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その指摘に心当たりしかなくて、藍は誤魔化すように笑いながら言い訳を考える。前回の言い訳を覚えているとは、流石連理だ。
「…悪かった。明日以降は気をつけるよ。だからそう怖い顔をしないで欲しいな…」
「他に重要な約束をお忘れのようですね。もし、今後同じように決まりを破った場合海音様や理兎に与えるのと同じお仕置きを素直に受けると。…では、場所を移動しましょう。藍様の泣き声を聞いた二人が心配して起きてしまったら大変です。」
「……え。…あ。ちょっと…待って。今聞こえたのって僕の聞き間違いかな…」
連理のいつもの小言だろうとあの時はその場を収める為に適当に返事をした記憶があるが、あれは冗談では無かったのかと藍は表情を引きつらせて一歩後退るのだが、不在は多いが自分はこの屋敷の主人という立場なのだから怯んでは駄目だと一度咳払いをし連理に向き直す。
「連理、僕はもう33歳という年齢で海音と理兎の父親なんだ。そんな男が年下の君にそうされるのはおかしくはないかな?確かに連理には言葉で言い表せない位に感謝しているし…尊敬もしているけれど…」
徐々に言葉が小さくなりながら藍は心中で気持ちの整理をしていた。
身体の弱かった妻の杏樹が海音を出産と同時にこの世を去り、身の回りや初めての育児に戸惑っていた時に友人の作曲家が紹介してくれたのはまだ高校生の連理だった。