異なると認識すべきである」と結論している。



<きょうの一曲>

Manuel de Falla 'Jota' live // Ophélie Gaillard, cello



<きょうの一枚の絵>


img030 (2) のコピー

中川一政 椿 1977   個人蔵 


 

一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
 
   

高血圧は大動脈疾患のリスク因子

高血圧は大動脈疾患のリスク因子 日本の前向きコホート研究の結果

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/etc/201811/558643.html?ref=RL2

高血圧が大動脈疾患(AAD)のリスク因子かどうかを明らかにするために、全国的な前向きコホート研究が行われた。
解析の結果、高血圧はAADのリスク因子であり、AAD関連死の予防における降圧治療の目標値は収縮期血圧が130mmHg、拡張期血圧が82mmHgであることが示唆された。
(Circulation Journal誌 2018.10.25)


大動脈解離や大動脈瘤破裂などのAADは、死亡率が極めて高い。そのため、健康診断によって一見すると健康だが高リスクの個人を同定し、AADの発症を予防することが重要となる。
しかし、AADの発生率は低く、そのためにAAD発症のリスクに関しては解明されないままである。
心血管疾患では高血圧がリスク因子であることが実証されているが、AAD関連死に対する高血圧の影響に関する前向き研究は行われていない。
また、心血管疾患の一次予防では血圧を140/90mmHg未満に低下させることが複数のガイドラインで推奨されているが、AAD関連死の予防で推奨される血圧値に関するエビデンスはない。


そこで本研究では、日本で地域ベースの全国的な前向きコホート研究を実施し、健康と思われる個人で高血圧がAAD関連死の重要なリスク因子かどうかを検討した。


2008~2010年に年1回の特定健康診査・特定保健指導に参加した27万6197例(40~75歳、男性:11万1095例、女性:16万5102例)の全国的なデータベースを用いた。
死亡に関しては、2008~2012年に発生した全ての死亡(約600万)に関する死亡診断書を含むデータベースにアクセスして情報を得た。


高血圧は、収縮期血圧(SBP)が140mmHg以上および拡張期血圧(DBP)が90mmHg以上、または降圧剤の使用とした。血圧は2回測定し、その平均値を用いた。エンドポイントは、AAD関連死(大動脈解離と大動脈瘤破裂)だった。


104万9549人年の追跡期間中に、AAD関連死は80例発生した。AAD関連死の発生率は7.6/10万人年だった。高血圧は12万3063例(45%)で認められた。参加者全体の平均SBPは129mmHg、平均DBPは76mmHgだった。


カプラン・マイヤー法による生存分析では、高血圧の参加者は、高血圧ではない参加者よりもAAD関連死の発生率が高かった。
AAD関連死のリスク因子を同定するために、多変量Cox比例ハザード回帰分析を行った。
年齢、性別などで補正した後でも、高血圧は将来のAAD関連死の独立予測因子だった。
AAD関連死の受信者動作特性曲線で推定された血圧の最適なカットオフ値は、SBPが130mmHg、DBPが82mmHgだった。


米国心臓病学会をはじめとする2017年の複数のガイドラインで、高血圧はSBPが130mmHg超、DBPが80mmHg超と定義され、SBPを130mmHg未満まで低下させると、心筋梗塞、脳卒中、心不全、主要有害心血管イベントのリスクが低下すると指摘されている。
本研究では、AAD関連死の一次予防におけるSBP/DBPのカットオフ値は130/82mmHgであることが示された。
これは、心血管疾患の降圧治療の目標値と同程度である。
このことから、著者らは、厳格な血圧管理は心血管疾患のみならずAAD関連死の予防にも重要となる可能性がある、と述べている。


英文抄録

Otaki Y, et al. Effect of hypertension on aortic artery disease-related mortality - 3.8-year nationwide community-based prospective cohort study.
Circ J. 2018:82:2776-82.




<きょうの一枚の絵>

img026 のコピー 2
中川一政    「二つの壺の薔薇」 1986年




一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
 
  


NSTEMIにガイドライン推奨治療で生存率上昇

NSTEMIにガイドライン推奨治療で生存率上昇 MINAPデータベースを用いた英国のコホート研究

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/etc/201811/558752.html

英国のコホート研究で、非ST上昇心筋梗塞(NSTEMI)患者にガイドライン推奨治療を全て行うと生存率が向上し、高リスクの患者ほど生存に対する有益性が長期に及ぶことが示された。
(Eur Heart J誌 2918.11.7)


このコホート研究では、急性冠動脈症候群で入院した患者の治療や死亡に関する情報収集を目的とした、イングランドおよびウェールズのデータベースMyocardial Ischaemia National Audit Project(MINAP)から、2003年1月1日~2013年6月30日に退院時診断がNSTEMIだった患者のデータを取り出し、解析した。


ベースライン時のリスクは、年齢、心停止、ST部分の偏位、心筋酵素上昇、収縮期血圧、入院時心拍数、クレアチニン、ループ利尿薬(Killip分類の代わりに使用)に基づき、補正GRACEリスクスコアを算出して推定した。
その後、患者を低リスク(GRACEスコアが109未満)、中リスク(109以上140以下)、高リスク(140超)に分類した。


各患者について、ガイドライン推奨治療(13種類:入院前または入院中の心電図、入院前のアスピリン、心エコー検査、入院中のアルドステロン拮抗薬、冠動脈造影、退院時のアスピリン、退院時のP2Y12阻害薬、退院時のACE阻害薬/ARB、退院時のβ遮断薬、退院時のスタチン、心臓リハビリテーション施設への紹介、禁煙指示、食事に関する指示)の実施が適切と考えられたか評価した。
その治療が患者にとって禁忌または適応外だった場合は、不適切とした。
適切とされた全てのガイドライン推奨治療を受けた患者を最善治療群とし、適切なガイドライン推奨治療を1つでも受けなかった患者は非最善治療群とした。


主要転帰指標は退院後の総死亡率とした。flexible parametric survival modellingを用い、最善治療と生存との関連を患者のリスク別に評価した。
生存の差は、ハザード比(HR)と患者100人当たりの絶対死亡率(AMR/100)の差により定量化した。


院内死亡者および生存データがなかった患者を除く38万9057人を対象とした。
年齢の中央値は73歳であり、女性は14万3388人(36.9%)だった。
GRACEリスクスコアと生存データがそろっていた患者は18万4557人であり、内訳は低リスク患者7万3351人(39.7%)、中リスク患者5万9201人(32.1%)、高リスク患者5万2005人(28.2%)だった。


全体で4万4530人(11.5%)が最善治療を受けていた。
最善治療を受けていた患者は高リスクになるほど少なく、低リスク群が1万8785人(25.6%)、中リスク群が1万992人(18.6%)、高リスク群が5958人(11.5%)だった(P<0.001)。


追跡期間の中央値は2.3年(最長8.4年)で、この間に11万3856人(29.2%)が死亡した(100人年当たり10.5人の死亡)。


退院の30日後、高リスクおよび中リスクの患者では、ガイドライン推奨治療の実施により生存率が向上していた。
高リスクの場合、補正HRは0.66(95%CI:0.53-0.86)、AMR/100は-0.19(95%CI:-0.29~-0.08)で、中リスクの場合は補正HRが0.74(95%CI:0.62-0.92)、AMR/100が-0.15(95%CI:-0.23~-0.08)だった。


追跡期間終了時(退院の8.4年後)になると、ガイドライン推奨治療の有益性は中リスクでは有意ではなく、補正HRは1.04(95%CI:0.74-1.71)およびAMR/100は0.002(95%CI:-0.02~0.03)だった。
しかし、高リスクの場合は依然として有意な生存率向上を認め、補正HRは0.66(95%CI:0.50-0.96)、AMR/100は-0.03(95%CI: -0.06~-0.01)だった。


著者らは、低リスクのNSTEMI患者では生存率にガイドライン推奨治療による有益性を認めなかった理由について、非最善治療群であってもガイドライン推奨治療の割合が大きかったこと(ガイドライン推奨治療の割合の中央値は低リスク群83.3%に対し高リスク群72.7%)、低リスク群の死亡率が低かったため差を検出できなかったことが原因となった可能性があると述べている。


論文:

Hall M, et al. Guideline-indicated treatments and diagnostics, GRACE risk score, and survival for non-ST elevation myocardial infarction. Eur Heart J. 2018;39:3798-806.



<きょうの一曲>

Manuel De Falla 'Jota' from Spanish Folk Song Suite




<きょうの一枚の絵>

img025 のコピー 3




一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
 
  

冠動脈疾患2次予防は日本人でもLDL70未満に

冠動脈疾患2次予防は日本人でもLDL70未満に ガイドラインが求める100mg/dL未満より低リスク

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201811/558766.html

日本人の冠動脈疾患2次予防に関して、現行のガイドラインの推奨よりも広範囲の患者で、LDLコレステロール(LDL-C)70mg/dL未満を目標にできそうだ。
PCI治療後にスタチン投与によりLDL-Cが100mg/dL未満になっている患者集団でも、LDL-Cは急性冠症候群(ACS)再発の有意な危険因子になっており、LDL-C 70mg/dL未満を達成していた患者の方がACSの再発リスクは有意に低かったと、島根大学循環器内科の遠藤昭博氏らが米国心臓協会学術集会(AHA2018、11.10~12、開催地:シカゴ)で報告した。


我が国の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」では、冠動脈疾患の既往がある2次予防の患者に対するLDL-Cの管理目標値は100mg/dL未満であり、家族性高コレステロール血症やACSなどリスクが高い特定の病態のときに70mg/dL未満を考慮するとなっている。一方で、欧米の臨床試験の結果などから、我が国でも2次予防は原則LDL-C 70mg/dL未満にすべきとの議論もある。

遠藤氏らは今回、自施設でPCIを行った患者を対象に、PCI後のガイドラインの遵守状況と再血行再建術施行の関連を後ろ向きに検討した。


対象は、2007.1~2017.8にPCIを行い、遠隔期に再度冠動脈造影を行った315例。
データ欠損例や完全慢性閉塞症例、バイパス術既往症例は除外した。ベースラインの患者特性は平均年齢72歳、男性82%、高血圧合併率67%、脂質異常症合併率86%、糖尿病合併率50%、現在の喫煙率22%、CKD合併率35%といった集団だった。


初回のPCI後にスタチンが投与されていたのは315例中219例で、うち127例がLDL-C 100mg/dL未満達成、92例が未達成だった。
PCI後にスタチンが投与されていなかった96例中と、スタチンが投与されていたもののLDL-Cが100mg/dL以上だった92例の計188例をガイドライン不適格群、スタチンが投与されLDL-Cが100mg/dL未満になっていた127例をガイドライン適格群として、その後の再血行再建術施行のリスクを比較した。


平均7年の追跡期間中、185例(59%)に遠隔期の再血行再建術が施行されていた。
PCI施行部位は初回と同一病変が56例、新規病変が129例だった。
また86例が臨床的にACSとしての再発、99例が安定狭心症としての再発だった。


ガイドライン適格群、不適格群に分けて、再血行再建術の施行をエンドポイントとしてカプランマイヤー曲線による解析を行うと、全ての再血行再建術の施行、ACSに伴う再血行再建術の施行のどちらも、ガイドライン適格群の方が有意に発生リスクは低下していた。


さらに、ガイドライン適格群をLDL-C値により、70mg/dL未満群と70mg/dL以上100mg/dL未満群に層別してエンドポイントの発生リスクを比較したところ、全ての再血行再建術では有意な群間差を認めなかったが、ACSに伴う再血行再建術の施行は、LDL-C 70mg/dL未満群の方が有意に低率だった。


また、LDL-Cが100mg/dL未満になっていたガイドライン適格群について、ACSに伴う再血行再建術の施行に関連する患者背景因子をCox比例ハザードモデルで検討したところ、多変量解析ではLDL-Cのみが有意な因子になった。


演者は「単施設の後向き研究だが、生命にも直結するACSの再発リスクが、LDL-C 70mg/dL未満で有意減少したという知見は重要と考える。日本人の冠動脈疾患2次予防目的でも、ガイドラインが推奨する病態よりもより広い対象で、スタチンを使ってLDL-C 70mg/dL未満を目指すべきことを示唆する結果といえる」と話している。


<自遊時間>
こういう発表内容は一般国民の目の届かないところにあります。 

ニュースや新聞・週刊誌などでは取り上げられません。

通院中の患者さんが見るのは某週刊誌を主体としてメディアが取り上げる「コレステロールは下げてはいけない」「降圧剤はこんなに怖い」といったネガティブキャンペーンです。

メディアが取り上げる理由はただ一つ、こういった内容は売り上げを伸ばせるからです。

また記事のもととなるのが、斯界で有名な先生達ではなくもちろん本当の専門家でもありません。

中には医学部の教授の肩書きでありながら最終学歴が工学部、つまり医師でない人もいます。

循環器領域ではありませんが、◯ 藤◯という医師も数多くの確立された治療に対するアンティテーゼを数多く発表され多くの富を得られています。
これらの先生の共通点は、自分の考えを学会などの多くの医師のいる前で発表していないということです。 

つまり、学会に背を向けて国民に自分の考えをショートさせているのです。

客観的にみて、今回のような発表の有用性よりも彼らの有害性のほうがはるかに大きいのです。 

多くの学会は彼らに公開質問状を突きつけるわけでもなくダンマリを決め込んでいます。

これは実に不思議なことです。


話は変わりますが 、当院でもついにインフルエンザワクチンの在庫が底をつきました。

これはワクチン不足が騒がれた昨年にもなかったことで長い開業生活の中で初めての事態です。

これから1週間、ワクチン接種が出来ない状態が続き、13歳未満の2回目の接種(初回接種から4週間以内)が出来ない対象者が続出しそうです。
接種を希望されている方はもちろんのこと医療機関にも実害が及んでいます。
以前なら、製造メーカーないしは販売メーカーから「お知らせとお詫び」 の案内が配布されましたが、昨今は全くワクチン不足の情報が届かない以上事態です。
業者と顧客という関係も成り立たない状況で、いつの間にやら
製造メーカーにイニシアティブを取られる状況となています。
 

今年の問題点はワクチンの生産量の不足ではなく出荷が遅れていることです。

ちょうど、(厚労省の施策ミスで)医師不足ではなく医師偏在に拍車がかかっている状況と似ています。

足りないのではない点が両者に共通しています。

そして、日本医師会、日本(臨床)内科学会 や日本(臨床)小児科学会が全く動かないことです。
これも先ほどの話と酷似しています。

薬業界も「自主規制」とやらでやりたい放題です。
医師側の「自主規制」はまったくなく薬業界にはやられっぱなしです。


組織が動かないので(あまりにも個人的ではありますが) 当院では、何らかの薬業界に対する「自主規制」を検討中です。

 

 

<きょうの一枚の絵>

img025 のコピー 2

蛯子善悦 パンティオンの見えるパリ  15M 




一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

 

リードレスペースメーカ

リードレスペースメーカ、日本での現況は? 国内承認後1年の植え込み状況を報告

https://medical-tribune.co.jp/news/2018/1120517034/

リードレスペースメーカは本体とリードが一体化したカプセル型のペースメーカで、カテーテルを用いて大腿静脈経由で右心室内に留置する。
従来の経静脈ペースメーカで課題とされていたデバイスポケット/リード関連合併症の心配が無用となる他、手技時間の短縮などが期待できることから、日本では昨年(2017年)9月の販売開始以降、急速に使用が広がっている。
国立循環器病研究センター心臓血管内科部長の草野研吾氏は、第67回日本心臓病学会(9月13~15日)で、日本でのリードレスペースメーカの植え込み状況を報告するとともに、安全に植え込みを行うための注意点を提示した。


外国人患者と遜色のない治験成績

メドトロニック社製のリードレスペースメーカ・Micraは、全長7×26mm、体積1cm3未満、重さ2gという極小サイズで、欧州で2015年、米国で2016年、日本を含む世界19カ国の725例を対象とした国際共同治験(N Engl J Med 2016; 374: 533-541)では、植え込み成功率99.2%、6カ月後の主要な合併症非発生率96%だった。

主要な合併症は28件(4.0%)発生し、最も多かったのは心タンポナーデ(11件)だった。

 
同治験に参加した日本人患者は38例で、このうち適格基準を満たした36例(平均年齢78.2歳、体重58.8kg、BMI 23.1)に植え込みが行われた。
他国患者690例(同75.7歳、80.0kg、27.8)の成績と比較したサブグループ解析(Circ J 2017; 81: 1589-1595)では、植え込み成功率は日本人患者100%、他国患者99.1%、12カ月後の主要合併症非発生率はそれぞれ100%、95.7%だった。

 
草野氏は「日本人は体格が小さいため、心臓が小さく、植え込み施術が難しいケースが多いが、治験では外国人患者と同様の成績が示されている」と説明した。


1年間の植え込み成功率は98.9%

では、日本の実臨床におけるリードレスペースメーカの使用状況はどのようになっているか。
草野氏によると、今年8月31日時点の植え込み症例数は2,844例で、植え込み開始施設は335施設だった。

海外の2,772例 Global IDE試験、Registry試験などに登録され、試験として収載された情報に基づく成績)と比べた成績は次の通り。
植え込み後30日以内の死亡は、海外の43例(1.6%)に対し国内では15例(0.5%)。

植え込みとの関連ありと判定された患者は、それぞれ6例(0.2%)、2例(0.1%)だった。
重篤な合併症は海外の78例(2.8%)に対し国内では50例(1.8%)で、うち心囊液貯留/穿孔は各23例(0.8%)だった。
植え込み手技中の脱落は海外1例(0%)、国内7例(0.2%)、植え込み後の脱落はそれぞれ1例(0%)、4例(0.1%)だった。
植え込み成功率は海外99.0%、国内98.9%だった。

 
当初、心穿孔に起因する重篤な合併症の発生が散見されたが、これを重視した日本不整脈心電学会が注意喚起を行って以降、減少傾向にあるという。
一方で、脱落が最近やや増加傾向にある点が懸念されると同氏は指摘した。

 
心囊液貯留/穿孔は小さい体格(BMI 20未満)、高齢(85歳以上)、女性、肺疾患、心不全などが危険因子となる。
「日本ではこれらの因子を有する患者が植え込みの対象となりやすいため、合併症が起こりやすいと考えられるものの、その発生率は海外と同程度であり、慎重に施術されている状況がうかがえた」と同氏は述べた。

 
脱落は、11例中7例は手技中だったが、4例は術後1~6日に発生していた。
これに関して同氏は「退院前あるいは退院早期に脱落の有無を確認しておくことが重要かもしれない」との見方を示した。

 
植え込み不成功例(30例)において、原因として最も多かったのが「適切なペーシング閾値が得られなかった」の10例で、術中脱落(5例)、下大腿静脈の解剖学的異常(4例)が続いた。

 
以上から、同氏は「日本では欧米に比べ脱落例がやや多い傾向にあるが、その他の成績に大差はない。心タンポナーデが術直後でなくても出現(最大2~3週後)する場合があるため、注意深い観察が必要と考えられた」とまとめた。


院内で緊急手術可能な体制が必要

最後に草野氏は、日本不整脈心電学会のリードレスペースメーカの安全な植え込みに関する見解を提示した。

 
同学会は、植え込みを実施する施設について「緊急心臓血管手術が可能な体制を有していること。ただし、緊急心臓血管手術が可能な体制を有している近隣の保険医療機関との連携が整備されている場合には、この限りではない」ことを要件の1つに挙げている。

 
しかし、初期に心タンポナーデで死亡した2例は、いずれも緊急手術を行ったにもかかわらず救命できなかった。
同学会はこの事実を重く受け止めており、植え込み術は心臓外科が併設されて緊急対応ができる施設で行うことを強く勧めている。
「連携施設ではどうしても対応が遅れてしまうため、やはり院内に緊急手術が可能な体制を有していることが重要と考えられる」と同氏は付言した。




<私的コメント>
「ペースメーカー」ならスンナリ読めるのですが、
「ペースメーカ」という表現にはいささか抵抗があります。
「データー」と「データ」のように。




一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
 
  

身体所見による心不全診断のコツ

身体所見による心不全診断のコツ

https://medical-tribune.co.jp/news/2018/1120516994/

心不全の診断において、病歴聴取に引き続いて行われる身体所見は、在宅や救急医療の現場でも非常に重要な役割を持つ。
杏林大学循環器内科教授の佐藤徹氏は第22回日本心不全学会(10月11~13日)で、右心不全の代表的な所見である頸静脈怒張(JVD)観察のポイントやJVDから右房圧を推定する方法などを詳説。
身体所見の中でも心不全診断に必須の所見をまとめて解説し、心不全診断のこつを紹介した。


正確に評価できる右心不全の所見は、左心不全診断にも有効 

佐藤氏は長年の観察に基づき「左心不全発症から約24時間経過すると、右心不全を合併する場合が多い」とした上で、「左心不全に比べ右心不全の所見の方がより明確で正確な評価ができる。純粋な右心不全とは区別しなければならないが、左心不全を見つける上で、右心不全の所見は有用である」と指摘した。

 
心不全の診断における身体所見は、心血管系の直接の診察所見と、心血管系以外のうっ血所見の診察に分けられる。
同氏はそれらを発展させ、フラミンガム研究の心不全診断基準やNohria-Stevenson分類で用いられている身体所見を踏まえ、重要な所見を選別。
特異的診察所見、うっ血所見、副次的所見に症状を加えた4項目に分類し、心不全の所見としてまとめた。

参考

心不全の所見

https://wsnoopy.wixsite.com/mysite/blog/心不全の所見


まず、左心不全の特異的な診察所見としたⅢ音について、「右心不全ではⅢ音が非常に出にくく、Ⅲ音のように聞こえても心音図で確認するとⅣ音であることが多い。Ⅲ音は左心系の方が目立つ所見であると思われる」と説明。
「右心性か左心性Ⅲ音かの鑑別はRivero-Carvallo徴候に基づき、吸気で大きくなる場合は右心性、呼気で大きくなる場合は左心性のことが多い」と付言した。

 
左心不全のうっ血所見として肺野crackleがあるが、間質性肺炎や胸膜炎のこともあり「やや特異度は下がる」と説明。
右心不全のうっ血所見とした肝腫大については「見つけやすく、下腿浮腫より長く持続し非常に重要な所見である」と述べ、その他に下腿の浮腫、臥位で認められる背中の浮腫も挙げた。

 
左心不全の副次的所見は、頸動脈拍動の持続が非常に短くなっている場合などを挙げ、バルサルバ血圧反応は「容易に実施できないため実用性には劣るものの、時間をかけられる場合は有用な診察所見になる」とした。

 
左心不全の副次的所見としたS2p亢進については「左心不全の場合にしばしば見られる。多くの場合、左房圧の上昇は肺高血圧症を伴うため、左心不全を診る上でも有効である。もちろん肺動脈性肺高血圧症の鑑別は必要である」と指摘した。


高LVEDPの指標としてHJ Reflux陽性が最も有用

さらに、全身の診断所見に関してエビデンスを集めて、それぞれの感度、特異度、蓋然性を記載したSteven McGee氏の『Evidence-Based Physical Diagnosis 4th Edition』では、左室拡張終末期圧(LVEDP)が高い状態を示す指標としてHepatojugular Reflux(HJ Reflux:肝頸静脈逆流)陽性が最も有用とされたことを紹介。
HJ Refluxは、右季肋部を圧迫し、頸静脈拍動の最高点が1cm以上上昇した場合に右心不全と診断する方法で、佐藤氏は「利尿薬を服用している患者で頸静脈虚脱傾向にある場合などに有効である」と述べた。
また、心拍数100回超、心尖の外側偏位もLVEDPが高く、かつ低左室駆出率(LVEF)の有用な所見として同書に記載されていることから、これらも心不全の所見に加えた。


