葦の髄から循環器の世界をのぞく

訪問ありがとうございます。 このブログは医療関係者を対象としています。 老境に入った内科開業医が、昔専門とした循環器科への熱い思い断ちがたく一人でお勉強した日記です。 内容は循環器科に限定しています。 他に「井蛙内科開業医/診療録」「ふくろう医者の診察室」のブログもあります。

冠静脈デバイス

冠静脈デバイスは冠虚血治療のラストリゾートか

心疾患に対するカテーテルデバイスといわれて思い浮かぶのは、現下には経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)に使用するバルーン拡張型人工弁や、僧帽弁閉鎖不全に使われるMitraclipなどであり、もはや冠動脈ステントではない。第二世代薬剤溶出ステント(DES)が、その低い合併症発生率と再狭窄率から経皮的冠動脈インターベンション治療(PCI)のデフォルト・ストラテジーとなってから、生体吸収性ステント(BRS、生体吸収性スキャフォールドとも呼ばれる)が次世代の冠動脈デバイスと目されていた。
しかしBRSは血栓症リスクがDESより高いことが判明して影が薄くなり、冠動脈デバイスの発展は第二世代DESでいったんプラトーに達した感がある。


ところが今年、パリで開催されたeuroPCR(欧州経皮的心血管インターベンション学会)では、初期の動物実験から30年以上経過してようやくエビデンスが得られたという、新たな虚血性心疾患デバイスの発表があった。
冠静脈側から心筋虚血を救済する「PICSO」(圧制御間歇的冠静脈洞閉塞法)である。

 
今回の学会発表に先立
つ2015年、風変りな狭心症デバイスがNew England Journal of Medicine誌にベルギーとカナダの施設から発表された
砂時計型のcoronary-sinus reducerと呼ばれるデバイスは、冠静脈洞を部分的にせき止めて虚血領域への逆行性血流を生み出して、現行の血行再建の適応にならない狭心症患者のQOLを改善した。


同年、EuroIntervention誌に発表されたPICSO Impulse Systemは、ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者に対するprimary PCIに併用して使用され、安全性が確認された。


本システムは冠静脈洞内に挿入したバルーンカテーテルを拡張して内圧を上昇させ、一定時間保持した後、バルーンを虚脱して圧を基礎値に戻すという循環をコンピューター制御で行うシステムで、心筋虚血領域への逆行性血流を増加させることができるという。
解析対象となった症例はわずか13例で、全例比較では有意差はなかったが、冠静脈洞内圧が十分高値に達した症例群では、心臓MRIで評価した心筋梗塞サイズが有意に減少した。


以上の2論文を受け、米国ハーバード大学ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のDavid P Faxon氏はCirculation: Cardiovascular Interventions誌の論説で、こう指摘した。


冠静脈インターベンションの動物実験が行われて75年以上になるのに、わずかに小規模の臨床試験が行われただけだった。
いまだに有効な臨床応用が行われないなら、この手法はもはや諦めるべきなのか。否、諦めるべきではない。
実は彼自身も、かつて冠静脈からの逆行性灌流に関する研究者の1人だった。


そして本年5月、冠静脈インターベンションの臨床研究としては初のポジティブな結果が、パリで発表された(OxAMI-PICSO研究)。PICSO Impulse Systemを、STEMI患者に対するprimary PCIに併用するところは2015年の研究と同様だが、PICSOを併用すべき症例の選定に圧ワイヤーを用いて、微小循環障害を評価する微小循環抵抗指数(IMR)を採用した。


高度に微小循環が障害されたと考えられる、冠動脈ステント留置前のIMRが40以上のSTEMI症例にPICSOを施行した(PICSO群)。
その結果を、IMRが40以下でPICSOを行わなかったIMR低値群、およびIMRが40以上だったがPICSOを行わなかったOxAMI-PICSO研究開始前のhistorical control群と比較した。


すると、PICSO群ではhistorical control群に比べ24~48時間後のIMRが有意に低下し、心臓MRIで評価した梗塞サイズも6カ月後には有意に縮小していた。
2値ロジスティック回帰モデルを用いたオッズ比で解析すると、梗塞サイズの決定因子は、年齢・血栓・微小循環障害スコア(ATIスコア)、治療開始時点での血流状態(TIMI flow)、虚血時間、抗凝固薬、抗血小板薬の使用のいずれでもなく、唯一PICSOの使用であった。とはいえ、PICSOを施行したのはわずか25症例だった。
今後の大規模な追試が望まれる。


PICSOの開発者であるオーストリア、ウィーン大学心臓外科のWerner Mohl氏は2008年、私財を投じてPICSOシステムを製造販売するスタートアップ企業Miracor Medical社を設立した。
10年を経て、初めて実のある臨床試験が実施でき、結果を出した。


<きょうの一曲>

Shirley Bassey - It Could Happen To You (1962 Recording)


It Could Happen To You


IT COULD HAPPEN TO YOU - W&R : Jazzと読書の日々


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<きょうの一枚の絵>

35904fa91a2e670e92785f541431993a-754x560-1-754x560 のコピー

レイモン・サヴィニャック「ドップ 清潔な子どもの日」1954年 ポスター、カラーリトグラフ

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卵円孔開存

卵円孔開存を閉じるまでの長い道のり

慶應義塾大学 循環器内科 専任講師香坂 俊 先生が執筆された記事の紹介です。

筆者が研修を行っていた時分(10年以上前)は、まさに心エコーで「卵円孔開存(PFO)を見つけよう!」という機運が盛り上がっていたところで、細かい空気泡を静脈に注射しては、右房から左房に漏れないかどうか目を凝らして見ていた(細かい空気泡はよく超音波を反射するので、静脈系の血液が流れている様子がエコーでよく見えるようになる)。

こうしたとき、時に患者さんに息こらえや咳をしてもらったりすると(胸腔内圧を上げる)、たまに空気泡がパラパラと左房側に漏れていき、「結構な患者さんで卵円孔は開存しているのだなぁ」と感銘を受けたことを覚えている。


実際に統計をとってみると、実に4人に1人くらいで卵円孔は開存しているとされている。
そして、これが開いているだけならまだよいのだが、たまに静脈側で発生した血栓等を通してしまい(通常は肺に行くはずが左心系に迷い込む)、脳梗塞を起こしたりするのが長らく問題だと考えられてきた。
実際に血栓(赤色部)が開存した卵円孔に挟まっていたというような症例報告も多数なされている。

私的コメント
こういったことは、心房細動も血液凝固因子異常も弁膜症も心房拡大もない症例で起こりうることなのでしょうか。

 

その後、とくに若年者の脳梗塞の50%以上にPFOが併存しているとする報告がなされ、とくに若年者でPFOを打倒しようという機運が盛り上がった。


その黎明期には、PFO患者にアスピリンやワルファリンを使ってもまったく脳梗塞の予防にもつながらず、カテーテルでPFOを閉じるデバイス(両端に傘がついたようなデバイス)が導入された後も、いまひとつその成績はぱっとしなかった(CLOSURE I、PC Trial、RESPECT)。


しかしその後もデバイスの開発が進められ、適切なプロフィールの患者を選択するための方策が練られた。
今回NEJMに掲載されたのは、そうした流れの中で行われた試験である(CLOSE、RESPECT extended、REDUCEの3試験の結果が同時掲載)。


この3つの試験ではカテーテルによるPFO閉鎖による脳梗塞予防効果が見事に証明された。
最も大きなポイントとしては、きちんと18歳から60歳という若年者を対象としたということのほかに、右左シャントの「大きさ」を規定したことではなかっただろうか。
これまでは少しでも空気泡が左房側に漏れればそれで「PFOだ!」としてきたが、たとえばCLOSE試験では、右房が空気泡で満たされてから3心拍以内に30以上の空気泡が左房に認められた場合のみ閉鎖の適応としている。
そのことを反映してか、これまでの試験よりも試験全体の脳梗塞の発症率が高くなっている(コントロール群で5%前後)。

私的コメント
コントロール群でも5%前後の(脳塞栓と思われる)脳梗塞が発症しているのが気になります。 


注意すべき点としては術後に肺塞栓(RESPECT extended)や心房細動(REDUCE)の頻度が若干増えるところだろうか?

私的コメント:
手術によって心房細動が起こり、脳塞栓のリスクが増えるとすれば皮肉です。

ただ、トータルで考えると今回の脳梗塞の「劇的」ともいえる予防効果(35~50%のイベント抑制効果)の前では閉鎖することのベネフィットのほうがほとんどのケースで高くなるものと考えられる。
今後コストの問題等も合わせて検討されなくてはならないが、今回ようやく適切なPFO閉鎖というところに道筋がつけられたといえるのではないだろうか。

 

<今回の記事に関する関連サイト>

潜因性脳梗塞、PFO閉鎖術の長期的効果は?/NEJM

・原因不明の潜因性脳梗塞を発症した成人患者において、卵円孔開存(PFO)閉鎖術群は薬物療法単独群より脳梗塞の再発が低率であったことが、980例を登録して行われた多施設共同無作為化非盲検試験「RESPECT試験」の、延長追跡期間中(中央値5.9年)の解析で示された。


潜因性脳梗塞への抗血小板療法単独 vs.PFO閉鎖術併用/NEJM

・原因不明の潜因性脳梗塞を発症した卵円孔開存(PFO)を有する患者において、PFO閉鎖術+抗血小板療法の併用は、抗血小板療法単独より脳梗塞の再発リスクが低いことが示された。


PFO閉鎖術で脳梗塞再発が大幅に低減/NEJM

・卵円孔開存(PFO)との関連が考えられる原因不明の脳梗塞を呈し、関連する心房中隔瘤または心房間の大きな短絡が認められる患者に対して、PFO閉鎖術と抗血小板療法を組み合わせた治療は、抗血小板療法単独に比べ脳梗塞の再発を大幅に低減したことが示された。

 


<卵円孔開存・ESUS 関連サイト>

ESUSでDOACが優越性示せず


ESUS (embolic stroke of undetermined source:ESUS)


卵円孔開存


卵円孔閉鎖術と脳梗塞再発リスク





<きょうの一曲>

レイハ(ライヒャ) ファゴットと弦楽四重奏のための変奏曲  チェコ九重奏団




<きょうの一枚の絵>

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野間仁根 油彩「薔薇

「蚕が絹糸を吐くように自然に次々と生まれてくる絵が本物だよ」(野間仁根)



 IMG_2341 のコピー

野間仁根 油彩「薔薇」  私蔵 2018.7.17 撮影


 

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高尿酸血症治療

高尿酸血症治療への疑問  CARES試験から

研究の背景:血清尿酸値は心血管イベントと相関するが因果関係は不明

以前から、血清尿酸の高値は高血圧、脳卒中、心不全発症の予測因子となる(相関関係がある)ことが示されてきた。
一方で、昨年(2017年)改訂された日本動脈硬化学会の『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017』でも記載されているのは、尿酸高値が危険因子であるか(因果関係があるか)どうかについては不明だということである。
つまり、尿酸低下療法で心血管イベントを抑制できるかどうかについてのランダム化比較試験(RCT)のデータが不足しているわけである。

 
このような中、尿酸低下療法に関して、心血管イベントへの影響を見たCARES試験がN Engl J Med(2018;378:1200-1210)に報告された。
(the Cardiovascular Safety of Febuxostat and Allopurinol in Patients with Gout and Cardiovascular Morbidities


研究のポイント1:アロプリノールに対するフェブキソスタットの心血管安全性についての非劣性試験

CARES試験は、痛風と心血管疾患の既往のある患者を対象に、ともにキサンチンオキシダーゼ阻害薬であるフェブキソスタットとアロプリノールを投与した際の心血管イベントに対する影響を比較した非劣性試験である。
北米の320施設において実施された。

 
実はこの試験は、フェブキソスタットの開発段階において、痛風患者を対象にフェブキソスタット、アロプリノール、プラセボの比較試験を実施したところ、フェブキソスタット群において心血管イベントが増える可能性が示唆された(Am Heart J 2012;164:14-20)ことから、米食品医薬品局(FDA)の指示により実施されたものだという。

 
CARES試験では、米国リウマチ学会の痛風の診断基準を満たして痛風の診断を受けたことがあり、かつ心血管イベントの既往がある患者で、血清尿酸値が7.0mg/dL以上か、痛風発作がコントロールできていない6.0mg/dL以上の患者が対象とされた。

 
スクリーニングの時点で既存の尿酸低下療法を中止し、1~3週間のwash-out期間を設けた。
その上で、痛風発作予防に0.6mgのコルヒチンの投薬を半年間受けるものとされた。
スクリーニングの後、ランダム化割り付けにまで至った患者は推算糸球体濾過量〔eGFR 60mL/分/1.73m
2以上、30以上60mL/分/1.73m2未満)で層別化した上で、ランダムにフェブキソスタット群、アロプリノール群に割り付けられた。

 
フェブキソスタット群は40mg/日で投薬を開始され、2週後の時点で尿酸値6.0mg/dL未満の場合には40mg/日を維持し、6.0mg/dL以上の場合には80mg/日に増量して投薬を継続された。
アロプリノール群では、eGFRによって300㎎/日、200mg/日で投薬が開始され、尿酸値6.0mg/dL未満を目標に1カ月ごとに100mgずつ増量され、上限量はeGFRによって600mg/日、400mg/日と設定された。
被験者は、原則的に最初の12週は2週ごとに、その次は24週に、以後は6カ月ごとに外来を受診してフォローアップを受けた。

 
主要評価項目は複合心血管イベント(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、不安定狭心症に対する緊急再灌流療法)であり、二次評価項目として主要評価項目の構成要素の他、全死亡、心不全入院などが設定された。

 
フェブキソスタットのアロプリノールに対する非劣性の証明には、624件の主要評価項目の発生が必要であるという計算のもと、624件のイベントが発生するまでフォローすることとされた。


研究のポイント2:フェブキソスタットの非劣性が証明されたが、心血管死は増加

2010年4月~17年5月に6,198例の患者が登録された。
うち8例は全く投薬を受けていなかったので、残る6,190例(フェブキソスタット群3,098例、アロプリノール群3,092例)が解析の対象とされた。


624件の主要評価項目が発生したところで、介入が終了とされた。
フェブキソスタット群で中央値728日、アロプリノール群で同719日の投薬が行われた。
また、624件目からデータ固定までの期間にさらに32件の主要評価項目が発生したため、計656件での解析となった。

 
この間、尿酸値6.0mg/dL未満例の比率は、投与2週目(60.8% vs. 50.2%)、60週目(75.7% vs.71.8%)と一貫してフェブキソスタット群で高値であり、尿酸値5.0mg/dL未満の比率もずっとフェブキソスタット群で高値であった(72週目で57.7% vs. 44.0%)。
一方、痛風発作の発症には両群で差異はなく(0.68件/人・年 vs. 0.63件/人・年)、また、血糖、脂質プロファイル、血圧についても差異はなく、心血管疾患用の投薬についても相違はなかった。

 
その上で、主要評価項目であるが、やはり両群に差異はなかった。
また、非劣性の検定においても、フェブキソスタットのアロプリノールに対する非劣性が確認された。


しかし、二次評価項目を見ると、心血管死は有意にフェブキソスタット群で多く、全死亡も有意に増えているという結果であった。
なお、心血管死の中で最大の死因は心臓突然死であったという。


執筆者 山田 悟 先生の考察:解消されない疑問、待たれる日本発RCTの結果報告


多くの先生方にとって、なぜフェブキソスタット群で(心臓突然死を中心に)死亡率が高くなっていたのか、全くもって理解し難いことであろう。
それは論文の著者にとっても同様のようである。
論文のdiscussionにおいて、この死亡率上昇の背景は不明であると明記されており、既存の研究ではフェブキソスタットによる心拍、心電図波形、心機能への影響は報告されていないと述べている。

 
そして、私にとってもこのデータは理解し難い。
私はこれまでも、高尿酸血症に対する幾つかの疑問を抱えてきた。
ここに、それらを羅列させていただき、それらに対して今回のCARES試験がなんら答えをもたらしてくれなかったことを確認したい。


①尿酸低下療法は痛風発作の初発予防に(医療経済的な視点で)有効か

わが国では、痛風や合併症がない場合でも血清尿酸値9mg/dL以上の高尿酸血症に対しては薬物介入を考慮することが推奨されている。

 
一方、『ハリソン内科学』(日本語版第5版;原著19th Edition)では、"費用効果を考えると、2回以上の発作を起こしてからの投薬開始でもよい"という内容で記載されている。
つまり、痛風発作既往のない高尿酸血症患者に対する一次(初発)予防としての薬物療法は、一般に不要とされているのである。
慢性腎臓病(CKD)患者へのアロプリノール投与の意義は示されているようではあるが(Clin J Am Soc Nephrol 2010;5:1388-1393)、私は痛風発作の初発予防目的に尿酸値9mg/dL以上のCKDのない人に介入することが有効かどうかを知りたいと思っている。
しかし本試験は、全員が痛風発作の既往のある患者であり、デザインからして痛風発作の初発予防効果を明らかにできるものではない。

②尿酸低下療法は心血管イベントを抑制できるか

次に、尿酸低下療法は高尿酸血症と相関のある心血管イベントを抑制できるかどうか(高尿酸血症と心血管イベントは因果関係があるのか)である。
本試験は(両群ともに尿酸低下療法群であるという)デザインからして、尿酸低下療法の心血管イベント抑制効果を検証するものではない。しかし今回、若干とはいえ、より尿酸を低下させていたフェブキソスタット群において心血管イベントが抑制されているということはなかった。

 
これまでのOPT-CHF試験(J Am Coll Cardiol 2008;51:2301-2309)、EXACT-HF試験(Circulation 2015;131:1763-1771)もそうであるが、尿酸低下療法の心血管イベント抑制効果の証明はなお達成されていないことになる。
これも、今後の検討に持ち越されることとなった。


③高尿酸血症治療薬の種類によって心血管イベント発生率に差異が生じるのか

先ごろ報告されたコホート研究(J Am Coll Cardiol 2018;71:994-1004)において、アロプリノールで治療されている人よりも、プロベネシドで治療されている人の方が有意に心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中)が少ない(2.83/100人・年 vs. 2.36/100人・年、ハザード比0.80)ことが示された。
このことは、尿酸低下療法によって心血管イベントの抑制が可能であり、それは薬剤によって、あるいは尿酸低下の方法(排泄促進なのか、産生抑制なのか)によってその抑制効果が異なることを示唆する。

 
しかし今回、フェブキソスタット群とアロプリノール群で主要評価項目に差異はなかった。
よって、今回の試験結果からは、薬剤によって心血管イベント発生率に差異があるかどうかは判定できない。
また、フェブキソスタットもアロプリノールも尿酸生成抑制薬(キサンチンオキシダーゼ阻害薬)なので、尿酸低下の方法によって差異が生まれるのかも判定はできない。
今後、トピロキソスタットも含めた検討が必要であろう。

正直、今回のCARES試験は私が抱く疑問に何も答えてくれなかった。そして・・・


④なぜフェブキソスタット群で心臓突然死を中心に死亡率が高かったのか

という新たな疑問まで示してくれた。

 
この④に対する回答はその案すら浮かばない。
今後の新たな臨床試験の報告を待つしかないであろう。
わが国において2012~16年に実施されたFEATHER study(フェブキソスタットの腎機能低下抑制効果を検証するプラセボ対照二重盲検RCT)や2013~17年に実施されたFREED 試験(フェブキソスタットの脳・心・腎イベントの抑制効果を検証するオープンラベルRCT)の(有害事象を含めた)結果報告を待ちたいところである。

 
また、もっと長期でのデータとなれば、最近はやりのreal-world evidenceに期待するばかりである。
わが国での各種疾病領域におけるbig data構築とその適切な利用が促進されるべきであろう。




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2型糖尿病患者の生活習慣とCVDリスク

2型糖尿病患者の生活習慣がCVDリスクと相関 糖尿病診断後の生活習慣改善も有効

2型糖尿病(T2D)と診断されている成人の生活習慣はその後の心血管疾患(CVD)リスクおよび心血管死亡と相関していることが確認された。
T2D診断後に生活習慣が改善した場合、CVDリスクは低下した。T2D患者の生活習慣がCVDリスクの管理に重要であることを示すエビデンスがJ Am Coll Cardiol誌で6月26日で発表された。


T2D患者の死亡リスクが生活習慣と関連することは既に報告されていたが、CVDリスクについてはデータがなかった。


今回の研究の対象は、Nurse's Health Study(NHS)およびHealth Professionals Follow-Up Study(HPFS)の参加者のうち、研究に参加後2012年までに糖尿病であると診断された人。
食事に関する質問票が導入された年をベースラインとした(NHSで1980年、HPFSで1986年)。
除外基準は、
(1)ベースライン時にT2DまたはCVDまたは悪性腫瘍と診断されていた、
(2)経過観察中T2Dの診断前にCVDまたは悪性腫瘍と診断された、
(3)カロリー摂取量のデータが極端で信憑性を欠く、BMIなどのデータが不十分、
とした。


NHSの対象は12万1700人の女性看護師(1976年に33~55歳)、HPFSの対象は5万1529人の男性医療従事者(1986年時点で40~75歳)でいずれも米国内より参加した。
今回の研究では、前述の基準を満たす女性8970人と男性2557人を最終的な対象とした。
T2D診断前後の生活習慣を比較する解析では診断前のデータがない対象をさらに除外した。


生活習慣として、食習慣、喫煙状況、アルコール摂取、身体活動の4因子を検討した。


食習慣はAlternate Healthy Eating Index(AHEI)スコアを5群に分けて評価した。
AHEIスコアの上位40%を低リスクとした。
また、現在喫煙していない場合、中等度または強度の運動を150分/週以上行っている場合、アルコール摂取量が女性で5~15g/日、男性で5~30g/日である場合に「低リスク」とした。


以上4因子につき、「低リスク」と判断された場合それぞれ1点を加算し、低リスクでない場合は0点として4因子の点数を合算し「低リスク生活習慣スコア」とした。合計は0~4点となり、点数が高いほど生活習慣が健康的と評価した。


アウトカムはCVD(致死性および非致死性冠動脈疾患[CHD]と致死性および非致死性脳卒中)と心血管死亡とした。


糖尿病と診断された時点で「低リスク生活習慣スコア」が0、1、2、3点以上だったのは女性でそれぞれ6.6%、45.9%、34.6%、12.9%、男性で3.0%、31.7%、37.8%、27.4%だった。


平均13.3年の経過観察期間中、CVDは2311例に生じ(うち脳卒中498例)、心血管死亡は858例だった。


「低リスク生活習慣スコア」が0点と比較して、3点以上の場合CVDのハザード比(HR)は0.48、CHDでは0.53、脳卒中では0.33だった(全てp trend<0.001)。


心血管死亡についても同様で、0点と比較して、3点以上の場合のHRは0.32だった(p trend<0.001)。
スコア3点未満の心血管死亡に対する人口寄与危険度は40.9%(95%CI:28.5%-52.0%)だった。


糖尿病診断前後の生活習慣の差を検討したところ、生活習慣が向上した人はCVDおよび心血管死亡のリスクが低下することが分かった。
生活習慣に変化がなかった人と比較して、生活習慣が向上した人はCVDのHRが0.79、CHDがHR 0.82、脳卒中がHR 0.68、心血管死亡がHR 0.80だった(全てp trend<0.001)。


「低リスク生活習慣スコア」が1点増えるごとにCVDは14%、CHDは12%、脳卒中は21%発症リスクが低下し、心血管死亡のリスクは27%低下した(全てp<0.001)。


糖尿病診断時の年齢、BMI、診断後の喫煙状況、糖尿病罹病期間、性別、糖尿病診断前における「低リスク」な生活習慣の数により層別化した解析でも結果は同様だった。


T2D患者における生活習慣とCVDリスクに関する過去の研究では、Steno-2研究において投薬と並行した生活習慣改善によりCDVイベントの有意な減少が確認されている。
一方、Look AHEAD研究では体重減少に重きを置いた介入の結果、体重やHbA1c等が改善したもののCVDイベントリスクには有意な差がなく、結果が一定していなかった。
著者らは本研究と同様の結果を示す研究として、診断直後の1年間における生活習慣改善と心血管リスクとの関連を示したADDITION-Cambridge(Anglo-Danish-Dutch Study of Intensive Treatment in People with Screen Detected Diabetes in Primary Care-Cambridge)研究を紹介している。


本研究(今回の研究)の対象は全員が医療従事者であり多くが白人であるため、異なる人種に結果を一般化する際には注意が必要である。
一方本研究の強みとして、サンプルサイズおよび経過観察期間、90%を超える経過観察率、生活習慣を2~4年ごとに反復して評価したこと、糖尿病前後で生活習慣を評価したことを著者らは挙げている。
その上で、本研究は糖尿病患者の心血管合併症予防に生活習慣改善が有効であるというエビデンスを示したと結論した。


英文抄録

Influence of Lifestyle on Incident Cardiovascular Disease and Mortality in Patients With Diabetes Mellitus

Gang Liu, Yanping Li, et al.

J Am Coll Cardiol. 2018;71:2867-76.

http://www.onlinejacc.org/content/71/25/2867



<きょうの一曲>

ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲第2番:ハイフェッツ(Vn)/ソロモン/

https://www.youtube.com/watch?v=taGNPhfpc8w


Shlomo Mintz - Wieniawski: Violin Concerto No.2 in D minor, Op.22

https://www.youtube.com/watch?v=MYzYVsvD5as


<きょうの一枚の絵>

10309-1 

佐藤昭三  「梓川」 日本画 10号




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腎デナベーション、降圧薬服用患者への効果を確認

腎デナベーション、降圧薬服用患者への効果を確認

降圧薬を服用中の高血圧患者において、主要腎動脈および分岐部の腎除神経(腎デナベーション)は、偽処置(シャム)と比較し、重大な安全性イベントを伴うことなく血圧を有意に低下させることが示された。
米国び研究チームが「SPYRAL HTN-ON MED試験」の結果を報告した。
カテーテルを用いた腎デナベーションの試験では、これまで一貫した有効性は報告されておらず、降圧薬服用中の患者における有効性は不明であった。
(Lancet誌オンライン版 2018.5.23 掲載)


降圧薬で血圧コントロール不良の患者、腎デナベーションとシャムで比較

研究グループは、米国、ドイツ、日本、英国、オーストラリア、オーストリア、ギリシャの25施設において、20~80歳の血圧コントロール不良の高血圧患者を対象に、無作為化単盲検概念実証試験を行った。
適格基準を、診察室収縮期血圧(SBP)150~180mmHg、拡張期血圧(DBP)90mmHg以上、2回目のスクリーニング時に24時間自由行動下SBPが140~170mmHg、1~3種の降圧薬を6週間以上継続して服用している患者とし、腎血管造影後、腎デナベーション群またはシャム群に無作為に割り付けた。
患者、介護者、血圧評価者は、割り付けについて盲検化された。


主要有効性評価項目は、自由行動下血圧測定に基づくベースラインから6ヵ月後の血圧変化で、服薬アドヒアランスについても評価した(intention-to-treat解析)。
安全性については、6ヵ月間における主な有害事象を評価した。なお、本試験では現在も追跡調査が進行中である。


6ヵ月後に腎デナベーション群で有意に低下、群間差7.0mmHg

2015年7月22日~2017年6月14日に467例が登録され、最初の80例が腎デナベーション群(38例)とシャム群(42例)に無作為に割り付けられた。


6ヵ月後におけるベースライン時からの診察室および24時間自由行動下の血圧値の低下は、ベースラインの血圧で調整した場合、シャム群に比べ腎デナベーション群で有意に大きかった。
ベースライン補正後の平均群間差は、24時間SBPが-7.0mmHg、24時間DBPは-4.3mmHg、診察室SBPは-6.6mmHg、診察室DBPは-4.2mmHgであった。


ベースライン血圧非補正の場合も同様に、診察室SBP、24時間SBP、診察室DBP、24時間DBPのいずれにおいても、腎デナベーション群がシャム群より血圧値の低下が有意に大きいことが確認された。


24時間SBPおよびDBPの1時間ごとの変化を評価したところ、腎デナベーション群では24時間にわたって血圧値の低下が確認された。


なお、3ヵ月時点の評価では、両群間に有意差は認められなかった。
また、服薬アドヒアランスは約60%であったが、試験期間中の個々の患者のアドヒアランスには、ばらつきがみられた。
重大な有害事象は、両群とも報告されなかった。


英文抄録

Effect of renal denervation on blood pressure in the presence of antihypertensive drugs: 6-month efficacy and safety results from the SPYRAL HTN-ON MED proof-of-concept randomised trial.


