ことし最強の台風が11月8日、フィリピン中部を直撃し、甚大な被害をもたらした。近年、異常気象による自然災害が世界中で指摘されるようになった。干ばつによる山火事、集中豪雨による大洪水、火山の噴火、熱波、寒波などが世界各地で頻発している。この地球はいったいどうなってしまったのだろうか。
 人類の生産活動によって大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が増加して地球温暖化をもたらし、これによって世界的な異常気象が起きているとする考えが専門家の一致するところである。
 米オレゴン州立大などのチームによると、過去100年ほどの気温上昇幅が大きく、産業革命以降の大気中の二酸化炭素(CO2)の増加傾向と一致した。現在の地球温暖化が人間活動によって引き起こされたことを裏付ける結果で、チームは「このままでは今世紀末にかけてさらに気温が上昇する」と警告している。 
 IPCC=「国連の気候変動に関する政府間パネル」が発表した「気候の極端な現象に関する特別報告書」では、「地球温暖化の影響で、異常気象などが深刻化し、前例のない極端な気象現象を発生させる可能性がある。今世紀中に世界規模で極端な高温となる頻度が増えるのがほぼ確実だ」として、温暖化と異常気象などとの関連性を明確に指摘している。具体的には、温暖化によって、猛暑が増えた可能性を「非常に高い」とし、大雨が増えた可能性についても「高い」としている。そのうえで、今後、温暖化への対策が十分に取られなければ、猛暑や大雨などが世界規模でさらに増え、一方で、干ばつがアメリカやヨーロッパなどで増えるという、研究者の予測を紹介している。また、世界的に海面の水位が上昇して、沿岸部での高潮が増えるとも指摘しており、早期に警報を出す必要があるとしている。

 極端な気象現象などが原因になったとみられる自然災害は、世界各地で発生している。タイでは、昨年(2012年)6月から広い範囲で、50年に一度といわれる記録的な大雨に見舞われ、多くの日系企業が入る工業地帯や、首都バンコクの中心部も浸水する事態となったことは未だ記憶に新しい。
 
 一昨年夏は、北半球は猛暑や豪雨、南半球は寒波に襲われた。以下、一昨年から今年にかけて世界で起きた異常気象による災害事例を列記する。

異常気象による災害・・2011年
①中国の長江(揚子江)中下流域では5月、記録的な干魃に襲われた。ところが6月に入ると一転、長江流域では豪雨による水害が各地で伝えられるようになった。洪水や土砂崩れなどによる死者は175人、行方不明者は計86人、被災者は約3600万人に達した。
②米国南部では干魃、北部では6月、洪水による被害が広がった。南部の最悪の干魃状況にある地域の面積はテキサス州全体の70%以上に達した。アリゾナ、ルイジアナ、オクラホマの各州でも干魃状況にある地域が拡大。山火事の発生も数千件にも上った。一方で、米国の北部では豪雨と洪水が発生。モンタナ州からミズーリ州にかけて河川の水位が増し、ノースダコタ州では数千人が避難する事態となった。
③東アフリカのソマリアでは8月、過去最大規模の干ばつによる飢きんが続き、新たに南部ベイ地域の国内の雑穀の80%以上を生産する穀倉地帯にも飢きんが広がったことが明らかになり、国連食糧農業機関(FAO)は、今後4カ月の間に75万人が餓死するおそれがあるとして国際社会に緊急の支援を呼びかけた。
④9月、大型ハリケーン「アイリーン」が猛威を振るったばかりの米国を再び災害が襲った。メキシコ湾沿岸上にあった熱帯低気圧「リー」が米南部ルイジアナ州に上陸し、ルイジアナ、ミシシッピ両州の沿岸地域に豪雨や水害をもたらした。さらに、リーによる強風や昨秋からの干魃(かんばつ)の影響で、テキサス州で山火事が広がり、約1万ヘクタールが焼け、476棟の住宅が焼失した。テキサス州の山火事による住宅への被害としては過去最悪規模。
⑤中国内陸部の陝西省や四川省、河南省では9月下旬から大雨が続いて、洪水や土砂崩れで40人近くが死亡し、30万人以上が避難した。
