葦の髄から循環器の世界をのぞく

訪問ありがとうございます。 このブログは医療関係者を対象としています。 老境に入った内科開業医が、昔専門とした循環器科への熱い思い断ちがたく一人でお勉強した日記です。 内容は循環器科に限定しています。 他に「井蛙内科開業医/診療録」「ふくろう医者の診察室」のブログもあります。

2016年10月

高血圧と認知機能

高血圧と認知機能に関する新AHA声明

http://www.carenet.com/medscape/cardiology/000297.html

高血圧は血管性認知障害の主要なリスク因子であり、アルツハイマー病の潜在的リスク因子として浮上してきていると、米国心臓協会(AHA)の新たな声明が結論付けている。


血圧治療は心血管イベント低減に重要である。
認知症との関連は完全に確立されてはいないが、この論点に関するすべてのデータをまとめると、中年期における血圧上昇が脳に対し有害であるようだ。
 

疫学調査により、中年期における血圧治療が晩年の認知障害に対し有益であることが示唆されている。
しかし、これに関する決定的な証明はまだなされていない。


血圧と認知症の確かな関連と、血圧を下げることがその後の認知症を防ぎうるかどうかを見極めるための前向き無作為化試験の必要性がクローズアップされて来た。

その種の試験の1つである、
SPRINT MIND試験の報告が来年予定されている。
それまでは、個々の患者に応じた血圧治療を確実に実施すべきである。

本声明は、10月10日付のオンライン版Hypertension誌に掲載された。


高血圧と認知症は両方ともよくある病気であり、高血圧に伴う脳動脈硬化は血管性認知障害と関連することが知られている。
本声明は高血圧の加齢性認知障害への寄与に関する評価を提供しようとするものである。


今回のエビデンスは、中年期(50~60歳)における高血圧と晩年(80歳以上)の認知症の間に非常に強い関連があることを示唆している。これは血管性認知症に加え、アルツハイマー病に対しても同様である」。

このことは今までにも、個別の報告で示唆されてきたが、すべてのエビデンスがこれほど包括的に検証されたのは今回が初めてである。
加えて、それらの研究では個別の年齢カテゴリーについて調べられておらず、またそのほとんどが後ろ向きである。


多くの個別研究において、認知機能は主要評価項目として使用されておらず、たいていは副次的評価項目であり、またさまざまな定義が使われているため、解釈が難しい。

しかし、一生涯にわたる最適血圧として1つの値を推奨することな出来ない。


これはおそらく年齢とともに変化するものであるからだ。
高齢者では、頸動脈狭窄が発生し始めるため、血流を脳に行き渡らせるにはより高い血圧が必要であることから、やや高血圧であることがベネフィットをもたらす考えられる。
たとえば、重度の脳血管障害を有する人では、血圧が120/80mmHgでは低すぎるだろう。
そのため、理想的な血圧は個別化する必要があると考えられる。


医療の個別化のために遺伝子解析を行っているようなこの
プレシジョンメディシンの時代に、血圧のように単純なものについて、未だに1つの値が全員に適合するとみなされるのは、奇妙なことでもある。


高血圧は、脳血管構造を破綻させ、アテローム性動脈硬化を促進し、必要不可欠な脳血管の調節メカニズムを損なうと、本声明において記されている。
これらの血管の変化によって、認知機能にとって重要でとくに傷つきやすい白質領域において、脳が虚血性傷害を受けやすくなり、アルツハイマー病の病理が進行する可能性がある。


これまでに得られたエビデンスは中年期の高血圧が中年期および晩年の認知機能に悪影響を与えることを強固に示している。
実行機能と処理速度が最も影響を受ける認知領域のようだが、記憶もまた損なわれうる。


加齢に関しては、データは決定的なものではないが、晩年の血圧が高いことと認知が良好であることとの関連についてのエビデンスがあり、これは生涯にわたって一定の血圧を推奨することの複雑さを浮き彫りにしている。


加齢
に加え、認知機能の衰えと高血圧との関連に影響する可能性がある他の因子は、閉経状況、APOE ε4遺伝子型、インスリン抵抗性、全身性炎症である。


本声明は、高血圧治療の認知機能に対する効果はあまり明らかになっていないことを述べている。
生涯のあらゆる時期の高血圧治療が認知機能を改善するかどうかについての、無作為化二重盲検臨床試験からのエビデンスは、決定的なものには程遠い。


アルツハイマー病に関しては、以下のように述べられている。
「高血圧とアルツハイマー病における興味深い関連が明らかになってきており、それにより慢性的な高血圧がアルツハイマー病の病理を悪化させ認知症の一因となるという見込みが高まっている。これにより高血圧治療がアルツハイマー病の発症や進行の低減に貢献する可能性が高まることから、これらの知見は非常に重要である」


現時点ではエビデンスに基づいた推奨を作成できないため、脳血管の状態と併存疾患について考慮したうえでの、中年期の高血圧治療および晩年の降圧薬の賢明な使用が妥当であると思われる。


英文記事

New AHA Statement on Hypertension and Cognitive Function

http://www.medscape.com/viewarticle/870245


私的コメント
認知症(認知機能障害)は現時点では

①アルツハイマー型認知症

②レビー小体型認知症

③前頭側頭型認知症(ピック病)

④脳血管性認知症

に分類されています。


この論文は認知症すなわち①~④を包括した概念と④の脳血管性認知症を峻別している様子がみられません。

脳血管性認知症ならば高血圧が関与しているのは当然のことです。

リアルワールド(実臨床)ではアルツハイマー型認知症などは高齢者に多い特徴があることから脳血管性認知症の合併は当然ありうることですし、実際多いのではないでしょうか。

今回紹介する論文が理解しにくいのはそのためだと思われます。




<きょうの一曲>

Violin & Cello Duo - Pachelbel Canon in D /AKG 220

https://www.youtube.com/watch?v=BHf4pvm-gGM



<きょうの一枚の絵>

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石黒秀治 サンマルタン運河(8号)

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アルドステロン分泌抑制薬

アルドステロン分泌抑制薬 CYP11B2発現を抑制する既存の化合物

https://medical-tribune.co.jp/news/2016/1020504956/?adlpo_rcc=1

日本には高血圧患者が4,000万人存在すると推定され、未治療の患者を含めると3,000万人程度で血圧コントロールが不十分とされる。
その中には、3剤以上の降圧薬を内服してもコントロール不良な治療抵抗性高血圧や原発性アルドステロン症が含まれる可能性もあり、新規降圧薬の開発が期待される。
東北大学大学院分子内分泌学分野教授の菅原明氏と同分野助教の伊藤亮氏は、約2万種類の化合物ライブラリーのスクリーニングを行い、既存薬の中からアルドステロン合成酵素遺伝子の発現を抑制する化合物を同定し、マウスで降圧効果が確認されたと第39回日本高血圧学会(9月30日~10月2日)で報告した。
 

CYP11B2 の安定発現株を用いたスクリーニング

既存の降圧薬には直接的レニン阻害薬やアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)などさまざまな種類があるが、現時点では副腎からのアルドステロンの合成や分泌を直接抑制する薬剤は存在しない。
そこで、菅原氏らはアルドステロン産生の律速酵素であるアルドステロン合成酵素遺伝子CYP11B2 に着目。
アンジオテンシンⅡ、カリウムなどの転写因子を介してCYP11B2 の転写活性が亢進し、アルドステロンが分泌されることから、これら転写因子のシグナル伝達を抑制する新規化合物の同定を目指した。

 
まず同氏らは、ヒト副腎H295R細胞を用いてCYP11B2 転写活性を鋭敏に感知することが可能なCYP11B2 プロモーター(転写開始に関与する遺伝子の上流領域)安定発現株を作製し、変動係数、シグナル強度の比、Z'値(アッセイ系の質の目安)による評価により、ハイスループットスクリーニングが行えることを確認した。
この細胞株を用いて東京大学創薬機構コアライブラリー(9,600種類)、同既存薬ライブラリー(1,979種類)、東北大学薬学部ライブラリー(5,562種類)の約1万7,000種類の化合物を対象にスクリーニングを行った。
東北大学は、スクリーニング設備を整備した文部科学省最先端研究基盤事業の6拠点の1つで、化合物ライブラリーを活用した創薬研究を行っている。
 

高血圧モデルマウスで血圧が低下

今回は東京大学創薬機構の既存薬ライブラリー(1,979種類)から、CYP11B2 発現を制御する化合物をスクリーニングした結果が報告された。

 
スクリーニングの結果、22種類の化合物がヒットし、うち7種類の化合物が既知の治療薬、15種類の化合物が副腎に対する影響が全く知られていない薬剤だった。
この15種類の化合物のうち1つの化合物は、H295R細胞株のアンジオテンシンⅡによるCYP11B2 発現応答とアルドステロン合成を阻害すること、高血圧モデルマウス(つくば高血圧マウス)において対照群と比べて体重を変化させることなく有意に血圧が低下したことが確認された。

 
以上から、菅原氏は「既存薬ライブラリーからCYP11B2 の発現を抑制する化合物の候補が見いだされた。
また、本系を用いて新しい機序の降圧薬の開発を進めることが可能と考えられた」と述べ、「特にカリウム刺激によりCYP11B2 の発現を抑制するような薬剤が発見されれば、原発性アルドステロン症に対する新規治療薬の開発につながる可能性が高い。既存薬と機序が異なることから、難治性高血圧患者への治療薬としても期待が持てる」と展望した。

 



<きょうの一曲>

Shenandoah Violin Solo - Mairead Nesbitt

https://www.youtube.com/watch?v=5Xmg0uVsPpk


<きょうの一枚の絵>

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松下久信「日本平の朝焼」




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CKDの”超”早期指標に有用な尿中蛋白

CKDの”超”早期指標に有用な尿中蛋白

https://medical-tribune.co.jp/news/2016/1027505103/
(MT2016.10.27) 

慢性腎臓病(CKD)の主な診断マーカーとしては、血清クレアチニン(Cr)値や推算糸球体濾過量(eGFR)が知られているが、いずれも腎機能障害がある程度進行してからでないと異常は検出できない。東京高輪病院院長の木村健二郎氏は、従来の診断マーカーより早期の段階で正確に病態を把握できる新しい診断マーカーとして尿中に排泄されるL型の脂肪酸結合蛋白(L-FABP)の有用性を、先ごろ東京で開かれたシミックホールディングスのプレスセミナーで述べた。

近位尿細管の虚血・酸化ストレスを反映

 L-FABPは、近位尿細管上皮細胞の細胞質に発現している14kDaの低分子量蛋白で、貝殻状構造をしており脂肪酸と結合する。尿細管の虚血・酸化ストレスを反映するバイオマーカーとされる。尿中L-FABPの高値は腎機能障害の進展リスクが高いことを意味する。

 2型糖尿病患者104例を4年間追跡した研究において、登録時の糖尿病性腎症のステージ別に見た尿中L-FABPは、ステージの進行とともに有意に高値になることが分かった。また、微量アルブミン尿を示していない正常アルブミン尿でも非糖尿病の対照群に比べて尿中L-FABPが有意に高値を示し、木村氏は「尿蛋白が排泄されていなくても、既に腎臓には糖尿病によるなんらかのストレスがかかってることがうかがわれた」と述べた。

糖尿病性腎症の発症予測が可能

 さらに、追跡開始から4年後の腎症進行に対する各検査指標の予測能をROC曲線の曲線下面積(AUC)で比較したところ、尿中L-FABP(0.85)と尿中アルブミン(0.86)が病期進行の優れた予測マーカーであることが明らかとなった。そこで、この2つをそれぞれの基準値で二分し計4群に分け病期進行の予測能を比較すると、尿中L-FABPの予測能が高く、両者の併用によってさらに予測精度が向上することが示された。

 糖尿病性腎症や腎硬化症の患者294例を追跡し、尿中L-FABP、アルブミン、N-アセチルグルコサミニダーゼ(NAG)といった複数のバイオマーカーの有用性を比較した試験では、複合エンドポイントとして、脳卒中、心筋梗塞、手術を要する閉塞性動脈硬化症(ASO)、透析導入、死亡を設定した結果、尿中L-FABPのAUCが0.825で、3つの指標の中でリスク予測能が最も高かった。

 尿中L-FABPは、治療後の検査値の変動が予後と相関しており、木村氏は「CKDのモニタリングマーカーとして日常診療で使える」とした。

 なお、尿中L-FABPはすでに保険収載されており、糖尿病性腎症の場合、保険上3カ月に1回測定でき、微量アルブミン尿との同時測定も可能。

 一方、尿中L-FABPは急性腎障害(AKI)の重症度判定や治療効果判定などにおいて、血清Crなどと比較して、より鋭敏な指標であることが報告されているという。すなわち、心臓外科手術後のAKIや造影剤腎症の診断にL-FABPを用いることで、こうしたAKIへの早期治療が可能となる。

 これらのことから、同氏は「尿中L-FABPは従来の診断マーカーでは捉えることのできない病態を明らかにできる優れた臨床マーカーで、CKDおよびAKIの診断において極めて有用だ」と述べた。


<きょうの一曲>

美しく青きドナウ ウィーン・フィル ニューイヤー・コンサート´97

https://www.youtube.com/watch?v=iHa4zbhUJPI


<きょうの一枚の絵>


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西尾浩二「Roquebrune」




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スタチン関連自己免疫性ミオパチー

スタチン関連自己免疫性ミオパチーとは何か  適切に治療されれば転帰は良好

スタチンは心血管疾患の発症を抑制するのに有効で安全と考えられているが、ごくまれにHMG-CoA還元酵素に対する自己抗体が作られ、免疫抑制療法が必要な自己免疫性ミオパチーを生じさせることがある。
米国立衛生研究所(NIH)のAndrew L. Mammen氏は、この疾患の総説をNEJM誌2016年2月18日号に報告した。


疫学と一般的な臨床特性

スタチン関連自己免疫性ミオパチーは、スタチンの有害事象としては極めてまれで、発症率は明確ではないが、スタチン使用者10万人当たり2~3人と推定されている。
ミオパチーは、スタチン治療開始
直後から発生する可能性がある一方で、何年も副作用なく継続使用できていた患者に生じる場合もある
症状は筋肉痛や、椅子から立ち上がる、階段を上がる、重いものを持ち上げるなどの動作困難を起こす。
ひとたび筋力低下が知覚されると、スタチンの
使用を中止してもその状態は継続または悪化する。
多くの場合、筋力低下は軽症から中等症だが、重症化もあり得る。
ミオパチーは主に骨格筋に起こるが、軽症の関節痛や発疹を経験する患者もいる。


診断

筋力低下は通常、体幹に近い筋肉に対称的に生じる
活動性の患者では、クレアチンキナーゼ値は持続的に上昇し、おおよそ90%の症例で基準範囲(0~150IU/L)の10倍を超える2000IU/L超になる。
筋電図は低振幅の運動単位電位を示し、筋障害の進行を特徴づける自発性活動が増加している。
MRIでは筋浮腫が見られる。


患者の筋生検で認められる病理学的特徴は、筋細胞の壊死と再生だ。
筋内膜領域と血管周囲領域に主に認められる浸潤細胞は、多くがマクロファージでおそらく組織を修復する役割を担っていると考えられる。数は少ないものの、CD4+細胞とCD8+細胞や、CD123+の形質細胞性樹状細胞も見られることがある。
また、一般にMHCクラスI分子の過剰発現が見られる。
こうした組織学的特徴は、免疫介在性壊死性ミオパチーの診断と一致する。
生検標本のごく一部に、壊死していない筋細胞または縁どり空胞へのリンパ球の侵入が見られる。
それらはそれぞれ、多発性筋炎と封入体筋炎の特徴だ。