頸静脈は陰性波(下に沈む様子)が確認できる

まず、頸動脈と内頸静脈の判別方法として「頸動脈は外側に突出し、内頸静脈は下に沈むように見える」と言い、「坐位においては、健常者では頸動脈拍動が正常でも見えるが、内頸静脈の拍動は沈むように見える。特に接線方向で視認しやすい」と述べた。

 
頸静脈拍動は右房拍動の伝播であり、右房圧と内頸静脈内血液の重力が釣り合っている場所まで拍動が伝播している。
したがって内頸静脈の拍動の最高点と右房との垂直距離が右房圧となる。
頸静脈圧が高い場合、臥位では頸静脈拍動の最高点を捉えられない可能性があるため、
①臥位
②45度坐位
③坐位
―の3通りの体位で観察する。
同氏は「右心不全の場合、臥位であれば耳の前辺りまで内頸静脈拍動が観察できる(そこから頭蓋内に入る)。拍動の最も高い位置が耳の前部より低い場合、右房圧は正常である。臥位で耳の前で拍動が確認される場合は、45度坐位、90度坐位と順に体位を変えてもなお拍動が確認できれば右房圧が高いと判断できる」と説明。
「内頸静脈視診による右房圧推定は、特異度は高いが感度が低いため、拍動が見えない場合、必ずしも右心不全を否定できないことは留意すべき」と付言した。

 
右房圧はどのように推定するのか。
同氏は、右房から胸骨角までの距離が45度坐位でおおむね7cmであることを踏まえ「胸骨から拍動の最も明瞭な点までの距離をXとすると、右房圧は(7+X)水柱センチメートル(cmH
2O)、つまり(7+X)×10/13.6mmHgの計算式で算出できる」と説明。
45度坐位では7cmとしたところを、臥位では5cm、90度坐位では10cmに変換すると同様に算出できるとした。

参考

右房圧の非観血的測定法

https://wsnoopy.wixsite.com/mysite/blog/右房圧の非観血的測定法



<きょうの一曲>

Anita O'Day - You’re the Top
https://www.youtube.com/watch?v=09exa6P4yRY


<きょうの一枚の絵>
img025 のコピー 2

クロード・ワイズバッシュ  「第一ヴァイオリン」12F 



一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  

高用量EPAが適切なスタチン療法下でCVDを抑制

トリグリセライド低下戦略、再び表舞台に 高用量EPAが適切なスタチン療法下でCVDを抑制

https://medical-tribune.co.jp/news/2018/1122517188/

魚油に豊富に含まれる多価不飽和脂肪酸の一種、イコサペント酸エチル(EPA)。
その高純度製剤であるEPAエチル製剤(以下、EPA製剤)の高用量投与によるトリグリセライド(TG)の低下が、ストロングスタチン時代の適切なLDLコレステロール(LDL-C)管理下においても、心血管疾患(CVD)の有意な抑制をもたらすことが明らかになった。
高TG血症患者8,000例超を対象とした二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)REDUCE-IT
で証明されたもので、米・Brigham and Women's Hospital Heart and Vascular Center/Harvard Medical Schoolの研究グループが、米国心臓協会学術集会(AHA 2018、11.10~12、シカゴ)で発表した。
結果は、N Engl J Med(2018年11月10日オンライン版)に同時掲載された。

Reduction of Cardiovascular Events With EPA-Intervention Trial


私的コメント;
随分以前に日本で行われたJELIS試験との整合性、そしてNeuesはあるのでしょうか。
従来から欧米でのEPA製剤の投与量が少ないことが指摘されて来ました。
魚類の摂取量が少ない欧米人にこそEPA製剤が有効であると思われることは、誰もが容易に想像することです。
そもそも欧米人と日本人の平均E/A比はどのような数値なのでしょうか。
今回の論文では「高用量投与」がポイントかも知れませんが「今更感」も感じます。
と、ここまで書きましたが、この記事を読み進むうちにJELIS試験を意識したものであり痒いところに手の届く解説がついています。
しかし、どうして今頃になっての「追試」なのでしょうか。


日本のJELIS試験が背景に

CVDの初発・再発予防のために加療中の心血管(CV)リスクを有する患者では、適切なスタチン療法によっても相当な残存CVリスクが存在する。
疫学研究などから、TG上昇がCVD増加のリスク増大の独立したマーカーであることは分かっているが、これまで徐放性ナイアシン、フィブラート系薬などTGを低下させる薬剤をスタチンに上乗せしたRCTでは、CVイベントの減少は示されていない。

 
唯一の例外が、今回の研究グループが着目したのが日本のJELIS試験だ(Lancet 2007;369:1090)。
血清総コレステロール250mg/dL以上の日本人高コレステロール血症患者1万8,645例を対象に、高純度EPA製剤(1.8g/日)が、冠動脈イベントのリスクを19%有意に抑制することを示した同試験がAHAで発表されたのは2005年のこと。
しかし、
①魚類摂取の多い日本人のみが対象
②プラセボ対照でなく、スタチン投与例を対照に、EPAの上乗せ効果をオープンラベルで追跡するPROBE法による
③スタチンが相対的に低強度
─などの相違や限界があったという(同試験のベースラインのLDL-Cは182mg/dL、TGは151mg/dL)。

 
そこで、高用量の高純度EPA製剤のCVイベント抑制効果を、より強度の高いスタチン療法をベースに検証するREDUCE-ITが計画された。


プラセボ群でLDL-C軽度上昇、EPA群でhs-CRP低下も

国際共同第Ⅲb相試験REDUCE-ITには世界11カ国が参加、登録は2011年11月~16年8月に実施された。
対象は、空腹時TG 150~500mg/dL未満、LDL-C 40超~100mg/dLで、
①再発予防群:45歳以上のCVD既往例、
②初発予防群:50歳以上で糖尿病とCVDの危険因子をさらに1つ以上有する例。
4週以上安定用量のスタチン±エゼチミブで加療中の例とした。

 
これらの条件を満たす8,179例を、
①EPA群(4g/日分2、4,089例)
②プラセボ群(4,090例)
―の2群にランダムに割り付け、中央値で4.9年追跡した。

今回用いられたEPA製剤(VASCEPA
®、Amarin Pharma社)は軟カプセル剤で、プラセボには色、粘度の似たミネラルオイルが含まれた。

 
患者背景は、年齢中央値64.0歳、70.7%はCVD既往例で、白人が約90%を占めた。
エゼチミブ併用は6.4%、スタチン強度は中強度が62~63%、高強度が30~32%、2型糖尿病合併は約58%だった。

 
追跡中のバイオマーカーの変動を見ると(以下、中央値)、TGはEPA群ではベースラインの216.5mg/dLから1年後には175.0mg/dLへ低下、プラセボ群では逆に216.0mg/dLから221.0mg/dLへ上昇し、ベースラインから1年後の変化率はEPA群で19.7%大きく低下。
一方、LDL-Cは同様にEPA群でベースラインの74.5mg/dLから77.0mg/dLへ、プラセボ群では76.0mg/dLから84.0mg/dLへと上昇したが、1年後の上昇はEPA群で6.6%、絶対値変化の中央値で5mg/dL小さかった。

 
同様にEPAは、EPA群で26.1μg/mLから144.0μg/mLへ上昇したのに対し、プラセボ群では26.1μg/mLから23.3μg/mLへ低下し、1年後の変化率はEPA群で358.8%有意に大きかった。
高感度C反応性蛋白(hsCRP)は、EPA群で2.2mg/Lから1.8mg/Lへ低下を示したのに対し、プラセボ群では上昇し、1年後の変化率ではEPA群で39.9%有意に大きな低下を示した。


主要評価項目25%、心血管死20%減少、全死亡は有意差なし

主要複合評価項目である「CV死、致死性心筋梗塞(無症候性心筋梗塞を含む)、非致死性脳卒中、冠血行再建術、不安定狭心症」は、プラセボ群の28.3%に対してEPA群では23.0%と、25%のリスク減少を示した。
Kaplan-Meier曲線は、1年後から乖離を示し、イベント抑制の治療必要人数(NNT)は21だった。


私的コメント
NNTは21は今までに見たことのないような素晴らしい数値です。 

 
重要複合副次評価項目の「CV死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中」は、プラセボ群20.0%、EPA群16.2%と、EPA群でやはり26%有意にリスクが減少。
両群の乖離は1年半以上たってからで、NNTは28だった。

 
事前に設定されたサブグループ解析では、主要評価項目、重要副次評価項目ともに、EPA群でおおむね一貫した有益性が示された。
初発予防群、女性のサブグループでは、両評価項目ともEPAによるリスク減少は有意に至っていないが、それぞれ再発予防群、男性との交互作用のP値に有意差はなかった。
登録地域が米国か米国以外か、糖尿病の有無によっても、両評価項目ともに一貫してEPA群で有意に優れる結果を示した。

 
また事前に設定された評価項目の階層的検定では、全死亡については13%の減少を示したものの有意差に至らなかったが、その他の評価項目についてはJELISで認められなかったCV死の有意なリスク減少(20%)を含め、EPA群で一貫して有意なリスク減少を示した。


安全性評価項目については、脱落、試験薬服薬中止につながる重篤な有害事象の発生率は両群に有意差はなかった。

 
出血関連障害はEPA群で多い傾向を示したが(2.7% vs.2.1%)、判定された脳出血など個別には有意差はなかった。
またEPA群では心房細動(5.3% vs.3.9%)、末梢浮腫(6.5% vs.5.0%)、便秘(5.4% vs.3.6%)が有意に高率で、頻度は低いものの心房細動または心房粗動による入院も、EPA群で有意に高率だった。


プラセボ中のミネラルオイルがLDL-C上昇に関与か?

では、EPA製剤による有益性は、どのようなメカニズムに基づくのか。
論文中ではKaplan-Meier曲線の乖離に時間がかかったことからTG低下に基づく効果や、膜安定化、冠動脈プラークの安定化/退縮、hsCRP低下を示したことから抗炎症作用の関与などが推測されている。

 
REDUCE-ITの限界としては、
①エゼチミブ併用例が6.4%と少ない
②PCSK9阻害薬の併用は禁じられていた(併用理由なし)
③1年後までのLDL-Cの変化に両群で絶対値5mg/dLの差があった(プラセボ群で高値)
─などが挙げられるという。

 
プラセボに含まれたミネラルオイルがスタチンの吸収に影響し、その結果生じたLDL-C上昇のために同群のイベント発生リスクが増して、EPA群の効果がかさ上げされたのではとの懸念があるわけだが、研究グループ代表は、
①両群のLDL-Cの小さな相違から主要評価項目の25%のリスク低下は説明できない
②post hoc解析ではLDL-C上昇例と非上昇例の有益性は一貫していた
─などと説明。
JELISでは、ミネラルオイル入りのプラセボを用いないオープンラベルの追跡において、EPAにより主要評価項目のリスクが19%減少した点にも言及している。


1日4gのEPA製剤は、スタチン服用中のTG上昇例に対し、CV死20%の減少を含め、主要CVイベントを25%有意に抑制した。
効果は登録基準のTG値内で一貫しており、初発・再発予防にかかわらず認められた。


EPA製剤によるTG低下戦略の見直しが進むか

メディア向けに遠隔公開されたAHA2018の記者会見では、ある指定討論者が、最大耐用量のスタチンへの追加療法として、
①最近の急性冠症候群発症例へのエゼチミブ追加
②確立されたCVDと追加の危険因子を有する例へのPCSK9阻害薬追加
③安定CVD、糖尿病+1つ以上の追加の危険因子を有する例へのEPAの追加
─の3つを提示し、「われわれは、スタチン服用中の高リスク患者に対し、同薬との併用でCVDリスク低減に好ましいリスク/ベネフィット比を示す、RCTで証明された3つの治療を手にした」と指摘。
「REDUCE-ITは高TG血症患者を対象とした初の試験であり、今後肥満やメタボリックシンドロームの有病率上昇によって重要性を増すこの患者集団を守る上で、非常に将来性のある治療手段が加わった」と同試験を高く評価した。

 
ところで、JELISとREDUCE-ITのデータを比較して、ストロングスタチンを用いて厳格にLDL-Cを管理するようになった昨今にあって、製剤は異なるものの、JELISで用いられたEPA製剤1.8g/日の用量は果たして十分なのか、と疑問を抱いた読者も少なくないかもしれない。

 
論文中では、JELISでのEPA製剤1.8g/日投与による日本人患者の到達EPAは170μg/mLであり、西洋人でのEPA製剤4g/日投与12週試験での到達EPA 183μg/mLやREDUCE-ITの到達値(1年後で144.0μg/mL)とも同様だったと記している。

 
もっとも、そもそもJELISの対象の80.3%は初発予防例であるのに対し、REDUCE-ITでは再発予防例が70.1%との相違もある。
ただしpost hoc解析ではあるが、JELISの再発予防例ではEPA群で主要冠動脈イベントが27%有意に減少、脳血管イベント既往例でもEPAによる20%の再発抑制が確認されている。
JELISのサブグループ解析でも、初発予防例の主要評価項目リスク減少は18%で、REDUCE-ITと同じく有意には至っていない。

 
現在、慢性冠動脈疾患患者におけるEPA製剤の再発予防効果を検証する日本のRESPECT-EPA、今回用いられたEPA製剤による冠動脈プラークの変化を検討するEVAPORATEなどの臨床試験が進行中であるという。

 
わが国では、既にEPA製剤のジェネリック薬の使用も可能だ。ポストスタチンの新薬開発競争の影で、表舞台から遠のいていた感のあるEPA製剤だが、今回の結果から、スタチンとの併用によるCV残存リスク低減策として、EPA製剤によるTG低下戦略の見直しが進みそうだ。


サプリメントと処方薬は全く異なる

なお、EPAについては、低用量のサプリメントと高用量の処方薬で明暗が分かれている。

今学会でも、ω-3脂肪酸〔EPA+ドコサヘキサエン酸(DHA)〕とビタミンD3の2種類のサプリメントの効果を、2万5,871人を対象に2×2ファクトリアルデザインで検証したVITAL試験で、ω-3脂肪酸、ビタミンD3のいずれもCVイベント、発がんの主要評価項目を低減できなかったと報告された。

高リスク患者に高用量のEPA製剤を投与したREDUCE-ITの結果は、EPAとDHAをさまざまな割合で含む低用量の一般向けサプリメントには適用できないことも示している。
サプリメントと処方薬は全く異なる。
サプリメントのために、お金を無駄にしないようにしたい。
 


英文抄録

Cardiovascular Risk Reduction with Icosapent Ethyl for Hypertriglyceridemia.





<きょうの一曲>

ハイドン『ひばり』



<きょうの一枚の絵>

img025 のコピー 2
ミッシェル・ロッド 「パリの薔薇」20P 





一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
 
  

高齢者の健康長寿には魚が有益?

高齢者の健康長寿には魚が有益/BMJ

http://www.carenet.com/news/journal/carenet/46934

米国・タフツ大学の研究グループによる前向き長期コホート研究(Cardiovascular Health Study)により、高齢者における血中濃度の連続測定で、魚由来のオメガ3系多価不飽和脂肪酸(n3-PUFA:EPA、DPA、DHA)、EPA、およびDPA(魚由来のDHAや植物由来のα-リノレン酸ではない)の上積みが認められると、健康長寿(healthy ageing)でいられる可能性が高いことが明らかにされた。
(BMJ誌2018年10月17日号で発表)

健康長寿は、慢性疾患、認知・身体機能障害がない生存として定義される。
魚および植物由来のn3-PUFAは、生理機能に良好な影響を及ぼし、健康長寿に有益である可能性が示唆されていた。
また、自己申告に基づく食事性のn3-PUFA高値とベースラインバイオマーカーとしてのn3-PUFA高値は、心血管疾患のリスクと逆相関することが示されていた。
今回の結果を踏まえて著者は、「高齢者は、さらなるn3-PUFAを含む食事(魚)の摂取を、というガイドラインを支持する結果であった」とまとめている。


平均74.4歳の健康長寿高齢者のn3-PUFA値を1992~2015年追跡測定

検討は米国内4地域で1992~2015年の間に行われ、n3-PUFAの連続測定値と健康長寿の関連が調べられた。
参加者は、1992~93年のベースライン時に健康長寿が認められた2,622例で、平均年齢は74.4歳(SD 4.8)、女性63.4%であった。


被験者の血漿リン脂質n3-PUFA値をガスクロマトグラフィで、1992~93年、1998~99年、2005~06年に測定し、植物由来のα-リノレン酸、魚由来のEPA、DPA、DHAなど全脂肪酸を%算出した。


主要評価項目は健康長寿で、慢性疾患(心血管疾患、がん、肺疾患、重度CKDなど)や認知・身体障害のない生存、またはその他の要因(65歳以降の健康長寿アウトカムの一部ではない)による死亡と定義した。
イベントについては、医療記録や診断検査に基づき中央で判定または確定した。


n3-PUFAの高値群の非健康長寿リスクは18%低下

線形モデルを用いた評価において、長鎖n3-PUFAの高値群ほど非健康長寿リスクは低い傾向がみられ、時間変化曝露および共変量で多変量調整後の五分位範囲で18%の低下が認められた。


個別にみると、DHAでは関連がみられなかったが、EPAおよびDPAではリスク低下との関連が認められた。
植物由来のα-リノレン酸は非健康長寿と関連していなかった。



以下は

地方独立行政法人静岡県立病院機構 静岡県立総合病院 臨床医学研究センター(臨床研究部)部長・島田 俊夫先生の上記論文に対するコメントです。 



n-3多価不飽和脂肪酸(PUFAs)摂取量増加は高齢者を無病息災に導く期待大!

n-3多価不飽和脂肪酸 (PUFAs)に関しては、ちまたでは生活習慣病に対して健康改善に有効だとの認識がほぼ定着している。
その一方でアカデミアにおいては、それを裏付けるエビデンスが必ずしも十分に得られているわけではないが賛同する方向にある。
しかし、n-3 PUFAsは一般社会ではエビデンスに先行して医薬品、サプリメントとして確固たる地位を獲得しているように見える。

これまでn-3 PUFAsは健康に有効な作用が期待できると信じられ、日々の生活の中でサプリメントとして積極的に摂取することが多くなっている。
その一方でn-3 PUFAs摂取量は自己申告または質問形式の食事調査によるものが大部分を占めており、情報の質が落ちる点が泣き所であった。
本研究においては、ベースラインマーカーとして食事性または代謝性のn-3 PUFAs(循環脂肪酸)をバイオマーカーとして測定し、n-3 PUFAs摂取量の信頼性を担保するデータとして活用することで、これまでの論文と一線を画する論文内容となっており、興味深い。


論文要約

本研究では、米国内4地域で1992~2015年の間に実施されたn-3 PUFAsの連続測定値と健康老化の関連が調べられた。
採血済みの1992~93年、1998~99年、2005~06年の凍結保存血液を使用し、1992~93年のベースライン時に健康老化(ほぼ無病老化)と認定された健康老化者2,622例を本研究対象とした。
平均年齢は74.4歳(SD 4.8)、女性が63.4%の集団であった。
参加者のn-3 PUFAs値(植物由来のα-リノレン酸、魚由来のEPA、DPA、DHA)をガスクロマトグラフィー法により測定した。


主要評価項目を健康老化とした。つまり慢性疾患(心血管疾患、がん、肺疾患、重度CKDなど、および認知、身体障害のない生存)または65歳以降の健康老化アウトカムに含まれない要因による死亡と定義した


イベントについては医療記録・診断検査からの情報に基づき中央判定にて最終診断が行われた。


2,622例の参加者中2,330例(89%)が研究期間中に不健康老化(有病老化)を体験したことが明らかになった。
残りの292例(11%)は重大な慢性疾患を持たず生存(健康老化)していた。
社会的、経済的、生活習慣等を考慮したうえでEPA五分位数群の最高値群は最低値群に比較し24% 低く、リスク回避を達成していることがわかった。
DPA五分位数群の上位3群で不健康老化(有病老化)リスクが18%低下した。
海産物由来のDHA、植物由来のALAは健康老化への関与は明らかではなかったが全面否定する結果ではなかった。


筆者コメント

本研究は観察研究であり、因果関係を明らかにすることを目的として計画されていない。
n-3 PUFAs摂取を客観的に評価することが可能なバイオマーカー(循環脂肪酸)測定を導入したことにより情報の質を高めた研究であり、フォローアップ期間も長期(20年以上)にわたっており、高齢者におけるn-3 PUFAsの摂取の増加が不健康老化リスクの低下をもたらす可能性を明らかにした点は評価に値する。
臨床医としての使用経験からも、この論文内容に素直に耳を傾けることができるのではと考える。
いずれにしても未解決な点も多々あり、前向きに今後もこの問題に関心を持って研究を進めていく中で、真実が明らかになる日も近いと考える。




<自遊時間>

医学部入試、性差別は認めぬ規範 親類・地域枠は容認

2018年11月17日(土) 07:00 配信 朝日新聞デジタル(アピタル)

卒業生の子らの入学枠は容認。委員長を務めた嘉山孝正・山形大参与は「親が医療人であれば医師になるのをやめにくく愛校心が強い」などと説明した。ただ、不正をうむ余地があるなどとして、要件の明示や特定の人物が合格を判定しない制度にすることを前提にした。

コメント

全国医学部長病院長会議(会長=山下英俊・山形大医学部長)、嘉山孝正・山形大参与・・・この組み合わせ自体がなんだか臭い。

「卒業生の親類枠や地域枠など各大学の実情に応じた人材を求めることは認めつつ」とはとんでもない話です。以前から嘉山氏はきな臭い人物と睨んでいましたが。
国公立と私立を同様に扱う愚。
私立は入試の「卒業生の親類枠」などを合否基準を事前に公表しておけば許容される面もあるかと思うのですが、「地域枠」は私立には馴染みません。
 私立の「卒業生の親類枠」や国公立の「地域枠」と表現を厳密に分けるべきであり、そもそも「地域枠」が問題になっていたわけでもないので余計なお世話です。
全国医学部長病院長会議の総意とはとても思えません。
それともこの会議はその程度のレベルなのでしょうか。 

もっとも後期試験などは、ある国立大学(旧帝大の一つ)では「大学教員の子弟枠」が以前から噂になっています。
後期試験はセンター試験の結果プラス面接や筆記試験が加味されるようです。
推薦入試やAO入試もそうですが、これらの方式は曖昧な部分も多く不正(不適正、不公平) の温床になっています。
国公立の場合は、少なくとも一般入試とそれ以外で入学した学生の追跡調査の結果を公表し、入試方式の制度改革が必要かどうかを常に検討する必要があります。
入試は受験生にとっては必死なものであり、厳正かつ公平を信じて頑張っています。
しかし、自分達も通って来た道なのに大学関係者は意外とそうでもないのかも知れません。 



<きょうの一曲> 

キース・ジャレット・トリオ『星影のステラ』Keith Jarrett Trio - "Stella By Starlight”




<きょうの一枚の絵>
 

img025 のコピー 2
ライオネル・ピッカー 「果物、中国の壺、じゅうたん」 12F


一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  

HFpEF患者への亜硝酸薬吸入

HFpEF患者への亜硝酸薬吸入、運動能への効果は?/JAMA

左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)患者において、4週間にわたる無機亜硝酸塩の吸入投与はプラセボと比較して、運動能の有意な改善に結びつかなかった。
米国・メイヨークリニックのBarry A. Borlaug氏らによる無作為化試験の結果で、JAMA誌2018年11月6日号で発表された。
HFpEF患者に対する効果的な治療法はほとんどない。
無機亜硝酸塩や硝酸塩製剤は、一酸化窒素シグナリングを強化することが示されており、HFpEF患者の運動能を改善する可能性が示唆されていた。


4週間投与、プラセボ対照の無作為化クロスオーバー試験で検討

研究グループは、HFpEF患者に対する噴霧吸入による無機亜硝酸塩の4週間投与について、運動能改善への効果を調べるため、多施設共同二重盲検プラセボ対照試験を行った。
検討は、HFpEF患者を2治療群に割り付け6週間の介入をクロスオーバーにて行い評価した。
被験者の登録は、全米17施設で2016年7月22日~2017年9月12日に行われた。
フォローアップ最終日は2018年1月2日。


無機亜硝酸塩またはプラセボの投与には、マイクロネブライザデバイス(I-neb AADネブライザ[Philips製])が用いられた。
6週間の介入において、2週間は試験薬を投与せず(ベースライン/ウォッシュアウト期間)、その後に試験薬(亜硝酸塩またはプラセボ)46mg×3回/日を1週間、80mg×3回/日を3週間投与した。


主要評価項目は、最大酸素消費量(mL/kg/分)。
副次評価項目は、日常生活活動量(加速度測定法で評価)、健康状態(Kansas City Cardiomyopathy Questionnaireで評価[スコア範囲:0~100、高スコアほどQOLが良好])、機能分類、心充満圧(心エコーで評価)、NT-proBNP値、その他の運動指標、有害事象、忍容性などであった。


平均最大酸素消費量、介入群13.5 vs.プラセボ群13.7mL/kg/分

105例(年齢中央値68歳、女性56%)が無作為化を受け、98例(93%)が試験を完了した。


亜硝酸塩投与中の平均最大酸素消費量は、プラセボ投与中の同値と比べて有意な差はなかった。
また、日常生活活動量、健康スコア、機能分類、心エコーE/e′比、NT-proBNP値は、いずれも有意な差はなかった。


心不全増悪は、亜硝酸塩投与中に3例(2.9%)、プラセボ投与中に8例(7.6%)で認められた。


英文抄録;

Effect of Inorganic Nitrite vs Placebo on Exercise Capacity Among Patients With Heart Failure With Preserved Ejection Fraction: The INDIE-HFpEF Randomized Clinical Trial.



