最近,日本が重苦しい雰囲気にある原因として,筆者は「リスク過敏症」があることを指摘しています.何か新しいことをするたびに,リスクを指摘されて,縮みあがってしまいます.本書では,原発,環境ホルモン,添加物,メタミドホス,エコナ,こんにゃくゼリーなど多くの例を取り上げて,問題点を分析しています.

リスクとメリットはトレードオフです.原発廃止を例にとれば,原発を存続した場合,事故による放射能放出はリスクですが,メリットとしては,電源の安定供給,CO2の削減などがあります.リスク過敏症の人は,一方のリスクだけを取り上げて,声高に叫ぶ傾向があります.少し前まで,CO2削減を叫んでいた人で,地震の後は原発反対に鞍替えしてCO2削減のことは何も言わなくなった人がいますが,矛盾は感じないのでしょうか.

本書では,リスク評価に基づいてリスクを受け入れるかの判断の重要性を述べています.ゼロリスクを叫ぶのは簡単で,リスク評価は面倒です.ゼロリスクを主張するなら,一つだけを調べればいいのですが,リスク評価を行うには,対象に関連する事柄を広く調べる必要があります.

また,リスク評価の難しさの要因の一つとして,心の偏り(バイアス)を指摘しています.ここに2つの食料品があります.Aは,13年間に22人の死者を出して大騒ぎとなり,食品安全委員会と消費者庁が調査に乗り出しました.一方,Bは,1年間に77人の死亡者が出ていますが,話題にもなりません.

答えを書くと,Aはこんにゃくゼリーで,Bはおもちです.どちらものどに詰まる点は共通ですが,おもちは慣れ親しんだものなので,危険性を低く評価するのに対して,こんにゃくゼリーは,比較的新しい食品で,このバイアスがかかっていないと説明しています.

別の食料品で「,国際がん研究機関の「発がん物質リスト」でグループ1(ヒトに対して発がん性が確認されている)に位置づけられ,コップ1杯分を吸収しただけで,正常な動作ができなくなる飲料がありますが,現在でも市販されているものがあります.これも,慣れ親しんだ物質のリスクを低く見積もりバイアスの一例です(何か気になる人は,本書を読んでください:-).

リスク判断の面倒さから逃げず,賢い消費者になりましょう.本書は,この想いを新たにしてくれる一冊です.