スタチンの標的であるHMG-CoA還元酵素に対する自己抗体は、壊死性ミオパシー領域に由来する生検標本に主に認められ、それ以外の部位の筋肉にはほとんど見られない。
また、自己抗体はスタチンで治療しても筋障害が見られない患者や、スタチンの中止で自然に軽快するミオパチー患者からは見つかっていない。
そのため、HMG-CoA還元酵素に対する自己抗体が陽性になった場合、自己免疫性のプロセスが示唆される。
ELISA法による自己抗体測定の偽陽性率は約0.7%とされている。
なお、HMG-CoA還元酵素に対する自己抗体は、
スタチンを処方されたことのない自己免疫性ミオパチー患者からも見つかっている


発症機序

自己抗体の出現機序は不明である。
いくつかの観察研究から仮説モデルが示唆されている。
第一にクラスII HLAアレルのうちのDRB1*11:01がこの自己抗体の出現に強力に関係している。
第二にHMG-CoA還元酵素の発現レベルはほとんどの組織で低いが、スタチン使用者では、筋肉などの細胞で発現が顕著に上昇する。
第三に再生中の筋細胞は正常な筋細胞の分化に必要なHMG-CoA還元酵素を高レベル発現している。
そのため、遺伝的に感受性の高い患者がスタチンに誘発されてHMG-CoA還元酵素が過剰発現することが、自己抗体を誘導する原因ではないかと考えられている。
また、スタチンがHMG-CoA還元酵素に結合すると、この酵素の立体構造に変化が生じて、通常は隠れている抗原決定基が現れる可能性も想定されている。


一度自己免疫反応が活性化してしまうと、スタチンの治療中止後も、再生中の筋細胞では正常な細胞分化を促すためにHMG-CoA還元酵素のレベルが高いため、自己免疫反応が進んでしまうのであろう。
スタチン誘発性の自己免疫性ミオパチーにおいて筋損傷が生じるメカニズムも明らかではない。
自己抗体と、交差反応する未確認の抗原との結合が有害である可能性も示唆されている。


治療

スタチンの使用を中止しても、スタチン誘発性の自己免疫性ミオパチーが自然に改善することはほとんどない。
軽い筋力低下が見られる患者の場合には、スタチン治療を中止して観察を続け、筋障害が改善しない、または悪化し続ける患者には免疫抑制療法を開始するのが好ましい。
しかし、ほとんどの患者が、
スタチンの中止と免疫抑制療法を実施すべきである。


スタチン関連自己免疫性ミオパチー患者を対象とする臨床試験は行われていないが、臨床経験からは、まず、プレドニゾロン1mg/kg/日の経口投与を行うべきだと考えられている。
非常に軽症の患者以外には、当初からメトトレキサート、アザチオプリン、またはミコフェノール酸モフェチルの適用を考慮する。
重症患者、または、当初に処方された薬剤を8~12週使用しても反応が見られない患者には、免疫グロブリンの静脈内投与やリツキシマブが追加される。
一部の患者(糖尿病がある患者など)には、免疫グロブリン静注が第一選択になるだろう。


筋力が完全に回復した後は、再発がないことを確認しつつ、免疫抑制薬の用量を徐々に削減する必要がある。
再発し、長期的な治療が必要になる患者も一部に存在する。
幸いなことに、診断がついて適切に治療されれば、この疾患の転帰は非常に良好で、患者の筋力も大きく改善することが知られている。




<きょうの一曲>

THE VERY BEST OF PETER, PAUL AND MARY

https://www.youtube.com/watch?v=f-qBsgKeNbk 



<きょうの一枚の絵>

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片岡球子「錦織りなすめでたき富士」リトグラフ1992年  




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酸化ストレスの指標が血糖変動を反映

酸化ストレスの指標が血糖変動を反映か

https://medical-tribune.co.jp/news/2016/1025505073/

国立病院機構熊本医療センター糖尿病・内分泌内科部長の西川武志氏は、糖尿病合併症予防におけるHbA1cの意義と限界を考察し、他の血糖関連指標について合併症予防指標としての可能性を検討。
1, 5-AGや酸化ストレス指標が血糖変動の指標となる可能性を、第31回日本糖尿病合併症学会・第22回日本糖尿病眼学会(2016.10.7~8)の合同シンポジウム「合併症のリスク因子~その指標を考える~」で示した。


HbA1cは血糖変動を反映しない

近年、食後高血糖や低血糖、血糖変動が合併症促進因子であることが指摘されており、これらは合併症管理予防指標であるHbA1cには十分反映されない。
実際、
HbA1cは平均血糖値や食後高血糖とは相関を示すが、血糖変動とは相関しないことが報告されている。
また、最近の高血糖と軽微な高血糖のいずれも反映する1, 5-AGが血糖変動の指標となりうるとの報告がある。
しかし、HbA1c 8%以上の著明な高血糖例では相関せず、アカルボースやSGLT2阻害薬投与中は使用できないなどのデメリットもある。

 
合併症発症機構の観点から考えると、高血糖は酸化ストレスを増強し、血管内皮機能障害を起こして血管合併症を惹起するとされている。
そこで、高血糖による活性酸素への影響を検討。
血管内皮細胞を用いた実験により、
高グルコース培養下ではミトコンドリア由来活性酸素の増加が認められ、それによって細胞内代謝異常を引き起こし、合併症を発症進展させることが示唆された。
糖尿病患者ではミトコンドリアDNA由来の酸化ストレス指標である尿中8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG )がHbA1cと有意に相関し、Kumamoto Study対象者での解析では、尿中8-OHdGが従来インスリン治療群より強化インスリン治療群で有意に減少することが認められた。


低血糖や血糖変動でも活性酸素が増加 

糖尿病マウスに低血糖刺激を与えると、8-OHdGと網膜症指標であるSemaphorin-3a (SEM3A)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)のいずれも著明に増加するなどの低血糖による活性酸素の増加を確認している。

 
さらに、血糖変動によっても活性酸素が増加するという。
酸化ストレスの指標であるニトロチロシン陽性細胞数は、糖尿病ラットの血糖変動群と高血糖群で同等であった。
2型糖尿病患者では血糖の変動に応じてニトロチロシンや血管拡張反応が変化する他、平均血糖変動幅と尿中8-iso-Prostaglandin(8-iso PG)F2α排泄量が有意に相関することも報告されている。

 
同氏は「
1, 5-AGやニトロチロシン、尿中8-iso PGF2α排泄量といった酸化ストレス指標は、合併症促進因子である血糖変動の指標になる可能性がある」と示唆した。


<きょうの一曲>

Jon Manasse - Weber Introduction,Theme and Variations,Op Posth

https://www.youtube.com/watch?v=KczLqMv1cPA


<きょうの一枚の絵>


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吉野 純  中禅寺湖 湖畔 SM 


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ACE2賦活薬とMas受容体刺激薬

ACE2賦活薬とMas受容体刺激薬 臓器保護薬としての開発が妥当か

https://medical-tribune.co.jp/news/2016/1024505043/
(MT2016.10.26)

高血圧治療薬は治療満足度、薬剤貢献度ともに高いことがわが国の調査で報告されている。
しかし、3種類以上の降圧薬を服用しても降圧目標に達しない治療抵抗性高血圧患者が高血圧患者全体の2割程度存在するとされ、新規降圧薬の開発が求められているのが現状である。
第39回日本高血圧学会総会(2016.9.30~10.2)で新規高圧薬に関するシンポジウムが開催され、鹿児島大学大学院心臓血管・高血圧内科学教授の大石充氏は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)2賦活薬とMas受容体刺激薬は降圧薬としてではなく臓器保護薬として期待が持てる薬剤だと展望した。


ACE2の欠損や賦活では血圧への影響は見られない

高血圧治療の重要なターゲットであるレニン・アンジオテンシン(RA)系において、分解酵素であるACE2の作用により、アンジオテンシンⅡから産生されたアンジオテンシン1-7がMas受容体と結合することで血管拡張と相反し、RA系を制御する。
2002年にACE2ノックアウト(KO)マウスが心不全を発症したことが報告され、その後多くの検討が行われてきた。

 
大石氏らは、ACE2KOマウスによる高血圧心不全モデルでは、野生型マウスと比べて死亡率が高く、心臓でのアンジオテンシンⅡの産生が亢進したことを報告している。
しかし、同氏らがカテーテルで直接血圧を測定したところ、野生型、KOマウスともに差が認められなかった。
同氏によると、ACE2の持つ多面的作用のうち、アンジオテンシン1-7の産生、アンジオテンシンⅡの分解は血圧低下に寄与するが、ブラジキニンの分解は血圧を上昇させる方向に働く可能性があるという。

 
さらに、運動マウス群と非運動マウス群にACE2賦活薬を投与しても、各マウス群での血圧は投与前と比べて差が見られなかったことが報告されている。


同氏は「ACE2を欠損、あるいは賦活しただけでは血圧が変化しない可能性がある」と指摘した。


SARS感染の増強や発がんの可能性は低い

その後、ACE2賦活薬が肺高血圧症の改善や大動脈瘤の縮小に効果があることが報告されたが、APN01投与は健康人に対する血圧の変化が認められず、降圧薬としては開発が終了した。

 
Mas受容体刺激薬については、ラットに対する検討ではAVE0991の投与後も血圧が変化しないことが示されたが、CGEN-856Sの注入は血圧を経時的に下げ、アンジオテンシン1-7の内服は血圧と心拍数の減少、左室駆出率(LVEF)の改善が認められたことが報告されている。

 
有害事象については、ACE2は2000年にACEホモログとして同定され、アンジオテンシン1-7を産生する一方で重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスの受容体としても知られるが、ACE2の強発現でSARSの感染が増強することは報告されていない。
また、Mas受容体は悪性類表皮種から同定され、がん原遺伝子であることも明らかになっているが、基礎実験での発がんの可能性は極めて低いという。

 
以上から、大石氏は「ACE2賦活薬はMas受容体刺激薬よりも降圧薬としての可能性は低いことが考えられるが、いずれも臓器保護薬としては期待が持てる」と述べ、「特にMas受容体刺激薬はARBとの相性が良いことから、合剤として使われることも考えられる」と展望した。


<きょうの一曲> Don't Explain

Helen Merrill - Don't Explain

https://www.youtube.com/watch?v=fbOxh-EK7L8


Billie Holiday - Don't explain

https://www.youtube.com/watch?v=45YPO2FyXVI


対訳ノート(31)Don't Explain

http://jazzclub-overseas.com/blog/tamae/2011/05/dont-explain.html


<きょうの一枚の絵>


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松下久信 「雨晴海岸」 P8号

源義経主従が雨の晴れるのを待ったとの由米から名付けられた「雨晴海岸」。11月から1月にかけて、晴天で空気の澄んだ日には、富山湾越しに朝日岳・白馬岳・剣岳と峰々が連なる立山連峰が遠望できる。(松下久信)



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降圧薬服用高齢者のフレイル

降圧薬服用高齢者のフレイル、血圧低値ほど高率

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/special/dmns/report/201610/548689.html

80歳以降の高齢者に対する過降圧はフレイルをもたらす可能性のあることが分かった。
高齢者長期縦断疫学研究SONICの一環として、70歳、80歳、90歳の高齢者計2245人を対象に行われた横断的検討で得られた結果だ。
大阪大学の研究グループが、第39回日本高血圧学会総会(2016.9.30~10.2、仙台)で報告した。


今回の検討は、高齢者高血圧の治療における降圧下限値の明確化を目的に、血圧値と身体的フレイル、高次生活機能との関連性を調べた。


対象は、SONICに参加した地域住民の70歳1000人、80歳973人、90歳272人の計2245人。
血圧測定、身体的フレイルの指標である握力と歩行速度の測定、および高次生活機能の指標である手段的日常生活動作能力(IADL)の評価を行った。
CHS(Cardiovascular Health Study)基準に基づき、握力、歩行速度のどちらかまたは両方が該当した場合を身体的フレイルと判定した。血圧値は収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)それぞれ4つのレベルに分けた。


SBPは男女とも、70歳より80歳で有意に高く、80歳より90歳で有意に低かった。
DBPは男性のみ70歳より80歳が有意に低く、男女とも80歳より90歳が有意に低かった。
高血圧は70歳で約7割に、80歳、90歳でそれぞれ約8割に認められた。
<私的コメント>
血圧値と年齢の関係はリニアなものと理解していましたが、80歳より90歳が低いというのは自分にとっては新しい内容でした。

降圧薬服用者の割合は年齢が高いほど有意に上昇した。
また、年齢が高いほど、握力が弱く、歩行速度が遅く、IADLは低かった。
身体的フレイルは70歳で37.1%、80歳で64.3%、90歳で91.7%に認められた。


降圧薬服用の有無別に血圧値と握力、歩行速度、IADLの関係を検討したところ、70歳では男女とも、服用群、非服用群のいずれにおいても有意な関連はみられなかった。
しかし、80歳の服用群では、男性の握力が、DBPでは80~89mmHg群、90mmHg以上群に比べ、70mmHg未満群で有意に弱かった。
SBPと握力の間でも同様の傾向が認められた。
こうした関係は非服用群ではみられなかった。
90歳では、非服用群の女性のIADLが、SBP160mmHg以上群に比べ同120mmHg未満群で有意に低かった。


<私的コメント>
男女で傾向が異なるようです。
 

身体的フレイルの割合は、服用群において、SBP、DBPが低いほど有意に高率で、SBP120mmHg未満では75.0%、DBP70mmHg未満では72.7%に認められた。
こうした関係は非服用群では見られなかった。


ロジスティック回帰分析により、フレイルに関連する要因(年齢、罹患疾患で調整後)を検討すると、非服用群ではアルブミン低値が、服用群ではDBP低値が独立した有意な関連因子となった。


以上より、降圧薬服用群でのみ血圧がフレイルと関連しており、80歳以降の高齢者の過降圧はフレイルをもたらす可能性が示唆された。
今後の研究課題については「縦断的解析により、フレイル状態の高齢者の血圧が低いのか、過降圧によってフレイル状態になっているのかを明らかにする必要がある」とした。



<きょうの一曲>

satin doll ---Gerry Mulligan Lee + Art Farner

https://www.youtube.com/watch?v=DQLtNSPC7P0#t=452.589686205


<きょうの一枚の絵>


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    ポール・セザンヌ 「大きな松」


 

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スタチンと心疾患治療薬併用で指針

スタチンと心疾患治療薬併用で指針 AHA 薬剤相互作用の管理で筋毒性を回避
https://medical-tribune.co.jp/news/2016/1021505034/

(MT2016.10.21)

心疾患患者におけるスタチンと心疾患治療薬との相互作用リスクがしばしば議論の対象となるが、同リスクを管理し低減させることは可能である。
米国心臓協会(AHA)はこうした相互作用管理のための指針をScientific StatementとしてCirculation(2016年10月17日オンライン版)に発表した。

 

薬物動態を理解して相互作用を管理

同指針の執筆委員長は「医療提供者およびスタチン使用中の患者は、これらの薬剤が心疾患治療薬との間で相互作用を生じる可能性があることを十分に認識しておくべき。これらの薬剤の組み合わせの多くは安全であるが、忍容性は患者ごとに異なるため、医療提供者は患者が現在服用中の全薬剤をチェックし、患者は全ての副作用について医療提供者に打ち明けることが重要だ」と述べている。

 
スタチンはアテローム硬化性心血管疾患(ASCVD)患者やASCVDリスクの高い患者に用いられることから、しばしば他の心疾患治療薬との併用が必要となるが、薬剤相互作用が生じると薬物動態(PK)的にはシトクロームP450(CYP2C9、CYP3A4など)、P糖蛋白質(P-gp)、有機アニオントランスポーター(OATP)1B1(OATP1B1)、1B3(OATP1B3)の阻害により吸収・分布・代謝・排泄(ADME)が変化し、血中スタチン濃度の上昇により筋毒性リスクが高まる。