<私的コメント>

偽処置(シャム)に人道上の問題はないのでしょうか。


腎交感神経除神経降圧療法と降圧薬(解説:冨山 博史 先生)

研究対象は、カルシウム拮抗薬、利尿薬、レニン・アンジオテンシン系阻害薬、ベータ遮断薬のいずれか、または複数の降圧薬の最大容量の50%以上の服用でも血圧コントロールが十分でない症例80例である。
高周波カテーテルによる腎交感神経除神経(RND)実施群(38例)および対照群(42例)の治療後6ヵ月の血圧変化を24時間血圧測定にて評価した。
RND群では、対照群に比べて24時間収縮期血圧が7.4mmHg有意に低下し、RNDの有意な降圧効果を示した。


研究の背景と臨床的意義

RNDの降圧効果を評価するには、3つの重要確認事項がある。
第1に血圧評価方法であり、診察室血圧では変動する血圧の降圧効果を評価することは不十分である。
本研究では24時間血圧測定の結果よりRNDの有意な降圧効果を報告した。
第2は、併用する降圧薬の影響である。
RNDの対象は、難治性高血圧例が適切と現時点では考えられている。
本研究に先行するSPYRAL OFF研究は、降圧薬非服用症例にてRNDの有意な降圧効果を報告した。
しかし、実臨床では降圧治療服用下でのRNDの有効性を確認することが重要である。
2014年に発表されたSYMPLICITY HTN-3研究では、RNDで有意な降圧効果を認めなかったことを報告した。
しかし、その背景として降圧薬服用アドヒアランス不良が結果に影響した可能性が指摘されている。
本研究では、血圧・尿検査にて降圧薬服用アドヒアランスを確認し、RND群、対照群に服薬アドヒアランスに差がないことを確認している。
このように、本研究はRNDの降圧効果を検証するための2つの事項が確認されている。


3つ目の重要事項は、RND実施確実性の確認である。
本研究では、RND実施確実性は直接検証されていない。
しかし、24時間血圧評価にて降圧薬の最も影響の少ない朝夕のThroughの時間帯でもRND群では、血圧・心拍数の2重積が対照群に比べて有意に小さいことを確認している。
この所見から、RNDにより腎交感神経活性が低下したと推察している。


研究の今後

本研究では、服薬アドヒアランス良好例の割合が60%と報告しているが、研究症例数は80例と少ない。
今後、RNDの効果と服薬アドヒアランスの関係(アドヒアランス不良群でRNDはより有効か)および降圧薬の種類によるRND有効性の差異を検証する必要がある。




<関連サイト>

腎デナベーションは、降圧薬に代わりうるか RADIANCE-HTN SOLO試験

http://blog.livedoor.jp/cardiology_reed/search?q=腎デナベーション


腎動脈を焼灼する高血圧治療

http://blog.livedoor.jp/cardiology_reed/search?q=腎デナベーション


腎デナベーションでは「遠位+分枝」を焼灼

http://blog.livedoor.jp/cardiology_reed/archives/46674609.html





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頸動脈エコーの意義

 頸動脈プラークの進展が循環器病発症を予測

地域住民を対象にした吹田研究は、頸動脈プラークの進展が循環器病〔脳卒中、冠動脈疾患(CHD)〕の発症に関連することを世界で初めて明らかにした(J Am Heart Assoc 2018;7:e007720)。


研究の背景:現行GLでは「根拠がないので勧められない」

頸動脈エコーは、頸動脈壁の内膜と中膜の複合体の厚さ(intima-media thickness;IMT)を定量的に測定する検査である。

 
IMTと循環器病との関連を検討した代表的な研究としては、
PROG-IMT共同研究による16論文のメタ解析がある。
それによると、
総頸動脈平均IMTと循環器病の発症に関連が見られたが、総頸動脈平均IMTの進展と循環器病の発症リスクとの間には関連が見られなかった(Lancet 2012;379:2053-2062)。

 
日本脳神経超音波学会によるガイドライン(GL)『超音波による頸動脈病変の標準的評価法 2017』では、I
MTを予後指標の代用マーカーとすることについて、一般住民に対しては「C2:根拠がないので勧められない」となっている


研究のポイント: 総頸動脈最大IMT 1.1mm超群で発症リスク増加

今回の吹田研究では、1994年4月~2001年8月に健診時に頸部超音波検査を実施し、追跡可能な4,724人を解析対象とした。
頸部超音波検査は総頸動脈、分岐部、内頸・外頸動脈の測定可能な全ての領域を計測した。

 
平均12.7年の追跡期間中に脳卒中発症が221人、CHD発症が154人で観察された。
総頸動脈平均IMT、総頸動脈最大IMT、全頸動脈最大IMTのいずれも、大きいほど循環器病発症リスクが高かった。
10年後のCHD発症リスクを予測するアルゴリズムである「吹田スコア」に各種頸動脈IMT値を加え、C統計量と純再分類改善度を用いて検討すると、総頸動脈と全頸動脈の
最大IMTで有意な予測精度の向上が認められた。

 
次に、総頸動脈最大 IMT1.1mm超を頸動脈プラークと定義し、ベースラインで頸動脈プラークを有さない追跡可能な2,722人に対して、頸動脈エコー検査を2年ごとに行って2005年3月まで追跡したところ、193人が追跡中に新たに頸動脈プラークに進展した。

私的コメント;
「総頸動脈最大 IMT1.1mm超を頸動脈プラークと定義」ということは、隆起病変のない「びまん性肥厚」も
 IMT1.1mm超の条件を満たせば「プラーク」ということになります。
そのことには些か抵抗があります。 


それ以降2013年12月(平均8.7年の追跡期間)までに、脳卒中69人、CHD 43人の発症が観察された。
頸動脈プラークに進展した群では進展しなかった群と比べて、循環器病と脳卒中の発症リスクの上昇が見られた。


さらに、追跡期間5年当たりに総頸動脈最大IMTが 1mm進展(肥厚)すると、循環器病発症のハザード比(HR)は2.9、脳卒中発症のHRは3.1と有意なリスク上昇を示したが、全頸動脈最大IMTが1.7mm進展する場合の循環器病の発症リスクは有意でなかった。


なお、CHDのハザード比が有意でなかったのはCHD発生数が少ないためで、傾向性は認められている。

 
また、追跡期間5年当たりの総頸動脈最大IMTの進展が最も大きかった群(上位25%、第4四分位)と最も小さかった群(下位25%、第1四分位)を比較すると、5年間に両群とも糖尿病の増加、喫煙率の低下が見られた。
一方、最も小さかった群では、高コレステロール血症治療薬(主にスタチン)および降圧薬の服用率の上昇、過剰飲酒の減少、拡張期血圧の低下が見られ、最も大きかった群ではBMIの増加が見られた。


研究の臨床的意義:集約的で有効な予防法となる

今回の研究により、循環器病の予防における頸動脈エコー検査の意義を示すことができたと考えている。
すなわち、頸動脈エコー検査を実施して、分岐部や内頸・外頸動脈の狭窄や潰瘍などを確認し、総頸動脈最大IMTが1.1mmを超えるかどうかを判定することが集約的で有効な予防法となる。
今後、頸動脈硬化症のリスクスコアを開発することが可能となった。
 

 

<きょうの一枚の絵>

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SGLT2阻害薬の1次予防効果

SGLT2阻害薬:1次予防効果は非現実的?

話が出来過ぎのように思える場合…

昨年のCVD-REAL試験1)の発表と、その続編である3月のCVD-REAL 2試験の発表以来、糖尿病患者における、ナトリウム/グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬による心血管疾患の1次予防の有用性に関する“noise”を信じるか否かに関し、多くの混乱が臨床医の間で生じている。

最初の試験には、米国および欧州の5ヵ国の2型糖尿病患者30万9,056例が組み入れられた。
全死因死亡率のうちSGLT2阻害薬の効果を示す相対リスク減少率(RRR)は51%であったことが認められ、有益性は驚くべきことに平均追跡期間である9ヵ月以内に発生した。

2番目の試験では、アジア太平洋、イスラエル、カナダの6ヵ国から47万528例が参加し、平均治療期間224日中の死亡のRRRは49%だった。
これは、最初の試験の結果を現在“裏付け”ている。
注目すべきことに、これら2つのCVD-REAL試験では、1次予防および2次予防の両サブグループにおいて、同様の死亡率減少が示唆されている。

そのため、1次予防のサブグループ解析において確認された、話が出来過ぎのように思われるこの死亡率のベネフィットに関し、以下のような問いかけるべきいくつかの明白な次の疑問がある。


1.なぜこれらの観察研究のデータは、SGLT2阻害薬のランダム化比較試験のデータと一致しないのか。

2.この観察研究の結果は、残差交絡や未測定の交絡および/またはバイアスによって影響されているのか。

2つのCVD-REAL試験で使用された傾向スコアマッチング法の有用性は何か。


3.最も重要なこととして、2つのCVD-REAL試験の臨床およびガイドラインへの影響はどのようなものか。


ランダム化比較試験との矛盾

現在までに、EMPA-REG OUTCOME試験3)およびCANVAS試験というSGLT2阻害薬を用いた2つの大規模心血管アウトカム試験によって、主要心血管イベント(MACE)に関する優越性が示されている。

しかしながら、これら2つの試験でのMACEにおける有益性は、2次予防(すなわち、確定診断済みの心血管疾患[CVD]患者)においてのみ認められた。

EMPA-REG試験には、CVDの既往がある患者のみが組み入れられた。
CANVAS試験参加者の約3分の1にはCVDの既往はなかったが、MACEに対する層別解析では、2次予防のサブグループにおけるハザード比は統計学的に有意であったものの、1次予防のサブグループにおけるハザード比は有意ではなかった

したがってこれらの結果は、CVD-REAL試験の1次予防のサブグループによって示唆された死亡率における大きなベネフィットに反するものである。


どのように作用するか

またメカニズムの面では、SGLT2阻害薬による心保護作用は、すでに“疾患がある”心臓を持つ患者に限定されるようである。
主要な仮説(血行動態
および「効率の良い」エネルギー源としてのケトン体)のいずれも、ベースラインで心筋細胞の機能不全が存在する場合にのみ、この薬剤クラスのCVDへの有益性を説明することができる。

糖尿病における心血管アウトカム試験に関する、病態生理学に基づく最近のレビューにおいて、Bernard Zinman氏と私は、「早期糖尿病におけるSGLT2阻害薬の心保護作用は、依然として不確実なものである」と論争した。
近く発表されるDECLARE試験の結果は、この疑問に対し、信頼のおける回答が得られる最良の機会を提供してくれる、とわれわれは考えている

dapagliflozinに関する大規模ランダム化試験であるDECLARE試験では、1次予防の患者約1万例が4年間にわたって追跡されている
間もなく終了するこの試験の結果は、6~12ヵ月以内に報告されると予想されている。
 

CVD-REAL試験:交絡とバイアスがある?

2つのCVD-REAL試験から得られる正しい結論は、SGLT2阻害薬の処方により死亡率が低下したのではなく、SGLT2阻害薬を処方された参加者は死ぬ確率が低い患者であった、となるべきである。
このような因果関係の推論は、私にとって基本的な観察研究とランダム化比較試験の違いである。
後者のみによって、仮説を検証し因果関係を推測することが可能である。

2つのCVD-REAL試験は、交絡とバイアスがどのように試験結果を無価値なものにするかという、明確な例を提供するものである

傾向スコアマッチングは、既知の測定された交絡因子のみを調整することができる、単なる別の複雑な統計的手法であり、したがって、大多数の観察研究において使用される標準的な多変量解析と同価値(優れてはいない)であると見なされるべきである。

重要な点は、上記の統計的手法(多変量解析または傾向スコアマッチング法)のいずれを用いても、観察研究における未知のもしくは未測定の交絡を考慮することはできない、ということである。

大規模心血管アウトカム試験におけるランダム化は、既知の交絡因子と未知の交絡因子の両方を試験群間でマッチさせるものであり、それゆえずっとレベルの高いエビデンスに相当することがよく知られている。

2つのCVD-REAL試験のベースライン特性によって、患者レベルおよび医師レベルの因子による、重大な未測定の交絡の問題の存在が示唆される。

CVD-REAL試験における未測定の交絡の問題の手掛かりは、以下のとおりである。両試験のSGLT2阻害薬のコホート研究は、より若年で併存疾患が少ないにもかかわらず、多くの心保護作用のある薬剤(スタチン、アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬[ARB]、metformin、グルカゴン様ペプチド-1[GLP-1]受容体作動薬など)が投与されている。
このことは、患者の社会経済的因子、健康教育状況、担当医師に対する薬物療法の順守のような未測定の交絡因子の存在を示唆しており、それが他の血糖降下薬と対比してSGLT2阻害薬の処方決定に影響した可能性がある。

さらに、2つの対となるCVD-REAL試験において、一定数のバイアスが役割を果たしているようである。

明らかなバイアスのうちの1つは、選択バイアスである。患者の平均余命が限られているという医師の判断が、薬剤の選択に影響を与えただろうか(すなわち、9ヵ月以内に死亡する可能性が高い患者は、SGLT2阻害薬を処方されなかった可能性がある)。

別の潜在的なバイアスはimmortal timeバイアスであり、このSGLT2阻害薬コホート研究において、SGLT2阻害薬の開始前に他の薬剤が使用された期間が考慮されなかったことを意味するものである(たとえば、参加者がSGLT2阻害薬の追加前にスルホニル尿素薬の投与を受けていた場合、スルホニル尿素薬の投与中に参加者が生存していた[すなわち死亡しなかった]期間はカウントされなかった)。


臨床およびガイドラインへの影響

2つのCVD-REAL試験は、現実には、臨床的な影響をまったく持たない、というのが私の意見である。

実際のところ、CVD-REAL試験の結果は、最近更新された米国およびカナダの臨床診療ガイドラインに影響を与えられなかった
これらのガイドラインは引き続き、SGLT2阻害薬を2次予防集団のみにおいて優先的に推奨している。


結論

この20年間、予防糖尿病学では、臨床的決定の手引きのために、高水準のランダム化比較試験によるエビデンスを循環器学のように信頼してきた。
どのようなエビデンスに基づくかに関するこのパラダイムシフトは、1990年代半ばから後半にかけての、画期的なDCCT試験(1型糖尿病)およびUKPDS試験(2型糖尿病)の発表によって始まり、米国食品医薬品局による心血管アウトカム試験の義務化によって、ここ10年間に加速している。

私の提案は以下のようなものである。
ランダム化比較試験によるエビデンスが、SGLT2阻害薬による心疾患の1次予防に関する重要な課題に明確な回答を与えてくれるまでは、“落ち着いてそのまま続けよう”ではないか。



<番外編>

バルサルタン錠に発がん性物質混入 あすか製薬自主回収

あすか製薬(東京)は6日、2017年まで製造していた高血圧症治療剤「バルサルタン錠『AA』」の4製品を自主回収すると発表した。

薬の原材料に、発がん性があるとされる物質「N―ニトロソジメチルアミン」が混入しているとして、欧州で7月上旬から自主回収が始まったため。

服用した場合、重い健康被害が出る可能性があるが、現時点で被害の情報はないという。

 

薬の原材料となる「原薬」をつくる他社の中国工場の製造過程で、問題の物質が発生したとみられる。

 

「バルサルタン錠『AA』」は、国内では14~17年、あすか製薬と外資系製薬のアクタビスの合弁会社が製造し、病院や薬局約1300カ所に計1300万錠を販売した。

 

あすか製薬は、アクタビスが他社に買収された後に国内販売を中止したが、まだ市中に残っている可能性があるという。

 

厚生労働省によると、問題の中国の工場の原薬が使われた薬は、国内ではほかにはないという。

同省の担当者は「健康への影響は発がん性物質の混入量によって違う。

なぜ混入したかやどれだけの量が混入したか調査結果を報告してもらい、必要があれば対応していく」としている。

2018年07月07日(土) 朝日新聞デジタル


私的コメント;

ちょっとわかりにくい記事ですが、バルサルタン錠「AA」は後発品で、以下のサイトで調べた限りでは現在は発売していないようです。


http://www.okusuri110.jp/cgi-bin/dwm_yaka_list_se.cgi?2149041&%83o%83%8B%83T%83%8B%83%5E%83%93


問題はいつ発売になったかということと、内服していた方への追跡調査が今後行われるかということです。

ジェネリックを推進する国側としては「不都合な事実」としてあまり公表したくニュースでしょう。

先発品やAGを主として使用している当院としては、患者さんへの啓蒙に使えるネタです。

先発品のディオバンに続きジェネリックもか、といったところでしょうか。

さて、ここで思い出されるのが以前問題になったアセトアミノフェン。

中国製の原料(バルク)が混入されて製造停止となったことがありました。

さらにもうひとつブラックなところがあります。

それは降圧剤の中でアムロジピンが配合されている配合剤です。

メーカーに訊ねても製造元を一切教えてくれません。

アイミクスを除いてはジェネリックであることは明々白々なのですが、それを先発品として販売しているのです。

厚労省はどうなっているんでしょうか。

当然のことながら製造元を公表すべきでしょうし、当然ユーザーたる医師や患者には「知る権利」があるはずです。



<きょうの一枚の絵>

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禁煙は重要な心不全リスク低減戦略

禁煙は重要な心不全リスク低減戦略 過去の喫煙はHFリスクには影響を及ぼさない可能性

喫煙と心不全(HF)の関連性は、これまでよく分かっていなかった。
しかし、現在の喫煙、1日当たりの本数および生涯喫煙量(パックイヤー)は初発HFによる入院リスクの増大と有意に関連していることが報告された。
一方、過去の喫煙は初発HFによる入院と関連していなかったことから、禁煙の重要性が浮き彫りとなった。このJackson Heart Study(JHS)の結果は、Circulation誌6月12日号に掲載された。


JHSは黒人の心血管疾患リスク因子を調査する目的でデザインされた大規模プロスペクティブ住民対象観察研究。
ミシシッピー州ジャクソンに暮らす黒人を対象にベースライン時(2000~2004年)に調査を行い、その後3回のフォローアップ診察を完遂した(1回目は2000~2004年、2回目は2005~2008年、3回目は2009~2012年)。

私的コメント
黒人に限定して行われた「大規模プロスペクティブ住民対象観察研究」も珍しいと思われます。
黒人の「定義」はどのようにされたのでしょうか。
衆知のごとく、米国の人種別の人口構成では今やヒスパニックといわれています。
コーカシアンとヒスパニック、コーカシアンと黒人、黒人とヒスパニックとの間で心血管疾患リスク因子が異なるとしたら、人種を無視した米国での大規模臨床研究は虚しいものになるかも知れません。(パンドラの箱?)

 
対象者4129例(平均54歳、63%が女性)のうち503例(12%)が現喫煙者、742例(18%)が元喫煙者、2884例(70%)が喫煙未経験者だった。
CHD/HF既往者およびデータ欠測者を除外し、最終的に3633例を対象として喫煙と初発HFによる入院の関係を調査した。


1~3回目の診察時に初発CHDを有していなかった対象者の中から1092例をランダムに選定し、心臓MRIを撮像して左心室(LV)の心筋重量、容積、変形パラメータを測定した。
さらに、3回目の診察時に測定した体表面積を使ってLV心筋重量および容積を係数化した。LV各部(心尖部、中央部、基底部)の円周方向ピーク中層ストレインを計測し、平均してグローバルストレインを算出した。
ストレイン変数は全てマイナスの値であり、マイナスであるほど円周方向に大きく短縮していることを示す。
大動脈脈波伝播速度も算出した。


血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値は、1回目の診察時に化学発光免疫測定法を使って測定した。


今回の研究では断面解析と縦断的解析の2種類を行った。断面解析では、喫煙状況(現喫煙者、元喫煙者、喫煙未経験者)、現喫煙者の喫煙強度(1日当たりの本数)、生涯喫煙量(パックイヤー)と心臓の構造・機能の関連性を評価した。縦断的解析では、カプランマイヤー曲線を作成し、初発HF回避累積生存率を喫煙状況(現喫煙者、元喫煙者、喫煙未経験者)別、現喫煙者の喫煙強度(1日当たりの本数)別、生涯喫煙量(パックイヤー)別に比較した。


現喫煙者の方が喫煙未経験者より平均LV心筋重量係数が有意に高値であり、平均LV円周方向ストレインが有意に低値だった。
喫煙、喫煙強度および生涯喫煙量は平均BNP高値と関連していた。
対数変換後のBNP値は、喫煙強度および生涯喫煙量の増加と正の相関関係にあった。


中央値で8.0年におよぶ追跡期間中に、初発HFによる入院は147件発生した。
初発HFによる入院の増加と関連していたのは、現在の喫煙、現喫煙者の喫煙強度、生涯喫煙量だった。


今回の研究では、心エコー検査より精度の高い心臓MRIを利用してLVの壁厚、容積、駆出率を評価した点が重要だ、と著者らは指摘している。


また、喫煙の評価尺度全て(喫煙状況、喫煙強度、生涯喫煙量)がBNP値上昇と関連していたことが、今回の研究結果により示された。
LV心筋重量係数とBNP値の上昇は、LV壁応力の増大を反映している。
現在の喫煙、喫煙強度、生涯喫煙量は、LV壁応力の増大を通じてHFリスクを高めている可能性が今回の研究により示されたと、著者らは考察している。


潜在的交絡因子で調整後も過去の喫煙は有害な心臓リモデリング、心機能低下、BNP値、初発HFによる入院と関連していなかったため、禁煙は現喫煙者の心機能低下リスクおよびHFリスクを低減させるための重要な戦略である可能性が示唆された、と著者らは結論付けている。


著者らは今回の研究の限界として、
(1)タバコの種類(タール濃度、メンソールなど)が不明、
(2)ミシシッピー州ジャクソンの黒人のみを対象としたため、他の人種や地域に一般化できない可能性がある、
などを挙げている。


英文抄録

Kamimura, D, et al. Cigarette Smoking and Incident Heart Failure, Insights From the Jackson Heart Study. 

Circulation. 2018;137:2572-82.

http://circ.ahajournals.org/content/early/2018/04/12/CIRCULATIONAHA.117.031912




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全面改訂された心不全診療ガイドライン

全面改訂された心不全診療ガイドライン

予防から緩和ケアまで最新の心不全標準治療示す 心血管既往のある糖尿病ではSGLT2阻害薬がクラスIの推奨に

新しい心不全診療ガイドラインが、今年3月に発表された。従来の急性心不全と慢性心不全のガイドラインを統合、緩和ケアで1つの章を立てるなど、全面的な改訂になった。
発症予防から終末期に至るまで、心不全への対応は長期間かつ多岐にわたる。
その標準治療を示すものとして、注目度は高い。


今年3月に発表された日本循環器学会・日本心不全学会「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」の合同研究班班長を務めた、筒井裕之氏(九州大学循環器内科学教授)は「高齢人口の増加により心不全患者は我が国でも急増しており、その対応には循環器医と実地医家の協力が不可欠となっている。新しいガイドラインでは心不全の推奨される標準治療を具体的に示したので、医療連携や医療チームとして心不全の診療に取り組むときの共通のプラットフォームとして活用してほしい」と話す。


これまで、我が国の心不全に関する診療ガイドラインは、急性心不全(2011年改訂版)と慢性心不全(2010年改訂版)に分かれていた。欧米でも以前は別々に編集されていたが、近年では一連の病態として捉えるようになり、ガイドラインも統合されてきた。
その流れに沿って我が国でも、1つにまとめられた。


4段階に分類されたステージの中でAとBは、実はまだ心不全の症状は出現していない。
高血圧や糖尿病など、心不全のリスクとなる疾患を発症したという段階だ。
ステージAとBの違いは、前者が心臓に器質的な異常は認められないのに対し、後者では例えば高血圧による左室肥大といった異常が認められること。
進行してステージCに至ると心不全の症状が出現し、急性増悪と寛解を繰り返しながら、徐々に身体機能が低下していく。
このような慢性心不全の状態から次第に治療抵抗性となり、難治性や末期の心不全とも表現されるステージDに至る。


心不全の症状が出現していない段階からステージ分類に含めたのは、2001年の米国心臓病学会/米国心臓協会(ACC/AHA)のガイドラインからという。
一度心不全を発症すると、徐々に低下していく身体機能の抜本的な改善は現在の治療ではまだ実現できず、予防に重点を置く必要があるためだ。


筒井氏は「この概念の提唱時は米国でも議論があったようだが、心不全の発症・進展予防の重要性は、時代とともにさらに高まっている。そこで我が国でも、同様な概念を取り入れることにした」と説明する。


ステージCでは、近年の臨床研究の成果を踏まえて、左室駆出率の値によって治療戦略を分けた。


まず、大規模臨床試験のエビデンスも多い「左室駆出率が低下(40%未満)した心不全(HFrEF)」では、ACE阻害薬/アンジオテンシン2受容体拮抗薬(ARB)を基本に、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)を適宜追加する。利尿薬は長期間漫然と使用するのではなく、体液貯留による症状に対して使用するとした。
必要であれば、ジギタリスや血管拡張薬を追加する。非薬物療法である植え込み型除細動器(ICD)や心臓再同期療法(CRT)も、このステージが適応となる。


一方、2016年に欧州心臓病学会(ESC)が提唱した新しいカテゴリーである「左室駆出率が軽度低下(40%台)した心不全(HFmrEF)」は、まだエビデンスがほとんどないため、症例ごとの判断とした。「左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)」も、大規模なランダム化比較試験で有効性が確認された薬物がまだないことから、利尿薬による自覚症状改善と併存症に対する治療を主とした。


ステージDでは、ステージCでの薬物治療を見直しつつ、補助人工心臓なども検討対象となる。
それらの適応とならない場合は、患者の意向も踏まえ、苦痛の緩和を主眼とする緩和ケアに治療の軸足を移すことになる。


心不全発症予防でSGLT2阻害薬の推奨加わる

今回の改訂のトピックスの1つが、心不全の診療ガイドラインとしては欧米に先行して、ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬の推奨が加えられたことだろう。


4章「心不全予防」から、心不全の危険因子となる疾患や生活習慣の中で、「肥満・糖尿病」に対する介入の推奨とエビデンスレベルについて記されている。
まず減量や身体活動度の増加をクラス1(有効であるというエビデンスがある)で推奨。
次いで、心血管疾患の既往がある2型糖尿病に対するSGLT2阻害薬を、同じクラス1で推奨した。


これは、2015年にエンパグリフロジンの心血管安全性を評価したEMPA-REG OUTCOME試験が、2017年にはカナグリフロジンで同様な心血管安全性を評価したCANVAS試験が、それぞれ発表されたことを受けたもの。


EMPA-REG OUTCOMEでは、心血管疾患の既往がある2型糖尿病患者に対するエンパグリフロジンの投与で、心不全入院のリスクが35%有意に減少した。
CANVASでも、心血管疾患の既往がない患者を含めた2型糖尿病患者に対するカナグリフロジンの投与で、心不全入院は33%有意減少した。CANVASでは心血管疾患の既往の有無によらず、リスク減少は同等だった。


「ガイドラインの議論を始めたときはEMPA-REG OUTCOMEの結果しかなかったが、編集期限だった2017年末の半年前、2017年6月にCANVASが発表された。そのため期限ぎりぎりまで議論が続いた。ガイドラインを作っていた2年間で最も大きくエビデンスが変わった領域であり、推奨を作るには日本糖尿病学会とのコンセンサスも必要ということになり、合同研究班に途中から日本糖尿病学会も加わってもらった」と筒井氏は振り返る。


EMPA-REG OUTCOMEとCANVASで試験対象となった患者背景に差はあるが、どちらの試験も心不全入院や主要評価項目(心血管死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合)で同様なリスク減少を示したことから、クラス1の推奨となった。
ただし、同じことが全てのSGLT2阻害薬で期待できるかはまだ不明なことから、現状でリスク減少が示された薬剤名や試験の条件などについて、但し書きを入れることにした。


これに加えて心不全を発症した患者の併存疾患の治療についてまとめた9章「併存症の病態と治療」でも、心不全を合併した糖尿病に対する治療として、SGLT2阻害薬がクラスIIa(有効である可能性が高い)で推奨された。


根拠となるエビデンスは、同じEMPA-REG OUTCOMEとCANVASで心不全を合併した患者が10%程度登録されており、それを対象とした後付け解析でも両試験で共通して、心不全入院のリスク減少といった一定の有効性を認めたためだ。
ただし、「あくまでもサブグループ解析の結果であることから、IIaでの推奨になった」


<番外編>

床屋で血圧は下がるのか?「枠」を超えた医療の提供

私的コメント

薬剤師はその常連客の担当医と相談しながら(あるいはあらかじめ決められたプロトコルに沿って)降圧薬を直接処方」・・・日本では無診療投薬に該当し非現実的です。

また薬剤師には(医師と相談といえども)降圧剤を処方する資格はありません。(医師法違反)

理髪店での血圧測定だけなら、家庭用血圧計を置いておけばいいだけの話であって「薬剤師の介入」に必然性はありません。

理髪師が客に勝手に血圧を測らせて、高い場合には医師への受診を勧めるほうが自然な流れだと思います。

上腕式血圧計(アーム一体型)でも1.5万円ぐらいで購入できるご時世です。

理髪店において置けば、理髪師と客との間での話のタネ(ネタ?)になります。

(その際には、開業医は近隣の理髪店と仲よくお付き合いをしておく必要があります。理髪店に血圧計を寄贈?)


