2012年01月08日

志産志消の発想〜地産地消を超えて新たな展開を〜

1)地産地消の効果と限界

 「地産地消」とは、「地元で生産されたものを地元で消費する」という意味でつかわれ始めたキャッチフレーズです。近年、消費者の農産物に対する安全・安心志向の高まりや生産者の販売の多様化の取組が進んでいます。特に海外産の食材や、添加物が相当に使用された加工品に対する不安もあり、生産者と消費者とが直接的に触れ合うことができる形での販売方法としての「地産地消」への期待が高まってきました。

 地産地消とは、地域で生産されたものをその地域で消費することですが、さらに、この活動を通じて、生産者と消費者とを結び付けようという試みもあるのです。地元の人が地元でつくった農産物を、地元の人が消費するという仕組みによって、生産者と消費者との関係はずっと近いものになります。地域愛にも繋がるものであり、日本のほとんどの自治体が推奨しています。

 各地でファーマーズマーケットなどの産地直売所ができましたし、また道の駅などでも地産地消のコンセプトで、地元の野菜や果物、魚介類が販売されるようになりました。最近は、イオンなどの大手スーパーも賛同しはじめて、「地物一番」などのキャンペーンが見られます。また学校給食でも地元産のものを極力使う学校も増えています。

 いいことづくめのような「地産地消」ですが、いくつもの限界も見えてきました。まず、一種の保護貿易的な発想もありますから、すべての地域が地産地消を推進すると、販売スケールは小さくなります。特に日本の場合には、生産地域と消費地域がかなり分かれています。尾鷲でできたもの・とれたものを尾鷲だけに販売していたのでは、小さな経済活動しかできず、自立した農業・漁業は確立できません。また、「ブランド」戦略にも必ずしもいい効果をもたらしません。「ブランド」として立ち上げるには、広範囲の人がその産品の名前と価値を認めることが必要です。地元への戦略だけでなく、より広範囲の地域への戦略が大切なのです。地元でとれたものが必ずしも質がいいとは限らないということも見逃せないポイントです。地元でとれたものを優先することによって、自由な競争が阻害されます。その結果、より良いものをつくろうとする意欲が育ちにくくなるのです。

 地産地消は多くの自治体が政策として持ちますが、実際には経済的に大きな効果が認められたとはいえない状態です。素晴らしい面を持っていますが、同時に保護主義的な面をも持ち合わせており、その後の建設的な展開が妨げられているのです。

2)「地」だけでなく、「志」の大切さ

 私は、生産者が産品に注ぎ込む「志」(こころざし)に注目しました。「国産」の産品は高く評価されることが一般的になっていますが、これは、日本でとれたからということだけが、重要なのではありません。日本の国産品は、品質が高く、安全だ、ということだから、高く評価されるのです。つまり日本の農家が注ぎ込んでいる「志」が重要なポイントになっています。もちろん、国産品においても、「志」の高いもの、低いものとバラツキがあります。「志」を高く持ち、しっかりとした品質の産品を作る生産者を応援することが必要なのです。

 有機農法を例にとりましょう。この方法と発想に魅せられて有機農法に取り組む農家は少なくはありません。しかし、非常にたいへんな作業を伴い、大量生産が阻まれます。だからといって今の社会では、それほど高い価格設定をすることができず、結局、有機農法をしても経済的には報われない農家が多いのです。

 生産者が「志」を高く持って産品を作り、それを消費者がその「志」を評価し、「志」を持って購入する社会運動が重要だと考えています。農業も漁業も、林業も様々な形での社会性を持っています。より安全で、品質の高いものを供給することも社会性ですし、そうした産業で日本の過疎地域の再生を図ることも一つの社会性です。自然と共生をはかる農業、漁業、林業は、環境保護という社会性も持っています。人の命や自然の大切さ、地域社会や地域文化の意味を守ろうとする「志」ある生産者を増やすことと、それを支援する「志」ある消費者を増やすことが、これからの日本の社会を考えるときに極めて重要だと思います。すべてが価格競争の流れのなかに組み込まれ、「志」よりも「金」が重要視される社会は必ず行き詰まるはずです。

