2013年08月30日

(横)橋本→樋口の車内補充券

高崎運輸区発行の車内補充券です。(横)橋本→160円の乗車券を原券として、横浜線、八高線経由、(寄居接続)秩父鉄道の樋口まで区間変更を行っています。

(横)橋本→樋口の車内補充券

この車内補充券が発売された時期より古い規程になりますが、平成13年4月の旅客連絡運輸基準規程別表によれば、秩父鉄道との連絡運輸範囲は八王子までで、横浜線は含まれておらず誤発売となります。

それでは、誤発売に伴う会社間の清算はどうするのでしょうか?難しいことはなく、淡々と清算するだけです。

発行時期不詳の資料ですが、JR北海道の連絡清算マニュアルによれば、「北海道旅客鉄道と連絡契約を締結していない他旅客会社管内の私鉄の乗車券類は基本的に発売できない」としながら、「マルス端末等で発売操作すると発券となものもあるので、連絡清算を行わなければならない。」と述べています。※1

特に伊豆急行との清算については「連絡清算の契約を結んでいないが、マルスで発券出来るため支払いは行う、この場合伊豆急行に直接支払うのでは無く東日本旅客鉄道会社に支払う。」と定めています。

JR北海道が幹事会社となる会社線は、この当時北海道ちほく高原鉄道、東日本海フェリーがありましたが、逆にJR他社での発売が確認できた場合、JR北海道で清算するマニュアルになっていました。

旅客連絡運輸基準規程第9条では、旅客会社(JR)と連絡会社(社線)との協議について、同規程付表1で定める連絡担当旅客会社(幹事会社)を介して行うことにしています。清算もこの取扱方を踏襲したものと言えるでしょう。
(通知、協議等の発受者及びその方法)
第9条 この規程に定めるところによつて、当社と連絡会社との間に行う協議、通知等は、その内容により次の各号により行うものとする。
(1) 当社と当社管内の連絡会社との協議、通知等については、当社の営業部長又は支社長と連絡会社の代表者との間で行うものとする。ただし、当社の駅長において行うものは、連絡会社の駅長との間で行うものとする。
(2) 当社と当社以外の旅客会社の管内の連絡会社との協議については、付表1に定める区分により、連絡担当旅客会社に対して営業部長が行う。(後略)

付表1 省略
連絡運輸範囲が定められている理由について考察すれば、(1)駅や車掌に運賃表を予め持たせておく必要があること、(2)特に社線側が使用する乗車券類の様式について、予め通達できる範囲に限度があること、(3)会社間の清算が煩瑣になることが挙げられます。

現在は機械化により運賃計算に支障をきたす例は大変少なくなったと言えます。しかしながら、連絡運輸範囲については、依然として赤表紙の内容を係員が把握するのに頼っているのが現状です。個人的には(2)や(3)について大きく逸脱しない範囲であれば、連絡運輸範囲について厳密に捉える意義は薄くなったと考えます。

(参考)
旅客連絡運輸規則別表・旅客連絡運輸基準規程別表(平成13年4月1日現行) 東日本旅客鉄道株式会社
連絡清算マニュアル 北海道旅客鉄道株式会社 営業部企画課 審査・清算

※ JR北海道の資料では「清算」としているため、違和感はありますが「清算」で用語を統一してあります。
※1 原文ママ  

2013年08月20日

固定乗継で発売されたマルス券

昭和60年7月に常磐線・北千住駅で発売された、M型マルス券です。東京から福井まで「ひかり333号」と「加越3号」を米原で乗り継いだもので、「加越3号」の特急券は乗継割引により半額で発売されています。

固定乗継のM型マルス券

半額で発売された「加越3号」の特急券の右下には、旅客営業規則第188条の規定に従い、[乗継]が右下に印字されていますが、「ひかり333号」の特急券にも同じ[乗継]の印字が少し中央に寄った不自然な位置にあります。

2枚の特急券の券番は20233と同じであることから1操作で発売されており、これは固定乗継と呼ばれる操作で発売されたものです。

固定乗継とは、新幹線〜在来線、本州〜北海道など定形の乗継列車を中央装置側で予め組み合わせておき、「ひかり333-加越3」といった列車名でマルス端末を操作することで、2列車を1操作で予約できたものです。

マルスにおける固定乗継の歴史は深く、V型など縦型のマルス券が使用されていた時代から実装されていました。

2枚目の画像は、昭和46年3月に東京駅で発売された、上野から札幌まで「ゆうづる1号」(上野→青森)と「北斗1号」(函館→札幌)の特急・B寝台券です。

固定乗継の縦型マルス

縦型マルスの時代では、発駅・着駅・列車名を入力デバイスを兼ねた活字棒により、ゴム印で券面に印字する方式が一般的※でした。

そのため、発駅:上野、着駅:札幌、列車名:ゆうづる1号-北斗1号と入力し発券すると、2枚とも同じ発駅・着駅・列車名が印字されてしまい、特急券の券面から先乗列車と後乗列車が判別しにくく、「先にお乗りになる列車」「後にお乗りになる列車」といったゴム印を係印が手作業で押して補足している券も見られます。

その後、固定乗継と似た任意乗継と呼ばれる機能も開発され、MR端末以降?使用されています。任意乗継とは、その名の通り端末を操作する係員が乗継対象列車を任意に選択して1操作で2列車を同時に予約できる機能で、現在では旅客操作型のMV端末でも触れる機会が多くなりました。

旅行業端末の例ですが、3枚目の画像として塩尻→名古屋→新大阪の自由席特急券を任意乗継で発券した例を示します。現在は指定券に限らず、自由席券の発売も可能なようです。

任意乗継のマルス券

現在では、半額とならない新幹線特急券には黒枠がない小さな文字で乗継が印字されます。昭和60年当時の固定乗継では、同じ太枠の[乗継]印字が使われており、現在の取扱いに慣れていると違和感を覚えますが、2枚目の画像でお示しした縦型マルス券でも同じ[乗継]のゴム印を押しています。

現在も規則上は、割引の有無にかかわらず同じ[乗継]表示を行うことになっていますが、現行の印字のように、割引の有無によって印字を変えた方がしっくりくるように思います。

なお、現在は固定乗継は廃止されています。固定乗継は2列車を1操作で予約できる利便性もさることながら、中央装置の負荷を軽減させる目的があったのではと思います。

※晩年はボタンで印字される方式もあったようです。