<きょうの一曲 >

Ron Carter - The Shadow Of Your Smile




<きょうの一枚の絵>
 

img025 のコピー 2

ロベルト・オルトゥーノ 「テニスをする婦人たち」


 
 

一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
 
  





新規PPARαアゴニスト薬(ペマフィブラート)の意外な作用機序 

新規PPARαアゴニスト薬の意外な作用機序 ペマフィブラートのapoA-Ⅰ上昇による抗動脈硬化作用

https://medical-tribune.co.jp/news/2017/1018511196/

LDLコレステロール(LDL-C)低下療法が動脈硬化を抑制し、心血管疾患の予防につながることは論をまたない。
一方で、LDL-Cを十分に低下させても心血管疾患を発症する患者が認められることから、LDL-C以外の治療ターゲットの存在が示唆されている。
第65回日本心臓病学会(9月29日~10月1日)で、順天堂大学大学院循環器内科准教授の岩田洋氏は、抗炎症作用に加えアポリポ蛋白(apo)A-Ⅰ上昇作用を有する新しい
PPARαアゴニストであるペマフィブラートについて、自身らの検討結果を交えて解説した。


apoA-Ⅰ低値は全死亡と相関

PPARαは核内受容体の1つであり、肝臓や腎臓など脂肪酸異化活性の高い組織で発現している。
PPARαの活性化によりトリグリセライド(TG)が減少する他、HDLコレステロール(HDL-C)の主要な構成成分であるapoの発現が促進し、HDL-Cが増加する。
また、多面的な抗炎症作用を介し、プラークの安定化に働く可能性が指摘されている。
しかし、PPARαアゴニストであるフィブラート系薬を用いた介入試験では、心血管イベント抑制に対する明らかな有効性は示されていない。

 
岩田氏らが同大学順天堂医院の経皮的冠動脈インターベンションレジストリ(Japanese CTO PCI Expert Registry)に登録された症例のうち、2001~10年に初回PCIが施行された3,831例のデータを解析したところ、HDL-C値とapoA-Ⅰ値との間に強い正の相関が認められた。

 
しかし、患者をHDL-CまたはapoA-Ⅰの値で四分位に分けて検討すると、HDL-C第1四分位群(HDL-C低値群、36mg/dL以下)と第2~4四分位群(HDL-C非低値群)では全死亡率に有意差がなかったのに対し、apoA-Ⅰ第1四分位群(apoA-Ⅰ低値群、103mg/dL以下)は第2~4四分位群(apoA-Ⅰ非低値群)に比べ、全死亡率が有意に高いことが判明。
これはスタチン内服の有無にかかわらず認められた。

 
この結果から、
脂質管理において重視すべきはHDL-Cの値ではなくHDLの機能であり、apoA-Ⅰ値の上昇を目指す治療の有用性が示唆されたという。


炎症抑制作用を分子イメージングで確認(ブタステント留置モデル)

そこで期待されるのがペマフィブラートである。
同薬は選択的PPARαモジュレータ(selective PPARα modulator;SPPARMα)の特性を持ち、TG低下だけでなくapoA-Ⅰ上昇作用も示し、さらには抗炎症作用を有することが分かっている。

 
岩田氏らが培養ヒト単球を用いて行った実験で、ペマフィブラートは濃度依存性に腫瘍壊死因子(TNF)α、インターロイキン(IL)-6を抑制し、その作用は他のフィブラート系薬に比べ強いことが示された。
マウス大腿動脈障害モデルの実験からは、同薬がプラーク形成と病変内の炎症細胞浸潤を抑制することが分かった。

 
さらに、新しい生体内分子イメージング手法であるOCT-NIRFを用いて、ペマフィブラートがブタ冠動脈ステント留置モデルの血管炎症と内膜増殖に及ぼす影響を検討した。OCT-NIRFはOCTによる形態学的評価に、近赤外線とmolecular probeを組み合わせて、血管の炎症を高感度で検出できる新しい技術である。

 
検討の結果、ペマフィブラート非投与群ではステント留置7日目に強い血管炎症を呈したが、同薬投与群では炎症が抑制されていた。また、非投与群では28日目に新生内膜の増殖が確認されたが、投与群では抑制されていた。加えて同薬によりステント周囲の炎症細胞浸潤が抑制する結果も得られた。

 
これらの知見を踏まえて、同氏は「ペマフィブラートはapoA-Ⅰ上昇を含む脂質プロファイルの改善に加え、抗炎症を介した抗動脈硬化作用を有していると考えられる」とまとめた。


関連サイト

新薬ペマフィブラート


新規PPARαアゴニスト薬 高脂血症治療薬ペマフィブラート




高TG血症の原因と治療

残存リスクとして高トリグリセライド血症(高TG血症)が注目されている背景に、積極的なLDL-C低下療法を実施しても心血管イベントの抑制効果が十分ではなく、残存リスクが存在することが挙げられる。

高TG血症では、カイロミクロンやVLDLなどのリポ蛋白代謝異常を呈するが、特にレムナントリポ蛋白やsmall dense LDLの増加は動脈硬化を惹起する。

そのため、高TG血症に対する治療が重要であると考えられている。


高TG血症は、動脈硬化を進展させ、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患や脳梗塞を引き起こすリスクとなることが、CIRCSやCopenhagen City Heart Studyなどの疫学研究で報告されている。

動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは、TGの管理目標値を空腹時で150mg/dL未満としている。

一方、高TG血症のリスクの―つに急性膵炎がある。

急性膵炎の主な症状は、腹痛、吐き気、腹部膨満感などであり、TGが500mg/dLを超えると、急性膵炎を発症する可能性が高くなると言われている。


高TG血症には、原発性高TG血症と二次性高TG血症がある。

二次性高TG血症には、飲酒、運動不足メタボリックシンドロームや糖尿病など生活習慣を背景とした要因がある。

これらの要因が該当しない方は、他の原因によって、TG高値となっている可能性がある。

例えば、甲状腺機能低下症や慢性腎臓病、ネフローゼ症候群などの疾患を有する患者さんだ。

これらの疾患が原因の場合は、まず原疾患の治療を優先する。

また、利尿薬やβ遮断薬、ステロイドホルモン、経口避妊薬の投与により、TG高値を示す場合がある。

飲酒や運動不足など生活習慣による影響や、甲状腺機能低下症、慢性腎臓病、ネフローゼ症候群などの疾患がなく、服用薬剤についても該当しない方については、主に遺伝性の原発性高TG血症の疑いがある。


原発性高TG血症には、原発性高カイロミクロン血症、内因性高TG血症、家族性Ⅲ型高脂血症、家族性複合型高脂血症などがある。

高TG血症を来す原因疾患によって、動脈硬化や膵炎の発症リスクが異なるため、専門医へ紹介することが大切だ。


慢性的な飲酒は、肝臓においてTGの合成を促進し、TGを多く含むVLDLを増加させる。


アルコール摂取量の増加に伴い、TG値が上昇することが報告されており、23gのアルコール(日本酒約1合分)摂取により、TGが約10mg/dL増加すると言われている。

飲酒の機会が多い患者に対しては、アルコール摂取量の制限が重要だ。


動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは、動脈硬化性疾患予防のための食事指導の項で、アルコール摂取量を25g/日以下に抑えることが望ましいと記載されている。

運動はリポ蛋白リパーゼ(LPL)を活性化し、TGの分解・利用を促進する。

運動不足はTG分解能の低下、エネルギー消費量の低下を招くため、TGが高値となる。

運動不足はTGを上昇させるだけでなく、HDL-Cを低下させ、心血管疾患の発症が高まることが報告されている。

運動を継続することにより、TGの低下、HDL-Cの上昇が認められるため、患者さんに運動療法の重要性を十分に理解していただくことが大切だ。


メタボリックシンドロームでは、内臓脂肪から遊離脂肪酸の増加、および肝臓でのTG合成の亢進、LPL活性低下などにより、高TG血症を示し、Small dense LDLの増加やHDL-Cの減少が助長される。

したがって、メタボリックシンドロームでは、心筋梗塞や狭心症、脳卒中などの発症リスクを高めることが報告されている。


このような患者さんに対しては、肥満の是正を心がけ、最終的に標準体重を目標とする。

糖尿病を合併した高TG血症の特徴として、糖尿病の背景にあるインスリン抵抗性の増大やインスリン分泌の低下による、インスリン作用の減弱が大きく影響している。


インスリン作用が減弱すると、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)が活性化され、TGリッチリポ蛋白であるVLDLの合成及び分泌が増加する。

さらに、インスリン作用の減弱により、LPL活性が低下し、TGの代謝が障害され、高TG血症を来す。


また、糖尿病患者は食後TGが上昇しやすいため、食後高TG血症にも注意が必要だ。

食後TG値が高くなると、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳卒中の発症が増加することが、CIRCSにて報告されている。

日本人における食後T石恨と盧血性心疾患との関係?ORCS?


糖尿病合併患者の治療として、まずは血糖コントロールを行うことが重要だ。

糖尿病の治療を継続しながら、生活習慣を見直すことが大切となる。

食事・運動療法を継続して行うよう指導し、血糖コントロールだけで改善が見られない場合には、TG高値に対する薬物療法を考慮する。


高TG血症の治療は、食事・運動療法を軸に患者背景を考慮した指導が重要となる。

参考・引用

https://medical-tribune.co.jp/special/kowa-souyaku/201811/parmodia_b/index.html


https://medical-tribune.co.jp/special/kowa-souyaku/201811/parmodia_c/index.html
(サイト中にわかりやすい図が掲載されています) 



<自遊時間>

医学部の臨時定員増を要望 入試不正受け医師ら 

東京医科大の入試不正などを受け、医師でNPO法人医療制度研究会の副理事長、本田宏氏と予備校講師の朝倉幹晴氏らが21日、文部科学省を訪れ、2019年度入試で医学部全体の入学定員を臨時で増やすよう求める要望書を提出した。

不正で不合格になった元受験生を追加合格にする東京医大の救済策に伴い、19年度受験生の合格枠が減る可能性があり、各大学が数人ずつ定員を増やすことを求めた。

  (日経新聞・夕刊 2018.11.21)


本田宏氏は以前から医学部増設を訴え続けていました。

今回の行動もその意味では首尾一貫しています。(皮肉)

「NPO法人医療制度研究会」の実態はよくわかりませんが、この行動は全国医師の決して総意ではありません。

完全なスタンドプレーとも言えます。


合格枠が減る原因はあくまでも不正入試を実施した一私立医大の責任です。

このような入試にまつわる不正入試(「不適切」入試のほうが正しい言い方かもしれません)問題は、今後も他の多くの私立医大に広がる可能性があり「入学定員を臨時に増やす」ことは大いに問題です。

まずはこういった大学の私学助成金のカットが先に行われるべきであり、増員に伴う国費の投入などとんでもないことです。

いま流行の言葉で言えば「自己責任」であり、言葉を変えれば自業自得なのです。

これは例の中近東での拉致事件とも共通するものです。

本田宏氏の行動は軽率の誹りを免れません。


私は私立医大出身ではありませんが、私立大学は一定の自由が認められてもいいという立場です。

ただし、入試要項に明示するという条件付きです。

それと私学助成金を一切受けないという条件もつけたいと思います。

そもそも私学助成金そのものが違憲の可能性もあるのです。


参考

憲法八九条「公金その他の公の財産は…公の支配に属しない慈善、教育…に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」 

<きょうの一曲>

Diana Krall - Peel Me a Grape



<きょうの一枚の絵> 

2018年11月22日07時03分57秒 のコピー

 ドニ・ミオー 「紫のスタンプ」  20F

 

 

一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
 
 

鉄高値が心原性脳塞栓症リスクに

鉄高値が心原性脳塞栓症リスクに  英・メンデルランダム化解析

https://medical-tribune.co.jp/news/2018/1113516964/

脳卒中の死因の第2位で、英国では年間3万2,000人が脳卒中により死亡している。
英国の研究グループは、欧州人約4万9,000例の遺伝子データを用いたメンデルランダム化解析の結果から、鉄高値が脳卒中のうち心原性脳塞栓症のリスク上昇に関連することが示されたとStroke(2018年10月25日オンライン版)に報告。
心原性脳塞栓症の原因となる心房細動の推定有病者数は、英国では約100万人(日本では70万人超)に上るとして、鉄動態とタイプ別の脳卒中や心血管疾患リスクとの関連について研究をいっそう推進させるべきと強調している。

私的コメント
冒頭の「脳卒中の死因の第2位で、英国では年間3万2,000人が脳卒中により死亡」という表現にいついて・・・
「脳卒中の」は「脳卒中は」の間違いでしょうか。

また「鉄高値が脳卒中のうち心原性脳塞栓症のリスク上昇に関連」ということですが、心原性脳塞栓症のリスク上昇に一番関連が
深いのは当然のことながら心房細動です。


鉄高値SNPと脳卒中との関連を検討

これまでに、鉄の欠乏と過剰の両方が、脳卒中リスクに関連することが報告されている
鉄は酸素運搬を含む多様な生体内作用に不可欠な物質である。
しかし、
過去の研究で鉄が実際に血栓形成のトリガーになる可能性が示唆されており、さらに検討する必要がある。
今回の研究では、観察研究で問題となる交絡因子の影響を排除するために、メンデルランダム化解析を用いて鉄動態に関連する遺伝子変異と脳卒中リスクとの関係を検討した。

 
公共のゲノム研究データベース(Genetics of Iron Status Consortium)から欧州人被験者4万8,972例のデータを用いて、全身鉄高値を検出する4種のバイオマーカーの増減(血清鉄、フェリチンおよびトランスフェリン飽和度の増加、トランスフェリン減少)と一致する一塩基多型(SNP)を3カ所同定。
29件の研究データを含むMEGASTROKE Consortiumから脳卒中群6万7,162例(非欧州人2万6,577例)と対照群45万4,450例(同4万8,339例)を抽出し、主解析に2標本メンデルランダム化解析を用いて、前述したSNPを有する鉄高値と脳卒中リスクとの関連を検討した。


病型別解析でリスク上昇より顕著に

その結果、3種のSNP陽性全体で、各鉄動態バイオマーカーが1標準偏差(SD)上昇するごとに脳卒中リスクは10%前後上昇すると推定された。
また、鉄低値を反映するトランスフェリン増加は、脳卒中のリスク低下と関連していた。
さらに、
虚血性脳卒中をタイプ別に検討したところ、鉄動態による悪影響は心原性脳塞栓症によることが示された。

私的コメント
「鉄低値を反映するトランスフェリン増加は、脳卒中のリスク低下と関連」ということですが、出血性脳卒中の場合でしょうか。
 前述の「鉄の欠乏と過剰の両方が、脳卒中リスクに関連」という表現は、鉄欠乏が出血性脳卒中に関連し、一方鉄過剰が虚血性脳卒中とりわけ心原性脳塞栓症と関連すると解釈すれば理解しやすいのですがどうなんでしょうか。


鉄動態と血栓症リスクの研究推進を

メンデルランダム化解析を用いて鉄動態と脳卒中リスクの関連を検討した結果、鉄高値は心原性脳塞栓症リスクの上昇に関連することが明らかになった。
その機序の解明および予防戦略の対象となるかを検討するため、さらに研究が必要である、と結論された。

 
今回の知見は初期段階にあるが、タイプ別の脳卒中や心血管疾患のリスクと鉄レベルの関連に関する研究に、さらに広く取り組むべきであることを示唆する。
この研究チームでは、今回と同じ解析手法を用いて、
先天的に血小板数が多いと虚血性脳卒中リスクが上昇する可能性や、液凝固第Ⅺ因子が低値だと心原性脳塞栓症リスクが低い可能性を明らかにした。
第Ⅺ因子を抑制することで脳梗塞を予防する新しい薬物療法を研究しているという。


私的コメント
第Ⅺ因子という凝固因子を抑制するということは「脳梗塞を予防」という表現ながら心原性脳塞栓症の予防をターゲットにしていることになります。
「全身鉄高値を検出する4種のバイオマーカーの増減と一致する一塩基多型(SNP)」は実際の4種のバイオマーカーとパラレルの関係にあるのでしょうか。
「増減と一致」ということは、慢性消化管出血などが原因で貧血が起こった場合4「種のバイオマーカーの増減と一致する一塩基多型(SNP)」は変化するのでしょうか。
非常に理解しづらい論文です。
 

<きょうの一曲> 

Diana Krall - Almost Blue



<きょうの一枚の絵>  
img025 のコピー 8

ミッシェル・マリー ヴェニス 6P


 

 

一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
 
 

ARNIは急性心不全にも有効

新薬ARNIは急性心不全にも有効  NT-proBNPを迅速に改善

https://medical-tribune.co.jp/news/2018/1113517031/

米・Yale Universityの研究グツープは、急性非代償性心不全で入院した左室駆出率(LVEF)低下を伴う心不全患者を対象に、ネプリライシン阻害薬sacubitrilとアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)バルサルタンの新規化合物(アンジオテンシンⅡ受容体/ネプリライシン阻害薬:ARNI)とACE阻害薬エナラプリルの効果を多施設二重盲検ランダム化比較試験PIONEER-HFで検討。
その結果、ARNIはエナラプリルに比べ
太字て心不全の治療指標であるN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)を迅速かつ大幅に改善したと米国心臓協会学術集会(AHA 2018、11.10~14、シカゴ)で発表、N Engl J Med(2018年11月11日オンライン版)に同時掲載された。

なお、ARNIは慢性心不全患者でも有効性が示されている。


投与開始1週間後から改善

PIONEER-HF試験では、米国の129施設において急性非代償性心不全で入院したLVEF 40%以下、NT-proBNP値1,600pg/mL以上の心不全患者881例(平均年齢61±14歳、男性72.1%)を登録。

440例をARNI(sacubitril 97mg/バルサルタン103mg 1日2回)群、441例をエナラプリル(10mg 1日2回)群にランダムに割り付けて治療した。

 
有効性の主要評価項目としたNT-proBNP値の変化率は、ARNI群がエナラプリル群に比べて有意に大きく、ベースラインのNT-proBNP値に対する投与開始後4週時および8週時のNT-proBNP値の幾何平均値の比はARNI群が0.53、エナラプリル群が0.75であった(変化率-46.7% vs. -25.3%、ARNI群 vs. エナラプリル群の変化率比0.71、95%CI 0.63~0.81、P<0.001)。

 
投与開始後1週の時点で、ARNI群はエナラプリル群に比べてNT-proBNP値の変化率が大きかった(変化率比0.76、95%CI 0.69~0.85)。


急性・慢性心不全の標準治療薬としての可能性

安全性の主要評価項目とした腎機能低下、高カリウム血症、症候性低血圧、血管性浮腫の頻度は両群に有意差がなかった。
有害事象による投与中止の頻度も両群に有意差は見られなかった(ARNI群19.6% vs. エナラプリル群20.3%)。

 
研究グループの代表は「急性心不全と診断された患者の状態が安定してLVEF低値が確認されれば、直ちにARNI投与を開始し、NT-proBNPの改善と心不全による再入院リスクの低減を図るべきである」との見解を示している。

 
さらに、同氏らは「慢性心不全患者におけるARNIの有効性を示したPARADIGM-HF試験の結果と今回の結果を合わせると、ARNIは急性・慢性心不全に対する標準治療薬となる可能性がある」と指摘し、「そうなれば、心不全による入院のリスクが減少し、臨床的にも社会的にも好影響を及ぼすだろう」と述べている。



<きょうの一枚の絵>

img025 のコピー 7
マルセル・ケルヴェラ 「アムステルダム、運河風景」 25F 



一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
 
 

高血圧は早期からの積極介入

高血圧の基準値は下げず早期からの積極介入強調

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201809/557900.html

来春の発表に向け、我が国の「高血圧治療ガイドライン2019」(JSH2019)の編集作業が佳境を迎えている。
この9月に開催された日本高血圧学会では、基準値を140/90mmHgに据え置きつつも、早期からの生活習慣改善など積極介入を強調した草案が提示された。


降圧効果に優れる多様な降圧薬が登場しているにもかかわらず、高血圧患者の多くが、いまだに降圧目標を達成していない・・・。
世界的に問題になっている、こうした「Hypertension Paradox」と呼ばれる状況を打破すべく、ここ1~2年に改訂された欧米の高血圧ガイドラインでは、早期からの積極的な介入をより強調した。


2017年に改訂された米国のガイドライン(ACC/AHA2017)では、ランダム化比較試験(RCT)だけでなく観察研究の結果も加味して、高血圧基準値を従来の基準より収縮期血圧・拡張期血圧ともに10mmHg低い130/80mmHgに引き下げた。


患者数が激増するという批判を承知の上での判断は、生活習慣改善を中心とした早期からの積極介入により、さらなる血圧上昇を食い止めようという狙いがある。
実際、130~139/80~89mmHgで心血管イベントのリスクが一定以下なら、推奨される治療は薬物治療ではなく生活習慣改善だ。


また今年8月に改訂版が正式発表された欧州のガイドライン(ESC/ESH2018)では、基準値は140/90mmHg に据え置いたものの、降圧目標は原則130/80mmHg以下に設定。
薬物治療の対象患者に対しては初期から降圧薬2剤の併用療法を推奨するなど、目標血圧への達成率を高める方針を打ち出した。