 高い志をかかげ、品質の高い産品が作れるなら、そしてそれを支援する消費者の運動があるなら、いいものを「ブランド化」し、地域の枠を超えて、日本全国に流通させることができます。もっといえば、世界中に流通させることも可能になるのです。

3)志産志消の展開

 具体的に志産志消運動の展開を考えてみましょう。まず重要なことは、生産者がみずからの「志」を明確にして、それを産品に注ぎ込むとともに、消費者に伝えていくことが大切です。「安全な食品をつくることを目指してこうした作り方をとっていますよ」「自然・環境を守るためにこういうやりかたをしていますよ」「伝統文化を守るために、こうした活動をしていますよ」など、生産活動の「志」を明確化することは、自分たちの生産活動の意味を模索する上でも重要ですし、産品のブランド化を図る上でも大切です。各地で様々な「志」産品が生まれることになります。

 こうした「志」をできるだけ分かりやすく、消費者にアピールする仕組みをつくります。そして重要なのは、消費者の側の運動です。生産者が想いをこめて作った産品をしっかりと評価して、多少価格が上がってもその価値を理解して、消費していくという社会運動が必要です。

 世界的な運動としてフェアトレードという運動があります。これは発展途上国の生産者が、自然に優しく、安全で高品質なものを作り、その生産者が生活を守れるようにするために、先進国の消費者がやや高めに設定されたフェアトレード品を購入していく運動です。いわば、発展途上国の生産者の「志」を先進国の消費者が評価し、購入していくというものです。国際的なレベルでの志産志消といえるでしょう。

 志産志消運動は、発展途上国―先進国といった関係のみならず、より普遍性を持って、農業、漁業、林業、文化産業などのレベルをあげて、社会を改善しようというものです。地産地消の運動をさらに発展させ、「顔のみえる」関係から「志のみえる」関係を目指します。

 スーパーやデパートなどの流通の場やレストランや旅館など食の場においても志産志消の店が増えるなら、生産の場から消費の場までの一貫した流れができます。

 多くの地域で、多くの人が、「志」と「誇り」をもって、さまざまなものを作り出していく。そしてその「志」と「誇り」を評価し、産品を買っていく消費者との連携の創造が日本の新たな社会を生みだすのではないでしょうか。

 「金」と「効率性」が最優先されてきた現代の流れを、「志」をコンセプトに変えてみる。現代社会で劣勢になっている安全、環境、人情、文化、地域社会などは、志産志消の新しい流れによって甦ってくるはずです。

 



cdim at 10:15コメント(7)トラックバック(0)社会 | 地域 この記事をクリップ!

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コメント一覧

1. Posted by 加藤孝雄   2012年01月08日 13:15
 奈良中間地方の(北部は京都府に隣接)「安倍文殊院・第90代の総理閣下は辞任後に石塔を寄付?、ホワイトナイトのSBIグループ代表もーーー」と緯度線が重なる「おふさ観音」寺院のお世話になる年代かとーーー。
*志摩産品の伊勢の国「消費」と誤解をしていたようです。以上。
2. Posted by 読者いち   2012年01月08日 20:15
読み方は、「しさんししょう」で良いのですよね?
「志産志消 shisanshisyou」
3. Posted by 児玉克哉   2012年01月09日 09:44
まだ志産志消はなじみがありませんが、今年は流行語にさせたいです。読み方はしさんししょう、です。
4. Posted by 加藤孝雄   2012年01月11日 10:28
 ローカルに徹するか反れとも、Globalに目標を高くするかによって「行動様式」が相違する。以上。
5. Posted by 児玉克哉   2012年01月11日 23:48
ローカルも、グローバルもやりたいですね。両方を結びつけるコンセプトでもあります。
6. Posted by 加藤孝雄   2012年01月12日 11:09
 イニシエーたーでは無く(なんとか信裡教団?)、ネゴシエーター役がキャンパス内に居るかどうかーーー。以上。
7. Posted by 児玉克哉   2012年01月13日 06:58
その通りで、ネゴシエーターというか、コーディネーター役でしょうね。うまく展開できるようにがんばってみます。

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