副題の「『枠』を超えた」には、どのような意味が込められているのでしょうか。
また、「床屋」という表現も少し配慮に欠けてはいないでしょうか  




<きょうの一曲>

Katie Melua The Walls Of The World





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ヒト心臓には2種類のマクロファージが存在

ヒト心臓には2種類のマクロファージが存在

マクロファージは、細菌感染や組織障害に対して保護的に働く一方で、マクロファージによりもたらされる炎症が遷延すると心不全などの慢性疾患の原因となる。

この生理的および病的役割の両方をもつマクロファージの由来は、過去40年にわたり「骨髄由来単球が組織に遊走し、変換されることによって産生される」と信じられてきた。

この概念がマウス実験で覆されつつある。


組織には骨髄由来のマクロファージに加えて組織在住のマクロファージがあり、前者は従来の考え通り骨髄単球細胞に由来するが、組織在住マクロファージの由来は「卵黄嚢(yolk sac)から発生初期に組織に遊走し、組織の形成に重要な働きをするとともに、組織で自己複製し成体まで存在し続ける」と考えられるようになってきた。


心臓でも、組織在住マクロファージは胎生期の心筋細胞の増殖、冠動脈の形成に関与し、心臓の中で自己増殖し成体心まで存在し続ける。

房室結節の伝導に関係するマクロファージもこの組織在住マクロファージに該当する。


これらはマウス実験で得られた知見だが、ヒト心臓でもこの新しい概念があてはまることが次の論文で明らかになった。


参考

ヒト心臓には由来と機能が異なるマクロファージが存在する

The human heart contains distinct macrophage subsets with divergent origins and functions

Bajpai G et al. Nature Medicine 2018;5:687-96


心臓には複数のマクロファージが存在する

マウス実験で、心臓に存在する単球とマクロファージは細胞表面抗原のCCR2とHLA-DRの発現によって次の3つに分けられることがすでに示されている。


 単球:CCR2(+)-HLA-DRlow(CCR2発現、HLA-DR低発現)

 骨髄由来マクロファージ:CCR2(+)-HLA-DRhigh(CCR2発現、HLA-DR高発現)

 組織在住マクロファージ:CCR2(-)-HLA-DRhigh(CCR2非発現、HLA-DR高発現)


筆者(Bajpai) らは、ヒトの拡張型心筋症(DCM)、虚血性心筋症(ICM)患者の生検組織を用いてこれらの発現をフローサイトメーターで解析している。

その結果、ヒト心臓にもこれらの3つの単球、マクロファージが存在することが示された。

CCR2(+)マクロファージは線維化領域に局在し、CCR2(-)マクロファージは正常な心筋で主に冠動脈周囲に発現していていた。


フローサイトメーターを用いて、ヒト心臓生検標本でCCR2(横軸)とHLA-DR(縦軸)の発現を解析。

単球・マクロファージは3つのサブタイプに分かれることが観察された。


CCR2(+)マクロファージとCCR2(-)マクロファージの由来

次に筆者らはCCR2(+)マクロファージとCCR2(-)マクロファージの由来を調べるために、女性ドナーの心臓が男性レシピエントに移植された臨床例を使って検討を行っている。

男性だけにあるY染色体をもったマクロファージはレシピエントの男性の骨髄由来、Y染色体をもたないマクロファージは女性の心臓在住マクロファージ、と考えることができる。


CCR2(-)マクロファージにはY染色体はほとんど発現せず、CCR2(+)マクロファージの約30%にY染色体が発現していた。

すなわち、CCR2(+)マクロファージは骨髄由来、CCR2(-)マクロファージは心臓在住マクロファージであることがヒトでも示されたのだ。


CCR2(+)・CCR2(-)マクロファージの機能の違い

筆者らはCCR2(+)・CCR2(-)マクロファージの機能の違いを調べるために、まず遺伝子発現プロフィールを見ている。

CCR2(+)・CCR2(-)マクロファージの遺伝子発現プロフィールを主成分解析(Principle Component Analysis :PCA)すると、両者が大きく異なることが分かる。

CCR2(+)マクロファージにはTNF/NFκb、IL2/STAT5、IL6/STAT3、interferon-γ、低酸素シグナル伝達に関わる遺伝子発現が豊富であり、一方CCR2(-)マクロファージは上皮-間葉転換、筋形成、凝固に関わる遺伝子発現が豊富だった。

この結果は、CCR2(+)マクロファージが炎症に、CCR2(-)マクロファージが心臓発生に関わるとの考えに矛盾しない。


また、房室結節の伝導に関係するナトリウムチャネル遺伝子SCN4AはCCR2(-)マクロファージには豊富に発現しますが、CCR2(+)マクロファージにはほとんど発現しない。


次に実際にマクロファージを単離・培養し、様々な炎症性サイトカインの産生を調べている。


CCR2(-)・CCR2(+)マクロファージ培養培地でのIL1βの定量

また、心不全で左室補助人工心臓(LVAD)を導入した患者35人で、LVAD導入時に採取した左室切片におけるCCR2(+)マクロファージの割合とエコー検査で評価したLVAD導入前後の心機能の変化との相関を調べている。

EFの変化はCCR2(+)と負の相関関係、左室収縮期径の変化はCCR2(+)と正の相関関係を示した。

すなわち、CCR2(+)の存在の割合が心機能改善とは逆相関することが示されたのだ。


おわりに

ヒト心臓においても、マクロファージには2つの主要なサブタイプがあることが分かった。

骨髄由来単球のマクロファージは炎症に関与し、心機能と負の相関を示した。

もう一方の心臓在住のマクロファージは、心臓の正常機能の維持に重要なことが示された。

これら2つを区別する診断技術の開発や、これらを区別して標的化する治療薬の開発などが今後、進むことが期待される。


執筆

東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野教授 古川哲史先生





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高齢者の心房細動で脳梗塞リスクが4倍 

高齢者の心房細動で脳梗塞リスクが4倍

心房細動と脳卒中リスクの上昇との関連を示す報告は多くあるが、多数の後期高齢者(75歳以上)を含む近年の大規模集団からの報告や、脳梗塞、脳出血で分けた病型別の報告はこれまでなかった。

帝京大学衛生学公衆衛生学講座主任教授の大久保孝義氏らは、わが国の後期高齢者を含む高齢者における心房細動と脳卒中のリスクを明らかにすることを目的に、2002年に開始した日本動脈硬化縦断研究(JALS)における65歳以上の高齢者集団において、心房細動(AF)と脳梗塞、脳出血発症との関連を検討し、第60回日本老年医学会(6月14~16日)で報告した。


脳出血リスクは約2倍

JALSは2002年に開始された大規模コホート研究で、58市町村(合併前97市町村)と8職域から計34コホートが参加している。

今回の解析対象は、そのうち脳卒中発症の追跡精度を満たすコホートから、65歳未満の症例を除いた3万404例〔前期高齢者(65~74歳)2万2,485例、後期高齢者7,919例〕。

AFの判定には、ベースラインで測定した安静時12誘導心電図を採用。

脳卒中イベントの発症定義にはWHO-MONICA基準を用い、精度管理委員会で「確実」「可能性高い」「可能性あり」のうち前者2つに該当する症例を、画像診断などにより脳出血、脳梗塞、くも膜下出血、分類不能に分類した。


私的コメント

当然のことですが、慢性心房細動以外に持続性や一過性心房細動も含まれることになります。

 

AFは3万404例中587例(前期高齢者358例、後期高齢者229例)で認められた。

2010年12月31日までの6.7年(中央値)の追跡期間中、脳梗塞は774例(同285例、489例)、脳出血は249例(同117例、132例)で発症が確認された。

 

AF有無別の脳梗塞および脳出血の発症リスク比をPoisson回帰により算出したところ(調整変数:性、年齢、BMI、喫煙歴、心疾患既往歴、腎機能、高血圧・脂質異常症・糖尿病の有無、コホート効果)、脳梗塞の発症リスク比は全対象者で4.39(95%CI 3.40~5.67)、前期高齢者で5.26(同 3.47~7.97)、後期高齢者では3.89(同 2.82~5.37)で、いずれもAFあり群で有意に高かった(P<0.001)。

脳出血の発症リスクはそれぞれ2.02(95%CI 1.06~3.85)、2.20(同 0.88~5.48)、1.79(同 0.72~4.45)で、全対象者においてAFあり群で有意に高かった(P<0.05)。

 

以上のように、AFは約4倍の脳梗塞リスク、約2倍の脳出血リスクと関連していた。

また、年齢区分による有意な交互作用は観察されず、前期・後期高齢者のいずれにおいてもAFが脳出血と脳梗塞の高リスク要因であることが分かった。

後期高齢者を含む大規模集団において、AFと脳出血との関連が報告されたのは今回が初めて。

 

大久保氏はこれらの結果を踏まえ、「脳卒中を予防するため、高齢者におけるAFの適切な管理の必要性が今回の研究によって示された」と結論した。


私的コメント

抗凝固剤や抗血小板剤の服用の有無については検討されているのでしょうか。

もしそうでなければ「約2倍の脳出血リスク」という結論については問題が起きてしまいます。

また、脳出血リスクが増加することについてはどのように考察されているのでしょうか。

出血性梗塞はどちらに分類されるのでしょうか。

脳出血の既往のある心房細動症例に抗凝固療法を行うかどうかも悩ましい問題です。


参考

「最初に脳梗塞を起こした症例の8割以上は再発も脳梗塞だが、脳出血を起こした症例が再度脳出血を起こす割合は半分程度しかない。しかも、再発は初回脳出血発作後1年以内が 多いとされている。したがって初回発作から数年以上経過した時点では、再発は脳梗塞を起こすほうが多 い」(久山町のコホート研究)



<関連サイト>

JALS

http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2002980.html

登録された試験の期間が1985年から2005年に分布しているということは,比較的直近の日本人の状態を知りうるというメリットがあるものと思われる。腎機能と血圧と心血管疾患との関連を見た結果では,見事にeGFR<60mL/min/1.73m²が危険因子であること,eGFRで調整しても血圧が重要な独立した危険因子であることを示している。


WHO Monica Project と Japan Monica

http://jeaweb.jp/newsletters/no21/0819/01.html




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腹部大動脈瘤スクリーニングは有益か

腹部大動脈瘤スクリーニングは有益か/Lancet

腹部大動脈瘤(AAA)スクリーニングは、AAA死亡の減少に寄与していないことが、スウェーデン・イエーテボリ大学の研究チームによる、スウェーデン人を、対象としたレジストベースのコホート研究で明らかにされた。
AAA発症およびAAA関連死亡にみられる大幅な減少を、スクリーニングに関する無作為化試験の結果で評価するのは時代遅れではないかとの指摘があったが、今回の検討で、減少した要因の大半は他の因子によるもので、おそらくは喫煙の減少によることが示唆されたという。


著者は、「ベネフィットは小さく、有益性と有害性のバランスは非常に悪く、スクリーニングの正当性に対する疑念を深める結果であった」とまとめている。
(Lancet 2018.6.16)


クリーニング群vs.非スクリーニング群の疾患別死亡率、罹患率、手術を比較

研究グループは、スウェーデンにおけるAAAスクリーニングの疾患別死亡率、罹患率、および手術に関する影響を推定する検討を行った。
2006~09年にスクリーニングを受けた同国65歳男性コホートを対象に、AAA罹患、AAA死亡、AAA手術に関するデータを集め、年齢で適合した非AAAスクリーニングのデータと比較した。
また、ナショナルデータベースを利用して1987年1月1日~2015年12月31日の40~99歳男性に関するデータも分析し、背景傾向を調べた。


交絡因子の調整は、コホート年、婚姻状態、教育レベル、収入、またベースラインでのAAA診断有無に関するロジスティック回帰モデルから得た傾向スコアを用いた重み付け分析法により行った。
差異に関する調整も、スクリーニング後6年のコホートに残る逆確率を用いた重み付け分析法で行った。
また、一般化推定方程式を用いて、反復測定および重み付けによる分散を調整した。


スクリーニング6年後、死亡減少とスクリーニングに有意な関連みられ

スウェーデン人男性のAAA死亡率(65~74歳男性10万人当たり)は、2000年初期は36例であったが、2015年には10例に減少していた。
死亡率の減少は全国的にみられ、AAAスクリーニング実施の有無に関係していなかった。


スクリーニングの6年後の分析では、AAA死亡率の減少とスクリーニングに有意な関連はみられなかった。
この時点で、AAAスクリーニングを受けた男性が回避可能なAAA死亡は、1万人当たり2例であった。


スクリーニングは、AAA診断のオッズ増大と関連していた。
また、待機的手術のリスク増大や、過剰診断の恐れとの関連(スクリーニング受診1万人当たり49例が認められ、死亡や罹患リスクを増大した回避可能な手術がそのうちの19例に行われていた。


英文抄録

Benefits and harms of screening men for abdominal aortic aneurysm in Sweden: a registry-based cohort study.

M Johansson, et al 

Lancet (London, England). 2018 Jun 16;391(10138);2441-2447. pii: S0140-6736(18)31031-6.

https://pmc.carenet.com/?pmid=29916384&keiro=journal



<きょうの一枚の絵>

リスト  「ドン・ジョヴァンニ」の回想 S.418 ホルヘ・ボレット

https://www.youtube.com/watch?v=brCwrvxic_w&vl=ja






<きょうの一枚の絵>

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クロード・モネ 「ラ・グルヌイエール」 1869年  油彩・画布 
メトロポリタン美術館蔵

https://guchini.exblog.jp/19004232/




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ADAとEASDの合同による「2型糖尿病の高血糖管理に関するコンセンサス・レポート2018」

欧州学会と高血糖治療ガイドラインの改訂案提示

6月22日から26日までフロリダ州オーランドで開催されていた第78回米国糖尿病学会学術集会(ADA2018)で、ADAと欧州糖尿病学会(EASD)の合同による「2型糖尿病の高血糖管理に関するコンセンサス・レポート2018」のドラフトが公開された。

ADAによる高血糖に対する治療ガイドラインといえる文書だ。

薬物治療で第一選択薬はメトホルミンから変更しなかったが、併用薬となる第二選択薬は、併存疾患や治療で重視すること、社会経済的状況などによってそれぞれ異なる推奨を設定した。

7月上旬までパブリックコメントを募り、10月のEASDで正式に発表される予定だ。


血糖コントロールに関する2学会合同でのコンセンサス・ステートメントは2009年が最初で、その後2012年と2015年に改訂されている。

今回は2015年版をベースに、新たなエビデンスや新薬の情報を加えて更新した。


薬物選択について、第一選択薬は引き続きメトホルミンとした。

メトホルミンが初期治療薬として優れていることを示したUKPDS試験はかなり以前の試験ではあるが、有効性、安全性、忍容性、薬剤費、これまでの豊富な臨床経験から、いまだエビデンスは通用すると判断された。


メトホルミンに併用する薬剤は、患者の合併疾患などによって異なる推奨を設定した。

まず動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の既往がある場合は、「心血管疾患(CVD)に対する利益が示されたグルカゴン様ペプチド(GLP)-1受容体作動薬」または「eGFRが保たれていれば、CVDに対する利益が示されたSGLT2阻害薬」を推奨した。

具体的な薬剤名として前者では、リラグルチド、セマグルチド、長時間作用型のエキセナチドを、後者ではエンパグリフロジンとカナグリフロジンを推奨した。


心不全を合併している患者に対しても、メトホルミンの併用薬として「eGFRが保たれていれば、心血管アウトカム試験で心不全のリスク減少を示したSGLT2阻害薬」または「CVDに対する利益が示されたGLP-1受容体作動薬」を推奨。

これらが単剤で効果不十分であれば、両者の併用を考慮するとした。


心不全やASCVDを合併していない患者については、低血糖リスクを重視するか、体重減少または過体重による合併症対策を重視するかで推奨薬剤を分けた。

低血糖リスクを重視する場合は、併用薬としてSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬を横一線で推奨。

一方、体重減少などを重視する場合は、併用薬としてSGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬を推奨した。

どちらか一方で効果不十分の場合は、両剤を併用する。


私的コメント:

SGLT2阻害薬がファーストラインとなることはないとは思いますが、使用頻度が増しているのは確かなようです。

私はひそかにSGLT2阻害薬との併用薬としてチアゾリジン薬に期待していますが、現在のところそういった動きはないようです。

循環器医は、経口糖尿病薬にはASCVDへのエビデンスを求めます。

そういった意味ではメトホルミン、チアゾリジン薬、SGLT2阻害薬が処方される頻度が高いのではないでしょうか。


さらに、「欧州ではあまり問題にならないと思われるが」と前置きされながらも、「臨床的に重視すべき課題がないか、薬剤費が特に問題になる場合」のオプションとして、メトホルミンの併用薬としてチアゾリジン薬またはSU薬を推奨した。


私的コメント

「臨床的に重視すべき課題がない」という理由でのチアゾリジン薬は少し疑問です。


薬物治療以外では、生活習慣改善の中で特に過体重や肥満改善という観点から、個々の患者に合わせた適正な食事指導の重要性が強調された。

医学的な適応は既に出されているステートメントから変わっていないが、BMIが35以上で糖尿病を合併している高度肥満者には代謝手術(肥満手術)を、長期間の体重減少だけでなく糖尿病の寛解が期待できる治療として提示した。


また、患者中心のアプローチに関しては、PDCA(Plan Do Check Action)サイクルをベースにした図を提唱。

(1)合併症など臨床症状の評価

(2)治療に大きく影響する特定の要因の考慮

(3)患者との話し合いによる治療計画の作成

(4)目標設定

(5)実行

(6)継続的なモニタリング

(7)定期的な治療計画の見直し

――というサイクルを回しながら、合併症予防とQOLの維持という究極的な目標を達成するとした。



<きょうの一曲>

ジョルジュ・ムスタキ「シャンソンChansons」

https://www.youtube.com/watch?v=xT4nCZxnmRY


http://chantefable2.blog.fc2.com/blog-entry-358.html




<きょうの一枚の絵>

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ピエール=オーギュスト・ルノワール 「ラ・グルヌイエールにて」1869年 油彩・画布 

スウェーデン国立美術館蔵

https://guchini.exblog.jp/19004232/




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心房細動合併心不全の予後、アブレーションで大幅改善

心房細動合併心不全の予後、アブレーションで大幅改善

心房細動を合併した心不全患者で、種々の理由で抗不整脈薬治療を受けられない場合においても、心房細動に対するカテーテルアブレーションを行うことで、薬物治療のみでのレートコントロールやリズムコントロールに比べ、全死因死亡および心不全悪化による入院の複合リスクは、約4割減少することが示された。
米国・ユタ大学の研究チームが、患者363例を対象に行った無作為化比較試験で明らかにし、NEJM誌2018年2月1日号で発表した。
心房細動を合併した心不全患者は、心不全単独患者よりも脳卒中や心不全悪化による入院、死亡のリスクが高い。心房細動に対するカテーテルアブレーションは、そのほかの心機能は正常で薬物療法が無効の症候性心房細動に推奨されており、これまでの試験で、心房細動合併の心不全患者においてアウトカムを改善することが示唆されていた。


NYHA心機能分類II~IV、左室駆出率35%以下、除細動器植込み患者を無作為化

研究グループは、発作性/持続性の症候性心房細動で、抗不整脈薬が無効、または忍容できない副作用や本人の意思で抗不整脈薬非服用の患者を対象に、試験を行った。


被験者を無作為に2群に分け、臨床ガイドラインに基づく心不全治療に加えて、一方の群には心房細動に対するカテーテルアブレーションを(179例)、もう一方の群には薬物治療によりレートコントロールまたはリズムコントロールを行った(184例)。

 
被験者は、NYHA心機能分類II~IV度の心不全で、左室駆出率が35%以下、植込み型除細動器を装着していた。


主要評価項目は、全死因死亡および心不全の悪化による入院の複合エンドポイントだった。


主要複合エンドポイント、アブレーション群のHRは0.62

中央値37.8ヵ月の追跡期間中、主要複合エンドポイントの発生は、薬物治療群82例(44.6%)のに対し、アブレーション群は51例(28.5%)と、有意に少なかった。


また、全死因死亡についても、薬物治療群46例(25.0%)に対しアブレーション群は24例(13.4%)と、リスクはほぼ半減した。
心不全の悪化による入院も、それぞれ66例(35.9%)、37例(20.7%)、心血管系の原因による死亡は41例(22.3%)、20例(11.2%)と、いずれもアブレーション群が有意に少なかった。



過去の“心房細動に対するリズムコントロールは予後を改善しない”という呪縛を解くことはできるのか?(解説:矢崎 義直 先生)

心不全症例に心房細動の合併が多いことが知られているが、心不全の病態が心房細動を引き起こし、また心房細動自体が心不全の誘因となりうる。
両者は密接に関係しており、心房細動のマネージメントは心不全治療のうえで重要となる。


CASTLE-AF clinical trialは、前向きの無作為比較、多施設共同研究であり、心不全に心房細動を合併した症例において、心房細動に対するカテーテルアブレーション施行群と薬物療法群(リズムコントロールとレートコントロールを含む)を比較し、複合イベント(死亡、心不全の増悪による入院)を1次エンドポイントとした。


対象は、心不全の標準的薬物治療を行ったうえで、EF35%以下、NYHAII~IVの心不全症例だが、NYHAIIの症例が全体の6割を占め比較的軽症例が多い。
さらにICDもしくはCRTD植込み症例に限定し、最終的に363例が登録され、無作為にアブレーション群と薬物療法群に1:1に振り分けられた。
平均観察期間は約37ヵ月と、約3年のフォローとなった。本試験の特徴として、心房細動の再発などのイベントを通常の定期外来だけでなく、デバイスの遠隔モニタリングを使用していることであり、24時間常にイベントを捉え、早期診断、治療の介入が可能となった。


また、持続性心房細動が7割で、平均左房径が約50mmと拡大しており、カテーテルアブレーション成功率はそう高くない症例が多く含まれている。
にもかかわらず、平均1.3回のアブレーション後の60ヵ月時点の洞調律維持は63%と、過去の持続性心房細動に対するアブレーション後の長期成績に比べれば悪くない数字であった。


結果は1次エンドポイント(死亡と心不全入院)はアブレーション群で28.5%と薬物療法群44.6%と比べ有意に少なかった)。
全死亡単独でもアブレーション群が低かったが、心血管死のイベントの少なさが寄与している。
また、EFの改善率もアブレーション群で8%と薬物療法群の0.2%と比べ有意な改善を認めた。


過去に多くの臨床試験が行われ、リズムコントロールがレートコントロールに勝るという証明を試みてきた。
心房細動を維持するより洞調律化したほうが、心不全患者にとっては良いということは理論的には当然と思えるが、洞調律化による予後改善の強いエビデンスは存在しなかった。
本試験は、心房細動合併心不全患者において、アブレーションによるリズムコントロールがハードエンドポイントとしての死亡、心不全入院を改善させた初めての試験となった。

カテーテルアブレーションのクオリティ、デバイスの心不全モニタリングシステムの活用法などが大きく予後に影響してくると考えられ、ただ単純にアブレーションが心不全を改善するということだけをメッセージとして捉えるのは危険である。
しかし、アブレーション治療が今後、心不全マネージメントのうえで大きなkeyとなりうる可能性が示唆された。


メトホルミンのレコメンデーション

メトホルミンのレコメンデーション、認知に課題

メトホルミンの適正使用に関して日本糖尿病学会が2016年に発出したレコメンデーションは、発出から1年では医師・薬剤師の認知は十分とはいえなかったようだ。
長崎大学病院の外来を受診または入院したメトホルミン服用患者(719例)中、レコメンデーションが禁忌とした推算糸球体濾過量(eGRF)30mL/min/1.73m2未満の患者が3.6%(26例)存在し、その中で実際に同薬が中止されたのは2割だったと、第61回日本糖尿病学会年次学術集会(5月24~26日、開催地:東京)で長崎大学病院薬剤部が報告した。


メトホルミン投与による乳酸アシドーシスは、頻度は高くないもののしばしば予後不良となり、我が国でも死亡例が報告されている。
そこで日本糖尿病学会はこれまでに3回、
コメンデーションを発出して注意喚起を行ってきた。

直近の2016年5月のコメンデーションでは、腎機能評価をクレアチニンからeGFRに変更し30mL/min/1.73m2未満を禁忌、30~45mL/min/1.73m2を慎重投与としたほか、75歳以上の高齢者ではより慎重な判断が必要とした。


今回、このコメンデーション発出後の現状を把握するため、後ろ向きの検討が行われた。
コメンデーション発出後の1年間(2016年5月12日~2017年5月11日)に長崎大学病院の外来を受診または入院した患者中、メトホルミン含有製剤が投与されていた患者は719例で、年齢の中央値は64歳(範囲:11~91歳)だった。


719例中594例(82.6%)はeGFRが45mL/min/1.73m2を超えていたが、76例(10.6%)が慎重投与に該当する30~45mL/min/1.73m2で、26例(3.6%)は禁忌となる30mL/min/1.73m2未満だった(残り23例はeGFR未測定)。