Hypertension Paradoxは我が国でも大きな問題で、4300万人とされる高血圧患者中、治療目標を達成している患者は1200万人という。
それだけに、JSH2019ではどのような方針を提示するのか、注目されていた。


基準値は140/90mmHgを維持

JSH2019作成委員会委員長の横浜労災病院院長・梅村敏氏は「我が国では高血圧の基準値は変更しない方針」と語る。


そのJSH2019の草案が、第41回日本高血圧学会総会(9月14~16日、開催地:北海道旭川市)で発表された。
高血圧の基準値は140/90mmHgから変更せず、I~III度の高血圧の分類も従来通りだが、140/90mmHgより低い血圧区分について、定義の一部変更を提案した。


同氏「現行のガイドラインであるJSH2014と同様、降圧薬による心血管リスク抑制効果を検証したRCTの結果を重視し、高血圧基準値は変更しない方針とした」と話す。

 
一方、140/90mmHgより低い血圧区分について、JSH2014では130~139/85~89mmHgを「正常高値血圧」と定義していたが、JSH2019案では130~139/80~89mmHgを「高値血圧」とした。


梅村氏は「高血圧に分類されない範囲でも血圧上昇に伴うリスクは増大していることを示すため、JSH2014の『正常高値血圧』から『正常』の語を削除した。130/80mmHgを超えれば、もはや正常とは言えない血圧であり、多くの人に生活習慣改善に取り組んでもらうのが狙い」と説明する。


この変更に伴い、収縮期120~129mmHgかつ拡張期80mmHg未満が「正常高値血圧」、120/80mmHg未満が「正常血圧」となった。
なお、一部の境界値は、関連学会など外部の意見聴取を踏まえて変更する可能性があるという。


降圧目標は従来より一段低く

降圧目標は、合併症のない75歳未満の成人では、診察室血圧で130/80mmHg未満(家庭血圧では125/75mmHg未満)に引き下げた。RCTのメタアナリシスによる、130/80mmHg未満への降圧が有意に予後を改善するとのエビデンスが根拠となった。
また、75歳以上の高齢者は140/90mmHg未満、冠動脈疾患患者は130/80mmHg未満へと降圧目標を強化し、大部分の患者に対して従来より厳格な降圧を推奨した。


JSH2019案では、いずれの血圧区分でも、まず生活習慣改善などの非薬物治療を行うとしている。
特に、未治療で血圧が「高値血圧」にある場合、生活習慣改善の強化を推奨した。


なお、降圧目標は下げたが、一部の高リスク患者以外はJSH2014と変わらず140/90mmHg以上が薬物治療の対象となるため、降圧薬を新規処方される患者数が大幅に増加することはないとしている。


自動診察室血圧測定は採用せず

JSH2019案での血圧測定法は、従来通り家庭血圧を重視し、診察室血圧との結果が異なる場合は家庭血圧の診断を優先する。
欧米の新しいガイドラインでも診察室外血圧重視の方針を打ち出したが、日本は既にJSH2014から提唱している。


また、120/80mmHg未満への積極的な降圧の有用性を示したSPRINT試験で用いられた自動診察室血圧測定(AOBP)は、採用しない見込み。
AOBPの評価を行ったSPRINT-Jパイロット研究の結果、同法の精度は従来の血圧測定法を上回らないことが判明。
求められる測定環境の確保も難しいことから、我が国の実臨床で標準的な測定法として推奨するのは現状では困難と考えられたためだ。


今回提示されたJSH2019案について、自治医科大学循環器内科学教授の苅尾七臣氏は「より低い降圧目標を設定し、診察室外血圧を指標とする高血圧診療を浸透させる方向性は、実地診療にも生かしやすく、欧米のガイドラインとも共通する。高血圧による影響が大きい脳卒中と心不全が多いアジアにおいて、高血圧管理指針のモデルにできるガイドラインとなるだろう」と評価する。


今後、年内に外部評価委員や関係学会の意見を聴取し、来年1月ごろにはパブリックコメントを募集することになっている。梅村氏は「9月に提示したJSH2019案は、ガイドライン作成委員会内の議論に基づいたもの。外部からの意見聴取を踏まえて最終調整を行った上で、2019年春には公開する予定だ」と話す。


<きょうの一枚の絵> 
img025 のコピー 6

ジャン・ジャンセム 「青いリボンのバレリーナ」 





一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
 

収縮期高血圧は大動脈弁疾患の修正可能なリスク

収縮期高血圧は大動脈弁疾患の修正可能なリスク  初の大規模縦断コホート研究が示唆

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/etc/201811/558642.html

収縮期血圧(SBP)が大動脈弁狭窄(AS)および大動脈弁逆流(AR)の修正可能なリスク因子であることが、英国の大規模コホート研究により示唆された。
このテーマで実施された研究が少ないため、現行の心臓弁膜症治療ガイドラインでは予防戦略に言及していない。
(Eur Heart J誌 2018.10.14)


これまでの横断研究数件では、高血圧がASおよびARに関与している可能性を示唆していた。
今回の研究では、この可能性を縦断的に調査した。


英国のデータベース(CPRD)に収録されている674診療所の患者の電子医療記録(1990年1月1日~2015年12月31日)を利用した。
血圧を1回以上測定していた30~90歳の患者661万3644人の中から、ベースライン時に心血管疾患既往歴を有していた者、ASまたはARの既往歴を有していた者、脂質低下薬/降圧薬を処方されていた者、ベースライン時の血圧値が極端だった者、追跡期間が1年未満だった者および初回血圧測定が1990年以前だった者を除外した。
最終的に、539万2183人を解析対象とした。


ASまたはARの初発報告を主要評価項目とし、主にSBPと大動脈弁疾患の関連性を調査した。
さらに、DBPおよび脈圧(SBP-DBP)と大動脈弁疾患の関連性も調査した。


追跡期間中央値は9.2年(四分位範囲4.4-1.6年)、対象者の年齢中央値は39歳(四分位範囲32-53歳)だった。
追跡期間中に2万7977人(0.52%)が大動脈弁疾患と診断された。
内訳は、2万680人(0.38%)がAS、別の6440人(0.12%)がARであり、診断時の平均年齢(標準偏差)はASでは64.2(12.1)歳、ARでは57.0(16.5)歳だった。
患者の1.1%がベースライン時に糖尿病を有しており、3分の1が喫煙者だった。


多変量調整後Cox回帰モデルで解析したところ、SBPが20mmHg上昇するごとにASリスクは1.4倍に、ARリスクは1.38倍に、それぞれ増大していた。
SBP≦120mmHgの患者と比較すると、SBP≧161mmHgの患者がASと診断される割合は2倍超、ARと診断される割合は約2倍だった。

私的コメント
SBPとAS、ARとの因果関係はどうなんでしょうか。

SBPとASよびARとの関連性には年齢による差がみられ、若年群の方が高齢群よりSBPの影響を強く受けていた。

ただし、性別、BMIによる差は認められなかった。
50歳未満の患者では、SBPが20mmHg上昇するごとにASリスクが1.80倍に増大したが、71~90歳の患者では1.23倍のリスク増大だった。
一方、ARについては最若年群ではHRが1.86、最高齢群ではHRが1.22のリスク増大だった。


脈圧について調査したところ、15mmHg上昇するごとにASリスクは1.46倍に、ARリスクは1.53倍に増大していた。


DBPについては、10mmHg上昇するごとにASリスクは1.24倍に増大したが、ARリスクの増大は有意ではなかった。


さらに著者らは考察で、同じ高血圧が一部の患者にはARを招き、別の患者ではASを招く理由が完全に解明されているわけではない、と指摘している。
比較的若年期にARを発症する患者は大動脈障害や膠原病を発症しやすい体質を有し、血圧および脈圧の上昇に速やかに反応して大動脈基部の拡張ひいてはARに至る可能性がある、と著者らは推測している。
ただし、今回の結果をメタ解析またはメンデルランダム化研究で検証する必要があり、ASとARの発症機序の差異を解明するにはさらなる機序研究を実施する必要がある、と著者らは述べている。


今回の研究の限界として著者らは、
(1)観察研究だったため、未調整の交絡因子や逆因果関係を完全に排除できたわけではない、
(2)電子医療記録データにエラーが存在した可能性がある、
などを挙げている。


論文:

Rahimi K, et al. Elevated blood pressure and risk of aortic valve disease: a cohort analysis of 5.4 million UK adults.
Eur Heart J. 2018 Oct 14;39(39):3596-603. 




<きょうの一曲>

It Ain't Necessarily So from Porgy and Bess




<きょうの一枚の絵>

img025 のコピー 4

ポール・ギアマン 「サーカス」20F



 

一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
 

米国コレステロール管理GL、5年ぶりに改訂

米コレステロール管理GL、5年ぶりに改訂 基本方針は変わらずも「Fire and Forget」色弱まる

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201811/558667.html

米国のコレステロール管理ガイドライン(2018 Guideline on the Management of Blood Cholesterol)が5年ぶりに改訂され、11月12日までシカゴで開催されていた米国心臓協会学術集会(AHA2018)で発表された。
2013年版はスタチン治療のみを推奨、治療目標値は示さないなど斬新な内容で、「Fire and Forget」などと揶揄された。
2018年版では基本的な考え方は維持しつつも、一部に対してはCTによる冠動脈石灰化(CAC)スコアも参照してより精緻なリスク評価を行った上で、患者と医療者とがよく話し合って治療方針を決めることを強調するなど、多くの点で軌道修正された。
また、新たなエビデンスを踏まえ、エゼチミブとPCSK9阻害薬を治療アルゴリズムに盛り込んだ。


コレステロール管理の目的は、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の発症予防にある。
まず2次予防に関しては、ASCVDが「超ハイリスク」(very high risk)という患者カテゴリーを新設した。
その定義は、過去1年以内の急性冠症候群、心筋梗塞の既往、虚血性脳卒中の既往、症候性の末梢動脈疾患という主要なASCVDを複数認める患者、もしくはASCVDは1つだが複数の心血管危険因子を持つ患者というもの。


このカテゴリーに該当する患者に対しては、最大耐用量によるスタチン治療を行ってもLDLコレステロール(LDL-C)が70mg/dL以上であれば、まずエゼチミブの追加を、それでも70mg/dLを切らない場合はPCSK9阻害薬の追加を、それぞれ妥当とした(クラスIIa=中程度の推奨)。


PCSK9阻害薬のランダム化比較試験では、中~高強度のスタチン治療でもLDL-Cが70mg/dLを切らない患者にPCSK9阻害薬を併用し、有意なASCVDリスクの抑制が示された。
しかしPCSK9阻害薬は高額であり、費用対効果の点から2018年版ガイドラインではエゼチミブの併用を優先した(クラスI=強い推奨)。


超ハイリスクではない2次予防患者に対しては、おおむね2013年版と同じ内容の推奨だ。このカテゴリーでエゼチミブとスタチンの併用に関しては、75歳以下で最大耐用量のスタチン治療でもLCL-Cが70mg/dL以上の場合とされた(クラスIIb=弱い推奨)。


1次予防に関しては、2013年版ガイドラインと同じ計算式でリスク評価を行い、その程度に応じた方針が示されるというアウトラインは変わらないが、リスクのカテゴリーが増えた。


40~75歳で糖尿病がなくLDL-Cが70~189mg/dLの場合、10年間のASCVDリスクが5%未満(低リスク)なら生活習慣改善(クラスI)、5%以上7.5%未満(ボーダーラインリスク)でリスク促進因子がある場合は中強度スタチン治療(クラスIIb)を考慮、7.5%以上20%未満(中等度リスク)でリスク促進因子がある場合は中~高強度スタチン治療(クラスI)を開始、20%以上(高リスク)なら治療前値からLCL-Cの50%以上の低下を目標としたスタチン治療を開始するとした(クラスI)。
ただし、治療方針の決定に際しては患者と医療者がよく話し合うこととし、これ自体がクラスIの推奨になっている。


注目すべきは、中等度リスクと一部ボーダーラインリスクの患者で介入方針に迷った場合、CTによる冠動脈石灰化(CAC)スコアの測定を推奨したこと(クラスIIa)。
CACスコアがゼロで、糖尿病や若年の冠動脈疾患の家族歴、喫煙というリスク因子もなければさし当たりスタチン治療は不要で、5~10年先に再評価する。
CACスコアが1~99の場合は55歳以上、100以上または75パーセンタイル値以上の場合は年齢にかかわらず、それぞれスタチン治療が妥当とした。


また2018年版からは、小児も対象になった。
「ASCVD予防の基本は、早期からの健康な生活習慣の維持によって、その後の危険因子の発生そのものを防ぐこと」とガイドライン冒頭の「Top 10 Take-Home Message」でも強調。
小児に対する推奨では、「肥満があり血清脂質値の異常が観察された場合は適切な摂取エネルギー制限と運動による生活習慣改善を強化する」など2つがクラス1となっている。



<きょうの一曲> 

ラフマニノフ ≪パガニーニの主題による狂詩曲≫ Op 43 ルービンシュタイン /ライナー

 



<きょうの一枚の絵> 

img025 のコピー 3

イヴォン・グラック 「果物、ワインと花」 15F




一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  

冬に10mmHg上がる人は心血管リスクが2倍に

冬に10mmHg上がる人は心血管リスクが2倍に 季節に応じた降圧薬調整で変動抑制を

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201811/558620.html

夏から冬にかけて収縮期血圧(SBP)が10mmHg以上、拡張期血圧(DBP)が5mmHg以上上昇する患者は、心血管イベントリスクが2倍になる――。夏に血圧が上がるような逆の変動を示す患者も、血圧の絶対値とは独立に高リスクであることが、国内の大規模介入試験のサブ解析から示された。患者ごとに血圧の季節変動性とその原因を見極めて、季節ごとに降圧薬処方を調整するなどの個別化医療が重要になる。


イレギュラーな血圧季節変動を示す高血圧患者は心血管リスクが有意に高く、そうした変動性は早期に降圧薬処方を調整することで抑制できる。

 
一般に、冬季は気温低下による末梢血管抵抗上昇のために、夏季よりも血圧が高くなる。
これ以外にも、交感神経の亢進やレニン・アンジオテンシン(RA)系の活性化など様々な要因が関与しているが、夏から冬にかけてSBP5mmHg程度の上昇が見られるのが通常だ。


しかし、中には冬に10mmHg以上の血圧上昇を示したり、逆に夏の方が血圧が高くなる患者も存在する。
降圧薬による血圧コントロールを行っている患者において、こうした季節変動性の程度が心血管イベントの発生に影響するかを検証するため、家庭血圧に基づいた長期の降圧治療の有用性を検討した多施設ランダム化比較試験(HOMED-BP研究)のサブ解析が行われた。


降圧治療後の季節ごとの家庭血圧を1年以上追跡できた高血圧患者2787人を、夏に血圧が上昇する群(逆転変動群)と冬に血圧が上昇する群とに分け、さらに後者はその季節変動の大きさに応じて均等に3群(低変動群、中変動群、高変動群)に分けた。
各群の全心血管イベントを検証した結果、SBPとDBPのいずれについても、通常の変動を示す低変動群・中変動群と比較して、逆転変動群と高変動群では有意に無イベント生存率が低かった。
また、治療開始前後の血圧値などで補正した全心血管イベントのハザード比は、低変動群を基準として高変動群では約2倍、逆転変動群では約3倍という高値だった。 


逆転変動群には夏場に重労働に従事する農作業者など、夏と冬とで生活環境が大きく変化する患者が含まれているという。
また、糖尿病などによる自律神経障害を呈する患者や、夏季の暑さで睡眠不足に陥っている患者などは、温度変化に対する正常な応答を示せず、逆転した季節変動を示す可能性がある。
また、潜在的な心機能の低下が隠れている恐れもある。


一方、高齢患者や動脈硬化が進んだ患者は、圧受容体反射感受性が低下し、大きな血圧季節変動を呈する傾向にある。
また、家の断熱が不十分で冬に著しく室温が低下するような生活環境の場合、冬季の血圧上昇は大きくなりやすい。
寒冷な地域では、冬季に塩分摂取量が増加し血圧が上昇する場合もある。
気温変化というストレスに対しての感受性が高いという観点では、測定環境のストレスに反応しやすい白衣高血圧の患者も注意を要する。


体質や生活環境など、血圧季節変動に影響を与える要素は様々だが、血圧そのものの高さとは独立に季節変動がリスクになっている以上、家庭血圧を定点観測的に測定し、季節変動の大きさとその要因となっている因子を見極める必要がある。
診察室血圧でも季節変動は調べられるが、血圧は自宅の温度などの環境にも大きく左右されるため、家庭血圧の方がより実生活に即した変動を検出できる。
また、夏季には高血圧と診断されない範囲の患者でも、季節変動が大きいと冬季には高血圧基準値を上回る場合があるので、長期間の継続的な家庭血圧測定が求められる。


自治医科大学内科学講座循環器内科学部門教授の苅尾七臣氏は、10℃の気温変化に対して10mmHg以上の血圧変動を示す病態を「気温感受性高血圧(Thermosensitive Hypertension)」と命名し、注意を呼び掛けている。
こうした患者は、季節に伴う温度変化だけでなく、朝晩や日ごとの温度変化も循環器疾患を引き起こすトリガーに直結しやすい。


同氏は、季節、日間、日内など時相の異なる血圧変動と、モーニングサージなどの急激な血圧上昇が重なることで心血管イベントのトリガーになるとの「血圧サージの共振仮説」を提唱している。
一時的な血圧上昇のピークが心血管イベントに直結しないようにするために、血圧の季節変動を抑制して血圧のベースラインを安定させる意義を苅尾氏は強調する。


*季節に応じた降圧薬調整を

イレギュラーな血圧季節変動を抑制する最も直接的なアプローチは、季節に応じて降圧薬処方を調整することだ。
血圧季節変動が大きい高血圧患者に対して、夏と同じ降圧薬処方を漫然と続けていると、冬場の血圧管理が不十分になってしまう。
具体的には、季節変動が大きな患者に対しては、冬に向けて降圧薬の種類や量を増やし、逆に夏場には過降圧を避けるために減薬する。


同研究で、季節ごとの降圧薬調整を行った患者について、調整の時期と変動抑制効果との関係性についても検討を行った結果、早期の降圧薬調整によって季節変動を抑制できた。
冬を前に早期(9~11月)に降圧薬の増量を行った群(n=632)では、夏から冬にかけての血圧上昇が3.9/1.2mmHgと、12~2月に増量を行った群(n=503)の血圧上昇(7.3/3.1mmHg)よりも有意に小さかった。
また夏に向けての降圧薬の減量についても同様の結果で、3~5月に減量した群(n=477)の冬から夏にかけての血圧低下(4.4/2.1mmHg)は、6~8月に減量した群(n=641)の血圧低下(7.1/3.4mmHg)よりも有意に小さかった。


季節変動は数少ない“介入可能な血圧変動”であり、季節変動を考慮した降圧薬調整で変動を抑制していく必要がある。


苅尾氏らは南三陸病院副院長の西澤匡史氏とともに、東日本大震災の被災地である宮城県南三陸町で、ICT(情報通信技術)を用いた家庭血圧の継続的なモニタリングと降圧治療を行っている。
その中で、高血圧患者351人に対して季節変動を考慮した降圧薬処方を続けたことで、130/80mmHg未満への降圧を達成するとともに、血圧季節変動の抑制に成功している。
震災翌年の2012年は主に10月ごろから降圧薬を増量したが、翌年には季節変動が大きい患者が同定できたため、さらに早期の9月ごろから処方の調整を行った。
2015年には1月ごろの血圧のピークが消失し、2018年現在は十分に血圧変動が安定したため、通年での降圧薬の減量を進めているという。


*降圧薬調整を実践している医師は約6割

とはいえ、季節変動を考慮した血圧管理を行っている医師はまだ多くはない。
日経メディカル Onlineでは、苅尾氏との共同調査として、医師会員を対象に降圧治療に関するアンケート調査を行った(調査期間:2018年8月13~26日、総回答者数:4348人)。
その中で、「季節によって、降圧薬の変更を行う患者の割合はどれくらいですか」との問いに対して、全回答者の38.9%に当たる1693人が「降圧薬の変更を行っていない」と回答した。
61.1%の医師が降圧薬の変更を行っているが、このうち半数以上が、実際に降圧薬調整の対象となる患者は25%以下と回答した。

私的コメント:
当院でも血圧の
季節変動には配慮しています。
そのための条件は、外来血圧だけでは不十分で家庭血圧を測定して血圧手帳に記載してもらう必要があります。
1か月平均の血圧を算出してもらいグラフ化していただくと最高です。
この方法によって血圧の季節変動は一目瞭然となります。
また、当院では毎回家庭血圧を記録した血圧手帳持参していただき血圧値をチェックしています。

大病院のように3か月前後の降圧剤処方を行っているようなら、その時点で季節の血圧変動を語る資格はありません。 
高血圧専門の大学教授などは、一体どのような外来を行ってみえるのでしょうか。
 講演会で一度質問してみたいものです。 


この結果について同氏は、「季節変動を考慮した降圧薬調整は、浸透しつつはあるが普及はこれからだ。季節ごとの温度変化が激しくなっている今こそ、家庭血圧を活用して気温感受性高血圧の患者を見つけ出し、個別にきめ細やかな降圧治療を行うのが重要だ」と指摘する。


*カルシウム拮抗薬中心の処方で季節変動を抑制

血圧季節変動を抑制する上では、どのような降圧薬処方が望ましいのだろうか。
一般にカルシウム(Ca)拮抗薬を中心とした降圧薬処方が、安定した降圧と血圧変動抑制を目指す上では有効と考えられる。


季節変動の最大の要因である気温変化は、血管壁の収縮力(トーヌス)に大きな影響を与えることから、血管のスティフネスを改善し血管拡張効果を有するCa拮抗薬が、各種降圧薬の中でも特に高い変動抑制効果を期待できる。
過去の研究からもCa拮抗薬単剤での血圧変動抑制作用が報告されているが、さらに佐藤氏らは、年間の最大温度差が50℃にも達する北海道において、降圧薬の併用療法におけるCa拮抗薬の血圧季節変動抑制効果を検証した。


降圧薬としてアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)単剤では降圧目標に到達しない65歳以上の高血圧患者を、ARB+Ca拮抗薬の2剤併用群(n=58)とARB+利尿薬の2剤併用群(n=62)の2群に割り付けて1年間追跡し、3カ月ごとの診察室血圧から季節変動の抑制効果を検討した研究がある(CAMUI研究)。
その結果、ARB+Ca拮抗薬群の方が血圧季節変動が有意に小さかった。


また、ARBとCa拮抗薬の常用量による2剤併用で降圧が不十分な高血圧患者を、ARB+Ca拮抗薬+利尿薬の3剤併用群と、ARB+Ca拮抗薬増量群の2群に分けて追跡しているASAHI AI研究でも、半年間の追跡でARB+Ca拮抗薬増量群の方が血圧季節変動が小さいという中間解析結果が出ている。


こうした結果から、冬に降圧薬を追加する場合、一般論としてはCa拮抗薬の増量や、ARB+Ca拮抗薬のような合剤への切り替えが有効と思われる。
ただし、血圧季節変動には様々な要因が関わるため、患者の病態に応じて個別に降圧薬を選択する必要はある。
例えば、腎機能が低下した患者に対しては、RA系の亢進を抑制する上でARBも有効な可能性がある。
食塩感受性高血圧などで冬季の塩分過多の影響が大きい患者には、利尿薬も変動抑制効果が期待できる。


