メディアは戦争を煽った己の戦争責任と、戦後、どう向き合ったのか。NHKはこの夏、終戦記念日に合せて反戦スペシャル番組を4夜連続で放送した。日本人が被害者となった「本土空襲」以外は全て、日本軍を加害者として描くテーマばかり。反軍、反戦意識を高めて、憲法改正反対へ世論を誘導したいNHKの思惑が透けて見える。

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 そのトリを飾ったのが「インパール作戦」。無謀な作戦で多くの兵士を無残な死へ至らしめたのみならず、牟田口廉也中将のその後の無責任な姿勢、言い訳の数々など、日本軍を悪く描くには格好のテーマであり、南京事件同様、メディアが何度も何度も似たような番組を作ってきたお決まりの反戦ネタでもある。

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 「樺太戦」では樋口季一郎中将を無理やり悪く描くなど、底の浅い番組づくりが露呈したが、トリを飾った「インパール作戦」では、牟田口の孫や牟田口を身近で目撃した斎藤元少尉への取材など、多くの新資料もあり、見ごたえがあった。特に、96歳になった斎藤元少尉が「日本の軍隊の上層部が・・・悔しいけれど・・・兵隊に対する考えはそんなもんです。」と泣きながら証言するラストには胸を打たれる。

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  だが、最後の結論は「国家の指導者層の理念に疑いを抱く」という一語。果たして、「トップが酷かった」「日本軍はダメだった」「だから日本の戦争は悪だった」と単純に片づけて、「やっぱり、戦争反対、改憲反対」と視聴者を洗脳するだけで良いのだろうか? あの戦争から日本人が学ぶべき教訓は、そんな単純な話なのだろうか、という疑問が湧き上がる。

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 番組に登場した山崎元少尉は、牟田口中将が朝日や毎日など、戦意高揚記事を派手に書いてくれる新聞記者を相手に大言壮語していたエピソードを語っている。牟田口は盧溝橋事件以来、日本の戦争の最前線に立ち続けた軍人であり、戦争を煽ることで販売部数を大幅に伸ばしてきた新聞社にとっては、格好のニュース・ソースであった。すなわち、日本軍と新聞社は戦争を遂行する上で、いわば共犯関係にあったのである。

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 1931年、関東軍が満州事変をおこして以来、それを全面的に支持して国民の戦争熱を煽ったのは新聞だった。戦争は新聞の販売部数を拡大させる絶好のネタだったのである。当時はまだ、政府による検閲も厳しくない時代であり、朝日新聞や毎日新聞は経営判断で自主的に戦争をバックアップしたのだった。
 そして、新聞以上に世論に大きな影響を及ぼしたのが、当時、急激に契約数を伸ばしていた日本放送協会(NHK)のラジオだった。要は、NHKも軍の共犯として戦争の遂行に加担した加害者だったのである。
 上の動画は2011年のNHKスペシャル「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」第3回 「"熱狂”はこうして作られた」からの引用だが、NHKが番組でメディアの戦争責任に言及したのは、私が知る限り、これだけである。毎年のように繰り返される軍部批判とは比べ物にならない。NHK元職員・池田信夫氏は、NHKの戦争責任について番組を作る提案して上司に怒られたエピソードをツイートしている。

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  戦争は悲惨であり、日本の軍人に酷いのがいたのは事実である。だが、高潔な軍人、潔く責任をとった軍人も数多くおり、牟田口の例だけを殊更に喧伝して軍人だけを悪者にするような印象操作は間違っている。戦争を戦った側より、金儲けの為に戦争を煽った側の責任の方が遥かに重いのは自明の理。世論に著しい影響力を持つメディア自身がその責任を認め、報道が戦争を引き起こす危険性を視聴者に伝えない限り、未来の戦争を防ぐことなど不可能であろう。