以下、eGFRが30mL/min/1.73m2未満だった26例の詳細を分析した。
年齢は70歳以上が14例(53.8%)と半数を占め、うち3例は80歳以上だった。メトホルミン含有製剤の処方区分をみると、入院処方4例(15.4%)、入院時の持参薬15例(57.7%)、外来処方7例(26.9%)だった。
入院処方、外来処方は大学病院の医師の処方薬である一方、持参薬は他院での処方となるが、入院に際して薬剤師が診療録に入力し、院内の担当医の承認を受けていた。


26例中、調査期間内にメトホルミン含有製剤の投与が中止されたのは5例(19.2%)にとどまり、残り21例(80.8%)は投与が継続されていた。
ただし、その中には30mL/min/1.73m2を下回ったのは一時的であり、後に回復したという症例も含まれていた。
eGFRが30mL/min/1.73m2未満だった26例を含め、メトホルミンに関連した副作用の発生はなかった。


担当医の専門領域で分けて継続・中止の内訳を見ると、内分泌代謝を専門とする医師が担当した4例では3例で中止されたが、それ以外の医師が担当した22例では、中止された症例は2例にとどまった。


演者は「少数でも禁忌となる症例に投与されていたことは看過すべきでなく、コメンデーション発出後に院内の委員会などで注意喚起がなされたが、医師や薬剤師に十分伝わっていなかったと考えられる。薬剤師から内分泌代謝を専門としていない医師への情報提供が不足していたことも反省点だ」と分析。


その上で「コメンデーションの積極的な周知だけでなく、院外薬局での調剤時や入院した際の持参薬確認時に、腎機能の確認が重要であることが明らかになった。院外薬局への腎機能の情報提供のためには、お薬手帳だけでなく、長崎県で展開されている医療情報共有システムである『あじさいネット』のようなICTの活用も検討課題になるだろう」とした。

<私的コメント> 
「お薬手帳」は、診察時に提出するように患者には日頃話しています。
当院のみの通院の場合であっても、確認することによって自分の処方を客観視することが出来ます。
また、患者の申告がなくても他の医療機関への通院が判明する場合もあります。
しかし、こういった処方する前に「お薬手帳」をチェクする「習慣」はここ数年前から始めたところで、それまではノーチェックでした。
処方後に院外調剤薬局の薬剤師がチェックするのでは手遅れだからです。(もっとも当院は院内調剤です)
また、薬剤師のチェックも結構いい加減な場合もあって、(例を挙げれば)ロコアテープと消炎鎮痛剤が別々の医療機関で処方されていることもありました。
いずれにしろ、処方する段階でのチェックが一番です。
他の医療機関にかかっていて当院を受診する場合、ほとんどの方は「お薬手帳」を持参されません。
院外調剤薬局の薬剤師は、このあたりの啓蒙を是非やっていただきたいものです。


 

<参考>

メトグルコ  添付文書

禁忌(次の患者には投与しないこと)

(1)次に示す状態の患者〔乳酸アシドーシスを起こし やすい。〕

1)乳酸アシドーシスの既往
2)中等度以上の腎機能障害〔腎臓における本剤の排泄が減少する 。

3)透析患者(腹膜透析を含む)〔高い血中濃度が持続するおそれがある。〕
4)重度の肝機能障害〔肝臓における乳酸の代謝能が低下する。
5)ショック、心不全、心筋梗塞、肺塞栓等心血管 系、肺機能に高度の障害のある患者及びその他 の低酸素血症を伴いやすい状態〔乳酸産生が増加する。
6)過度のアルコール摂取者〔肝臓における乳酸の代謝能が低下する。
7)脱水症、脱水状態が懸念される下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者 (2)重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1 型糖尿病の患者〔輸液、インスリンによる速やかな高血糖の是正が必須である。〕
(3)重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者〔インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤 の投与は適さない。また、乳酸アシドーシスを起 こしやすい。〕

(4)栄養不良状態、飢餓状態、衰弱状態、脳下垂体機 能不全又は副腎機能不全の患者〔低血糖を起こす おそれがある。〕

(5)妊婦又は妊娠している可能性のある婦人

(6)本剤の成分又はビグアナイド系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者


腎機能障害のある患者では腎臓における本剤の排泄が減少し、本剤の血中濃度が上昇する。
投与開始前及び投与中 は以下の点に注意すること。

 1)腎機能や患者の状態に十分注意して投与の適否や投 与量の調節を検討すること。腎機能は、eGFRや血清ク レアチニン値等を参考に判断すること。〔国内臨床試 験における除外基準は、血清クレアチニン値が、成人で は男性 1.3mg/dL、女性 1.2mg/dL以上、小児では血清 クレアチニン値 1.0mg/dL超であった。


2)本剤投与中は定期的に、高齢者等特に慎重な経過観察 が必要な場合にはより頻回に腎機能(eGFR、血清クレ アチニン値等)を確認し、腎機能の悪化が認められた 場合には、投与の中止や減量を行うこと。
 


<きょうの一曲>

Ray Brown Trio - That's All



<きょうの一枚の絵>

ポール-クレー-moonshine-1919_a-G-13393726-8880731

パウル・クレー Moonshine, 1919




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変わる糖尿病腎症の概念

変わる糖尿病腎症の概念、治療も変わる? eGFRの自然史を検討したARIC研究から

研究の背景:蛋白尿陰性で腎不全に至る糖尿病の存在がクローズアップ

糖尿病腎症とは、
①無徴候(あるいは糸球体過剰濾過)
②アルブミン尿
③蛋白尿
④腎不全
⑤透析
―という進展段階をたどるとされる。
しかし世界的には、最近その概念が大きく変わりつつある。
実際、2015年までdiabetic nephropathy(直訳すれば糖尿病糸球体症)という用語を用いていた米国糖尿病学会(ADA)は、2016年以降はdiabetic kidney disease〔直訳すれば糖尿病腎臓病。最近、糖尿病性腎臓病(DKD)の訳語が定着〕と用語を変更し、糖尿病に関連する腎臓病の重要な部分は糸球体の変化にあるが、腎臓全体の変化に目を向けなければならないとしている(Diabetes Care 2016;39:S4-5)。
すなわち、蛋白尿が陰性でも腎不全→透析に至る糖尿病患者の存在を認識しなくてはならないのである。

 
このような患者は、レニン・アンジオテンシン系阻害薬の普及と降圧管理の厳格化により、一度生じた蛋白尿が陰性化しているだけで、本来の典型的なnephropathy(糸球体症)の進展段階を経て、腎不全・透析になっている症例を見ているだけなのかもしれない。

 
しかし、アルブミン尿や蛋白尿といった糸球体の問題を生じずに尿細管の障害などから腎不全・透析になっている患者の存在を否定できないし、そもそもアルブミン尿が陰性であるというだけでは、腎不全への進展を予防し切れるわけではないのである。

 
こうした中、糖尿病における推算糸球体濾過量(eGFR)の自然史を見て、その危険因子の同定を試みたコホート研究の結果がADAの機関誌Diabetes Care(2018年6月1日オンライン版)に報告された。


研究のポイント1:ARIC研究の1万5,517人でeGFRの自然経過を観察

本研究は、米国で実施されているAtherosclerosis Risk In Communities(ARIC)研究の一環として行われたものである。
ARICはその名の通り、アテローム性動脈硬化の危険因子を検討するコホート研究であり、30年に近い歴史を持っている(Am J Epidemiol 1989; 129:687-702)。

 
今回は、第1回訪問(1987~89年)から第5回訪問(2011~13年)での採血のうち、第3回訪問を除いてなされた血中クレアチニン(Cr)の測定結果を用いることとした。
コホート全体1万5,792人のうち、ベースラインのeGFRが15mL/分/1.73m
2未満であったり、eGFRのデータがなかったりするなどの理由で一部を除外し、1万5,517人を解析の対象とした。
また、第1回訪問における耐糖能により、
①非糖尿病
②未診断糖尿病
③診断済み糖尿病
―の3群に分け、各群におけるeGFRの経年変化を追った。
3群の特徴は糖尿病の2群には、非糖尿病群に比較して、やや高齢、高血圧や冠動脈疾患既往がある、BMIが大きい、HDL-Cが低い、世帯収入が低い、学歴が低い、といった特徴が見られた。


研究のポイント2:糖尿病患者のeGFR低下速度は非糖尿病より速かった

eGFRの経年変化を見ると、糖尿病の有無にかかわわらず低下していた。
しかし、糖尿病の状態によってその低下速度は異なり、さまざまな因子で調整後の1年当たりの数値としては、非糖尿病群-1.4mL/分/1.73m
2、未診断糖尿病群-1.8mL/分/1.73m2、診断済み糖尿病群-2.5mL/分/1.73m2であった。

診断済み糖尿病群において、より速くeGFRを低下させる因子を検討したところ、6因子が統計学的に見いだされた。
それを各種因子で調整したところ、別の6因子となった。


私的コメント;
6因子については本文を参照下さい。

なお、Apolipoprotein L1(APOL1)遺伝子は黒人において慢性腎臓病(CKD)の発症リスクに関わることが以前から指摘されている(N Engl J Med 2013;369:2183-2196)。



山田 悟 先生の考察:糸球体症であれ腎臓病であれ、なすべき治療は変わらない

今回の研究では、共変数として取り上げられていないものとして以下の2つが挙げられる。
このことこそ、この10年での糖尿病による腎臓合併症(=DKD)の理解の変化を物語っていると思う。

 
その1つが、蛋白尿、アルブミン尿である。実は、ARIC研究においては、10年前にCKDの発症(eGFR<60mL/分/1.73m
2)に対して、アルブミン尿や網膜症の有無にかかわらず、HbA1cが関与していることが示されていた(Arch Intern Med 2008;168:2440-2447)。
だからこそ、今回の検討では共変数にしなかったのであろう。

 
そしてもう1つ、取り上げられなかったのが、蛋白質摂取量である。
実は、これについてもARIC研究では昨年(2017年)、蛋白質摂取量の多寡がeGFRの変化にかかわっていないことを報告している(J Ren Nutr 2017;27:233-242)。
さればこそ、今回の検討においてやはり共変数にしなかったのであろう。

 
先ごろ刊行された『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018』では2つのメタ解析(BMJ Open 2013;3:e002934PLoS ONE 2015;10:e0145505)を理由に蛋白質摂取制限を推奨している(第3章CQ2)。
しかし、蛋白質摂取制限の有効性に否定的であったPanらのメタ解析(Am J Clin Nutr 2008;88:660-666)をなぜ採用しなかったのかについて記載はない。
また、有名なMDRD試験(Am J Kidney Dis 2009;53:208-217)において示された極端な蛋白質摂取制限による死亡率上昇の懸念(Am J Kidney Dis 2009;53:189-191)についても注意喚起がない。
今後の真摯なる批判的吟味が必要な領域といえよう。

 
一方、今回の検討においても、修飾可能なeGFR低下の危険因子として見いだされたのは、血圧管理、血糖管理、喫煙の3項目であった(人種や遺伝子多型は変更不可能な因子であり、糖尿病治療薬は過去の血糖管理の状況の悪さの反映と思われる)。
よって、糖尿病による腎臓合併症の理解が変化しようとも、われわれが日常臨床でなすべき治療は変わらないようである。

 
なお、日本人糖尿病50人および日本人腎硬化症50人での、eGFRとアルブミン尿の末期腎不全(透析・移植)に至るまでの推移を示した日本大学のデータでは、やはり糖尿病ではアルブミン尿の方が先行しやすいことが示されている(J Diabetes Res 2016;2016:5374746)。
①無徴候(あるいは糸球体過剰濾過)
②アルブミン尿
③蛋白尿
④腎不全
⑤透析
―という進展段階の理解は、少なくともわが国においてはなお成立する。

 
わが国における糖尿病腎症の病期分類や腎症に対する理解は、なお変更せずとも大丈夫なのかもしれない。


執筆

北里研究所病院 糖尿病センター長 山田 悟 先生


<きょうの一曲>

感動の歌 戦争孤児だった少年が歌う平和の歌「イマジン」(日本語字幕)



<きょうの一枚の絵>

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マーク・ロスコ 色層絵画(1950年代半ば頃)



 

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“油"を変えると・・・

油"を変えると,冠動脈疾患死100万件が防げる

米・Tufts Friedman School of Nutrition Science & PolicyのDariush Mozaffarian氏らは,飽和脂肪酸(SFA),ω-6多価不飽和脂肪酸(PUFA),トランス脂肪酸(TFA)の摂取が冠動脈疾患死に及ぼす影響を,全世界の地域,性,年齢,年代別に検討。
その結果,より健康に良い脂質の摂取で年間100万件以上の冠動脈疾患死が防げること,SFAの摂取量抑制よりもPUFAの摂取増を奨励する方が便益は高いことなどをJ Am Heart Assoc(2016; 5: e002891)で報告した。


PUFA不足の影響はSFA高摂取の影響の2倍以上

各国政府はSFAの摂取量抑制に焦点を合わせてきたが,Mozaffarian氏らは「SFA摂取量抑制による心血管面での便益は,過剰なSFAをPUFAに置き換えた場合にのみ認められるが,PUFAの便益は,SFAと精製炭水化物のいずれと置き換えても同等であるとの報告が増えつつある。
今回の研究は,PUFAの摂取不足とSFAの過剰摂取が世界の冠動脈疾患負荷に与える影響を初めて厳密に比較したもの」と述べている。

 
PUFAは,サフラワー油やヒマワリ油,コーン油,ごま油などの植物油,ナッツ類,脂肪の多い魚類などに豊富に含まれる。
一方,SFAは,肉類やチーズなどの乳脂肪を含む製品,パーム油,ココナツ油などに多い。
TFAは,主に酸化しにくいSFAの製造過程で生じる副産物で,パンや菓子類,揚げ物などの加工食品の原料として使用される他,一部の国では料理用油としても流通している。

 
今回の研究では,186カ国の食事,食品流通,加工食品に含まれる油脂に関する調査データに基づき,階層ベイズモデルを用いて,国ごとにSFA,ω-6 PUFA,TFAの摂取量を推算し,前向きコホート研究のメタ解析と2010年のGlobal Burden of Diseases研究データを基に食品中の脂質が冠動脈疾患死に与える影響を検討した。

 
解析の結果,2010年の世界の冠動脈疾患死者のうち,ω-6 PUFAの摂取不足が要因となったものは,71万1,800人〔95%不確定性区間(UI) 68万700~74万5,000人〕,SFAとTFAの高摂取が要因となったものはそれぞれ25万900人(同23万6,900~26万5,800人)と53万7,200人(同51万7,600~55万7,000人)であった。これらを世界の年間冠動脈疾患死者に占める割合で見ると,順に10.3%(同9.9~10.6%),3.6%(同3.5~3.6%),7.7%(同7.6~7.9%)となる。

 
全体の80%の国で,ω-6 PUFA摂取不足に関連した冠動脈疾患死の割合は,SFA高摂取に関連した冠動脈疾患死の割合の2倍以上(エチオピアやパキスタンなどでは15倍超)であった。
このことは,ω-6 PUFAを豊富に含む植物油の摂取増を奨励する政策を取る方がSFA摂取量抑制よりも公衆衛生上の便益が高い可能性を示している。


例外として,キリバスやソロモン諸島,フィリピン,マレーシアなどの熱帯諸国では両者の差は小さかったが,これはSFAが豊富なパーム油やココナツ油を大量に消費していることと関係している。
同氏は「今回の解析モデルは,パーム油などに含まれるSFAと動物性SFAによる冠動脈疾患死リスクは同等と仮定している。しかし,熱帯地方で多用されるこれらの植物油による冠動脈疾患死リスクを具体的に検討した長期試験はなく,これらの国々におけるSFA高摂取と冠動脈疾患死との関連については慎重に解釈すべきである」と述べている。


低~中所得国ではTFA関連の冠動脈疾患死が増加

TFAの高摂取に関連した冠動脈疾患死の割合が高かったのは,エジプト,パキスタン,カナダなどであった。
Mozaffarian氏によると,TFAは調理済み食品やファストフードを多く消費する高所得国のみの問題と捉えられることが多く,実際,米国やカナダではTFA高摂取は今なお重要な問題である。
しかし,西側諸国全体ではTFAの規制などを通じてTFA高摂取に関連した冠動脈疾患死は減少しつつある。

 
実は,安価なTFAはインドや中東諸国などの低~中所得国でも家庭や大衆食堂で料理油として広く使用されている。
この影響は今回の年代別解析結果にも反映されており,1990年と比べ2010年にはω-6 PUFA摂取不足とSFA高摂取に関連した冠動脈疾患死の割合はそれぞれ9%と21%低下しているのに対し,TFA高摂取に関連した冠動脈疾患死の割合は4%上昇していた。
原因は低~中所得国の多くにおけるTFAに関連した死亡の増加である。

 
同氏らは「今回の知見は世界全体の一般市民と行政の双方にとって重要であり,冠動脈疾患死の抑制に対処する際,栄養面での優先課題を判断するのに役立つであろう」と述べている。



<きょうの一枚の絵>
2018年06月22日22時13分41秒 のコピー 2

パウル・クレー 「らくだ(リズミカルな樹木の風景のなかの)」 1920年作

(ノルトライン=ウエストファーレン美術館蔵)


クレーは画面を木平に区切って幾つもの層を作り、そこに文字を書き込んだり、色分けをしたりして独特のリズムやメロディーを生むやり方を考え出した。

クレーの絵をみていると、その線の動きや色彩のとり合わせが全くみる者の意表をつく独自性をもっているのに感心してしまう。

線や色彩がそれぞれ固有の生命をもっており、平面の上で自由に運動を始めたかのように感じられる。

クレーは絵というものが対象、例えば果物、人物、動物、花、樹木、その他のものを、それらしく図示してみせることではなく、絵そのものが独白の対象そのものであると考えていた。

 

ここでは無造作に引いた水平線の層の間に様々な色の丸い図形や線が置かれ、それら音符のような、樹木のようなものの中から駱駝の姿が浮き上がってくる。

浮き上がったと思うと地の平面の中に融けて紛れ込んでしまう。

魔法使いクレーの面目躍如の作品である。

                (「実験治療」No.651 1998 表紙)

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ESH 2018 基準値は140/90に据え置き

基準値は140/90に据え置き、降圧目標を強化 日本のガイドライン改訂への影響必至

スペイン・バルセロナで6月8日から11日まで開催された第28回欧州高血圧学会(ESH 2018)で、欧州心臓病学会(ESC)とESHによる新しい高血圧治療ガイドライン(以下、ESC/ESH2018と表記)が発表された。
高血圧の基準値は従来通りの140/90mmHgに据え置かれたが、降圧目標は忍容性があれば、ほぼ全ての患者で130/80mmHg未満に下げるよう求めた。
基準値を維持しつつ積極的な降圧治療を目指すという折衷的な内容となった。


「高血圧の定義は、従来の基準値から変えない」と、登壇したKrzysztof Narkiewicz氏(ポーランド・グダニスク医科大学)が発表した瞬間、満席の会場内にはどよめきが起こり、発表スライドを写真に収めるシャッター音が鳴り響いた。
欧州の新ガイドラインでは、米国とは異なる高血圧基準値の方針を打ち出したからだ。

 
2017年に改訂された米国の高血圧治療ガイドラインでは、高血圧基準値を収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)ともに従来より10mmHgずつ低い130/80mmHgに引き下げた。
そのため、2013年以来5年ぶりの改訂となる欧州の高血圧治療ガイドラインの動向が注目されていたが、基準値は従来と同じ140/90mmHgを維持した。
この診断基準は、24時間平均血圧で130/80mmHg、家庭血圧では135/85mmHgに相当する。
血圧値の分類も前回ガイドラインを踏襲した。


私的コメント;
外来血圧と家庭血圧。
拡張期血圧はともかく収縮期血圧に関しては10mmHgぐらいの差がある、というのが臨床医としての実感です。
実際に、日々血圧を測定している患者さんも同様に感じています。
 

一方、降圧目標は130/80mmHg未満に下げた。

私的コメント;
要するに「基準値」と「降圧目標値」を使い分けています。


65歳未満の全ての患者に対して、最初の目標として140/90mmHg未満を目指すとしているが、忍容性があればSBPで120mmHg以上130mmHg未満、DBPで70mmHg以上80mmHg未満を降圧目標とした。
ただし、SBPで120mmHg未満への降圧は推奨していない。
また65歳以上の高齢者については、まず140~150/90mmHgへの降圧を目指し、忍容性があれば130~140/70~80mmHgを降圧目標としつつも、フレイル(虚弱)の程度や生活自立度など患者の状態を考慮して、実年齢だけで治療方針を緩めないとした。

 
新ガイドラインは大部分の患者に対して、高血圧基準値を据え置きつつも降圧目標を下げ、積極的な血圧コントロールを目指す方針だ。
その根拠としたエビデンスは、既に報告されているランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスで、130/80mmHg未満への降圧を達成した場合、より緩やかな降圧と比較して脳卒中、冠動脈疾患、心不全、心血管死亡、全死亡のリスクがいずれも有意に低下したという報告だ。また、治療開始時のSBPが130~139mmHgの患者が10mmHgの降圧を行った場合、各リスクが有意に低くなるとのメタアナリシス結果もエビデンスとしている。


欧州では、現状降圧治療を受けている患者のうち、従来の降圧目標である140mmHg未満に達している患者が半数に満たない。
血圧コントロール率の改善に向けて、ESC/ESH2018では薬物治療へのアドヒアランスの低さを課題として挙げた。
また、長期にわたる血圧コントロールを目指す上で、看護師や薬剤師を含むチーム医療が果たす役割の重要性を強調した。


診療室外血圧重視の姿勢

ESC/ESH2018での血圧測定法は、診療室血圧は1~2分の間隔を置いて3回測定するとした。
白衣高血圧や仮面高血圧が疑われる場合には、24時間血圧や家庭血圧を測定することを推奨するとし、従来より診療室外血圧を重視する姿勢だ。


一方、120mmHg未満への厳格降圧の有効性を示したSPRINT試験で用いられた自動診察室血圧測定法(AOBP)は、採用しなかった。AOBPは他のRCTでは使用されていない。
また、白衣高血圧の影響を受けないことから診療室血圧よりも5~15mmHg低い血圧値を示すとされる。
そのため、SPRINT試験での厳格降圧群と標準降圧群は、それぞれ診療室血圧のSBPで130~140mmHg程度と140~150mmHg程度への降圧に相当し、120mmHg未満への降圧が有用との結論には至らないとの見解だ。


ESH 2018の会場で発表を聞いた帝京大学衛生学公衆衛生学主任教授の大久保孝義氏は、「SBPで120mmHg以上130mmHg未満という“降圧目標域”が示されたのは斬新だった」と語る。
また「狭い範囲への厳格な降圧治療には、家庭血圧の活用が必要になるだろう」(大久保氏)と、家庭血圧の重要性がさらに高まるとの見解を示した。
自治医科大学内科学講座循環器内科学部門教授の苅尾七臣氏も、新ガイドライン発表で診療室外血圧の重要性が強調されていた点を指摘し、「仮面高血圧や白衣高血圧が見られる患者への個別の対応や、24時間血圧のコントロールがますます重要になるだろう」と話す。


治療開始時から降圧薬2剤併用を推奨

ESC/ESH2018の共同執筆責任者であるBryan Williams氏(英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)が「大きな飛躍だ」と強調した変更点は、大部分の患者に対して薬物療法の開始時から降圧薬2剤の併用療法を推奨している点だ。

私的コメント
「薬物療法の開始時から降圧薬2剤の併用療法」についてはやはり問題が多いのではないでしょうか。


従来のガイドラインではアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、カルシウム(Ca)拮抗薬、利尿薬、β遮断薬のいずれか1剤の使用を推奨していた。
ESC/ESH2018では、初期治療からレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬(ACE阻害薬またはARB)およびCa拮抗薬または利尿薬の2剤を合剤で服用することを推奨する。
2剤で十分な降圧効果が見られない患者に対してはRAS阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬の3剤の合剤を推奨し、さらに降圧が困難な治療抵抗性高血圧患者には3剤にスピロノラクトンなどの他剤を追加する。


以上が薬物療法の中核的な戦略で、一般患者だけでなく、高血圧性臓器障害、脳血管疾患、糖尿病、末梢動脈疾患の合併症がある場合にも適用する。
ただし、単剤での降圧目標達成が期待できるグレード1高血圧患者や、緩やかな降圧が望ましい高齢者やフレイル状態の患者に対しては、単剤療法を検討する。
β遮断薬については、心不全、狭心症、心房細動、心筋梗塞既往のある患者や妊娠中の女性など、特定の状況下では使用を検討する。


治療初期からの併用療法を推奨している背景には、従来単剤療法を行ってきた患者の多くが、降圧目標を達成できていないのにもかかわらず、併用療法に進まず単剤療法にとどまっている現状への問題意識がある。
また、服用する錠剤の数とアドヒアランスの低さに有意な相関があるとの研究報告もある。
合剤の使用によって患者の負担軽減と服薬アドヒアランスの向上を目指しつつ、降圧効率の高い併用療法を早期から行うことで積極的な血圧コントロールを目指す姿勢だ。


薬物療法の対象としては、まず正常高値血圧(130~139/85~89mmHg)以上の全患者に対して生活習慣改善指導を行った上で、グレード2および3高血圧(160/100mmHg以上)の全患者、グレード1高血圧(140~159/90~99mmHg)で心血管疾患などの合併症のあるハイリスク患者には、直ちに降圧薬治療を行う。
グレード1高血圧で低~中リスクの患者に対しては、従来のガイドラインでは薬物療法を検討するとの表現だったが、ESC/ESH2018では、3~6カ月の生活習慣介入で血圧がコントロールされない場合に薬物療法を推奨している。
正常高値血圧の患者は、従来は降圧薬の処方を非推奨としていたが、ESC/ESH2018では心血管疾患や冠動脈疾患の合併症があり心血管リスクが高い患者には薬物療法を検討する。


ESC/ESH2018での薬物治療方針について、「作用機構の異なる2つの降圧薬の併用は、少量でも効果を得やすく降圧効率が良い。合剤を使用することでアドヒアランスの改善も期待できる」と語るのは、来年改訂予定の日本の高血圧治療ガイドライン(JSH2019)の作成委員長を務める梅村敏氏(横浜労災病院病院長)だ。
治療開始時から合剤での併用療法を推奨している点について梅村氏は、「副作用が出た場合にどの降圧薬が原因なのかすぐには分からないというデメリットはあるが、それ以上に降圧目標達成率の向上を重視した方針だ」と分析する。


苅尾氏は「合剤の使用や併用療法を採用した点は評価できる一方、全患者に初期から2剤を併用する上では注意が必要」と指摘する。
治療開始時から2剤を併用し早期に降圧効果が見られる患者の中には、急激な降圧で体調不良を訴える患者や、すぐに降圧薬の服用をやめてしまう患者もいる。
苅尾氏は「患者ごとに柔軟な降圧薬処方を行い、状態に応じて2剤併用、3剤併用、他剤の追加まで躊躇せず降圧治療を進めるのが望ましい」との考えだ。


その他の変更点として、腎デナベーションをはじめとするデバイス治療は原則として非推奨とした。
従来のガイドラインでは、薬物療法での効果が見られない場合にデバイス治療を検討し得るとしていたが、ESC/ESH2018では、安全性と有効性を示すエビデンスが今後さらに示されない限り、臨床試験やRCT以外でのデバイス治療は推奨していない。


JSH2019への影響は

2019年には日本の高血圧治療ガイドラインの改訂(JSH2019)が予定されており、欧州の新ガイドラインの動向が注視されていた。
旭川医科大学循環・呼吸・神経病態内科学分野教授の長谷部直幸氏は「基準値を維持しつつも、降圧目標を下げて米国に近い治療方針を示した考え方は、日本のガイドライン改訂でも参考になるだろう。ただし、基準値と降圧目標が異なるのは分かりにくい側面もあるので、さらなる議論が必要だ。JSH2019の議論に欧州の新しいガイドラインが与える影響は大きい」と話す。


