※ 2011年5月29日 Myspaceブログ投稿分

1991年12月、新生カシオペアは敏腕マネージャー様の提案によって次回作をオーストラリアでレコーディングする事を検討、野呂さんも自ら下見に行かれた結果、メルボルンの森の中にある「ゴッサム・スタジオ」でレコーディングする事を決定、エンジニアもロス・コックルを起用する事が決まりました。そして92年2月、カシオペアはバンドの歴史上、初めてオーストラリアを訪問、20日間に渡る「合宿生活」をスタートしました。

本作をレコーディングするにあたり、野呂さんは「FullColorsではメンバー各々の持ち味を完成系として全部まとめる事ができた。今度のアルバムでは今までやった事の無いタイプの曲がやりたい。色々面白い事にも挑戦したい。音色とスタイルを変えて、新しい未来のカシオペアの音楽を目指したい。」という意向をメンバーに話しました。するとメンバーも同意し、「テーマやサビにこだわらず、もっと自由にやろうよ。」という制作方針が打ち出されたのです。つまり本作は、「Full Colors」とは全く異なる作品に仕上げる事が予め決められていました。

更にサウンドに関して、カシオペアの過去の作品を聴いていたエンジニアのロスが「今までのアルバムはものすごくデジタルっぽい響きだった。せっかくオーストラリアに来たんだから、アコースティックな響きを大事にした方が良いのではないか?」とメンバーに提案すると、「それ、イイね~」という話になったそうです。

その象徴的な例は、日山さんのドラムでした。スタジオは「壷」のような形状になっている上に、気候も乾燥していますので、低音の響きが非常に良くて、良質なエコーが自然に掛かっていたそうです。よってこの響きを活用する為に、ドラムにはデジタルのエフェクトは掛けられませんでした。つまり本作で聴けるドラムサウンドは、全て自然のエコーが掛かった生音ですので、昔のアナログ録音のような響きを体感できます。

鳴瀬さんのベースプレイも幅が広くなりました。本作では「Full Colors」で使われた8弦ベース(アカッパチ)は殆ど使われず、代わって10弦ベースがフルに活用されました。どんどん弦の数が増えていってますが(笑)。10弦ベースを説明するには段階がありまして…先ず普通の4弦ベースにもう1本「Low B」と呼ばれる低弦を張った5弦ベースというのがあり、その5弦に垂直になるように1オクターブ上の音域の5弦を貼ったものが10弦べースです。つまり10弦ベースはLow Bの超低音と高域ピッコロ音やチョッパー音を交互に弾く事も可能な上に、「複弦」を弾く事によってLow Bの超低音も聴こえつつ1オクターブ上の音も同時に聴こえますので、音程が解りやすいというメリットがあります。「Full Colors」の「Purple Hours」のイントロでもデューーンという低音がありましたが、本作ではこれを上回るもっと低い超低音が多数弾かれました。よって野呂さんも「今回のアルバムは普通の4弦ベースでは演奏できない曲が多い。」とおっしゃっていました(笑)。

実はLPレコードの時代は、あまり低音が強すぎるとプレーヤーで針飛びが起きる為、制作側もその点を考慮して重低音は控えめに録音する必要がありました。ところが媒体がCDに移行してからは、重低音に気を遣う必要が無くなったそうですから、CD時代は鳴瀬さんのピッコロ・ベースからチョッパーからLow弦まで幅広い持ち味がフルに発揮される環境が整ったと言っても良いのではないでしょうか。

野呂さんも本作のレコーディングより、ピンク色の新調ギターを導入されたのですが、こちらは以前のギターよりも鋭くて太い音が出る上に、ピッキングの音が出やすいそうです。そこへ本作ではディストーションが多用されていますので、益々骨太なギターサウンドが出来上がったという訳です。更に野呂さんは本作で久しぶりに「ワウ」のエフェクターも3曲で使用されました。航空会社のCM音楽でよく使われるギターのエフェクターと言えば解りますでしょうか?…「Momento Memorial」の間奏が一番聴きやすいです。私も初めて聴いた時、あまりにも珍しいので驚きましたから(^^;)