なお、2剤でも降圧が不十分な治療抵抗性高血圧患者に対しては、通年でARB+Ca拮抗薬+利尿薬の3剤併用療法を行うのが一般的だ。
こうした患者は、冬季の厳格な血圧コントロールとともに、夏に過降圧や脱水にならないよう注意が必要。
腎機能の変化をチェックしながら、利尿薬を一時減量するといった対策が有効だ。


季節ごとに降圧薬を調整する際には、処方する薬剤の数にも注意が必要だ。
錠剤数が季節によって変わるとアドヒアランスが低下しかねず、それ自体が変動性を助長してしまうからだ。
単純に薬を足すのではなく、異なる機序の降圧薬を含む合剤に切り替え、錠剤数が変わらないようにして患者の負担を減らす工夫も重要だ。


通常の血圧季節変動から逸脱した変動性は、その患者が抱える問題点のマーカーでもある。
季節変動が大きい患者は、高齢や動脈硬化といった属性だけでなく、寒い部屋で寝起きしているといった生活環境や、不規則な睡眠習慣が原因となっている場合もあることから、住環境や生活リズムへのアドバイスも有効だ。


血圧季節変動を起こしている要因を洗い出すことも重要性だ。
血圧季節変動は、降圧薬調整に限らず温度調節や暮らし方など、原因に応じて様々な手段で介入できる。
季節変動を抑制して安定的な血圧コントロールを行うことが、心血管イベントを回避する近道となる。

ロナルド・グレッグ 「ル・ガールの村」10F


一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  

LVEF軽度低下急性心不全の予後

LVEF軽度低下急性心不全の予後予測因子は

https://medical-tribune.co.jp/news/2018/1026516684/?adlpo_rcc=1

2018年3月に公表された『急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)』では、心不全を左室駆出率(left ventricular ejection fraction;LVEF)が低下した心不全(heart failure with reduced ejection fracrion;HFrEF)とLVEFが保たれた心不全(HF with preserved EF;HFpEF)に加え、LVEFが軽度低下した心不全(HF with mid-range EF;HFmrEF)に分類された。
HFmrEFの急性心不全例のEFの改善と予後との関連や予測因子については明らかではない。
大阪労災病院循環器内科の柳川恭佑氏は、HFmrEFに該当するLVEF 40~49%の急性心不全例の予後およびLVEF改善の予測因子を検討。
(第66回日本心臓病学会 2018.9.7〜9)


急性心不全で入院したHFmrEF例をEF改善の有無により比較

対象は、大阪労災病院急性心不全レジストリ(AcUte heart failure Registry in the Osaka RosAi hospital;AURORA)において、2015年1月~17年1月に急性心不全で入院した710例のうち、入院時LVEF 40~49%であった連続症例98例から入院中死亡や外来フォロー不可の10例を除いた88例。
1年間の外来フォロー中におけるLVEF 10%以上改善の有無により改善群16例(18%)と非改善群72例(82%)の2群に分け、入院1年後の心不全再入院率を比較するとともに、両群の患者背景や入院時所見、治療内容を比較検討した。


*EF改善の予測因子は入院中のCAG施行、LVDdが小さい、MRが軽度

入院後1年間での心不全再入院率は、改善群で有意に低値であった。


改善群と非改善群の患者背景に有意な差は認められなかった。
入院時の生化学検査では非改善群において血中尿素窒素(BUN)、ヘモグロビン(Hb)が有意に高値であった。
心エコー検査では非改善群においてLVEF、左室拡張終末期径(LVDd)、僧帽弁逆流(MR)の重症度が有意に高かった。
また、改善群では拡張期血圧が有意に高かった。入院時の治療状況については、β遮断薬、ACE阻害薬/ARBの処方は両群とも7~8割にとどまっており有意な差は認めなかった。
しかし入院中の冠動脈造影(CAG)施行率および経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行率が改善群で有意に高かった。

 
多変量解析の結果、LVDdが小さいこと、MRが軽度であること、入院中にCAGを施行していることがHFmrEFの急性心不全例におけるEF改善の独立した予測因子として抽出された。

 
これらの結果から柳川氏は「HFmrEFの急性心不全例では入院時のLVDdとMRがEF改善の予測因子となる可能性が考えられ、さらなる検討が必要」とした。また、急性心不全において入院中にCAGを施行した例ではβ遮断薬、ACE阻害薬の処方およびPCI施行が増加し、死亡率、再入院率の改善が認められたとの報告があることや、HFmrEFではHFrEFと同様に虚血性心疾患が多いと報告されていることから、「HFmrEFの急性心不全例では、CAGを含めた早期の原因精査および適切な治療がより重要と考えられる」と述べた。



<きょうの一曲>

ハイドン:十字架上のキリストの最後の7つの言葉



<きょうの一枚の絵>
img025 のコピー 3

ジャン・フサロ  「冬のソーヌ」25M




 

一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  



SGLT-2阻害薬による2型糖尿病のHFリスク低下

SGLT-2阻害薬が2型糖尿病のHFリスク低下に最も効果的 新規血糖降下薬を比較したメタ解析の結果

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/etc/201810/558396.html

2型糖尿病の心不全(HF)による入院リスクに及ぼす影響に関して、新規血糖降下薬の3つのクラス(GLP-1アゴニスト、DPP-4阻害薬、SGLT-2阻害薬)を比較するメタ解析が行われた。
解析の結果、SGLT-2阻害薬は、GLP-1アゴニスト、DPP-4阻害薬よりもHFリスクが有意に低いことが示された。
(JACC Heart Fail誌 2018.10)

 

2008年、米食品医薬品局(FDA)は、製薬会社に対して全ての新規血糖降下薬の心血管安全性を検証するよう勧告した。
そのため、新規血糖降下薬の3つのクラス(GLP-1アゴニスト、DPP-4阻害薬、SGLT-2阻害薬)では、心血管アウトカムの試験が実施されている。
HFのリスクに関しては、SAVOR-TIMI 53試験で、DPP-4阻害薬であるサキサグリプチンによってHFによる入院の発生率が上昇することが示されている。


本研究では、2型糖尿病患者で、HFによる入院リスクに対する新規血糖降下薬の影響を3つのクラス間で比較するために、FDAの勧告後に発表されたプラセボ対照無作為化試験の系統的レビューとネットワークメタ解析を行った。


2008年12月1日から2017年11月24日までに発表された試験を選択するために、Embase、PubMed、Cochrane Library、clinicaltrials.govで検索した。
試験の選択基準は、
(1)2型糖尿病の成人患者で実施された無作為プラセボ対照試験、
(2)既存の糖尿病治療に追加した新規血糖降下薬とプラセボを比較した試験、
(3)主要または副次エンドポイントとして、HFの発生またはHFによる入院を報告した試験
だった。
除外基準は、観察研究やレトロスペクティブ研究、FDAの勧告前に完了した試験、HFをエンドポイントとして報告していない試験だった。


9件の試験が本研究の選択基準を満たしており、8万7162例のデータが得られた。GLP-1アゴニストの試験は4件で、3万3457例(リキシセナチド、リラグルチド、セマグルチド、週1回のエキセナチド)、DPP-4阻害薬は3件で、3万6543例(アログリプチン、サキサグリプチン、シタグリプチン)、SGLT-2阻害薬は2件で、1万7162例だった(エンパグリフロジン、カナグリフロジン)。
9件の試験集団の平均年齢は60.3~65.5歳の範囲にわたっており、男性が多く(60.7~71.6%)、2型糖尿病の平均罹病期間の範囲は7.2~13.9年だった。


HFによる入院リスクに対する影響を血糖降下薬のクラス間で比較するために、マルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション法を用いたベイズ法によるネットワークメタ解析を行い、推定相対リスク(RR)と95%信用区間(95%CrI: credibility interval)を算出した。
また、薬剤クラスごとにHFによる入院リスクを低下させるための至適治療である確率を算出し、薬剤クラスの順位付けを行った。


ネットワークメタ解析の結果、プラセボと比較して、HFによる入院リスクが最も低かったのはSGLT-2阻害薬だった。
他の薬剤クラスとのペアワイズ比較でも、SGLT-2阻害薬の方がHFによる入院リスクが有意に低かった。
GLP-1アゴニストとの比較では、RRが0.59(95%CrI:0.43-0.79)、DPP-4阻害薬との比較では、RRが0.50(95%CrI:0.36-0.70)だった。
HFによる入院リスク低下の至適治療の確率は、SGLT-2阻害薬で99.6%、次いでGLP-1アゴニストの0.27%、DPP-4阻害薬は0.1%だった。


本研究により、2型糖尿病患者において、血糖降下薬の新規クラスの間でHFリスクに及ぼす影響に明白な違いが認められ、SGLT-2阻害薬は、GLP-1アゴニストとDPP-4阻害薬よりもHFによる入院リスクが低いことが示唆された。


SGLT-2阻害薬であるエンパグリフロジンとカナグリフロジンを検証した先行試験でも、両剤ともにHFによる入院リスクが低いことが示されている。
これらを踏まえると、血糖降下は3つの薬剤クラス全てに共通する特徴であるため、HFリスクに対する薬剤クラスによる影響の違いは、血糖降下によるものではなく、血糖以外の影響が関係していることが示唆される、と著者らは考察している。


今回の解析結果から、2型糖尿病患者の管理で血糖降下薬を選択する際には、HFリスクへの影響を考慮に入れるべきことが示唆された、と著者らは述べている。


論文:

Kramer CK, et al. Comparison of new glucose-lowering drugs on risk of heart failure in type 2 diabetes: a network meta-analysis. 
JACC Heart Fail. 2018:6:823-30.





<きょうの一曲>

UTE LEMPER ~ "La Vie En Rose" & "Non, Je Ne Regrette Rien"


2018年11月12日22時24分56秒000 のコピー




<きょうの一枚の絵>

img025

ミシェル・ド=ガラール  「黄色い花」 20P

(最初、医学の道に進んだが、絵の道に入る)




一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
 


心不全の新分類から見た診療と予後予測

心不全の新分類から見た診療と予後予測

https://medical-tribune.co.jp/news/2018/1106516909/

従来、心不全(HF)は左室駆出率(LVEF)によって、LVEFが低下したHFrEFとLVEFが保たれたHFpEFに大別されてきた。
しかし、LVEFが軽度に低下している症例や以前はLVEFが低下していたが改善した症例など、より細かく、時間軸を考慮した上で分類することで新しい知見が得られるようになり、今年(2018年)刊行された『急性・慢性心不全診療GL(2017年改訂版)』においても、これらの点が反映された。
LVEFの経時的変化から見た心不全診療と予後予測について、現時点での知見を国立循環器病研究センター心不全科部長の泉知里氏が第22回日本心不全学会(2018.10.11~13日)で報告した。


LVEFの定義を明確化し、経時的変化を考慮

泉氏は、従来のHFの分類(HFrEF/HFpEF)の問題点について
①EFの定義が統一されていない
②経時的な変化を考慮していない
―ことを挙げた。

 
HFpEFに関するこれまでの研究では、LVEFの定義が40%超から50%超とばらつきがあり、それによって研究結果が変わるケースがあった。また、HFrEFではACE阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬などの投与によってリバースリモデリングが45~65%の症例で見られるように、HFの病態は経時的に変化するため、ある一時点のLVEFによる分類のみでは十分とはいえない。

 
そこで、最新のGLでは、HFrEF(LVEF40%未満)、HFpEF(同50%以上)に加え、LVEFが軽度低下したHFmrEF(同40%以上50%未満)、LVEFが改善したHFrecEFの概念が示された。
HFmrEFはHF患者の8~10%を占め、心房細動の合併率はHFpEFとHFrEFの中間、虚血性心疾患の合併率はHFrEFに近いなど、両者の特徴を併せ持つとされる。
HFrecEFは時間軸を取り入れた概念であるが、HFrecEFだけでなくHFpEFからHFrEFになる例、改善したHFrecEFが再びLVEF低下を来す例など、さまざまな病態の長期追跡データが蓄積されつつある。


HFrecEFは予後が良好か

LVEFの経時的変化を踏まえた新分類ごとの予後はどうなっているのか。
泉氏は2つの報告を紹介。
HF患者をHFrEF、HFpEF、さらにHFmrEFの中でLVEFが改善したHFm-recEFとそうでないHFmEFに4分類して予後を検討すると、HFm-recEFの予後が最も良かったことが報告されている。
別の報告では、HErEF、HFpEF、HFrecEFで死亡、移植、補助人工心臓(LVAD)の割合を検討したところ、HFrecEFが最も良好な結果を示し、HF入院の割合ではHFpEFとHFrecEFが同等、HFrEFが最も不良であった。
これらの報告を踏まえ、同氏は「HFrecEF患者の予後が良いのは、臨床現場でも実感することであると思う」と述べた。

HFpEFからHFrEFへと悪化するケースもある。
HFpEFの経時的変化を見た報告によると、HFpEFの中でも退院時のLVEFが50~60%と低めの症例では数年後にLVEF低下を来しており、「LVEF 55%以下のHFpEF患者では、将来HFmrEFになる可能性がある」と結論されている。


HFrecEFで再度LVEFが低下する例では改善までの期間が長い

一方で、HFrecEFでも再度LVEFが低下する例がある。
泉氏は、自身が担当したHFrEF症例(45歳男性、拡張型心筋症)を紹介。
β遮断薬などによる治療で2年後にLVEFは正常レベルまで改善したものの、その後、服薬は継続していたにもかかわらずLVEFが悪化した。「この症例は、複数の報告で予後が良いとされているHFrecEFに該当するが、継続フォローするとLVEFは悪化した。実際には臨床で同一患者の長期経過を見ていくと、このような二相性の変化を来す症例に遭遇する」と述べた。

 
では、HFrecEFから再びLVEFが低下する「二相性変化」を来す症例には、どのような特徴があるのか。
HFrEFから至適薬物療法によりLVEFが改善したHFrecEF(LVEF 50%超)症例の中で、再びLVEFが低下する症例では、LVEF改善時(同50%超)をベースラインとしたGlobal Longitudinal Strain(GLS)が低い傾向があるとの報告があり、同氏は「GLSにより再度LVEF低下を来す症例を拾い上げられる可能性がある」と説明した。

 
さらに泉氏は、自身の研究から、HFrEF(LVEF 40%未満)の拡張型心筋症患者103例のうち、1年後にLVEFが改善したHFrecEF 66例(64%、LVEF 40%以上、⊿EF 10%以上)を追跡したデータを紹介。
慢性期(5.8~15.0年、中央値11.5年)に再びLVEF低下を来していたのは66例中15例(14.5%、⊿LVEF -10%未満)と約4分の1で、それらの症例ではほぼ同時期に予後が悪化し始めた。
再びLVEFが低下した症例の特徴を検討するため、当初のHFrEFからLVEF改善に至るまでの期間を調べたところ、10年後もLVEF改善が維持された36例では370±60日であったのに対し、再びLVEFが低下した例では582±340日と、LVEFの改善に時間がかかっていた。


以上を踏まえ、同氏は「心エコーなどにより、リバースリモデリングの縦断的データが病態の解明や治療の選択に有用であると考えられ、心機能の長期フォローアップの蓄積が重要である」と結論した。


私的コメント;
引用文献については本文を参照ください。 





<きょうの一曲>

French Latino - Historia de un Amor

https://www.youtube.com/watch?v=s9PcpkMqtp8


<きょうの一枚の絵>

img025 のコピー 2
クリスチャン・ダリベール  「デュオ」15M 
 


 

一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
 

糖尿病第二選択薬は2クラスが中心に

糖尿病第二選択薬は2クラスが中心に ADA/EASD合同レポート

https://medical-tribune.co.jp/news/2018/1101516871/

米国糖尿病学会(ADA)/欧州糖尿病学会(EASD)の2型糖尿病治療についての合同レポートが発表された(Diabetes Care 2018年10月4日オンライン版)。
両学会による合同治療指針が発表されるのは2006年以来5回目で、今回は3年ぶりの改訂となる。
注目の改訂点は第二選択薬の位置付けで、これまでの横並び推奨から、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬を中心とする体系に改められた。

私的コメント;
DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬は、ほぼ同等の位置付けになっていましたが、最近になってASCVDやCKDに対してGLP-1受容体作動薬の存在価値が高まって来たようです。


動脈硬化・CKD既往例にはSGLT2阻害薬かGLP-1受容体作動薬

今回の合同レポートでは、薬物療法のアルゴリズムが提示され、治療の第一ステップにはメトホルミンが包括的生活習慣改善と並んで位置付けられた。

 
大きく変わったのは、メトホルミンに次ぐ第二選択薬の扱いである。
これまでは、SU薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、基礎インスリンが並列に提示され、低血糖の有無、体重への影響、費用などを勘案し、患者ごとに使い分けることが推奨されていた。

 
これに対し、今回は動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)や慢性腎臓病(CKD)の既往例にはSGLT2阻害薬かGLP-1受容体作動薬が推奨された。
ただし、ASCVDの面からは両薬剤が並列の扱いだが、心不全・CKDの面からはSGLT2阻害薬が優先であり、GLP-1受容体作動薬は推算糸球体濾過量(eGFR)などから判断してSGLT2阻害薬が使用できない場合の選択肢とされた。

 
なお、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬のクラス内の薬剤選択については、CVD抑制効果が証明されている薬剤を優先すべきだとされ、SGLT2阻害薬についてはエンパグリフロジン>カナグリフロジンの順で、GLP-1受容体作動薬についてはリラグルチド>セマグルチド>エキセナチド徐放剤の順でエビデンスが強いことが付記された。
私的コメント;
「エンパグリフロジン>カナグリフロジン」については
EMPA-REG OUTCOMEでは報告されなかった「足指または中足骨レベルの切断リスク」がCANVAS Programでみられたからでしょうか。


足趾切断はSGLT2阻害薬に共通の問題か
最近発表されたFadiniらの解析では、今回報告されたダパグリフロジンやエンパグリフロジンをはじめとする他のSGLT2阻害薬に比較して、カナグリフロジンでは足趾切断が多い可能性が示されている


EMPA-REG OUTCOME試験
心血管死が約4割も減少
心筋梗塞は減少傾向,脳卒中は増加傾向にあったが,脳卒中も実薬を内服している間には増加傾向はなく,実薬内服中止後に増加傾向があったことが示されている
心血管死が,内服開始数ヶ月後から実薬群で明らかに減少

(SGLT2阻害薬が持つ利尿作用が,心血管死の予防に有利に働いたのではないかとされている)

CANVAS Program(CANVAS/CANVAS-R)

EMPA-REG OUTCOME試験と同様に
 canagliflozinでも同等な結果が示され,心血管イベント抑制効果はSGLT2阻害薬のクラス効果である可能性が強く示唆された。
・足指または中足骨レベルの切断リスクを増大


また、「リラグルチド>セマグルチド>エキセナチド」についてはエビデンスの評価が確定しているのでしょうか。

一方、ASCVDやCKDの既往がない場合には、
①低血糖
②体重
③費用
-の面から第二選択薬が提示された。


基礎インスリンは第二選択薬から外れる

①の面からは、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬に加え、DPP-4阻害薬、チアゾリジン薬の計4クラス薬が、
②の面からは、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬がそれぞれ並列の扱いで推奨された。
③の面からの推奨薬はSU薬とチアゾリジン薬である。基礎インスリンは第二選択薬から外れ、第三選択薬以降で位置付けられた。

 
日本の糖尿病ガイドラインは、患者の病態に合わせて医師の判断で薬剤を使い分ける立場を取っており、薬剤の序列を明確にする欧米との違いが浮き彫りになっている。



参考

2型糖尿病における薬物療法のアルゴリズム




<きょうの一曲>

レクオーナ: スペイン組曲 「アンダルシア」 6. マラゲーニャ Pf.西本夏生

https://www.youtube.com/watch?v=Uy6s8jC-Yhs


熊本マリ「レクオーナ:マラゲーニャ」

https://www.youtube.com/watch?v=OUOjnDLPRJQ




<きょうの一枚の絵>

img025 のコピー

アンドレ・コタヴォ 「クレマチスのブーケ」 12F






GLP-1受容体作動薬と心血管リスク

GLP-1受容体作動薬は心血管リスクを減らすか

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/noto/201810/558142.html


聖路加国際病院 内分泌代謝科・能登 洋 部長が書かれた記事からです。 

 
グルカゴン様ペプチド(GLP)-1受容体作動薬は、血糖降下作用だけでなく、心血管イベント抑制や体重減少作用が期待されている注射薬である。
1週間に1回の注射で済むウイークリータイプや、注射針が装着され1回使い切りのオートインジェクター注入器となっている製剤がある点でも注目されている。
近日中にも、国内で新製剤が登場する見込みだ。


期待のGLP-1受容体作動薬

GLP-1などのインクレチンは、食後に腸管から分泌されるペプチドホルモンである。
GLP-1受容体作動薬は、同受容体作動をするインクレチン模倣薬で、血糖値依存的なインスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制、胃内容排泄遅延、満腹感促進作用などが知られている。


単剤では低血糖を起こしにくく、体重減少効果が期待できる点でも期待が大きい。
2015年以降、心血管イベントを評価したランダム化比較試験(RCT)が複数報告されている。
また、米国では抗肥満薬(日本承認用量より高用量)としても承認されている。


果たして合併症抑制効果はいかに?