 
しかし、臨床的に重大な相互作用はかなりの程度予防でき、薬剤相互作用の機序、程度、想定される帰結を正確に理解しておくことが患者の安全性を高める鍵となる。

 
そこで、同指針ではスタチンと心疾患治療薬との相互作用を管理し患者の安全性を確保するための方法を提示している。


ロバスタチン、シンバスタチンは投与量に注意

フィブラート系薬(gemfibrozil、フェノフィブラート)については、特にgemfibrozilとスタチンとの併用は基本的に回避し、フェノフィブラートを選択すべき。
ただし、フルバスタチンに限ってはgemfibrozilを含むフィブラート系薬との相互作用は見られておらず併用は妥当といえる。


私的コメント;
記事中に 

「心疾患治療薬とスタチンの相互作用の管理における臨床的推奨」

の「表」があります。
 

次に、Ca拮抗薬では、アムロジピンについては、ロバスタチンまたはシンバスタチンとの併用でスタチン血中濃度は若干上昇するが併用を考慮してよい。ただし、ロバスタチンまたはシンバスタチンの用量は20mg/日を超えないようにすべきである。

 
ジルチアゼムとアトルバスタチンとの併用ではスタチン血中濃度は若干上昇するが併用は妥当である。

 
ジルチアゼムとロバスタチンまたはシンバスタチンとの併用、ベラパミルとロバスタチンまたはシンバスタチンとの併用では、血中スタチン濃度は中等度に上昇することからベネフィットがリスクを上回ると考えられる場合は併用を考慮してよい。
この場合、シンバスタチンは10mg/日、ロバスタチンは20mg/日を超えないようにする。

 
抗不整脈薬では、ジゴキシンとスタチンとの併用は妥当であるが、唯一の例外として、高用量アトルバスタチンとの併用でジゴキシンの毒性作用が増強すると報告されており、これについては十分なモニタリングが必要である。

 
アミオダロンについては、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチンとの併用は妥当。
ロバスタチンまたはシンバスタチンとの併用も考慮してよいが前者は40mg/日以下、後者は20mg/日以下とすることが推奨される。

 
ドロネダロンはシンバスタチンの血中濃度を有意に上昇させるため、併用時のシンバスタチン用量は10mg/日以下とすべき。
ドロネダロンとロバスタチンとの併用に関するデータは得られていないが、シンバスタチンと同様の作用が発現すると想定される。
上記2剤以外のスタチンについてはドロネダロンとの臨床的に重要な相互作用は報告されておらず、併用は妥当だと考えられる。


代謝機序を踏まえてスタチンを選択

ワルファリンについては併用による血中スタチン濃度の上昇は報告されておらず、併用は妥当であるが、スタチン投与開始時ならびに用量変更時にはINRをこまめにモニターする必要がある。INRへの影響が最も小さいと見られているのはピタバスタチンとアトルバスタチンである。

 
バソプレシン受容体拮抗薬コニバプタンはCYP3A4の基質であると同時にCYP3A4の強力な阻害物質でもある。
このため、ロバスタチンやシンバスタチンとの併用は有害と考えられ、併用は回避すべきである。スタチンとの併用が必要な場合には、CYP3Aにより代謝されないアトルバスタチンなどを考慮する。

 
免疫抑制薬のうちカルシニューリン阻害薬であるシクロスポリンおよびタクロリムスは、大部分がCYP3A4で代謝される上、P-gpの基質であると同時に阻害物質でもあり、OATP1B1の阻害物質でもある。また、マクロライド系のシロリムス、エベロリムスの代謝にもCYP3A4とP-gpが関与している。
こうした代謝機序を考慮すると、これらの免疫抑制薬とロバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチンとの併用は有害と考えられ、併用は避けるべきである。
これに対して、代謝機序の異なるアトルバスタチン(<10mg/日)、フルバスタチン(<40mg/日)、プラバスタチン(<20mg/日)、ロスバスタチン(<5mg/日)との併用は考慮してよい。

 
心不全治療薬としては、洞房結節I
f電流阻害薬ivabradineおよび、ネプリライシン阻害薬とARBの合剤であるsacubitril/バルサルタンが取り上げられている。
ivabradineとスタチンの併用に関するデータは少ないが、シンバスタチンへの影響は見られなかったとの報告が寄せられており、AHAは現時点では併用は妥当との見方を示している。
sacubitril/バルサルタンについては臨床データが得られておらず、OATP1B1、OATP1B3の基質となるスタチンとの相互作用がin vitroで確認されていることから、低用量のスタチンとの併用が望ましいとしている。

 
上記以外の薬剤で、同指針で言及されているのはコルヒチン、新規抗血小板薬ticagrelor、慢性狭心症治療薬ranolazineなどである。


同指針の執筆委員長
は「医療提供者はこれらの薬剤相互作用関連の有害事象ならびに用量の上限を熟知して有害事象リスクを最小限にとどめる必要がある」と強調。
一部のスタチンの添付文書については薬剤相互作用に関する記述を見直す必要もありそうだ。

私的コメント;

記事中のロスバスタチン(一般名)はクレストール(商品名)ですが、

ロバスタチンと書かれているのが何なのかわからなかったので少し調べてみました。

このロバスタチンLovastatinはメルク(MSD)が世界で初めて製品化(1987年)したスタチンだそうです。

ちなみに、1973年に最初に発見されたスタチンはメバスタチン(Mevastatin)で製品化されていません。

ご承知のようにセリバスタチン(Cerivastatin)はバイコール(バイエル)/セルタ(武田)の名称で製品化されましたが、副作用のため2001年以降各国で回収対象となっています。


現在、
国内では6種類のスタチンが販売されています。

ロスバスタチンクレストール

ピタバスタチンリバロ

アトルバスタチン(リピトール)

フルバスタチン(ローコール)

シンバスタチン(リポバス)

プラバスタチン(メバロチン)





<きょうの一曲>

Sonny Stitt Quartet - I'll Be Seeing You

https://www.youtube.com/watch?v=O_2ptVhsHOA


I’LL BE SEEING YOU

https://www.youtube.com/watch?v=irUHKcc23kI&list=RDirUHKcc23kI#t=8

https://www.youtube.com/watch?v=8icQU9-xS0M


I’LL BE SEEING YOU

http://d.hatena.ne.jp/wineroses/20100926





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アスピリン 年齢とHDL−C値

70歳以上でもアスピリンでリスク減少せず

HDL-C 40未満の男性では心血管イベントのリスク低下か
https://medical-tribune.co.jp/news/2016/1012504944/
日本臨床内科医会は第30回同学会会期中の10月10日、Japanese Primary Prevention Project(JPPP)の70歳以上のデータを抽出したサブ解析の結果を発表した。
主解析に続き、
70歳以上においてもアスピリン群での有意な心血管イベントの抑制は見られなかったが、HDL-C 40mg/dL未満の男性ではアスピリン群で有意に心血管イベントが抑制されたことが報告された。
アスピリンの投与により心血管イベントを50%以上抑制できる集団が特定された世界初の報告という。

私的コメント

「70歳以上でも」の「でも」という表現が引っかかります。


70歳以上の危険因子はHDL-C 40mg/dL未満、喫煙、糖尿病

JPPPは低用量アスピリン投与による心血管疾患の一次予防効果を検証した試験で、対象は心血管疾患の既往がなく、危険因子として高血圧、脂質異常症、糖尿病のうち1つ以上を有する60~85歳の日本人高齢者1万4,464例。
主解析では約5年の追跡の結果、アスピリン群と非アスピリン群で主要評価項目(心血管死、非致死性の脳梗塞、心筋梗塞)の抑制に有意差は認められないという結果だった。

私的コメント
「アスピリン群」と「非アスピリン群」とはランダムに割り付けられたものではなさそうです。
「アスピリン群」が主治医がアスピリンを必要と判断する臨床背景を有しているとすれば、「非アスピリン群」より「心血管死、非致死性の脳梗塞、心筋梗塞が起きやすい群」ということになります。
両群が主要評価項目で有意差がなかったということは「アスピリン群」の非劣性が証明された、すなわちアスピリンが有効だったということになるのではないのでしょうか。


私的コメント

実臨床で
心血管疾患の一次予防効果を目的に低用量アスピリンを処方することには問題があります。
少なくとも、保険診療上は低用量アスピリンをそもそも使用する疾患(ないしは適用病名)があって処方されるべきだからです。
はたして保険病名はどのよういつけられているのでしょうか。 

 
今回のサブ解析JPPP 70は、70歳以上の7,971例を対象に行った。
検討の結果、主要評価項目はアスピリン群141例、非アスピリン群154例で、有意差は認められなかった。
70歳以上の全症例における危険因子はHDL-C 40mg/dL未満、喫煙あり、糖尿病ありだったが、いずれもアスピリン群での有意なイベント抑制は見られなかった。

 
70歳以上でHDL-C 40mg/dL未満の男性では脳梗塞や心筋梗塞などの致死性・非致死性イベントの発生がアスピリン群の10/260例に対し、非アスピリン群では22/250例と有意差が認められた。
70歳以上でHDL-C 40mg/dL未満の症例は男性が510例(16.4%)、女性が365例(7.5%)で、有意差が認められた。

 
以上から、「アスピリンの投与により心血管イベントを50%以上抑制できる集団が同定された、世界初の報告となった」と結論づけた。


私的コメント

「アスピリンの投与により心血管イベントを50%以上抑制できる集団」が「70歳以上でHDL-C 40mg/dL未満の男性」ということですが、「脳梗塞や心筋梗塞などの致死性・非致死性イベントの発生が少なかった」ということです。
こういった集団で、アスピリンが脳梗塞と心筋梗塞それぞれの発生率はどうだったのでしょうか。
低HDL-Cは心筋梗塞、アスピリンは脳梗塞と関連性が高いと思われるだけにそのあたりの詳細を知りたいところです。

 


<きょうの一曲>

"The Nearness of You" Keely Smith

https://www.youtube.com/watch?v=QberZshhN28


The nearness of you - Norah Jones

https://www.youtube.com/watch?v=8We0SwZHd9A



 <きょうの一枚の絵>

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工藤和男 秋の山里(安曇野) 6号



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血清尿酸高値は高血圧新規発症の危険因子

血清尿酸高値は高血圧新規発症の危険因子に

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/special/dmns/report/201610/548678.html

血圧が正常な日本人約1万2000人を3年間追跡した研究から、血清尿酸高値は高血圧新規発症の独立した危険因子になることが分かった。
群馬大学医学部附属病院の研究グループが、第39回日本高血圧学会総会(2016.9.30~10.2、仙台)で報告した。


尿酸値1mg/dL上昇による高血圧新規発症のハザード比(HR)は、多因子調整後で1.14だった。
尿酸値と高血圧新規発症との有意な関連は、ベースライン時の血圧が「高血圧治療ガイドライン2014」の血圧区分の「至適血圧」「正常血圧」「正常高値血圧」のいずれでも認められた。


高尿酸血症は臨床的にしばしば高血圧やメタボリックシンドロームと合併する。
また、多くの観察研究やそのメタ解析により、高血圧発症の予測因子となる可能性が示唆されている。


今回の研究では、群馬中央病院の定期健診受診者を3年間前向きに追跡し、血清尿酸値と高血圧新規発症との関係を検討した。
対象は、2009年度の定期健診(ベースライン)時に、
(1)血圧140/90mmHg未満、
(2)高血圧の既往歴なし、
(3)降圧薬の使用歴なし、
(4)心血管疾患の既往なし
――という4条件を全て満たした1万2029人。
ベースライン時の血圧区分は、120/80mmHg未満の「至適血圧」が5408人(45%)、120-129/80-84mmHgの「正常血圧」が3863人(32%)、130-139/85-89mmHgの「正常高値血圧」2758(23%)人だった。


ベースライン時に高い血圧区分であるほど、年齢、BMI、LDLコレステロール(LDL-C)、空腹時血糖値および尿酸値が有意に高く、女性比率、HDLコレステロール(HDL-C)、eGFR値が有意に低かった。
喫煙率には有意差がなかった。
ベースライン時の尿酸値は全受診者の平均で5.2mg/dL、男性5.9mg/dL、女性4.3mg/dLだった。


2009年度の定期健診から3年間、すなわち2010年度、2011年度、2012年度の定期健診データを解析したところ、1万2029人中1457人(12%)で高血圧の新規発症が認められた。
高血圧新規発症は、
(1)血圧140/90mmHg以上、
(2)問診で高血圧の既往あり、
(3)降圧薬の使用あり
――のいずれかを満たす場合と定義した。


高血圧新規発症と関連する因子について多変量解析を行った結果、血清尿酸高値は他の因子から独立した危険因子となることが分かった。
定期健診のような離散的なデータの解析に適する離散比例ハザードモデルを用いて、尿酸値1mg/dL上昇による高血圧新規発症のHRを算出したところ、無調整時1.27、年齢・性別調整時1.21、年齢、性別、収縮期血圧、空腹時血糖、LDL-C、HDL-C、喫煙で調整時1.14となり、いずれも有意差(P<0.001)が認められた。
HRは男性より女性の方が高く、尿酸値上昇の影響は女性でより大きいことも明らかとなった。


尿酸値に注目することは、高血圧の予防という意味でも非常に重要であることが示された。
高血圧発症の尿酸カットオフ値については現在検討を進めているが、正常範囲上限とされている値よりもやや低い男性6.3mg/dL、女性4.2mg/dLと推測されるデータが得られている。
尿酸値が正常範囲内でも高めの人は、高血圧発症リスクを考慮した対応が必要かもしれない。




<きょうの一曲>

" Autumn Leaves " Chet Baker - Paul Desmond

https://www.youtube.com/watch?v=Gsz3mrnIBd0


Stan Getz-Autumn Leaves

https://www.youtube.com/watch?v=pnxeKl-Kbqw




<きょうの一枚の絵>


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住吉久志 古都の秋 P8号


春日大社の神域で伐採が禁じられて来た原始林は、紅葉、黄葉など色彩がきらめくまさに錦繍の風景。若草山から見下ろす大仏殿屋根の黄金の鴟尾が古代の輝きを放つ。(住吉久志)






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次世代の降圧薬 エンドセリン受容体拮抗薬

次世代の降圧薬  エンドセリン受容体拮抗薬 既存薬にない特性や効果に期待

https://medical-tribune.co.jp/news/2016/1017504978/


現在、日本では肺高血圧症に対して3種類のエンドセリン受容体拮抗薬(ERA)が上市されているが、いずれも高血圧症を適応としておらず、強力な活性を持つERAの開発が期待されている。
これまで、ET
A・ETB受容体やアンジオテンシン受容体・エンドセリン受容体の両者を遮断する薬剤による血圧や臓器障害への影響について複数の検討がされている。

新規ERAは既存の降圧薬にはない効果や特性を持ちうる可能性があるという講演が持たれた。
(第39回日本高血圧学会 2016.930~10.2)


既存のERAは全身血圧の降圧効果が低い

高血圧患者に対するERAの効果については、幾つかの検討がなされている。
ボセンタンを4週間投与した検討では、ボセンタン1,000mg、2,000mg群はプラセボ群と比べて有意に拡張期血圧(DBP)が低下し、その程度はエナラプリル20mgと同程度だったことが報告されている。
しかし、ボセンタンの日本での最大用量は250mg/日で、全身の血圧を低下させるには高用量となることから、臨床での使用は現実的でない。

 
ERAは肺高血圧症での使用実績があることに加え、血管平滑筋の増殖を抑制する作用により、肺血管リモデリング改善効果を有し、血管拡張薬に比べて生命予後が延長することが報告されている。
エンドセリンは肺血管での感受性が強いため、全身の血圧に対する降圧効果は低いことが考えられる。
より強力なERAが開発されれば、高血圧に対して臨床的に使用されることが期待される。
高血圧患者に対しdarusentan(日本未承認)を14週間投与した検討では、darusentan 50mg、100mg、300mg群ではプラセボ群と比べて有意な血圧低下が認められたことが報告されている。