向谷さんは普段ご使用のMIDI楽器を持ち込まれたのに加え、現地のスタジオ備品の「フェアライトCMI」も借りて使用されました。フェアライト社はオーストラリア地元の会社ですからね。当時サンプリングから音の波形成形等で話題を集めた高級機種です。又、アコースティック・ピアノも事前に野呂さんが下見した際に備え付けてあったのですが、実際にレコーディングで来た時にはスタジオから無くなっていた為、どうしたのかと尋ねると「売り払った。」との事でした(笑)。それで向谷さんは急遽ヤマハからレンタルで生ピアノを取り寄せられたそうです。本作で生ピアノを使ったのは「Time Stream」と「Momento Memorial」の2曲です。メロウ系の「Time Stream」は音数が少ないですから、全部の楽器パートがきれいに調和しているのが聴きやすく、シンセのピアノとは全然違う音なのが解りますよね。一方、「Momento Memorial」はエンソニックの鋭い音と生ピアノがミックスされていますので、逆に不思議な空間が出来上がっています(^^;)

「Point X」はメロディーがヘンテコリンだと評判の曲ですが(笑)、これは野呂さんの「ちょっと変な曲が入っている方が面白い。」という意向によってレコーディングされたものです(笑)。しかも中近東のスケールが指定されましたので、向谷さんも中近東風でシンセソロを弾くのに最初は困ったそうです…顔まで中近東人になっちゃうとおっしゃって(苦笑)。確かに滑稽なフレーズですからね(笑)。野呂さんのシタール風のギター音は、フェアライトの弦楽器音を混ぜたものだそうです。

「Camel Road」は大変スローな曲ですが、鳴瀬さんのLow B弦の"ドォォーン"という超低音とフェアライトの"ジャン"というオーケストラ・ヒット音が見事にシンクロしています。野呂さんはディストーションでハードロックみたいにブラッシングしておられますし(驚)、奇妙なメロデイと言い、微妙な転調と言い、「変わった曲」のコンセプトのアルバムに相応しい曲ですね。この曲は私も結構ハマりました(笑)。

「Eccentric Games」は前作の「Akappachi-ism」に引き続いて鳴瀬さんと野呂さんの共作曲ですが、最初はお二人でチョッパーし合っていたのを徐々に曲として仕上げていったそうです(笑)。鳴瀬さんも当時、ギターのようなトレモロ・アームが付いた8弦ベースを新調したばかりでしたので、この曲でそのアームプレイを聴く事ができます。

そして4人の録音が終わると、最後にアレックス氏のパーカッションが加えられました。この人は色々不思議なパーカッションを持っておられたそうです。こうして本作のレコーディングは終了、「Active」というタイトルで5月25日に発売されました。ジャケットはカシオペアの「C」とメンバー4人を示す4本線をあしらったエンブレムが大きく印刷されているものです。TV番組でタモリさんが「ゴミ」とお読みになったのには爆笑しましたね!(^^;)
(再発盤) http://www.amazon.co.jp/dp/B000FUU0QE/

当初野呂さんも「音色とスタイルを変えたい」という願望をお持ちでしたが、本作は「The Party」や「Full Colors」のようなギラギラした感じが無くなり、図太いサウンドに仕上がった印象を受けますので、大きくイメージチェンジできた事は確かです。野呂さんも「森の中でレコーディングしたからこそ、カチッと固まらない音が出来上がった。」とおっしゃるとおり、現実にミディアム・テンポの曲が多くなった分、のんびりした印象も受けます。それもそのはずで…自然豊かな国での長期合宿でしたので、時間的にも余裕があったそうで、メンバーも昼までゆっくり眠って(笑)、毎日ビリヤード三昧だったそうです(笑)。向谷さんは野生動物にエサをあげておられたとか…(笑)。

確かに曲調は大幅に変わりましたが…音はきちんとカシオペアの4人の演奏音だとすぐに解るサウンドですので、私も充分楽しめました。特にプログレファンやサウンドマニアにも大ウケしたでしょうね。

ところがカシオペアファンの中には旧メンバー時代のライトタッチなノリを好む人も居て、そういう人は軽い作風こそがカシオペアだと思っておられますので、過去と同様にBGMとして軽く聴きたい人は『いつもと違うなぁ~』という印象を抱いたかも知れません…。ですから「Active」が前2作に比べて人気が劣ると思われるのは、単純に「過去の作風と違う」という理由だけですので、新しいファンの人は惑わされないように気をつけてくださいね(^^;) 逆に言えば、過去の作風と違うからこそ「新作」である事を理解すべきなのではないでしょうか。