現時点で、プラセボと比較したRCTが5報発表されている。
リラグルチドとアルビグルチドの各1報では心血管イベントリスクの有意な低下(優越性)を認めたが、他の3剤3報では「
非劣性の立証」にとどまっている。


(1)リラグルチド(LEADER試験)

LEADER試験は、心血管疾患ハイリスクの2型糖尿病患者(9340例)をリラグルチド群またはプラセボ群にランダムに割り付け、3.8年(中央値)間追跡した非劣性試験。
リラグルチド群のハザード比は0.87(95%信頼区間:0.78-0.97)で、非劣性が確認された。
さらに、
事前に設定されていた手順で、優越性検定において有意差も認めた。
ただし、日本での承認量よりも多いこと、
絶対リスクはわずかな差であることに気を付けよう。


(2)セマグルチド(SUSTAIN-6試験)

SUSTAIN-6試験は、心血管疾患ハイリスクの2型糖尿病患者(3297例)をセマグルチド群(週1回投与、日本では承認されたがまだ薬価未収載)またはプラセボ群にランダムに割り付け、2.1年(中央値)間追跡した非劣性試験
セマグルチド群のハザード比は0.74(95%信頼区間:0.58-0.95)で非劣性が確認された。


ここで注意が必要である。
非劣性マージンは1.8に設定されたが、1.8倍までのリスクを許容するというのは非臨床的ではないだろうか。
また、優越性も認めたことになっているが、これはしょせん「
後付け解析」なので、「仮説の探究」程度として読み飛ばすのが正解である。しかも、「検定の多重性」による偽陽性回避の調整もされていない。


なお、SUSTAIN-6試験ではセマグルチド群の方で網膜症リスクが有意に高値だった。
この薬剤に特有の副作用かも知れないし、血糖値が急激に下がった影響かもしれない。


(3)持続性エキセナチド(EXSCEL試験)

EXSCEL試験は、心血管疾患ハイリスクの2型糖尿病患者(1万4752例)を持続性エキセナチド群(週1回投与)またはプラセボ群にランダムに割り付け、3.2年(中央値)間追跡した非劣性試験。
持続性エキセナチド群のハザード比は0.91(95%信頼区間:0.83-1.00)で非劣性が確認されたが、優越性検定において有意差は認めなかった。


(4)リキシセナチド(ELIXA試験)

ELIXA試験は、冠動脈疾患を有する2型糖尿病患者(6068例)をリキシセナチド群またはプラセボ群にランダムに割り付け、25カ月(中央値)間追跡した非劣性試験(非劣性マージン1.3)。リキシセナチド群のハザード比は1.02(95%信頼区間:0.89-1.17)で非劣性が確認されたが、優越性検定において有意差は認めなかった。



(5)アルビグルチド(Harmony Outcomes試験)

Harmony Outcomes試験は、心血管疾患の既往がある2型糖尿病患者(9463例)をアルビグルチド群またはプラセボ群にランダムに割り付け、1.6年(中央値)間追跡した非劣性試験。
アルビグルチド群のハザード比は0.78(95%信頼区間:0.68-0.90)で非劣性が確認され、さらに優越性検定において有意差を認めた。


一次エンドポイントの内訳として、心筋梗塞リスクは有意に低下した(ハザード比:0.75、95%信頼区間:0.61-0.90)が、脳卒中と心血管死亡には有意差がなかった。
また、総死亡も両群間で有意差を認めなかった。


なお、本薬剤は論文発表前に、製造会社の「事業上の理由」で、海外で販売中止となっている(日本では未販売のまま)。


作用時間によって効果は異なるか

GLP-1受容体作動薬は作用機序の点で、短時間作用型(エキセナチド、リキシセナチド)と長時間作用型(リラグルチド、デュラグルチド)に分類される。
両者はインスリン分泌促進作用やグルカゴン分泌抑制作用は共通だが、短時間作用型は胃内容排出遅延作用が比較的強いため食後インスリン必要量が少なくて済み、食後の血糖コントロールに適している。
長時間作用型はその逆で、食後インスリン必要量は多くなるが、空腹時の血糖コントロールに適しているとされる。


実際、前述のように長時間作用型のリラグルチドは心血管イベントのリスクを有意に低下させたり、体重を有意に減少させたりすることがRCTで実証されている。
ただし、現在日本で承認されている投与量よりも多いため、日本で同様の効果が得られるかは「
未知数」である。


もっとも、同じ長時間作用型でも他剤では心血管疾患抑制効果の再現性は認められず、短時間作用型も有意差を認めていない。
このような結果は各試験で患者層が異なるためかもしれないが、
実臨床では理論が常に治療結果に反映されるとは限らない。


糖尿病治療における本薬剤の位置付け

心血管イベントのリスク減少のエビデンスがあるものの、再現性はまだ乏しく、日本での承認用量とは異なる。
注射薬であることと高価であることも勘案すると、経口薬およびインスリンで血糖コントロールが不十分な症例や、肥満が著明な症例が適応となるだろう。


なお、GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬は、DPP- 阻害薬よりも死亡リスクを有意に低下させるというメタアナリシスがあるが、含まれている研究の多くは死亡を一次エンドポイントとしたものではなく、追跡期間も長くないため、慎重に解釈しなければならない。


糖尿病以外の適応の可能性

(1)抗肥満薬として

リラグルチドとセマグルチドは、2型糖尿病を合併していない肥満者(平均BMI約39)において、体重を有意に減少させることがRCTで実証されている。
ただし、試験で投与されたリラグルチドは現在日本で承認されている投与量よりも多いため、日本で同様の効果が得られるかは
未知数である。
セマグルチドも、薬価未収載である。


(2)心不全治療薬として

GLP-1受容体作動薬は直接の心保護作用を有することが期待されているが、心不全入院後の患者を対象としたRCTでは、プラセボと比較して退院後の臨床的安定性に有意差を認めなかった。


今後の期待

実用性の点では、画期的な革新が現実のものとなっている。
ウイークリータイプのデバイスには注射針が内蔵され、使用法が非常に簡便なものもある。
また、GPL-1受容体作動薬の経口剤も開発中である。




<きょうの一枚の絵>

img022 のコピー 2
ベルナール・ビュッフェ「三色すみれ」8F





一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   



他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  

GLP-1作動薬albiglutideで心血管リスク抑制 Harmony Outcomes試験

GLP-1作動薬albiglutideで心血管リスク抑制 Harmony Outcomes試験の結果

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/special/dmns/lecture/201811/558552.html

心血管疾患のある2型糖尿病患者を対象に、長時間作用型のグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体作動薬である albiglutide(国内未承認)の心血管安全性を評価したHarmony Outcomes試験の結果が明らかになった。
プラセボに比べて主要有害心血管事象のリスクが有意に低下し、忍容性・安全性は良好だった。
ドイツ・ベルリンで開催された第54回欧州糖尿病学会(EASD2018)で10月2日に発表され、同日にLancet誌オンライン版に論文が公開された(掲載は10月27日号)。


Harmony Outcomesは米食品医薬品局(FDA)が新規糖尿病治療薬に求める、心血管安全性の評価を目的とした大規模プラセボ対照ランダム化比較試験(CVOT試験)。
北米、南米、欧州、アフリカ、アジアの28カ国610施設で行われた。
冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患のいずれかの既往がある2型糖尿病患者を対象とした。


患者を1対1の比率で、 albiglutide群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。プラセボは albiglutideと同量を、同一器具で投与した。
治験担当医師も患者も、割り付けについて盲検化された。
albiglutideは標準治療に追加して30mgを週1回皮下注射した(治験担当医師の判断で50mgへの増量を許容した)。


有効性の主要評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合とし、intention-to-treat解析とした。
副次評価項目は、主要評価項目の各構成要素などとした。ハザード比の95%信頼区間(95%CI)の上限が1.30未満となり、albiglutideのプラセボに対する非劣性が確認された場合は、優越性を検定することを事前に定めた。


2015年7月1日~2016年11月24日に9463例を、albiglutide群(4731例)またはプラセボ群(4732例)に割り付けた(intention-to-treat集団)。


平均年齢は64.1歳、31%が女性だった。
糖尿病罹病期間の平均値は14.1年で、HbA1cは8.7±1.5%(標準偏差)だった。
心血管疾患の既往は冠動脈疾患が6678例(71%)、末梢動脈疾患が2354例(25%)、脳血管疾患が2342例(25%)だった。


中央値で1.6年の追跡期間中、albiglutide群で4731例中1140例(24%)、プラセボ群で4732例中1297例(27%)が、被験薬を中止した。


主要評価項目は、albiglutide群で338例(7%)、プラセボ群で428例(9%)に発生した。
100人・年当たりの発生率は、albiglutide群が4.57件、プラセボ群が5.87件だった。albiglutideはプラセボに対し、心血管安全性に関して非劣性であり、有効性に関して優越性を認めた。


主要評価項目の各構成要素のHRは、心筋梗塞0.75、心血管死亡0.93、脳卒中0.86であり、心筋梗塞のみが有意だった。


albiglutide群では、HbA1c、および体重において有意な減少を認めた。

注射部位反応はalbiglutide群に多かったが、過敏症を疑う反応は両群とも同程度だった。


重度低血糖症はalbiglutide群の方が少なかった。
膵炎(albiglutide群10例、プラセボ群7例)や膵癌(albiglutide群6例、プラセボ群5例)に群間差はなかった。


リラグルチドを用いたLEADER試験とは異なり、心血管死亡では有意なリスク減少は認められなかった。
著者らはこれについて、LEADERは追跡期間が3.8年(中央値)と長かったことから、albiglutideでも長期間追跡すれば心血管死亡への効果が見られた可能性があると述べている。


論文:

Hernandez AF, et al. Albiglutide and cardiovascular outcomes in patients with type 2 diabetes and cardiovascular disease (Harmony Outcomes): a double-blind, randomised placebo-controlled trial. 
Lancet. 2018;392:1519-29.

<関連サイト>

LEADER

http://diabetes.ebm-library.jp/trial/detail/51586.html
河盛隆造先生のコメントです)

2008年にFDAは「新規糖尿病治療薬の心血管系疾患発症リスク評価に関する新基準」を発表し,新規2型糖尿病治療薬の承認申請をする全ての製薬企業に,心血管系疾患発症リスクの評価を求めた。
それに沿って,DPP-4阻害薬,GLP-1受容体作動薬,SGLT2阻害薬による心血管イベントへの影響について新たなエビデンスが得られてきた。
これらのデータを理解し解釈するうえで注意すべき点は,こうした目的の臨床試験では主要評価項目である心血管イベントが十分多くなければ評価・解析できないことから,高リスク患者を対象にしていることである。
事実,結果的に両群とも心血管イベント数は高値であった。
本研究では,開始12~18ヵ月後から,死亡,心筋梗塞,脳卒中のいずれもがプラセボ群に比し,顕著に抑制されたことから,GLP-1受容体作動薬の抗動脈硬化作用が発揮されたのではないか,と推定されよう。


 

<きょうの一曲>

Glen Campbell - Gentle on My Mind (terrific guitar break)

https://www.youtube.com/watch?v=ETkzK9pXMio


From 2014: Glen Campbell's last song will make you cry

https://www.youtube.com/watch?v=7T5tSymfvys



<きょうの一曲>



img022 のコピー 2

ジョゼップ・ベルエゾ 「室内」 


 

一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   


他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
  

ACE阻害薬の使用で肺がんリスクが上昇

ACE阻害薬の使用で肺がんリスクが上昇 約100万例の地域住民ベース大規模コホート研究

https://medical-tribune.co.jp/news/2018/1106516925/

カナダの研究グループは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬およびアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の使用と肺がんリスクの上昇との関連を検討するため、約100万例に及ぶ地域住民ベースのコホート研究を実施。
その結果、ACE阻害薬の使用は肺がんリスクの上昇と関連し、特に累積投与期間が5年を超える場合にリスクが高まるとBMJ(2018;363:k4209)で報告した。


英国の地域住民約100万例を組み入れ

ACE阻害薬は、短期使用は比較的安全であることが示されているが、長期使用はがんのリスク上昇と関連する可能性があることが懸念されている。

 
ACE阻害薬を使用すると、肺内にブラジキニンやサブスタンスPが蓄積する。
これらの化学物質は肺がん組織で認められ、ブラジキニンは肺がんの増殖を直接刺激し、サブスタンスPは腫瘍の増殖や血管新生と関連することが基礎研究などで示されている。

 
しかし、これまでACE阻害薬と肺がんの関連を検討した観察研究はほとんどなく、一貫した結果は得られていない。

 
そこでこの研究グループは、大規模なコホート研究でACE阻害薬とARBを比較し、肺がんリスクの上昇との関連を検討した。

 
英国の総合診療医データベースClinical Practice Research Datalink(CPRD)を用いて、1988年1月1日~2015年12月31日に新たに降圧薬治療が開始された18歳以上の全患者を特定。
降圧薬が初めて処方された患者を確実に組み入れるため、CPRDで既往歴のデータが1年以上得られる患者に限定した。

 
次に、これらの患者から1995年1月1日~2015年12月31日に新たに降圧薬治療が開始された全患者を特定し、今回のコホートとした。1995年は英国でACE阻害薬とARBの両薬が使用可能となった年である。
過去にがんの診断を受けた患者、がんの治療を受けた患者は除外し、2016年12月31日まで追跡した。

私的コメント:
カナダの研究グループ が英国のデータベースを用いて研究すつというのもいささかユニークです。
もともと英国と関連のあった方々なのでしょうか。
例えば、日本のデータベースを外国の研究者が解析するといった場合、どこかに許可を申請するものなのでしょうか。 

 
コホートの組み入れ基準を満たした患者は99万2,061例。平均6.4年の追跡期間中に投与された降圧薬はACE阻害薬が33万5,135例、ARBが2万9,008例、ACE阻害薬とARBの両方が10万1,637例だった。


肺がんリスクが14%上昇、投与期間が長いほど高値に

延べ追跡期間635万584人・年の追跡で7,952例が新たに肺がんと診断された。
粗罹患率は1,000人・年当たり1.3(95%CI 1.2~1.3)。

 
1,000人・年当たりの粗罹患率はACE阻害薬で1.6、ARBで1.2。
結果に影響する因子(年齢、性、BMI、喫煙状態、アルコール関連疾患、登録前の肺疾患の既往など)を調整した結果、ARBと比べてACE阻害薬では肺がんリスクが14%上昇することが示された(ハザード比1.14、95%CI 1.01~1.29)。


私的コメント: 
「ARBと比べてACE阻害薬では肺がんリスクが14%上昇する」ことは容易に想像できることです。
ARBもACE阻害薬も処方されていない場合とARBが処方された場合には、果たして(肺がんリスクに)差があるのでしょうか。


調整ハザード比は、ACE阻害薬の累積投与期間が5年以下で1.10(95%CI 0.96~1.25)だったが、5.1~10年では1.22(同1.06~1.40)、10年を超えると1.31(同1.08~1.59)に上昇。ACE阻害薬投与による肺がんリスクの上昇は、累積投与期間が5年を超える場合に顕著となった。
同様の傾向は、ACE阻害薬の初回投与後の期間でも認められた。

 
研究代表は「今回観察された肺がんリスクは大きくないものの、ACE阻害薬は世界で最も広く処方されている薬剤クラスの1つであることから、そのリスクを有する患者の絶対数が大きくなる可能性がある」と考察。
「今後の研究では長期の追跡でACE阻害薬が肺がんの罹患に及ぼす影響を検討し、長期投与患者など他のサブグループでも検討する必要がある」とした。

 
今回の報告についてデンマークのコメンテーターは「肺がんの長期のリスク増大に関する懸念は、ACE阻害薬の使用で得られる寿命の利益とのバランスで考える必要がある。ACE阻害薬の長期の安全性に関する科学的エビデンスを増やすため、長期の追跡を行う研究が求められる」とコメントしている。

私的コメント: 
ACE阻害薬はともかくとしてARBの発がん性については以前に文献でみた覚えがあります。
発がん性という観点から考えると経口糖尿病薬もいささか心配です。
 

<きょうの一曲>


ドビュッシー チェロ・ソナタ ニ短調 トルトゥリエ Debussy:Cello Sonata D-Moll

 




一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   


他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
  

HbA1cの”下限値"を考える

HbA1cの”下限値"を考える

https://medical-tribune.co.jp/rensai/2018/1105516886/

今年(2018年)3月、米国内科学会(ACP)が「薬物療法中の2型糖尿病患者のHbA1c管理目標を7%以上8%未満とする」声明を発表した。
日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同指針では、高齢者には健康状態や使用薬剤などに応じて6.5~7.5%の下限値を設定しているが、2型糖尿病患者全般について7%の下限値を設けたACPの声明は極めて異例だ。

以下は国立国際医療研究センター糖尿病研究センター長・植木浩二郎先生の解説。

 
大多数の患者ではHbA1c 7%未満にするメリットが大きい

今回のACPの声明(Ann Intern Med 2018; 168: 569-576)は4項目から成る。
特に注目されるのは声明2と声明3で、声明2では妊婦以外の薬物療法中の成人2型糖尿病患者について、HbA1cの管理目標値を7%以上8%未満とすべきだと主張。
声明3では、HbA1c 6.5%未満の2型糖尿病患者では、薬物療法の減量を検討することを推奨している。

 
植木氏は、この声明には3つの問題があると指摘する。
第1の問題として挙げるのは、「HbA1c 7%以上8%未満」という一律の目標設定は、糖尿病治療で近年強調されている「個別化」に反し、今回の声明1とも矛盾することだ。

私的コメント;
声明1がどのようなものなのかという記述がありません。 

 
第2の問題は、HbA1c 7%という下限値の設定だ。
厳格な血糖管理を進める上で低血糖対策は確かに重要だが、下限値は個々の患者の脆弱性に応じて、重症低血糖を回避できるレベルに柔軟に設定すべきである。

 
私的コメント;
糖尿専門医は低血糖をしばしば経験しているためか、重症低血糖以外は軽視する傾向がないでしょうか。
われわれ糖尿病専門医でない立場にあっては「厳格な血糖管理を進める上で低血糖対策は確かに重要」ではなく「厳格な血糖管理を進める上で低血糖対策は最も重要」なのです。
低血糖を起こさせる頻度は糖尿病専門医が一番多いのが現状です。
糖尿病専門医も、早く意識改革をしてわれわれのお手本となる治療をしていただきたいものです。
厳格なコントロールが、心血管イベントを抑制するというエビデンスより、むしろ否定的な結果が集積されつつある現在、コメンテーターもエビデンスを例示すべきです。
熊本宣言は何だったんでしょうか。
糖尿病専門医だけでなく、循環器専門医など他の医師も結構勉強しているんです。


HbA1cを7%未満にコントロールすることの意義は、少なくとも細小血管合併症の予防の面からは確立されている。
大血管合併症の予防については、細小血管合併症ほど有効性を示すエビデンスは豊富でなく、一部の臨床試験ではHbA1cを7%未満にした厳格血糖管理群で死亡リスクの上昇が認められているのも事実だ。
重症低血糖が多く発生し、不整脈などを介して死亡リスクが高まったと考えられている。

 
ただし、大血管合併症の予防を一次評価項目とした糖尿病の臨床試験の大多数は、心血管疾患(CVD)の既往を有する患者を対象とした再発予防試験である。
同氏は「CVDの既往を有する患者は、重症低血糖が発生したときの死亡リスクが高いと考えられ、このような患者では、HbA1cを7%未満にすることで重症低血糖やそれに起因する死亡のリスクが細小血管合併症予防のメリットを上回る可能性がある」としつつも、「日本人の糖尿病患者でCVDの既往を有するのは1割程度にすぎず、大多数の患者では7%未満にすることのメリットの方が大きい。網膜症や腎症はQOLを著しく低下させることを忘れてはいけない」と述べる。

私的コメント;
糖尿病専門医は大血管合併症はどこまできちんと評価しているのでしょうか。
心血管疾患(CVD)の既往は、顕在化した狭心症や心筋梗塞だけではありません。
細小血管合併症と大血管合併症の話は、原発問題における経済性と安全性のように論点のすり替えに思えてしまいます。

 

さらに第3の問題点として同氏は、今回の声明の根拠になっている臨床試験は主に、インクレチン関連薬やSGLT2阻害薬が登場する前のものだと指摘する。
これら新しい薬剤を用いれば、低血糖を起こさずHbA1c 7%未満を達成することは以前より容易で、HbA1c 6.5%未満でも必ずしも薬物療法を減量する必要はない。

私的コメント;
これ(HbA1c 6.5%未満でも必ずしも薬物療法を減量する必要はない)も、一定の主観が入っています。
データを提示すべきです。
インクレチン関連薬やSGLT2阻害薬の、それぞれ単独や2剤の併用のみというケースはそれほど多くありません。
インクレチン関連薬とSU剤の併用を行っている諸先生も多い中で、糖尿病専門医が安全神話を安易に唱えることには抵抗があります。
専門医は、一般医をミスリードしないように細心の注意を払うべきではないでしょうか。 

 

薬剤を変更して、より厳格な血糖管理を目指すという選択肢も

高齢者では特に重症低血糖に留意すべきだといわれる。
加齢によって血糖低下に対する生体反応の閾値が低下すると無自覚性低血糖を起こしやすく、昏睡を伴うような低血糖を突然発症するリスクが高まる。
このような背景から、日本糖尿病学会と日本老年医学会は2016年に合同で、「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」を発表している。
患者の健康状態〔認知機能、日常生活動作(ADL)〕、年齢、使用薬剤に基づきHbA1c 7.0%未満~8.5%未満の目標値をきめ細かく設定。インスリン、SU薬など重症低血糖が危惧される薬剤を使用している患者には6.5%未満~7.5%未満の下限値を設けている。

 
植木氏は下限値の趣旨について「あくまで『インスリン、SU薬などを使用する場合は"』ということ。低血糖リスクの低い薬剤に変更して、より厳格な血糖管理を目指すという選択肢もある」と説明する。

 
なお、ACPは声明4で生命予後が10年未満と思われる高齢患者では、HbA1c管理目標の設定自体を避けることを提唱している。
これについて同氏は、ここで想定されているのは日本の両学会指針ではカテゴリーⅢの要介護レベルの患者に相当するとした上で、「高血糖性昏睡など急性合併症の問題が考慮されていない」と指摘。
急性合併症を回避するために、このカテゴリーの患者でも8.5%未満は目指すべきだと主張する。

私的コメント;
 「高血糖性昏睡など急性合併症の問題が考慮されていない」という指摘はアグリーです。
しかし、「生命予後が10年未満と思われる高齢患者」が「カテゴリーⅢの要介護レベルの患者に相当」というのはいかがなものでしょうか。
 90歳で元気な高齢者も「生命予後が10年未満」ですが、「カテゴリーⅢの要介護レベル」には該当しません。


腎機能が低下した高齢者へのインスリン、SU薬の使用は要注意

植木氏の考えを裏付けるのが、日本糖尿病学会の「糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査委員会報告」(糖尿病 2017; 60: 826-842)である。
この調査は同学会認定教育施設に呼びかけ、2014~15年の1年間に重症低血糖症例(自己のみでは対処できない低血糖症状+血糖値60mg/dL未満)を登録したものだ。


私的コメント;
最初読んだ時、「自己のみでは対処できない」という自己とは医師のことと思ってしまいましたが、患者本人ということなのでしょう。
これは、死亡につながる症例です。
重症低血糖症例は日本糖尿病学会の会員にアンケートをとれば素晴らしい症例数になることが容易に想像できます。
昔、循環器の恩師が「ジギタリスで死亡例を出して初めて循環器の専門医といえる」と豪語(?)してみえたのを思い出しました。


2型糖尿病480例については年齢77歳、HbA1c 6.8%、推算糸球体濾過量(eGFR)50.6mL/分/1.73m
2(いずれも中央値)というプロファイルで、使用薬剤はインスリンが60.8%(SU薬併用例を含む)、SU薬が33.1%(インスリン使用例を含まない)と両者で90%以上を占めた)。
特にSU薬使用群は年齢81歳、HbA1c 6.4%、eGFR 42.3mL/分/1.73m
2であることに同氏は注目し、「このレベルの腎機能が低下した高齢者に対しては血糖管理目標を緩めるか、薬剤を変更することが必要」と指摘する。


安全な厳格血糖管理を実証したJ-DOIT3

重症低血糖を起こすことなく厳格な血糖管理が行えることを示したのが、J-DOIT3試験である(Lancet Diabetes Endocrinol 2017; 5: 951-964)。

私的コメント;
J-DOIT3試験は途中、試験打ち切りの危機がありました。


日本人2型糖尿病患者2,542例に8.5年の長期介入を行い、血糖・血圧・脂質に対する強化療法が血管イベントの抑制に有効かどうかを検証したもの。
強化療法群では平均HbA1cが開始時の8.0%から6.8%まで低下、58%の脳卒中発症抑制効果などを示した。
しかも、低血糖については従来療法群に比べ強化療法群で2倍近く高率だったものの(283例vs. 521例)、第三者の介助や入院を要する重症低血糖には差がなかった(4例 vs. 7例)。


私的コメント;
「58%の脳卒中発症抑制効果」そんなに脳卒中発症抑制効果があればもう少しJ-DOIT3試験を評価したはずですが、謙虚に試験結果を読み直してみます。


発生率は強化療法群においても年0.1%未満と極めて低率である。

「HbA1c 6.2%を目標とした強化療法群で6.8%にとどまったのは、参加医師が目標達成より重症低血糖の回避を優先したから。SU薬は開始時より減量され、インスリンの使用率は想定より低かった」と植木氏は説明する。
同試験が始まった2006年当時は、インクレチン関連薬もSGLT2阻害薬も未導入で、今なら重症低血糖を増やすことなくより低いHbA1cを達成した可能性は高い。実際、同氏が現在診療している患者の中には、5%台後半にコントロールしている患者も少なくない。