RASへの追加で臓器保護的な作用も

ERAは、アンブリセンタンなどETA受容体のみを遮断するシングルERAと、ボセンタン、マシテンタンなどETA受容体とETB受容体の両者を遮断するデュアルERAの2タイプに大きく分類される。
レニンとアンジオテンシンを強発現させた高血圧モデルマウスにデュアルERA(SB209670)を20週間投与すると、生理食塩水群に比べて有意に血圧が低下し、心肥大も抑制されたという報告もある。

 
また、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬へのERAの追加についても検討が行われており、糖尿病性腎症患者に対しatrasentan(日本未承認)を8週間投与したところ、atrasentan 0.75、1.75mg群はプラセボ群と比べて有意に蛋白尿が減少した。
アンジオテンシン系の遮断に追加してエンドセリンを遮断することで、さらに強力かつ臓器保護的に作用することが認められている。

 
現在、アンジオテンシンとエンドセリンの受容体を遮断するAT
1・ETA
受容体拮抗薬(DARA)が開発されており、イルベサルタン300mgと比べて収縮期血圧(SBP)、DBPともに抑制したことが報告されている。
今後、高血圧患者を対象とした長期投与の検討がなされ、血管障害や臓器障害への有効性が示されることが期待される。 


<きょうの一曲>

"Mr Wonderful" Keely Smith

https://www.youtube.com/watch?v=FMyrHzhxx_U



<きょうの一枚の絵>
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松下久信  兼六園の秋 8号

「ことじ灯篭」のある霞が池に内橋亭がある。ここでは、園の一般効果を記念し、年1回茶会が催されている。(松下)

 

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適度なお茶の摂取でCAC進行抑制

適度なお茶の摂取でCAC進行抑制、心血管イベントリスク低減の可能性

http://www.carenet.com/medscape/cardiology/000288.html

新たな研究によると、適度にお茶を飲むことは、冠動脈石灰化の進行を抑制し、心血管イベントのリスク低減を促進しうるが、コーヒー摂取の効果は中立的である可能性があるとのことだ。

(American Journal of Medicine誌オンライン版 2016.9.15)


定期的にお茶を飲むことが、冠動脈石灰化の少なさ、進行の遅さ、心血管疾患の発生率の低さと関連することをNIHの研究グループが発表した。
対照的に、定期的なコーヒーおよびカフェインの摂取と、冠動脈石灰化、心血管アウトカム発生の関連は中立的であった。


この研究結果は、米国心臓協会(AHA)が推奨するように心臓に良い食事の一環として、定期的にお茶を摂取することを支持するものである。
 

いくつかの研究において、コーヒーやお茶と、さまざまな心血管アウトカムについての調査が行われてきた。
それらはおおむね、お茶のみあるいはコーヒーのみと、冠動脈石灰化の有無、またはその進行、またはアウトカムのみとの関連を調査したものだ

 

今回の研究では、無症候性心血管疾患の罹患率、リスク因子、進行についての集団ベース研究Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis(MESA)に参加し、民族的に多様な6,500例以上のデータを解析した。


6ヵ所の大学内保健センターにおいて、44歳から84歳の男女(女性が52.9%)が食物摂取頻度調査票に回答し、参加者はコーヒーと紅茶あるいは緑茶の摂取について、1日0~6杯以上の範囲で報告した。


参加者の半数以上(57.6%)はお茶をまったく飲まないと回答し、29.5%が1日に1杯未満、12.9%は1日1杯以上と回答した。

参加者の約半数(50.9%)がコーヒーを1日1杯以上飲むと回答し、25%は0杯、24%は1日1杯未満であった。

心血管イベントのデータは、追跡期間中の9~12ヵ月ごとに電話インタビューによって収集された。

研究者らは、参加者の49.9%において冠動脈石灰化が0であり、26.5%が1~99、23.6%が100以上であることを見出した。
また、追跡期間11.1年時(中央値)までの、全心血管イベントおよび心血管ハードイベントの発生率は、それぞれ1,000人年当たり10.8および7.5であった。


多変量調整モデルでは、お茶を1日1杯以上飲む群では、お茶を飲まない群に比べ、冠動脈石灰化スコアが100以上である率が低かった。お茶摂取が1日1杯以上の群では、冠動脈石灰化の進行の低減も観察された。


冠動脈石灰化は無症候性疾患のマーカーである。
もしそれがかなり低ければ、患者が将来心血管イベントを有するリスクもまた相当低い。
もし高ければ、その患者がすでにある程度の冠動脈疾患を有することが示唆される。


本研究において、冠動脈石灰化は、ベースライン時にどの程度の疾患を有するか、そして時間経過とともに疾患がどう進行するかのマーカーだった。
これは高度な予測因子になりうる。
もし患者が中等度リスクであるなら、その患者がその中でもより高リスクなのか、あるいはより低リスクなのかの鑑別に、冠動脈石灰化スコアを使用できる。


心血管イベント

コーヒーを1日1杯未満飲むと回答した群では、まったく飲まない群に比べ、心血管イベント発生率がより高かった。

また、1日1杯以上のお茶の摂取は、非摂取に比べ、心血管イベント発生率の低下と関連することも見出された。


お茶のメカニズムはさまざまな推測がありうるが、お茶に含まれる抗酸化物質が最大の機序と思われる。
お茶に含まれるフラボノイドが冠動脈疾患に有益だろうという、非常に優れたエビデンスもある。


今回の研究では、コーヒーと全体のカフェインの摂取が心血管イベントの発生と関連しないことも明らかにされた。


コーヒーについては研究ごとに異なる結果が得られている。
ほとんどの研究では、コーヒーの効果は中立的か、あるいは潜在的ベネフィットがあるかの、いずれかの結果が得られている。
今回の研究では単にコーヒーの摂取回数が、潜在的ベネフィットを確認できるほど高くなかったのかもしれない。


医師は、冠動脈疾患患者やその他の患者から、カフェイン入り飲料を飲むのは安全かどうかをよく質問される。
われわれの結果は、お茶は心血管疾患に対して有益である可能性と、コーヒーの効果は中立的である可能性を示唆しており、これは定期的な摂取が患者にとって安全であることを示唆している。


コーヒーやお茶と心血管疾患に関する研究の大多数は、食物摂取の調査票を用いて行われているが、これは患者の記憶に依存するものだ。
今後の研究では、心血管アウトカムとの関連において、コーヒーやお茶の摂取をより正確に測定するため、医療アプリのような技術を活用するべきと思われる。


これは観察研究であり、お茶の効果なのか、あるいは単にお茶を摂取する人の生活様式がより健康であるのかについては断言できないという点に言及することが重要である。


英文記事

Moderate Tea Drinking May Slow CAC Progression, Cut CV Event Risk: MESA

http://www.medscape.com/viewarticle/869038


私的コメント;
ここでいうところの「お茶」は「紅茶」を指すものと思われます。
英国国民は米国国民より「紅茶」志向(嗜好)が強いはずです。確か、心筋梗塞の発症率は前者の方が高いということを読んだ覚えがあります。
そのあたりはどうなんでしょうか。
 
 


<きょうの一曲> All the things you are

Dave Brubeck Trio spec. Guest Paul Desmond & Gerry Mulligan all the things you are

https://www.youtube.com/watch?v=12Ahmng5ee0 





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高齢者の心不全治療に指針

高齢者の心不全治療に指針 日本心不全学会からステートメント

https://medical-tribune.co.jp/news/2016/1014504981/
(MT 2016.10.14) 

日本心不全学会は10月7日、同学会のガイドライン委員会がまとめた「高齢心不全患者の治療に関するステートメント」を公式サイトで公表した。現行ガイドラインでは高齢患者への対応に関する記載が不十分だとして、約2年の議論を経て策定されたという。高齢者の心不全の診断や治療、リハビリテーション、終末期医療などに関する計7章で構成された全56ページに及ぶ文書で、最新知見の概要とともにそれぞれの領域における同学会による指針が示されている。



高齢者の心不全は「がんと同様に死に至る悪性病態」と宣言

公表された文書は「ステートメント」とされているが、高齢者心不全の「疫学と特徴」「診断と臨床的・社会的評価」「急性期・救急対応」「薬物治療と服薬管理」「外科治療・デバイス治療」「心大血管リハビリテーション」「終末期医療の指針」に関する計7章で構成され、ボリュームは56ページに及ぶ。
同ステートメントの策定委員長である木原康樹氏は、これについて序文で「エビデンスへの準拠度が必ずしも高いとはいえない意見も盛り込み、問題の把握と対応の方向性を示すことに力点を置いたため、ガイドラインと称することを控え、ステートメントとして世に問うこととした」と説明している。

 
ステートメントでは「高齢者」を75歳以上の後期高齢者と定義。高齢者の慢性心不全の特徴として
①コモンディジーズであり、その絶対数はさらに増加していく
②根治が望めない進行性かつ致死性の悪性疾患である
③その大半が心疾患以外の併存症を有する
―の3つを挙げ、「高齢者の慢性心不全はありふれた疾患であると同時に、がんと同様に(その過程はさまざまではあるが)死に至る悪性病態であることを本ステートメントは宣言する」としている。

 
また、高齢者の心不全の管理では「かかりつけ実地医家等による地域での診療体制が主体的な役割を果たし、それを基幹病院が的確な診断と非代償期の入院治療あるいはリハビリテーション等において連携、支援する必要がある」と強調。
今回のステートメントの位置付けについて「従来のガイドラインとは異なり、来るべき高齢化社会の中で爆発的に増加する慢性かつ悪性疾患としての心不全を、発想の転換とシステムの再構築で対応するように促すもの」としている。


複数の併存症への個別治療でQOL損なう可能性も

各章では、高齢心不全に関する国内外の最新知見の概要とともに、その特徴を踏まえた診断や治療の方向性が示されている。
例えば、疫学と特徴に関する第1章では高齢心不全患者の特徴として「併存疾患が多く、しばしば心不全そのものよりも生命予後の一次的決定因子となる」と説明。
ただ、「併存症の個別治療が高齢心不全患者の生命予後をどれほど改善するかは証明されておらず、複数の併存症について個別にそれぞれのガイドラインに沿った検査や治療を並行して行うと、かえって合併症や副作用などが増え、QOLを損なうことも想像される」として、「進行した認知症を合併したり、著しく身体機能が低下したりした心不全患者などで、どの程度まで併存症を精査し、治療するかは個々の症例に応じて全体像から臨床判断をするべきである」との見解が示されている。


ジギタリスなどの強心薬も「期待に応える手段になり得る」

また、薬物治療に関する第4章では「高齢心不全患者に対して慢性多剤薬物療法を維持するためには、患者自身の管理能力に限界があることを前提として、多職種から成るチームによる介入が重要となる」と指摘。
「かかりつけ医のみならず地域かかりつけ薬局の薬剤師のポテンシャルを動員し、心不全専門医・看護師・理学療法士・栄養士・ケースワーカーなどの綿密な連携の構築が今後必要」としている。

 
具体的な薬剤の選択に関しては、収縮不全に対してはACE阻害薬、ARB、β遮断薬、抗アルドステロン薬などが標準的治療薬とされているが、「高齢者では収縮機能の保たれた心不全(HFpEF)が半数を占めることに留意すべき」と指摘。
なお、HFpEFに対する薬物治療法は確立されていないとしている。

 
さらに、高齢者では「生命予後延長を目的とした薬物治療よりQOLの改善を優先するべき場合が少なくない」として、「超高齢者ではジギタリスやピモベンダンといった経口強心薬も慎重に使用することで患者の期待に応える手段になり得る」との見解が示されている。


外科治療やデバイス治療の適応についても詳述

この他、外科治療や近年革新的な進歩が見られたデバイス治療に関する第5章では、急性冠症候群に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、重症三枝病変に対する冠動脈バイパス術(CABG)、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)や植え込み型除細動器(ICD)、心臓再同期療法(CRT)などの適応について、最新知見の概要とともに患者のQOLへの影響や医療コストなどを踏まえた同学会の見解が示されている。

 
また、終末期医療に関する第7章では「終末期を迎える前の段階から患者本人や家族を含めたアドバンスケアプランニング(ACP)を開始することが望ましい」「個人の人生観や希望を取り入れた緩和医療を循環器領域でも推進しなくてはいけない」などの指針が示されている。



<きょうの一曲>

Sonny Stitt Quartet - I'll Be Seeing You

https://www.youtube.com/watch?v=O_2ptVhsHOA


I’LL BE SEEING YOU

https://www.youtube.com/watch?v=irUHKcc23kI&list=RDirUHKcc23kI#t=8

https://www.youtube.com/watch?v=8icQU9-xS0M


I’LL BE SEEING YOU

http://d.hatena.ne.jp/wineroses/20100926


<きょうの一枚の絵>
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石黒秀治 モンパルナス  10号


どの通りにもマロニエの並木が延々と続き、秋には黄色く色づき、日の光を受けて輝く。(石黒秀治)





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AMI患者へのβ遮断薬長期投与

AMI患者へのβ遮断薬長期投与に疑問

https://medical-tribune.co.jp/news/2016/1014504959/

心不全歴がない急性心筋梗塞(AMI)患者に対するβ遮断薬の長期投与に疑問を投げかける研究結果が、フランスのグループによりBMJ(2016;354:i4801)に発表された。
 

同グループは、2005年末時点の全仏AMIレジストリから、223施設で治療されたAMI患者で心不全歴がなく、かつ入院中に左室機能低下が認められなかった2,679例を抽出。
入院48時間以内の早期β遮断薬投与と30日死亡率、退院時のβ遮断薬処方と1年死亡率、退院後1年時点のβ遮断薬使用と5年死亡率との関係を前向きに検討した。

 
入院48時間以内の早期β遮断薬投与率は77%(2,679例中2,050例)、退院時のβ遮断薬処方率は80%(2,217例中1,783例)、退院後1年時点で生存していた患者におけるβ遮断薬使用率は89%(1,383例中1,230例)であった。

 
解析の結果、早期β遮断薬投与群の30日死亡率は非投与の対照群と比べ有意に低く、補正後のハザード比(HR)は0.46(95%CI 0.26~0.82)であった。しかし、退院時β遮断薬処方群の1年後の死亡HRは0.77(同0.46~1.30)、退院後1年時点のβ遮断薬使用群の5年後の死亡HRは1.19(同0.65~2.18)と、いずれも対照群との間に有意差は認められなかった。

 
対照的に、退院1年後にスタチンの使用を継続していた群では、非継続群と比べ5年死亡率が有意に低かった(HR 0.42、95%CI 0.25~0.72)。



<きょうの一曲>

Bob Dylan-Blowin' in the wind-lyrics

https://www.youtube.com/watch?v=G58XWF6B3AA


ピーター・ポール&マリー(PPM)/風に吹かれて(Blowin' In The Wind)

https://www.youtube.com/watch?v=KtdZ-3nlfCQ


風に吹かれて RCサクセション(歌詞つき)

https://www.youtube.com/watch?v=d9ieZEWzJQ4


風に吹かれて by 吉田拓郎

https://www.youtube.com/watch?v=9fQn1MAgriw




ボブ・ディラン「風に吹かれて」を訳してみる

http://www.english-turi.com/song/1000/


風に吹かれて (ボブ・ディランの曲)

https://ja.wikipedia.org/wiki/風に吹かれて_(ボブ・ディランの曲)


4月に合う曲「風に吹かれて」ボブ・ディランの紹介 その1~歌詞対訳

http://mongahouse.blog119.fc2.com/blog-entry-441.html


風に吹かれて ボブ・ディラン

http://protestsongs.michikusa.jp/english/dylan/blowininthewind.htm



<きょうの一枚の絵>

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赤羽忠親 晩秋安曇野(常念岳) P10号




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TAVR弁のサイズと血栓の関連

より大きなTAVR弁が血栓を誘発する可能性、ワルファリンが有効か?

