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凄く楽しかったし、雨月の作品が様々な人に手に取ってもらえて自分の事のように嬉しかったと話した後に偶然鉢合わせてしまった巳影の顔が浮かぶのだが首を横に振ってその記憶を消した。

あの妙な夜会に出入りした事と、巳影の件でクガネにとても心配を掛けてしまったので話さない方が良いだろう。


「雨月ね?今度の試験が終わって時間が出来たらまた新しいお話を書いて催しに参加するって張り切ってたんだ。俺、今度も手伝いに行くからその時クガネさんがこっちに帰って来てたら遊びに来てほしいかも。」


約束する、と願いを叶えてくれたクガネはいつも優しくて、余裕があって大人っぽいなと胸を高鳴らせながら、それに比べて自分はまだ未熟で頼りないなと投げ出した足の細さを見て痛感する。
クガネ位大人にだったら雪音の件でこれ程までに悩まず解決出来ると思うのに。


「「…どうした?急に元気が無くなっちまったな。何かあったら話してみな?」」


「え?!ん…っと。何でもない。それに俺元気だしっ。クガネさんが心配し過ぎなだけだと思うけど。」


麗亜はとても分かりやすく素直な子供なので恐らく何か引っかかる出来事や考えがあるのだろうとクガネはすぐに察したが、あまり詮索するのも良くないだろう。
まだまだ幼くて子供だけれど、麗亜はもう高等部に進学し年頃になり、今が一番敏感な時期だ。恋人とは言っても全て介入するのは良いとは思えない。

巳影との事があったばかりなので心配ではあるが、少し様子を見るべきだろう。