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このままでは潰れてしまうと、雪音の言葉に尊が気を取られている隙を突いて腕からどうにか逃れた麗亜の目の前には伊織が腕組みをし出迎えていて。早くこの件について謝らなくてはいけないと分かっているのに身体は反射的に後退ってしまうと今度は誰かに包み込まれるようにして後ろから抱きしめられてしまい、驚き声を上げ飛び上がり、結局自分の足で伊織の傍まで駆け寄ってしまい一体誰なのだろうと振り返ってみると、その人物が視界に入った瞬間思わず大きな声を上げていた。


「――っ…うわああぁっ!!何で巳影先生が此処にいるの?!」


「…麗亜様、お客様に対して失礼ですよ。まず、質問よりご挨拶が先です。」


「いいや、僕は気にしていないし…それにこの位元気な方が麗亜らしくて可愛いじゃないか。今日は夕方から用事で尊に会いに来ていたから、お前の過ちは一部始終聞かせてもらったよ。だからおいで、麗亜。そのままそこにいたら伊織に捕まってお仕置きされてしまうだろうからね。勿論、僕はそんな真似はしない。」


そんな好感度を上げるような甘い言葉を掛けないでくれと尊と伊織から同時に言われている男の横顔を見る雪音は、何処かで見たことのある顔や聞き覚えのある声だと考え込んでいると、視線に気が付いた巳影は振り返り、雪音に笑みを向ける。


「…あなた、この間街で会った…」


「やはり僕の目に狂いは無かった。君は雪音、そうだね?まさかこんなに早く君に会えるとは思いもしていなかったけれど、今日は君への用事で此処まで足を運んだんだ。…まぁ、尊をまだ納得させてはいないのだけれど…僕は君がどうしても欲しくてね。」