http://www.carenet.com/medscape/cardiology/000286.html

新たな研究によると、より大きな弁は、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)後の患者における血栓症の誘因になる可能性があるが、ワルファリン療法に保護効果があるかもしれないとのことだ。

オーフス大学病院(デンマーク)でTAVRを受けた連続登録症例460例が分析された。
そのうち405例(平均年齢83歳、54%が女性)が、造影マルチスライスCT(MDCT)と心エコーによる追跡調査をTAVR後1~3ヵ月に受けた。

この結果は、2016年欧州心臓病学会(ESC)学術集会にて報告された。
(Journal of the American College of Cardiology 2016.8.28)

私的コメント
デンマークの一施設でTAVRがすでに460例も施行されていることに驚きます。
はたして日本は本当に医療先進国なのでしょうか。
循環器領域の治療法に関して、オリジナリティーのある研究がどれほどあるというのでしょうか。


研究者らは、27例(7%)において経カテーテル弁血栓症を検出し、Sapien XTを用いた患者とSapien 3(いずれもEdwards Lifesciences)によりTAVRを受けた患者の間に差がなかったことを見出した。
また、経カテーテル弁血栓症のなかった患者と比べ、経カテーテル弁血栓症患者では、追跡調査時の
平均圧較差がより高いことも認められた。

血栓症患者27例のうち、1例が脳卒中を発症し、3例が心不全を伴う冠動脈閉塞を発症した。
しかし、ワルファリン単独あるいはワルファリンと抗血小板薬の併用療法によって、血栓症が退縮したことがMDCTにより示された。

多変量解析により、29mmの経カテーテル弁の使用およびTAVR後のワルファリンの不使用は経カテーテル弁血栓症の予測因子であること、ただし退院時のLVEFが35%以下はそうではないことが見出された。

経カテーテル弁血栓症リスクは、ワルファリン療法を受けた患者では1.8%だったのに対し、ワルファリン療法を受けていない患者では10.7%だった。
抗血小板療法を受けていなかった患者のリスクは18.8%だった。


多くの場合は無症候性であるものの、経カテーテル弁血栓症は重要な臨床的意味を持つ。
TAVR後のテーラーメイドな抗血栓療法が、経カテーテル弁血栓症の発生率を減少させられるかどうかを評価するために、今後の研究が必要である。
 

今回の研究結果は、TAVR後の無症候性血栓症が実在するというさらなるエビデンスである。
これにより、血栓症の可能性と発生率についての確実性が少し増した。
そして7%という数字は、現在弁置換術を受けている何千人もの患者がいることを考えると、現実味のある数字である。


これは既存の計画の実施を推し進めることにつながる。
それは、Sapienだけではなくほかのすべての弁について、同様に前向き試験を実施することだ。

今このエビデンスに基づき、どの患者に対してワルファリンを投与すべきかどうか判断することは、おそらく早計である。
TAVRを受ける多くの患者において併存疾患と出血リスクがあるため、このエビデンスに基づきTAVRを受ける全患者へのワルファリン投与について、一律の方針を出すことは時期尚早であると考えられる。
しかしこの結果は、人工弁置換術を受けるすべての患者に関して、心に留めておくべきものである。


これは1つの重要なエビデンスである。
患者は連続登録であり、選択されたのではない。

興味深いことに、本研究はワルファリンの抗凝固作用による治療効果と同様に保護効果も示唆した。
しかしこの結果は、作用するかどうか不明のまま重大な出血リスクがある薬剤を処方し始める前に、(
GALILEO試験のような)前向き試験において確認されなければならない。
今後行われる研究も、このイベントに対するリスク因子(たとえば圧較差の増大、心房細動、その他)の特定に役立つだろう」。


本試験は、最近明らかになったこの現象に関する、これまでで最大の観察研究である。
本研究は、バルーン拡張型デバイスを用いたTAVR後に、弁および弁尖の血栓症リスクが存在することを証明するものだ。
本研究では扱われていないが、これはおそらく自己拡張型デバイス、そして手術で置換された人工弁においてさえも同様に当てはまるだろう。


しかし、全体での発生率(7%)は、以前の小規模な試験よりも低い値であり、血行力学的梗塞あるいは脳卒中とはほとんど関連しなかった。


英文記事

Larger TAVR Valves May Predispose to Clot, but Will Warfarin Help?

http://www.medscape.com/viewarticle/868642


関連論文

Hansson NC, Grove El, Andersen HR, et al. Transcatheter aortic valve thrombosis: predisposing factors and clinical implications. J Am Coll Cardiol 2016; DOI:10.1016/j.jacc.2016.08.010.

https://content.onlinejacc.org/article.aspx?articleid=2546337






<きょうの一曲>

[HD] Khatia Buniatishvili - Tchaikovsky Piano Concerto No. 1 in B flat minor, Op. 23 ~ Zubin Mehta

https://www.youtube.com/watch?v=wH3OOM70cp0



<きょうの一枚の絵>
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村田省蔵 紅葉する霞沢(上高地) 6号



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心不全治療薬として開発進む新規クラスの降圧薬 ARNi

ARNi 心不全治療薬として開発進む新規クラスの降圧薬

https://medical-tribune.co.jp/news/2016/1011504924/index.html?_login=1#_log

降圧薬は治療満足度、薬剤貢献度ともに高く選択肢が充実しつつあり、新規の薬剤には血圧低下だけでなく、腎障害や心不全などに対する臓器保護的な作用も求められる。
アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬 (ARNi)LCZ696は新しいクラスの薬剤で、日本では心不全患者を対象に第Ⅲ相臨床試験が進行している。
第39回日本高血圧学会(9月30日~10月2日)で新規高圧薬の必要性についてシンポジウムが開催され、熊本大学大学院腎臓内科学分野教授の向山政志氏は、ARNiは新規の降圧・心不全治療薬として今後の臨床応用が期待できると述べた。


分解酵素ネプリライシンがターゲット

ナトリウム利尿ペプチドの分解酵素であるネプリライシン(NEP)は、腎臓、脳、血管内皮、心筋など全身に広く発現する。
NEPが増加することにより心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の濃度が下がり、臓器障害の助長と関連することが指摘され、NEP阻害薬の開発が進んだ。(
ARNiの開発の経緯)

私的コメント
この記事の内容からはANP、BNPが臓器保護作用を持っていることになります。 

ナトリウム利尿ペプチド・ファミリー(ANP, BNP, CNP) の新たな機能解明
http://www.ncvc.go.jp/res/divisions/biochemistry/02-theme03.html


PDF  慢性心不全治療ガイドライン - 日本循環器学会

http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2010_matsuzaki_h.pdf

・ANP,BNPは,利尿,ナトリウム利尿,血管拡張, アルドステロン分泌抑制作用、さらに心臓局所では心筋肥大抑制,心筋線維化抑制作用を有している。

・これらの働きは特に,アンジオテンシンIIのタイプ1型(AT1) 受容体を介する作用とあらゆる部位で機能的に拮抗しており,ANP/BNP の心保護作用が期待されている。


 

 
1993年には、ANP分解酵素阻害薬カンドキサトリルが血圧を低下させ、ANP濃度を増加させることが報告されたが、アンジオテンシンIIが上昇することが問題視された。
この点を改善するために開発されたNEPとアンジオテンシン変換酵素両者を阻害するバソペプチダーゼ阻害薬オマパトリラートは、リシノプリルと比べて死亡もしくは心不全を減少させたものの、エナラプリル群と比べて血管浮腫が多く発現し、治験の中止を余儀なくされた。

 
LCZ696はNEP阻害薬とアンジオテンシンII受容体阻害薬(ARB)バルサルタンを1:1で含む化合物で、食塩感受性高血圧モデルのラットでは、高食塩群、低食塩群ともバルサルタン群に比べてLCZ696投与群で血圧が低下し高食塩のときにはNEP阻害薬が、低食塩のときにはバルサルタンが作用していることが示唆されている。 
 

アルツハイマー病リスクへの関与が課題

LCZ696はこれまで、高血圧患者1,328例に対しNEP阻害薬、ARB両者の降圧作用を相加した降圧効果が、アジア人に対してはプラセボ群と比べて日中、夜間血圧とも明らかな降圧と安全性が示され、いずれの検討でも血管浮腫は認められなかった。
さらに、LCZ696は第Ⅲ相臨床試験において、エナラプリルと比較して有意に心血管死および心不全入院を減少させ、欧米では心不全に対して製造承認を得、日本では第Ⅲ相臨床試験が進行している。

 
一方、NEPの基質の1つとしてアミロイドβ(Aβ)42が挙げられることから、NEP阻害薬によりAβを増加させる可能性が指摘されている。
しかし、NEPノックアウト(KO)マウスを用いた検討では、野生型マウスでは6カ月のマウスより21カ月のマウスでモリス水迷路試験によるゴール(水中のプラットフォーム)への到達時間が有意に延長したが、KOマウス群では変化が認められなかった。
NEPによって分解されるGLP-1やガラニンの濃度維持がKOマウスでの改善効果に関与していることが示唆されているが、アルツハイマー病のリスクにどのように作用するかは、血管浮腫などの副作用と同様に慎重な検討が求められる。

 
ARNiは新規の降圧・心不全治療薬として今後の臨床応用が期待でき、また腎臓や心臓などの臓器障害に対して保護作用を有する可能性についても注目される。 


私的コメント
引用文献については記事を参考下さい。



<きょうの一曲>

GEORGES MOUSTAKI LIVE NO CASINO DA FIGUEIRA DA FOZ 2

https://www.youtube.com/watch?v=8HCOnaVkhyk



<きょうの一枚の絵>

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            樋口 洋  知床薫風 8号




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アジア人におけるNOACの効果

アジア人におけるNOACの効果はワルファリンに勝る

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/etc/201610/548506.html?ref=RL2

アジア人の非弁膜症性心房細動(NVAF)患者において、リバーロキサバンとダビガトランは、虚血性脳卒中と全身性塞栓症、頭蓋内出血(ICH)、総死亡のリスクをワルファリンよりも軽減することが確認された。
急性心筋梗塞(AMI)および消化管出血による入院については差がなかった。
(J Am Coll Cardiol誌オンライン版 2016.9.27)


新規経口抗凝固薬(NOAC)であるリバーロキサバンとダビガトランの血栓塞栓イベント抑制効果については、ワルファリンに代表されるビタミンK拮抗薬に対する非劣性または優性が報告されている。
安全性については、両剤ともにワルファリンよりもICHのリスクは低いものの消化管出血の増加が懸念されていた。


ワルファリン内服中のICHは特にアジア人に多いとされている。
一方、NOACのアジア人における有効性と安全性については未だ詳細が不明だった。


本研究は、台湾の健康保険データであるNational Health Insurance Research Databaseを用いて行われた後ろ向きコホート研究である。
台湾では国民皆保険制度が確立しており、国民の99%以上をカバーしている。


1996年1月1日から2013年12月31日までの期間を対象に検索された新規心房細動(AF)患者は、30万4252人だった。
うち8万365人が、AF診断後に少なくとも1回リバーロキサバンまたはダビガトランまたはワルファリンを含む処方を受けていた。


台湾では、2012年6月1日にダビガトランが、2013年2月1日にリバーロキサバンが、それぞれ承認された。
本研究では、2013年2月1日から2013年12月31日までの間に、3剤いずれかの初回投与を受けた患者を、最終的に服用していた薬剤によりリバーロキサバン群、ダビガトラン群ワルファリン群(n=5251)の3群に分けて検討した。3群の患者の詳細な投与歴は以下の通りとなる。


中略


なお、ダビガトランまたはリバーロキサバンの投与後にワルファリンに変更となった対象者は解析から除外した。


2013年2月1日以降、これら3剤の開始日を観察開始日とし、アウトカムの発生または2013年12月31日までの早いほうを観察終了日とした。


アウトカムは、虚血性脳卒中または全身性血栓症、ICH、消化管出血による入院、AMI、全ての出血による入院、総死亡とした。
アウトカムは退院時診断病名により確定した。同一患者が複数のアウトカムを生じた可能性があるが、初回のアウトカムのみを解析の対象とした。
6つのアウトカムに関するNOACの有効性についての解析には傾向スコアを用いた。


当初、リバーロキサバン群およびダビガトラン群はワルファリン群よりも高齢で、CHA2DS2-VASCおよびHAS-BLEDスコアが高く、合併症が多かった。
しかし、傾向スコアを用いて重みづけを行った後、各群の患者背景に差はなくなった(標準化平均差の絶対値が全て<0.1)。


リバーロキサバン群とダビガトラン群の両方で虚血性脳卒中または全身性血栓症、ICH、総死亡のリスクが、ワルファリン群と比較して有意に低かった(傾向スコアで重みづけ前P<0.05、重みづけ後P<0.001)。消化管出血による入院とAMIについては、差がなかった。Kaplan-Meier曲線による解析でも、NOAC両群における虚血性脳卒中または全身性血栓症、ICH、総死亡リスクの早期低下が確認された。


NOACの両群間には当初より患者背景に差がなかったので(標準化平均差の絶対値が全て<0.1)、両群間の比較では傾向スコアを用いなかった。
この2群間で、血栓塞栓イベント、ICH、AMI、全ての出血による入院、総死亡については両群の差はなかった。
一方、消化管出血による入院リスクは、ダビガトラン群よりもリバーロキサバン群の方が高かった(ハザード比[HR]:1.60、95%信頼区間[95%CI]:1.11-2.51、P=0.0416)。消化管出血を輸血の必要性により、重篤な出血と重篤でない出血に分けて検討すると、重篤な出血についてはNOAC両群で有意差が認められず(100人年当たりのイベント数:0.69 vs. 0.58、HR:1.20、95%CI:0.52-2.75、P=0.671)、重篤でない出血がリバーロキサバン群で多かった(1.99 vs. 1.04、HR:1.82、95%CI:1.06-3.12、P=0.0311)。


研究期間中に薬剤の中断期間がなかった対象に絞って、on treatment(OT)解析を行った。
OT解析の対象は、リバーロキサバン群2007人、ダビガトラン群2387人、ワルファリン群2526人だった。
OT解析の結果、リバーロキサバン群とダビガトラン群で消化管出血のリスクに差はなかった。
ワルファリン群と比較して、ICHリスク(両群ともP<0.05)と総死亡リスク(両群ともP<0.005)ともにNOAC群で有意に低かった。


NOACの用量に注目すると、リバーロキサバン群の87%(3425人)、ダビガトラン群の90%(5301人)が低用量を内服していた。
欧米で一般的に用いられる高用量を内服していた人は少数で、高用量内服の場合には、ワルファリン群と比較して有意に優れた安全性および有効性は確認されなかった。


本研究はアジア人においてリバーロキサバンとダビガトランを直接比較した初の研究であり、対象の90%近くが低用量のNOACを内服していたという特徴がある。


低用量NOACについては、RE-LY研究、ENGAGE-AF研究、J-ROCKET AF研究等を対象とするメタアナリシスの結果、脳卒中と全身性塞栓症予防ではワルファリンと同等であるが、虚血性脳卒中予防では劣る可能性が報告されている(Wang KL, et al. Stroke 2015;46:2555-61.)。
著者らは、このメタアナリシスに含まれるアジア人の数は比較的少数であると述べ、今回の研究が過去最多のアジア人を対象としていると強調した。


アジア人において、低用量NOAC両剤がワルファリンよりも優れていたという本研究結果の理由として、欧米人とのBMIの差や、アジアではICHを恐れてワルファリンのINRを低めに抑える傾向があること、ワルファリンと相互作用する食物の摂取習慣などを、著者らは挙げている。
また、リバーロキサバンとダビガトランで消化管出血リスクに差があった原因としては、他のOACからの変更例がリバーロキサバン群でより多かったことを挙げた。


