2017年05月14日

戦傷病者後払となる往復乗車券

平成29年4月にJR東海の管内で発売された、戦傷病者後払となる往復乗車券の往片(三河安城→長崎)です。前回、前々回の記事で紹介した特急券に付随する乗車券です。

三河安城→長崎の往復乗車券(ゆき、戦傷病者後払)

片道の営業キロが600キロを超える区間で、往復割引が適用されています。割引後の全額が後払で、旅客から運賃を収受しないため、原券C制のゴム印は押されておらず、出札担当者の意図を感じる秀逸な一枚です。右下の割引印章は[戦後復]となります。

戦傷病者は身体障害者割引の対象者であることも多く、戦傷病者乗車券類引換証の身体障害者旅客運賃割引欄に該当する戦傷病者については割引が適用されます。この場合、戦傷病者単独の場合は[戦後身]、介護者を同行できる甲種戦傷病者(戦傷病者乗車券引換規則第2条第2項第1号)で、本人の場合は[戦後障]、介護者の場合は[戦後介]となります。

往復割引の割引率は1割、身体障害者割引は5割ですから、身体障害者旅客運賃割引欄に該当する戦傷病者本人について[戦後復]の乗車券が引き換えられることはありません。

以上トピック的になりましたが、最近の実例を交えて戦傷病者後払の取扱いについて、3回に分けて少し触れてみました。

平成23年版と平成28年版の厚生労働白書によると、戦傷病者乗車券類引換証の交付を受けた戦傷病者はそれぞれ14,874名、4,465名で最近5年間で約1/3に激減しています。そのため駅での取扱件数も近年は減って、馴染みが薄い制度になっていることは間違いないでしょう。

コレクション的な観点から見ると、戦傷病者後払に関係するマルス券の割引印章は、これまで3回の記事で触れなかったものでは、他に普通急行列車に関係する[戦後急][戦後急障][戦後急介][戦後急乗継] の4種類あり、あわせて合計12種類!も存在しましたが、一度も実券で見たことがない券があります。

定期の普通急行列車は平成28年3月のダイヤ改正で廃止になった「はまなす号」が最後になってしまいましたが、普通急行列車でしか出なかった、これら4種類の割引印章はひとまずお蔵入りになったことになります。

参考
マルス券のページ - マルス券の割引印章(5)
http://mars.saloon.jp/discount05.shtml

平成23年版 厚生労働白書 資料編 p.215
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/11-2/kousei-data/pdfNFindex.html
平成28年版 厚生労働白書 資料編 p.212
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/16-2/
  

2017年05月09日

戦傷病者後払となる指定席特急券(2)

平成29年4月にJR東海の管内で発売された、戦傷病者後払となる新幹線特急券(三河安城→博多)です。のぞみ号を名古屋→博多で利用しています。

新幹線特急券(戦傷病者後払)

戦傷病者後払によって指定席特急券を引き換える場合、自由席特急料金相当額との差額を収受することを前回の記事で紹介しましたが、自由席特急料金との差額にはならない例があります。のぞみ号、みずほ号、はやぶさ号、こまち号を利用する場合、また特定特急料金が適用される場合です。

長い条文ですが、戦傷病者乗車券引換規則から第5条を一部引用します。
(戦傷病者に対して引換えをする乗車券類)
第5条 戦傷病者が戦傷病者乗車券類引換証によって、旅客運賃又は急行料金を無料の取扱いで引き換えることのできる乗車券類は、次の各号に定めるとおりとする。
 (引用注:中略)
2 戦傷病者が戦傷病者急行券引換証(甲種)及び戦傷病者急行券引換証(乙種)によって、指定席特急券、急行・指定特別車両券(A)、急行・寝台券及び急行・座席指定券を購入する場合は、次の各号に定めるところにより当該乗車券類と引き換えることができる。

(1) 特別急行列車の特別車両以外の座席指定車に乗車する場合(第2号及び第3号に掲げる場合を除く。)は、自由席特急料金又は特定特急料金との差額を支払う。

(2) 特定特急料金が適用される区間を東京・博多間を運転する新幹線の特別急行列車のぞみ号又は新大阪・鹿児島中央間を運転する新幹線の特別急行列車みずほ号(以下これらを「のぞみ号等」という。)の指定席に乗車する場合(のぞみ号等とのぞみ号等以外の新幹線の特別急行列車とを乗り継ぐ場合を含む。)は、当該特定特急料金と、当該区間に対するのぞみ号等の通常期の指定席特急料金からのぞみ号等以外の新幹線の特別急行列車の通常期の指定席特急料金を差し引いた額とを合計した額と指定席特急料金との差額を支払う。