⑥10月、中央アメリカでは熱帯低気圧の影響で1週間以上大雨が続き、洪水や土砂崩れが相次いでエルサルバドルなど4か国で60人を超える死者が出た。
⑦10月末、アメリカ東海岸で、季節外れの大雪が降り、150万世帯が停電したり、空の便が400便以上欠航した。死者の数が19人に上った。米北東部では10月としては異例の吹雪に見舞われた。、倒木の下敷きになるなどして3人が死亡、230万世帯が停電した。各地の空港で計1000便が欠航、鉄道も一部が運行停止となり、交通網に大きな影響が出た。ニューヨーク州の一部、ほか4州では非常事態が宣言された。ニューヨーク市のセントラルパークでは、1869年以降の観測史上初めて、10月に3センチを超える積雪を記録した。
⑧11月、イタリア北部ジェノバで激しい雨が降り、川があふれるなどして浸水する、子供2人を含む7人が死亡した。伊北部と中部では10月下旬にも豪雨による洪水で少なくとも10人が死亡している。
⑨11月、タイが大洪水に見舞われるなか、隣国カンボジアでも史上最大規模の洪水被害が出た。大半が稲作農家の国で全水田の17%が水につかり、被災者は150万人を超えた。
⑩11月、イランでは、氷点下2度まで冷え込み、各地で大雪になった。首都テヘランでは、50年以上ぶりという大雪になった。
⑪12月、フィリピンの東沖の太平洋上で発生した台風21号が南部のミンダナオ島を横断、鉄砲水や土砂崩れ、洪水などが相次ぎ、956人が死亡したほか、49人の行方が分からなくなり、死者・行方不明者の数は合わせて1000人を超えた。
異常気象による災害・・2012年
①2月、東ヨーロッパからロシアまでの広い範囲を強い寒波が襲い、氷点下20度から30度の厳しい寒さが続いた。ポーランドや旧ソ連のウクライナなどでの凍死による死者が300人を超えたほか、セルビアでは遠隔地の村々などに暮らす約7万人が大雪で外部との交通を遮断されて孤立した。チェコでは最低気温が氷点下39.4度を記録。ブルガリアでは吹雪の後に降った激しい雨でダムが崩れ、近くの村の住民らが水に流されるなどして死亡。イタリア・ローマでは過去20年以上で最大の降雪に見舞われ、学校が休校となった。商品の買だめに走る市民も見られた。フランスでは複数のホームレスが死亡。イギリスではロンドンなど各地で雪が降り、欧州最大級のハブ空港であるヒースロー空港でも、雪のため欠航が相次ぐなど影響は欧州各国に広がった。
②4月、米北東部の内陸一帯は風や雪を伴う悪天候に見舞われた。ニューヨーク州中部で約25センチ、ペンシルベニア州北部では約20センチの積雪が観測された。同州北西部のエリー湖畔では、40センチ以上の積雪。4月末にこの地域でこれだけの降雪があるのは極めて珍しいという。
③5月、ブラジル・アマゾン川上流域で豪雨が続き、支流のネグロ川上流域で水位が過去最高の29・79メートルに到達。1902年の観測開始以来、最高を記録した。一方、北東部の高地では過去50年で最悪とされる干ばつの被害が拡大。地球温暖化の影響による異常気象とみられる。
④6月、韓国で約100年ぶりという深刻な干ばつ被害。伝統的な雨乞い儀式も行われた。
⑤北朝鮮では、4月末から全国的に干ばつが続いており、とりわけ黄海側の西部では、5月の降水量が過去50年間で最低を記録し、深刻な干ばつに見舞われた。干ばつで農業に多大な被害が出た。西部を中心に農作物が枯れるなどの被害が相次いでいるという。平安南道では1万ヘクタール余りの農地でトウモロコシなどの作物が枯れ、麦も実入りが悪く、収穫が期待できない状態。黄海北道では2万ヘクタール、黄海南道では1万300ヘクタール余りで作物が枯れた。ところが6月、一転して北朝鮮の大部分が豪雨に見舞われた。首都・平壌、北西部の平安北道(ピョンアンプクト)から南西部の黄海北道(ファンヘプクト)・黄海南道(ファンヘナムド)にかけては、70ミリの降水量を記録した。局地的には暴風雨に見舞われたが、全体としては恵みの雨となったかたち。
