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振り上げた手を止め、その言葉への答えを考えている最中。麗亜は振り返り雪音の顔をじっと見つめてくるのだが、お仕置きの最中だからか、それとも突き放されてしまう事でも想像してしまったのだろうか瞳に涙を滲ませ悲しげに眉を下げた表情を向けられては胸が痛みこれ以上厳しく出来なくなってしまいそうだ。
麗亜は恐らく雪音が離れて暮らす事になった理由を詳しく聞かされてはいないのだろう。あの頃の自分が幼かった事が原因で、尊との関係が良好なものでは無くなり今でも顔を合わせるのは正直に言うと気が乗らない。
八代邸や輝きの丘で共に暮らし、育ててもらった皆に会いたいのは本当だ。
こうして一歩踏み出すのを躊躇している今の自分も幼く未熟で、嫌になる。
今まで出来るだけ思い返さないようにしていた記憶や気持ちが溢れ出し、真っ先に顔が浮かんだその人を忘れるように雪音は目を伏せ首を振ると、麗亜を起き上がらせ乱れた髪や服を直してやった。
「…雪音?」
「そんな真似をしたら今度はすぐに執事長様を呼んでしまいますからね。庇ってあげられなくなりますが、仕方がありません。」
もうしないからそんな心配しない、と言い放った麗亜はゆっくりと立ち上がると打たれた部分を気にしながら雪音の両手を取って同じようにソファから起こすと、微笑んだ後小さくごめんなさいと零した。
「雪音、行こ?あ…俺電車の乗り継ぎとか詳しくないからすぐに調べるね!」