里に篭って他人(ひと)と語る機会が滅多になくなった筆者が、日々楽しみとする独酌のひととき、ニタリと独笑する(気持ち悪いでしょう)のはテレビを点けてバラエティ番組を見るときだ。明治生まれの親父が生きていたら決して観ることのできない「低俗番組(注:親父の評価)」である。
 そんなバラエティ番組の中で筆者がランク1位にしているのがテレビ朝日の「芸能人格付けチェック」だ。一流芸能人がかれらのプライドにかけて、100万円のワイン、モーツァルト使用の20億円バイオリン、ミシュラン星付きレストラン料理、100グラム1万円の但馬牛、一流振り付け師のダンスといった一流品を、普及品や素人の作品と見分けるミッションに挑戦するという番組だ。間違えると「一流→普通→二流→三流→そっくりさん→映す価値なし」と自身のランクがダウンするという恐怖の中、一流芸能人の立場をキープするために波乱のやりとりが展開。
 常日頃ワイン通と自称し「私の血はワイン」と豪語した女優(?)も3000円のワインと100万円のワインを見分けられず撃沈するのだから痛快。レギュラー出演の梅宮辰夫は食通で通ってはいるが、これまでの番組で一流品の料理と三流品の料理を見分けたことがないので、番組盛りたて役としてレギュラーになったようだ。

 著名なミュージシャンに、何億円もすることで有名なバイオリンの名器「ストラディバリウス」や「グァルネリ」と市販の普通のバイオリンの音色を聞かせて、どちらが名器のバイオリンかを当てさせるコーナーは、音楽に無縁な筆者にはまったく同じに聞こえる。しかし、ミュージシャンは的確に言い当てるから、音感の世界に生きる人の研ぎ澄まされた感性にはただただ驚嘆するばかりであった。

 しかし・・・・。

 何億円もすることで有名なバイオリンの名器「ストラディバリウス」や「グァルネリ」は、現代のバイオリンと大差ないとする意外な実験結果を仏パリ大学の研究者らが3日、米科学アカデミー紀要で発表した。
 研究チームは、2010年、米インディアナ州で開かれた国際コンテストに集まった21人のバイオリニストに協力してもらい、楽器がよく見えないよう眼鏡をしたうえで、18世紀に作られたストラディバリウスや、現代の最高級バイオリンなど計6丁を演奏してもらった。どれが一番いい音か尋ねたところ、安い現代のバイオリンの方が評価が高く、ストラディバリウスなどはむしろ評価が低かった。
 これまで、木材、塗料、製造法などの分析でストラディバリウスなどが優れている特段の理由は解明されていない。研究チームは「今後は、ストラディバリウスの秘密を探るより、演奏者が楽器をどう評価しているかの研究に集中した方が得策」と、名器の歴史や値段が聞き手の心理に影響している可能性を指摘している・・・。

 これは、「バイオリン名器の音色、現代モノと大差なし?」と題して1月4日付け 読売新聞が報じた記事だ。 

 「芸能人格付けチェック」に出演した、これまでのミュージシャンの感性はどうだったのだろうか。聴き当てたのは偶然か?今後、「芸能人格付けチェック」番組で有名なバイオリンの名器と市販バイオリンの音色を聴き分けるコーナーはなくなるだろう。・・・と、筆者は余計な心配をしている。