(3) 東京・新青森間を運転する新幹線の特別急行列車はやぶさ号又は東京・盛岡間を運転する特別急行列車こまち号(以下これらを「はやぶさ号等」という。)の指定席に乗車する場合(はやぶさ号等とはやぶさ号等以外の新幹線の特別急行列車とを乗り継ぐ場合を含む。)は、通常期の指定席特急料金から520円を低減した額(特定特急料金が適用される区間をはやぶさ号等に乗車する場合は、当該特定特急料金と、当該区間に対するはやぶさ号等の通常期の指定席特急料金からはやぶさ号等以外の新幹線の特別急行列車の通常期の指定席特急料金を差し引いた額とを合計した額。)と指定席特急料金との差額を支払う。
 (引用注:後略)
特定特急料金の適用区間が東海道筋と東北筋では異なることもあって複雑ですが、簡単に説明すると、特定特急料金の適用区間では、指定席特急料金と特定特急料金との差額を収受し、かつ、のぞみ号等、はやぶさ号等の加算料金は旅客からは収受しないとする内容です。

そのため、掲載したマルス券の例では、所定の指定席特急料金7,420円から特定特急料金6,380円を差し引いた1,040円を収受するのではなく、特定特急料金6,380円と、所定の指定席特急料金(通常期)7,420円から、のぞみ号等以外の指定席特急料金(通常期)6,900円を差し引いた額(7,420-6,900=520円、のぞみ加算額)とを合計した額(6,380+520円)を、所定の指定席特急料金7,420円から差し引いた、7,420-(6,380+520)=520円を収受します。

すなわち、のぞみ号等以外の指定席特急料金から特定特急料金を差し引いた額と等しくなり、4月21日(金)は通常期ですから、のぞみ加算を含まない指定席と自由席の差額520円を収受します。

また、小倉→博多で新幹線の指定席特急券を引き換える場合(通常期)は、のぞみ号等、のぞみ号等以外にかかわらず、のぞみ号等以外の指定席特急料金2,250円から特定特急料金970円を差し引いた1,280円を収受します。

余談ですが、特定特急料金が適用される区間で指定席特急券を戦傷病者後払で引き換える際に旅客から収受する金額については、「国鉄旅客制度のQ&A306」(佐々木健著、中央書院発行)から「JR旅客営業制度のQ&A」(小布施由武著、自由国民社発行)まで継続して設問が掲載されてきました。

平成27年3月に発行された「JR旅客営業制度のQ&A」(小布施由武著、自由国民社発行)からQ344を引用します。

JR旅客営業制度のQ&AのQ366(戦傷病者後払)

2行目「…すなわち『指定席−特定』です。」までの部分は佐々木氏が著者だった頃の回答で、これ以降を小布施氏が2回の改訂でのぞみ号、はやぶさ号と漸次対応させて書き足した部分なのですが、「…すなわち、通常期520円…を収受します。」と言い切っているのは残念です。この設問が意図するのは、特定特急料金が適用される区間では「指定席−特定」なのですから、先に例示した小倉→博多のように、必ずしも「通常期520円」ではないことのはずなのですが…。

また、平成27年3月にはやぶさ号に対応した版以降では「はやぶさ差額」を説明した括弧書きについて括弧の位置が誤っています。

JR旅客営業制度のQ&A(第2版)

この記事を書いている最中、第2版が出版されたことを知り、早速取り寄せたのですが、変わっていませんでした。北海道新幹線の新青森〜新函館北斗間開業に伴う制度改正に対応しているそうです。表紙をH5系が飾っています。

参考
東海旅客鉄道株式会社 戦傷病者乗車券引換規則(平成26年4月1日現在)
http://railway.jr-central.co.jp/ticket-rule/carriage/_pdf/06.pdf

国鉄旅客制度のQ&A306 (佐々木健著、中央書院発行) 昭和59年1月
JR旅客制度のQ&A311 (佐々木健著、中央書院発行) 平成2年3月
JR旅客制度のQ&A336 (佐々木健著、中央書院発行) 平成9年12月
Q&A JR旅客営業制度[第3版] (佐々木健著、中央書院発行) 平成15年6月
JR旅客営業制度のQ&A (小布施由武著、中央書院発行) 平成19年12月
JR旅客営業制度のQ&A (小布施由武著、自由国民社発行) 平成27年3月
JR旅客営業制度のQ&A (小布施由武著、自由国民社発行) 平成29年5月(第2版)