苅尾氏も「基準値引き下げによる社会的影響や、国内の血圧コントロール率が低い現状を考慮すると、欧州の方針はJSH2019でも現実的な路線」との考えだ。
アジア人では脳卒中や非虚血性心疾患のリスクが高く、高血圧が及ぼす悪影響は欧米以上に大きい。
一方、仮に高血圧基準値を130/80mmHgに下げると、日本の高血圧患者は約4300万人から約6300万人まで増加する。
さらに、現状では降圧目標に達している患者は1000万人程度にすぎない。
苅尾氏は、SBPが130mmHgを超えた患者ではそのままSBP140mmHg以上まで高血圧が進展する場合が多いと指摘。
「特に若年患者や肥満患者は、SBPが130mmHgを超えたら十分にリスクが上昇していることを自覚し、直ちに生活習慣改善を開始するのが望ましいだろう」(苅尾氏)。


ESC/ESH2018の全文は、8月にドイツ・ミュンヘンで開催されるESC 2018に合わせて論文として発表される。
第41回日本高血圧学会総会(旭川市、9月14日~16日)では、JSH2019における高血圧基準値や降圧目標の方向性に関して意見が交わされる予定だ。
基準値を維持しながらも降圧目標を下げて積極的な降圧治療を目指すという、複雑ながらも現実的な方針を欧州が打ち出しただけに、日本でのガイドライン改訂に向けての議論は今後ますます活発になりそうだ。


 

<きょうの一曲>

A White Shade of Pale-Halie Loren (Procol Harum)


 



 

冠動脈疾患ではDBP重視の降圧を

冠動脈疾患ではSBPよりDBP重視の降圧が有効

高血圧と診断されたことはないものの安定狭心症のために1剤以上の降圧薬を服用している、血圧140/90mmHg未満の安定冠動脈疾患患者約6000例の追跡調査から、拡張期血圧(DBP)が80~89mmHgにあると心血管リスクが上昇する一方、収縮期血圧(SBP)が130~139mmHgであっても心血管リスクは高まらないことが示された。
降圧目標としてはSBPで130mmHg未満よりもDBPで80mmHg未満を重視する方が冠動脈疾患患者に対しては有効な可能性がある。
フランスの研究チームが第28回欧州高血圧学会(6月8~11日、開催地:スペイン・バルセロナ)で報告した。


2017年に改訂された米国の高血圧治療ガイドラインでは、高血圧の基準値が従来よりSBP、DBPともに10mmHgずつ低130/80mmHgに下げられた。
これに従うと、米国では、SBPが130~139mmHgまたはDBPが80~89mmHgにある、安定狭心症のために降圧薬を服用している冠動脈疾患患者は、130/80mmHg未満を目標とした降圧治療の対象となる。
演者は、従来のガイドラインでは高血圧に分類されなかった血圧130~139/80~89mmHgの安定冠動脈疾患患者では、120~129/70~79mmHgの患者と比較して心血管リスクが上昇するのかを、
CLARIFY研究に登録されたデータを用いて検討した。


CLARIFY研究は、45カ国で通常治療を受ける安定冠動脈疾患患者を対象として、2009年11月から2010年6月にかけて行われた前向き登録研究だ。
CLARIFY研究に登録された患者の中で、高血圧の既往がなく、血圧が140/90mmHg未満で、狭心症治療のために1剤以上の降圧薬を処方されていた安定冠動脈疾患患者5956人のデータを用い、5年間における予後について後ろ向きに検討した。
心不全の合併症がある患者は除外した。


Cox比例ハザードモデルを用いて、追跡期間内での平均血圧と心血管イベントとの関係性を評価した。
対象者5956例をSBPについては120mmHg未満、120~129mmHg、130~139mmHgの3グループに、DBPについては70mmHg未満の3グループに分けた場合の予後をそれぞれ検討した。
主要評価項目は心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合アウトカム、副次評価項目は上記3つの単一項目とした。


その結果、SBPが130~139mmHgの患者グループでは、120~129mmHgの患者グループと比較して主要評価項目のリスクには有意差が見られなかった。
一方、DBPが80~89mmHgの患者グループでは、70~79mmHgの患者グループと比較して主要評価項目のリスクが有意に高かった。
同様の結果は、副次評価項目である心血管死亡と脳卒中それぞれについても示唆された。
SBPが120mmHg未満の患者については、いずれの評価項目に対してもリスクの上昇は認められなかった。


以上の結果から、従来の基準値では高血圧と診断されなかった安定冠動脈疾患患者(140/90mmHg未満)において、DBPが80mmHg以上であれば心血管リスクが高まることが示された。
一方、SBPが130mmHg以上であっても心血管リスクの上昇は認められなかった。
演者は「冠動脈疾患患者は低いDBPを降圧目標とすることが有用である」と結論付けた。
 

<私的コメント>
交絡因子というよりは冠動脈疾患の最大の原因である脂質異常については統計処理の際に配慮されているのでしょうか。
脂質異常のない安定冠動脈疾患患者が対象なら問題はないのですが除外されたのは「心不全の合併症がある患者」のみだったようです。
また、心不全の定義も不明ですが、どうして心不全が除外されたのかもよく理解出来ません。
そして何よりも血圧測定値はどの血圧値が採用されたのでしょうか。 
CLARIFY研究をしっかり読んでみたいと思います。 



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米国臨床内分泌学会が脂質異常症管理・心血管疾患予防GL 2017を策定

"Extreme risk"群を新設、LDL-C目標値を提示 米国臨床内分泌学会が脂質異常症管理・心血管疾患予防GL 2017を策定

米国臨床内分泌学会(AACE)と米国内分泌学会(ACE)は、脂質異常症管理と心血管疾患予防に関する臨床ガイドライン(GL)2017を策定した。
動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクが最も高い群を新たに"extreme risk"群と定義してLDLコレステロール(LDL-C)の目標値を55mg/dL未満とするなど、患者のベネフィット増大を目指した強力な治療・介入を推奨した。同GLの全文はEndocr Pract〔2017; 23(Suppl 2):1-87〕 に掲載され、AACEの第26回年次学術臨床会議(5月3~7日、米オースチン)で発表された。


hs-CRPやCACスコアも層別化に有用

AAEC/ACEは、ASCVDリスクを基本的にリスク因子の数および10年以内のASCVD発症リスク(Framinghamリスク評価ツール、Reynoldsリスクスコアなどで算出)を基準として層別化し、LDL-C、non-HDL-C、アポリポ蛋白B(Apo B)の治療目標値を提示しているが、同GLでは4つのリスク分類(low risk、moderate risk、high risk、very high risk)に新たに"extreme risk"を加え、より厳格な脂質目標を設定した。

 
今回GLではextreme risk群を①LDL-C 70mg/dL未満達成後の進行性ASCVD患者②ASCVDと診断されている糖尿病、ステージ3/4の慢性腎臓病(CKD)、または家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体(HeFH)の患者③若年で心血管疾患早期発症歴を有する患者―とした。同群に対する具体的治療目標として同GLでは、LDL-C 55mg/dL未満、 non-HDL-C 80mg/dL未満、アポリポ蛋白B(ApoB)70mg/dL未満を推奨している。


また、同GLでは、ASCVDリスクの層別化と治療強化の必要性判定に際しては、冠動脈カルシウム(CAC)スコアが有用と報告されており(推奨度B)、頸動脈内膜中膜厚(CIMT)も検討に値する(B)と指摘。
標準的評価法でボーダーラインにあるケースなどでは高感度CRP(hs-CRP)によるリスク層別化を推奨している(B)。


エゼチミブやPCSK9阻害薬の併用も

治療薬の第一選択はスタチンだが、スタチン療法でLDL-Cの目標値を達成できない患者では、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬であるエゼチミブ、あるいはPCSK9 阻害薬の追加も検討対象となる。

 
エゼチミブは特にスタチン不耐例でのLDL-CおよびApo Bの低下を目的とした単剤での使用が考えられる(B)。
また、不耐例でなくてもLDL-Cの低下とASCVDリスクの低減をさらに促す目的で、エゼチミブをスタチンと併用することも可能である(A)。

 
PCSK9阻害薬については、FH患者のLDL-C低下を目的としたスタチンとの併用が検討されるべきである(A)。
加えて、最大耐用量のスタチンでもLDL-Cまたはnon-HDL-Cの目標を達成できない心血管疾患患者ではPCSK9阻害薬を検討すべきである。ただし、スタチン不耐例を除きPCSK9阻害薬の単独投与はすべきではない(A)としている。


HRTによる脂質異常症治療は非推奨

同GLは女性患者ではASCVDリスクを評価し、生活習慣への介入で十分な効果が得られなければ薬物療法を実施するよう勧めている(C)。
加えて、閉経後女性に対する脂質異常症治療を目的としたホルモン補充療法(HRT)は推奨されない(A)としている。

 
成人後の心血管疾患を長期的に予防するため、同GLでは小児・青年に対してもできる限り早期から脂質異常症の診断・管理を行うよう勧めている。
脂質異常症と診断され、生活習慣改善による効果が見られない場合には、患者が10歳以上であることを前提に薬物療法の検討を推奨しており、
①LDL-C 190mg/dL以上
②同160mg/dL以上で強力な介入後も2つ以上の心疾患リスク因子が存在する
③55歳以下でのASCVD発症の家族歴がある
④過体重・肥満あるいは他のインスリン抵抗症候群の要素が認められる場合に特に推奨される
―としている(D)。


同GL策定委員会の委員長でAACE会長のPaul S. Jellinger氏は「LDL-Cを53mg/dLまで低下させることが高リスク群において心血管有害アウトカムの低減につながることがIMPROVE-IT試験で初めて示された。
今回、同試験に組み込まれなかった高リスク症例も検討対象に含めることで幅広い知見を得ることができた。
これにより、GLで新たなリスク分類を提示し、革新的な治療や介入を推奨することができた」とコメントしている。



<関連サイト>

AACEの新脂質ガイドライン



<きょうの一曲>

ヘイリー・ロレン/ア・ウーマンズ・ウェイ



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頸動脈プラークの進展が循環器病発症を予測

吹田研究が世界に示した頸動脈エコーの意義 頸動脈プラークの進展が循環器病発症を予測

国立循環器病研究センター予防健診部医長・小久保喜弘先生が書かれた記事です。

 
われわれは、地域住民を対象にした吹田研究において、頸動脈プラークの進展が循環器病〔脳卒中、冠動脈疾患(CHD)〕の発症に関連することを世界で初めて明らかにした(J Am Heart Assoc 2018;7:e007720)。
この研究のポイントと臨床的意義について解説したい。


研究の背景:現行GLでは「根拠がないので勧められない」

頸動脈エコーは、頸動脈壁の内膜と中膜の複合体の厚さ(intima-media thickness;IMT)を定量的に測定する検査である。

 
IMTと循環器病との関連を検討した代表的な研究としては、PROG-IMT共同研究による16論文のメタ解析がある。
それによると、総頸動脈平均IMTと循環器病の発症に関連が見られたが、総頸動脈平均IMTの進展と循環器病の発症リスクとの間には関連が見られなかった(Lancet 2012;379:2053-2062)。

 
日本脳神経超音波学会によるガイドライン(GL)『超音波による頸動脈病変の標準的評価法 2017』では、IMTを予後指標の代用マーカーとすることについて、一般住民に対しては「C2:根拠がないので勧められない」となっている。


研究のポイント: 総頸動脈最大IMT 1.1mm超群で発症リスク増加

今回の吹田研究では、1994年4月~2001年8月に健診時に頸部超音波検査を実施し、追跡可能な4,724人を解析対象とした。
頸部超音波検査は総頸動脈、分岐部、内頸・外頸動脈の測定可能な全ての領域を計測した。

 
平均12.7年の追跡期間中に脳卒中発症が221人、CHD発症が154人で観察された。
総頸動脈平均IMT、総頸動脈最大IMT、全頸動脈最大IMTのいずれも、大きいほど循環器病発症リスクが高かった。
10年後のCHD発症リスクを予測するアルゴリズムである「吹田スコア」(下記関連リンク参照)に各種頸動脈IMT値を加え、C統計量と純再分類改善度を用いて検討すると、総頸動脈と全頸動脈の最大IMTで有意な予測精度の向上が認められた。

 
次に、総頸動脈最大 IMT1.1mm超を頸動脈プラークと定義し、ベースラインで頸動脈プラークを有さない追跡可能な2,722人に対して、頸動脈エコー検査を2年ごとに行って2005年3月まで追跡したところ、193人が追跡中に新たに頸動脈プラークに進展した。
それ以降2013年12月(平均8.7年の追跡期間)までに、脳卒中69人、CHD 43人の発症が観察された。
頸動脈プラークに進展した群では進展しなかった群と比べて、循環器病と脳卒中の発症リスクの上昇が見られた。


さらに、追跡期間5年当たりに総頸動脈最大IMTが 1mm進展(肥厚)すると、循環器病発症のハザード比(HR)は2.9、脳卒中発症のHRは3.1と有意なリスク上昇を示したが、全頸動脈最大IMTが1.7mm進展する場合の循環器病の発症リスクは有意でなかった。


なお、図1、2でCHDのハザード比が有意でなかったのはCHD発生数が少ないためで、傾向性は認められている。

 
また、追跡期間5年当たりの総頸動脈最大IMTの進展が最も大きかった群(上位25%、第4四分位)と最も小さかった群(下位25%、第1四分位)を比較すると、5年間に両群とも糖尿病の増加、喫煙率の低下が見られた。
一方、最も小さかった群では、高コレステロール血症治療薬(主にスタチン)および降圧薬の服用率の上昇、過剰飲酒の減少、拡張期血圧の低下が見られ、最も大きかった群ではBMIの増加が見られた(表)


研究の臨床的意義:集約的で有効な予防法となる

今回の研究により、循環器病の予防における頸動脈エコー検査の意義を示すことができたと考えている。
すなわち、頸動脈エコー検査を実施して、分岐部や内頸・外頸動脈の狭窄や潰瘍などを確認し、総頸動脈最大IMTが1.1mmを超えるかどうかを判定することが集約的で有効な予防法となる。
今後、頸動脈硬化症のリスクスコアを開発することが可能となった。


<きょうの一曲>

Haydn: Symphony No. 100 (Military), Klemperer & The Phil (1965) ハイドン 交響曲第100番「軍隊」クレンペラー



<きょうの一枚の絵>


2018年06月22日21時57分42秒
パウル・クレー 「魚のイメージ」 1925年 


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NOACのアドヒアランス不良

NOACのアドヒアランス不良はwarfarinよりもAFでの有効性を損なう

心房細動(AF)患者の“リアルワールド”データによる新規経口抗凝固薬(NOAC)とwarfarinの比較が、臨床試験の結果を覆すことになるとは誰も予想していなかった。

決定的な結果ではないとはいえ、それが、大規模だが高度に選択された、2015~16年の間に米国で非弁膜症性AFに対しNOACまたはwarfarinを投与された患者コホートの管理データ解析において明らかになったことである。

ガイドラインを変更するには多くの限界があり過ぎるものの、おそらく臨床診療に有益な教訓を与える本解析では、NOAC処方群と比較し、warfarin処方群においてわずかではあるが有意な血栓塞栓イベント発生率の低下が認められた。

これは驚くべき結果であり、これらの2種類の治療法を非弁膜症性AFにおいて比較したランダム化試験において、warfarin処方群と少なくとも同等であったNOACの有効性アウトカムと相反する結果である。

しかしながら、重要な安全性エンドポイントである出血性脳卒中およびその他の出血性合併症の発生頻度は、全体的にNOAC処方群においてより低く、ランダム化試験の結果と一致していた。


特筆すべきことに、8万例超における本解析では、NOAC処方群の約4分の1とwarfarin処方群の3分の1超で、経口抗凝固薬(OAC)レジメンへのアドヒアランスが不良であったことが明らかになった。

アドヒアランス不良とは、患者が適正用量を服用したのが処方期間のうち日数にして40~80%のみであったことを意味する。処方期間の80%超にわたって適正用量を服用した場合はアドヒアランス良好とした(アドヒアランスが40%未満の患者は解析から除外された)。

NOACには、dabigatran(商品名:Pradaxa、Boehringer Ingelheim)、rivaroxaban(商品名:Xarelto、Bayer/Janssen Pharmaceuticals)、apixaban(商品名:Eliquis、Bristol-Myers Squibb/Pfizer)、edoxaban (商品名:Savaysa/Lixiana、Daiichi Sankyo)が含められた。
本解析では、これらのNOACをまとめてwarfarinと比較している。

これらの薬剤のうちの1種類またはwarfarinを処方された患者において、適切なレジメンへのアドヒアランスが良好であったかどうかが予後に大きな影響を与えたが、その内容は必ずしも予想どおりではなかった。

アドヒアランス不良であったNOAC処方患者またはwarfarin処方患者は、アドヒアランス良好群と比較し、血栓塞栓イベントおよび脳卒中の発生率が高かった。しかし、アドヒアランス不良のNOAC処方患者は、アドヒアランス不良のwarfarin処方患者と比較し、その両方の発生率がより高かった。

またアドヒアランス良好群においても、「warfarinは、血栓塞栓イベント非発生率(p<0.001)および全脳卒中非発生率(p=0.032)についてNOACよりも優れていた」、とUniversity of Kansas(カンザスシティー)のDhanunjaya R. Lakkireddy氏は述べた。


「全グループ中で脳卒中発生率が最高」

アドヒアランス不良群において、NOAC処方患者と比較しwarfarin処方患者が得た大きなベネフィットは、「かなり劇的なもの」であり、アドヒアランス良好群と比較し、血栓塞栓イベント非発生率(p<0.001)および全脳卒中非発生率(p<0.001)について、約6ヵ月後には大きな差が認められた。

驚くべきことに、アドヒアランス不良群のNOAC患者は、「全グループ中で脳卒中の発生率が最も高かった」と、2018年不整脈学会(HRS)学術集会において本結果を発表した際にLakkireddy氏は述べた。

そしてやや直感に反していることに、いずれのOACのアドヒアランス不良群でも、アドヒアランス良好群と比較し出血性脳卒中および出血性合併症が大きく増加していたことが明らかになっている。
しかしながら同氏は、「NOACはこれらのイベントについてwarfarinよりも保護効果が依然としてやや高かった」と述べた。

「そのため本解析は全体として、処方された治療法へのアドヒアランスが臨床試験よりも診療においてより低かった場合(基本的に常に当てはまる)、その治療ベネフィットが診療の場でも常に維持されるとは期待できないことを示唆している」と同氏は述べた。


本解析において、アドヒアランス不良の場合は常に、warfarin処方患者はNOAC処方患者よりも「実際にはるかに良好であった」と、同氏はtheheart.org | Medscape Cardiologyに語った。「今回観察された差は絶対的には小さいものだったが、臨床診療の全体像から考えると、この差は重要なものとなるだろう」と同氏は述べた。

「この結果は、これらの薬剤についての私のこれまでの知識に対し衝撃を与え、単純に仮定するのではなく、実際にもっと学ぶべきことについての議論への扉を開けた」。


臨床試験vs.臨床診療

試験に組み入れられる患者は、臨床診療全体の幅広い患者よりも概して教育レベルが高く意欲も高い。
「これは、そのような患者のアドヒアランスがより高くなることを意味する」とLakkireddy氏は指摘した。
そして試験では、患者は医療提供者と接触する機会が多く、服薬について意識する機会が多いことが、広く確認されている。

そしてそのことが、「患者の全体的な服薬アドヒアランスを不当に上昇させてしまう。これが、薬剤を実際の診療に投入した場合に突然アドヒアランスが低下し始める理由であり、試験において非常に良好に機能していた薬剤がリアルワールドでは同じようには機能しないという事態が起こる原因である」と同氏は述べた。

同氏による本解析の公式発表の指定討論者が、この独特な結果の一部についてコメントしている。
「このリアルワールドにおけるデータセットが、全集団におけるNOACの全体的な有効性がビタミンK拮抗薬と比べ低いことを明らかにしたと、われわれは確認した。これは、他のほとんどすべてのリアルワールドのデータセットによる結果と対照的である」と、Antwerp University(ベルギー)のHein Heidbuchel氏は述べた。

このような結果が、アドヒアランス良好群と不良群の両方で認められている。
「これは、過去の結果と相反する本当に新たな結果であり、説明するにはさらなる解析が必要である」。

しかしながら、出血リスクは“とくにアドヒアランス良好群において”warfarinよりもNOACのほうが低く、「その結果は、われわれがこれまでに見てきたランダム化比較試験やリアルワールドのデータセットによる結果と一致している」。

しかし、抗凝固薬の投与量が少ないことはおそらく出血リスクがより低いことを意味するのに、いずれの療法のアドヒアランス不良群でも出血リスクが上昇するのはなぜだろうか。
「この疑問は、アドヒアランス不良群のプロファイルを考慮することが重要である理由を浮き彫りにする」、と同氏は述べた。

その理由はおそらく、warfarinまたはNOACのいずれかに対しアドヒアランス不良であった患者はすでに、本質的に出血リスクおよびその他のイベントリスクが高いからである。同氏は「処方バイアスが本結果の原因である可能性があり、必ずしも因果関係ではない」と述べた。

「脳卒中リスクが最も高い患者は、何となく暗黙のうちに脳卒中リスクがより低いと考えられている薬剤を処方され、その後その薬剤を処方どおりに服用しなかった」と同氏は考察した。
「そのため、最終的に矛盾した結果が得られることがあるのではないか」。


OACの選択にアドヒアランス不良が与える影響

「われわれが、アドヒアランス不良の患者はwarfarinの服用を続けるべきという考え方を前提とすることは、いくぶん皮肉なことである。それはある種の後退である。しかし今回のデータは、患者がそういうタイプの人間である場合には、その考え方のほうが上手くいくかもしれないことを示唆している」と、Sauder Family and Heart & Stroke Foundation of BC(カナダ、ブリティッシュコロンビア州、バンクーバー)のAndrew D. Krahn氏は記者会見において述べた。

「warfarinの場合、国際標準比の至適範囲内時間(TTR)が、実証されている臨床的アウトカムの予測因子である」と同氏は述べた。そのため反復検査で患者のTTRが大きく異なる場合、「warfarinが患者にとってより良いと述べることは理にかなっておらず、生物学的に妥当ではない。一方で、患者がアドヒアランス不良であることがわかっており、ほぼ常時血液検査に問題がない場合、その患者が“正味の利益”を得ている可能性があると考えられるのではないか」と、同氏は今回の結果に言及しながら述べた。

「そしてこのことが、このような管理データセットに限界があると考える理由であり、われわれはこのようなデータセットからは治療推奨を作成しようとはしない」。

また、Cooper University Hospital(ニュージャージー州、カムデン)のAndrea M. Russo氏は記者会見において、「本試験のような試験から確実な結論を導き出すことは難しい」と同意した。
「しかしこのNOAC時代には、選択バイアスにより、warfarin処方患者における見かけのアウトカムが新規の薬剤と比較して良好になる可能性がある」、と述べた。

「状態がずっと非常に良く、薬を切り替えるべきと誰も言わないという理由で、アドヒアランス良好な一部の患者を医療者がすでに事前選択しているということが、完全に問題外であるとは私は考えない」。

患者がwarfarinで上手くいっていると言い、レジメンの変更を望まない場合、「私は切り替えを強いることはない。つまり、私は治療がうまくいっている可能性のある患者を事前選択している。これがほかの医療者にも常にあてはまるかどうかはわからないが、起こりうることである」。

今回の解析では、2015年から18ヵ月間の、非弁膜症性AFに対しwarfarinまたはNOACの処方箋を発行されたIBM Watson Health Market Scanデータベースの患者の¬診療報酬請求データが調査された。
本解析にはCHA
2DS2-VAScスコアが2以上の成人のみが組み入れられ、一過性AFのみを有する患者またはその前年に短期間のみOACを使用していた患者は除外された。


NOAC服薬スケジュールの役割

本解析には、交絡を弱めるための傾向マッチングが用いられていないこと、たとえ患者の脳卒中リスクが増加していたとしても一過性AF患者を除外していること、イベントの公式判定が存在しないこと、それぞれのNOACを区別していないこと、過去に短期間のOAC療法を受けた患者(対象となった評価項目のいずれかを経験したために薬剤の服用を中止した可能性がある)を除外していることを含む、いくつかの限界があることを、Heidbuchel氏は指摘した。

「アドヒアランス良好群および不良群におけるそれぞれのNOACの割合を知ることで、どのくらいの患者が1日1回または1日2回の服薬スケジュールに取り組んでいるかを明らかにすることができるだろう」と同氏は述べた。

非弁膜症性AFにおいて推奨されているエビデンスベースの服薬スケジュールは、dabigatranおよびapixabanについては1日2回、rivaroxabanおよびedoxabanについては1日1回である。

「アドヒアランスは1日1回服用のNOACでやや良好である可能性がある一方で、服用を忘れた場合に保護効果の影響もより大きい可能性がある。そしてそのことが、今回の解析のアウトカムに影響している可能性がある」と同氏は述べた。


英文記事

Poor NOAC Adherence in AF Wreaks Havoc on Efficacy vs Warfarin


B-LBCT02-03 / B-LBCT02-03 - Lower Adherence Direct Oral Anticoagulants Use Is Associated With Increased Risk Of Thromboembolic Events Than Warfarin - Understanding The Real-world Performance Of Systemic Anticoagulation In Atrial Fibrillation





<きょうの一曲>

9 Unforgettably Beautiful Melodies from Symphonies



<きょうの一枚の絵>

d168783018.1

黒田保臣「柘榴」F4号油絵





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SGLT2阻害薬の1次予防効果

SGLT2阻害薬:1次予防効果は非現実的?