⑤6月末、首都ワシントンを含む米東部で暴風雨が発生し、少なくとも12人が死亡、300万世帯以上が停電に見舞われた。ワシントンやオハイオ州、バージニア州、ウェストバージニア州の当局は、非常事態宣言を発令した。
⑦7月、インド北東部のアッサム州では、先週からの大雨で、州内を流れるブラマプトラ川があちこちで氾濫し、川沿いのおよそ2000の村が水につかった。この洪水で流されたり、土砂崩れに巻き込まれたりして77人が死亡し、5人が行方不明になった。避難した住民の数は40万人以上に上り、およそ200万人が洪水の影響を受けてた。
⑧同月、ロシア南部のクラスノダール地方では、6日の夕方から豪雨に見舞われ、ところによっては、ひと晩で年間の平均降水量の4割に相当するおよそ300ミリの雨量を観測し、川の水位が上昇した。この豪雨でカフカス山脈から流れる川の下流にあるクリムスクなどで住宅5000棟以上が浸水し、2万人以上が住宅の損壊などで被災し、171人が死亡した。
⑨同月、アメリカでは、穀物の産地の中部から東部が過去10年で最悪とも言われる猛暑に見舞われ、農産物の多くが枯れるなどの被害が出た。大豆取引の国際的な指標となっている、シカゴ商品取引所の大豆の先物価格は、4年前の最高値に迫る水準まで値上がりした。
⑩同月、北京では、豪雨で過去61年で最大の降水量を記録した。死者数は77人。
⑪北朝鮮では6月末から7月末にかけて発生した台風、豪雨がもたらした洪水で、169人が死亡、144人が負傷、400人が行方不明となった。
⑫日本では、4月の「爆弾低気圧」や5月の竜巻、7月の九州などの記録的な豪雨。西太平洋から南シナ海にかけての海面水温が平年よりも高くなって対流が起きやすくなり、梅雨前線を刺激したる可能性がある。
⑬日本の豪雨、米国中西部の猛暑と干ばつ、欧州の冷夏。世界で相次いだ異常気象は、北半球上空を吹く偏西風の流れが数カ月間、蛇行したままなのが主因とみられる。これだけ長期間続くのは珍しい。終わったはずの「ラニーニャ」現象の影響がいつまでも残っているのも、異常の長期化に拍車をかけているようだ。
⑭びわ湖のおよそ6倍の広さがある中国最大の湖「青海湖」の面積が、この夏の大雨の影響で、データを取り始めた2001年以降、最大になった。
⑮米北東部ニュージャージー州に上陸した大型の温帯低気圧「サンディ」で、米国とカナダで少なくとも22人が死亡した。停電は、米東部17州と首都ワシントンで計810万世帯を超えた。
⑯12月、ロシアの首都モスクワでは、先週末から大雪となって積雪は60センチを超えた。過去20年間で最も寒い冬になた。
⑰同月、フィリピンでは、台風24号が南部のミンダナオ島を襲い、5万6000人余りが避難した。被災者は540万人に達した。死者は540人を超えた。
⑱同月、ロシアのシベリアから極東にかけての広い範囲に寒波が襲来し、一部の地域で氷点下50度を下回る厳しい寒さとなった。水が空中であっという間に凍るほどの記録的な寒さが続いていて、ロシアで50人以上が死亡したほか、ウクライナでも路上生活者を中心に80人以上が亡くなるなど、深刻な影響が出た。新疆ウイグル自治区では大雪、一部の山地は豪雪に見舞われた。阿勒泰市の平均降水量は38ミリメートルで、例年より8割多い。2万7000人が被災し、2600人が避難した。100軒以上の家屋が倒壊した。直接的な被害額は1900万元以上(約2億5000万円)。
⑲同月、南極・昭和基地で22日(日本時間同日午後~23日未明)、降雨が観測された。気象庁の記録によると、昭和基地での雨は2004年1月1日以来約9年ぶり。
⑳5~6月の地球の陸地の平均気温が、統計の残る1880年以降の同時期としては過去最高を記録したことが、米海洋大気局(NOAA)の調べで分かった。高温傾向は7月以降も同じで北半球の多くの地域が酷暑になった。NOAAによると、6月の平均気温は地球の陸地が平年より1・07度、北半球に限れば1・3度それぞれ高かった。地球の陸地は2カ月連続、北半球では3カ月連続の最高記録。海洋を合わせた地球全体の平均気温も過去4番目の高さとなった。
異常気象による災害・・2013年
以下、続く