 
しかし、一般臨床医が重症低血糖のリスクを予知することは容易でない。
血糖値以外に低血糖のマーカーは存在しないからだ。
保険診療の中で血糖自己測定(SMBG)や持続グルコースモニター(CGM)を適用できる患者は限られている。
「寝汗など夜間低血糖を疑う症状があったり、HbA1c値に比べ血糖値が不自然に高いような患者はどこかで低血糖を起こしているかもしれない」と同氏は述べ、SMBGやCGMで血糖の日内変動を確認できない場合は、専門施設に紹介してもよいだろうとしている。



<きょうの一曲>

バッハ リュート組曲BWV997 プレリュード




一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   


他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
 

リポ蛋白(a)値とCVDリスクの関連

リポ蛋白(a)値とCVDリスクの関連/Lancet

http://www.carenet.com/news/journal/carenet/46877

スタチンによる治療を受けた患者の個々のデータを用いたメタ解析の結果、ベースライン時およびスタチン治療中のリポ蛋白(a)高値は、独立して心血管疾患(CVD)リスクとほぼ線形相関を示すことが明らかにされた。
英国・ケンブリッジ大学の研究チームが報告した。
リポ蛋白(a)値の上昇は、一般集団を対象とした研究においてCVDの遺伝的リスク因子であることが示されているが、
CVD患者またはスタチン治療中の患者における心血管イベントリスクへの寄与度は不明であった
著者は、「リポ蛋白(a)値低下仮説を検証するCVDアウトカム研究を実施する理論的根拠が得られた」とまとめている。
Lancet誌2018年10月4日号掲載の報告。


約2万9,000例でリポ蛋白(a)値と心血管イベントの関連を検証

研究グループは、スタチン治療中またはCVD既往歴を有する患者のリポ蛋白(a)値と心血管イベントリスクの関連性を検証する目的で、スタチンに関する無作為化プラセボ対照比較試験7件(AFCAPS、CARDS、4D、JUPITER、LIPID、MIRACL、4S)から個々の患者のデータを得て統合し、心血管イベント(致死的/非致死的冠動脈疾患、脳卒中、血行再建術)のハザード比(HR)を評価した。
HRは、あらかじめ定義されたリポ蛋白(a)群(15~<30mg/dL、30~<50mg/dL、≧50mg/dL vs.<15mg/dL)別に各試験内で算出したのち、多変量ランダム効果メタ解析を用いて統合推定値を算出した。


解析には、複数回のリポ蛋白(a)測定値を有する2万9,069例(平均[±SD]年齢:62±8歳、女性:8,064例[28%]、イベント数:5,751件/9万5,576人年)が組み込まれた。


ベースライン時30mg/dL以上、スタチン治療中50mg/dL以上でCVDリスク増加

スタチン治療の開始は、リポ蛋白(a)を有意に変化させることなくLDLコレステロールを低下させた。


ベースライン時およびスタチン治療中のリポ蛋白(a)値とCVDリスクはほぼ線形相関にあり、リポ蛋白(a)値がベースライン時30mg/dL以上ならびにスタチン治療中50mg/dL以上でリスク増加が確認された。
年齢と性別を補正したHR(vs.<15mg/dL)は、ベースライン時のリポ蛋白(a)値が15~<30mg/dLで1.04(有意差なし)、30~<50mg/dLで1.11(弱い有意差)、50mg/dL以上で1.31(有意)、スタチン治療中でそれぞれ、0.94(有意差なし)、1.06(有意差なし)、1.43(有意)であった。
CVD・糖尿病の既往歴、喫煙歴、収縮期血圧、LDLコレステロールおよびHDLコレステロールで補正した後のHRも、ほぼ類似していた。


リポ蛋白(a)値とCVDリスクとの関連は、他の患者背景や試験の特性などの影響を修正しない場合、プラセボ投与中よりスタチン治療中がより強力であり(交互作用のp=0.010)、年齢が若い患者でより明確であった(交互作用のp=0.008)。


英文抄録

Baseline and on-statin treatment lipoprotein(a) levels for prediction of cardiovascular events: individual patient-data meta-analysis of statin outcome trials.

Lancet 2018 10 13;392(10155);1311-1320.




以下は大阪警察病院循環器内科 特別顧問 平山 篤志先生の解説です。


古くて新しい残余リスクとしてのLP(a)

これまでリポ蛋白(a)(LP(a))については、動脈硬化疾患と関連するということが知られていて、独立した冠危険因子とされていた。
しかし、測定される対象が限られていることと、多くの試験が少数例であったこと、またLP(a)を低下させる薬剤がなかったこともあって、LDL-コレステロール(LDL-C)の陰に隠れた存在であった。

私的コメント;
「LP(a)を低下させる薬剤がなかった」と書かれていますが、最後には「LP(a)を低下させる効果のあるEvolocmab 」と記述されています。
昔、ニセリトロール(商品名ペリシット)にLP(a)低下させる作用があると言われたことを記憶しています。 


医薬品インタビューフォーム - 三和化学研究所 ニセリト ロール
動脈硬化の独立したリスクファクターとして注目されるようになったリポ蛋白 Lp(a)に 対する効果を、食事療法のみで血清脂質が安定したコントロール状態にあり、ニセリト ロール投与開始 3 ヵ月前の観察期に、血清 Lp(a)値が 15mg/dL 以上の患者 21 例を対象と し、ニセリトロールを 1 ヵ月間 750 mg/日または 1500mg/日、それ以降 2 ヵ月間 1500mg/ 日を投与し検討した結果、Lp(a)値は投与開始時に比べ、1 ヵ月後、2 ヵ月後、3 ヵ月後 に有意に低下した(各々-17.3%、-20.8%、-25.2%)。


参考

高LDL血症患者におけるLp(a)の臨床的解析

 PCSK9阻害薬に、Lp(a)の低下が見られたとの報告がある。
 

・PCSK9 inhibitors and cardiovascular disease: heralding a new therapeutic era.

Curr Opin Lipidol. 2015 Dec;26(6):511-20

PCSK9 inhibition also reduces (by 25-30%) plasma levels of lipoprotein(a), a causal factor in atherosclerotic vascular disease, suggestive of partial catabolism of lipoprotein(a) by LDL receptors. 


・ニコチン酸誘導体はLp(a)低下作用を有する唯一の高脂血症薬である。

・パーム油などの摂取がLp(a)を軽度ながら低下させることが知られている。

 
 


研究ではこれまで行われたプラセボ対照のスタチン試験においてLP(a)を複数回測定している対象で、心血管イベントとの関連が検討された。
LP(a)は遺伝的に決定されているため環境因子に左右されないとされていたように、スタチンの投与でLDL-Cは39%低下したが、LP(a)は変化しなかった。
プラセボ群でLP(a)の上昇とともにイベントの上昇が直線的に認められた。
これはスタチン治療群でも同様で、さらにプラセボ群より強い関連が認められた。


これらのことから、LP(a)を治療のターゲットとした臨床試験の必要性が述べられている。
これまで、HDL-Cの高値が心血管イベントの低下と関連することからHDL-Cを上昇させる薬剤の試験が行われたが、いずれも失敗に終わっている。
観察研究で独立因子とされたものでも原因であることを示すには、LP(a)を低下させてイベントが低下することを示さねばならない。
ただ、欧州動脈硬化学会でFOURIERのサブ解析が発表され、LP(a)を低下させる効果のあるEvolocmabで、LP(a)値の高値群での効果が顕著にみられたことから考えると、LP(a)が治療のターゲットであることは間違いないであろう。
スタチンでLDL-Cを低下させてもLP(a)高値の残余リスクを有する新たな治療の展開が期待される。



<きょうの一曲>

Charles Aznavour & Nolwenn Leroy-mourrir d aimer [HD]


<きょうの一枚の絵>


img016 のコピー 2

ウージェーヌ・バブレーヌ 「アンヴァリッド通り」 8P



一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   


他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  
 

抗凝固療法の目安は母集団によって変動する

抗凝固療法の目安は母集団によって変動する QALYを最大化するCHA2DS2-VAScスコアはコホートにより異なる

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/etc/201811/558477.html

心房細動(AF)患者に経口抗凝固薬治療を開始する目安として、多くのガイドラインがCHA2DS2-VAScスコアを推奨している。

米国の研究グループは、抗凝固薬治療のメリットを検証した有名な4つのコホート研究の中でも、抗凝固薬を使用しなかったAF患者の1年当たりの脳梗塞発症率が異なっていたことに着目し、CHA2DS2-VAScスコアがいくつの時に抗凝固薬治療を開始するのがQALYを最大化するかを推定し、最も大きなメリットが得られるスコアはコホート間で大きく異なっていたと報告した。
(Ann Intern Med誌2018年10月16日号)


抗凝固薬を患者に処方するかどうかの判断で、多くのガイドラインがCHA2DS2-VASc(うっ血性心不全、高血圧、年齢、糖尿病、脳卒中、血管疾患に基づく脳梗塞リスクスコア)などの利用を推奨し、設定された閾値を上回れば、抗凝固薬の利益は出血リスクより高くなるとしている。
前提にあるのは、CHA2DS2-VAScスコアは、母集団に関わらず抗凝固薬を使用しない患者の脳梗塞リスクを正確に反映し、抗凝固薬は閾値を超えた患者の脳梗塞発症リスクを約3分の2まで引き下げるという仮定だ。


しかし、最近の研究で、抗凝固薬を使用しない患者の脳梗塞発症リスクは母集団によって異なることが報告されている。
これでは、抗凝固薬を使用するメリットを正確に定量化することは難しい。
そこで著者らは、AF患者の脳卒中発症率のばらつきが、ワルファリンまたは非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOACs)の純利益に及ぼす影響を明らかにするために、マルコフモデルを用いた決定分析を行った。


対象は、ATRIA-CVRN(AnTicoagulation and Risk Factors In Atrial Fibrillation-Cardiovascular Research Network)研究に参加していた、米国在住の非弁膜症性AFの成人患者3万3434人のデータだ。比較の対象は、STORTIF(Stroke Prevention using ORal Thrombin Inhibitor in atrial Fibrillation)研究コホート、Swedish Atrial Fibrillation研究コホート、Danish National Patient Registry研究コホートを選んだ。


これらコホートの未治療患者の脳梗塞の年間発症率は、CHA2DS2-VAScスコアが0の集団では、ATRIAコホートが0.04%、STORTIFコホートが0%、Swedishコホートが0.2%、Danishコホートは0.78%で、スコア1ではそれぞれ、0.55%、1.3%、0.6%、2.01%、スコアが2であれば、0.83%、2.2%、2.2%、3.71%と大きくばらついていた。


脳梗塞発症率以外のパラメータは全て一定とし、成人AF患者に抗凝固薬を投与した場合に獲得される質調整生存年(QALYs)を推定し、各コホート研究が報告していた脳梗塞発症率を当てはめると、抗凝固療法のメリットがどのくらい変動するかを推定した。


ATRIAの参加者3万3434人のうち、45%が75歳以上で、45%が女性だった。81%に相当する2万7179人で、診断時のCHA2DS2-VAScスコアは2以上だった。


ワルファリンがこれら集団にもたらす利益は、ATRIA が報告している脳卒中発症率を用いると、最少になり、SPORTIFの数字を用いると1万3230 Qalys(±1.9%)、Swedishの報告を用いると1万6710 QALYs(±1.2%)、Danishの発症率を用いた場合が最大(2万4110 QALYs、±1.9%)で、ATRIAのほぼ4倍だった。


1人あたりの利益の中央値を推定すると、それぞれ0.10 QALYs、0.27 QALYs、0.32 QALYs、0.59 QALYsになった。


抗凝固薬を投与するかどうかの閾値として、QALYに換算した集団の利益が最大になるCHA2DS2-VAScスコアを推定したところ、ATRIAが報告している脳卒中発症率を用いた場合にはスコア3以上で、Swedishの情報を用いると2以上、STORTIFでは1以上、Danishは0以上(全員に投与すると集団のメリットが最大)となった。


ワルファリンの代わりにNOACsを用いると、頭蓋内出血リスクは52%低下すると仮定してQALYを算出した。
この場合の、集団の利益が最大になるCHA2DS2-VAScスコアの閾値は、それぞれ2以上、1以上、1以上、0以上となり、やはりばらつきは大きかった。


これらの結果から著者らは、抗凝固薬を使用していないAF患者の脳卒中発症率は、既に報告されたコホート研究間で異なっており、抗凝固薬がもたらすメリットも母集団によって大きく異なると推定されたため、CHA2DS2-VAScスコアの閾値は不確定であることを認識する必要があると結論している。


英文抄録

Effect of Variation in Published Stroke Rates on the Net Clinical Benefit of Anticoagulation for Atrial Fibrillation

http://annals.org/aim/article-abstract/2703439/effect-variation-published-stroke-rates-net-clinical-benefit-anticoagulation-atrial?doi=10.7326%2fM17-2762

 

<きょうの一枚の絵> 


img016 (1) のコピー

ポール・アイズピリ 「黄色いバックの花」 6F



一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   


他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  

GLOBAL LEADERS試験 チカグレロル使った1カ月DAPTの優越性示せず

チカグレロル使った1カ月DAPTの優越性示せず GLOBAL LEADERS試験 

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)で薬剤溶出ステント(DES)を留置した患者の抗血小板薬併用療法(DAPT)について、1カ月間のshort DAPT(チカグレロル+アスピリン)と標準的な12カ月間のlong DAPTを2年間の追跡で比較したが、short DAPTの優越性を示すことはできなかった。
GLOBAL LEADERS試験の結果で、Lancet誌2018.9.15号に掲載された。


チカグレロルは直接的・可逆的なP2Y12受容体拮抗作用を持つ抗血小板薬で、作用発現が早い、患者間での効果のバラツキが少ない、同系薬であるクロピドグレルよりも作用が強いといった特徴を持つ。
DESが第二世代となり遠隔期の血栓症リスクが低くなったことに加え、アスピリンとの併用でチカグレロルの効果減弱の報告があることから、DAPT期間の短期化が可能であるか検証された。


GLOBAL LEADERSは非盲検のランダム化比較試験として、18カ国130施設で行われた。
対象は、安定冠動脈疾患または急性冠症候群(ACS)でDES留置が必要と判断された患者。
DESは生体吸収性ポリマー使用バイオリムスA9溶出ステントを用いた。
PCI実施前にshort DAPT群またはlong DAPT群に1対1の割合でランダムに割り付けた。PCIを行う病変数、部位、病変長、留置ステント数に制限は設けなかった。


short DAPT群ではアスピリン(75~100mg1日1回)+チカグレロル(90mg1日2回)を1カ月間投与し、その後はチカグレロルを23カ月間単独投与した。
long DAPT群では、安定冠動脈疾患の場合はアスピリン+クロピドグレル(75mg1日1回)、ACSの場合はアスピリン+チカグレロルをそれぞれ12カ月間投与し、その後はアスピリンを12カ月間単独投与した。


主要評価項目は、PCIから2年以内の総死亡+非致死的な新規のQ波心筋梗塞とし、intention-to-treat解析を行った。
Q波心筋梗塞は、盲検化された中央検査室で判定された。重要な副次的安全性評価項目は、BARC基準でグレード3または5の出血とした。


2013年7月1日~2015年11月9日にランダム割り付けされた1万5991例中、同意を撤回した23例を除く1万5968例を解析対象とした。
平均年齢は64.5歳、女性比率23.3%、7487例(46.8%)がACSだった。
short DAPT群7980例中7943例(99.5%)、long DAPT群7988例中7940例(99.4%)に、実際にPCIが行われた。


主要評価項目は、short DAPT群304例(3.81%)、Long DAPT群349例(4.37%)に発生、有意な群間差は見られなかった(Rate Ratio[RR]:0.87、95%信頼区間[95%CI]:0.75-1.01、P=0.073)。


総死亡はshort DAPT群224例(2.81%)、long DAPT群253例(3.17%)、新規Q波心筋梗塞はshort DAPT群83例(1.04%)、long DAPT群103例(1.29%)に発生した。
Rate Ratioは総死亡が0.88、新規Q波心筋梗塞が0.80であり、主要評価項目の各構成要素にも有意な群間差はなかった。


BARC基準でグレード3または5の出血は、short DAPT群163例(2.04%)、対照群169例(2.12%)に発生し、有意な群間差はなかった)。


PCIから2年後の時点で各群に割り付けられた治療を順守していた人は、long DAPT群では7498例中6981例(93.1%)だったが、short DAPT群では7488例中5810例(77.6%)にすぎず、順守率が低かった。
その理由を調べたところ、PCIから30日後、1年後、2年後のいずれの時点においても、呼吸困難がlong DAPT群で有意に多かった。


著者らは、今回の結果は現時点で診療の変更を支持するものではないと結論し、DESを留置する患者を対象に、期間を短縮したDAPTの是非を検討する試験が複数進行中であると紹介している。


この論文に関する論説では、「short DAPT群の投与レジメンはlong DAPT群に比べて中止率や呼吸困難の頻度が高く費用がかかる上、チカグレロルは1日2回投与する必要がある。これらを考慮すれば、アスピリンは今後も優先されるだろう」と述べられている。


論文:

Vranckx P, et al. Ticagrelor plus aspirin for 1 month, followed by ticagrelor monotherapy for 23 months vs aspirin plus clopidogrel or ticagrelor for 12 months, followed by aspirin monotherapy for 12 months after implantation of a drug-eluting stent: a multicentre, open-label, randomised superiority trial. Lancet. 2018;392:940-9.


Comment:

Bhatt DL, et al. Aspirin - still the GLOBAL LEADER in antiplatelet therapy. Lancet. 2018;392:896-7.




<きょうの一曲>

Dexter Gordon : Body And Soul




<きょうの一枚の絵>
sazanami2

福田平八郎 《漣》(さざなみ)1932年(昭和7) 絹本白金地着色

福田平八郎は若い頃から水辺の光景を画題にしていますが、40歳で描いた《漣》は水鳥や草木などは描かず、水面に揺れる波だけを絵にしたことで、それまでの日本画の常識を覆す新しさを示しました。

釣りをしていた画家は、湖の表面で肌にも感ぜぬ微風が美しいさざなみを作っているのを見て絵の着想を得ます。

発表時の第13回帝展では賛否両論ありましたが、近代日本画が新境地を開いた先駆的な試みとして高く評価されています。

プラチナ箔の上に群青の顔料が置かれた画面の、プラチナ箔の下に金箔が重ねられていたことが、近年の修復で判明しています。
 


一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   


他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  

治療前のLDL-C値とLDL-C低下治療の効果

治療前のLDL-コレステロール値でLDL-コレステロール低下治療の効果が変わる?

http://www.carenet.com/news/clear/journal/45962


大阪警察病院循環器内科 特別顧問 平山 篤志 先生の

強化脂質低下療法はベース値が高いほど有益/JAMA

という論文についての解説です。

2010年のCTTによるメタ解析(26試験、17万人)でMore intensiveな治療がLess intensiveな治療よりMACE(全死亡、心血管死、脳梗塞、心筋梗塞、不安定狭心症、および血行再建施行)を減少させたことが報告された。
ただ、これらはすべてスタチンを用いた治療でLDL-コレステロール値をターゲットとしたものではないこと、MACEの減少も治療前のLDL-コレステロール値に依存しなかったことから、2013年のACC/AHAのガイドラインに“Fire and Forget”として動脈硬化性血管疾患(ASCVD)にはLDL-コレステロールの値にかかわらず、ストロングスタチン使用が勧められる結果になった。


しかし、CTT解析後にスタチン以外の薬剤、すなわちコレステロール吸収阻害薬であるエゼチミブを用いたIMPROVE-IT、さらにはPCSK9阻害薬を用いたFOURIER試験など、非スタチンによるLDL-コレステロール低下の結果が報告されるようになり、今回新たな34試験27万人の対象でメタ解析の結果が報告された(CTTの解析に用いられた試験がすべて採用されているわけではない)。


その結果、More intensiveな治療がLess intensiveな治療よりアウトカムを改善したことはこれまでの解析と同じであったが、全死亡、心血管死亡において治療前のLDL-コレステロール値が高いほど有意に死亡率低下効果が認められた。
心筋梗塞の発症も同様の結果であったが、脳梗塞については治療前の値の差は認められなかった。
治療前のLDL-コレステロール値について、CTTによれば値にかかわらず有効であるとされていたが、本メタ解析の結果はLDL-コレステロール値が100mg/dL以上であれば死亡率も低下するということを示している。


近年、IMPROVE-ITもFOURIER試験も心筋梗塞や脳梗塞の発症は有意に低下させるが、死亡率低下効果がないのは、治療前のLDL-コレステロール値が100mg/dLであることが要因であると推論している。


このメタ解析は、LDL-コレステロール値の心血管イベントへ関与を示唆するとともに、“Lower the Better”を示したものである点で納得のいくものである。
しかし、4Sが発表された1994年とFOURIERが発表された2017年の20年以上の間に、急性心筋梗塞の死亡率が再灌流療法により減少したこと、心筋梗塞の定義がBiomarkerの導入で死亡には至らない小梗塞まで含まれるようになったことも、LDL-コレステロール減少効果で死亡率に差が出なくなった原因かもしれない。


今後のメタ解析は、アウトカムが同一であるというだけなく、時代による治療の変遷も考慮した解析が必要である。


以下は元記事です。
 

強化脂質低下療法はベース値が高いほど有益/JAMA

米国の研究グループは、被験者約27万例を含む34件の無作為化試験のメタ解析において、LDLコレステロール(LDL-C)低下療法の強化は非強化と比べて、ベースラインのLDL-C値がより高い患者で、総死亡および心血管死のリスクを低下させることを明らかにした。
また、ベースラインのLDL-C値が100mg/dL未満では、この関連性は確認されず、著者は「LDL-C低下療法で最も大きなベネフィットが得られるのは、ベースラインのLDL-C値が高い患者である可能性が示唆された」とまとめている。
(JAMA 2018.4.17掲載)


無作為化試験34件、約27万例のデータをメタ解析

研究グループは、電子データベース(Cochrane、MEDLINE、EMBASE、TCTMD、ClinicalTrials.gov、major congress proceedings)を用い、2018年2月2日までに発表された、スタチン、エゼチミブおよびPCSK9阻害薬の無作為化試験を検索し、研究者2人がデータを抽出するとともにバイアスリスクを評価した。
試験介入群は、「強化療法」(強力な薬理学的介入)、または「非強化療法」(弱作用、プラセボまたは対照)に分類された。


主要評価項目は総死亡率および心血管死亡率とし、ランダム効果メタ回帰モデルおよびメタ解析を用い、ベースラインのLDL-C値と死亡、主要心血管イベント(MACE)などの低下との関連性を評価した。


検索により計34試験が特定され、強化療法13万6,299例、非強化療法13万3,989例、計27万288例がメタ解析に組み込まれた。


関連が確認されたのは、ベースラインLDL-C値100mg/dL以上の場合のみ

全死因死亡率は、強化療法群が非強化療法群よりも低かったが、ベースラインLDL-C値によってばらつきがみられた。


メタ回帰分析において、強化療法はベースラインLDL-C値が高いほど全死因死亡率もより低くなる関連が認められた。
同様の関連は、メタ解析では、ベースラインLDL-C値が100mg/dL以上の場合にのみ確認された。


心血管死亡率も同様に、強化療法群が非強化療法群よりも低く、ベースラインLDL-C値によってばらつきがみられた。
メタ回帰分析において、強化療法はベースラインLDL-C高値ほど心血管死亡率減少との関連が示され、同様の関連はメタ解析では、ベースラインLDL-C値100mg/dL以上の場合にのみ確認された。


メタ解析において、全死因死亡率が最も減少したのは、ベースラインLDL-C値が160mg/dL以上の患者を対象とした試験であった。
強化療法は、ベースラインLDL-C値が高いほど、心筋梗塞、血管再建術およびMACEのリスクもより減少する関連が認められた。


英文抄録

Association Between Baseline LDL-C Level and Total and Cardiovascular Mortality After LDL-C Lowering: A Systematic Review and Meta-analysis.