(文中の「私」は執筆者のHarpreet S. Bajaj, MD, MPH 先生)
話が出来過ぎのように思える場合…

昨年のCVD-REAL試験の発表と、その続編である3月のCVD-REAL 2試験の発表以来、糖尿病患者における、SGLT2阻害薬による心血管疾患の1次予防の有用性に関する“noise”を信じるか否かに関し、多くの混乱が臨床医の間で生じている。

最初の試験には、米国および欧州の5ヵ国の2型糖尿病患者30万9,056例が組み入れられた。
全死因死亡率のうちSGLT2阻害薬の効果を示す相対リスク減少率(RRR)は51%であったことが認められ、有益性は驚くべきことに平均追跡期間である9ヵ月以内に発生した。

2番目の試験では、アジア太平洋、イスラエル、カナダの6ヵ国から47万528例が参加し、平均治療期間224日中の死亡のRRRは49%だった。
これは、最初の試験の結果を現在“裏付け”ている。
注目すべきことに、これら2つのCVD-REAL試験では、1次予防および2次予防の両サブグループにおいて、同様の死亡率減少が示唆されている。

そのため、1次予防のサブグループ解析において確認された、話が出来過ぎのように思われるこの死亡率のベネフィットに関し、以下のような問いかけるべきいくつかの明白な次の疑問がある。

1.なぜこれらの観察研究のデータは、SGLT2阻害薬のランダム化比較試験のデータと一致しないのか。

2.この観察研究の結果は、残差交絡や未測定の交絡および/またはバイアスによって影響されているのか。2つのCVD-REAL試験で使用された傾向スコアマッチング法の有用性は何か。

3.最も重要なこととして、2つのCVD-REAL試験の臨床およびガイドラインへの影響はどのようなものか。


ランダム化比較試験との矛盾

現在までに、EMPA-REG OUTCOME試験3)およびCANVAS試験4)というSGLT2阻害薬を用いた2つの大規模心血管アウトカム試験によって、主要心血管イベント(MACE)に関する優越性が示されている。

しかしながら、これら2つの試験でのMACEにおける有益性は、2次予防(すなわち、確定診断済みの心血管疾患[CVD]患者)においてのみ認められた。

EMPA-REG試験には、CVDの既往がある患者のみが組み入れられた。
CANVAS試験参加者の約3分の1にはCVDの既往はなかったが、MACEに対する層別解析では、2次予防のサブグループにおけるハザード比は統計学的に有意であったものの、1次予防のサブグループにおけるハザード比は有意ではなかった
5)

したがってこれらの結果は、CVD-REAL試験の1次予防のサブグループによって示唆された死亡率における大きなベネフィットに反するものである。


どのように作用するか

またメカニズムの面では、SGLT2阻害薬による心保護作用は、すでに“疾患がある”心臓を持つ患者に限定されるようである。
主要な仮説(血行動態
6および「効率の良い」エネルギー源としてのケトン体)のいずれも、ベースラインで心筋細胞の機能不全が存在する場合にのみ、この薬剤クラスのCVDへの有益性を説明することができる。

糖尿病における心血管アウトカム試験に関する、病態生理学に基づく最近のレビューにおいて、Bernard Zinman氏と私は、「早期糖尿病におけるSGLT2阻害薬の心保護作用は、依然として不確実なものである」と論争した。
近く発表されるDECLARE試験の結果は、この疑問に対し、信頼のおける回答が得られる最良の機会を提供してくれる、とわれわれは考えている

dapagliflozinに関する大規模ランダム化試験であるDECLARE試験では、1次予防の患者約1万例が4年間にわたって追跡されている
間もなく終了するこの試験の結果は、6~12ヵ月以内に報告されると予想されている。


CVD-REAL試験:交絡とバイアスがある?

2つのCVD-REAL試験から得られる正しい結論は、SGLT2阻害薬の処方により死亡率が低下したのではなく、SGLT2阻害薬を処方された参加者は死ぬ確率が低い患者であった、となるべきである。
このような因果関係の推論は、私にとって基本的な観察研究とランダム化比較試験の違いである。
後者のみによって、仮説を検証し因果関係を推測することが可能である。

2つのCVD-REAL試験は、交絡とバイアスがどのように試験結果を無価値なものにするかという、明確な例を提供するものである

傾向スコアマッチングは、既知の測定された交絡因子のみを調整することができる、単なる別の複雑な統計的手法であり、したがって、大多数の観察研究において使用される標準的な多変量解析と同価値(優れてはいない)であると見なされるべきである。

重要な点は、上記の統計的手法(多変量解析または傾向スコアマッチング法)のいずれを用いても、観察研究における未知のもしくは未測定の交絡を考慮することはできない、ということである。

大規模心血管アウトカム試験におけるランダム化は、既知の交絡因子と未知の交絡因子の両方を試験群間でマッチさせるものであり、それゆえずっとレベルの高いエビデンスに相当することがよく知られている。

2つのCVD-REAL試験のベースライン特性によって、患者レベルおよび医師レベルの因子による、重大な未測定の交絡の問題の存在が示唆される。

CVD-REAL試験における未測定の交絡の問題の手掛かりは、以下のとおりである。
両試験のSGLT2阻害薬のコホート研究は、より若年で併存疾患が少ないにもかかわらず、多くの心保護作用のある薬剤(スタチン、アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬[ARB]、metformin、グルカゴン様ペプチド-1[GLP-1]受容体作動薬など)が投与されている。
このことは、患者の社会経済的因子、健康教育状況、担当医師に対する薬物療法の順守のような未測定の交絡因子の存在を示唆しており、それが他の血糖降下薬と対比してSGLT2阻害薬の処方決定に影響した可能性がある。

さらに、2つの対となるCVD-REAL試験において、一定数のバイアスが役割を果たしているようである。

明らかなバイアスのうちの1つは、選択バイアスである。患者の平均余命が限られているという医師の判断が、薬剤の選択に影響を与えただろうか(すなわち、9ヵ月以内に死亡する可能性が高い患者は、SGLT2阻害薬を処方されなかった可能性がある)。

別の潜在的なバイアスはimmortal timeバイアスであり、このSGLT2阻害薬コホート研究において、SGLT2阻害薬の開始前に他の薬剤が使用された期間が考慮されなかったことを意味するものである(たとえば、参加者がSGLT2阻害薬の追加前にスルホニル尿素薬の投与を受けていた場合、スルホニル尿素薬の投与中に参加者が生存していた[すなわち死亡しなかった]期間はカウントされなかった)。


臨床およびガイドラインへの影響

2つのCVD-REAL試験は、現実には、臨床的な影響をまったく持たない、というのが私の意見である。

実際のところ、CVD-REAL試験の結果は、最近更新された米国およびカナダの臨床診療ガイドラインに影響を与えられなかった
これらのガイドラインは引き続き、SGLT2阻害薬を2次予防集団のみにおいて優先的に推奨している。


結論

この20年間、予防糖尿病学では、臨床的決定の手引きのために、高水準のランダム化比較試験によるエビデンスを循環器学のように信頼してきた。
どのようなエビデンスに基づくかに関するこのパラダイムシフトは、1990年代半ばから後半にかけての、画期的なDCCT試験(1型糖尿病)およびUKPDS試験(2型糖尿病)の発表によって始まり、米国食品医薬品局による心血管アウトカム試験の義務化によって、ここ10年間に加速している。

私の提案は以下のようなものである。
ランダム化比較試験によるエビデンスが、SGLT2阻害薬による心疾患の1次予防に関する重要な課題に明確な回答を与えてくれるまでは、“落ち着いてそのまま続けよう”ではないか。




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尿酸はABPとは独立した総死亡・心血管リスク

尿酸はABPとは独立した総死亡・心血管リスク

日本を含む世界4カ国から登録された約5000例の24時間血圧測定(ABPM)データの解析から、血清尿酸高値はABPMによる各測定値と独立した心血管イベントおよび総死亡のリスク因子になっており、血圧の変動パターンによらないリスク予測因子として有用であると、イタリア・パドヴァ大学のPaolo Palatini氏らが第28回欧州高血圧学会(2018.68~11、開催地:バルセロナ)で報告した。


尿酸高値は高血圧発症や予後不良因子であるとの報告はあるが、尿酸が総死亡や心血管イベントの独立した危険因子であるかは、まだ確立していない
今回Palatini氏らは、Ambulatory Blood Pressure International(ABP-I)研究に登録されたデータを用いて、血圧測定法としてABPMを使用した場合でも尿酸高値が総死亡や心血管イベントの予測因子となっているかを検討した。


対象は、ABP-Iに登録された、日本、米国、イタリア、オーストラリアのコホートの計1万1235例中、尿酸のデータが得られた5244例。
日本からは東北大学の大迫研究と自治医科大学のコホートが登録されている。
平均年齢は50.3歳、BMI 26.0、高血圧合併89.2%、糖尿病合併7.4%といった集団の死亡および心血管イベントの発生を、中央値で5.7年間追跡した。


対象集団を男女別に尿酸値により四分位したところ、各分位の尿酸の境界値は、男性が4.6mg/dL、5.4mg/dL、6.4mg/dL、女性が3.4mg/dL、4.2mg/dL、5.0mg/dLとなった。
多変量Cox比例ハザードモデルを用いて、ABPMの各指標(24時間の平均血圧、昼間血圧、夜間血圧、収縮期血圧[SBP]、拡張期血圧[DBP]、脈圧)ごとに心血管イベントおよび総死亡のハザード比を導出し、四分位での尿酸値との関連について検討した。


24時間の平均SBPおよび平均脈圧は、尿酸が高い分位ほど高値だった。
しかし、平均DBPでは尿酸との関連は見られなかった。
尿酸値が最も高い第4四分位は他の分位に比べより高齢であり、糖尿病合併率が高く、腎機能が低下し、コレステロール値が高かった。


性、年齢、糖尿病、血清脂質、腎機能、24時間平均SBPで補正後の100人・年あたりの心血管イベントの発生率は、第1四分位から順に0.99、0.95、1.11、1.81だった。
第2四分位を基準にしたとき、尿酸が最も高かった第4四分位のハザード比(HR)は1.485と有意にリスクが高くなっていた。


100人・年あたりの総死亡率は同様に1.01、0.55、0.93、2.01であり、第2四分位を基準としたとき、第1四分位(HR:1.684)および第4四分位(HR:1.634)で、リスクは有意に高値だった。


以上の結果からPalatini氏らは「ABPMの各指標とは独立して、尿酸は心血管イベントや総死亡のリスクを予測する因子として有用である」と結論した。





<関連サイト>

血清尿酸高値は高血圧新規発症の危険因子に

血圧が正常な日本人約1万2000人を3年間追跡した研究から、血清尿酸高値は高血圧新規発症の独立した危険因子になることが分かった。
群馬大学医学部附属病院臨床試験部の大山善昭氏らが、第39回日本高血圧学会総会(9月30日~10月2日、仙台開催)で報告した。尿酸値1mg/dL上昇による高血圧新規発症のハザード比(HR)は、多因子調整後で1.14だった。
尿酸値と高血圧新規発症との有意な関連は、ベースライン時の血圧が「高血圧治療ガイドライン2014」の血圧区分の「至適血圧」「正常血圧」「正常高値血圧」のいずれでも認められた。


高尿酸血症は臨床的にしばしば高血圧やメタボリックシンドロームと合併する。
また、多くの観察研究やそのメタ解析により、高血圧発症の予測因子となる可能性が示唆されている。


大山氏らは、群馬中央病院の定期健診受診者を3年間前向きに追跡し、血清尿酸値と高血圧新規発症との関係を検討した。
対象は、2009年度の定期健診(ベースライン)時に、
(1)血圧140/90mmHg未満、
(2)高血圧の既往歴なし、
(3)降圧薬の使用歴なし、
(4)心血管疾患の既往なし
――という4条件を全て満たした1万2029人。
ベースライン時の血圧区分は、120/80mmHg未満の「至適血圧」が5408人(45%)、120-129/80-84mmHgの「正常血圧」が3863人(32%)、130-139/85-89mmHgの「正常高値血圧」2758(23%)人だった。


ベースライン時に高い血圧区分であるほど、年齢、BMI、LDLコレステロール(LDL-C)、空腹時血糖値および尿酸値が有意に高く(全てP<0.001)、女性比率、HDLコレステロール(HDL-C)、eGFR値が有意に低かった(全てP<0.001)。
喫煙率には有意差がなかった。ベースライン時の尿酸値は全受診者の平均で5.2mg/dL、男性5.9mg/dL、女性4.3mg/dLだった。


2009年度の定期健診から3年間、すなわち2010年度、2011年度、2012年度の定期健診データを解析したところ、1万2029人中1457人(12%)で高血圧の新規発症が認められた。

高血圧新規発症は、
(1)血圧140/90mmHg以上、
(2)問診で高血圧の既往あり、
(3)降圧薬の使用あり
――のいずれかを満たす場合と定義した。


高血圧新規発症と関連する因子について多変量解析を行った結果、血清尿酸高値は他の因子から独立した危険因子となることが分かった。
定期健診のような離散的なデータの解析に適する離散比例ハザードモデルを用いて、尿酸値1mg/dL上昇による高血圧新規発症のHRを算出したところ、無調整時1.27、年齢・性別調整時1.21、年齢、性別、収縮期血圧、空腹時血糖、LDL-C、HDL-C、喫煙で調整時1.14となり、いずれも有意差(P<0.001)が認められた。
HRは男性より女性の方が高く、尿酸値上昇の影響は女性でより大きいことも明らかとなった。


大山氏は「尿酸値に注目することは、高血圧の予防という意味でも非常に重要であることが示された」と指摘した。
高血圧発症の尿酸カットオフ値については「現在検討を進めているが、正常範囲上限とされている値よりもやや低い男性6.3mg/dL、女性4.2mg/dLと推測されるデータを得ている」とし、「尿酸値が正常範囲内でも高めの人は、高血圧発症リスクを考慮した対応が必要かもしれない」と話している。



高血圧発症にはごく軽度の血圧上昇に起因する腎機能低下が関与する

高血圧の発症には、糸球体ろ過量(GFR)の低下や糸球体傷害が関与する。
そしてGFRの低下の背景には至適血圧から正常血圧へといった軽度な血圧上昇があると考えられる──。
10月20日から愛媛県松山市で開催された第40回日本高血圧学会で、東北労災病院高血圧内科部長・生活習慣病研究センター長の宗像正徳氏は、亘理町研究の解析結果を報告した。


今回、宗像氏は正常範囲にあるアルブミン尿を呈する住民のGFRの変化が高血圧発症を予測するか、検討した。


対象は亘理町研究に登録された一般住民。同研究は2009年から行っている前向き観察研究で、これまでに正常高値血圧が微量アルブミン発症のリスクになること、尿中微量アルブミンが脳心血管疾患の発症リスクになることなどを報告してきた。


今回の解析では2009年に特定健診を受けた一般住民3628例を対象に、身長、体重、腹囲、空腹時脂質値、血糖値、腎機能、血圧、早朝随時尿を用いる尿アルブミンクレアチニン比を測定した。
このうち、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上、もしくは降圧薬服用している患者、心血管疾患既往のある患者、HbA1c 6.5%以上、糖尿病治療薬服用例、尿中アルブミン量30mg/gCr以上、2010年以降受診の無い患者を除外して、最終的に1281例について検討した。


患者背景は、全体では平均58.0歳、男性比率34.3%、BMIは22.5kg/m2、腹囲82.1cm、収縮期血圧119.2mmHg、拡張期血圧69.3mmHg、中性脂肪84mg/dL、HDL-C 65.3mg/dL、LDL-C 123.8mg/dL、HbA1c 5.8%、尿酸値4.7mg/dL、eGFR 80.3mL/min/1.73m2、尿アルブミン排泄量7.0mg/gCr、脂質異常症治療歴のある患者8.6%、運動習慣ありが36.0%、飲酒量の多い人4.8%だった。


正常血圧でアルブミン尿の認められない1281例を5年間追跡したところ、高血圧を発症(140mmHg/90mmHg以上、もしくは降圧薬治療開始)したのは、平均追跡期間3.7年で315例(24.6%)だった。


高血圧発症群と高血圧未発症群を比較したところ、高血圧発症群の方が年齢、男性比率、BMI、血圧、中性脂肪、LDL-C、HbA1c、尿酸、尿中アルブミン量が有意に高く、eGFRが有意に低値だった。


eGFR、尿アルブミン排泄量のそれぞれを4分位し、計16のグループに分けて高血圧の発症率を検討したところ、両者には交互作用が認められ、eGFR値が90~169mL/min/1.73m2と最も高い集団では尿アルブミン排泄量が増えるほど高血圧の発症率が高まる現象がみられたが、eGFR値が低下すると尿アルブミン排泄の上昇なしに、高血圧発症率は高まり、尿アルブミン排泄量増加の相乗的な作用は認められなかった。
つまり、日本人の高血圧発症において、ごく微量の尿アルブミンよりGFR低下が高血圧発症要因として重要であることが示唆される結果だ。


そこで亘理町研究に参加した3628例のうち、CKDが認められていない2452例(各種検査結果などは存在する症例)を対象に6年間追跡し、CKD(eGFR 60mL/min/1.73m2未満)を発症した割合と要因を検討した。


その結果、CKDを発症したのは352例。その上で352例の血圧を至適血圧、正常血圧、正常高値血圧、I度高血圧、II度以上の高血圧に分けて多変量解析を行った結果、血圧値の上昇とeGFR低下が相関することが示されたが、注目されるのは至適血圧と比較すると正常血圧からCKD発症リスクが上がっていた(ハザード比1.43~1.88)ことだ。


これらの結果から宗像氏は「日本人においては、尿アルブミン量の増加と関係なく、GFRの低下が原因となって高血圧を発症しているケースの多いことが示された。さらにGFRの低下の背景には高血圧に至る前の軽度な血圧上昇が関連すると考えられる。こうした軽度の血圧上昇に対して早期から生活習慣の改善指導をすることが、CKDさらには高血圧発症を予防する上で有効と考えられる」と語った。
  



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夜間の無自覚性低血糖

怖い夜間の無自覚性低血糖、対策は明確

近年、糖尿病治療において低血糖を回避することの重要性が強く認識されるようになった。
一方、持続グルコースモニター(CGM)の普及により、無自覚性低血糖が夜間(睡眠時)を中心に、今まで考えられていたより高率に発生していることも明らかにされている。
第61回日本糖尿病学会(5月24~26日)において獨協医科大学内分泌代謝内科教授の麻生好正氏は、無自覚性低血糖をめぐる最近の知見を整理し、その危険性を強調した。
ただし、講じるべき対策は明確で、実地臨床で実行可能なものだという。


警告症状なしに中枢神経症状が発現

血糖値の低下に対し、一般的には次のような生理反応が段階的に惹起される。

①血糖値が70mg/dL程度になると、生体は警告を発する意味でカウンターレギュレタリーホルモン(グルカゴン、アドレナリン)を分泌する

②50mg/dL台になると自律神経系の自覚症状(動悸、発汗、震えなど)や低血糖に起因する中枢神経系の症状(傾眠、めまいなど)が出現する

③さらに低下すると認知機能障害が発生し、複雑な作業に支障を来すようになる

④おおむね30mg/dLを下回ると、第三者の介助が必要な昏睡、意識消失などに陥る(=重症低血糖)

 
血糖に対する生体反応の閾値が低下し、警告症状なしに①~③の症状がほぼ同時に発現するのが無自覚性低血糖だと。
言い換えると、「血糖低下に対し、警告症状としての自律神経症状が出現する前に中枢神経症状が発現する状態」と説明する。
これまでの報告によると、無自覚性低血糖の有病率は成人1型糖尿病で20~25%程度、インスリン治療中の2型糖尿病で10%程度とされる。

 
無自覚性低血糖の実態解明には、CGMの登場が大きな役割を果たした。
例えば、新たにインスリンを導入する2型糖尿病患者708例を対象とした4-T試験では、試験1年後の時点での平均低血糖頻度が報告されている。
それによると、CGM使用者では40mg/dL以下の低血糖が患者・年当たり41イベント、54mg/dL以下の低血糖が同120イベント発生しており、CGM非使用者での患者自己報告の同17イベントに比べ、それぞれ2.4倍、7倍の高率であった(Diabetes Res Clin Pract2017;131:161-168)。


睡眠時の低血糖は致死性不整脈を惹起する

無自覚性低血糖が問題なのは、症候性低血糖に比べ重症低血糖の発生リスクが5~6倍に上るからである。
重症低血糖は認知機能障害を惹起し、不整脈や心筋梗塞の原因となる。

 
無自覚性低血糖の危険因子として、高齢と睡眠がある。
後者については、睡眠時には糖尿病患者だけでなく健常者でもアドレナリンの分泌が低下することが示されており、同氏らも睡眠中は自律神経活動が副交感神経優位になることを報告している(Diabetes Care 2004; 27:2392-2397)。

 
同氏は「夜間(睡眠時)の低血糖は日中(覚醒時)とは異なるメカニズムで不整脈を高率に惹起する」と注意を促した。
具体的には、
①睡眠時に低血糖が遷延すると、交感神経―副腎系の活動が抑制されアドレナリンの分泌が低下、代償的に副交感神経活動が活性化する
②その結果、徐脈が起こり、心房・心室の期外収縮が発生する③QT間隔が延長して致死性不整脈となり、突然死を来す
―という。


警告症状なしに中枢神経症状が発現

血糖値の低下に対し、一般的には次のような生理反応が段階的に惹起される。

①血糖値が70mg/dL程度になると、生体は警告を発する意味でカウンターレギュレタリーホルモン(グルカゴン、アドレナリン)を分泌する

②50mg/dL台になると自律神経系の自覚症状(動悸、発汗、震えなど)や低血糖に起因する中枢神経系の症状(傾眠、めまいなど)が出現する

③さらに低下すると認知機能障害が発生し、複雑な作業に支障を来すようになる

④おおむね30mg/dLを下回ると、第三者の介助が必要な昏睡、意識消失などに陥る(=重症低血糖)

 
血糖に対する生体反応の閾値が低下し、警告症状なしに①~③の症状がほぼ同時に発現するのが無自覚性低血糖だ。
言い換えると、「血糖低下に対し、警告症状としての自律神経症状が出現する前に中枢神経症状が発現する状態」と説明する。
これまでの報告によると、無自覚性低血糖の有病率は成人1型糖尿病で20~25%程度、インスリン治療中の2型糖尿病で10%程度とされる。

 
無自覚性低血糖の実態解明には、CGMの登場が大きな役割を果たした。
例えば、新たにインスリンを導入する2型糖尿病患者708例を対象とした4-T試験では、試験1年後の時点での平均低血糖頻度が報告されている。
それによると、CGM使用者では40mg/dL以下の低血糖が患者・年当たり41イベント、54mg/dL以下の低血糖が同120イベント発生しており、CGM非使用者での患者自己報告の同17イベントに比べ、それぞれ2.4倍、7倍の高率であった(Diabetes Res Clin Pract 2017;131:161-168)。


睡眠時の低血糖は致死性不整脈を惹起する

無自覚性低血糖が問題なのは、症候性低血糖に比べ重症低血糖の発生リスクが5~6倍に上るからである。
重症低血糖は認知機能障害を惹起し、不整脈や心筋梗塞の原因となる。

 
無自覚性低血糖の危険因子として、麻生氏は高齢と睡眠を挙げた。後者については、睡眠時には糖尿病患者だけでなく健常者でもアドレナリンの分泌が低下することが示されており、同氏らも睡眠中は自律神経活動が副交感神経優位になることを報告している(Diabetes Care 2004; 27:2392-2397)。

 
同氏は「夜間(睡眠時)の低血糖は日中(覚醒時)とは異なるメカニズムで不整脈を高率に惹起する」と注意を促した。
具体的には、
①睡眠時に低血糖が遷延すると、交感神経―副腎系の活動が抑制されアドレナリンの分泌が低下、代償的に副交感神経活動が活性化する
②その結果、徐脈が起こり、心房・心室の期外収縮が発生する③QT間隔が延長して致死性不整脈となり、突然死を来す
―という)。


機器の進歩が低血糖対策を後押し

麻生氏は、インスリン治療機器の進歩は低血糖対策を後押ししているとの展望を示した。
インスリンポンプを用いた持続皮下インスリン注入(CSII)の導入は、インスリン頻回注射に比べ低血糖の減少に貢献したことが示されている。
さらに近年は、インスリンポンプにCGM機能を搭載したsensor augmented pump(SAP)が開発されるなど、インスリン治療機器の進化が著しい。

 
同氏は、日本でも今年(2018年)登場した新しいタイプのSAPに期待を寄せた(関連記事「新インスリンポンプ"第2世代SAP"登場」)。この機器(ミニメド640Gシステム)は低グルコース時にインスリン注入を一時停止させる機能を備えているのが特徴。
1型糖尿病を対象に、このタイプの機器と一時停止機能を持たない機器を比較したASPIRE IN-HOME試験では、HbA1cの変化には差がなかったにもかかわらず、一時停止機能を持つ機器を使用した群で70mg/dL未満の夜間低血糖が37.5%有意に減少したという。
同氏は「無自覚性低血糖対策の基本はあくまで患者教育だが、最新機器の活用も有効な手段となる」との認識を示した。


 

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日本の糖尿病合併症の実態 JDCP study

日本の糖尿病合併症の実態が判明 JDCP studyベースラインデータを発表

東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科准教授でJDCPstudy研究代表者の西村理明氏は、同studyのベースラインデータについて第61回日本糖尿病学会(2018.5.24~26)で発表した。
同studyは、2007年に開始された日本における糖尿病合併症の実態とそれらの危険因子に関する全国規模の前向き観察研究である。
同氏は、糖尿病の三大合併症の合併率とともに、9年間の追跡期間中に1,000例超で発生した大血管イベントについても言及。
心疾患疾患の合併率は約60%で、脳血管疾患に比べて著明に高かったと指摘した。


1型糖尿病の三大合併症の割合:2つが3~4%、3つが4.5%

JDCP study(登録期間:2007.7~09.11)では、全国の大学病院、基幹病院および診療所464施設に通院中の40~75歳未満の1型・2型糖尿病患者6,338例を登録。追跡率は3年後が81.0%、5年後が73.0%、8年後が57.3%と極めて良好であった。

 
1型糖尿病患者の割合は6.2%(394例、男性44.2%、平均年齢56.2歳、平均罹病期間11.8年)で、糖尿病の家族歴は32.1%と多かった。既往については、脂質異常症と高血圧がそれぞれ約4分の1を占めた。肥満(BMI 25以上)は男性が15.5%、女性が13.2%、HbA1cは7.0%未満が25%、7.0~7.9%が40%、8.0%以上が35%であった。

 
三大合併症の合併率を見ると、微量アルブミン尿以上の腎症が18.5%、網膜症が22.4%、神経障害が25.2%。
2つの合併の割合症例は3~4%、3つが4.5%であり、単独だとそれぞれ7.3%、9.7%、13.6%で、合併症がない例は53.9%であった。


2型糖尿病:腹囲は男女で1cmの差

一方、2型糖尿病患者は全体の93.8%(5,944例、男性60.1%、平均年齢:男性60.7歳、女性62.5歳、平均罹病期間:同11.2年、10.3年)であった。
糖尿病の家族歴は男女ともに50%を超え(各50.3%、56.6%)、飲酒習慣は男性で多かった(56.1% vs. 13.1%)。
喫煙については男女で差がなく(38.6%vs. 36.7%)、1型、2型糖尿病ともに30%を超えたことから、西村氏は「糖尿病患者の喫煙に対しては、なんらかの介入が必要である」との認識を示した。

 
2型糖尿病患者における合併症の既往は、脂質異常症および高血圧が男女ともに約半数を占めており、最大体重時年齢は男性が46.1歳、女性が48.8歳といずれも40歳代後半であった。
腹囲は男性86.9cm、女性85.7cmと差がなく、肥満の割合は男性に比べて女性で高い(36.2% vs. 44.5%)ことが明らかになった。

 
HbA1c値は7.0%未満が全体の40.6%を占めていたが、日本糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)の報告に比べて少なく、JDCP studyでは罹病期間が長く、より重症な2型糖尿病患者が登録されたことによるものと推察された。
HbA1c値7.0~7.9%は37.2%、8.0%以上が22.2%であった。

 
治療の内訳は、食事療法が10%、経口血糖降下薬が62%、インスリンが14%、経口血糖降下薬+インスリンが14%であった。
経口血糖降下薬使用率の推移を見ると、DPP-4阻害薬の登場以降はり同薬の割合が急増し、ビグアナイド薬およびGLP-1受容体作動薬についても使用率が上昇した。
一方、チアゾリジン薬、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)は減少した。


2つの合併症例は6%前後、3つは6.4%

2型糖尿病患者における三大合併症の状況を見ると、腎症が30.2%、網膜症が27.4%、神経障害が34.3%で、単独合併例はそれぞれ11.8%、9.0%、14.9%であった。
2つを合併する割合は6%前後で、3つ全て合併する割合は6.4%、合併症なしは39.4%であった。
西村氏は、今回は予備的データであることを断った上で、9年間の追跡期間中に心血管イベントが1,021件発生したと報告した。
追跡5年時点におけるイベント発生の内訳は、心疾患が61.2%、脳血管疾患が26.8%、下肢動脈性疾患が12.0%で、9年時点はそれぞれ61.0%、26.2%、12.8%であった。
また9年間で死亡が183例(粗死亡率5.1人/1,000人・年)発生し、死因は悪性腫瘍が最も多く約4割を占め、次いで突然死を含む詳細不明、その他、心血管疾患、脳血管疾患の順であった。