著者らは「アジア人NVAFにおいては、リバーロキサバンおよびダビガトラン両剤は、ワルファリンよりも安全かつ有効な選択肢であろう」と結論している。


Thromboembolic, Bleeding, and Mortality Risks of Rivaroxaban and Dabigatran in Asians With Nonvalvular Atrial Fibrillation

http://content.onlinejacc.org/article.aspx?articleid=2552921



<きょうの一曲>

I'm Not In Love  [日本語訳付き]  10cc

https://www.youtube.com/watch?v=TSe3gYeGDX0



<きょうの一枚の絵> 

king_marin02-img522x600-146639783295j0rs1369

                   石垣定哉 〔黎明の月〕 油彩10号



 


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左心耳閉鎖デバイスの実臨床初期成績

左心耳閉鎖デバイス、米実臨床の初期成績は良好

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/special/dmns/report/201610/548463.html

左心耳閉鎖デバイスWATCHMANが米国で承認され、1年あまりが経過した。
シーダーズ・サイナイ医療センター(カリフォルニア州ロサンゼルス)では、承認後から2016年1月までに101例にWATCHMANを留置。その初期成績は良好で、これまでの臨床試験と同様な長期成績が米国の実臨床でも期待できることが第64回日本心臓病学会学術集会で報告された。
(2016.9.23~25、東京)
 


非弁膜症性心房細動で問題となる脳塞栓の血栓源はほとんどが左心耳であることから、近年、内視鏡やカテーテルで左心耳を閉鎖する積極治療が複数開発されている。
WATCHMANもその1つで、大腿静脈から右心房に上げたカテーテルを心房中隔穿刺により左心房に到達させ、左心耳の開口部に傘状のデバイスを留置して左心耳を閉鎖する。
留置45日後の経食道心エコーでデバイス周囲の血栓や一定以上の逆流を認めなければ、経口抗凝固療法(OAC)の中止が可能だ。
米国では2015年3月に米食品医薬品局(FDA)で承認され使われ始めたが、実臨床での初期成績は明らかではなかった。


シーダーズ・サイナイ医療センターに留学していた演者は、承認から2016年1月までに同施設でWATCHMANが留置された連続101例(実臨床群)を対象に、手技成績と臨床予後を追跡。
これを、2006~2014年に同施設で治験として留置された連続119例(治験群)の成績と比較した。


実臨床群と治験群で患者背景はほぼ同等で、患者年齢、女性比率、高血圧、脳梗塞既往、糖尿病、心不全、CHA2DS2-VAScスコア、OAC実施率などに有意差はなかった。
一方、出血の既往、出血リスクを示すHAS-BLEDスコアは、実臨床群の方が有意に高かった。


デバイスの留置に要した時間、造影剤の使用量、デバイス入れ替え率などは実臨床群の方が有意に少なかった。
手技成功率はどちらの群も100%で、手技に伴う合併症の発生率は実臨床群3例(内訳:心タンポナーデ、心膜炎、穿刺部血腫、各1例)、治験群が7例(心タンポナーデ2例、周術期脳梗塞1例、術後心不全1例、穿刺部血腫2例、心房中隔閉鎖術1例)だった。
実臨床群の手技後の入院日数は1.12日で、手技合併症がなければほぼ留置の翌日に退院していた。


経食道心エコーを行う45日までの死亡は両群ともなく、脳梗塞、大出血、デバイス周囲のリーク発生率、デバイス血栓、ワルファリン中止率などにも実臨床群と治験群で差はなかった。
実臨床群ではその後平均105日の追跡で、心臓死2例、脳梗塞1例、大出血8例を認めた。


以上の結果から、「実臨床ではより出血リスクが高い集団が対象となっていたが、手技時間や造影剤使用量は減少し、45日時の臨床成績やエコー所見は治験群と同等だった。そこで米国の実臨床でも、これまでの臨床試験と同様な長期成績が期待できるだろう。本治療法は出血リスクが高く抗凝固療法を中止したい患者にニーズがあると考えられる。OACの代替療法として、我が国での導入が期待される」と結論した。
WATCHMANは米ボストン・サイエンティフィック社が開発しており、同社日本法人によれば日本にも導入する方針という。



<関連サイト>

左心耳閉鎖デバイスWatchmanの検証

http://blog.livedoor.jp/cardiology_reed/search?q=watchman


Watchman

http://blog.livedoor.jp/cardiology_reed/archives/61154254.html





<きょうの一曲>

Dave Brubeck Trio spec. Guest Paul Desmond & Gerry Mulligan all the things you are

https://www.youtube.com/watch?v=12Ahmng5ee0



<きょうの一枚の絵>    


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  樋口 洋  ウトロ港と知床の山 8号 


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Evolocumabによる冠動脈プラーク進展抑制

Evolocumabの冠動脈プラーク進展抑制をIVUSで確認:トップライン結果

http://www.carenet.com/medscape/cardiology/000285.html

(2016年)9月20日に発表された試験結果の報告要旨によると、LDLコレステロール低下薬であるプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害薬evolocumab(商品名:Repatha、Amgen)を、最適用量のスタチン療法に追加すると、冠動脈のアテローム性プラークの蓄積を効果的に緩和するということだ。


発表によると、冠動脈疾患患者968例を対象としたGLAGOV試験における主要評価項目は、血管内超音波法(IVUS)測定によりプラセボと比較した、evolocumabのベースライン時から78週時のアテローム体積率(PAV)の変化であり、これは達成された。

また、副次的評価項目は、PAVのベースライン時からのすべての減少、78週時の総アテローム体積(TAV)のベースライン時からの変化、TAVのすべての減少であり、これらも同様に達成された。


この第III相多施設二重盲検試験では、冠動脈カテーテル治療を受けている最適スタチン療法中の冠動脈疾患患者を、月1回のevolocumab 420mgまたはプラセボのいずれかの皮下投与を受ける群に無作為に割り付けた。


本試験において治療中に発現した有害事象は両群間で同等であり、新たな安全性の懸念は認められなかった。

Amgenは、11月に開催される2016年米国心臓協会(AHA)学術集会で詳細な結果を発表する予定である。

evolocumabは、高コレステロール血症に対して最近承認されたPCSK9阻害薬2剤のうちの1つであり、もう1つはalirocumab(商品名:Praluent、Sanofi/Regeneron)である。

ただし、8月に発表された研究において、このLDLコレステロール低下薬2剤の費用対効果は問題視されている。


英文記事

Evolocumab Slows Coronary Plaque Growth by IVUS: Top-line Results

http://www.medscape.com/viewarticle/869033




<関連サイト>

脂質異常症に対するPCSK9阻害薬の費用対効果/JAMA

https://www.carenet.com/news/journal/carenet/42505


PCSK9i、FHやASCVDで費用効果認めず

https://www.m3.com/clinical/journal/16766

・Kazi DS et al. Cost-effectiveness of PCSK9 Inhibitor Therapy in Patients With Heterozygous Familial Hypercholesterolemia or Atherosclerotic Cardiovascular Disease. JAMA. 2016 Aug 16;316(7):743-53. doi: 10.1001/jama.2016.11004.

・2015年の価格モデルでは、ヘテロ接合性FHまたはASCVDで適応ある全患者へのPCSK9阻害薬の使用は5年間で290億ドルの心血管治療費を減少させるが、米国医療費は $5920億ドル増大すると推計され、一般に許容可能な増分費用対効果閾値に合致しないと推定された。


私的コメント;

オプジーボを連想させる話です。

PCSK9阻害薬は100万人に一人といわれるホモ接合型FHに対するオーファンドラッグと考えれば高薬価も得心が行きます。

米国では適応が甘いのではないのでしょうか。これではホモ接合型FH患者への福音ともいえる薬剤がうまく育っていかないのではないのでしょうか。

私たちに出来る唯一のことは、厳しい適応で対応することだと思います。


スタチン治療の費用対効果(アメリカの試算)

http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2015-07-22




 


<きょうの一曲>

DAY BY DAY (Tribute to Carmen, allowed)

https://www.youtube.com/watch?v=qrtq5THKe24


Doris Day - Day by Day

https://www.youtube.com/watch?v=AqFfe6Y97Yc


The Four Freshmen---"Day By Day”

https://www.youtube.com/watch?v=cuCHTZjn1jc


Day By Day (Frank Sinatra - with Lyrics)

https://www.youtube.com/watch?v=BzO8fsbIGqw




<きょうの一枚の絵>

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                                                樋口 洋 羅臼岳と港  P6号




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NSTE-ACSへの早期侵襲的治療 FRISC-II試験の15年間の追跡調査

非ST上昇型急性冠症候群への早期侵襲的治療、15年追跡結果/Lancet

http://www.carenet.com/news/journal/carenet/42625

非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)に対する早期侵襲的治療は、非侵襲的治療と比較して死亡または心筋梗塞の発生を平均18ヵ月、虚血性心疾患による再入院を37ヵ月延長させた。
NSTE-ACSへの早期侵襲的治療は死亡または心筋梗塞の発生率を減少させることが
FRISC-II試験で初めて示されたが、今回は、早期侵襲的治療の長期的な有益性について評価すべく、残存寿命の観点からFRISC-II試験の15年間の追跡調査におけるすべての心血管イベントについて解析した。
著者は、「
ほとんどのNSTE-ACS患者において、早期侵襲的治療は優先すべき治療選択肢であることが裏付けられた」とまとめている。
(Lancet誌オンライン版 2016.8.25掲載)

NSTE-ACS患者約2,400例で早期侵襲的治療と非侵襲的治療を比較

FRISC-II試験は、スウェーデン・デンマーク・ノルウェーの58施設で実施された多施設前向き無作為化試験である。
1996年6月17日~1998年8月28日にNSTE-ACS患者2,457例が登録され、7日以内の冠動脈造影で70%以上狭窄を認めた場合は血行再建を行う早期侵襲的治療群(侵襲群)と、至適薬物療法を行うも不応性または症状再発あるいは退院前の症候限界性運動負荷試験で重度の虚血が確認された場合に冠動脈造影を行う非侵襲的治療群(非侵襲群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。
割り付け時にバイオマーカー分析のため血漿を採取。
長期転帰は全国医療登録のデータで確認した。

主要評価項目は、死亡または心筋梗塞の複合エンドポイントであった。
追跡期間中の致死的イベント発生はKaplan-Meier法にて推算し、平均累積イベント曲線間の面積として算出した2次性イベント(再発を含む)延期期間を比較した(intention-to-treat解析)。

私的コメント;
死亡のついては心血管死に限定されたのでしょうか。


15年間で、早期侵襲的治療は致死的イベントの発生を平均1年半延長

最低15年間追跡した2014年12月31日時点において、2,457例中2,421例(99%)で生存に関するデータが、2,182例(82%)で2年後の他のイベントに関するデータが得られた。

追跡期間中、非侵襲群と比較して侵襲群では死亡または2次性の心筋梗塞の発生が平均549日間遅延した。
この効果は、非喫煙患者、トロポニンT値上昇を伴う患者、増殖分化因子-15(GDF-15)濃度上昇を伴う患者でより大きく、両群の差は主に新たな心筋梗塞の発生遅延によるものであった。
 
一方、死亡率のみでは最初の3~4年間に差がみられたものの、これは心臓死の差によるもので、時間とともに差は認められなくなった。
侵襲群では、死亡または虚血性心疾患による2次性の再入院を平均1,128日遅らせ、これは全サブグループで一貫していた。 


私的コメント;
死亡のついては心血管死に限定されたのでしょうか。

「死亡率は最初の3~4年間に差がみられたものの、これは心臓死の差によるもので、時間とともに差は認められなくなった」
 どうやら心臓死とその他の死亡に分けられているようですが、記事には図表などのデータの記載がありません。
また長期の観察で差が消失しているのはどのように解釈されるのでしょうか。
 
 

以下は
中野 明彦先生の解説です。

 
 

FRISC-II試験:死ぬまで大規模臨床試験! ~スカンジナビア諸国の壮大なプロジェクト~(解説:中野 明彦 氏)

http://www.carenet.com/news/clear/journal/42727?utm_source=m36&utm_medium=email&utm_campaign=2016100400


はじめに:非ST上昇ACSに対する治療法の変遷

現在日本の循環器専門施設において、非ST上昇といえどACS患者に冠動脈造影(必要ならPCIやCABG)を行わないところはまずないであろう。
しかし、FRISC-II試験が登録された1990年代後半には、その是非は賛否両論だった。

 
血行再建術が成熟していなかった影響も大きいが、不安定狭心症を対象とした
VA studyや非Q波心筋梗塞・不安定狭心症で比較したVANQWISH・TIMI-IIIB試験では、早期侵襲的治療群(侵襲群)の非侵襲的治療群(非侵襲群)に対する優位性は示せなかった。


FRISC-II試験は、侵襲群の優位性を示した最初のランダム化試験で、TACTICS-TIMI18・RITA-3・ISAR-COOLなどがこれに続き、最新のガイドラインにも反映されている。
その優位性はACS再発による再入院にとどまらず、死亡・心筋梗塞といった重大イベント抑制に及び、patient riskが高いサブグループほど絶対リスクの差が大きい。
また、原則的にそうしたhigh risk群ほど早い介入が望まれる。


FRISC-II試験と本論文について

FRISC-II試験は、1996~98年に登録された。
当然ベアメタルステントの時代である。
侵襲群において、その後の一連の試験に比して、冠動脈造影まで要した時間は最も長く、ステントやスタチン併用が最も少ない。
一方、非侵襲群からのクロスオーバーは最も少なく、これが侵襲群の優位性を際立たせ、血行再建の遅れによるマイナス面を相殺したと考えられる。
総死亡+非致死性心筋梗塞を1次エンドポイントとして、6ヵ月・1年・2年・5年の結果が報告されている。


15年間に血行再建術が施行された患者は82% vs.58%だったが、最終的な心臓死の割合は14.5% vs.16.3%で有意差がなかった。

 
総じて、侵襲群では当初の3~4年間、心臓死や心筋梗塞発症が抑制されたものの、5年後には予後に関するアドバンテージは消失
、新たな心筋梗塞発症も以降平行線を辿っている。
つまり、急性期積極的血行再建の賞味期限は3~4年ということらしい。


15年経つ、15年観る、ということ

循環器系の(も?)大規模臨床試験の観察期間は長くて5年である。
企業主導であろうが医師主導であろうが、多くの症例を厳密にfollow-upする努力・モチベーション・予算は5年が限界なのかもしれない。また、その頃には別なテーマやデバイスが浮上し、人々の興味も次へとシフトする。

 
つまり、
本論文で特筆すべきはその観察期間の長さである。
さらにデータ回収率が高く、生死および死因に関する情報は99%、イベントに関する情報も89%の症例で確認されている。
それを裏支えしているのは、スカンジナビア諸国で行われている公衆衛生の登録制度である。
個人識別番号と疾病・負傷、入退院、死亡(死因)、処方薬などのさまざまな医療情報をリンクさせ、それを関係者で共有することにより、人・金・施設などの限られた資源を有効活用し、包括的で質の高い医療を目指そうという国家的プロジェクトである。


FRISC-II試験の登録症例の年齢(中央値)は66歳、スカンジナビア諸国の平均寿命は78~81歳。
つまり、15年というのは半数の患者が平均寿命に達する期間である。
割り付けられた介入の影響がどんどん薄まっていき、原疾患たる冠動脈疾患や心疾患、さらには高齢者故の心臓以外の疾患により予後やQOLが損なわれていくのは当然である。
逆にいえば、平均寿命まで追跡することによって、その介入が患者の一生にどう関わるかを判定しようという壮大な視点が垣間みえる。


ノルディックモデルと称される社会民主主義的福祉レジームによる制度的再配分福祉を整備するスカンジナビア諸国では、高い租税率を代償として国営に近い形で医療が遂行されている。
だからこそ可能になった登録制度を、医療制度・文化の異なる他国に当てはめるのは現実的ではないが、一方日本の現状を顧みると、個人情報保護の高い壁と相次ぐ医療不信により大規模臨床試験の未来はあまり明るくはない。


対象疾患のリスクで異なるであろうが、大規模臨床試験の適切な観察期間はどのくらいなのか?
ガイドラインで示される治療介入が長期的にみて本当に有効なのか? またその賞味期限はどの程度なのか?