 NHKが過去にインパール作戦を特集した番組をいくつかネットで視聴してみたが、一つの明確な共通点があった。作戦に参加して日本軍と一緒に戦ったインド国民軍を完全に無視しているのだ(その後、BS1で報じられた完全版では多少説明している)。なぜ、日本軍は無謀なインパール作戦の実施に魅せられたのか? インド国民軍と一緒にインド国内に侵攻することで、インド独立運動を喚起し、大英帝国を内部から崩壊させようとしたのである。そうした背景を全く説明せず、「無謀な作戦」だと強調するだけでは、歴史の全体像が全く見えてこない。


 インパール作戦は大失敗に終わり、多くの兵が無残な死を遂げた。インド国民軍の指導者チャンドラ・ボースもその後、台湾で事故死する。だが戦後、イギリスがインド国民軍兵士を反逆罪で裁こうとした結果、インド全土の怒りが爆発し、各地でインド兵の蜂起が発生。世界大戦で疲弊したイギリスも、遂にインドは独立を認めざるを得なくなる。それもまた、インパール作戦を語る上で歴史の重要なエピローグである。これを視聴者に説明してしまうと、インパール作戦肯定論に繋がりかねず、只管、軍部の無能を批判したいNHKの意図に反する為、カットしてしまったのではなかろうか。

 イギリス軍は日本軍に勝ったが、戦後、インドとビルマの両方を失った。その後、マレーも放棄し、大英帝国は解体への道を辿る。世界恐慌後、膨大な植民地帝国を有するイギリスがアメリカと組んで保護貿易に踏み切ったことが世界大戦の遠因となったが、戦争の結果、大英帝国は崩壊し、帝国主義の時代そのものが終焉を迎えた。自由貿易を満喫する戦後の日本人は、戦前、なぜ日本が資源地帯を確保するべく必死になったのか、その理由を全く理解できない。植民地が無ければ貿易さえままならない、資源も手に入らない、製品を売る市場も確保できない、そんな時代がかつてあったのである。

 そうした複雑な歴史の紋様を視聴者に説明する努力を怠り、只管、戦争の悲惨さにだけ焦点をあてて、情緒的、勧善懲悪的に「日本は悪」「日本軍は無能」とだけ報じ続けても、歴史の教訓とはなりえないし、そもそも未来の戦争を防ぐ効果さえないだろう。寧ろ、中国、韓国の反日感情を煽る燃料となり、北東アジアに新たな対立と緊張を招く危険さえあるのだ。96歳の老人をカメラの前で無理やり泣かせたり、敗軍の将の孫を晒し者にして、盲目的な反軍意識、贖罪意識を植えつけるより、もっとやるべきことがあるのではなかろうか。中国や北朝鮮の脅威に晒されている今の日本人に必要なのは、なぜ戦争になったのか、なぜ負けたのか、回避する方法はなかったのか、科学的に分析する番組であり、勧善懲悪な戦勝国史観の焼き直し番組ではない。今年、NHKが反戦ドキュメンタリーを連発した理由は、籾井会長をやっと追い出して、思いっきり反安倍番組を作れるようになったからだろうが、日本軍批判番組を作る連中の本音には、反戦・嫌軍感情を煽り、安倍総理の改憲を潰そうという下心が透けて見える。そんな番組の一つ「インパール」で、インド国民軍のくだりを丸ごとカットし、歴史の全体像を視聴者に隠していたのは、由々しき問題と言わざるをえない。
 
 メディアの偏向した歴史ドキュメンタリーのせいで、日本政府が勝手に戦争を始めたと勘違いしている人が多いが、軍部が独走し、新聞が戦争を煽り、弱い内閣がそれを抑えられなくなって戦争に突入したというのが歴史の真実である。軍部とは、軍人とは、何か? 要は軍服を着た役人に過ぎない。国民から選ばれたわけでもない役人が、同じく国民から選ばれたわけでもないメディアと結託して、国政を壟断する危険性。現在、「報道の自由」「権力監視」を錦の御旗にし、元役人と結託して倒閣運動に熱中しているメディアは、「統帥権干犯」を振りかざして政府の方針に逆らった戦前の軍部とそっくりである。メディアは歴史から何も学んでいない。


【関連ツイート】

1.チャンドラ・ボース

2.本土空襲

3.731部隊


4.樺太戦


5.新聞ジャーナリズムは戦争をどう報じてきたのか?









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