JAMA. 2018 04 17;319(15);1566-1579.


<自遊時間>

平山篤志先生退官記念祝賀会 2018.4.25

https://www.nu-cvs.jp/information/平山篤志先生退官記念祝賀会-2018-4-25/


平山篤志先生は日大教授を退職されていたのですね。

官職を退くことを意味する退官という言葉が使われていることにいささか抵抗があります。

また、「祝賀会」という言葉がどこでも一般的には使われるようですが、当人は抵抗がないのでしょうか。

「感謝する会」というのも変ですし、「慰労会」もやや抵抗があります。

きっと幹事も頭を捻ったのではないでしょうか。


参考

現行法上、「退官」の用語が用いられている法令および該当する公務員は下記のとおり。

日本国憲法第79条第5項(最高裁判所裁判官)および同第80条第1項(下級裁判所裁判官) 上記に基づき規定されている裁判所法第50条(裁判官の定年)


教授が大学を辞めることについては、法的には民家企業でも国家公務員でも大学でも『退職』と定められていりようです。


ただし「大学の教員も教官と通称・俗称されるため、国公立大学のみならず私立大学でも教員が退職することをしばしば退官ということがある」と書かれているブログもありました。



<きょうの一曲>

Dexter Gordon : Body And Soul



<きょうの一枚の絵>

2018年10月14日19時05分42秒 のコピー 3

中西 繁 「サン・セバスティン教会」 スケッチ




一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   


他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  

ほぼ2つに絞られた糖尿病第二選択薬

レポートの概要:薬物療法のアルゴリズムが大きく変更

山田 悟先生の解説記事です。 

2018年10月1~5日、ドイツ・ベルリンで欧州糖尿病学会(EASD)の年次学術集会が開催された。
ここにおいて米国糖尿病学会(ADA)/EASDの2型糖尿病治療法についての合同レポートが報告され、即日Diabetes Careに掲載された。


両学会の合同声明は2006年に初版が出され改訂を重ねてきた。
今回で改訂5版ということになる。


既に、2018年6月に米・オーランドで開催されたADAにおいて原案が提示されており、10月のEASDで確定されたという流れである。
予想されていたことなのであるが、薬物療法のアルゴリズムが大きく改訂された。

 
すなわち、これまでのアルゴリズムではメトホルミンが第一選択薬で、第二選択薬としては他の薬剤(SU薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、基礎インスリン)が並列に提示され、低血糖の有無、体重への影響、費用を基に患者ごとに選択することになっていた。

 
しかし、今回の改訂では(メトホルミンが第一選択薬ということに変更はないものの)、第二選択薬については、まず心血管疾患(CVD)の既往や慢性腎臓病(CKD)合併の有無で患者を選別し、CVDの既往があったり、CKDを合併したりする患者ではSGLT2阻害薬あるいはGLP-1受容体作動薬を選択するようにした。
また、体重減量が必要な患者でもSGLT2阻害薬あるいはGLP-1受容体作動薬を選択するようにしている。
それ以外の患者で切実に低血糖を避けるべき患者ではSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の他にDPP-4阻害薬とチアゾリジン薬も選択してよいとしている。

 
CVDの既往もCKDの合併も体重減少の必要性もなく、低血糖を避ける必要性が切実でない患者で、費用が最大の問題となる患者のみでSU薬とチアゾリジン薬が第二選択薬とされている。

 
つまり、ほとんどの患者でSGLT2阻害薬かGLP-1受容体作動薬が第二選択になるという、極めて大きな変更である。
わが国における糖尿病臨床にも大きな影響を与えるものと予想される。


レポートのポイント1:糖尿病の治療方針決定のサイクルを提示

薬物療法アルゴリズムの変更と並び今回の改訂で目を引くのは、糖尿病の治療方針の決定をいわゆるPDCA(plan-do-check-act)サイクルを模した循環図にしたことである。


糖尿病患者が受診したら、
①患者の重要な特性を評価し
②治療法選択に影響を与える特異要素を考慮し
③治療計画を立てるべく意思決定を共有し
④患者と治療計画で合意し
⑤治療計画を実施し
⑥治療効果をモニターし
⑦治療計画の妥当性を患者とともに評価し、計画を立て直す
―という流れである。
ここではpatients-centered careを重視すべきであることが強調されている。

 
そして、糖尿病自己管理のための教育とサポート(Diabetes self-management education and support;DSMES)の重要性を述べ、糖尿病治療の基礎であるとしている。
このDSMESの中には、食事療法、運動療法、体重減量、禁煙、心理学的支持といった生活習慣管理が含まれるとしている。
また、糖尿病の治療法として、生活習慣改善、薬物療法の他に手術療法があることも明記している。

私的コメント;
「糖尿病自己管理のための教育とサポート」も重要ですがそれにも増して 「糖尿病管理のための教育とサポート」が大切と思います。
つまり糖尿病専門医の教育です。
具体的には、糖尿病が(細小血管障害はもちろんのこと)大血管障害を将来することは反論の余地のないところですが、糖尿病のコントロールによる大血管障害予防への幻想(過大な夢) を糖尿病専門医がいだいていることです。
もう少し厳しく言えば、血糖コントロールが至上命題と考えている糖尿病専門医が何と多いことかということです。
糖尿病患者に多いと言われる悪性腫瘍の合併の可能性に対する意識不足、さらには(彼らにとっては「残余リスク」である)高血圧症や脂質異常に対する知識不足も指摘しておきたいと思います。
以上の理由もあって個人的には、糖尿病専門医が演者である講演会には最近では足が遠のいています。 


レポートのポイント2:「食事の質」と「エネルギー制限」は別な側面

今回の合同レポートでは、2型糖尿病の治療法を列挙し、その利点や欠点を記載する表が掲載されている)。
そして、治療法の大項目として、
①生活習慣
②経口薬
③注射薬
④体重減量薬
⑤代謝手術
―の5つが挙げられている。
②~④を薬物でひとくくりにすると、生活習慣、薬物、手術ということになる。

 
生活習慣で興味深かったのは、この大項目の中の治療法のクラスとして、
A.食事の質(diet quality)
B.身体活動
C.エネルギー制限
―の3つが並列にされたことである。
食事の質の項で具体的に挙げられた食事療法は、
a.地中海食
b.DASH食
c.糖質制限食
d.ベジタリアン食
e.その他
―である(①生活習慣→A.食事の質→a.地中海食―という階層性は、薬物療法で言えば、②経口薬→A.ビグアナイド薬→a.メトホルミンに当たる)。

私的コメント;
分かりやすいような分かりにくいような注釈に感じました。


A.の食事の質とC.のエネルギー制限の関係性(ビグアナイド薬とSGLT2阻害薬の関係性に相当)を彼らがどのように捉えているのか、表に解説はないが、本文中では、食事の質とエネルギー制限は食事療法の2つの基礎的な側面(dimension)であるとしている。


レポートのポイント3:SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬が第二選択薬の筆頭に

経口薬と注射薬の薬物療法の選択を1枚のアルゴリズムに図示した図がある。
まず驚くことは、糖尿病治療の最初のステップがメトホルミンと包括的生活習慣改善とされていることである。
私の感覚(受けてきた教育)では、先に生活習慣改善が来て、それで血糖管理が目標に達しない場合にメトホルミンを含めた薬物療法を開始することになっているのであるが、合同レポートでは、糖尿病治療の最初のステップにおいて、包括的生活習慣改善に先んじてメトホルミンを記載している。

 
その上で、治療目標に達しない場合の薬物として、CVDの既往があったり、CKDがあったりする患者にはSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬が推奨されている。
CVD既往のある患者に対しては、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は並記されているが、心不全やCKDのある患者にはSGLT2阻害薬を優先するように記載されている。
これらの患者でGLP-1受容体作動薬を処方するのは、推算糸球体濾過量(eGFR)から考えてSGLT2阻害薬が使えなかったり、SGLT2阻害薬の副作用で継続できなかったりする場合に限定されている。

 
また、SGLT2阻害薬にせよ、GLP-1受容体作動薬にせよ、CVDに対する有効性が証明されている薬剤を選択するように文言が付されており、注意書きにおいては、GLP-1受容体作動薬ではリラグルチド>セマグルチド>エキセナチドQWの順で、SGLT2阻害薬については、エンパグリフロジン>カナグリフロジンの順でCVDへの有効性が高いことが明記されている。

 

VDの既往がなく、CKDもない患者については、幾つかの項目で第二選択薬を考えることとされている。
まず、低血糖を避けることが切実な患者ではDPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬、チアゾリジン薬がメトホルミンに次ぐ第二選択薬として選択できる。
次に、体重増加を最小限にしたり体重減量を促したりすることが切実な患者においては、やはりSGLT2阻害薬かGLP-1受容体作動薬が選択肢である。
低血糖も体重増加も切実でない患者で費用が重要な患者においては、SU薬かチアゾリジン薬が選択肢である。
これまでの合同アルゴリズムで挙げられていた基礎インスリンは、第二選択薬からは外れたこととなる。

レポートのポイント4:注射薬の選択順も大きく変更してシンプルに
これまでの合同アルゴリズムでは注射薬の第一選択として、GLP-1受容体作動薬と基礎インスリンの2つがありえたため、注射薬を強化するためのアルゴリズムも複雑になっていた。
しかし、今回のレポートでは、注射薬の第一選択はGLP-1受容体作動薬のみとされたため、注射薬の強化の方法がかなりシンプルなものとなった。
次のような考え方である。

①GLP-1受容体作動薬を含め2剤あるいは3剤で治療

②治療目標に到達しない場合には、基礎インスリンを追加

③それでも治療目標に到達しない場合には、最も食後高血糖が著しい食事の前に食事向けのインスリンを追加

④最終的に毎食前のインスリンとして強化インスリン療法に至る


山田先生の考察:日本の実臨床にも大きな影響

わが国のガイドラインでは、患者の病態に応じてインスリン分泌促進系、あるいはインスリン抵抗性改善系といった具合で治療薬を選択するようにとの記載がなされている。
つまり、基本的にはブドウ糖吸収・排泄調節系も含めて、第一選択薬から主治医の判断でどのクラスの薬剤を使用してもよいというスタンスである。

 
一方、冒頭で述べたように、ADA/EASDの合同声明は2006年に最初に高血糖管理のための合同アルゴリズムを提唱し、以後、2009年、2012年、2015年と改訂を繰り返してきている中で、薬物療法においては、常にメトホルミンが第一選択肢で、第二選択肢以降は患者の状況(病態のみならず、費用なども含めて)に応じ、ある程度、どのように使用してもよいというスタンスが取られてきた。

 
実は、どのクラスを第一選択薬としてもよいとされるわが国の実臨床の現場でも、ADA/EASDの合同アルゴリズムの影響を受けており、糖尿病専門医・非専門医を問わず、以前に比べてメトホルミンの投与量、投与患者比率が上昇してきているとの調査結果がある。

 
そのように考えると、このたびADA/EASDがスタンスを変え、メトホルミンが第一選択薬であることはそのままであるものの、第二選択薬としてはSGLT2阻害薬かGLP-1受容体作動薬をかなり優先的に使用するようにしたことは、わが国の実臨床にも大きな影響を与えるであろう。

 
非肥満で2型糖尿病を発症する患者の比率の多いわが国において、体重減量効果を持つSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を本当にそのまま第二選択薬として優先すべきなのか、臨床研究の実施が望まれる。



<自遊時間>


2018年10月29日05時40分50秒

オイテンシンを結構使用してきた立場からは、市場から消えていくことは寂しいことです。

このように今となっては古くて「渋い」薬剤が次々とフェードアウトしていきます。

代替え品が「ラシックス」というのも結構無神経な案内です。



<きょうの一曲>

My Favorite Things - John Coltrane [FULL VERSION] HQ




<きょうの一枚の絵>

img016 (1) のコピー

丹野清悟 「コンコルド広場」 20F

 

一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   


他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  

 

アルドステロン拮抗薬の降圧効果と課題

アルドステロン拮抗薬の降圧効果と課題 待たれる第三世代薬

https://medical-tribune.co.jp/news/2018/1026516736/ 
高血糖状態ではミネラルコルチコイド受容体(MR)を介する作用が亢進しており、糖尿病を合併する高血圧患者では、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬〔ACE阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)〕にアルドステロン拮抗薬の追加が有用との報告がある。
国際医療福祉大学腎臓内科/同大学三田病院の鍵本昌孝氏は「糖尿病合併高血圧患者に対するアルドステロン拮抗薬の追加投与により血圧の低下が認められた」と第41回日本高血圧学会(9月14~16日)で報告。
「ただし、高カリウム(K)血症の問題があり、新規(第三世代)薬剤の臨床応用が待たれる」と述べた。


第一世代、第二世代ともに短所がある

高血糖状態の非上皮組織(心臓、血管、脂肪、脳など)では、MRを介した作用が増強することが知られており、糖尿病では上皮組織(腎臓)と非上皮組織のいずれにおいてもMRをブロックすることが有用であると考えられる。
同グループはこれまで、RAS阻害薬投与中の高血圧患者へのアルドステロン拮抗薬追加投与により尿蛋白が低下したこと、また低下の程度は非糖尿病患者よりも糖尿病患者の方が強いことを報告している。


私的コメント
恥ずかしながら「非上皮組織」という概念を初めて知りました。 
腎臓が「上皮組織」であり、心臓、血管、脂肪、脳などが「非上皮組織」ということですが、今更腎臓がどうして「上皮組織」なのかと訊くのは「非常識」でしょうか。


RAS阻害薬にアルドステロン拮抗薬を追加投与する際、問題となるのは高K血症である。
スピロノラクトンの心保護効果を証明したRALES研究(N Engl J Med 1999; 341: 709-717)の発表後、アルドステロン拮抗薬の不適切な使用により高K血症の頻度が上昇したとの報告もある(同誌2004; 351: 543-551)。

 
現在国内で使用可能なアルドステロン拮抗薬はスピロノラクトン(第一世代)とエプレレノン(第二世代)の2種類だが、使用する際には注意が必要である。
スピロノラクトンはMR選択性が低く、用量依存的な内分泌性副作用のため単剤で十分量が使用できないという短所がある。
エプレレノンはMR選択性が高いものの、アルブミン尿または蛋白尿を伴う(クレアチニンクリアランス50mL/分未満)糖尿病患者には禁忌であるため、使用が煩雑となる。

私的コメント;
内分泌性副作用とは具体的には女性の場合では生理不順,男性では女性化乳房や乳頭部の痛みのことを指すのでしょうが、 この表現も初めて知りました。

「アルブミン尿または蛋白尿を伴う(クレアチニンクリアランス50mL/分未満)糖尿病患者には禁忌」という「縛り」は発売当初からでしたが、未だに解除されないのですね。
そもそもの禁忌の理由も忘れてしまいました。
(スピロノラクトンにはこの点についての禁忌はありません) 

 

治療期間中は安定した降圧

そこで今回、同グループは糖尿病合併高血圧患者に対するRAS阻害薬への追加投与としてのスピロノラクトン、エプレレノンによる治療の現状をまとめ、その臨床評価と課題について検討した。
対象は同院通院中のRAS阻害薬(ACE阻害薬またはARB)で治療中でも降圧が不十分な2型糖尿病合併高血圧患者54例(男性32例)。
全ての症例で現在の降圧薬開始前のスクリーニングにより、二次性高血圧症が否定されている。

 
禁忌事項に注意し、原則慢性腎臓病(CKD)の蛋白尿ステージA1ではエプレレノンを、ステージA2/A3ではスピロノラクトンを使用した。
治療開始1カ月後に外来受診し、その後は臨床的に問題がなければ1~2カ月ごとの受診とした。
血圧は外来受診時の安静坐位測定と家庭血圧を合わせて降圧薬調整の指標とした。
血圧は診療室血圧で140/90mmHg未満を目標とし、アルドステロン拮抗薬の用量調整は主治医が判断した。
外来受診時に血圧、腎機能〔推算糸球体濾過量(eGFR)〕、アルブミン尿、電解質などを評価した。

私的コメント
「血圧は外来受診時の安静坐位測定と家庭血圧を合わせて降圧薬調整の指標とした」と「血圧は診療室血圧で140/90mmHg未満を目標とした」の両者の整合性がよくわかりません。


その結果、血圧はアルドステロン拮抗薬追加2カ月後から有意な変化が見られ、治療期間を通じて安定した降圧が得られた。
eGFRは、1~3カ月後に平均10%の低下が見られた。
その後は安定し、さらなる低下は認められなかった。
尿中アルブミン排泄量(UAE)は、症例ごとの差と変動が大きかったものの、16~20カ月後には治療前と比べて有意な低下が認められた。


やはり多い高K血症

アルドステロン拮抗薬追加後に問題となるのは高K血症であるが、治療中に血中K濃度6.0mEq/L以上の高K血症は8例(いずれもスピロノラクトン群)で認められ、アルドステロン拮抗薬の減量が試みられたが、6例で投与中止となった。
エプレレノン群の中止例(5例)は、いずれも腎症ステージの進行によるものであった。
演者は「今回の研究からスピロノラクトン、エプレレノンの臨床的課題が明らかになった」と述べた。


現行のステロイド型アルドステロン拮抗薬の限界を改善するため、ステロイド骨格を持たない新規のアルドステロン拮抗薬(ジヒドロピリジン誘導体、ピラミドン誘導体、スルホンアミド誘導体などを基本骨格とする第三世代)の開発が進められている。
第三世代の特徴として、心臓と腎臓に同等に分布することが挙げられる。
そのため、高K血症発症の低下が期待される。


私的コメント;

ステロイド骨格を持たないと「心臓と腎臓に同等に分布する」理由、そしてこのことが「高K血症を引き起こさない」あるいは「腎症ステージの進行が起こらない」 などの副作用軽減につながる理由が理解出来ませんでした。
以前にも書いたことがありますがF社が供給しているエプレレノンが使用期限が半年の製品がしばらく流通していたことがありました。
また、ウィークリー包装しか無く(アリセプトも同様)使い勝手が悪い商品です。
F社のこの製品は世界戦略として南米のある場所で一手に生産しているという話も小耳に挟みました。


 

<関連サイト>

本態性高血圧症とアルドステロン

伴う高血圧症患者に ACE 阻害薬または ARB を投与すると, ARB では 20~30%の割合でアルドステロン・ブレイクスルー現象が起きてきます。
ACE 阻害薬では 40~50%の症例でブレイクスルー現象が起こってくる。 そういう患者に了解を得て少量のスピロノラクトンを投与しますと,蛋白尿とか尿中アルブミン量が劇的に改善します。
一部の症例では腎臓にも有効ではないかと考えられます。




<きょうの一曲>

Glen Campbell Yesterday When I Was Young

https://www.youtube.com/watch?v=DobWU-O9UuQ

(聴き取りやすい英語と歌詞付き)


yesterday, when I was young - Julio Iglesias

https://www.youtube.com/watch?v=C0OXb6YW3Vw


帰り来ぬ青春 ロイ・クラーク、シャルル・アズナヴール!

https://plaza.rakuten.co.jp/ruzerukabu/diary/201107290001/


シャルル・アズナヴール 和訳 帰り来ぬ青春 Hier encore 

htt-co.comps://seiunsha/シャルル・アズナヴール-和訳-帰り来ぬ青春/


帰り来ぬ青春 Hier Encore アズナヴール

https://ameblo.jp/jaimeen/entry-11782171061.html


帰り来ぬ青春(Yesterday When I Was Young)/シャーリー・バッシー 

http://amce7946.blog74.fc2.com/blog-entry-342.html


Mel Torme - Yesterday When I Was Young

https://www.youtube.com/watch?v=0avX5eeyrIY


シャルル・アズナブールの「帰り来ぬ青春」(原題:Hier encore )

http://yazumichio.blog.fc2.com/blog-entry-534.html

(英仏の歌詞の訳)



<きょうの一枚の絵>


img016 (2) のコピー

ポール・アンビーユ 「シャンティリーの競馬」10F


 


一部のサイトはログインが必要になっています。 

いずれも無料で閲覧出来るサイトですので、この機会に登録いただければ診療や研究の一助になるかと思います。

また、このブログ内に書かれた項目を検索される際にはブログの「記事検索」欄を利用されるか、Googleなどの検索エンジンで

「(調べたい項目) 葦」

で検索出来ます。   


他のマイブログもよろしくお願いします。

葦の髄から見た循環器の世界

「葦の髄」循環器メモ帖

井蛙内科開業医/診療録(4)

井蛙内科豆知識メモ帖 

ふくろう医者の診察室  

腹部大動脈石灰化と心発作リスク

腹部大動脈石灰化が心発作リスクを予測

https://medical-tribune.co.jp/news/2018/1018516637/

心血管疾患は世界的に主要な死因の1つで、将来の心血管イベントリスクの正確な評価は重要である。
10年間の冠動脈疾患の発症を予測する指標としてフラミンガムリスクスコア(FRS)があるが、FRSで評価された患者の多くは不確定なリスクカテゴリーに分類されるため、追加の非侵襲的検査の施行が促される。
米国の研究グループは「CTによる腹部大動脈石灰化(AAC)の測定値が将来の心血管イベントの強力な予測因子となることを見いだした」とRadiology(2018年10月2日オンライン版)に報告した。

 

心血管イベント発生群のAACスコアは非発生群の5倍

研究グループは、2004年4月~05年3月の1年間に非造影腹部CT検査を受けた心血管疾患の症状がない成人829例(男性378例、平均年齢57.9歳)を対象に、電子カルテを用いてCT施行後(平均約11年間)の心血管イベント発生について調査した。
CTによるAACは横隔膜から大動脈分岐部までmodified Agatston scoreを用いて定量的に評価した。


CT施行後、156例(19%)に心血管イベントが発生しており、CTから最初のイベント発生までの期間は平均約7年であった。
内訳は、心臓発作39例(5%)、脳卒中26例(3%)、うっ血性心不全63例(8%)、死亡が79例(10%)で、42例で2つ以上のイベントが発生していた。
CT施行後にイベントを発生した26例を含む45例でCT施行前にイベント発生が記録されていた。

 
AACスコアは心血管イベント発生群で非発生群に比べ5倍以上高かった。
FRSの平均値は心血管イベント発生群10.1、非発生群6.9であった。


任意型検診として有益な可能性

さらに、心血管イベントとAACスコア、FRSとの関連についてKaplan-Meier法、Cox比例ハザード解析、ROC曲線を用いて評価した。

 
その結果、Kaplan-Meier法では四分位数によるイベント発生曲線の分離度がFRSよりもAACの方が良好であった。
Cox比例ハザード解析では単変量、多変量のいずれにおいても、FRSとは独立してCTによるAACが将来の心血管イベントの強力な予測因子であった。

ROC曲線では曲線下面積がFRSよりもAACの方が大きく、AACとFRSを組み合わせてもAAC単独と変わらなかった。

 
研究グループ代表は「CTによるAACは将来の心血管イベントの強力な予測因子であり、FRSよりも優れていることが認められた。
また、他の疾患のために実施されたCTによるAAC所見が別の有益な役割を果たすことが示された」と結論。
「非造影腹部CTによ