<きょうの一曲>

Horowitz Rachmaninoff 3rd Concerto Mehta NYPO 1978

https://www.youtube.com/watch?v=D5mxU_7BTRA




<きょうの一枚の絵> 

shinryoku

服部譲司 「安曇野夏ぐれ」油彩P8号

http://www.ichimainoe.co.jp/gallery/20120501.html 



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低用量アスピリンによる消化管出血対策は

低用量アスピリンの消化管出血・潰瘍リスクに、PPIとH2ブロッカーで有意差なし

https://medical-tribune.co.jp/rensai/2016/1005504858/

(MT 2016.10.5)

研究の背景:PPI優位の結果にも異議を唱える解釈も

消化管出血の既往のある低用量アスピリン服用者でプロトンポンプ阻害薬(PPI)による消化管出血の再発リスク低減効果は以前から示されていた(NEJM 2001; 344: 967-973NEJM 2005; 352: 238-244)。
一方で、H
2ブロッカー(H2RA)については、Tahaらが内視鏡を用いた二重盲検プラセボ対照ランダム化試験(FAMOUS試験)で、ファモチジンのアスピリン潰瘍予防効果を明らかにしている(Lancet 2009; 374: 119-125)。
しかし、PPIのpantoprazoleとH
2RAのファモチジンを比較したランダム化試験では、上部消化管出血と重症のディスペプシア症状予防には、ファモチジン(1日40㎎、朝夕2分割)は、pantoprazole(1日20㎎、朝20㎎、夕 プラセボ投与)に比し劣性であることが報告されていた。

 
実際に、この試験では、130人のうち65人がファモチジン群に、65人がpantoprazole群に割り付けられたが、一次評価項目であるディスペプシア症状や出血性潰瘍・びらんの再発率はファモチジン群で20%、pantoprazole群で0%、消化管出血はファモチジン群で7.7%、pantoprazole群で0%であった。
また、この試験では、潰瘍による穿孔や狭窄は1例も認められなかった。
しかし、これらの研究は、アスピリン服用者で上部消化管出血のリスクが最も高い(NEJM 2000; 343: 834-839)と考えられる「消化管出血の既往」のある患者だけをエントリーしたわけではなく、出血の既往のある人もない人も混ざっていたのである。
さらに、試験にエントリーした患者数も比較的少ないなど、結果の解釈には問題が含まれると考えられていた。


研究のポイント:常識覆す"有意差なし"

そこで、計画されたのが、今回の論文の試験である。
香港のChinese UniversityのFrancis Chanらは、日本(大阪市立大学を中心としたグループ)との国際共同研究で、内視鏡的に確認できた「消化管出血の既往」のあるハイリスクの低用量アスピリン(1日325mg以下)服用者489人をスクリーニングし、これらのうちの270人を試験に登録し、H
2RAのファモチジンとPPIのラベプラゾールによる上部消化管出血および潰瘍の予防効果を比較する二重盲検ランダム化試験を実施した。
270人のうち、132人がファモチジン40mgを1日1回服用するファモチジン群に、138人がラベプラゾール20mgを1日1回服用するラベプラゾール群に割り付けられ、最長で12カ月経過観察された。
このうち、ファモチジン群の85%が、ラベプラゾール群の87%が割り付けられた薬剤を少なくとも70%は服用していた。
試験のエンドポイントに到達した患者を除いた脱落率は両群で同等であった。
つまり、ラベプラゾール群で9.3%、ファモチジン群で11.3%であった。


対象は2カ月ごとに評価され、上部消化管内視鏡検査は、上部消化管出血の徴候があるか、ヘモグロビン値が2g/dL低下した時点、あるいは12カ月後の経過観察の時点に実施された。
12カ月の試験期間において、上部消化管出血はファモチジン群からは4例つまり3.1%、ラベプラゾール群からは1例つまり0.7%に起こった。
再出血や内視鏡的潰瘍を含んだ複合エンドポイントで見ると、ファモチジン群では13例つまり12.4%、ラベプラゾール群では9例、7.9%であった。
いずれも、ファモチジン群でイベント発生件数が多い傾向にあるものの、有意差はないという結果
となった。


今回の研究では、Industry-independent と明記されているが、まさに、この研究は、これまでの常識でもあったH2RAに対するPPIの優位性という既成の概念を覆す結果でもあり、Industry-independent でないと難しい試験であったともいえる。
むしろ、そのような研究から、予想外の真実が分かることがあることを実感させられるわけである。


考察1:むしろH
2RAに不利な試験デザインだったかもしれない

ファモチジンは、1日量40mgを朝、夕の2分割で服用するのが有効であると考えられるが、本試験では、PPIの投与回数に合わせて40mgの1回投与となっている。
有効血中濃度の持続時間なども勘案すると、H
2RAは1日1回投与よりも1日2回に分割した方がよいと考えられ、H2RAとしては不利な条件になっている。
一方で本邦では、ラベプラゾールの通常用量は1日10mgで、低用量アスピリン服用者への消化性潰瘍予防効果については1日5mgあるいは10mgのみが健康保険の適用となっている。
今回の試験ではラベプラゾールを20mg投与しており、倍量ということになる。
ラベプラゾールは通常の2倍あるいは4倍量を用いつつ、一方で、ファモチジンは40mgという通常量を2分割ではなく1分割で投与している条件下で比較していることに留意すべきである。
これはファモチジンには不利な条件であるかもしれない。もし、ラベプラゾールを10mgあるいは5mgとしファモチジンを2分割にしたら、どうなったかが非常に興味深い。

 
ちなみに、先行研究では、pantoprazoleは通常量の20mgをプラセボと合わせて2分割投与しており、ファモチジンは40mgを朝夕の2分割投与とした試験デザインで、pantoprazole通常量の優越性を示している 。


併用薬や投与条件などリスク因子の総合的評価が重要

一方、DAPT(dual antiplatelet therapy)を施行されている冠動脈疾患患者での消化管合併症(消化管出血、穿孔、潰瘍による狭窄)の予防効果について、ファモチジン(1日40mg)とエソメプラゾール(1日20mg)のランダム化比較試験を実施している。
この試験では、311人の患者のうち148人がファモチジン群、163人がエソメプラゾール群に割り付けされ、消化管合併症の発生はファモチジン群で6.1%、エソメプラゾール群で0.6%とPPIが優位であることを示した。
この試験の対象は、低用量アスピリン単剤ではなく、クロピドグレルとエノキサパリン(低分子ヘパリン)あるいは他の抗血栓薬を服用していた。

 
紹介した論文の著者であるChanらはクロピドグレルとの薬物相互作用が問題であり低用量アスピリンにクロピドグレルを併用する場合なども、PPIではなくH
2RAというオプションがあることを示唆している。
しかし、あくまでも今回は消化管出血の既往のある低用量アスピリン単剤投与の条件での結果であり、DAPTやその上にDOAC(direct oral anti coagulant)などの抗血栓薬を同時併用している出血リスクの高い患者群に応用できる話ではないだろう。

 
今回の驚きの結果について、さまざまな議論が出ることは容易に予測できるが、対象となっている患者の出血や潰瘍リスクに応じて、つまり出血の既往者か否か、低用量アスピリン単剤服用か、DAPTか、DOACやワーファリンなどの抗凝固薬の併用例か否かなどによって、その出血・潰瘍予防のストラテジーをきめ細かく検討することが肝要であろう。
さらに、H
2RAであれ、PPIであれ、さらにP-CABであれ、どれくらいの用量を、いつ、いかにして投与するかによってもそのイベント発生率は変わることにも留意すべきである。
今回の結果で、H
2RAとPPIの比較について十分に決着が付いたわけではない。
出血という重篤な事態をいかに予防できるか、個々の患者のリスク因子の総合的評価が大前提であることは間違いないだろう。



<きょうの一曲>

[HD] Khatia Buniatishvili - Tchaikovsky Piano Concerto No. 1 in B flat minor, Op. 23 ~ Zubin Mehta

https://www.youtube.com/watch?v=wH3OOM70cp0



<きょうの一枚の絵>

03_kuroda

黒田保臣「早春の大山(鳥取)」油彩6号

http://www.ichimainoe.co.jp/cover/1403.html


 

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スタチンの過少量投与 PALMレジストリ解析

スタチンの過少量投与はより高リスクな患者で多い:PALMレジストリ解析

http://www.carenet.com/medscape/cardiology/000283.html

Patient and Provider Assessment of Lipid Management(PALM)レジストリの解析によると、2013年の米国治療ガイドラインにおいて、脂質目標の強化があったにもかかわらず、スタチンはより高リスクの患者で過少量投与され続けている

スタチンの適応があり定期的に医療の利用が可能な成人5,906例のデータを調査したところ、患者の74%がスタチン治療を受けていたが、スタチン強度が適切だったのは45%のみだったことを研究者らは見出した。

推奨量に対する使用不足のギャップが最大だったのは高強度スタチン推奨群で、患者の80%がスタチン治療を受けていたものの、適切とされる高強度治療を受けていたのは29%のみであった。

対照的に、中強度スタチン推奨群では67%がスタチン治療を受けており、60%は強度が適切であった。
(ESC2016 学術集会での発表)


この過少治療に対し考えられる説明の1つは、単純な診療の惰性である。
新規処方の場合は高強度スタチンで開始されやすい可能性があるが、すでにスタチン治療を受けている患者では増量がされないためだ。
 

本研究には、PALMレジストリにおいて循環器科、プライマリ・ケア、内分泌科の外来診療を行う140施設で治療を受けた、中強度スタチンの適応である2,532例と高強度スタチンの適応である3,374例が組み入れられた。
スタチン強度は2013年米国心臓病学会/米国心臓協会(ACC/AHA)ガイドラインに基づいている。

ガイドラインでは、アテローム硬化性心血管疾患(ASCVD)を有する75歳以下の成人、LDLコレステロール値が190mg/dL以上である全成人、40歳~75歳で10年ASCVDリスクが7.5%以上の高リスク糖尿病患者に対し、高強度スタチンが推奨される。
中強度スタチンは、1次予防の適応があるASCVDリスク7.5%以上の患者、またASCVDを有する75歳超の高齢者、ASCVDリスクが7.5%未満の低リスク糖尿病患者に推奨される。
 

データを1次予防と2次予防としての適応で分けて分析したところ、過少治療は、スタチンの推奨強度にかかわらず1次予防集団において大幅に多かった。

中強度スタチン推奨群では、2次予防集団の19%がスタチン治療をまったく受けていなかったのに対し、1次予防集団では42%がスタチン治療を受けていなかった。

高強度スタチン推奨群では、2次予防集団の36%のみが高強度スタチン治療を受けていたが、これは、「それでもなお、1次予防目的で高強度スタチンを推奨される患者における16%よりも大いに高かった。
 

高強度スタチン推奨群では、過少治療患者はガイドラインに従った治療を受ける患者に比べ、より女性である率が高く、またアフリカ系アメリカ人である率、糖尿病を有する率も高く、循環器医による診療を受けている率は低かった。


LDLコレステロール値の調査から、スタチンの過少治療の原因は、「患者のLDLコレステロール値がすでに十分に低いためにスタチン強度を上げる必要がなかった」というわけではないことが示唆される。
実際に、高強度スタチン推奨群の過少治療患者ではほぼ2人に1人がLDLコレステロール高値(100mg/dL以上)を有していたのに対し、適切な治療を受けていた患者では22%のみであった。


この結果により、LDLコレステロール値低下により最も得るものが多い最高リスク患者群において高強度スタチン治療を開始することを強調する2013年のガイドラインの信頼性が増した。


このガイドラインは、患者と医療提供者が心血管疾患リスクとその予防についてより広範囲に話し合うためのスタート地点となるべく作られた。
9月の初めには、まさにその対話を改善するための4項目からなるモデルが
発表されている。


すべての患者が高強度スタチン治療を受けることを決断しないかもしれないが、ガイドラインの推奨に合致する患者は、より積極的なLDLコレステロール低下治療のベネフィットとリスクについて、医療提供者と向き合って話し合うための機会を持つべきである。

日々の高強度スタチン治療からベネフィットを得うる成人数を浮き彫りにするPALMレジストリのデータが、より多くの医療提供者に患者とのこのような対話の機会を後押しすることが望まれる」。


<英文記事>

Statin Underdosing Common in Higher-Risk Patients: PALM Registry Analysis

http://www.medscape.com/viewarticle/868570




<きょうの一曲>

Chopin: Pianoconcert nr. 2 - Rosalía Gómez Lasheras - Finale YPF - Live Concert in HD

https://www.youtube.com/watch?v=okSpoz6ZUOU




<きょうの一枚の絵>

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黒田保臣「尾道の朝陽」

http://www.ichimainoe.co.jp/topics/20060327.html




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冠動脈疾患患者が来たら足首をみる

冠動脈疾患患者が来たら「靴を脱いでもらう」時代に?!

https://medical-tribune.co.jp/news/2016/0210038392/

これまで,日本では少ないと考えられていた家族性高コレステロール血症(FH)。意外に診断率が低かったことが最近の研究で明らかになっているようだ。新たな機序を有する脂質異常症治療薬PCSK9阻害薬エボロクマブ(商品名レパーサ)の国内承認を受け,アステラス・アムジェン・バイオファーマが2月8日にプレスカンファレンスを開催。
専門家らが心血管ハイリスク例の管理やFH診療の現状,エボロクマブ導入に当たっての現時点の考え方などを示した。
ガイドライン(GL)ではFHの診断基準の1つにアキレス腱肥厚が挙げられている。


ACS患者の約19%に「アキレス腱肥厚」

頸動脈や脳・心血管,末梢動脈疾患(PAD)など,複数の血管の動脈硬化性病変(polyvascular disease),糖尿病,慢性腎臓病(CKD),急性冠症候群(ACS)といった素因を持つ高リスク例を同定した場合,スタチンなどを中心としたLDLコレステロール(LDL-C)低下治療を行い心血管疾患の一次・二次予防を行うことがゴールドスタンダードとされている。

 
FHは循環器専門医の間でも見過ごされてきた危険因子。
専門医療機関には早発性の冠動脈疾患患者も少なからず訪れるが,心筋梗塞を若年で発症するのは一般的ではない。

 
最近,国内の2つの大学病院にACSで入院した患者を検討した2件の後ろ向き研究では,FHの診断基準の1つに合致する(アキレス腱の肥厚9mm以上)所見があった割合は12.7~19.0%だった。
母集団はいずれも109例,184例と比較的小規模な検討だがACS患者の7~8人に1人がFH。
これまで考えられていたよりも頻度が高い可能性がある。
現在大規模研究が進行中で日本人でのより詳しいFHの頻度が今後明らかになるだろうと期待される。

 
専門医の注目が集まりつつあるFHだが,これまで,なぜ臨床現場で見過ごされてきたのか。
その理由は
①急性心筋梗塞直後にはLDL-Cが低下し,普段の健診時とは異なる値を示す
②スタチンの普及により疾患がマスクされている
③アキレス腱肥厚と家族歴のルーチンな診断の軽視
―が挙げられる。


早期治療で確実に予後を向上できる遺伝性疾患

非専門医や一般の人の場合にFHを知る人はかなりマニアック。
FHはLDL受容体遺伝子の変異による遺伝性疾患だが、早期診断と的確な治療で確実に予後を向上させることができるのが特徴だ。