そもそも「人気が無い」と「完成度が低い」はイコールではありません。とにかく他人の先入観に惑わされず、自分で試聴してみる事ですね。本作は色々新しい試みを取り入れる事ができましたので、その観点では完成度が高いと思います。

本作発売の際、野呂さんは「フュージョン」という呼ばれ方が曖昧である事を理由に、新たにカシオペアを「ポップ・クリエイティヴ・サウンド」とジャンル付けする事を表明されました。これは当時、東南アジアでカシオペアが「ポップ・クリエイティヴ」というジャンル扱いとなっていた為、それを聞いた野呂さんが『これだ!』とひらめいた事がきっかけだったそうです。


それと実は…カシオペアは本作のオーストラリア・レコーディングの最中に、現地の「メトロ」というライブハウスでコンサートも行っていました。その本番に先駆けて、数日前にも小さなライブハウスでコンサートを行ったところ、定員100名なのに300人の観客が集まり、客席に入り切らないのでステージの上にまで観客が溢れて座って観覧する事態になったそうです(笑)。しかも観客の皆様は、結構カシオペアの曲を知っておられたので、メンバーも驚いて『これはいけるぞ』と自信が付いたそうです。きっと輸入盤か何かで聴いておられたのでしょうね。

そしてライブハウス「メトロ」でのコンサート本番は、定員1000名のところ1200名ほどの観客が集まったそうです。このライブの模様は映像盤は6月25日にLD「Made In Melbourne」、音源盤は8月25日にCD「We Want More」と、2つのアイテムに分けて発売されました。両アイテム間での曲の重複はありません。LD盤では野呂さんが例のピンク色のギターを披露され、野呂さんと鳴瀬さんと日山さんのパーカッション・バトルも観れますし、鳴瀬さんのベースソロでは8弦の「Akappachi」がじっくり見れる上に、ついに鳴瀬さんが客席に乱入したドキュメント映像が市販品に収録されました(笑)。ちなみに映像制作は現地のスタッフが担当しました。
(再発盤DVD) http://www.amazon.co.jp/dp/B000244RT4/

一方、CD盤の方で目玉となるのは、新生カシオペア初のロング版・旧曲メドレー「Time Capsule Medley」です。「Conjunction」で始まって「Asayake」で終わる歴史的な演奏となりました。野呂さん曰く、「映像で観てほしい曲はLDに、サウンドをじっくり聴いてほしい曲はCDにそれぞれ振り分けた。」との事です。
(再発盤CD) http://www.amazon.co.jp/dp/B000FUU0QO/


そして日本に帰国した新生カシオペアでしたが……4月3日には、なんと、FM大阪の公開録音で「ジンサク」と旧サンケイホールで初共演を果たしました。お互い気まずい関係となって別れていただけに、誰もが驚いた事でしょうね。

まず先行はジンサクでした。ジンサクのキーボーディストは吉弘千鶴子さんでしたが、櫻井さんがメンバー紹介の際に「ベース、鳴瀬よしひろ千鶴子!」と紹介されて、吉弘さんも櫻井さんのボケにツッコむ如くシンセベースで「Fightman」のイントロのベースフレーズを弾かれたのです(笑)。すると後攻のカシオペアも、向谷さんが先程のお礼を申し上げられて、当時櫻井さんがテレビCMに出演されていた事を話題に挙げて「うちの家では娘が櫻井さんのCMを正座して観ています。」とお返しになられました(笑)。

又、カシオペアのライブの最中、舞台の袖からジンサクの皆様もご覧になっていたそうで、鳴瀬さんの客席乱入姿を観た神保さんは「いつもあんな感じなんですか?大変ですね~。」とスタッフの人に興味津々に語られていたそうです(笑)。とにかくこの共演がきっかけとなって、カシオペアとジンサクに和解ムードが生まれて良かったですよね。(^^)

その後も新生カシオペアは、幾つかのTV・ラジオ出演を経て、6月には「Active」を携えた国内ツアーを行いました。このツアーでもまたまた懐かしい旧曲「The Soundgraphy」が新しいアレンジで演奏されました。私もCDで「Time Capsule Medley」で新しいアレンジの旧曲をじっくり聴いてワクワクしましたし、『この4人のメンバーで、これからが益々楽しみだなぁ~』と期待していました。

ところが……またもショックな出来事が起きてしまったのですねぇぇ…。

(その7へ続く)