JDCP studyの追跡は2017年に全て終了し、解析されたデータのうち1型糖尿病・2型糖尿病のベースライン時における疫学および網膜症については論文は学術誌に受理された。
腎症、神経障害の他、悪性腫瘍、歯周病などについては投稿準備中である。



<私的コメント>

「三大合併症」はもはや「古典的」合併症とも思われます。
そもそも、こういった表現がされたのは、糖尿病に特徴的(特異的)な合併症という側面があったからなのでしょう。

最近になって、がんの合併、大血管障害、(医原性ともいえますが低血糖に伴う不整脈による)突然死がクローズアップされています。
いずれも致死的と言ってもよい合併症のため、個人的には①がん②大血管障害③突然死を新しい「三大合併症」として提唱したいと思います。
腎症、網膜症、神経障害を3大合併症とした場合には、これらの致死的合併症に対する注意が疎(おろそ)かになる危険性を孕んでいるのではないでしょうか。
なお、記事中に「
チアゾリジン薬、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)は減少」という記載がありました。
循環器専門医が主体となってあれだけ推奨されたチアゾリジン薬ですが、「膀胱がん」 関連の一件ですっかり水を差されてしまいました。
最近、ピオグリタゾンが認知症に有効であるという報告があると書こうと思ったのですが、少し調べてみたらタケダは治験を投げ出したみたいです。
α-GIもとてもいいクスリと思うのですが、服薬コンプライアンスの問題で患者さんには嫌がられてしまいます。 



<ピオグリタゾンと認知症 関連サイト>
糖尿病薬が認知症治療に効く? 武田が挑む

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO07553310T20C16A9X91000/


ピオグリタゾンにより認知機能の改善が認められた アルツハイマー病を合併した高齢者糖尿病の 1 例

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/50/11/50_11_819/_pdf/-char/ja


TOMMORROW試験の中止について

https://www.takeda.com/jp/newsroom/newsreleases/2018/20180126_7906/


糖尿病予防の生活習慣がボケ防止に 『アルツハイマー病は「脳の糖尿病」』

https://risfax.co.jp/beholder/141321.html


生活習慣病と認知症
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_geriatrics_50_6_727.pdf




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腎デナベーションは、降圧薬に代わりうるか RADIANCE-HTN SOLO試験

腎デナベーションは、降圧薬に代わりうるか/Lancet

降圧薬服用を中止した軽度~中等度の収縮期/拡張期高血圧が認められる患者に対し、腎デナベーションを行うことで、2ヵ月後の収縮期血圧がシャム群に比べて有意に低下したことが示された。
フランスの研究チームが行った「RADIANCE-HTN SOLO試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年5月23日号で発表された。
初期の試験では、高周波腎デナベーションが、中等度の高血圧患者の血圧を低下することが示されている。
研究グループは、腎デナベーションが、降圧薬服用を中止した外来高血圧患者の血圧を下げる代替治療技術となるのかを検討した。


米国・欧州の39ヵ所でシャム対照試験

RADIANCE-HTN SOLO試験では、2016年3月28日~2017年12月28日にかけて、収縮期/拡張期高血圧の患者を対象に、米国21ヵ所、欧州18ヵ所の医療機関を通じて、無作為化シャム(擬似手術)対照単盲検比較試験が行われた。


被験者は、2種以下の降圧薬を中止してから4週間時点の収縮期/拡張期血圧値が135/85~170/105mmHgで、正常な腎動脈構造が認められた18~75歳の患者だった。


被験者を無作為に2群に分け、一方にはParadiseカテーテル(ReCor Medical)を使用した腎デナベーションを、もう一方には腎血管造影のみ(シャーム)を施行した。


有効性の主要エンドポイントは、ITT解析による2ヵ月時点における日中自由行動下収縮期血圧(SBP)の変化だった。
被験者は、事前規定した血圧基準を超えない限りは、追跡2ヵ月間は降圧薬の服用をしなかった。


主要有害イベントは、全死因死亡、腎不全、末端器官障害を伴う塞栓症、30日以内の高血圧クリーゼによる入院などだった。


施術2ヵ月後の日中自由行動下SBPは8.5mmHg低下

803例がスクリーニングを受け、試験適格だった146例(腎デナベーション群74例、シャム群72例)が対象となり試験を受けた。


日中自由行動下SBPの変化値は、シャム群-2.2mmHgに対し、腎デナベーション群は-8.5mmHgと有意に低下幅が大きかった(ベースライン補正後の群間差:-6.3 mmHg、95%信頼区間:-9.4~-3.1、p=0.0001)。


主要有害イベントは、両群ともに報告がなかった。


英文抄録 

Endovascular ultrasound renal denervation to treat hypertension (RADIANCE-HTN SOLO): a multicentre, international, single-blind, randomised, sham-controlled trial.

https://pmc.carenet.com/?pmid=29803590&keiro=journal




<関連サイト>

降圧療法としての新たな腎除神経法(解説:冨山 博史 先生)

http://www.carenet.com/news/clear/journal/46127

研究背景

高血圧症例(とくに難治性高血圧)において、腎除神経は有効な降圧療法とする報告が増えている。
これまでの報告は、腎動脈内腔側から高周波カテーテルを用いて腎除神経を行う方法であった。
現在、経皮的除神経や超音波を用いた除神経など、高周波カテーテル以外の腎除神経法が開発中である。


本研究は、超音波カテーテルを用いた腎除神経法の降圧治療としての有効性を検証する目的で実施された。


超音波除神経法

本方法は、腎動脈本幹遠位側をバルーンにて血行遮断し、中枢側に超音波バルーンを留置し超音波にて除神経を実施する方法である。
腎動脈本幹では腎神経は腎動脈内腔側でなく外膜側を走行しており、本超音波除神経法は腎動脈内腔より1~6mmの部位の組織挫滅に有効な方法とされ、同部位を走行する腎神経を挫滅させる。


研究対象

年齢18~75歳、降圧薬服用数2種類以下、同降圧薬を4週間中止した後の自由行動下血圧(ABPM)が135/85mmHg以上~170/105mmHg未満、かつ適切な腎動脈の解剖学的構造(上述のごとく、本超音波システムは腎動脈本幹中央に超音波カテーテルを留置する必要があり、腎動脈本幹に屈曲が少なく、分枝までに十分な距離が必要となる)を有する症例。


研究実施方法

対象は無作為に除神経実施群と対照群(腎動脈造影のみ)に分けられた。Single blind法にて結果は評価された。


評価方法

主評価項目は除神経実施2ヵ月後の日中のABPMの変化である。


本研究の結果

欧州、米国の21施設で研究が実施され803例が登録された。このうち74例で腎除神経が実施され、72例が対照群となった。2ヵ月後の日中自由行動下収縮期血圧の低下は除神経群で-8.5mmHg、対照群で-2.2mmHg、腎除神経群で有意に大きい降圧を認めた。2ヵ月内では両群とも有意な腎動脈狭窄を認めなかった。


研究の限界
本研究で著者らは以下5項目の研究限界を述べている。
(1)長期の腎除神経の有効性は評価されていない。
(2)腎動脈除神経が十分に実施されたかを手技直後に評価していない(除神経の評価方法として、腎カテコールアミン濃度測定、筋交感神経電位測定、求心神経刺激による血圧変化の評価などが実施されているが、確立された方法はない)。
(3)有害事象の発生(安全性)評価には十分な症例数でない。
(4)腎除神経のみでは降圧が不十分な症例が55%であった。
(5)研究期間中の降圧薬服用状況の確認は、問診で実施され、血中・尿中の降圧薬濃度は測定していない。


冨山先生のコメント

症例選択の制約:

上述のごとく、超音波除神経法施行には腎動脈本幹の解剖学的構造に制約がある。
超音波バルーン留置に必要な解剖学的特性(距離や非湾曲)を有する症例は87%であり、803例中103例(13%)が、超音波除神経困難な腎動脈本幹を有していた。


除神経の有効性・確実性:

本研究では超音波腎除神経法の降圧効果は、SPYRAL研究などで報告されている高周波カテーテルで得られる降圧効果と同等としている。
すなわち、高周波、超音波、その他、いずれの方法でも腎除神経が有意な降圧効果を示すことを示唆した研究成果である。
しかし、SPYRAL研究など高周波カテーテル除神経は腎動脈本幹に加え腎動脈分枝部(腎神経の走行が動脈内腔側に移動する)で実施することで確実
な除神経を行っている。
しかし、超音波カテーテルでは、その特性から腎動脈本幹のみで除神経が施行され(腎動脈分枝の除神経は困難)、腎除神経の確実性は確認されていない。



<きょうの一枚の絵>

2018年06月11日22時15分07秒 のコピー

奥村土牛  「吉野懐古」 紙本彩色 





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「CKD診療ガイドライン」5年ぶりの改訂

「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」5年ぶりの改訂 非専門医の活用目指し全面改訂

日本腎臓学会は6月、5年ぶりの改訂となる「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」を発行した。
今回は専門医だけではなく、かかりつけ医や非専門医の利用を想定して制作されており、全面改訂する際に「CKD診療ガイド2012」と「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」を一元化させている。


前回同様、全章がクリニカルクエスチョン(CQ)形式の構成。主な改訂ポイントとして“STOP-DKD宣言”で注目を集めた、糖尿病性腎臓病(DKD)が章立てられているほか、高血圧・心血管疾患(CVD)、高齢者CKDについても詳しく取り上げられている。


ガイドラインの役割

本ガイドラインはすべての重症度のCKD患者を対象とし、診療上で問題となる小児CKDの特徴と対処法、CKD患者の妊娠時についても簡潔に記載されている。
ただし、末期腎不全(ESKD)に達した維持透析患者や急性腎障害(AKI)患者は除外されているため、必要に応じて他のガイドラインを参照する必要がある。
本来であれば病診連携が必要とされる疾患だが、本ガイドラインは専門医が不在とする地域での、かかりつけ医によるCKD診療のサポートに配慮した構成となっている。


75歳以上は150/90mmHg未満を推奨

第4章の「高血圧・CVD」では、血圧基準値を「糖尿病の有無」「尿蛋白の有無(軽度尿蛋白[0.15g/gCr]以上を尿蛋白ありと判定)」「年齢(75歳で区分)」の3つのポイントで定めている。


・75歳未満の場合

 CKDステージを問わず、糖尿病および尿蛋白の有無で判定

 糖尿病なし:尿蛋白(-)140/90mmHg未満、尿蛋白(+)130/80mmHg未満

 糖尿病あり:尿蛋白(+)130/80mmHg未満


・75歳以上の場合

 糖尿病、尿蛋白の有無にかかわらず150/90mmHg未満

 起立性低血圧やAKIなどの有害事象がなければ、140/90mmHg未満への降圧を目指すが、80歳以上の120/60mmHg以下での管理において、Jカーブ現象が見られたという研究報告もあることから過降圧への注意も提案されている。


高齢者への対応に変化

第12章「高齢者CKD」では、高齢者CKDの年齢が“75歳以上”と改訂されており、これは2017年に日本老年学会・日本老年医学会 高齢者に関する定義検討ワーキンググループ において、「75歳以上を高齢者」と定義付けたことが反映されている。
また、同章にはフレイルに対する介入のCQが盛り込まれており、これは厚生労働省が今年度より本格実施を始めた「高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進」に沿った改訂であることが伺える。


DKDの推奨検査項目と管理目標値

第16章「糖尿病性腎臓病(DKD)」では4つのCQが挙げられており、「尿アルブミン尿の測定」「浮腫を伴うDKDへのループ利尿薬投与」「HbA1c7.0%未満」「集約的治療」を推奨している。
とくに血管合併症の発症・進行抑制ならびに総死亡率抑制のために集約的治療が重要とされ、以下の管理目標値を推奨としている。


・BMI 22(生活習慣の修正[適切な体重管理、運動、禁煙、塩分制限食など])

・HbA1c7.0%未満(現行のガイドラインで推奨されている血糖)

・収縮期血圧130mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満

・LDLコレステロール120mg/dl、HDLコレステロール40mg/dl、中性脂肪150mg/dl未満(早朝空腹時)


ただし、「多因子の厳格な治療を推奨することで、投与薬剤数の増加や薬剤に関連する低血糖、過降圧、浮腫、高カリウム血症などのリスクが高まることにも注意が必要であり、適切なモニタリングと患者背景や生活環境を十分に勘案するように」といった注意事項も明記されている。


PKD病診連携の架け橋に

常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は透析導入原因の第4位となる疾患であるが、指定難病のため腎臓専門医・専門医療機関への紹介が必要となる。
第17章-3には、かかりつけ医による診療ポイントとして「脳動脈瘤」「トルバプタンによる治療」「血圧管理」について記載されているが、詳細については「エビデンスに基づく多発性嚢胞腎(PKD)診療ガイドライン2017」を参照とされている。


今後の方針

今後の方針として「同改訂委員会が継続しメディカルスタッフや患者を利用者に想定したCKD療養ガイド2018を作成、出版する」と記され、医療者と患者が一体となって治療に取り組むことで、透析導入予防や医療費抑制につながることが期待される。



<関連サイト>

日本腎臓学会発作成の診療ガイドライン



<きょうの一曲>

Pavel Sporcl - F.Drdla - Souvenir



<きょうの一枚の絵>

ff8e6c07eb40494e80c54d7516edf369 のコピー

奥村土牛  「醍醐」 山種美術館





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抗アルドステロン薬はSTEMI患者にも有望

抗アルドステロン薬は心不全ではないSTEMI患者にも有望 メタアナリシスで対照群より死亡率減少

米国の研究チームは、左室駆出率(LVEF)が40%以上の患者や、うっ血性心不全(CHF)ではないST上昇心筋梗塞(STEMI)患者に対して、抗アルドステロン薬(AA)を投与したランダム化対照試験(RCT)を抽出して系統的レビューとメタアナリシスを行い、対照群に比べAAはわずかだが有意に死亡率を減少させていたと報告した。
(JAMA Internal Medicine誌電子版 2018.5.21)


アルドステロンは、組織の線維化を促進する作用を持つことから、STEMI患者の心室リモデリングに悪影響を及ぼす可能性が指摘されていた。
エプレレノンを用いた
EPHESUS試験によって、LVEFが40%未満のSTEMI患者にAAが利益をもたらすことが示され、これらの患者にはAAの適用が推奨されている。
しかし、LVEFが40%以上の患者やCHFではない患者については、AAの生存利益を示した臨床試験は1件だけで、その他は明確な結論が得られていなかった。


そこで著者らは、系統的レビューとメタアナリシスを行うことにした。
PRISMAガイドラインに従い、PubMed、Embase、CINAHL、コクランセントラルなどに2017年6月までに登録されていたRCTの中から、臨床的なCHFではない、またはLVEFが40%超の18歳以上のSTEMI患者を対象にAAを投与し、コントロールと比較した臨床アウトカムを報告していた研究を選び出した。


主要評価項目は、死亡率、新たなCHF、心筋梗塞再発、心室性不整脈、LVEFの変化、血清カリウム濃度、クレアチニン値に設定した。少なくとも2件以上の研究が報告している場合のみ、評価の対象とした。


10件のRCT(合計4147人が参加)が条件を満たした。
2093人がAA群(スピロノラクトン、エプレレノン、カンレノ酸が使用されていた)に、2054人が対照群に割り付けられていた。
追跡期間は6~12カ月だった試験が8件、1カ月だった試験が1件、10日だった試験が1件だった。
9件の試験は、患者にプライマリPCIまたは血栓溶解療法もしくはそれら両方を適用していたが、1件は、血栓溶解薬禁忌の患者または血栓溶解薬を投与したが再灌流を達成できなかった患者を登録していた。


9件の試験による死亡率は、AA群1989人中47人(2.4%)と対照群1998人中78人(3.9%)で、オッズ比は0.62とAA群が少なかった。
一方その他のアウトカムでは、心筋梗塞の再発率はそれぞれ1.6%と1.5%で、オッズ比は1.03(新たなうっ血性心不全4.3%と5.4%で、オッズ比は0.82(心室性不整脈は4.1%と5.1%で、オッズ比は0.76で、両群に差はなかった。


6件の試験から、AA群は対照群に比べ、わずかだがLVEFに有意な上昇をもたらしていた。
両群の平均差は1.58%だった。
血清カリウム値の平均差は0.07mEq/Lでわずかに増加していたが、血清クレアチニン値の標準化平均差は1.4で差は見られなかった。


これらの結果から著者らは、心不全がなくLVEFが40%超のSTEMI患者についてもAAの使用は死亡率減少に関連していたが、今回のメタアナリシスでは患者レベルのデータが欠けていたため、さらに適切な検出力を持つRCTで確認する必要があると結論している。


英文抄録

Aldosterone Antagonist Therapy and Mortality in Patients With ST-Segment Elevation Myocardial Infarction Without Heart Failure  A Systematic Review and Meta-analysis

https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/article-abstract/2681656


<私的コメント>

この記事を読む限り、AA投与による血圧の変化についての記載はありません。
このあたりが少し気になりました。
結果自体は非劣性の証明程度だったような印象です。
(こういった場合NNTで示していただくと実感しやすいのですが、あまり
NNTは使われないようです)

多分、積極的に使用する意味はなさそうです。 



 

<きょうの一曲>

Eric Alexander - The Shadow Of Your Smile




<きょうの一枚の絵>

2018年06月11日22時13分06秒 のコピー 2

奈良岡正夫 「晝時」 6号 





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欧州の改訂高血圧ガイドライン(ESH 2018)、基準値は下げず

欧州の改訂高血圧ガイドライン、基準値は下げず

6月8日から11日までスペイン・バルセロナで開催されている第28回欧州高血圧学会(ESH 2018)で9日、欧州の新しい高血圧治療ガイドラインが発表された。
高血圧の基準値は従来通りの140/90mmHgに据え置かれたが、降圧目標は忍容性があれば、ほぼすべての患者で130/80mmHg未満に下げられた。
2017年に改訂発表された米国の高血圧治療ガイドラインでは基準値を130/80mmHgに引き下げたことから欧州の動向が注目されていたが、全面的な追従は避けた形となった。


欧州心臓病学会(ESC)とESHが連名で発表した新しい高血圧治療ガイドラインは、2013年以来5年ぶりの改訂。
今回も高血圧の基準値は、従来と同じ140/90mmHgを維持した。


一方、実質的な降圧目標は130/80mmHg未満に下げられた。65歳未満のすべての患者に対して最初の目標として140/90mmHg未満を目指すとしているが、認容性があれば収縮期血圧(SBP)で120mmHg以上130mmHg未満、拡張期血圧(DBP)で70mmHg以上80mmHg未満を降圧目標とした。
ただし、SBPで120mmHg未満への降圧は推奨していない。また65歳以上の高齢者については、まず150~140/90mmHgへの降圧を目指し、認容性があれば140~130/80~70mmHgを降圧目標としつつも、患者の状態を考慮して実年齢だけで治療方針を緩めないとした。


血圧測定法については、診療室血圧は1~2分の間隔をおいて3回測定するとした。
白衣高血圧や仮面高血圧が疑われる場合には、24時間血圧や家庭血圧を測定することを推奨した。
120mmHg未満への厳格降圧の有効性を示したSPRINT試験で用いられた自動診察室血圧測定法(AOBP)は、採用しなかった。


2019年には日本の高血圧治療ガイドラインの改訂(JSH2019)が予定されており、今回の欧州の新ガイドラインの動向に注目が集まっていた。
バルセロナの会場で発表を聞いた旭川医科大学循環・呼吸・神経病態内科学分野教授の長谷部直幸氏は「基準値を維持しつつも、降圧目標を下げて米国に近い治療方針を示した考え方は、日本のガイドライン改訂でも参考になるだろう。ただし、基準値と降圧目標が異なるのは分かりにくい側面もあるので、さらなる議論が必要だ。JSH2019の議論に欧州の新しいガイドラインが与える影響は大きい」と話す。


帝京大学衛生学公衆衛生学主任教授の大久保孝義氏は、「SBPで120mmHg以上130mmHg未満という“降圧目標域”が示されたのは斬新だった」と語る。また「狭い範囲への厳格な降圧治療には、家庭血圧の活用が必要になるだろう」と、家庭血圧の重要性がさらに高まるとの見解を示した。


ガイドラインの詳細は、8月にドイツ・ミュンヘンで開催されるESC2018で発表される。第41回日本高血圧学会総会(旭川市、9月14日~16日)では、JSH2019における高血圧基準値や降圧目標の方向性に関する議論が行われる予定だ。




<きょうの一曲>

9 Unforgettably Beautiful Melodies from Symphonies




<きょうの一枚の絵>


2018年06月11日22時11分02秒000 のコピー 2 

中谷時男 「春の岩木山」 P10号

(作者コメント; 津軽平野のど真中に鎮座する標高1625mのこの独立峰は、津軽地方のどの町からでも見ることができる。リンゴ畑の向うにみえる岩木山は春の大気の中に悠然と聳え立っていた)

 



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左心耳閉鎖術は脳梗塞と総死亡率を減らす

左心耳閉鎖術は脳梗塞と総死亡率を減らす CABGまたは弁手術を受けた患者のコホート研究

心臓手術を受ける患者が同時に外科的な左心耳閉鎖術(LAAO)を受けた場合、その後のアウトカムへの影響を検討するために後ろ向きコホート研究を行った米国Mayo Clinicの研究グループは、LAAOが脳梗塞と総死亡率のリスクを有意に減らす一方、術後には心房細動(AF)発症リスクが上昇する可能性があると報告した。
(JAMA 2018.5.22/29)


AF患者の心原性脳梗塞の多くは、左心耳に生じた血栓が原因だ。
そのため心臓手術が必要な患者では、脳梗塞のリスクを減らすために、心臓手術と同時に外科的LAAOが行われる場合がある。
しかし、AFの既往がない心臓手術患者にLAAOを実施すると、その後AFを発症しやすくなるという報告もある。
そこで著者らは、心臓手術と同時に行うLAAOが、脳梗塞と死亡を減らしているかどうかを調べ、術前のAFの病歴別に分析も行い、LAAOがその後のAF発症に及ぼす影響についても検討することにした。


米国の民間保険またはMedicare Advantageに加入している患者の情報を登録している大規模な管理データベースOptumLabs Data Warehouseを用いて、後ろ向きコホート研究を行うことにした。
対象は、2009年1月1日から2017年3月30日までに、冠動脈バイパス手術(CABG)や心臓弁膜症手術を初めて受けた18歳以上の患者。
手術前に最低でも6カ月以上保険に加入しており、病歴の情報を確認できることとした。


主要評価項目は、脳梗塞または全身性塞栓症(以下脳梗塞)と総死亡率とした。
2次評価項目は、手術から30日以内のAF新規発症や、長期的なAF関連の医療サービスの利用(外来受診と入院の発生率)に設定した。
追跡は手術を受けた日から、完了日(2017年5月31日)、患者の死亡、保険契約の終了、のいずれかまでとした。


心臓手術中に外科的LAAOを受けた患者と受けなかった患者のアウトカムを比較するため、LAAOを受けた患者と傾向スコアがマッチするLAAOを受けなかった患者を1対1になるよう選出した。
マッチングさせた因子は、社会人口学的特性、受けた手術の種類、病歴、併用薬、手術年、術前の加入期間とした。
特に術前のAFの有無と経口抗凝固薬の使用については完全に一致した人のみを選んだ。


期間中に7万5782人の患者が心臓手術を受けていた。
平均年齢は66.0歳(SDは11.2)、29.2%が女性で、33.9%が術前にAF歴を有していた。4374人(5.8%)が心臓手術時にLAAOを受けていた。
LAAO適用と有意な関係を示した変数は、AF歴、心臓弁膜症手術(特に弁修復術と僧帽弁手術)、術前の抗凝固薬の使用、最近の手術、だった。


傾向スコアがマッチした計8590人を平均2.1年(SDは1.9)追跡した。
8590人のうち2152人はAF歴を持っていなかった。
100人・年当たりの脳梗塞発症率は、LAAO群が1.14、対照群は1.59だった。絶対差は0.45(95%信頼区間0.09-0.82)、ハザード比は0.73(0.56から0.96)だった。
100人・年当たりの死亡率は、LAAO群3.01と対照群4.30で、絶対差は1.29(0.70-1.89)、ハザード比は0.71(0.60-0.84)になった。


術前にAF歴があった6438人(74.9%)では、100人・年当たりの脳梗塞発症率は、LAAO群が1.11、対照群は1.71だった。
絶対差は0.60(0.16-1.03)、ハザード比は0.68(0.50-0.92)。
死亡率は100人・年当たりLAAO群3.22と対照群4.93で、絶対差は1.70(0.98-2.43)、ハザード比は0.67(0.56-0.80)になり、AF歴がある患者では、LAAOの利益は有意だった。


術前にAF歴がなかった2152人(25.1%)では、100人・年当たりの脳梗塞発症率はLAAO群1.23と対照群1.26で、絶対差は0.04(-0.67から0.74)、ハザード比は0.92(0.61-1.37)で、両群に有意差はなかった。
死亡率は100人・年当たりLAAO群2.30と対照群2.49で、絶対差は0.19(-0.78から1.16)で、ハザード比は0.92(0.61-1.37)だった。


術前にAF歴がなかった2152人のうち515人(23.9%)が、術後30日以内に新たなAFを発症した。
100人・年当たりの術後のAF発生率はLAAO群が27.7%、対照群は20.2%で、ハザード比は1.46(1.22-1.73)になり、LAAO群は術後のAF発症リスクが上昇していた。


LAAOは、AF関連の外来受診外来受診の増加に関係していた。
傾向スコアがマッチする患者全体では、AF関連の外来受診率は、1人・年当たりLAAO群11.96件と対照群10.26件で絶対差は1.70件(1.60-1.80)、率比は1.17(1.10-1.24)だった。
AF関連入院率は、1人・年当たりLAAO群0.36件と対照群0.32件、絶対差は0.04件(0.02-0.06)、率比は1.13(1.05-1.21)だった。
 

これらの結果から著者らは、心臓手術を受ける患者に同時に外科的なLAAOを行うと、その後の脳梗塞と死亡率が減少することが示唆された一方、新たにAFを発症するリスクは増加していた。
外科的LAAOの位置づけを明確にするには、ランダム化対照試験を含む今後の研究が必要だと結論している。
 

英文抄録

Association of Surgical Left Atrial Appendage Occlusion With Subsequent Stroke and Mortality Among Patients Undergoing Cardiac Surgery



<関連サイト>

左心耳閉鎖術にワルファリン以上の予防効果


左心耳閉鎖デバイスがFDAで承認、日本導入も加速?