 
FHで一番問題となるのは,早発性動脈硬化症に伴う冠動脈疾患だ。
あるデータによると,一般男女の平均的な心筋梗塞の発症年齢はそれぞれ68歳,73歳であるのに対し,FH患者の場合,46.5歳,女性は58.7歳とかなり若い。
男性の場合,20~30歳代で心筋梗塞を起こすこともある。


「薬で下がっていればOK」ではない

①心臓病や高コレステロール血症の家族歴
②LDL-C高値で食事療法が効きにくい
③アキレス腱肥厚
―がFHの3つの特徴。

薬でLDL-Cが下がっているならいいじゃないかと言う人も多い。
しかし,FHを早く診断しなくてはならない理由は3つある
①FHは生下時よりLDL-Cが高いため,動脈硬化の進行が早い。診断時の動脈硬化の進行度を厳密に評価する必要がある
②FHのLDL-C目標値は100mg/dL。他の危険因子の場合よりさらに厳格な管理が重要
③他の家族のFHも救う必要がある

患者がFHと診断された場合,カスケードスクリーニングと呼ばれる血縁者への検査が非常に重要で,ひと家族で10人近くの患者を診療している医師もいるという。


「結婚前に相手のコレステロール値を確認して」

FHは遺伝性疾患のため,患者や家族へのカウンセリングも重要になる。
今後,FHの認知度向上により診断率が高まれば,実地臨床でのFHの遺伝に関する情報提供の機会が増えると見られる。
例えば,FHヘテロ接合体の人同士の結婚では"4分の1の確率でホモ接合体の子が,2分の1の確率でヘテロ接合体の子が生まれる"ときちんと伝えることも重要。

FHは放置すれば一般の人に比べ,非常に早く冠動脈疾患の発症年齢に到達する。
なるべく早く,より厳格にLDL-Cをコントロールすることで冠動脈疾患発症までの年齢を正常に近づけることが可能になる。
(FHの早期発見と治療の重要性)



<きょうの一曲>
Gabriel Fauré - Requiem (1887-90) - Danmarks Radio Symfoniorkestret - Ivor Bolton

https://www.youtube.com/watch?v=aI9i02nO-4o



<きょうの一枚の絵>


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黒田保臣「大山紅葉」

                  http://buyee.jp/item/yahoo/auction/h202296437?lang=chs 





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欧州心臓病学会、心房細動管理で指針

欧州心臓病学会、心房細動管理で指針   チームによる患者中心の医療を推進

https://medical-tribune.co.jp/news/2016/0929504721/

欧州心臓病学会(ESC)は欧州心臓胸部外科学会(EACTS)と共同で、心房細動(AF)管理に関わる全ての専門家に向けたAF管理ガイドライン(GL)を策定し、欧州心臓病学会(ESC2016)で発表、Euro Heart J (2016年8月27日オンライン版)に同時掲載した。


高齢群に任意型スクリーニングを

抗凝固療法によりAF患者の虚血性脳卒中の大部分は予防可能であるため、同GLでは初回脳卒中発症前のAF発見の重要性を強調している。

 
無症候性AFは心電図によるスクリーニングが発見の鍵となる。65歳超やペースメーカー装着者に対するAFの任意型スクリーニング、発作性AFについても複数回の検査やスキンパッチレコーダーを用いた長期心電図などの有用性が報告されている。


表. AF管理GL2016で示された、AF患者診断・管理のための17のルール
(本文を参照下さい) 


初期に5項目を評価

同GLでは、新たにAFと診断された患者に対する初期評価として
①血行動態の不安定性あるいは制限、重度症状
②誘発因子(甲状腺中毒症、敗血症、術後のAF)および既存の心血管疾患の有無
③脳卒中リスクと抗凝固療法の必要性
④心拍数と心拍数調節の必要性
⑤症状の評価と洞調律維持療法の決定
-の5項目を検討するよう促している。


図. AF患者の急性期/慢性期管理、目標とする心血管アウトカム、患者のベネフィット

(本文を参照下さい) 
 

新規AF患者のケアではプライマリケア医、循環器内科医、心臓外科医、AFや脳卒中の専門家、医療スタッフ、患者との協力体制を構築し、生活習慣の是正、既存の心血管疾患に対する治療などを包括的に推進すべきとしている。

 
同GLでは、急性TIAや虚血性脳卒中を生じたAF患者、経口抗凝固療法中に脳出血を生じたAF患者、急性冠症候群(ACS)発症後およびステント術施行後のAF患者などへの経口抗凝固療法の開始時期をアルゴリズムで示している。

 
洞調律維持療法についてはAF発症急性期の除細動、長期的な洞調律維持のための抗不整脈薬投与やカテーテルアブレーション、治療非奏効例への対処法が示されている。

 
急性期の除細動では、患者の血流動態が不安定な場合には電気的除細動を行うが、安定している場合にはアミオダロンをはじめとする薬剤を用いた除細動も選択肢となる。加えて、心不全や大動脈狭窄、冠動脈疾患などが認められない患者では安全性確認後にフレカイニドやプロパフェノンの頓服も試みられている。

 
長期的な洞調律維持では、カテーテルアブレーションは抗不整脈薬の非奏効例や不耐容例に対する第一選択となるが、その安全性は抗不整脈薬と同等と報告されている。また、同GLではアブレーションの第一選択は肺静脈隔離で、より広範囲のアブレーションはAF再発時の再手技で適用することを推奨している。

AF Heartチームの結成を呼びかけ

 
カテーテルアブレーション非奏効例には抗不整脈薬とカテーテルアブレーションやAF手術を組み合わせたハイブリッド治療も合理的な治療選択である。しかし、抗不整脈薬、カテーテルアブレーション、手術の経験豊富な専門家で構成するAF Heartチームを結成し、対処法を決定するよう呼びかけている。

 
また、同GLでは洞調律維持療法のリスクとベネフィットのバランスを取り、AFの症状を改善するため、心臓手術を施行するAF患者に両心房メイズ手術の施行も考慮すること(ⅡaA)、心臓手術を施行する無症候性AF患者に両心房メイズ手術または肺静脈隔離術を施行すること(ⅡbC)を新たに推奨している。


さらに、AF Heartチームの判断によりカテーテルアブレーションに失敗した症候性AF患者では低侵襲肺静脈隔離術を施行すること(ⅡaB)、抗不整脈薬に耐性で持続性または長期持続性の症候性AF患者に対してカテーテルまたは外科的アブレーションを患者の選択、リスクとベネフィット、AF Heartチームの判断を考慮する(ⅡaC)、薬剤耐性で持続性の症候性AF患者またはアブレーション施行後AF患者に対してAF Heartチームによる治療の選択肢として経験豊富な施設で適切なトレーニングを受けた術者による低侵襲メイズ手術を考慮する(ⅡaC)ことも新たに推奨している。

 

<きょうの一曲>

マーラー《大地の歌》第6楽章「告別」フィッシャー=ディースカウ

https://www.youtube.com/watch?v=mX3Qowyuiwg


サントリー ウイスキー ローヤル - ♪ マーラー 「大地の歌」

https://www.youtube.com/watch?v=3-h_kaEnNKg


Das Lied von der Erde

http://amadeushoffmann.com/mahlererde.html


大地の歌

https://ja.wikipedia.org/wiki/大地の歌


マーラー 交響曲「大地の歌」

http://classic.music.coocan.jp/sym/mahler/mahler0.htm


マーラー:大地の歌

http://www.shinkyo.com/concert/p217-3.html


マーラー 「大地の歌」 ~アルト、テノール独唱とオーケストラのための交響曲~

http://www3.kcn.ne.jp/~mamama/01-symphony/mahler-der-erde.htm


大地の歌 Das Lied von der Erde

http://www.oekfan.com/note/mahler/lied_von_der_erde.htm


マーラーの《大地の歌》

─ 唐詩からの変遷 ─

http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~mogami/mahler-erde1.html



<きょうの一枚の絵>


写真 

石垣定哉  題 不詳

https://ikus-blog.blogspot.jp/2013/11/blog-post_28.html 




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「FFR-CT」

安定狭心症の診療がFFR-CTで変わる

心カテ・シンチ不要!CTだけでPCIの判断可能に

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201609/548070.html 

冠動脈疾患の非侵襲的検査として普及した冠動脈CTで、心筋虚血の評価もできるようになった。

安定狭心症の診療では近年、狭窄の視覚的評価に頼った経皮的冠動脈インターベンション治療(PCI)の過剰適用が指摘されている。

FFR-CTと呼ばれる本検査の導入で、心臓カテーテル検査や負荷心筋血流シンチグラフィーを行わずとも、虚血の情報を加味したより適切なPCI施行の判断が可能になる。

 

PCIに取り組む循環器医の間で、冠動脈狭窄による心筋虚血の程度を非侵襲的に評価する「FFR-CT」という検査が話題となっている。


普及した冠動脈CTのデータを使い、狭窄の視覚的評価だけでなく、どの程度の虚血が生じているかという機能的評価まで簡単に行えるようになるのは画期的なことだ。


現在、FFR-CTは臨床研究がほぼ終了し、実臨床への導入が始まろうとしている。

これが安定狭心症を疑った患者に対する検査として普及すれば、冠動脈CTから侵襲的な心臓カテーテル検査に進むかどうかの判断が容易になる。

さらに、現状で指摘されている、冠動脈CTや冠動脈造影(CAG)での狭窄所見という視覚的評価に頼った不要なPCIの削減も可能になると、期待は広がる。


FFR-CTとは、数値流体力学の概念を使って、シミュレーションにより冠動脈CTのデータからFFR(fractional flow reserve:心筋血流予備量比)を算出する解析法。

米スタンフォード大学の工学研究者が設立した医療ベンチャー、ハートフロー社が開発した。

インターネットで冠動脈CTのデータを同社に送れば、翌日にはスーパーコンピューターで計算された結果が返ってくる。

64列以上のマルチスライスCTのデータなら、メーカーを問わず解析可能という。


そもそもFFRとは、特定の冠動脈の部位において、狭窄がないときに比べて最大心筋血流量がどの程度低下しているかを示す指標だ。

狭窄がないときを1.0としたFFR値が0.8以下になると、冠動脈病変に起因する有意な心筋虚血が存在すると判断する。

実際、0.8以下では心血管イベントのリスクは有意に上昇することが、FAME2などの臨床研究で明らかになっている。

FFRを調べることで、その狭窄にPCIが必要か判定できるわけだ。


だがFFRの測定には、圧センサー付きガイドワイヤーを冠動脈内に挿入する必要があった。
このため既に保険が適用されているものの、全PCIの2~3割で測定されているにとどまる。
一方でFFR-CTなら冠動脈CTのデータから算出するので、非侵襲的にFFR値が分かる。


これまでの研究から圧ワイヤーによる測定値とFFR-CTによる計算値はよく相関し、心筋虚血の診断精度は圧ワイヤーによる測定に匹敵することが確認されている。

長期間追跡した成績も出始めており、新規胸痛患者を対象としたPLATFORM試験でFFR-CTの判断によりCAGを回避した117例からは、1年間の追跡で新たな心血管イベントの発生は1例もなかった。


また、冠動脈CTのみの判断にFFR-CTも加えることによる治療方針の変化や医療経済効果、予後を評価する目的で、5000例を3年間追跡する国際共同研究ADVANCEレジストリーが日本の9施設も参加して進行している。


不要なPCI抑制の切り札になる可能性

実は安定狭心症では、有意な心筋虚血が存在しない症例にも、PCIが多く行われてきた。
狭窄の存在という視覚的評価を重視してPCIの適応を判断してきたためだ。

しかし、日本心血管インターベンション治療学会が行ったCVIT-DEFERレジストリーでは、例えば右冠動脈の75%狭窄病変の3分の2は、FFRでは虚血が存在しないと判断された。視覚的評価に、私たちはこれだけだまされていたわけだ。


心筋虚血がなければ、PCIは不要だ。

日本循環器学会「冠動脈病変の非侵襲的診断法に関するガイドライン」では安定狭心症に対して、運動できる場合はまず運動負荷心電図、次いで負荷心筋シンチなどによる心筋虚血の評価を行うよう求めている。


本来、安定狭心症では心筋虚血の評価が必須なのだが、簡単かつ確実な検査法がなかったこともあり、実施率は低かった。

負荷心電図は感度・特異度ともに低い。

また負荷心筋シンチは施行できる施設が限られる上、先の症例のように複数の冠動脈に狭窄がある場合、どの狭窄を広げれば心筋虚血が解消されるかといった細かな判断は難しかった。


FFRなら狭窄ごとに心筋虚血を評価できるが、測定には侵襲的な手技が必要となる。

冠動脈CTで高度狭窄が明らかであれば、引き続き侵襲的検査を行うことに抵抗感はない。
しかし中程度狭窄の場合、虚血の評価だけで終える可能性のあることを承知で侵襲的検査に進むか、循環器医は判断に迷うことが多かった。

このような症例が、FFR-CTのよい適応になるとみられる。


新規胸痛患者に対する診断アルゴリズムでは冠動脈CTで中程度狭窄の場合にFFR-CTを行い、その結果で経過観察か侵襲的検査に進むかを判断する。(デンマーク・オーフス大学のノルガードらが提唱)


現在、我が国のガイドラインは改訂作業が始まろうとしている。

次期ガイドラインでは、このアルゴリズムと同様な考え方で、現在の負荷心筋シンチの位置にFFR-CTも入ってくるだろう。


保険償還額の決定は難航?

虚血評価のハードルを下げ、適切なPCI施行を促進するツールとして期待されているFFR-CT。

実臨床への導入に当たり避けて通れない問題が、検査費用だ。

欧州で2011年、米国で2014年に承認されたが、ハートフロー社と保険者の交渉は長引いている。

米国で同社は1500ドルを提示、最近になり民間保険会社との契約がまとまり始めた。


我が国では「医療機器単体プログラム」として申請され、今年中には承認される見込みとのことだが、保険償還額の決定には難航が予想される。

というのも、冠動脈CTは年間40万件以上行われており、その中でFFR-CTの適応となるケースは1割程度と見積もっても、1件1500ドル相当となれば年間数十億円が必要になるためだ。

そこで保険適用に当たっては、冠動脈狭窄の解剖学的な状態や、検査を実施する施設の基準などによる縛りが加わるとみられる。


PLATFORM試験では、FFR-CTの導入により、CAG件数は61%、診断後1年間の総医療費は33%削減できた。

FFR-CTによって不要な検査を防げるだけでなく、不要なPCIの削減も期待できる。

長期的なコスト評価について、我が国でも検証していくことが必要だ。


CTメーカー追従、ハートフロー社は解析プログラムを進化

冠動脈CTのデータからFFR値を算出する方法は、東芝やシーメンスなどのCTメーカーも、それぞれ独自に研究開発している。

CTメーカーは本体に組み込む形を考えているようで、実現すれば検査ごとに解析費用が発生することはなくなる。

 

追われる立場のハートフロー社だが、エビデンスの量と質では、競合他社を圧倒的に引き離している。

プログラムの改良も続けており、これまで解析対象は過去にステントが留置されていない新規発症例に限定されていたが、現在は評価したい冠動脈にステントが留置されていなければ解析が可能になった。

さらに、狭窄部にステントを留置したらどれくらいFFR値が改善するかを予測する、「バーチャルステント」のプログラムを開発しているという。

 

これらの技術開発が単に冠動脈CTの付加価値の追加にとどまらず、不要なPCIの削減やPCIの最終的な目標である予後改善に結びつくかに注目したい。


私的コメント

本文中にpersuasiveな図が掲載されています。




<きょうの一曲>

Somewhere Over The Rainbow - Stringspace String Quartet cover - made famous by Judy Garland

https://www.youtube.com/watch?v=jQM9cM_EpSI 




<きょうの一枚の絵>

136873

大島和芳 油彩「妙高山新緑」F8

 




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