非弁膜症性AFの脳卒中予防、左心耳閉鎖術の費用対効果が最も高い


左心耳閉鎖手術で血栓塞栓症が減少





<きょうの一曲>

FRANZ LEHAR - THE MERRY WIDOW WALTZ




<きょうの一枚の絵> 

2018年06月11日22時10分09秒 のコピー

斎藤 求  「鳥海」4号




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ESUSでDOACが優越性示せず

塞栓源不明脳塞栓症でDOACが優越性示せず NAVIGATE-ESUS試験:アスピリンとの比較

研究の背景:中間解析の結果、早期に中止された試験

脳梗塞は、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、その他の脳梗塞(特殊な原因の脳梗塞)に分類されるが、25%程度を原因不明の脳梗塞である潜因性脳梗塞(cryptogenic stroke)が占めるといわれている。
潜因性脳梗塞では、塞栓性と考えられる塞栓源不明脳塞栓症(embolic stroke of undetermined source:ESUS)が多く、脳梗塞の20%を占めている。

 
潜因性脳梗塞やESUSの再発予防では、抗血小板薬と抗凝固薬のどちらを選択するか悩ましく、臨床の現場では個々の症例について皆で議論して選択している。
潜在性心房細動を有する場合は抗血小板薬での再発予防は望めないため、特に注意を要する。

 
こうした中、ESUS患者を対象に直接経口抗凝固薬(DOAC)である第Xa因子阻害薬リバーロキサバンがアスピリンと比較して再発を減らすことができるかどうか、その有効性と安全性について31カ国459施設でイベント駆動型第Ⅲ相国際共同ランダム化比較試験NAVIGATE-ESUSが行われた。

 
NAVIGATE-ESUS試験では、ESUS症例7,000例を登録して2年間追跡し、主要評価項目が少なくとも450イベント発症した時点で、リバーロキサバンがアスピリンよりも主要評価項目を30%減少させることを検出する計画であった。

 
しかし、中間解析の結果、リバーロキサバンに低用量アスピリンを上回る有効性は示されず、試験を最後まで継続してもベネフィットが示される可能性は低いことが示唆された。
また出血頻度は総じて低いものの、リバーロキサバン群ではアスピリン群と比べて出血事象が多く認められた。

 
その結果を受け、あらかじめ計画されていた中間解析後に開かれた独立データモニタリング委員会において中止が勧告され、それに基づき試験の中止を決定したことが、2017年10月5日にドイツ・バイエル社から発表された(日本語訳プレスリリース同年10月10日)。

 
その最終結果が今回、欧州脳卒中協会年次集会(ESOC 2018、5月16~18日、イエーテボリ)で発表され、N Engl J Med (2018年5月16日オンライン版)に同時掲載された。


研究のポイント:脳卒中リスクに関する有益性が認められず、大出血リスクが上昇

NAVIGATE-ESUS試験の対象は、脳塞栓症が疑われるものの、責任血管に50%以上の動脈狭窄がなく、ラクナ梗塞でなく、塞栓源心疾患(心房細動、左室血栓、機械置換弁、重度の僧帽弁狭窄症など)を有さない発症7日~6カ月の脳梗塞患者。7,213例を登録し、リバーロキサバン(15mg/日投与)群に3,609例、アスピリン(100mg/日投与)群に3,604例をランダムに割り付けた。

 
有効性の主要評価項目は脳梗塞、脳出血、あるいは全身性塞栓症の最初の再発で、time-to-event解析がなされた。
安全性の主要評価項目は大出血の発生であった。

 
中央値で11カ月の追跡期間中に、脳卒中リスクに関する有益性が認められなかったこと、リバーロキサバンに関連した出血が発生したことから、研究が早期に中止された。


脳出血はリバーロキサバン群で13例、アスピリン群で2例発生した。

 
初期のESUSの再発予防においてリバーロキサバンのアスピリンに対する優越性は示されず、出血のリスクが高かった。


厳格性を欠いた診断基準の結果、優越性が示されなかった可能性が

ESUSの原因として、大動脈原性脳塞栓症、卵円孔開存に伴う奇異性脳塞栓症、がんに伴う脳梗塞など、さまざまな疾患の可能性が指摘されている。
ESUS患者ではさまざまな原因疾患(Lancet Neurol 2014; 13: 429-438)を症例ごとに検索しているが、なかなか塞栓源疾患が見つからないという、悩ましい問題がある。


ESUSの再発予防にDOACが使用可能になれば、まずDOACを投与してから精査し、さらに長期にわたってESUSの原因疾患を検索するいう診療スタイルに変更できると期待していた。

ESUSは新しい概念とされているが、30年以上前から塞栓源不明の脳塞栓症という言葉は使われていた。ESUSは暫定的な診断名であること、一方でESUS診断基準はDOACの臨床試験を行うために国際的につくられたこと、ESUSの臨床試験の1つNAVIGATE-ESUS試験が中止になったことなどを理解しておく必要がある。
NAVIGATE-ESUS試験には大変期待していたので、中止は非常に残念であった。

NAVIGATE-ESUS試験では、なぜアスピリンに対する優越性が示されなかったのであろうか。

原因の1つにESUSの診断基準があったのではないだろうか。


心臓の検査は心電図、経胸壁心エコー、20時間以上の自動検出可能な心電図モニターしか行われておらず、経食道心エコーは必須でなかった。

 
個人的には塞栓性で原因不明の脳梗塞をESUSと考えていたが、RE-SPECT ESUS試験の説明会では大径穿通枝の母動脈からの分岐部近傍のアテロームプラークを基盤とした血栓による穿通枝全域におよぶ梗塞、いわゆるbranch atheromatous disease(BAD)もエントリー可能となっていた。

 
もっと厳格に塞栓性の症例に限定すれば、再発予防におけるリバーロキサバンの優越性が示されたかもしれない。

 
わが国の潜因性脳梗塞の診断基準(「植込み型心電図記録計の適応となり得る潜因性脳梗塞患者の診断の手引き」)は、ESUSの診断基準よりも厳しくなっている。


また、診断に必要な検査法についてはMRIを必須としており、経食道心エコーなどを強く推奨している。


NAVIGATE-ESUS試験の結果から出血性合併症の問題も出てきた。
ワルファリンが使えない心房細動症例を対象にアピキサバンとアスピリンの有効性と安全性を比較したAVERROES研究では、アピキサバンは出血性合併症(大出血,頭蓋内出血)リスクを増大させずに、脳梗塞発症を有意に抑制できた(N Engl J Med 2011; 364: 806-817)。
その結果から、DOACの出血性合併症の頻度はアスピリン並みであろうと考えられていた。

 
ESUSの臨床試験は、NAVIGATE-ESUS研究(リバーロキサバン)以外に、RE-SPECT ESUS(ダビガトランの国際共同研究、Int J Stroke 2015; 10: 1309-1312)、ATTICUS研究(アピキサバンのドイツでの医師主導型研究、Int J Stroke 2017; 12: 985-990)が進行中である。

 
日本で承認されているDOAC4剤は「似て非なるもの」と私は考えており、別の薬剤と考えておくべきであろう。

 
早晩、DOACのアスピリンに対する優越性が示されるであろうと、臨床の現場ではESUSに対してDOACが結構使われているようである。しかし、DOACはESUSに対する適応が取れてないので、原則として使うべきではないと講演会などでは答えてきた。

 
今回の結果で、ESUSに対する将来のDOACの使用可能性に黄色信号が出たことになる。進行中の2つの試験結果に期待したい。

 
現時点でESUSにDOACを使用する根拠はないため、まずは潜因性脳梗塞に対する植え込み型心電図記録計Reveal LINQの植え込み(「植込み型心電図記録計の適応となり得る潜因性脳梗塞患者の診断の手引き」)、経皮的卵円孔開存閉鎖術のわが国での早期適応取得、がん患者におけるESUSや潜因性脳梗塞に対する在宅でのヘパリン皮下注などを確実に行っておくべきであろう。


<自遊時間>

全処方箋の約1割が変更不可‐後発品ない先発品にも指示

コメント;恰も後発品処方が善で先発品処方が悪のようにミスリードさせる恣意的な記事内容です)

 

<きょうの一曲>

Dalida - Mourir sur scène [Montréal 09.04.1983]

https://www.youtube.com/watch?v=NN2mxivM8Bo



 


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腸内細菌と動脈硬化性疾患

腸内細菌が動脈硬化性疾患に関与

近年、腸内細菌が炎症性腸疾患だけでなく糖尿病や脂質異常症といった代謝性疾患や悪性腫瘍、精神疾患などの発症に深く関係していることが分かってきているが、動脈硬化性疾患との関係も注目されている。
神戸大学大学院循環器内科学分野教授の平田健一氏は第115回日本内科学会(4月13~15日)で、自身の研究成果も交えて腸内細菌と動脈硬化性疾患との関係を講演、「将来は患者の便のパターンによってプロバイオティクスなどによる腸内細菌で介入する個別化医療の時代が来る」という考えを示した。


冠動脈疾患でLactobacillales目細菌が増加

平田氏らは、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの心血管危険因子を持つ患者(コントロール群)30例、健常者40例、冠動脈疾患患者30例から糞便提供を受け、細菌の16SrRNAを増幅して行う検査のT-RFLP法により腸内細菌パターンを調査した。
その結果、コントロール群に比べ冠動脈疾患群ではLactobacillales目の細菌が増加し、一方でBacteroides門が減少していた。


冠動脈疾患群の中でもLactobacillales目が極端に多い症例だけに限ると全て多枝病変症例であった(J Atheroscler Thromb 2016; 23: 908-921)。
また、他の研究グループではあるが、糖尿病症例、脳梗塞症例でもLactobacillales目が増加しているという報告もある。
冠動脈疾患群で少なかったBacteroides門を詳細に調べると、Bacteroides門のある2種類の菌が特徴的に少ないことが分かった。
このように、冠動脈疾患患者での腸内細菌パターンが明らかになってきている。


腸内細菌の研究成果を生かし、既に臨床試験も始まる

腸内細菌が動脈硬化を進展させる機序として
①腸内細菌に腸管バリア機能が障害されリポポリサッカライド(LPS)などの菌体成分が血中に入り炎症を起こす
②短鎖脂肪酸など腸内細菌の代謝産物が宿主に影響を与える
③腸内細菌が制御性T細胞や樹状細胞などの免疫細胞に修飾を加え宿主側の炎症を調節する
―などが考えられている。
③に関しては、わが国の研究グループによりClostridumが制御性T細胞を誘導することが報告されている(Science 2011; 331: 337-341)。

 
米・Cleveland Clinicの研究グループは、腸内細菌により心血管イベントの予測因子であるTMAO(トリメチルアミン-N-オキシド)が上昇する機序を解明している。
肉、チーズ、卵などの食事由来のホスファチジルコリンから腸内細菌は、トリメチルアミンリアーゼという酵素を使ってトリメチルアミン(TMA)を産生。
そのTMAは肝臓で酸化反応を受けTMAOとなり、マクロファージの泡沫化などにより動脈硬化を促進すると推測されている(N Engl J Med 2013; 368: 1575-1584Nat Med 2013; 19: 576-585Nature 2011; 472: 57-63Cell 2015; 163: 1585-1595)。
さらにトリメチルアミンリアーゼの阻害薬の候補物質も同研究グループは見つけており、既に前臨床試験が始まっているという。

 
同氏らも腸内細菌を使って動脈硬化を抑制することに動物実験で成功している。
動脈硬化モデルマウス(Apoe-/-マウス)に、Bacteroides門の2種類の菌を週5回、10週間にわたり経口投与をした結果、動脈硬化が抑制できた。
また、血中のLPSやサイトカイン類の濃度が低下をしており、腸内細菌の投与が慢性炎症を抑制したと考えられた。

 
最後に、腸内細菌と心不全との関係にも触れ、心不全でも血中のTMAO濃度が上昇しており、B型ナトリウムペプチド(BNP)とは独立した心不全マーカーとして今後期待されていることなどを紹介した。
 

<関連サイト>

動脈硬化と腸内細菌叢をつなげる物質TMAOとは?

https://lab.mykinso.com/kenkyu/20170418_1/


動脈硬化と腸内細菌叢の研究はここまで来た――20億円規模の研究も進行中

https://lab.mykinso.com/kenkyu/20170516_1/


「腸内細菌」は肥満、動脈硬化、がんの毒にも薬にもなる

http://diamond.jp/articles/-/123662


腸内細菌は動脈硬化症に 関連するか?

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/1/104_66/_pdf


食習慣と腸内細菌の関係  ~ 代謝異常の視点から ~

http://www.do-yukai.com/medical/57.html


腸内フローラへの介入と腸管免疫修飾による動脈硬化予防

http://bifidus-fund.jp/meeting/pdf/17th/S2_3.pdf


動脈硬化:赤肉に含まれる栄養素のL-カルニチンは腸内細菌叢の代謝を受けてアテローム性動脈硬化を促進する

http://www.natureasia.com/ja-jp/nm/19/5/nm.3145/


肉食の心血管病リスクに関する「カルニチン論争」 ――腸内細菌叢のエンテロタイプが鍵?

http://www.tmd.ac.jp/mri/cph/members/PDF/nikkei_carnitine2013July.pdf




<きょうの一曲>

Charles Aznavour - Les deux guitares - a l'Opera Garnier 2008 - 79 Faust

https://www.youtube.com/watch?v=Z24X730KABU




<きょうの一枚の絵>

slide4

古河原 泉 「明けて覚めて」 ミクストメディア (木炭・パステル・鉛筆・アクリル・水彩) 

http://www.bunkamura.co.jp/gallery/exhibition/170906kogahara.html 




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FAME2試験、5年追跡調査の結果

FAME2試験、5年追跡調査の結果は?/NEJM

安定冠動脈疾患患者において、冠血流予備量比(fractional flow reserve:FFR)ガイドによるPCI戦略は薬物療法単独と比較し、5年間の複合エンドポイント(死亡、心筋梗塞、緊急血行再建術)の発生を有意に低下させた。
ベルギーの研究グループが、無作為化非盲検試験FAME 2試験の5年追跡結果を報告した。
血行動態的に著しい狭窄のない患者は、薬物療法のみでも長期転帰は良好であったという。
(NEJM誌オンライン版 2018.5.22)


FFR≦0.80の安定冠動脈疾患患者約900例を対象に追跡試験

研究グループは、2010年5月15日~2012年1月15日に、欧州および北米の28施設において、冠動脈造影で50%以上の狭窄を認めた安定冠動脈疾患患者1,220例を登録した。
すべての狭窄病変についてFFRを測定し、FFR≦0.80の患者888例を、PCI+薬物療法群と薬物療法単独群に1対1の割合で無作為に割り付けた。


主要評価項目は、死亡、心筋梗塞および緊急血行再建術の複合エンドポイントであった。


複合エンドポイントの発生:PCI+薬物療法群13.9%、薬物療法単独群27.0%

5年時点の複合エンドポイントの発生率は、PCI+薬物療法群が薬物療法単独群より有意に低かった。
この差は、緊急血行再建術によるものであった。
死亡率はそれぞれ5.1%および5.2%、心筋梗塞は8.1%、12.0%で、両群間に有意差はなかった。


なお、複合エンドポイントの発生率はPCI+薬物療法群と登録コホート群とで差はなかった。
また、CCS分類II~IVの狭心症の患者の割合は、3年時点ではPCI+薬物療法群が薬物療法単独群より有意に低かったが、5年時点ではPCI+薬物療法群が低かったものの有意差はみられなかった。


英文抄録
Five-Year Outcomes with PCI Guided by Fractional Flow Reserve.

Panagiotis Xaplanteris, et al

The New England journal of medicine. 2018 May 22; doi: 10.1056/NEJMoa1803538.

https://pmc.carenet.com/?pmid=29785878&keiro=journal





以下、天理よろづ相談所病院循環器内科・中川義久部長によるこの論文に関するコメント記事です。
 

FAME2試験の5年追跡結果が発表、安定冠動脈疾患へのPCI施術の妥当性

FAME2試験の5年追跡の結果がパリで開催されたPCR2018で発表され、NEJM誌に同時掲載された(Xaplanteris P, et al. 2018 May 22.[Epub ahead of print])。
FAME2試験は、PCI施行予定の安定冠動脈疾患において、FFR値0.8以下で定義される機能的虚血を有する場合に、PCI+至適薬物治療を行った場合と、至適薬物治療のみの場合をランダマイズし比較した研究である。


全死亡+心筋梗塞+緊急血行再建で定義される主要評価項目は、PCI+至適薬物治療のほうが、至適薬物治療のみよりも有意に優れていた。
2年時の優位性が5年時にも維持されていたのである。
統計学的有意ではないが、心筋梗塞の発生が、PCI+至適薬物治療群において低い傾向にあることも興味深い。
主要評価項目の優位性をもたらしたのは、緊急血行再建の減少によるところが大きかった。
オープンデザインの試験で、緊急血行再建という恣意性の介入する余地のある項目の寄与が大きいことに批判がないわけではない。
しかし、安定冠動脈疾患へのPCI施行の妥当性を示した本研究結果の意義は大きいと言えよう。


FAME2試験から、7ヵ月追跡結果(De Bruyne B, et al. N Engl J Med. 2012;367:991-1001.)、2年追跡結果(De Bruyne B, et al. N Engl J Med. 2014;371:1208-1217.)の2本の論文がNEJM誌にすでに掲載されている。
同じ試験から3本目のNEJM誌である。
「打出の小槌」のように追跡期間を延長すればNEJM誌に掲載されるというのは、安定冠動脈疾患へのPCI適応について皆が高い興味をもっていることの証左であろう。
本邦においても、2018年4月に診療報酬改定がなされた。
その中で、安定冠動脈疾患に対して待機的に施行するPCIは、術前の検査などにより機能的虚血の存在が示されていることが算定要件とされた。
安定冠動脈疾患へのPCI適応は、心血管イベント抑制という観点だけでなく、医療経済的観点からも注目されている。
NEJM誌の編集部も、その社会的意義を認識するがゆえにFAME2試験の結果を、発表と同時掲載する判断をしたものと推察される。
インターベンション施行医は、医学的・経済的に自らの施術するPCIの妥当性を社会に向けて説明する責任を負っているのである。
本邦においては、急性冠症候群への緊急PCIよりも安定冠動脈疾患への待機的PCIの比率が他国よりも高いとされる。
日本のインターベンション施行医こそ、もっと説明責任を果たす必要があるのではないか。


<私的コメント>

最近、「安定冠動脈疾患への待機的PCI」は至適薬物治療に対する優位性が疑問視される風潮になっていました。

FFR自体にも問題点が内包されているようですが、FFR値0.8以下という症例に限定するとPCIに一定の意義が出るという研究です。

PCIの適応を、狭窄率ではなくFFRで決定するというのが最近の傾向のようです。

しかし、少し気懸りなことは、これらの手法には不安定plaqueの概念は取り入れられていないことです。

不安定plaqueが発見された場合に、FFRや狭窄度が基準値以下(正常範囲内)であっても「より危険」な状態であることは容易に想像出来ます。

そのような際には「内科的治療」と「待機的PCI+内科的治療」の治療手段の選択に迷うことがあると思われます。

いずれにしろ、この論文はPCI専門医にはグッドニュース(朗報)ではあります。 


最後に、日本人と欧米人とを一律に論じることには問題があることは勿論です。


また「血行動態的に著しい狭窄のない患者は、薬物療法のみでも長期転帰は良好」ということに変わりはありません。 


参考
Atherothrombosis and high-risk plaque: part I: evolving concepts.


The myth of the "vulnerable plaque": transitioning from a focus on individual lesions to atherosclerotic disease burden for coronary artery disease risk assessment.


Coronary Plaque Disruption


Atherothrombosis and High-Risk Plaque: Part I: Evolving Concepts


<FFR 関連サイト>

FFR-CTでの虚血のカットオフ値

冠血行再建術施行の指標となる心筋血流予備量比(FFR)のカットオフ値は、圧ワイヤーを使って観血的に計測する場合は0.8とされている。

しかし、冠動脈CTのデータに基づいて算出する「FFR-CT」では0.72が適切であるとする検討結果が発表された。

(観血的FFRよりFFR-CTの方が、カットオフ値はやや低めと考えられる)


冠血流予備比に基づく「PCI見送り」

J-CONFIRM registryの1年中間解析の結果

・PCI見送り群の1年追跡時の標的血管不全(TVF)発生率は3.4%だったが、その大半は標的病変血行再建(TLR)であり、心臓死や標的血管関連の心筋梗塞の発生率は極めて低かったことから、FFRに基づくPCIの施行判断は妥当と考えられた。


DEFINE-FLAIR study

・19ヵ国49施設(日本から5施設)が参加し、iFR guide PCIとFFR guide PCIを前向きランダム化試験により比較検討した研究である。同様のプロトコルで行われたスウェーデン、デンマーク、アイスランドのnational registryを利用したSWEDEHEARTの結果も同時に発表された。


FFR良好症例の冠微小循環障害評価の意義

冠血流予備能(Coronary Flow Reserve:CFR)微小循環抵抗指標(Index of Microcirculatory Resistance:IMR)を用い、FFRが良好であった症例の予後予測における冠微小循環障害評価の意義を検討した韓国のグループの論文。


日常臨床でのFFR-CT使用


DEFER Trail、FAME Study


iFRガイドPCIとFFRガイドPCI


「FFR-CT」



 

<FAME2試験  関連サイト>

DEFER Trail、FAME Study




<温故知新コーナー> 

心筋梗塞の半分はsilent

・心筋梗塞(MI)の約半分(45%以上)は胸痛などの徴候が見られない無症候性心筋梗塞(SMI)であり、SMIは心疾患死亡やその他の原因による死亡リスクが高くなることが、米国の研究グループにより明らかになった。

・SMIの発生と予後に人種と性差が存在する。

MI の既往のない人にECGでMI 所見が認められた場合、人種と性差を考慮した上で、CHD予防を強化する必要があるかもしれない。

・SMI発症率は黒人と白人で有意差はなかったが,CMI発症率は白人の方が黒人よりも有意に高かった。

・SMIとCMIはCHD死亡と全死亡と有意な関連が認められた。

SMIとCMIは男女の死亡リスクであったが、女性でより強いリスクであった。

(CMI;臨床的に診断された心筋梗塞) 




<きょうの一曲>

Dalida besame mucho 1979




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TIAから5年後も心血管イベントリスクは高い

TIAから5年後も心血管イベントリスクは高い 21カ国42施設のコホート研究

フランスの研究グループは、一過性脳虚血発作(TIA)または軽症脳梗塞を起こした患者を5年後まで追跡し、その結果、脳卒中を含む心血管複合イベントの発生率は、1年目が6.4%で、2年目から5年目までの期間も6.4%だったと報告した。
(NEJM誌電子版に2018.5.16)


TIAregistry.orgプロジェクトは、TIAまたは軽症脳梗塞を起こした患者の短期的成績(3カ月から1年後まで)と長期的成績(5年間)を評価する目的で行われたコホート研究だ。
脳卒中の専門医がいて年間に100症例以上を受け入れている、21カ国の施設が参加して、2009~2011年に患者登録を行った。
組み入れ条件は、7日以内にTIAまたは軽症脳梗塞を経験した18歳以上の患者で、網膜または脳の虚血症状が一過性に現れ、専門医の初回評価で修正ランキンスケール(mRS)のスコアが0~1だった人。


61施設が参加した短期的成績は既に別の論文で報告しているが、今回は5年後までの追跡率が50%以上だった42施設のデータを用いて、長期的成績をまとめた。
これらの施設では追跡率の中央値が92.3%(四分位範囲は83.4~97.8)だった。


主要評価項目は、心血管疾患による死亡、非致死的脳卒中(脳梗塞または脳出血)、非致死的急性冠症候群(心筋梗塞または緊急カテーテル治療が必要な不安定狭心症)の複合イベントとした。
2次評価項目は、主要評価項目に含まれる個々のイベント、TIAの再発、あらゆる原因の死亡、脳出血、最終評価時点のmRSスコアとした。


42施設で登録した3847人(当初のコホートの80.3%に相当)の患者を分析した。
初回のTIAまたは脳卒中による入院後と、5年後の薬剤使用患者の割合は、降圧薬がそれぞれ68.7%と70.5%、脂質降下薬が70.5%と63.9%、血糖降下薬が18.8%と17.7%、抗血小板薬は90.6%と71.1%、抗凝固薬は16.2%と17.0%だった。
5年時点の平均血圧は132/77mmHgで、LDL-c値の平均は92mg/dLだった。ベースラインでは835人が喫煙者で、1年後の時点では388人、5年後も292人が喫煙者だった。


データカットオフ日となった2017年8月16日までの追跡期間の中央値は5.01年になった。
主要評価項目の複合イベントは、469人に発生した。内訳は心血管死亡が96人、非致死的脳卒中が297人、非致死的急性冠症候群は76人だった。
複合イベントの累積発生率は12.9%(95%信頼区間11.8-14.1%)だった。
うち235件(50.1%)は2~5年後までの間に発生していた。絶対発生率は、1年目が6.4%、2~5年の間も6.4%だった。
カプランマイヤー法を用いて経時的な累積発生率を分析したところ、1年後以降も累積発生率は直線的に上昇していた。


脳卒中は5年間に345人(累積発生率は9.5%、8.5-10.5)に発生、うち44件は致死的脳卒中だった。345人中149人(43.2%)は2年目から5年目までの発症だった。
5年間の総死亡は373人(10.6%)、あらゆる脳卒中またはTIAの再発は621人(16.8%)、あらゆる急性冠症候群は84人(2.4%)、あらゆる大出血は53人(1.5%)、頭蓋内出血は39人(1.1%)に発生していた。
頭蓋内出血を経験した患者のうちの15人(38%)は抗凝固薬を使用しており(抗凝固薬使用者の3.3%に相当)、16人(41%)は抗血小板薬を単剤使用(抗血小板薬使用者の0.9%)、5人(13%)は抗血小板薬を2剤併用していた(併用者の3.9%)。


多変量解析で、2年目から5年後までの脳卒中の再発の予測因子として有意だったのは、同側の大きな動脈のアテローム性硬化症、心原性塞栓症、ベースラインのABCD2スコア(スコア幅は0-7で高スコアほど脳卒中リスクは高い)が4以上だった。


これらの結果から著者らは、TIAまたは軽症脳梗塞患者は5年経過しても心血管イベントのリスクが上昇しており、イベントの約半数は2~5年後に起きていると結論している。


英文抄録

Five-Year Risk of Stroke after TIA or Minor Ischemic Stroke



<関連サイト>

危険な脳梗塞の前兆「一過性脳虚血発作」(1)

・TIAになると、5年以内に30%の方が脳梗塞になるといわれている。また、そのうち3ヶ月以内には15%・2週間以内には10%が脳梗塞を起こす。

そして2週間以内に脳梗塞を起こした10%のうち、3割は24時間以内に発症している。

つまり、5年以内よりも3ヶ月以内、3ヶ月以内よりも2週間以内、2週間以内よりも24時間以内…と、TIAは発作を起こした直後ほど危険な状態である。

・ABCD2スコア

このスコア(合計0~7点)が高いほど、TIAの後、早期に脳梗塞を引き起こす可能性が高いとされている。

特に3~4点以上は注意が必要だ。

しかし、これに当てはまらないからと言ってTIAの症状が出ても受診をしなくてよいという訳ではない。

万が一TIAの症状が出た場合には、速やかに病院を受診すべきだ。

また、このABCD2スコアも合わせ、脳梗塞のリスク評価は以下7つのように考えられています。

①MR検査の拡散強調画像でTIAにも関わらず、脳梗塞と同じ変化がある

②ABCD2スコアで3~4点以上(4点以上は即入院!)

③頭蓋内・頸部の動脈に狭窄(狭くなっている部分)がある

④心房細動(脳梗塞の原因となる不整脈)を伴っている
⑤TIAの発作を繰り返している

⑥TIAの発作の持続時間が長くなっている

⑦血液凝固異常を伴っている


危険な脳梗塞の前兆「一過性脳虚血発作」(2)―急性脳血管症候群とは?

・発症後早期のTIAと急性期の脳梗塞を包括し、「急性脳血管症候群(ACVS)」として両者を一連の病態として捉えようという世界的な動きがある。

このふたつの疾患は「連続した概念」であり、発症後間もないTIAがいかに危険であるかを啓発するのが「ACVS」の狙いだ。


一過性脳虚血発作の3つの原因、その症状とは?


一過性脳虚血発作(TIA)の検査―原因を明らかにするために


一過性脳虚血発作(TIA)の治療―脳梗塞を予防するためには





<きょうの一曲>

If You Go Away - Helen Merrill & Stan Getz (Tribute to Virna Lisi)





 

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